(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【技術分野】
【0001】
技術分野
本発明は、有機合成の分野に関するものであり、より詳細には、本発明は、式:
【化1】
[式中、Rは、下記において定義される通りである]の化合物の製造方法であって、当該化合物が、その立体異性体またはそれらの組み合わせのうちのいずれか1つの形態である、方法に関する。本発明は、β−サンタロールもしくはそれらの誘導体の合成のための、化合物(I)の使用にも関する。
【0002】
先行技術
式(I)の化合物は、短く効果的で工業的に実現可能な方法での、β−サンタロール((Z)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタン−2−イル)ペンタ−2−エナ−1−オール、すなわち、エキソ異性体)およびそれらの誘導体の製造のための有用な出発物質である。当該化合物(I)も新規である。
【0003】
β−サンタロールおよびそれらの誘導体は、周知の、非常に高い評価の芳香成分であり、そのいくつかは特定の適合性を有する。合成β−サンタロールは、現時点で市販されておらず、天然源からのもののみが入手可能である(サンダルウッド属の精油)。β−サンタロールは、東インド産サンダルウッド油(サンタラム・アルバム)中に、20〜25%の典型的な濃度において存在し、概して、精油の良好でクリーミーなサンダルウッドの特徴のための主な匂いベクトルとして受け取られている。西オーストラリア産サンダルウッド油(サンタルム・スピカトゥム)は、典型的には、精油の3〜8%の範囲と、はるかに少ないβ−サンタロールを含有し、その結果として、あまり評価されない油である。
【0004】
サンタラム・アルバムは、絶滅の恐れのある野生動植物の種の国際取引に関する条約および国際自然保護連合のレッドリストによって、脆弱で絶滅の危険性のある種として分類されているため、東インド産サンダルウッドの輸出および精油の蒸留は、厳しい政府の管理下にある。
【0005】
したがって、β−サンタロールおよびその誘導体を製造するための代替合成が、緊急に必要とされている。
【0006】
わかっている限りにおいて、全ての既知の合成は、時間がかかるか、あるいは高価な出発材料および/または試薬、あるいは工業プロセスにとってはコストがかかり過ぎるかまたは許容できない量の廃棄物が発生する工程も必要とする(例えば、Brunkeら,Rivista Italiana EPPOS,1997,49を参照されたい)。特に、β−サンタロールの製造方法の代表的な最良の例として、以下の参考文献を列記することができる:
− 欧州特許第10213号:ただし、当該方法は、非常に長く、多くの塩素化された中間体(香料での使用にとって最適ではない)を必要とすることに加え、本発明のアルデヒド(IV)の製造に対する全収率(約13%)は非常に低い(下記);
− A.Krotzら,Tet.Asymm.,1990,1,537:比較的短い合成について記載されているが、ただし、大規模に製造するのが困難な高価な還元剤、高価なキラル助剤、および2回のWittig反応とそれに続いてのケトンからエキソメチレン基への転換を必要とする:
− 米国特許第3,662,008号および米国特許第3,679,756号は、低い全収率のβ−サンタロールの合成についても説明している。この経路も、同様に、Z二重結合を導入するためのWittig反応および高価な還元剤に依存している;
− C.Fehrら,Chem.Eur.J.2010,17,1257またはAngew.Chem.Int.Ed,2009,48,7221:工業規模で製造することが容易ではないプロパルギルアルコール誘導体のCu接触転位反応を介するβ−サンタロールの合成について記載されている;
− 欧州特許第2119714号:電子リッチ芳香族環での「Scriabine」反応を利用する合成について記載されているが、アルケンでのそのような反応の使用またはβ−サンタロールの製造での使用については何も記載されていない;
− H.Mayrら,Chem.Ber.1986,119,929:環状アルケンへの1,4求電子付加について記載されているが、β−サンタロールの製造については言及または提示されていない。
【0007】
本発明の目的は、β−サンタロールおよびその誘導体の製造のための、より工業的かつ効率的な方法を提供することである。実際に、本発明は、先行する文献のない新規な反応を用いて(Wittigオレフィン化または同様の転換を必要とすることなく)、メチレン官能基の同時形成と共に、好適に官能化された(適正な構成の)側鎖部分の一段階作成を可能にすることにより、標的化合物の製造プロセス全体を短くする。
【0008】
発明の説明
本発明の第一の目的は、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化2】
[式中、Rは、式COR
aのC
2〜C
10基を表し、この場合、R
aは、任意により1つまたは2つのエーテル官能基を有していてもよいアルキルもしくはアルケニル基であるか、あるいは任意により1〜3つのアルキル、アルコキシル、カルボキシル、アシル、アミノ、もしくはニトロ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルもしくはベンジル基である]の化合物の製造方法である。
【0009】
下記において詳細に示されるであろうように、当該化合物(I)は、3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパナールの製造を介した、β−サンタロール(特に、(Z)−2−メチル−5−((1S,2R,4R)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)ペンタ−2−エナ−1−オール)の製造において有用な中間体である(欧州特許第10213号を参照のこと)。
【0010】
本発明の第一の目的の特定の態様は、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化3】
[式中、Rは、式COR
aのC
2〜C
10基を表し、この場合、R
aは、任意により1つまたは2つのエーテル官能基を有していてもよいアルキルもしくはアルケニル基であるか、あるいは任意により1〜3つのアルキル、アルコキシル、カルボキシル、アシル、アミノ、もしくはニトロ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルもしくはベンジル基である]の化合物の製造方法であって、
その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化4】
[式中、R
1は、水素原子またはSi(R
2)
3もしくはB(OR
2’)
2基を表し、R
2はC
1〜4アルキルもしくはアルコキシル基を表し、ならびにR
2’は、独立して、C
1〜4アルキル基、あるいは任意により1〜3つのC
1〜3アルキルもしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表し、あるいは、当該R
2’は、一緒に、C
2〜6アルカンジイル基、または任意により1〜3つのC
1〜3アルキルもしくはアルコキシ基で置換されていてもよいジフェニルもしくはジナフチル基を表す]の化合物と、
その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化5】
[式中、Rは、式(I)において定義された意味を有し、Lは、ハロゲン原子またはOR基を表す]の化合物とを、
1)以下の中から選択されるルイス酸:
i)2、3、4、13族の元素の金属塩または3d元素の金属塩またはスズの金属塩;
ii)式Al(R
4)
aCl
3-aの塩化アルキルアルミニウム(aは1または2を表し、R
4はC
1〜10アルキルもしくはアルコキシド基を表す);および
iii)式BZ
3のボロン誘導体(この場合、Zは、フッ化物または任意により1つまたは2つのメチル基で置換されていてもよいフェニル基を表す)、ならびにC
2〜C
10エーテルまたはC
1〜C
8カルボン酸とのその付加物のうちのいずれか1つ;ならびに、
2)任意により、アルカリ土類金属水酸化物もしくは酸化物ならびに式R
bCOCl、ClSi(R
b)
3,R
bCOOR
c、または(R
bCOO)
2R
d(この場合、R
bは、C
1〜12アルキル基あるいは任意により1つまたは2つのC
1〜4アルキルもしくはアルコキシル基で置換されていてもよいフェニル基を表し、R
cは、アルカリ金属カチオンまたはR
bCOアシル基を表し、ならびにR
dは、アルカリ土類金属カチオンを表す)の化合物からなる群より選択される添加剤
の存在下において、一緒に反応させることによる、方法である。
【0011】
明瞭化のため、「2、3、4、13族」なる表現は、当技術分野における通常の意味であって、周期表分類について言及していることが理解される(http://en.wikipedia.org/wiki/Periodic_tableを参照されたい)。同様に、「3d金属」なる表現は、21〜30(境界値を含む)の原子番号を有する化学元素を意味することが理解される。
【0012】
本発明の方法は、わかっている限りにおいて、芳香族化合物の代わりにアルケンを使用した、文献に報告されているScriabineタイプの反応の第一実施例である。
【0013】
式(II)の化合物は、Chem.Ber.,1955,88,407に従って得ることができる(サンテンの場合、すなわち、R
1は水素原子である)。
【0014】
対応するシリル(R
1=Si(R
2)
3)またはボリル(R
1=B(OR
2’)
2)化合物は、対応するサンタジエン(Chem.Ber.,1955,88,407を参照のこと)の1,4ヒドロシリル化(J.Organometallic Chem.,1977,132,133、J.Am.Chem.Soc.,2010,132,13214を参照のこと)または1,4ヒドロホウ素化(J.Am.Chem.Soc.,2009,131,12915またはJ.Am.Chem.Soc.,2010,132,2534を参照のこと)のどちらかによって得ることができる。あるいは、これら同じ生成物は、適切な試薬を使用した、Chem.Ber.,1994,127,1401およびChem.Ber.,1994,127,2135に記載されているようなLochmann−Schlosser塩基を用いた脱プロトン化によるサンテンの単官能化によって得ることができる。
【0015】
本発明の任意の実施形態により、ならびに特定の態様から独立して、当該R
1基は、水素原子を表す。
【0016】
あるいは、当該R
1基は、Si(R
2)
3(R
2は、C
1〜4アルキルもしくはアルコキシル基を表す)またはB(OR
2’)
2基(R
2’は、独立して、C
1〜4アルキル基または、任意により1〜3つのC
1〜3アルキルもしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表すか、あるいは当該R
2’は、一緒に、C
2〜6アルカンジイル基または、任意により1〜3つのC
1〜3アルキルもしくはアルコキシ基で置換されていてもよいジフェニルもしくはジナフチル基を表す)を表す。
【0017】
本発明の任意の実施形態により、当該化合物(II)は、トリエチル(((1SR,4RS)−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エナ−2−イル)メチル)シラン、2,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(サンテン)、または4,4,5,5−テトラメチル−2−(((1SR,4RS)−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エナ−2−イル)メチル)−1,3,2−ジオキサボロランである。特に、当該化合物(II)は、2,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン(サンテン)である。
【0018】
式(III)の化合物は、J.Am.Chem.Soc.,2001,123,3671により;またはクロロ誘導体の場合は、Bull.Soc.Chim,de France,1938,5,256に従って、またはHelv.Chim.Acta.,1978,61,2047により得ることができる。
【0019】
さらに、本発明の第二の目的は、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式(I):
【化6】
[式中、Rは、上記において式(I)で示した意味を有する]の新規で有用な化合物である。特に、(E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパ−1−エナ−1−イルカルボキシレートを挙げることができ、この場合、カルボキシレートは、上記において定義したような、C
1〜7、好ましくはC
2〜6アシル基を意味する。
【0020】
本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該Rは、式COR
aのC
2〜C
10基を表し、この場合、R
aは、任意により1つまたは2つのエーテル官能基を有していてもよいアルキルもしくはアルケニル基であるか、あるいは任意により1つまたは2つのC
1〜C
2アルキル、アルコキシル、カルボキシル、アシル、アミノ、もしくはニトロ基、またはハロゲン原子で置換されていてもよいフェニルもしくはベンジル基である。
【0021】
本発明の任意に実施形態により、および特定の態様から独立して、当該R基は、式COR
aのアシル基を表し、この場合、R
aは
− 任意により1つまたは2つのC
1〜2アルキル、アルコキシル、カルボキシル、アシル、アミノ、またはニトロ基で置換されていてもよいフェニルもしくはベンジル基;または
− α位に第三級もしくは第四級炭素原子および/またはβ位に第四級炭素原子を有する、C
3〜C
9分岐鎖状アルキルもしくはアルケニル基
である。
【0022】
本発明の任意の実施形態により、当該Rは、C
2〜C
5アシル基である。特に、当該R基は、アシル基R
aCOであり、R
aは、α位に第三級もしくは第四級炭素原子および/またはβ位に第四級炭素原子を有する、分岐鎖状アルキル基である。
【0023】
明瞭化のため、「α位」なる表現は、当技術分野における通常の意味を意味し、すなわち、基RのCOO部分に直接結合している炭素原子を意味する。同様に、「β位」なる表現は、α位に直接結合した炭素原子を意味する。
【0024】
当該Rの具体例は、EtCO、
iPrCO、
secBuCO、
tBuCH
2CO、
tBuCO、PhCO、またはPhCH
2COである。
【0025】
本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該L基は、Cl原子を表すか、または上記において定義されたようなOR基を表す。
【0026】
本発明による、化合物(I)の製造方法は、ルイス酸を必要とし、当該ルイス酸は、Scriabineタイプの反応のための触媒として使用される。
【0027】
本発明の方法は、様々なタイプのルイス酸、とりわけ特定の金属塩、の存在下において実施される。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該金属塩は、有利には、式:
(M
n+)(X
-)
n-m(Y
-)
m
[式中、mは、整数0〜(n−1)であり、ならびに
nは2であり、かつMは、Zn、Cu、またはアルカリ土類金属であり;
nは3であり、かつMは、ランタニド、Sc、Fe、Alであり;あるいは
nは4であり、かつMは、Sn、Ti、またはZrであり;
各X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、弱い配位性のモノアニオン、R
3SO
3-を表し、この場合、R
3は、塩素原子もしくはフッ素原子、またはC
1〜3炭化水素もしくはペルフルオロ炭化水素、または任意により1つまたは2つのC
1〜4アルキル基で置換されていてもよいフェニルを表し;
各Y
-は、nが2または3の場合、C
1〜6カルボキシレートまたは1,3−ジケトネートを表し、nが3または4の場合、C
1〜6アルコキシレートを表す]の化合物の中から選択される。
【0028】
「弱い配位性のモノアニオン」なる表現は、当技術分野における通常の意味、すなわち、金属中心に対し、非配位性のモノアニオンまたは非常に弱く配位しているモノアニオン、を意味する。典型的には、そのような弱い配位性のモノアニオンは、1未満のpK
aを有する酸HXのアニオンである。そのような非配位性モノアニオンの非限定的な例は、ClO
4-、BF
4-、PF
6-、SbCl
6-、AsCl
6-、SbF
6-、AsF
6-、またはBR
4-(この場合、Rは、任意により1〜5つの基、例えば、ハロゲン原子またはメチルまたはCF
3基など、で置換されていてもよいフェニル基である)であり、特に、PF
6-またはBF
4-である。
【0029】
本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該金属塩は、有利には、式:
(M
n+)(X
-)
n-m(Y
-)
m
[式中、mは、整数0〜(n−1)であり、ならびに
nは2であり、かつMは、ZnまたはCuであり;
nは3であり、かつMは、Ce、Sc、Alであり;あるいは
nは4であり、かつMは、TiまたはZrであり;
各X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、PF
6-、BF
4-、R
3SO
3-を表し、この場合、R
3は、塩素原子もしくはフッ素原子、またはC
1〜3炭化水素もしくはペルフルオロ炭化水素を表し;
各Y
-は、nが2または3の場合、C
1〜6カルボキシレートまたは1,3−ジケトネートを表し、nが3または4の場合、C
1〜6アルコキシレートを表す]の化合物の中から選択される。
【0030】
本発明の任意の実施形態により、当該X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、CF
3SO
3-、またはBF
4-を表す。
【0031】
本発明の任意の実施形態により、nが2の場合、X
-は、Cl
-、Br
-、I
-、CF
3SO
3-、またはBF
4-を表し、あるいはnが3の場合、X
-は、Cl
-、CF
3SO
3-、またはBF
4-を表し、あるいはnが4の場合、X
-はCl
-を表す。Xの性質は、アニオンXのレドックス電位(特に、当該アニオンXがハロゲンの場合)および金属カチオンのレドックス電位に依存することは、当業者によって理解される。
【0032】
本発明の任意の実施形態により、当該Y
-は、nが2または3の場合にはC
1〜6カルボキシレートを、nが3または4の場合にはC
1〜3アルコキシレートを表す。
【0033】
本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該金属塩は、式:
− (Zn
2+)(X
-)
2-m(Y
-)
m[式中、m、X
-、およびY
-は、上記において示された意味を有し、特に、mは0である];
− (M
3+)(X
-)
3-m(Y
-)
m[式中、m、X
-、およびY
-は、上記において示された意味を有し、MはAlまたはScであり、特に、mは、0、1、または2である];
− (M
4+)(Cl
-)
4-m(R
5O
-)
m[式中、mは、上記において示された意味を有し、Mは、TiまたはZrを表し、ならびにR
5は、C
1〜3アルキル基を表し、特に、mは、1、2、または3である]
の塩の中から選択される。
【0034】
本発明の任意の実施形態により、当該金属塩は、式:
− (Zn
2+)(X
-)
2-m(Y
-)
m[式中、m、X
-、およびY
-は、上記において示された意味を有する];
− (Al
3+)(X
-)
3-m(Y
-)
m[式中、m、X
-、およびY
-は、上記において示された意味を有する];
− (Ti
4+)(Cl
-)
4-m(R
5O
-)
m[式中、mは、上記において示された意味を有し、R
5は、C
1〜3アルキル基を表す]
の塩である。
【0035】
本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該金属塩は、nが2または3のものである。
【0036】
当該金属塩は、予め形成された塩として反応媒体に加えることができ、あるいは、例えば実施例において説明されるように、例えば、カルボキシレートの塩(例えば、Zn(AcO)
2)とClSi(R
b)
3またはR
bCOClとの反応によって、インサイチューで発生させることができる。
【0037】
当該ルイス酸は、塩化アルキルアルミニウムであってもよい。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該塩化アルキルアンモニウムは、式Al(R
4)
aCl
3-aのものであり、この場合、aは1または2を表し、R
4はC
1〜4アルキルまたはアルコキシド基を表す。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該塩化アルキルアルミニウムは、式Al(R
4)
aCl
3-aの化合物の中から選択され、この場合、aは1または2を表し、R
4はC
1〜3アルキル基を表す。本発明の任意の実施形態により、当該塩化アルキルアルミニウムは、「a」が1を表しかつR
4がC
1〜3アルキル基を表す化合物、例えば、EtAlCl
2またはMeAlCl
2など、である。
【0038】
当該ルイス酸は、式BZ
3のボロン誘導体であってもよい。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該ボロン誘導体は、式BZ
3(式中、Zは、フッ素または任意により置換されていてもよいフェニル基である)のもの、ならびにC
2〜C
8エーテルまたはC
1〜C
6カルボン酸とのその付加物のうちのいずれか1つである。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、当該ボロン誘導体は、BF
3、ならびにC
4〜C
6エーテルまたはC
1〜C
3カルボン酸とのその付加物のうちのいずれか1つ、例えば、BF
3(EtOEt)
1〜2またはBF
3(AcOH)
1〜2など、である。
【0039】
本発明の任意の実施形態により、当該ルイス酸は、EtAlCl
2、MeAlCl
2、または(Zn
2+)(X
-)
2の中から選択され、この場合、X
-は、上記において定義される通りであり、特に、Br
-、I
-、またはCl
-である。
任意により、本発明の当該方法に、添加剤を追加することもできる。当該添加剤は、反応を加速させるか、および/または、所望の生成物のより良好な収率を提供する。本発明の上記の実施形態のいずれか一つにより、当該添加剤は、R
bCOCl、ClSiR
b3、R
bCOOR
c、または(R
bCOO)
2R
dからなる群の中のいずれかであり、この場合、R
bは、C
1〜8アルキル基もしくはC
1〜4アルキル基、または任意により1つまたは2つのC
1〜4アルキルもしくはアルコキシ基で置換されていてもよいフェニル基を表し、R
cは、Li、Na、もしくはKカチオン、またはR
bCOアシル基を表し、R
dは、MgまたはCaカチオンを表す。
本発明の上記の実施形態のいずれか一つにより、当該添加剤は、非限定的な例として、ClSiMe
3,MeCOCl、AcOK、またはAcOAcであり得る。
【0040】
特に、当該ルイス酸が、上記において定義される金属塩の場合、シリルまたはアシルクロリドタイプの添加剤を使用することが最も有利である。同様に、当該ルイス酸が、上記において定義される、塩化アルキルアルミニウムタイプまたはホウ素誘導体の場合、アルカリカルボキシレートの添加剤またはカルボン酸無水物タイプの添加剤を使用することが、最も有利である。
【0041】
当業者には既知であるので、言うまでもないが、当該添加剤の添加は、1ポット法において(例えば、同じ反応媒体において、触媒と一緒に、または触媒に続いて)、またはある種の2ポットプロセスにおいて(例えば、化合物(II)および(III)を触媒と一緒に処理し、結果として得られた生成物を精製した後、異なる反応媒体中において当該化合物と添加剤を一緒に処理を行う)行うことができる。
【0042】
この第二の選択肢(2ポット処理)は、ルイス酸が塩化アルキルアルミニウムの場合に特に興味深く、というのも、驚くべきことに、所望の化合物(I)に加えて、ルイス酸による処理の重要な生成物が、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化7】
[式中、Rは上で定義されるのと同じ意味を有する]の化合物であり得ること;
ならびに、当該化合物(I'')は、添加剤、例えば、アルカリもしくはアルカリ土類カルボキシレートまたはカルボン酸無水物、好ましくは、添加剤に対して定義したようなアルカリカルボキシレートなど、を加えることによって、所望の生成物(I)へと転化させることができること、を見出したためである。当該化合物(I'')は新規であり、したがって、化合物(I)の中間体も、本発明の別の態様である。
【0043】
当該ルイス酸は、広範囲な濃度において、反応媒体に加えることができる。非限定的な例として、上記において説明したようなボロン誘導体または遷移金属塩の場合、出発化合物(III)のモル量に対して約0.01〜0.30モル当量、好ましくは約0.03〜0.15モル当量の範囲の濃度を挙げることができる。非限定的な例として、上記において説明したような塩化アルキルアルミニウムの場合、出発化合物(III)のモル量に対して約0.5〜2.00モル当量、好ましくは約0.7〜1.3モル当量の範囲の濃度を挙げることができる。
【0044】
言うまでもないが、当該塩の最適濃度は、後者の性質、および所望の反応時間、ならびに添加剤の存在の有無に依存するであろう。
【0045】
当該添加剤は、広範囲な濃度において、反応媒体に加えることができる。非限定的な例として、ルイス酸の質量に対して、10〜250%の範囲の添加剤濃度を挙げることができる。好ましくは、当該添加剤濃度は、ルイス酸の質量に対して、10〜120%であろう。
【0046】
本発明による化合物(I)の製造方法は、それらが試薬ならびに塩および添加剤の反応性に適合する限り、多くの様々な反応条件下において実施することができる。当業者は、自身の必要性を考慮して、最も適切なものを選択することができる。本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、非限定的な例として、互いに独立して、または任意の組み合わせとの関連において、以下の条件を挙げることができる:
− −78℃〜150℃、好ましくは0℃〜70℃の反応温度;当然のことながら、当業者は、出発材料および最終生成物および/または最終的な溶媒の融点および沸点の関数として、好ましい温度を選択することもできる;
− (II)から(I)への転換は、その実施形態のいずれかにおいて、溶媒の不在下もしくは存在下において実施することができ;そのような溶媒の非限定的な例は、C
2〜10飽和エステル、C
1〜6飽和塩素化溶媒、C
6〜9飽和または芳香族炭化水素(後者は、出発化合物(II)とのScriabineタイプの反応において競合が認められないので、驚くべきものである)、ならびにそれらの混合物である。より好ましくは、当該溶媒は、1,2−ジクロロエタン、ジクロロメタン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン、トルエン、またはキシレンである。
【0047】
本発明の別の目的は、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、式:
【化8】
の化合物の製造方法であって、上記において定義される式(I)の化合物を、アルコール性溶媒中においてC
4〜12第三級アミンと反応させることを特徴とする、方法である。
【0048】
非酸性エステル交換反応を実施するために使用される当該第三級アミンの典型的で非限定的な例は、4−ジメチル−ピリジン、トリエチルアミン、EtNMe
2、N−メチル−ピペリジン、ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン、N−メチル−ピロリジン、または4−(ピロリジン−1−イル)ピリジンである。好ましくは、当該第三級アミンは、芳香族もしくは飽和C
6〜10環状第三級アミンである。
【0049】
本発明のプロセスおよび中間体(I’)によって可能となるこれら非酸性条件の利点は、アルデヒド(IV)から四環式エーテルへの転換を避けるかまたは最小限に抑えることである(Tet.Lett.,1970,11,37に記載されている)。
【0050】
当該方法の実験条件は、そのようなタイプの反応にとってきわめて標準的である。しかしながら、特定の態様から独立して、非限定的な例として、互いに独立して、または任意の組み合わせとの関連において、以下の条件を挙げることができる:
− 当該第三級アミンは、広範囲な濃度、例えば、化合物(I’)の量に対して0.01〜5モル当量の範囲の濃度、において反応媒体に加えることができる;
− 0℃〜175℃、好ましくは40℃〜70℃の反応温度;当然のことながら、当業者は、出発材料および最終生成物および/または最終的な溶媒の融点および沸点の関数として、好ましい温度を選択することもできる;
− 当該反応のアルコール性溶媒は、C
1〜6もしくはC
1〜4アルコール、ならびにC
2〜10もしくはC
2〜6エステル、C
6〜10芳香族炭化水素、またはC
1〜6もしくはC
1〜2塩素化溶媒との混合物であり得る。より好ましくは、当該溶媒は、第一級アルコール、例えば、メタノールまたはエタノールなど、である。
【0051】
本発明の任意の実施形態により、および特定の態様から独立して、化合物(I)、(I")、(II)、または(IV)は、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態であってもよい。明瞭化のため、立体異性体なる用語では、任意のジアステレオマー、エナンチオマー、ラセミ体、またはEもしくはZ立体配置の炭素−炭素二重結合異性体が意図される。
【0052】
本発明の任意の実施形態により、化合物(I)は、50%(w/w)を超える(1SR,2RS,4RS)立体異性体を含む立体異性体の混合物の形態、すなわち、式(I−A):
【化9】
[式中、Rは、上記の式(I)において示された意味を有し、太線および斜線は、相対立体配置を示している]に示されるような、相対エキソ(橋かけ炭素原子とエノール鎖とが相対cis立体配置である)立体配置を有する化合物である。
【0053】
本発明の任意の実施形態により、化合物(I)は、50%(w/w)を超える(1S,2R,4R)立体異性体を含む立体異性体の混合物の形態、すなわち、式(I−B):
【化10】
[式中、Rは、上記の式(I)において示された意味を有し、太線および斜線は、絶対立体配置を示している]に示されるような、絶対立体配置を有する化合物である。
【0054】
上記または下記の実施形態のいずれかにおいて、製造のための出発材料(例えば、(II)および(I''))または、当該化合物(I)から得られる生成物(例えば、下記の(IV)、(V)、(VI)、(VII)、およびβ−サンタロールを参照されたい)は、同じステレオ立体配置を有していてもよく、好ましくは有していること、すなわち、エキソ−(I)が使用される場合、全ての化合物(V)、(VI)、(VII)、およびβ−サンタロールは、エキソ立体配置を有するであろうことは理解される。一例として、下記:
スキーム1:
【化11】
の反応スキームを挙げることができ、この場合、当該ステレオ立体配置は、相対または絶対である。
【0055】
本発明のさらなる目的は、上記において定義される工程を含む、β−サンタロールまたはその誘導体、例えば、β−サンタラール、β−サンタリルベンゾエート、β−サンタリルブチレート、β−サンタリルイソブチレート、β−サンタリルプロピオネートなど、の製造方法である。当該方法を、本発明の方法により得られる化合物(I)を使用してどのように実施するかは、当業者にとって既知であることは理解される。
【0056】
アルデヒド(IV)からβ−サンタロールへの転換は、当業者に周知の多くの異なる方式において実施することができる。実用例を、下記の本明細書の実施例において提供する。
【0057】
しかしながら、非限定的な例として、アルデヒド(IV)をβ−サンタロールへと転換させる最も直接的な方式の1つは、以下の反応:
a)上記アルデヒド(IV)にアルデヒドCH
3CH
2CHOをカップリングさせて(アルドール付加)、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態のアルデヒド(V):
【化12】
を得る工程;
b)当該化合物(V)を、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の、対応するジエノール誘導体(VI):
【化13】
[式中、R
6は、C
1〜C
6アルキル、アルケニル、もしくはアシル基、またはC
3〜C
9シリル基を表す]に転化させる工程;
c)ジエノール誘導体(VI)を、その立体異性体のうちのいずれか1つまたはそれらの混合物の形態の化合物(VII):
【化14】
[式中、R
6は、式(VI)においてと同じ意味を有する]へと還元する工程;
d)当該化合物(VII)をβ−サンタロールへと転化させる工程
を含む。
【0058】
本発明の特定の実施形態により、当該化合物(IV)〜(VI)は、化合物(I−A)または(I−B)に対して上記において説明したものに対応する立体配置を有する。
【0059】
工程a)〜d)は、当業者に周知の標準的な方法によって実施することができる。
【0060】
例えば、各工程に対して以下の方法:
工程a)欧州特許第10213号により;
工程b)Simmonsら,Helv.Chim.Acta,1988,71,1000または国際公開第2005/037243号により;および
工程c)Shibasakiら,J.Org.Chem.,1988,53,1227により(ここでは、酢酸ジエノール誘導体の[1,4]水素化が報告されている)あるいは国際公開第08/120175号または国際公開第09/141781号により;ならびに
工程d)国際公開第09/141781号を参照のこと
を挙げることができる。
【0061】
そのような手順の例を、以下に本明細書の実施例において提供する。
【0062】
実施例
本発明を、全ての実施形態において、下記の実施例によりさらに詳細に説明するが、この場合、略語は、当技術分野における通常の意味を有し、温度は、摂氏(℃)において示されており、NMRスペクトルデータは、CDCl
3中において、400MHzまたは125MHzの装置により、それぞれ
1Hまたは
13Cに対して記録し、化学シフトδは、標準物質としてのTMSに対してppmにおいて示され、結合定数Jは、Hzで表されている。クロマトグラフィは、シリカを含有するAnalogix Cartridgeを用いて、圧力下において、指定された溶媒混合物により実施した。サンテン(2,3−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エン)は、Chem.Ber.,1955,88,407に従って調製した。
【0063】
式(III)の様々な化合物は、以下の基本手順に従って調製した:
本明細書の以下において:
FeCl
3・6H
2O(100mg、触媒)を、ジクロロメタン(25ml)中におけるアクロレイン(5.6g、100mmol)の撹拌された溶液に加え、次いで0℃に冷却した。好適なカルボン酸無水物(100mmol)をゆっくりと滴加した。0℃で2時間後、当該溶液を周囲温度でさらに30分間撹拌し、次いで、飽和NaHCO
3および酢酸エチル(100ml)に注ぎ入れ、酢酸エチルで再抽出し、収集した有機相をNaHCO
3で洗浄し、次いでMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗アリリデンジエステルを得た。バルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、所望のジエステルを得た。
【0064】
・
プロパ−2−エン−1,1−ジイルジアセテート:J.Am.Chem.Soc.,2001,123,3671を参照のこと。
【0065】
・
プロパ−2−エン−1,1−ジイルジプロピオネート
130℃における10mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、当該ジプロピオネート10g、収率=53%を得た。
【0066】
【0067】
・
プロパ−2−エン−1,1−ジイルジイソブチレート
90〜100℃における0.45mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、当該アリリデンジイソブチレート12.8g、収率=59%を得た。
【0068】
【0069】
・
プロパ−2−エン−1,1−ジイルジピバレート
110℃における0.56mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、当該ジピバレート13.87g、収率=57%を得た。
【0070】
【0071】
実施例1
(E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパ−1−エナ−1−イルアセテート、および対応する化合物(I'')(E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−クロロ−1,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−7−イル)プロパ−1−エナ−1−イルアセテートの調製:
・ 手順1:EtAlCl
2の使用
アリリデンジアセテート(15.8g、100mmol、2当量)を、ジクロロメタン(50ml)に溶解させ、約2℃に冷却した。次いで、EtAlCl
2(80ml、ヘキサン中において1.0M、80mmol)の溶液を20分かけてゆっくりと滴加した。次いで、サンテン(6.1g、50mmol)を滴加した。当該反応混合物を周囲温度までゆっくりと温めた。さらに3時間周囲温度で撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、次いで飽和NaHCO
3に注ぎ入れ、酢酸エチルで再抽出し、収集した有機相を飽和NH
4Clで洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、淡黄色の油として粗エノールアセテート15.6gを得た。150〜200℃における0.45mbarでの蒸留により、当該エノールアセテート(I)およびクロロ化合物(I'')の混合物(比率:17:37)を得た。
【0072】
当該粗生成物に以下のいずれかを行った:
− 無水酢酸(5g)に溶解させ、酢酸カリウム(2.5g)を加えた。当該懸濁液を、還流下において45分間加熱した。次いで冷却し、飽和NaHCO
3に注ぎ入れ、一晩撹拌した。反応媒体を酢酸エチルで抽出し、収集した有機相をNaHCO
3で洗浄し、次いでMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、5.4gの粗エノールアセテートを得た。120〜140℃における0.7mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、エノールアセテート4.16gを得た。溶離液としてシクロヘキサン、次いで1:99の酢酸エチル:シクロヘキサンを用いたカートリッジ(150g)のクロマトグラフィにより、純粋なエノールアセテート4.25g、収率=38%(エキソ:エンド=6:1)を得た;または、
− 120〜140℃における0.46mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留により精製した。それにより、クロロエノールアセテート(I'')およびエノールアセテート(I)の混合物(17:54の比率)が得られた。溶離液としてシクロヘキサン、次いで98:2のシクロヘキサン:酢酸エチルを用いたフラッシュクロマトグラフィカートリッジ80gに再精製して、所望のエノールアセテート0.65g(エキソ:エンド=6:1)およびクロロ化合物0.2gを得た。
【0073】
(E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパ−1−エナ−1−イルアセテート:
【0074】
(E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−クロロ−1,7−ジメチルビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−7−イル)プロパ−1−エナ−1−イルアセテート:
【0075】
・ 手順2:EtAlCl
2の使用
アリリデンジアセテート(15.8g、100mmol、2当量)をジクロロメタン(50ml)に溶解させ、次いで氷浴において2℃に冷却した。EtAlCl
2(ヘキサン中における1.0M、50ml、50mmol)を、15分かけてゆっくりと滴加した。次いでサンテン(6.1g、50mmol)をゆっくりと滴加し、氷浴中の当該混合物を2時間かけてゆっくりと25℃まで温めた。3℃に冷却し、次いで触媒のさらなる部分(25ml、1.0M、25mmol)をゆっくりと滴加した。周囲温度で6時間後、当該反応混合物を、シクロヘキサン(100ml)、酢酸エチル(100ml)、および酢酸カリウム(20%水溶液、200ml)の混合物に注ぎ入れ、全てを一晩撹拌した。次いで媒体を酢酸エチルで抽出し、収集した有機相をNH
4Cl、次いでNaHCO
3で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗エノールアセテートを得た。酢酸カリウム(8.0g)、続いて無水酢酸(10g)を加え、当該懸濁液を還流下において45分間加熱し、次いで冷却した。酢酸エチルに注ぎ入れ、次いでNaHCO
3で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去した。トルエンによって無水酢酸を共沸除去して、粗エノールアセテート15.8gを得た。安定化剤として酢酸カリウム(1.0g)を加え、次いで150℃における0.65mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、所望のエノールアセテート5.3g、収率=48%を得た(NMRにより、上記において調製したものと同一である)(エキソ:エンド=6:1)。
【0076】
・ 手順3:ZnCl
2の使用(粉末Znおよびトリメチルシリルクロリドによるインサイチューでの生成)
Zn粉末(65mg、1mmol)を、トリメチルシリルクロリド(1.03g、9.5mmol)の撹拌された溶液に加え、30分間撹拌し、次いでアリリデンジアセテート(6.3g、40mmol)を加え、当該懸濁液をさらに15分間撹拌した。サンテン(2.4g、20mmol)を30分かけてゆっくりと滴加した。周囲温度で3時間撹拌した後、反応媒体を酢酸エチルで希釈し、次いでNaHCO
3を加え、全てを一晩撹拌した。当該反応媒体を酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、8.57gの粗油を得た。
【0077】
80〜100℃における0.55mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、軽質留分2.8gおよび残留物3.62gを得た。当該残留物を、溶離液としてシクロヘキサン、次いで2:98の酢酸エチル:シクロヘキサンを用いたクロマトグラフィ(カートリッジ120g)によってさらに精製することにより、上記において調製したものと同一のエノールアセテート1.21g、収率=27%を得た(エキソ:エンド=4:1異性体)。
【0078】
・ 手順4:ZnI
2の使用
ZnI
2(320mg、1mmol)を、サンテン(6.1g、50mmol)およびアリリデンジアセテート(15.8g、100mmol)の撹拌された溶液に加え、当該混合物を周囲温度で撹拌した。トリメチルシリルクロリド(4.9g、45mmol)を1時間かけてゆっくりと滴加した。周囲温度で3時間撹拌した後、当該媒体を酢酸エチルで希釈し、次いでNaHCO
3に注ぎ入れ、10分間激しく撹拌し、次いで酢酸エチルで抽出し、収集した有機相を塩水で洗浄し、次いでMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗エノールアセテートを得た。当該粗エノールアセテートに酢酸カリウム(2.0g)を加えた後、80℃における1.0mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留によって精製して、軽質留分を取り除き、次いで残留物を175℃、1.2mbarにおいて蒸溜して、第一留分を得て、これを、シクロヘキサン、次いで98:2のシクロヘキサン:酢酸エチルを用いたクロマトグラフィカートリッジ200gにより精製して、所望のエノールアセテート3.5g、収率=32%(エキソ:エンド=4:1異性体)を得た。
【0079】
・ 手順5:ZnBr
2の使用
ZnBr
2(1.13g、5mmol、10mol%)を、周囲温度において、アリリデンジアセテート(11.9g、75mmol)に加え、当該懸濁液をさらに15分間激しく撹拌して、懸濁液を得た。サンテン(6.0g、50mmol)を、周囲温度において、90分かけてシリンジポンプにより加えた。当該反応物を、周囲温度において24時間撹拌した。当該反応媒体を酢酸エチルで希釈し、NaHCO
3を加え、周囲温度において一晩撹拌した。酢酸エチルで抽出し、NaHCO
3で洗浄し、次いでMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗エノールアセテートを得た。当該粗エノールアセテートに酢酸カリウム(2.0g)を加えた後、80℃における0.09mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留によって精製して、軽質留分を取り除き、次いで残留物を120〜190℃で蒸溜して第一留分を得て、これを、125℃〜140℃における0.09mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留によって再蒸留することによって、所望のエノールアセテート2g、収率=18%(エキソ:エンド異性体の4:1混合物)を得た。
【0080】
・ 手順6:他の触媒
基本方法
Lewis酸(5〜10mol%)を、0℃に冷却されたジクロロメタン(1mL)中におけるサンテン(122mg、1mmol)およびアリリデンジアセテート(180mg、1.1mmol)の撹拌された混合物に加えた。0℃で30分後、当該溶液を周囲温度に温め、周囲温度においてさらに2〜4時間撹拌した。GCにより転化率を分析した。
【0081】
【表1】
【0082】
実施例2
他の(E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパ−1−エナ−1−イルカルボキシレートの調製:
基本手順:ZnI
2(10mol%)を、周囲温度において、好適なアリリデンジエステル(20〜200mmol、2当量)に加えた。当該懸濁液を周囲温度において30分間撹拌した後、サンテン(10〜100mmol、1当量)を、15分かけてゆっくりと滴加し、次いで当該溶液を、周囲温度においてさらに20〜40時間撹拌し、次いで酢酸エチルで希釈し、飽和NaHCO
3溶液に注ぎ入れた。当該媒体を酢酸エチルで抽出し、収集した有機相をNaSO
3(15%、100ml)で洗浄し、次いで水、次いでMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去した。当該残留物を、バルブ・ツー・バルブ蒸留または分別蒸留によってさらに精製して、エキソおよびエンド異性体の混合物として純粋なエノールエステルを得た。必要であれば、シリカゲル(生成物の質量に対して20:1のシリカ、Analogix Cartridge)において、溶離液としてシクロヘキサン、次いで98:2のシクロヘキサン:酢酸エチル、次いで96:4のシクロヘキサン:酢酸エチルを用いて、クロマトグラフィを実施することにより、エキソおよびエンド異性体の混合物として純粋なエノールエステルを得た。
【0083】
・ (E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパ−1−エナ−1−イルプロピオネート:
95℃における0.45mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、軽質留分および残留物を得た。当該残留物を、溶離液としてシクロヘキサン、次いで2:98の酢酸エチル:シクロヘキサンを用いたクロマトグラフィ(カートリッジ80g)によってさらに精製することにより、純粋なエノールプロピオネート0.94g、収率=40%(エキソ:エンド異性体の4:1混合物)を得た。
【0084】
【0085】
・ (E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパ−1−エナ−1−イルイソブチレート:
105℃における0.45mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、軽質留分および残留物を得た。当該残留物を、溶離液として2:98の酢酸エチル:シクロヘキサンを用いたクロマトグラフィ(カートリッジ80g)によってさらに精製することにより、所望のエノールイソブチレート1.15g、収率=46%(エキソ:エンド異性体の4:1混合物)を得た。
【0086】
【0087】
・ (E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパ−1−エナ−1−イルピバレート:
周囲温度で24時間後、当該混合物を、45℃でさらに90分間加熱し、次いで60℃でさらに60分間加熱した。ZnI
2(160mg、0.5mmol)のさらなる部分を加え、続けて、60℃でさらに30分加熱した後、通常の後処理を行った。110℃における0.45mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留により、軽質留分および残留物を得た。当該残留物を、溶離液としてシクロヘキサン、次いで1:99のEtOAc:シクロヘキサンを用いたクロマトグラフィ(カートリッジ80g)によってさらに精製することにより、所望のエノールピバレート1.0g、収率=38%(エキソ:エンド異性体の4:1混合物)を得た。
【0088】
【0089】
・ 触媒としてEtAlCl
2を用いた、(E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパ−1−エナ−1−イルイソブチレート:
二塩化エチルアルミニウム(9.0ml、ヘキサン中での1.0M、9mmol)を、0℃に冷却したサンテン(1.22g、10mmol)およびアリリデンジイソブチレート(2.68g、25mmol)の撹拌された溶液にゆっくりと滴加した。当該反応混合物を0℃でさらに2時間撹拌し、次いで、一晩かけて周囲温度に温めた。次いで、当該混合物を飽和NaHCO
3溶液に注ぎ入れ、次いでジエチルエーテルで2回抽出し、収集した有機相を塩水で洗浄し、次いで無水硫酸ナトリウムで乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、エノールイソブチレートおよびクロロエノールイソブチレートの混合物(エノールエステル:クロロ=35:24)を得た。180℃における0.1mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、所望のエノールイソブチレートおよび再構成されたクロロ化合物の混合物1.22g(比率=66:26、エキソ:エンド=6:1)、収率=50%を得た。当該エノールイソブチレートは、前に調製したものと分光学的に同一であった。
【0090】
・ 触媒としてZnI
2を使用した、(E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパ−1−エナ−1−イル−ベンゾエート:
ZnI
2(10mol%、32mg、0.1mmol)を、周囲温度において、CH
2Cl
2(1mL)中におけるプロパ−2−エン−1,1−ジイルジベンゾエート(J.Am.Chem.Soc.,2010,132,1760−1761を参照のこと)(290mg、1mmol)およびサンテン(130mg、1mmol)の撹拌された溶液に一度に加えた。周囲温度で一晩撹拌を続けた。酢酸エチルおよびNaHCO
3で希釈し、酢酸エチルで抽出し、有機相をMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗エノールベンゾエート450mgを得た。溶離液としてシクロヘキサン、次いで2:98の酢酸エチル:シクロヘキサンを用いたカートリッジ(シリカ、40g)のクロマトグラフィによってさらに精製することにより、所望のエノールベンゾエート110mg、39%(エキソ:エンド=3:1)を得た。
【0091】
【0092】
実施例3
式(II)のシリル誘導体からの(E)−3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパ−1−エナ−1−イルアセテートの調製
式(II)のシリル誘導体の調製
・ ジメトキシ(メチル)(((1SR,4RS)−3−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプタ−2−エナ−2−イル)メチル)シラン
トリエチルアルミニウム(ヘキサン中での1.0M、2.5mL、2.5mmol)を、0℃に冷却した新たに脱ガス処理したトルエン(80mL)中におけるNi(acac)
2(真空において120℃で3時間乾燥させたもの、130mg、0.4mmol、5mol%)およびサンタジエン(1.2g、10mmol)の懸濁液に、ゆっくりと滴加した。15分後、ジメトキシメチルシラン(1.2mL、10mmol)をゆっくりと滴加し、次いで当該溶液を周囲温度までゆっくりと温め、さらに2時間撹拌した。当該反応混合物を、飽和塩化アンモニウム溶液に注ぎ入れ、エーテルで抽出し、次いで、収集した有機相を塩水で洗浄し、Na
2SO
4で乾燥させ、次いでろ過し、真空において溶媒を除去して、粗アリルシラン1.5gを得て、これを、75℃における0.08mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製して、所望のアリルシラン1.2g、53%を得た。
【0093】
【0094】
カップリング:
【化15】
【0095】
ZnBr
2(10mol%、30mg、0.13mmol)を、CH
2Cl
2(1mL)中における上記シラン(225mg、1mmol)およびアリリデンジアセテート(160mg、1mmol)の撹拌された溶液に加え、当該懸濁液を周囲温度で15時間撹拌し、次いでNaHCO
3に注ぎ入れ、酢酸エチルで抽出し、塩水で洗浄し、MgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗エノールアセテート243mgを得た。(エキソ:エンド)は前に調製したもの(GCにより26%の出発ジアセテートを含有する)と同一であった。
【0096】
実施例4
3−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)プロパナール(化合物(IV))の合成:
・ 手順1:4−ジメチルアミノピリジンによる加水分解
エノールアセテート(実施例1の手順4において得られるもの、11.1g、50mmol)をメタノール(50ml)に溶解させ、4−ジメチルアミノピリジン(915mg、7.5mmol、15mol%)を加え、次いで当該溶液をアルゴンバブリングによって30分間脱ガス処理し、次いで当該溶液を還流下において18時間加熱した。反応媒体をシクロヘキサンで希釈し、NH
4Clで洗浄し、水相をシクロヘキサンで再抽出し、水で洗浄し、次いでMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗アルデヒドを得た。バルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、異性体エキソ:エンド=75:18の混合物として所望のアルデヒド7.0g、収率=78%を得た。
【0097】
【0098】
・ 手順2:ジアザビシクロ[2.2.2]オクタンによる加水分解
ジアザビシクロ[2.2.2]オクタン(20mg、触媒)を、メタノール(0.8g)中における上記エノールアセテート(実施例1の手順4において得られるもの、0.2g、1mmol)の撹拌された溶液に加え、当該混合物を還流下において6時間加熱した。酢酸エチルで希釈し、NH
4CIで洗浄し、水相を酢酸エチルで再抽出し、次いで有機相をMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、アルデヒド(エキソ:エンド=4:1異性体)を得た。上記において調製したものと同一であった。
【0099】
実施例5
(Z)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)ペンタ−2−エナ−1−オール(β−サンタロール)の合成:
エナール(E)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)ペンタ−2−エナール(化合物(V)):
トルエン(25ml)中における上記アルデヒド(IV)(7.0g、39.3mmol)の溶液に、ヘキサメチレンイミンベンゾエートの溶液(1.0M溶液、7.8ml、7.8mmol、0.2当量)を加え、当該懸濁液を85℃に加熱した。次いでプロパナール(4.6g、80mmol)を30分かけて加えた。当該溶液をさらに30分間加熱し、次いで冷却した。次いで、反応媒体をNH
4Clで洗浄し、水相を酢酸エチルで再抽出し、収集した有機相をNaHCO
3で洗浄し、次いでMgSO
4で乾燥させ、ろ過し、真空において溶媒を除去して、粗エナールを得た。100〜150℃における1.0mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、最初に不純物、次いでエナール6.7g、収率=78%(エキソ:エンド=4:1異性体)を得た。
【0100】
【0101】
(1E,3E)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)ペンタ−1,3−ジエナ−1−イルプロピオネート(化合物(VI)):
無水プロピオン酸(7.15g、55mmol)、次いでトリエチルアミン(2.72g、27mmol)およびプロピオン酸カリウム(0.2g、触媒)を、上記エナール(V)(5.87g、27mmol)に加え、当該懸濁液をアルゴンで15分間脱ガス処理し、次いでアルゴン雰囲気下において70℃で42時間加熱した。次いで、当該反応物を冷却し、酢酸エチルで希釈し、NaHCO
3に注ぎ入れ、一晩撹拌した。水相を酢酸エチルで再抽出し、次いで収集した有機相をMgSO
4で乾燥させ、次いでろ過し、真空において溶媒を除去して、粗プロピオネートを得た。溶離液としてシクロヘキサン、次いで1:99の酢酸エチル:シクロヘキサンを用いたクロマトグラフィ(カートリッジ200g)によってさらに精製することにより、所望のエノールプロピオネート5.6g、収率=76%を得た。150℃における0.45mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、ジエノールプロピオネート4.45g(エキソ:エンド=4:1異性体、および(E,E):(E,Z)=4:1)を得た。
【0102】
【0103】
(Z)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)ペンタ−2−エナ−1−イルプロピオネート(化合物(VII)):
新たに蒸留したジエニルプロピオネート(VI)(4.35g、15.8mmol)およびマレイン酸(112mg)を、s/sオートクレーブに入れ、次いで触媒RuCp
*(COD)BF
4(45mg、1mol%)を加えた。アセトン(10ml、超音波およびアルゴンバブリングによって脱ガス処理し、アルゴン下において貯蔵したもの)を最後に加え、当該混合物を密封し、排気し、次いで水素で5回パージした。当該懸濁液を、水素5barの雰囲気下において、60℃で3時間撹拌した。次いで、溶離液として酢酸エチルを用いてシリカのプラグ(5cm)によってろ過し、次いで真空において溶媒を除去して、粗プロピオネート4.5gを得た。溶離液として1:99酢酸エチル:シクロヘキサンを用いたカラムクロマトグラフィ(カートリッジ200g)によってさらに精製することにより、純粋なプロピオネート2.73gおよび混合留分1.23g(未反応のE,Z異性体を含有する)(合計3.96g、90%)を得た。当該純粋な留分(2.73g)を、175℃における6.0×10
-1mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製して、エキソ:エンド=4.1の混合物として純粋な(Z)−プロピオネート2.63g(Z:E選択性>98:2)を得た。
【0104】
【0105】
(Z)−2−メチル−5−((1SR,2RS,4RS)−2−メチル−3−メチレンビシクロ[2.2.1]ヘプタナ−2−イル)ペンタ−2−エナ−1−オール(β−サンタロール):
上記において得られたプロピオネート(2.53g、9mmol)を、メタノール(20ml)に溶解させ、K
2CO
3(1.85g13.4mmol)を加え、当該溶液を3時間撹拌した。当該メタノールの大部分を真空において除去し、次いで残留物をシクロヘキサンおよび水の間で分配させた。当該水相をシクロヘキサンで再抽出し、次いで収集した有機相を水、次いでNaHCO
3で洗浄し、K
2CO
3およびMgSO
4で乾燥させ、次いでろ過した。真空において溶媒を除去して、粗β−サンタロール2.01gを得た。155℃における0.78mbarでのバルブ・ツー・バルブ蒸留によってさらに精製することにより、エピ−β−サンタロールおよびβ−サンタロール(すなわち、エンド:エキソ)1:4の混合物1.85g、92%(Z:E選択性>98:2)を得た。
【0106】