(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
内層(core)および外層(shell)の多層構造からなる粒子状アクリルゴム共重合体30重量%〜60重量%、並びにビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂70重量%〜40重量%を含み、
前記アクリルゴム共重合体の内層は、総単量体に対して、メタクリル酸エステル単量体50重量%〜90重量%、および芳香族ビニル系単量体10重量%〜50重量%を含み、
前記アクリルゴム共重合体の外層は、総単量体に対して、アクリル酸エステル単量体10重量%〜50重量%、およびメタクリル酸エステル単量体50重量%〜90重量%を含むことを特徴とするアクリル系ラミネートフィルム。
【発明を実施するための形態】
【0021】
本発明の利点および特徴、そしてそれらを達成する方法は、添付の図面と一緒に詳しく後述する実施例を参照すると明確になると考える。しかし、本発明は以下で開示する実施例に限定されるものではなく、相違する多様な形態で具現でき、単に本実施例は本発明の開示が完全になるようにし、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する者に発明の範疇を完全に知らせるために提供するものであり、本発明は請求項の範疇によって定義されるだけである。明細書全体に亘り同一参照符号は同一構成要素を指す。
【0022】
以下、添付の図面を参照して本発明の好ましい実施例にかかる耐候性および成形性に優れたアクリル系ラミネートフィルム並びにその製造方法について説明する。
【0023】
本発明にかかるアクリル系ラミネートフィルムは、内層(core)および外層(shell)の多層構造からなる粒子状アクリルゴム共重合体30重量%ないし60重量%、並びにビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂70重量%ないし40重量%含むことができる。
【0024】
このとき、前記アクリル系ラミネートフィルムは、内層(core)および外層(shell)の多層構造を有し、50nmないし150nmの平均直径を有する。特に、前記粒子状アクリルゴム共重合体の外層(shell)は、アクリル系熱可塑性樹脂組成物の単量体組成と同一物質を用いることにより、変形時の白濁や透明度の変化を抑制し、アクリルゴム共重合体の含量を調節して光学物性を阻害せずとも耐衝撃性を向上させることができることを特徴とする。
【0025】
つまり、前記アクリルゴム共重合体の内層は、メタクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、架橋剤および開始剤から選ばれた1種以上を含み、前記アクリルゴム共重合体の外層は、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体、鎖移動剤、開始剤および架橋剤から選ばれた1種以上を含むことができる。
【0026】
このとき、前記アクリルゴム共重合体は、内層が30重量%ないし50重量%で、外層が50重量%ないし70重量%になり得る。
【0027】
このようなアクリルゴム共重合体の内層は、総単量体に対して、メタクリル酸エステル単量体50重量%ないし90重量%、および芳香族ビニル系単量体10重量%ないし50重量%を含むことができる。
【0028】
このとき、前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α−メチルスチレン、ο−エチルスチレン、p−エチルスチレン、ビニルトルエンおよびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上を含むことができる。
【0029】
また、前記架橋剤は、1,2−エタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)
アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレートおよびアリル(メタ)アクリレートから選ばれた1種以上を含むことができる。
【0030】
一方、前記アクリルゴム共重合体の内層は、総単量体100重量部に対して、グラフト剤0.1重量部ないし10重量部をさらに含むことができる。このようなグラフト剤は、アリル(メタ)アクリレートおよびジアリルマレートから選ばれた1種以上を含むことができる。
【0031】
そして、アクリルゴム共重合体の外層は、総単量体に対して、アクリル酸エステル単量体10重量%ないし50重量%、およびメタクリル酸エステル単量体50重量%ないし90重量%を含むことができる。
【0032】
一方、ビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂は、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体、鎖移動剤および開始剤から選ばれた1種以上を含むことができる。
【0033】
このとき、アクリル系熱可塑性樹脂は、総単量体に対して、前記アクリル酸エステル単量体10重量%ないし50重量%、およびメタクリル酸エステル単量体50重量%ないし90重量%を含むことができる。
【0034】
ここで、前記開始剤は、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、3級ブチルハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイドおよびベンゾイルパーオキサイドから選ばれた1種以上を含むことができる。
【0035】
これについては、以下の本発明の実施例にかかるアクリル系ラミネートフィルムの製造方法を通じてより具体的に説明する。
【0036】
図1は、本発明の実施例にかかるアクリル系ラミネートフィルムの製造方法を表した工程順序図である。
【0037】
図1を参照すると、図示されたアクリル系ラミネートフィルムの製造方法は、アクリルゴム共重合体の形成段階(S110)、アクリル系熱可塑性樹脂の形成段階(S120)、混合段階(S130)および成形段階(S140)を含む。
【0038】
アクリルゴム共重合体の形成
アクリルゴム共重合体の形成段階(S110)では、内層(core)および外層(shell)の多層構造からなる粒子状アクリルゴム共重合体を形成する。
【0039】
このとき、粒子状アクリルゴム共重合体は、メタクリル酸エステル単量体、芳香族ビニル系単量体、架橋剤および開始剤を窒素雰囲気の反応器内でイオン交換水と混合した後、乳化重合反応させて内層(core)を形成する過程と、前記窒素雰囲気の反応器内で、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体、鎖移動剤、開始剤および架橋剤を添加して乳化重合反応させ前記内層を被覆する外層(shell)を形成した後、凝集、脱水および乾燥して前記内層および外層の多層構造からなる粒子状アクリルゴム共重合体を形成する過程を含むことができる。
【0040】
このとき、前記アクリルゴム共重合体は、内層が30重量%ないし50重量%で、外層が50重量%ないし70重量%であることが好ましい。前記内層と外層の混合重量比が前記範囲から外れると、耐衝撃性が低下して目的とする衝撃特性を具現するのに困難が伴う場
合がある。
【0041】
また、前記アクリルゴム共重合体の内層は、使用された総単量体に対して、メタクリル酸エステル単量体50重量%ないし90重量%、および芳香族ビニル系単量体10重量%ないし50重量%であることが好ましい。
【0042】
また、前記アクリルゴム共重合体の外層は、使用された総単量体に対して、アクリル酸エステル単量体10重量%ないし50重量%、およびメタクリル酸エステル単量体50重量%ないし90重量%であることが好ましい。このとき、アクリル酸エステル単量体の含量が10重量%未満の場合は、熱可塑性樹脂との相溶性にかかる透明度および物性低下をもたらし得る。逆に、アクリル酸エステル単量体の含量が50重量%を超える場合は重合転換率が低下する問題がある。
【0043】
このとき、前記アクリルゴム共重合体の平均直径は50nmないし150nmであることが好ましい。前記アクリルゴム共重合体の平均直径が50nm未満の場合は、アクリル系ラミネートフィルムの耐衝撃性が急激に低下する問題がある。逆に、アクリルゴム共重合体の平均直径が150nmを超える場合は、表面ヘーズ(Haze)の発生に起因して耐白化性を具現するのに困難が伴う場合がある。
【0044】
一方、アクリルゴム共重合体の内層を形成する過程中、窒素雰囲気下でイオン交換水の温度が50℃ないし70℃に到達したら、乳化剤を投入して十分に撹拌させた後、メタクリル酸エステル系単量体、芳香族ビニル系単量体、メタクリル酸およびアクリル酸から選ばれるいずれか一つ以上の共単量体、架橋剤および開始剤が混合された溶液を反応器に投入して乳化重合反応させる。このとき、耐衝撃性発現のためには、総単量体に対してアクリル単量体の含量は30重量%ないし50重量%であることが好ましい。前記アクリル単量体の含量が前記範囲外である場合は、アクリル系ラミネートフィルムが耐衝撃性を発現することが困難になる。
【0045】
前記乳化剤は、炭素数4個ないし30個のアルカリ性アルキルリン酸塩、ナトリウムドデシルスルフェート、ナトリウムドデシルベンゼンスルフェート、アルキルスルフェート塩等の陰イオン系乳化剤を用いることが好ましい。このとき、乳化剤は、総単量体100重量部に対して0.1重量部ないし5重量部を添加することが好ましい。
【0046】
また、アクリルゴム共重合体の外層を形成する過程中、反応器内で耐応力白化性を発現できるように、メタクリル酸エステル単量体、アクリル酸エステル単量体、鎖移動剤、開始剤および架橋剤を入れて乳化重合反応させ、内層を被覆する外層を形成する。
【0047】
このとき、メタクリル酸エステル単量体とアクリル酸エステル系単量体を反応器に投入するにおいて、アクリル酸エステル系単量体の含量を段階的に減らしながら投入することが好ましい。つまり、総単量体に対して、メタクリル酸エステル単量体50重量%ないし90重量%、およびアクリル酸エステル単量体10重量%ないし50重量%を投入するにおいて少なくとも2段階以上の工程に分けて反応器に投入することが好ましく、工程単純化を考慮すると、2段階に分けて投入することがより好ましい。
【0048】
このとき、アクリル酸エステルの単量体の含量は、段階を経る度に含量を減らすことが良い。これは、外部からアクリル酸エステル系単量体の含量を減らさないと、アクリル系熱可塑性樹脂との混合時に耐応力白化性を発現し難いためである。
【0049】
前記アクリル酸エステル単量体は、炭素数1個ないし15個のエチルアクリレート、n−ブチルアクリレート、t−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等から
選ばれた1種以上の単量体を含むことができる。
【0050】
一方、前記メタクリル酸エステル単量体は、炭素数1ないし15のメタクリル酸エステルであり、具体的にはメチルメタアクリレート、エチルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、I−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、ラウリルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等から選ばれた1種以上の単量体を含むことができる。
【0051】
前記芳香族ビニル系単量体は、スチレン、α−メチルスチレン、ο−エチルスチレン、p−エチルスチレン、ビニルトルエンおよびこれらの誘導体からなる群から選ばれた1種以上を含むことができる。
【0052】
前記架橋剤は、1,2−エタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロパンジオールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,5−ペンタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、アリル(メタ)アクリレート等から選ばれた1種以上を含むことができる。このとき、架橋剤は、総単量体100重量部に対して、0.1重量部ないし10重量部で添加することが好ましい。架橋剤の添加量が、総単量体100重量部に対して0.1重量部未満で添加されると十分な架橋効果を発揮することができない。逆に、架橋剤の添加量が総単量体100重量部に対して10重量部を超える場合はさらなる効果もなく製造費用だけが嵩むという問題がある。
【0053】
一方、前記アクリルゴム共重合体の内層は、グラフト剤を、総単量体100重量部に対して0.1重量部ないし10重量部さらに含むことができる。このとき、グラフト剤は、アリル(メタ)アクリレート、ジアリルマレート等から選ばれる1種以上の単量体を含むことができる。前記グラフト剤の添加量が内層の総単量体100重量部に対して0.1重量部未満の場合は、粘度が増加して重合安定性が低下する問題がある。逆に、グラフト剤の添加量が内層の総単量体100重量部に対して10重量部を超える場合は、引張強度が低下する問題がある。
【0054】
前記開始剤は、硫酸第1鉄、エチレンジアミンテトラアセテートナトリウム、クメンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、アゾビスイソブチロニトリル、3級ブチルハイドロパーオキサイド、パラメタンハイドロパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等から選ばれた1種以上を含むことができる。このとき、前記開始剤は総単量体100重量部に対して10重量部以下で添加することが好ましい。前記開始剤の添加量が総単量体100重量部に対して10重量部を超える場合は経済的でない。
【0055】
また、鎖移動剤は分子量を調節するための目的で添加する。このとき、鎖移動剤は炭素数2ないし18のアルキルメルカプタン、ベンジルメルカプタン、メルカプト酸等から選ぶことができる。
【0056】
イオン交換水は、総単量体100重量部に対して、100重量部ないし500重量部を使用することが好ましい。
【0057】
一方、アクリルゴム共重合体の形成過程中、重合反応が完了したら、凝集剤を用いた凝集
、洗浄および乾燥工程を通じて樹脂組成物と水を分離させて回収する。このとき使用される凝集剤は、有機酸塩水溶液が好ましく、例えば、アセト酸ナトリウム、アセト酸カルシウム、ホルム酸ナトリウム、ホルム酸カルシウム等を使用できる。有機酸塩の使用量は、全体懸濁重合溶液に対して、0.01重量部ないし5重量部で添加することが好ましい。
【0058】
アクリル系熱可塑性樹脂の形成
アクリル系熱可塑性樹脂の形成段階(S120)では、ビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂を形成する。
【0059】
このようなビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂は、イオン交換水に分散剤および緩衝塩を混合した溶液に、アクリル酸エステル単量体、メタクリル酸エステル単量体、鎖移動剤および開始剤を入れて懸濁重合反応させる過程と、前記の懸濁重合反応させた反応物を、洗浄、脱水および乾燥してビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂を形成する過程を含むことができる。
【0060】
このとき、ビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂は、粒子状アクリルゴム共重合体の外層の単量体組成と同一のものを用いることが好ましいため、重複説明は省略する。
【0061】
ビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂と粒子状アクリルゴム共重合体の外層の単量体組成を同様に用いるのは、アクリル系熱可塑性樹脂単量体とアクリルゴム共重合体の外層単量体間の組成が一致しないと、後述するアクリルゴム共重合体とアクリル系熱可塑性樹脂の混合時に相溶性が低下し光学物性および透明性が低下するだけでなく、アクリルゴム共重合体を30重量%以上混合し難いという問題があるためである。
【0062】
一方、分散剤は、アクリル酸、メタクリル酸エステルの共重合体、およびその塩、ポリビニルアルコール等を用いることができる。好ましい使用量は、水溶液内で全体単量体に対して0.1重量%ないし2重量%であり、少量の無機塩を分散補助剤として使用できる。
【0063】
このとき懸濁重合反応は、窒素雰囲気下で、500rpmないし700rpmの撹拌速度で60℃ないし110℃間の温度で十分な時間実施し、反応が完了したら洗浄および乾燥させて耐衝撃性を有するビーズ状態のアクリル系熱可塑性樹脂を収得する。
【0064】
混合
混合段階(S130)では、粒子状アクリルゴム共重合体およびビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂を30ないし60:70ないし40の重量比で混合して樹脂混合物を形成する。
【0065】
このとき、前記アクリルゴム共重合体およびアクリル系熱可塑性樹脂の混合重量部は、耐応力白化性および耐衝撃性において重要な変化要因となり、アクリルゴム共重合体が30重量%ないし60重量%であることが好ましく、アクリル系熱可塑性樹脂は70重量%ないし40重量%であることが好ましい。
【0066】
このとき、前記アクリルゴム共重合体の含量が30重量%未満だと耐衝撃性が弱くなって加工中に割れやすくなり得、耐応力白化性を達成するにおいて困難が伴う場合がある。逆に、アクリルゴム共重合体の含量が60重量%を超える場合は、耐衝撃性は向上するものの透明性と光学物性の改善効果が微々たるものになり得る。
【0067】
一方、前記混合段階(S130)において、樹脂混合物は、充填剤、補強剤、着色剤、滑剤、安定剤、酸化防止剤、耐熱剤、紫外線安定剤等から選ばれた1種以上をさらに含むことができる。特に、耐候性を付与するために紫外線吸収剤を添加することが好ましい。紫外線吸収剤の分子量は300以上が好ましく、400以上がより好ましい。分子量が30
0以上の紫外線吸収剤を使用する場合、射出成形金型内で真空成形をする際の紫外線吸収剤の揮発による金型汚染等を防止することができる。紫外線吸収剤の種類は特に限定されはしないが、ベンゾトリアゾール系またはトリアジン系を用いることが好ましい。
【0068】
成形
成形段階(S140)では、樹脂混合物を溶融混錬させて成形した後、乾燥してアクリル系ラミネートフィルムを形成する。
【0069】
このとき、成形方法としては、溶融柔軟法や、T−ダイ(die)法、カレンダリング法等を用いることができ、このうちT−ダイ(die)法を用いることがより好ましい。
【0070】
前記アクリル系ラミネートフィルムの厚さは特に限定されはしないが、300μm以下、より好ましくは50μmないし300μmになり得る。T−ダイ法を用いてアクリル系ラミネートフィルムを成形する場合、一般的に100μm以上のフィルムではT−ダイから出たフィルムを金属型鏡面タッチロールを用いて加工すると表面粗さ(roughness)を減らすことができ、ヘーズ(Haze)が低いフィルムを具現することができる。
【0071】
しかし、100μm以下のフィルムでは鏡面タッチロールの活用が難しく、フィルムを延伸して厚さ調節をする場合、表面粗さ(roughness)によってヘーズが高くなり得る。これを防止するために、キャリアタイプの鏡面ロールを採用することでこれを解決することができ、又はプレスロールやスチールベルトタイプのロールを採用してもヘーズが最小化されたフィルムを作ることができる。
【0072】
前記アクリル系ゴム共重合体およびアクリル系熱可塑性樹脂を混合した樹脂混合物は、射出および押出等の方法によって成形品に製造でき、具体的には、耐応力白化性と耐衝撃性を有し、透明性を害さないアクリル系ラミネートフィルムを製造することができる。
【0073】
一方、
図2は双ロール方式の連続鋳造装置を表した模式図であり、これを参照してT−ダイ法について簡単に説明する。
【0074】
図2を参照すると、図示した双ロール方式の連続鋳造装置1は、2つのロール(roll)のうち、片方のロール(roll)は固定ロール10であり、一定の位置に固定されている。一方、もう一つのロール(roll)は移動ロール20であって、移動ロール20は移動ロール駆動ユニット30によって固定ロール10方向に位置運動して、前記固定ロール10と近接したり、或いは離れるようになる。
【0075】
固定ロール10と移動ロール20は、互いに逆方向に回転運動することによって、成形されるフィルムFを圧着した状態で下側方向に排出させる。図面に示してはいないが、成形されるフィルムFは、左側または右側方向に排出することもできる。
【0076】
固定ロール10と移動ロール20間の下側方向には、成形されるフィルムFを圧着するくさび形状のサポートブロック(support block)40を装着することができる。このとき、移動ロール20側に装着されたサポートブロック40には、成形されるフィルムFの厚さ調節のためにサポートブロック駆動ユニット45を装着することができる。移動ロール駆動ユニット30およびサポートブロック駆動ユニット45は、固定ロール10および移動ロール20の片側に装着された制御部50に対してその動作を制御することができる。
【0077】
サポートブロック駆動ユニット45は、油圧シリンダ、モーター(motor)等によって駆動することができる。また、成形されるフィルムFは、両側のサポートブロック40
の間を通過した後、両側に配列される複数のサポートロール(support roll)60によって支持される。
【0078】
このとき、サポートブロック駆動ユニット45によってサポートブロック40が成形されるフィルムFを圧迫する圧力は、油圧シリンダを用いる場合は圧力を予め設定しておき、モーター(motor)を用いる場合は電流値を予め設定するか、或いはロードセル(road cell)等によって圧力を計測し、フィードバック(feedback)制御することにより、サポートブロック40の位置を制御することができる。
【0079】
前述のT−ダイ法を用いた双ロール方式の連続鋳造装置を用いてアクリル系ラミネートフィルムを形成すると、表面粗さ(roughness)を減らすことができ、ヘーズ(Haze)が低いフィルムを具現することができる。
【0080】
実施例
以下、本発明の好ましい実施例を通じて本発明の構成および作用をより詳しく説明する。但し、これは本発明の好ましい例示として提示するものであり、如何なる意味でもこれによって本発明が制限されると解釈してはならない。
【0081】
ここに記載していない内容は、本技術分野における熟練者であれば十分に技術的に類推できるもののため、その説明は省略する。
【0082】
1.試料の製造
実施例1
先ず、アクリルゴム共重合体を製造するために、イオン交換水250重量部、硫酸第1鉄0.002重量部、EDTA・2Na塩0.008重量部、ホルムアルデヒドスルホキシル酸ナトリウム0.2重量部、およびナトリウムドデシルスルフェート2重量部を撹拌器付き反応器に注入し、窒素置換後、65℃まで昇温した。昇温後、ブチルメタアクリレート33重量部、スチレン7重量部、アリルメタクリレート1重量部、クメンヒドロペルオキシド0.05重量部からなる混合溶液中1/10を30分間滴加した後、残りの9/10を90分間滴加し、1時間撹拌して乳化重合反応させた。このとき収得したガラス状重合体の平均直径は40nmだった。
【0083】
次に、前記の収得した重合体に、ナトリウムドデシルスルフェート0.5重量部、ブチルアクリレート6重量部、メチルメタアクリレート24重量部、アリルメタクリレート0.3重量部、ドデシルメルカプタン0.04重量部、クメンヒドロペルオキシド0.05重量部の混合溶液を1時間に亘り滴加した後、ブチルアクリレート3重量部、メチルメタアクリレート27重量部、ドデシルメルカプタン0.09重量部、およびクメンヒドロペルオキシド0.05重量部からなる混合溶液を1時間に亘り滴加し、1時間重合反応させた。最終重合体の平均直径は60nmだった。前記の最終重合体であるアクリルゴム共重合体を凝集するために、固形分粒子に対して0.02重量部のアセト酸カルシウムを投入して70℃で凝集し、得られた粒子パウダーを蒸留水で脱水した後、80℃で乾燥した。
【0084】
次に、アクリル系熱可塑性樹脂を製造するために、メチルメタクリレート85重量%およびブチルアクリレート15重量%からなる単量体100重量部に対して、ドデシルメルカプタン0.3重量部およびアゾビスイソブチロニトリル0.15重量部を添加して撹拌させ、これをイオン交換水250重量部に、分散剤としてナトリウムが置換された70%のメタクリル酸と30%のメチルメタクリレート共重合体を0.12g、緩衝塩としては、NaH2PO4・2H2Oを1.2g、Na2HPO4・12H2Oを1.8g投入して溶解した溶液に混合させた後、混合物を600rpmで撹拌しながら1次重合反応として80℃で90分間実施し、重合ピークが発生すると同時に110℃に昇温して30分間2
次重合反応させた後、30℃に冷却した。前記反応で得られたビーズ状重合体は、蒸留水で3回洗浄と脱水を繰り返し、ビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂はオーブンで乾燥した。
【0085】
次に、前記アクリルゴム共重合体粒子パウダー40重量%とビーズ状アクリル系熱可塑性樹脂60重量%を混合した後、混合物100重量部に対して紫外線吸収剤としてチヌビン234を1.5重量部混合し、T−ダイ(die)押出器を用いて260℃で押出成形して、75μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0086】
実施例2
アクリルゴム共重合体の内層(core)を50重量%で含有することを除いては、実施例1と同様の方法で80μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0087】
実施例3
アクリルゴム共重合体の外層(shell)の組成をブチルアクリレート4.5重量部およびメチルメタアクリレート25.5重量部で重合し、アクリル系熱可塑性樹脂をメチルメタクリレート87.5重量部およびブチルアクリレート12.5重量部で重合して混合したことを除いては、実施例1と同様の方法で77μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0088】
実施例4
平均直径が100nmのアクリルゴム共重合体を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で76μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0089】
実施例5
平均直径が150nmのアクリルゴム共重合体を用い、開始剤としてアゾビスイソブチロニトリルを用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で85μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0090】
実施例6
アクリルゴム共重合体60重量%およびアクリル系熱可塑性樹脂40重量%を混合したことを除いては、実施例1と同様の方法で79μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0091】
実施例7
T−ダイ押出をするが、鏡面タッチロールを通じて成形したことを除いては、実施例1と同様の方法で150μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0092】
実施例8
T−ダイ押出をするが、キャリアタイプロールを通じて成形したことを除いては、実施例1と同様の方法で55μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0093】
比較例1
アクリル系熱可塑性樹脂重合時にメチルメタクリレート95重量%およびブチルアクリレート5重量%で重合したことを除いては、実施例1と同様の方法で80μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0094】
比較例2
アクリル系熱可塑性樹脂重合時にメチルメタクリレート85重量%およびメチルアクリレート15重量%で重合したことを除いては、実施例1と同様の方法で70μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0095】
比較例3
アクリルゴム共重合体製造時に、外層(shell)に該当する部分は2段階に分けて重合せず、ブチルアクリレート6重量%およびメチルメタアクリレート54重量%で投入して重合したことを除いては、実施例1と同様の方法で73μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0096】
比較例4
アクリルゴム共重合体20重量%およびアクリル系熱可塑性樹脂80重量%を混合したことを除いては、実施例1と同様の方法で75μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0097】
比較例5
平均直径が250nmのアクリルゴム共重合体を用いたことを除いては、実施例1と同様の方法で73μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0098】
比較例6
T−ダイ押出をするが、鏡面タッチロールを使用せず延伸して成形したことを除いては、実施例1と同様の方法で60μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0099】
比較例7
T−ダイ押出をするが、鏡面タッチロールを用いて片方の鏡面だけを圧縮して成形したことを除いては、実施例1と同様の方法で100μmのアクリル系ラミネートフィルムを製造した。
【0100】
2.物性の評価
表1は、実施例1ないし6にかかる試料に対する物性の評価結果を表したものであり、表2は、比較例1ないし5にかかる試料に対する物性の評価結果を表したものである。また、表3は、実施例7ないし8および比較例6ないし7にかかる試料に対する物性の評価結果を表したものである。
1)グラフト率(G):アクリルゴム共重合体製造段階で製造されたパウダーをアセトン(Acetone)に溶解させた後、不溶分と可溶分に分け、不溶分をグラフト分にして求めた。
G=(不溶分の重量−ゴム状重合体の重量)/ゴム状重合体の重量×100
2)透明度(%)および濁度(Haze):ASTM D1003方法によってHazemeterで測定
3)黄色指数(YI):ASTM D1925方法
4)伸率(%):Zwick/Roell社のUTM(Universal testing machine,model Z010)を使用して室温で測定した。試片は幅10mmに製作して引張速度50mm/minで測定した。
5)平均直径(nm):ASTM D1705およびASTM D2921による光散乱法で測定
6)鉛筆硬度:ASTM D3363によって1kg荷重で測定
7)応力白化:フィルムを常温で180度折り曲げ、白化状態を観察
○:白化が認められない。
△:白化が少し認められる。
×:白化が著しい。
8)厚さ平滑度:フィルム全幅の厚さを厚さ測定器で測定
○:全幅の厚さ偏差が平均±1%
△:全幅の厚さ偏差が平均±3%
×:全幅の厚さ偏差が平均3%超過
【0103】
表1および表2を参照すると、実施例1ないし6にかかる試料は、比較例1ないし5にかかる試料と比べると、応力白化性がなく、フィルムを加工した後の透明性を害さず、濁度、耐衝撃性および加工性に優れるということが分かる。
【0105】
表3を参照すると、実施例7にかかる試料は、フィルム厚さが150μmであるにもかかわらず、全光透過率95%、濁度0.5を有し、フィルム厚さ平滑度に優れることが分かる。
【0106】
また、フィルム厚さが55μmである実施例8にかかる試料もやはり、全光透過率95%、濁度0.5を有し、フィルム厚さ平滑度に優れることが分かる。
【0107】
一方、フィルム厚さが60μmである比較例6にかかる試料は、全光透過率が93%で、濁度が4.1であり、実施例5ないし6に比べて相当高い数値であるだけでなく、フィルム厚さ平滑度が実施例5ないし6に比べて良くないことが分かる。
【0108】
また、フィルム厚さが100μmである比較例7にかかる試料は、全光透過率が92%に過ぎず、濁度が6.0と悪く、フィルム厚さ平滑度が良くないことが分かる。
【0109】
以上では、本発明の実施例を中心に説明したが、本発明が属する技術分野で通常の知識を有する技術者の水準で多様な変更や変形を加えることができる。このような変更や変形は、本発明が提供する技術思想の範囲から外れない限り、本発明に属すると言える。よって、本発明の権利範囲は以下に記載する請求範囲によって判断しなければならない。