【実施例】
【0029】
以下、本発明の実施例を示してさらに詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
実施例1及び比較例1,2で使用した反応装置は、
図1の概略図に示す装置であり、実施例2〜4で使用した反応装置は、
図2の概略図に示す装置である。
なお、以下の実施例1〜3では、1mMの4−クロロフェノール(有機塩素化合物:以下、クロロフェノールと表記する)を含有する水溶液を試料として用いた。
【0030】
[実施例1]
[触媒]
キシダ化学(株)より購入した酸化銅(I)および酸化銅(II)をそのまま触媒として使用した。
【0031】
[有機ハロゲン化合物の分解]
有機ハロゲン化合物のモデル物質としてクロロフェノールを用い、フェントン法を利用した水熱酸化法による分解処理を行った。
1mMのクロロフェノール水溶液に、5.6 mg/Lの酸化銅(I)又は3.1 mg/Lの酸化銅(II)と酸化剤として10mMの過酸化水素を加えた試料を調製し、HPLCポンプとセパレーターを用いて圧力30 MPa、流速0.5cm
3/minでハステロイ製反応器に連続注入した。
反応温度を室温〜200℃の間で変化させた。
【0032】
なお、反応器内容積は約1cm
3なので、反応時間はおよそ2minである。
反応器を通過した試料は冷却系とフィルターを経て、圧力調整弁の出口から回収された。反応後の試料中のクロロフェノール濃度を測定するため、ニトロベンゼンで目的物質を抽出した後、ガスクロマトグラフィー(FID検出器)で定性定量分析を行った。
各反応温度(20〜200℃)におけるクロロフェノールの分解率を表1に示す。
反応温度200℃では酸化銅(I)(Cu
2O)と酸化銅(II)(CuO)のどちらを用いてもほぼ100%の分解率を達成した。とくに酸化銅(I)(Cu
2O)は活性が高く、反応温度が133℃であっても、166℃や200℃の場合と同様に、ほぼ100%の分解率を達成することができた。
【0033】
[比較例1,2]
比較のために、触媒を使用せず酸化剤も加えなかった比較例1(無触媒・無酸化剤)と酸化剤を添加しているが触媒を使用しなかった比較例2(H
2O
2)の結果も合わせて表1に示す。
【0034】
上記の実験結果から明らかなように、本発明では、触媒に酸化銅を用いることにより、無触媒・無酸化剤の比較例1、無触媒の比較例2に比べ、酸化
銅(I)、酸化銅(II)のいずれの場合においても優れた分解能力を示している。
特に、触媒に酸化銅(I)(Cu
2O)を用いた場合は、200℃よりもはるかに低い反応温度133℃、反応時間2minで、ほぼ100%の分解率を達成することができ、反応温度を大幅に下げることが可能なった。
また、本発明では、酸化銅そのものを触媒として用いるので、従来技術に比べて触媒調整法が格段に簡素化されると同時に、長時間処理による触媒の劣化を防ぐことも可能になった。
これらのことにより、プロセスのさらなる省エネルギー化、反応装置のさらなる簡素化と長寿命化を実現することができる。
【0035】
[実施例2]
図2に示す触媒充填床流通式反応装置を用いクロロフェノールの分解処理を行った。本装置は,触媒を充填した管型反応器に試料溶液を連続注入し,溶液中の汚染物質を分解処理する構造になっている。反応器はチタン製チューブ(外径6.0mm,内径4.0mm,長さ25cm)で,内部に触媒である酸化銅(I)粉末4 gを充填し,両端にインラインフィルター(SS−4FWS−05, Swagelok Co.)を装着した。
なお、触媒が反応器から漏れ出すことを防止するため,触媒を650℃で軽く焼結した。
また、温度を一定に保つため反応器全体を塩浴装置(東洋高圧(株),TSV−3)内に浸漬した。
【0036】
試料溶液はクロロフェノール(1 mM),過酸化水素(14 mM)を脱イオン蒸留水に溶解したものであり,これをHPLCポンプを用いて反応器へ連続注入した。反応後の試料溶液は冷却系と背圧弁を通って反応系外へ排出される。反応後の試料中のクロロフェノールをニトロベンゼンで抽出し、実施例1と同様の方法で定性定量分析を行った。また、試料中の全有機炭素量(TOC)をTOC測定装置(TOC−V CSH,島津製作所)を用いて測定した。TOCの分解率を(TOC
0−TOC)/ TOC
0 ×100から算出した。
【0037】
TOC
0は未反応試料中のTOC、TOCは反応後試料中の残存TOCである。
反応温度200℃,圧力10MPa,流量1.0 cm
3/minの条件で,試料溶液を22時間連続処理した場合の、クロロフェノール分解率とTOC分解率の経時変化を表2に示す。クロロフェノール分解率はほぼ100%で一定であり、TOC分解率も85〜90%前後を推移している。22時間の連続処理後も酸化銅(I)は高い活性を維持しており,チタン製反応器にも異常はまったく見られなかった。以上の結果より、本手法が工業的応用において非常に有用であることが確認された。
【0038】
[実施例3]
反応器内の圧力の最適条件を調査するため,反応温度200℃,圧力1.6 MPa,流量1.0 cm
3/minおよび,反応温度170℃、圧力0.
9 MPa,流量1.0 cm
3/minの条件でクロロフェノールの分解処理を行った。これらの反応条件は水の平衡蒸気圧曲線近傍の高圧側に位置している。
なお,用いた装置や分析方法は実施例2と同じである。
表3と表4に各反応条件におけるクロロフェノール分解率とTOC分解率の経時変化を示す。反応温度200℃,圧力1.6 MPaではクロロフェノール分解率は約96%であり、TOC分解率も80%前後を推移している。反応条件を170℃、0.9 MPaまで下げた場合でもクロロフェノール分解率はほぼ100%に達した。
また、TOC分解率は処理開始直後で75%とやや低いものの、処理時間が長くなるにつれて上昇し、最終的には83%に達した。以上の結果は、反応器内圧力を反応温度における平衡蒸気圧以上に設定すれば十分であることを示している。
【0039】
【表1】
表1 各反応温度、条件におけるクロロフェノールの分解率
【0040】
【表2】
表2 クロロフェノールの分解率とTOC分解率の経時変化
【0041】
【表3】
表3 クロロフェノールの分解率とTOC分解率の経時変化
(反応温度200℃,圧力1.6 MPa)
【0042】
【表4】
表4 クロロフェノールの分解率とTOC分解率の経時変化
(反応温度170℃,圧力0.9 MPa)
【0043】
[実施例4]
本発明が多様な有機ハロゲン化合物の処理に適用できることを実証するため、トリクロロエチレン(3mM)、過酸化水素(10mM)を脱イオン蒸留水に溶解した試料溶液の分解処理を行った。用いた装置や分析方法は実施例2と同じである。
ただし、試料溶液からトリクロロエチレンが揮発するのを防ぐため、試料溶液および反応後に回収した溶液を氷冷しながら実験を行った。反応条件は、反応温度200℃、圧力10MPa、流量1.0cm
3/minである。
トリクロロエチレンの分解率は90〜98%を推移し、処理時間が長くなるにつれて上昇する傾向を示した。この結果より、本発明によってトリクロロエチレンの分解処理が可能であることが示された。