特許第5901794号(P5901794)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5901794眼内圧の連続的測定を行うための方法および装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901794
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】眼内圧の連続的測定を行うための方法および装置
(51)【国際特許分類】
   A61B 3/16 20060101AFI20160331BHJP
   G06Q 50/22 20120101ALI20160331BHJP
【FI】
   A61B3/16
   G06Q50/22 104
【請求項の数】10
【全頁数】11
(21)【出願番号】特願2014-552619(P2014-552619)
(86)(22)【出願日】2013年1月17日
(65)【公表番号】特表2015-505481(P2015-505481A)
(43)【公表日】2015年2月23日
(86)【国際出願番号】EP2013050797
(87)【国際公開番号】WO2013107799
(87)【国際公開日】20130725
【審査請求日】2014年9月11日
(31)【優先権主張番号】102012100441.2
(32)【優先日】2012年1月19日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】513045149
【氏名又は名称】インプランダータ オフタルミック プロドゥクツ ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】110001298
【氏名又は名称】特許業務法人森本国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】オスターマイアー、マックス
(72)【発明者】
【氏名】マイアー、シュテファン
【審査官】 安田 明央
(56)【参考文献】
【文献】 特表2004−528146(JP,A)
【文献】 特開2008−178635(JP,A)
【文献】 独国特許出願公開第102004056757(DE,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2002/0193675(US,A1)
【文献】 特開平06−114006(JP,A)
【文献】 特開2009−006147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 3/00−3/16
G06Q 50/22
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
患者の眼内圧の時間的推移の取得および観察を行うための方法であって、以下の工程を含み、また、以下の工程における眼内圧データの測定を、患者に一時的に植え込まれるセンサを用いて眼内圧推移の予想継時パターンの周波数の少なくとも2倍の頻度で行うことを特徴とする方法:
a)日常生活における患者の眼内圧データを、投薬を行わずに少なくとも24時間にわたって連続的に測定および保存し、その後、
b)投薬を行いながら患者の眼内圧データを少なくとも24時間にわたって連続的に測定および保存し、ここで、
c)投薬時刻、投薬期間、投薬量、有効成分、一日のうちに患者に起きた出来事、を記録し、そして
d)保存されたデータを分析ユニットへ転送し、データの分析を行う。
【請求項2】
前記工程b)において、第1の時刻に第1の薬剤を、第2の時刻に第2の薬剤を、そして必要に応じて更なる時刻に更なる薬剤を投与して、前記の各時刻から少なくとも24時間にわたって患者の眼内圧データの連続的な測定および保存を行い、このとき相前後する2つの時刻間の時間的間隔は、始めに投与した薬剤の作用期間が少なくとも終了間際となるように選ばれること
を特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項3】
2つ以上の有効成分が一度に投与される工程を含むことを特徴とする請求項1または請求項2に記載の方法。
【請求項4】
患者に情報および/または治療指示が伝達されることを特徴とする請求項1、請求項2、請求項3のいずれか1項に記載の方法。
【請求項5】
前記工程d)において、以下の要因:患者の目標眼圧、患者の個人的嗜好、有効成分の許容量、最適有効成分、最適投薬量および最適投薬時刻、
を考慮して分析が行われること
を特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1項に記載の方法。
【請求項6】
前記工程d)において、統計的パラメータが出力されることを特徴とする請求項1に記載の方法。
【請求項7】
この方法の最初の実施に対して時間的間隔を置いて有効性の検査を行い、必要に応じて繰り返し行うこと
を特徴とする請求項1ないし6のいずれか1項に記載の方法。
【請求項8】
眼内圧データを取得および観察するための装置であって、少なくとも1つの測定器具(1)および分析ユニット(2)を備える装置において、
前記少なくとも1つの測定器具(1)は、少なくとも1つのセンサ(4)を有するデータ取得ユニット(3)と、少なくとも1つのデータ記憶部(5)と、少なくとも1つのデータ転送ユニット(6)と、少なくとも1つの操作・連絡インタフェース(7)を備え、
前記分析ユニット(2)は、ローカルデータベースであり、データ転送ユニット(8)および演算処理ユニット(9)を備えていて、この演算処理ユニット(9)は、測定データについてデータ解析的かつ構造解析的な統計アルゴリズムおよびフィルタ手法を適用するように作られており、そしてこの演算処理ユニット(9)は、表示ユニット(10)を備えていること
を特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載の方法を実行する装置。
【請求項9】
分析ユニット(2)が、データ取得ユニット(3)から空間的に離れて配置されていることを特徴とする請求項8に記載の装置。
【請求項10】
表示ユニット(10)が分析ユニット(2)から空間的に離れて配置されていることを特徴とする請求項8または請求項9のいずれかに記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、眼内圧(Intraokulardrucken、IOD)の連続的測定を行うための方法および装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
緑内障とは、原因は様々でそれらは全て神経線維の死滅につながる多くの眼疾患を表す用語である。これは特徴的な視野欠損(暗点)をもたらし、末期には眼の失明に至る。高い眼内圧値は緑内障の有力な危険因子と考えられている。眼内圧値の時間的な推移は患者に依るところが大きい。眼内圧下降薬の効果も、その一般的な効き目、作用の潜伏性、および持続性については患者に依るところが大きい。こうした患者依存性のある2つの要因のために、薬物治療を行っても眼内圧が十分な値まで下降せず、そのため患者の失明に至る視神経への甚大な損傷を阻止できないことがしばしばある。
【0003】
これを踏まえて、個別の眼内圧プロファイルを判断するには比較的長期間にわたって測定を行うことが推奨される。これまで、こうしたことは患者が入院してから行われてきた。測定間隔は組織因子と局部麻酔の必要性次第であり、典型的には2時間より長い。これでは不完全なデータ密度しか得られない。問題点の一つとして、夜間の測定のために患者が起床せねばならず、これが眼内圧プロファイルに未知の影響を及ぼしてしまうということがある。しまいには、いくつかのケースでは昼間測定と夜間測定とで異なる測定装置が用いられており、しかもこれは大抵、副次的変数を測定するだけのものであり、眼内圧の直接検圧法は標準的には用いられておらず、そのためデータに基づく効果的な治療を行うことはできなかった。
【0004】
こうしたいくつかの問題点を回避するため、特許文献1では、適当な電気回路に付随する容量式圧力センサを備えた、植え込み可能な強膜外での測定装置が提案されており、本件出願人による特許文献2では、眼球強膜と生体適合性のある接触を行うために圧力伝達性がありかつ寸法的に安定して弾性的なハウジングと、その中に包埋されている少なくとも1つの確実な圧力センサ面を有する圧力センサ手段と、を備えた測定システムが提案されている。
【0005】
患者の医療データを記録し、これを遠隔の受信機に送信して保存および更なる演算処理を行う方法は、基本的には既知である。この方法の一例が特許文献3であり、これによれば、植え込まれた医療測定センサが遠隔の受信機に生物学的データを送信し、この受信機はそうしたデータを中央集中型データベースに保存し、このデータベースは公共データベースから次々と統計的データを取り込み、データマイニング技術を用いて患者のデータに適合する統計的データを見つけるようになっている。この方法の背景には、各案件において個別の療法計画、治療計画、治療経過レポートあるいは実施要領を特定し、レポートおよび警告を自動的に出力するようにするという意図がある。特許文献4は緑内障の患者を診断および治療する装置と方法を開示している。この装置はインターネットを通じてアクセス可能でメニュー形式のデータ読み取りモジュールを有するソフトウェアプログラムを備えている。オンラインの参照ライブラリにアクセスするという選択肢もある。レポートモジュールが緑内障の診断、治療、そして分析について患者固有のレポートを出力する。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第102004056757号明細書
【特許文献2】独国特許出願公開第102010035294号明細書
【特許文献3】米国特許第6669631号明細書
【特許文献4】米国特許第6742895号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
これら既知のシステムの欠点としては、データのセキュリティとデータ密度を十分に確保できないということがある。
【0008】
そこで本発明は、患者個別の眼内圧推移に関する最適化されたデータベースを作成する方法および装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この課題は、方法については、時間を通じての患者の眼内圧の推移を取得する方法によって達成され、この方法は以下の工程を含む:
a)日常生活における患者の眼内圧データを、投薬を行わずに少なくとも24時間にわたって連続的に測定および保存し、その後、
b)投薬を行いながら患者の眼内圧データを少なくとも24時間にわたって連続的に測定および保存し、ここで、
c)投薬時刻、投薬期間、投薬量、有効成分、一日のうちに患者に起きた出来事、を記録し、このとき、
d)好ましくは眼内圧データの測定を眼内圧推移の予想継時パターンの周波数の少なくとも2倍の頻度で行い、そして
e)保存されたデータを分析ユニットへ転送し、データの分析を行う。
【0010】
本発明に係る方法は、日常生活における患者の眼内圧推移の準連続的な測定を企図しているという利点があり、この方法は少なくとも24時間にわたって投薬を行わずに基準の眼内圧推移を測ることから始めて、これにより圧力推移の周期的変動を見つける。通常ならばこの測定は24時間で十分であるが、24時間を越える周期性を持つ推移の人がいることも考えられるので、より長い測定期間も本発明の範囲内である。続いて、患者に投薬を行いながら眼内圧を測定し、投薬時刻、投薬期間、投薬量、投与した有効成分、そして患者の一日を通じての出来事を、測定データと共に記録する。本発明によれば、こうすれば眼内圧の推移に対して環境条件が及ぼし得る影響を確証および定量化することに役立つ。この場合、折り返し歪みを最小化するため、測定頻度は特にナイキスト−シャノンまたはホイッタカー−カテリニコフ−シャノンの標本化定理に従う、つまり測定頻度を、眼内圧推移の予想される継時パターン周波数の少なくとも2倍にする。本発明においては、こうして得られたデータは分析ユニットへ転送され、そこで評価が行われ、この評価は特に自動的に行われ、それによりデータ品質を向上し、生理的条件、心理的条件、環境的条件についての患者個別の状態を包含する有意味なデータベースを作り上げるようにする。
【0011】
この方法の実施形態においては、工程b)において、第1の時刻に第1の薬剤を投与し、第2の時刻に第2の薬剤を投与し、場合によっては更なる別の時刻に更なる薬剤を投与し、ここで各時刻から少なくとも24時間にわたって患者の眼内圧データが連続的に測定および保存され、このとき相前後する2つの時刻間の時間的間隔は、始めに投与した薬剤の作用期間が少なくとも終了間際となるように選択される。この実施形態によれば、有効成分の作用についての個別プロファイルを綿密に決定できるという利点がある。ここで、工程b)はn回繰り返され、nの値は検査するべき有効成分、有効成分の組み合わせ、そして有効成分の投薬量、の数である。このとき、一つの薬剤を複数の時刻において投与してもよく、また別の薬剤と共に投与してもよい。
【0012】
この方法の特に好ましい実施形態では、工程b)において2つ以上の有効成分が一度に投与される。この方法によっても、有効物質を組み合わせた場合の個人別眼内圧推移が確認できる。本発明では、2つの有効成分が与えられる2つの時刻間の間隔が24時間よりも著しく短い、言い換えるとこれらの時刻が互いに接近しているという変形例もある。個別の作用の推移に応じて、後から投与する有効物質は、先に投与した有効物質の効果が既に減退しているならば、例えば6時間後に投与することができる。
【0013】
本発明の特に好ましい実施形態では、この方法を実施する間、患者に情報および/または治療指示が伝えられる。これにより多くの利点が得られる。特に、患者が測定の間に放っておかれることがなく、現在の工程についての説明と、それがどのように実施されるかについての助言を受けた状態に置かれる。特に高品質かつ詳細なデータベースが得られるようにするため、患者が直近の工程を自覚できるようにして、さらに本方法の経過についての患者の質問は適宜回答を受けられるようにするとよい。
【0014】
特にあらゆる意味で信頼性があり、有意味なよく分析されたデータベースを担当医が得られるように、工程e)における測定データの評価解析は、患者の目標眼圧、その個人的嗜好、有効成分の許容量、投薬量および投薬時刻も考慮して行われる。この方法はまた、平均値、中央値、標準偏差、3δ値、FFTやその類のものといった評価的データ分析による統計的パラメータの出力を行うことにも関連する。
【0015】
患者の医学管理を行うために時間的間隔を置いて工程a)およびb)を繰り返し、療法の成功または失敗に関するデータを医師に提供することも本発明に係る方法に含まれる。
【0016】
本発明の課題は、装置については、請求項8に記載の特徴を組み合わせた本発明の装置によって達成され、この装置は医療データを取得および評価するための装置であって、少なくとも1つの測定器具および分析ユニットを備えており、少なくとも1つの測定器具は、少なくとも1つのセンサを有するデータ取得ユニットと、少なくとも1つのデータ記憶部と、少なくとも1つのデータ転送ユニットと、少なくとも1つの操作・連絡インタフェースを備え、前記分析ユニットは、データ転送ユニットおよび演算処理ユニットを備えていて、この演算処理ユニットは、測定データについてデータ解析的かつ構造解析的な統計的アルゴリズムおよびフィルタ手法を適用するように作られており、そしてこの演算処理ユニットは、表示ユニットを備えている。
【0017】
本発明に係る装置の発展形態は従属請求項に記載されている。
【0018】
本発明は、好ましい実施形態の例示により図面に記載されており、更なる好適な詳細は図面中の図示から読み取れるであろう。
【0019】
同一の機能を有する部分には同一の参照符号を付している。
【図面の簡単な説明】
【0020】
各図は以下のことを表す。
図1】本発明のフローチャートである。
図2a】眼内圧推移のモデルである。
図2b】眼内圧推移のモデルである。
図2c】眼内圧推移のモデルである。
図2d】眼内圧推移のモデルである。
図3】引き続いての検査での眼内圧推移を示す図である。
図4】本発明に係る装置の概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
図1は、本発明に係る方法の模式的なフローチャートを示している。この方法はまず患者の基準眼内圧を測定することから始まり、準備として、患者は現行の治療による投薬を場合によっては数日間にわたり漸減される。そして患者の眼内圧基準曲線が少なくとも24時間にわたり記録される。この測定頻度は本実施形態では0.003Hz、つまり5分ごとに1回の測定を行う。測定頻度はより多くあるいは少なくしてもよいが、本発明の本実施形態においては5分ごとの測定頻度を継続するものとする。この頻度は、データが眼内圧の時間依存性について有意なものとなる程度に高く選択される。この測定は患者の日常的生活環境下で行われなければならず、また患者自身が測定を実施または開始せねばならない。本発明においては、眼内圧値の時間的推移が影響を受けないようにするために、医師または支援スタッフによる人的支援は避けられる。ここでは、患者に一時的に植え込まれるセンサ、例えば本件出願人が特許文献2に記載したセンサが用いられる。眼内圧用の1つのこのセンサと共に、本発明においては他のセンサ、例えば脈拍センサや血圧センサも用いてよい。基準値が確認されたら、短くとも24時間の新しい測定サイクルが開始されて、第1の時刻に第1の薬剤が投与される。どの有効成分をどの時刻にどれだけの投薬量で投与するかは、測定器具1により患者に伝えられる。患者は適切な指示を実行し、測定器具は相応するデータおよびタイムスタンプ付きの時刻を電子的に生成し、このデータおよび時刻を保存する。身体的または精神的ストレスや食事などの特定の出来事も、測定器具によってタイムスタンプと共に記憶される。これに代えて患者が非電子的な日誌をつけてもよいが、電子的なデータ保存はデータがより扱いやすいので好ましい。本発明においては、最初の効果測定に引き続いて更なる効果測定を行ってもよい、これについては図2a−を参照のこと。こうして確認されたデータは測定器具に保存され、そして分析ユニットへ転送され、この分析ユニットはノイズ除去のためにデータをフィルタ処理し、データを統計的・解析的に評価する。ここで、眼内圧推移は図式的に示され、OPA(眼球脈波振幅、ocular pulse amplitude)図を生成することもできる。図式的評価においては、局所的極大値および極小値についての包絡線を得ることができる。分析ユニットは、例えば日内の変動幅、患者の手順順守データ(測定可能回数に対する測定実行割合)、継時パターン、その他特定可能な種類のパターンを含む図表の形で概覧を生成することもできる。
【0022】
図2a〜図2dは、1回以上の投薬時刻を含む、方法の過程にわたっての眼内圧推移モデルを示している。この図は実際、分析ユニットによって生成されるものと類似している。
【0023】
図2aは事前の投薬漸減を行った後の基準眼内圧プロファイルを示している。x軸には、ある日の08:00時を始まりとし翌日の08:00時を終わりとする24時間が示されている。y軸は測定された眼内圧値を[mmHg]で示している。この患者は主に夜間に21mmHgを越える高い眼内圧値となることが見て取れる。
【0024】
図2bは、本方法の工程b)を実施した後に行うことができる評価を示しており、ここで二組のデータは相互に時間的に正規化している。工程a)の後、工程b)において、24時間よりは離れていない2つの時刻にて第1の薬剤Aが投与される、つまりは第1の時刻の18:00時に第1の投薬量で投与され、第2の時刻の06:00に第1のときと同じ第2の投薬量で投与され、18:00時から翌日の18:00時まで測定が行われる。ここで、評価というのは、投薬を行った場合の眼内圧推移を、基準測定の眼内圧推移に対して時間的正規化を行うことに基づくものである。上方の曲線は工程a)による基準値を示しており、下方の曲線は第1の薬剤Aの作用の個別プロファイルである。2つの矢印は前述の2回の投薬時刻を示している。薬剤Aを用いることで眼内圧値がほぼ1日中にわたって顕著に下降することが見て取れる。また、この下降は夜間に眼内圧を21mmHgより下回らせるには十分でないことも見て取れる。
【0025】
図2cは、本発明の工程b)の評価を示しており、第2の薬剤Bを1つの時刻(18:00時)に投与して、24時間にわたって測定して眼内圧推移を確かめる場合のものである。これは図2bにおける測定に続いて実施される。ここで、この評価も上記したような時間的正規化に基づくものである。上方の曲線は基準値で、下方の曲線は投薬時のラインである。夜間での眼内圧が劇的に下降し、24時間の測定期間のほぼ全体にわたって眼内圧が21mmHgを下回っていることが見て取れる。この閾値は早朝においてのみ僅かに超過されている。
【0026】
本発明においては、工程b)に示される過程は連続する複数日において繰り返されてもよいし、また例えば1週間にわたっての眼内圧の経過を確認するために、合間をおいた複数日に繰り返されてもよい。
【0027】
工程e)に係る評価も、図2dにおいて行われており、これは各薬剤を各々の方法で投与したことによって引き起こされた眼内圧の下降の各場合が相互に正規化して示されている。y軸は基準値と比較しての眼内圧の変化を[mmHg]で示しており、x軸には時間推移が入っている。この評価においては、投薬効果の潜伏期間、投薬効果期間、そして投薬効果の強さがわかりやすく見て取れる。
【0028】
これらのデータは医師に提供される。医師はこれらのデータに基づいて、個人別に決められてかつ各人に効果的な療法の提案を、夜間に睡眠を邪魔されたくないとか、薬剤を少なくしてほしいとか、投与時刻を実行しやすい時刻にしてほしい、といった患者個別の要望を、所望の目標眼圧あるいは平均眼圧値と共に考慮して、策定することができる。この種の提案は、境界条件を入力しておくことで、自動的に得ることもできる。
【0029】
図3は、既に策定された療法の過程における引き続いての検査での眼内圧推移を示している。患者の日常環境における24時間超の本発明に係る測定を、関連する全ての出来事を記録しながらこのように繰り返すことで、現行の療法がなおも効果的であるのか、それとも修正が必要であるのかを確認することができる。後者の場合には、上記した本発明の各工程を繰り返す必要があり、現行の投薬の投与量を漸減することから始める。図3内の矢印はここでも投薬時刻を示しており、この投薬時刻は2つの異なる薬剤AとBの投薬時刻である。眼内圧がなおも21mmHgを下回っており、医師が新しい療法を提案する必要のないことが見て取れる。
【0030】
評価ユニットは、例えば時系列表、表形式概覧、ウォーターフォールチャートなどの、医師の指定した表示形式でのレポートの形で測定値をまとめたものを医師へ提供する。
【0031】
図4は、本発明に係る装置の概略図を示している。この装置は少なくとも1つの、患者が持ち歩く測定器具1を備えている。この装置はここでは、複数の測定器具1が同時に動作できるように作られている。測定器具1は、測定器具1に付属するセンサ4からデータを受信する。このセンサ4は例としては本件出願人の用いるような圧力センサであるが、眼内圧と共に血圧や心拍数その他医学的関連データをも収集する複数のセンサでセンサ4を構成して、これらのデータを測定器具1へ転送するようにしてもよい。1つ以上のセンサ4の測定データを、比較的長時間にわたって十分な時間分解能で記録するために、測定器具は十分に大きな容量のデータ記憶部5を備えている。測定器具1はまた、記録されたデータを分析ユニット2へ転送するデータ転送ユニット6を備えている。このデータ転送ユニット6はここでは、例えばWLAN、WWAN、bluetooth(登録商標)、IRインタフェース、プラグ接続、あるいはこれらの類の形式で有線式または無線式の方法でデータを転送するように作られている。測定器具1は操作・連絡インタフェース7をさらに備える。操作インタフェースは例としては画面とキーボードの組み合わせ、またはタッチスクリーンであるが、音声操作を用いるようにしてもよい。本発明により、手動データ入力の選択肢が与えられる。連絡インタフェースは患者と介護者との間の連絡に用いられるものであり、適切な指示を行うコンピュータプログラムを介護者とすることもできる。連絡インタフェース7は、治療指示や警報や答えるべき質問を患者に対して表示し、患者が介護者へと情報を連絡することができるように作られている。例として、連絡インタフェースは、点滅や点灯により相応の警報を視覚的に表示する別体のLED警報器を備えてもよい。連絡インタフェースに拡声器が付随していてもよい。介護者と患者との間の連絡は、スマートフォンのアプリや携帯電話メールによって行われてもよく、つまりは患者が用いることのできるこうした機器を用いて連絡が行われてもよい。本実施形態においては、連絡インタフェースは測定器具1の外部にある。また、連絡インタフェースにより、患者が観察を受けられるようにすることができ、そして担当医師が個別に設定可能な警報限界や警報アルゴリズムを用いて警報が送られてくるようにすることができる。これにより、各患者に個別の目標眼内圧を考慮して眼内圧値が危険水準を越えることの無いようにすることを確実に行えるという利点が得られる。またここで、例えば夜間と昼間とで警報限界を異なった設定にすることで、誤警報の回数を低く抑えることができる。また、眼圧上昇が眼圧上限値を上回るのを何回許容するのかを、各案件において個別に設定することもできる。本発明に基づき、分析ユニット2の警報は通信インタフェース7により受信されるが、患者には伏せられる。ここで、警報アルゴリズムは、測定装置1において、または中央支援プログラムにおいて、限局的に設定および実行することができる。
【0032】
本発明においては、分析ユニット2は測定器具1内に配置することもできるし、測定器具とは空間的に離れたところに配置することもできるが、いずれの場合でも、(1つ以上の)測定器具1からのデータの受信および測定器具との通信を行うために、分析ユニットにはデータ転送ユニット8が設けられる。分析ユニット2が測定器具1内に配置される場合には、1つ以上のセンサ4を介して取得される患者個別のデータは、測定器具1自身の内部で評価することができ、レポートとして担当医へと連絡されるか、あるいは選別または読み取りが行われるようにすることができる。ただし、さらに好適なのは、分析ユニット2が測定器具1と空間的に離れて配置される実施形態である。この形態では、本発明に係る分析ユニット2は、ローカルデータベースか、中央データベースか、あるいはクラウドベースのプログラムである、つまりは、医師の実務に供されているコンピュータシステムであったり、インターネットなどの方法でアクセス可能な例えば電算機センターのようなコンピュータシステムであったり、クラウドベースのシステムであったりするということである。
【0033】
この分析ユニット2は演算処理ユニット9および表示ユニット10を備えており、表示ユニットは例えばモニターである。演算処理ユニット9は、ノイズその他の阻害信号を除去するためにデータをフィルタ処理し、さらにデータ解析手法および構造解析的統計アルゴリズムを用いるように作られている。例えばANOVA、FFT、ウェルチ(Welch)法、ロム(Lomb)ピリオドグラム、曲線重ね合わせ、最小二乗適合、発見的探索アルゴリズム、データマイニング手法を用いる。特に、演算処理ユニット9は、時間的推移を調べて、眼内圧が高くなる問題のある期間をアルゴリズム的に特定し、そして確認された投薬作用の個別プロファイルを、潜伏性、有効性、作用期間などの特性値に分解する。
【0034】
本発明に係る方法は、データ取得を顕著に改善し、これによりデータ解析も著しく改善される。これは各患者に固有かつその要望に合わせて個人別に行える。この結果、医師は、療法を策定できるようにするための、そして眼内圧推移や患者の反応が変化した場合に早期に療法を新しく修正することができるようにするための、有意味なデータを得ることができる。
【符号の説明】
【0035】
1 測定器具
2 分析ユニット
3 データ取得ユニット
4 センサ
5 データ記憶部
6 データ転送ユニット
7 操作・連絡インタフェース
8 データ転送ユニット
9 演算処理ユニット
10 表示ユニット
図1
図2a
図2b
図2c
図2d
図3
図4