【実施例】
【0039】
以下に、実施例により、本発明を詳細に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【0040】
《銀ナノ粒子の作製》
硝酸銀を脱イオン水に溶解して、金属塩水溶液を調製した。また、クエン酸ナトリウムを脱イオン水に溶解して、濃度が26質量%のクエン酸ナトリウム水溶液を調製した。このクエン酸ナトリウム水溶液に、35℃に保持された窒素ガス気流中で、粒状の硫酸第1鉄を直接加えて溶解させ、クエン酸イオンと第1鉄イオンを3:2のモル比で含有する還元剤水溶液を調製した。
【0041】
次に、上記窒素ガス気流を35℃に保持しながら、還元剤水溶液中に、マグネチックスターラーの攪拌子を入れ、攪拌子の回転速度:100rpmで攪拌しながら、この還元剤水溶液に、上記金属塩水溶液を滴下して、混合した。ここで、還元剤水溶液への金属塩水溶液の添加量は、還元剤水溶液の量の1/10以下になるように、各溶液の濃度を調整して、室温の金属塩水溶液を滴下しても反応温度が40℃に保持されるようにした。また、還元剤水溶液と金属塩水溶液との混合比は、金属塩水溶液中の金属イオンの総原子価数に対する、還元剤水溶液のクエン酸イオンと第1鉄イオンとのモル比が、いずれも3倍モルとなるようにした。還元剤水溶液への金属塩水溶液の滴下が終了した後、さらに、混合液の攪拌を15分間続けることにより、混合液内部に銀ナノ粒子を生じさせ、銀ナノ粒子が分散した銀ナノ粒子分散液を得た。銀ナノ粒子分散液のpHは5.5であり、分散液中の銀ナノ粒子の化学量論的生成量は5g/リットルであった。
【0042】
得られた銀ナノ粒子分散液を、室温で放置することにより、分散液中の銀ナノ粒子を沈降させ、沈降した銀ナノ粒子の凝集物をデカンテーションにより分離した。分離した銀ナノ粒子凝集物に、脱イオン水を加えて分散体とし、限外濾過により脱塩処理した後、さらにメタノールで置換洗浄して、金属(銀)の含有量を50質量%にした。その後、遠心分離機を用い、この遠心分離機の遠心力を調整して、粒径が100nmを越える比較的大きな銀粒子を分離することにより、一次粒径10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子を数平均で71%含有するように調整した。即ち、数平均で全ての銀ナノ粒子100%に対する一次粒径10〜50nmの範囲内の銀ナノ粒子の占める割合が71%になるように調整し、銀ナノ粒子分散原液を得た。得られた銀ナノ粒子は、クエン酸ナトリウムの保護剤が化学修飾されていた。この銀ナノ粒子分散原液を脱イオン水で希釈して、平均粒径が20nmの銀ナノ粒子を5質量%含む銀ナノ粒子分散液:100cm
3を得た。
【0043】
〔
参考例
3〕
銀ナノ粒子を5質量%含有する銀ナノ粒子分散液:200cm
3を、40℃に保持し、激しく撹拌をしながら、透明膜の原料であるテトラエトキシシランを5質量%含有するエチルアルコール溶液:100cm
3を添加した後、触媒として10質量%のアンモニア水:5cm
3を添加し、1時間保持し、
参考例
3の増感剤を含有する分散液を得た。この分散液を、限外ろ過した後、洗浄して、
参考例
3の増感剤:7gを得た。
参考例
3の増感剤は、表面プラズモン共鳴を生じ、透明層の厚さは、2nmであった。
【0044】
〔
参考例
4〕
テトラエトキシシランを20質量%含有するエチルアルコール溶液:100cm
3を添加したこと以外は、
参考例
3と同様にして、
参考例
4の増感剤:8.5gを得た。
参考例
4の増感剤は、表面プラズモン共鳴を生じ、透明層の厚さは、20nmであった。
【0045】
〔
参考例
5〕
硝酸銀の代わりに塩化金酸を用いたこと以外は、銀ナノ粒子の作製と同様にして、平均粒径が10nmの金ナノ粒子を5質量%含む銀ナノ粒子分散液:100cm
3を得た。
【0046】
金ナノ粒子を10質量%含有する金ナノ粒子分散液:10cm
3を、50℃に保持し、激しく撹拌をしながら、透明膜の原料であるアクリル酸:10cm
3を添加した後、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル:0.5gを添加し、1時間保持し、
参考例
5の増感剤を含有する分散液を得た。この分散液を、遠心分離し、溶剤を除去し、
参考例
5の増感剤を分離した。この後、増感剤を洗浄するために、再度、エタノールを添加し、撹拌して、増感剤を分散させた後、遠心分離し、溶剤を除去した。この洗浄を3回繰り返し、
参考例
5の増感剤:1gを得た。
参考例
5の増感剤は、表面プラズモン共鳴を生じ、透明層の厚さは、5nmであった。
【0047】
〔実施例4
、参考例6、参考例1〜2、比較例1〕
表1に示す組成で実施例4
、参考例6、参考例1〜2、比較例1
の増感剤を製造した。なお、Pdの原料としては塩化パラジウム、Cuの原料としては、硝酸銅を、ポリウレタンの原料としてはヘキサメチレンジイソシアネートとポリカーボネートポリオール、ポリエステルの原料としてはテレフタル酸とエチレングリコールを使用した。なお、実施例4
、参考例6では表面プラズモン共鳴を生じ、参考例1〜2および比較例1でも表面プラズモン共鳴を生じた。
【0048】
【表1】
【0049】
《増感層用組成物の製造》
得られた増感剤:10質量部を水、エタノール及びメタノールを含む混合溶液90質量部に添加し、混合することにより分散させ、増感層用組成物を作製した。
【0050】
《発電効率の評価》
表2に、評価した増感層の作製条件を示す。表2の「設置場所」は、増感剤を形成した場所が、表面電極側であるか、裏面電極側であるかを示し、「膜厚」は、増感層の膜厚(単位:μm)を、「湿式塗工法」は、増感層用組成物を塗工した方法を示す。ここで、
参考例
3と
実施例4、参考例1は、
図4に示す構造であり、
参考例
4と6、比較例1は、
図2に示す構造であり、
参考例
5、参考例2は、
図3に示す構造である。
【0051】
評価した太陽電池の作製方法を以下に示す。
【0052】
〈シリコンへテロ接合型太陽電池の場合〉
(光電変換部の作製)
まず、
図4に示す光電変換部800を以下のようにして作製した。
【0053】
基板81として、比抵抗が約1Ω・cm、厚さが300μmのn型単結晶シリコン基板を用い、この基板81を通常の方法で洗浄した後、基板81の表面81A及び裏面81Bにエッチングによりテクスチャ面を形成した。
【0054】
次いで、基板81の表面81A及び裏面81B上に、それぞれ通常のプラズマCVD法を用いて、i型非晶質シリコン層82、p型非晶質シリコン層83及びi型非晶質シリコン層86、n型非晶質シリコン層87を形成した。
【0055】
次に、p型非晶質シリコン層83上に、
参考例
3と
実施例4、参考例1の増感層103を形成した。
【0056】
次に、n型単結晶シリコン基板81の両主面上に形成されたn型非晶質シリコン層87及び増感層103上に、厚さ100nmのITOからなる裏面透明電極層88及び表面透明電極84をスパッタ法により形成した。
【0057】
以上のようにして形成された、表面透明電極層84、増感層103、p型非晶質シリコン層83、i型非晶質シリコン層82、n型単結晶シリコン基板81、i型非晶質シリコン層86、n型非晶質シリコン層87、裏面透明電極層88の積層体からなる光電変換部800の裏面上及び表面上の所定領域に、スクリーン印刷法を用いてくし型状の裏面電極89および表面電極85を形成した。
【0058】
〈スーパーストレート型薄膜太陽電池の場合〉
本発明の各実施例に係るタンデム型太陽電池の製造方法について説明する。なお、各実施例で述べる太陽電池を構成する該構成要素の材質や膜厚は一例を示すもので、本発明はこれらに限定されない。
【0059】
〈スーパーストレート型薄膜太陽電池の場合〉
参考例
4と
6、比較例1の場合について、説明する。まず、一方の主面に厚さ50nmのSiO
2層(図示せず)が形成されたガラス基板71を準備し、このSiO
2層上に、透明導電膜61を形成した。この透明導電膜61にはレーザー加工法を用いてパターニングすることによりアレイ状とするとともに、それらを電気的に相互接続する配線を形成した。その後、透明導電膜61上に、それぞれ
参考例
4と
6、比較例1の増感層101を形成した。次に、増感層101上にプラズマCVD法を用いて、発電層40を形成した。この発電層40は、基板71側から順に、p型a−Si:H(非晶質
炭化シリコン)43、i型a−Si(非晶質シリコン)42及びn型μc−Si(微結晶炭化シリコン)41、からなる膜を積層して得た。上記発電層40を、レーザー加工法を用いてパターニングした後、マグネトロンインライン式スパッタリング装置を用いて、発電層40上に、厚さ200nmの裏面電極層(銀電極層)21を順次形成したものである。
【0060】
太陽電池セルの評価方法としては、レーザー加工法を用いてパターンニングを実施した加工後の基板にリード線配線を実施し、IV特性カーブを確認した際の出力特性及び短絡電流である(Jsc)の値を、実施例と同様の製造方法にて得た光電変換層を用い、透明導電膜、裏面電極層が全てスパッタ法により形成された太陽電池セルを100とした際の相対出力評価を行った。表2に、これらの結果を示す。
【0061】
ここで、全てスパッタ法により形成された太陽電池をスーパーストレート型の場合で説明すると、スーパーストレート型太陽電池セルとは、
図2から増感剤11と増感層101を除去したものであり、先ず一方の主面に厚さ50nmのSiO
2層(図示せず)が形成されたガラス基板71を準備し、このSiO
2層上に表面に凹凸テクスチャを有しかつF(フッ素)ドープされた厚さ800nmの透明導電膜(SnO
2膜)61を形成した。この透明導電膜61にはレーザー加工法を用いてパターニングすることによりアレイ状とするとともに、それらを電気的に相互接続する配線を形成した。次に、透明導電膜61上にプラズマCVD法を用いて、発電層40を形成した。この発電層40は、基板71側から順に、p型a−Si:H(非晶質単価シリコン)43、i型a−Si(非晶質シリコン)42及びn型μc−Si(微結晶炭化シリコン)41、からなる膜を積層して得た。上記発電層40を、レーザー加工法を用いてパターニングした後、マグネトロンインライン式スパッタリング装置を用いて、発電層40上に、厚さ200nmの裏面電極層(銀電極層)21を順次形成したものである。なお、シリコンへテロ接合型太陽電池の場合は、
図1から増感剤11と増感層101を除去したものであり、Al層20が形成された単結晶Si(n型)31上に、i型a−Si(非晶質シリコン)32及びp型μc−Si(微結晶炭化シリコン)33、透明導電膜60を、スーパーストレート型と同様の方法で形成した後、スパッタ法で形成した後、エッチングでパターニングしたAg配線を形成する。
【0062】
《耐久性試験》
初期発電効率を測定した太陽電池を、耐久性試験として、温度:85℃、湿度:85%で、1000時間保持した。その後、Jsc値を測定した。表2の「耐久性試験後」の欄に、結果を示す。
【0063】
【表2】
【0064】
表1から明らかなように、実施例
4では、初期性能のJsc値が高く、耐久試験後でもJsc値が変化せず、良好な結果であった。一方、金属ナノ粒子に透明層が形成されていない比較例1はAg拡散の抑制効果が得られず、比較例2は表面プラズモン共鳴による太陽電池の増感効果が見られなかった。また、増感剤を含まない比較例2は、実施例1より初期性能が低く、比較例3は、実施例2より初期性能が低く、比較例4は、実施例3より初期性能が低かった。なお、金属ナノ粒子の平均粒径が5nmの参考例1は、Ag拡散の抑制効果が十分とはいえなかった。透明層の厚さが30nmの参考例2は、初期性能が低かった。
【0065】
このように、本発明の増感剤により、発電効率が高く、長期安定性の良い太陽電池を提供することができることがわかった。