(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
一端が前記浴槽に開口された浴槽水取込口に接続され他端が前記浴槽に開口された浴槽水戻し口に接続されかつポンプで浴槽水を循環させることのできる浴槽水循環経路の途中に設けられて、前記貯湯タンク内の湯を熱源として前記浴槽水循環経路内の湯水を加熱する第2加熱装置をさらに有し、
前記制御部は、前記熱退避動作の1つとして、少なくとも前記貯湯タンク内の湯水の温度が所定温度以上であって前記浴槽内の水位が前記浴槽水取込口に達していることを条件に、前記浴槽水循環経路に浴槽水が循環すると共に前記第2加熱装置が作用して前記貯湯タンク内の湯水の熱で前記浴槽水循環経路内の湯水が加熱される第2制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の太陽熱利用システム。
前記加熱装置は、前記集熱装置と、前記貯湯タンク内の湯水を加熱するための熱交換器と、前記集熱装置と前記熱交換器との間に形成された熱媒体流体の循環経路と、前記循環経路を通じて前記集熱装置と前記熱交換器との間で熱媒体流体を循環させる循環ポンプとを有し、
前記第2加熱装置は、第1熱交換管が前記循環経路の途中に接続され、前記第1熱交換管と熱交換する第2熱交換管が前記浴槽水循環経路の途中に接続された第2熱交換器を有し、
前記循環経路を、前記集熱装置を通る通常経路と前記集熱装置を迂回する迂回経路に切り替える切替弁を備え、
前記制御部は、前記第2制御において、前記切替弁で前記循環経路を前記迂回経路に設定して前記循環ポンプを全速で作動させ、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記所定温度より低い第2温度に低下したとき前記第2制御を停止する
ことを特徴とする請求項4または5に記載の太陽熱利用システム。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
太陽熱を集熱し、その熱で貯湯タンク内の水を昇温する太陽熱利用システムでは、貯湯タンク内の湯水の温度が上昇すると、集熱装置での太陽熱の熱回収効率が低下し、太陽熱を有効利用できなくなる。
【0007】
また、特許文献1に開示の技術では、風呂の自動湯張りが予約されていなければ対応できない。また、浴槽内に既に設定水位の湯水がある場合には注湯できないので、貯湯タンク内の湯水の温度を下げることはできない。また、一度に設定水位まで注湯するので貯湯タンク内の高温の湯が多量に使用され、湯切れし易くなる。
【0008】
本発明は、上記の問題を解決しようとするものであり、貯湯タンクにこれ以上蓄熱できなくなって太陽熱の利用効率が低下する事態の発生を抑制することのできる太陽熱利用システムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0009】
かかる目的を達成するための本発明の要旨とするところは、次の各項の発明に存する。
【0010】
[1]入口に給水管が接続され、開閉制御される注湯弁を介して浴槽に通じた管路が出口に接続された貯湯タンクと、
太陽熱を集熱する集熱装置で得た熱で前記貯湯タンク内の水を昇温する加熱装置と、
前記集熱装置で得た熱を回収する集熱運転を制御する制御部と、
を有し、
前記集熱運転は、前記集熱装置で得た熱により前記貯湯タンク内の水を前記加熱装置で昇温する集熱動作と、前記貯湯タンク内の湯水の温度が上がって熱回収効率が低下した場合に前記貯湯タンク内の熱を浴槽の湯水へ移動させる熱退避動作とを有し、
前記制御部は、前記熱退避動作の1つとして、少なくとも前記貯湯タンク内の湯水の温度が所定温度以上であることを条件に、前記注湯弁が開いて前記貯湯タンク内の湯水が前記浴槽へ注湯される第1制御を行う
ことを特徴とする太陽熱利用システム。
【0011】
上記発明では、貯湯タンク内の湯水の温度が所定温度以上になって、太陽熱の熱回収効率(利用効率)が低下したことを条件に、注湯弁が開いて貯湯タンク内の湯水が浴槽へ注湯される第1制御を行う。該注湯により貯湯タンクの出口から湯水が出ると、その分、入口から給水が補充され、貯湯タンク内の湯水の温度が低下して熱回収効率が回復する。なお、第1制御の実行開始条件としてさらに他の要件、たとえば、風呂の自動湯張りが予約されている、浴槽水位が設定水位以下であるなど、を加えてもよい。
【0012】
[2]前記入口は前記貯湯タンクの下部に設けられ、
前記出口は前記貯湯タンクの上部に設けられ、
前記加熱装置は、前記貯湯タンクの下部の湯水を加熱し、
前記制御部は、前記貯湯タンクの下部の湯水の温度が前記所定温度以上か否かを判定する
ことを特徴とする[1]に記載の太陽熱利用システム。
【0013】
上記発明では、加熱装置は貯湯タンクの下部の湯水を加熱し、制御部は貯湯タンク下部の水温に基づいて熱回収効率の低下を判断する。また、貯湯タンクの下部から給水され、上部の出口から湯水が出る。この構成において第1制御で注湯すると、貯湯タンク下部に設けられた加熱装置の周囲の水温は低下するが、湯水の出口のある貯湯タンク上部には熱い湯が確保されるので、次の出湯に備えることができる。
【0014】
[3]前記制御部は、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記所定温度より低い第2温度に低下したとき、前記第1制御を停止させ
て、該第1制御による注湯を少量ずつ間欠的に行う
ことを特徴とする[1]または[2]に記載の太陽熱利用システム。
【0015】
上記発明では、貯湯タンク内の湯水の温度が第1温度になると第1制御(注湯)が開始され、第2温度まで下がると第1制御が停止される。すなわち、第1制御による注湯は、少しずつ間欠的に行われる。
【0016】
[4]一端が前記浴槽に開口された浴槽水取込口に接続され他端が前記浴槽に開口された浴槽水戻し口に接続されかつポンプで浴槽水を循環させることのできる浴槽水循環経路の途中に設けられて、前記貯湯タンク内の湯を熱源として前記浴槽水循環経路内の湯水を加熱する第2加熱装置をさらに有し、
前記制御部は、
前記熱退避動作の1つとして、少なくとも前記貯湯タンク内の湯水の温度が所定温度以上であって前記浴槽内の水位が前記浴槽水取込口に達していることを条件に、前記浴槽水循環経路に浴槽水が循環すると共に前記第2加熱装置が作用して前記貯湯タンク内の湯水の熱で前記浴槽水循環経路内の湯水が加熱される第2制御を行う
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載の太陽熱利用システム。
【0017】
上記発明では、少なくとも貯湯タンク内の湯水の温度が所定温度以上であって浴槽の水位が浴槽水取込口に達していることを条件に、貯湯タンク内の湯水を熱源とする第2加熱装置によって浴槽内の湯水を加熱する第2制御を行う。第2制御では、貯湯タンク内の湯水の熱が浴槽水へ移動して貯湯タンク内の湯水の温度が下がる。なお、第2制御の実行開始条件としてさらに他の要件、たとえば、風呂の自動湯張りが予約されている、浴槽水位が設定水位に達している、浴槽水温度が設定温度以下であるなど、を加えてもよい。
【0018】
[5]前記制御部は、前記浴槽内の水位が設定水位未満であることを条件に前記第1制御を行い、前記浴槽内の水位が設定水位に達している場合は前記第2制御を行う
ことを特徴とする[4]に記載の太陽熱利用システム。
【0019】
上記発明では、浴槽の水位が設定水位未満ならば、貯湯タンクの湯水を注湯する第1制御を行い、浴槽の水位が既に設定水位に達しているときは、貯湯タンク内の湯水を熱源とする第2加熱装置によって浴槽内の湯水を加熱する第2制御を行う。
【0020】
[6]前記加熱装置は、前記集熱装置と、前記貯湯タンク内の湯水を加熱するための熱交換器と、前記集熱装置と前記熱交換器との間に形成された熱媒体流体の循環経路と、前記循環経路を通じて前記集熱装置と前記熱交換器との間で熱媒体流体を循環させる循環ポンプとを有し、
前記第2加熱装置は、第1熱交換管が前記循環経路の途中に接続され、前記第1熱交換管と熱交換する第2熱交換管が前記浴槽水循環経路の途中に接続された第2熱交換器を有し、
前記循環経路を、前記集熱装置を通る通常経路と前記集熱装置を迂回する迂回経路に切り替える切替弁を備え、
前記制御部は、前記第2制御において、前記切替弁で前記循環経路を前記迂回経路に設定して前記循環ポンプを全速で作動させ、前記貯湯タンク内の湯水の温度が前記所定温度より低い第2温度に低下したとき前記第2制御を停止する
ことを特徴とする[4]または[5]に記載の太陽熱利用システム。
【0021】
[7]前記貯湯タンクの前記出口には、前記注湯弁を有して前記浴槽への注湯機能を備えた風呂給湯器の給水口に通じる配管が接続され、
前記制御部は、前記第1制御において、前記風呂給湯器に対して加熱なしに注湯動作を行うように指示する
ことを特徴とする[1]乃至[6]のいずれか1項に記載の太陽熱利用システム。
【0022】
上記発明では、浴槽への注湯動作が可能な風呂給湯器が後段に接続される。制御部は、第1制御において、該風呂給湯器に対して、加熱せずに浴槽へ注湯するよう指示する。
【0023】
[8]前記風呂給湯器は、前記ポンプで前記浴槽内の湯水を前記浴槽水循環経路に循環させて前記浴槽の湯水を追い焚きする機能を有し、
前記制御部は、前記第2制御において、前記風呂給湯器に対して加熱なしに前記ポンプを作動させるように指示する
ことを特徴とする[4]乃至[6]のいずれか1項を引用する[7]に記載の太陽熱利用システム。
【0024】
上記発明では、風呂の追い焚き機能を有する風呂給湯器が後段に、接続される。制御部は、第2制御において、該風呂給湯器に対し、加熱せずに追い焚き用のポンプを作動させるように指示する。これにより、第2加熱装置を経由する浴槽水循環経路に浴槽水が循環し、浴槽水が加熱される。
【0025】
[8]前記風呂給湯器を含むことを特徴とする[7]または[8]に記載の太陽熱利用システム。
【発明の効果】
【0026】
本発明に係る太陽熱利用システムによれば、貯湯タンクにこれ以上蓄熱できなくなる事態の発生が抑制され、太陽熱の利用率を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下、図面に基づき本発明の実施の形態を説明する。
【0029】
図1は、本発明の太陽熱利用システム(以下、貯湯システムとする)を含む給湯システム10の構成を示している。給湯システム10は、貯湯システム11と、風呂給湯器12とを有する。
【0030】
貯湯システム11は、太陽光を利用して加熱した湯を蓄える貯湯タンク14を備えており、該貯湯タンク14からの湯水に給水を混合したものを風呂給湯器12の給水口へ供給する。風呂給湯器12は、貯湯システム11から供給される湯水を必要に応じて設定温度に加熱して給湯配管13へ出湯する機能を果たす。貯湯システム11は、太陽光を利用して加熱した湯を優先的に利用することで風呂給湯器12による加熱(以下、「追い加熱」とする。)を少なく抑えて、省エネルギでの給湯を可能にする。
【0031】
貯湯システム11の詳細構成を説明する。貯湯タンク14は、中空略円柱状のタンクであり、底部と天井部のそれぞれに配管接続口が設けてある。底部の配管接続口(入口)には給水管15の終端が接続されている。天井部の配管接続口(出口)には接続配管16の一端が接続され、この接続配管16の他端は風呂給湯器12の給水口に接続されている。
【0032】
接続配管16の途中には、貯湯タンク14からの湯と給水とを混合する混合弁17が設けてある。ここでは、混合弁17は、第1バルブ17aと第2バルブ17bの2つで構成される。第1バルブ17aは接続配管16に介挿されている。第2バルブ17bは、給水管15の途中から分岐して第1バルブ17aの風呂給湯器12側で接続配管16に合流する分岐給水管15aの途中に介挿されている。第1バルブ17aと第2バルブ17bは開度(通水量)をそれぞれ0%から100%まで調整可能な水量調整弁である。第1バルブ17aと第2バルブ17bの開度により、貯湯タンク14からの湯と給水との混合比が調整される。
【0033】
貯湯タンク14は、たとえば、容量100リットルを有し、底から20リットルの水位の箇所に、その箇所の水温を検出する第1温度センサ41が、底から40リットルの水位の箇所に、その箇所の水温を検出する第2温度センサ42が、底から60リットルの水位の箇所に、その箇所の水温を検出する第3温度センサ43が、底から80リットルの水位の箇所に、その箇所の水温を検出する第4温度センサ44がそれぞれ設けてある。
【0034】
また、貯湯タンク14の天井部の配管接続口の近傍の接続配管16には、貯湯タンク14から出てくる湯水の温度を検出するタンク出湯温度センサ46が設けてある。給水管15の途中には給水温度を検出する給水温度センサ47が設けてある。さらに混合弁17の出側(風呂給湯器12側)の接続配管16には、水量センサ48が、さらにその下流側(風呂給湯器12側)には、混合弁17で混合後の湯水の温度を検出する混合温度センサ49が設けてある。
【0035】
貯湯タンク14内の下部には、熱媒体循環経路22の一部をなす熱交換用配管18が挿通されている。熱媒体循環経路22は、この熱交換用配管18と、シスターン19と、水-水熱交換器20と、太陽熱の集熱装置21とを経由して熱媒体(ここでは、水)を循環させる経路である。
【0036】
詳細には、熱媒体循環経路22は、熱交換用配管18の出側からシスターン19の入り側へ至る第1熱媒配管22aと、シスターン19の出側から水-水熱交換器20の入り側に至る第2熱媒配管22bと、水-水熱交換器20の出側から集熱装置21の入り側に至る第3熱媒配管22cと、集熱装置21の出側から熱交換用配管18の入り側へ至る第4熱媒配管22dとからなる。図中、集熱装置21は、貯湯システム11の構成要素であるが、外付け機器としてもよい。
【0037】
シスターン19は、熱媒体循環経路22を循環する熱媒体を蓄えるためのタンクである。また、シスターン19は大気圧に開放されたタンクであり、熱媒体循環経路22に混入した空気を抜くと共に、熱媒体の膨張・収縮による体積変動を吸収する。熱媒体の流出口はシスターン19の底部にあり、熱交換用配管18からの熱媒体の流入口は、流出口よりある程度上方に設けてある。大気開放用の開口19bは、シスターン19の上部(想定する最高水位より上)に設けてあり、この大気開放用の開口19bの外側には下方へ延びて終端が開放されたチューブ19cが接続されている。また、シスターン19は内部の水位を検出する水位センサ19aを備えている。本例の水位センサ19aは低水位検出用電極、高水位検出用電極および共通電極で構成される。
【0038】
水-水熱交換器20は2つの管路を所定の長さに渡って密に接触させたものであり、高温側の管路から低温側の管路へ熱を移動させる役割を果たす。水-水熱交換器20の一方の管路(図中は内側管路(第1熱交換管)20a)は、熱媒体循環経路22の途中に介挿されて接続されている。
【0039】
水-水熱交換器20の内側管路20aの出側から集熱装置21の入り側に至る第3熱媒配管22cの途中には、循環ポンプ24が設けてある。循環ポンプ24は、第3熱媒配管22c内の熱媒体を集熱装置21側へ送出する。この循環ポンプ24の下流側の第3熱媒配管22cには、切替弁25が介挿されている。切替弁25の第1接続口25aには、循環ポンプ24側からの第3熱媒配管22cが接続され、切替弁25の第2接続口25bには集熱装置21側へ至る第3熱媒配管22cが接続されている。切替弁25の第3接続口25cには連結管26の一端が接続されており、連結管26の他端は、集熱装置21から熱交換用配管18の入り側へ至る第4熱媒配管22dの途中に合流して接続されている。
【0040】
切替弁25は、第1接続口25aと第2接続口25bとを連通させ第3接続口25cを閉鎖した第1状態と、第1接続口25aと第3接続口25cとを連通させ第2接続口25bを閉鎖した第2状態とに切り替わる。
【0041】
貯湯タンク14など貯湯システム11の本体は地上に設置され、集熱装置21は貯湯システム11の本体より上方の屋根上などに設置される。第3熱媒配管22cのうち貯湯システム11の本体側の接続部27aから集熱装置21へ向かう部分の連絡配管および集熱装置21から貯湯システム11の本体側の接続部27bへ戻る部分の連絡配管には架橋ポリエチレン管を使用している。架橋ポリエチレン管の耐熱温度は、水圧、設定耐用年数によるが、90℃〜95℃である。
【0042】
集熱装置21には、集熱装置21内の湯水の温度を検出する高温センサ51が設けてある。また、連結管26の合流接続箇所より熱交換用配管18側の第4熱媒配管22dの途中には、その箇所を通る熱媒体の温度を検出する熱媒温度センサ52が設けてある。
【0043】
風呂給湯器12は、給水口に接続された接続配管16を通じて貯湯システム11から供給される湯水を設定温度に加熱して給湯配管13へ出湯するほか、給水口から供給される湯水を風呂の設定温度等に加熱して浴槽3へ注湯する湯張り機能(注湯機能)および、浴槽3内の湯水を追い焚きする追い焚き機能を備えている。
【0044】
追い焚き時に湯水を循環させる追い焚き循環経路は、浴槽3から湯水を風呂給湯器12へ取り込むための風呂戻り管32と、風呂給湯器12内の熱交換器を通る配管と、熱交換器を経て昇温された湯水を浴槽3へ送り出す風呂往き管31などで構成される。風呂往き管31は、途中で水-水熱交換器20の他方の管路(外側管路(第2熱交換管)20b)を経由して浴槽3へ至る。
【0045】
風呂給湯器12と水-水熱交換器20との間には、浴槽3から取り込んだ湯水の温度を検出するための風呂温度センサ53が設けてある。
【0046】
このほか、タンク出湯温度センサ46と混合弁17(第1バルブ17a)との間の接続配管16には、接続配管16の閉鎖・開通を切り替える出湯禁止電磁弁54が設けてある。また、出湯禁止電磁弁54とタンク出湯温度センサ46との間で接続配管16から分岐した2つの分岐配管が設けてあり、その一方の先端には排水電磁弁55が、他方の分岐配管の先端には圧力逃がし弁56が設けてある。また、給水管15には、水フィルタ、減圧弁、逆止弁などが介挿されている。
【0047】
貯湯システム11は、当該貯湯システム11の動作を統括制御する制御ユニット60を備えている。制御ユニット60は、CPU(Central Processing Unit)と、該CPUが実行するプログラムや固定データなどが記憶されたフラッシュROM(Read Only Memory)と、CPUがプログラムを実行する際に各種情報を一時記憶するRAM(Random Access Memory)、各種の信号を入出力するI/F部などを主要部とする回路で構成されている。制御ユニット60には、貯湯システム11の各種センサからの検出信号が入力されている。また制御ユニット60から各弁、循環ポンプ24などの制御対象へ制御信号が出力される。
【0048】
貯湯システム11の制御ユニット60は、貯湯システム11と風呂給湯器12との共通のリモコン(以下、共通リモコンとする)から必要な情報の授受を行い、風呂給湯器12の制御基盤70も共通リモコンから必要な情報の授受を行う。ここでは、制御ユニット60は、共通リモコンで設定されている設定温度の情報や、風呂給湯器12に追い焚き動作を指示しているか否かを示す情報などを共通リモコンから取得する。また、燃焼禁止・許可を指示する信号、バーナ73を燃焼させずに風呂循環ポンプ85(
図2参照)を駆動させる信号(風呂ポンプ駆動信号)を制御ユニット60から共通リモコンに、風呂給湯器12のメンテナンス時に用いる信号等を用いて送信する。これらの信号が示す情報を風呂給湯器12の制御基盤70は上述の共通リモコンから受信する。
【0049】
図2は、風呂給湯器12の概略構成を示している。風呂給湯器12は、入り側に入水管71が出側に給湯配管13がそれぞれ接続された給湯用水管72aと、出側に風呂往き管31が入り側に風呂戻り管32がそれぞれ接続された追い焚き用水管72bとを備えた一缶二水路型の熱交換器72を備えている。入水管71の始端は貯湯システム11側からの接続配管16が接続される給水口となっている。
【0050】
熱交換器72は下方に配置されたバーナ73からの熱を受熱するための多数のフィン72cを備えている。バーナ73にはガス供給管74が接続されている。ガス供給管74の途中には、ガスの供給/遮断を切り替えるガス弁75や供給ガス量を調整する比例弁76などが設けてある。
【0051】
給湯配管13と風呂戻り管32とは、連結管77によって接続されており、該連結管77の途中には、連結管77の閉鎖/開通を切り替える注湯電磁弁78が設けてある。また、連結管77の接続箇所より上流側の給湯配管13の途中には、閉鎖状態から全開状態まで開度を調整可能な水量サーボ79が出湯水量を調整するために設けてある。水量サーボ79の下流側には、出湯温度を検出する出湯温度センサ80が設けてある。
【0052】
さらに、入水管71から分岐し、水量サーボ79より給湯用水管72a側の所定箇所で給湯配管13に合流・接続されたバイパス管81を備え、このバイパス管81の途中に、閉鎖から全開まで開度を調整可能なバイパス調整弁82を備えている。このバイパス管81とバイパス調整弁82により、給湯用水管72aで設定温度より高い温度の湯が作られても入水管71より送り込まれた水と交ぜて設定温度の湯を作り出すようになっている。このために、給湯用水管72a出口温度を測定する給湯水管出口温度センサ91が設けられている。
【0053】
そして、給湯水管出口温度センサ91と後述の入水温度を参照しながら共通リモコンに設定された出湯温度と出湯温度センサ80の測定値とが一致するようにバイパス調整弁82が調整される。また、バイパス管81の分岐箇所より上流側の入水管71には、入水管71内の水の流量を検出する流量センサ83および入水温度を検知する入水温度センサ84が設けてある。なお演算で入水温度を推定するようにした器具にあっては入水温度センサ84を設けない場合もある。
【0054】
風呂戻り管32の途中には、浴槽3内の湯水を、追い焚き循環経路(風呂戻り管32、追い焚き用水管72b、風呂往き管31)を通じて循環させるための風呂循環ポンプ85が設けてある。風呂戻り管32に設けた流水スイッチ86は、風呂循環ポンプ85を作動させたとき、追い焚き循環経路に実際に水が循環しているか否かを検出する。
【0055】
このほか、風呂往き管31および風呂戻り管32には、それぞれ管内の温度を検出する風呂往き温度センサ87、風呂戻り温度センサ88が設けてある。
【0056】
制御基盤70は、CPUと、該CPUが実行するプログラムや固定データなどが記憶されたフラッシュROMと、CPUがプログラムを実行する際に各種情報を一時記憶するRAMなどを主要部とする回路で構成されている。制御基盤70には、風呂給湯器12が有する各種センサ、弁、風呂循環ポンプ85などが接続されている。
【0057】
さらに、制御基盤70には、配線を介して操作パネル(共通リモコン)89が接続されている。操作パネル89は、給湯の設定温度や風呂の設定温度の指定、湯張り動作や追い焚き動作の開始・終了指示、電源のオン/オフなど各種の操作をユーザから受けるスイッチ類、および動作状態や設定温度などを表示する表示部などで構成される。また、操作パネル89は時間を計時する時計部89aを備えている。時計部89aが計時する時刻は、操作パネル89の表示部に表示される。また、時計部89aが計時する時刻情報は貯湯システム11の制御ユニット60へ通知される。
【0058】
風呂給湯器12の制御基盤70は、給湯配管13から出湯する給湯動作では、操作パネル89でユーザが設定した給湯設定温度の湯が出湯されるようにバーナ73の燃焼量やバイパス調整弁82の開度などを制御する。
【0059】
浴槽3へ注湯する湯張り動作では、制御基盤70は、バーナ73を燃焼させた状態で注湯電磁弁78および水量サーボ79を開くことにより、熱交換器72の給湯用水管72aを通じて加熱した湯を、給湯配管13から連結管77へ送り出し、風呂戻り管32および風呂往き管31の双方を通じて浴槽3へ流し込む。この際、制御基盤70は、操作パネル89でユーザが設定した風呂設定温度の湯が注湯されるようにバーナ73の燃焼量やバイパス調整弁82の開度などを制御する。さらに浴槽3内の水位が設定水位に達すると注湯動作を停止して、追い焚き動作を行う。
【0060】
追い焚き動作では、注湯電磁弁78を閉鎖し、風呂循環ポンプ85を作動させた状態でバーナ73を燃焼させる。これにより浴槽3内の湯水が風呂戻り管32を通じて風呂給湯器12内に取り込まれて加熱され、過熱後の湯水が風呂往き管31を通じて浴槽3へ送り出される。
【0061】
なお、風呂給湯器12は、貯湯システム11からの指示により、バーナ73を燃焼させずに注湯動作(燃焼なしの注湯動作)を行うことができる。また、貯湯システム11からの指示により、バーナ73を燃焼させずに風呂循環ポンプ85を作動させる動作(燃焼なしの追い焚き動作)も実行可能に構成されている。
【0062】
風呂給湯器12のバーナ73は所定の最低加熱量(最低号数)以下では燃焼させることができない。そのため、風呂給湯器12の制御基盤70は、設定温度の湯を出すために必要な加熱量が最低加熱量より少ない場合は、バーナ73を燃焼オフしたままの状態に制御する。必要な加熱量は、設定温度と入水温度センサ84で検出される入水温度との温度差、流量センサ83で検出される流量、熱効率などに基づいて算出する。
【0063】
次に、貯湯システム11の各種動作について説明する。
【0064】
<給湯運転>
図3は、給湯運転の概略動作を示している。
図3では、給湯運転において湯水が流れる経路を太線で示してある。また各部において湯水が流れる方向を矢印で示してある。給湯運転では、貯湯タンク14からの湯水と分岐給水管15aからの給水とが混合弁17で混合されて風呂給湯器12の給水口(入水管71)へ供給される。風呂給湯器12は供給された水を必要に応じて加熱して給湯配管13へ出湯する。
【0065】
すなわち、貯湯タンク14に設定温度より第1温度(途中の温度低下分を考慮したマージン温度、たとえば、2℃)以上高い温度の湯水が所定量以上存在する場合(湯有り)は、設定温度+第1温度の湯水が混合弁17の出側から風呂給湯器12へ送り出されるように混合弁17の混合比を制御する。この場合、風呂給湯器12は自装置での燃焼は不要と判断し、貯湯システム11側から供給された湯水を加熱せずに給湯配管13へ出湯する。たとえば、貯湯タンク14に設けた第3温度センサ43が(設定温度+所定温度)以上の温度を検出している場合に上記動作を行う。
【0066】
一方、貯湯タンク14に設定温度より第1温度(途中の温度低下分を考慮したマージン温度)以上高い温度の湯水が所定量以上存在しない場合(湯切れ)は、風呂給湯器12での追い加熱が行われて設定温度の湯が出湯されるように、設定温度より第2温度以上低い温度の湯水が混合弁17の出側から風呂給湯器12へ送り出されるように混合弁17の混合比を制御する。設定温度−第2温度以下の温度の湯水が供給された場合、風呂給湯器12は必ずバーナ73を燃焼させる。
【0067】
たとえば、貯湯タンク14内の湯水の温度が設定温度より第2温度以上低い場合は、混合弁17で分岐給水管15aからの給水を混ぜずに貯湯タンク14内の湯水をそのまま風呂給湯器12へ送る。貯湯タンク14内の湯水が設定温度+第2温度より高いが、設定温度+第1温度より低い場合には、貯湯タンク14からの湯水に分岐給水管15aからの給水を混合弁17で混合し、設定温度−第2温度以下まで温度を下げた湯水を風呂給湯器12へ送る。これより、風呂給湯器12で追い加熱が行われる。また、追い加熱が行われても出湯温度が設定温度を超えることはない。
【0068】
なお、給湯運転では、出湯温度を設定温度に安定化させるための各種の制御をさらに加えてもよい。たとえば、風呂給湯器12の熱交換器72が冷えた状態(所謂、コールドスタート)の場合は、貯湯タンク14に(設定温度+第1温度)以上の温度の湯水が所定量以上存在する場合であっても、風呂給湯器12で追い加熱が行われるように、混合弁17の出側から風呂給湯器12へ送り出す湯水の温度を(設定温度−第2温度)以下に制御するコールドスタート対策を加える。すなわち、追い加熱なしでは、冷えた熱交換器72に熱を奪われて、その分、出湯温度が低下する。また、冷えた熱交換器72は、該熱交換器72を通る湯水によって徐々に昇温されるので、なかなか出湯温度が上昇せず、設定温度の湯水が出るまでに長い時間を要するが、上記のコールドスタート対策により、当初から設定温度の湯を出湯することが可能になる。
【0069】
<集熱運転>
集熱運転は集熱装置21で太陽光から得た熱を利用して貯湯タンク14内の水を加熱する動作である。集熱運転は、集熱装置21の高温センサ51の検出温度が貯湯タンク14内の水温より一定温度以上高いなどの運転条件を満たす場合に行われる。
【0070】
集熱運転は、集熱装置21で太陽光から得た熱を利用して貯湯タンク14内の水を加熱する集熱動作と、貯湯タンク14内の湯水の温度が上がって熱回収効率が低下した場合に、貯湯タンク14内の湯水の熱を浴槽3の湯水へ移動させる熱退避動作とで構成される。熱退避動作には、貯湯タンク14の湯水を浴槽3へ注湯する第1熱退避動作と、貯湯タンク14の熱を水-水熱交換器20を通じて浴槽水へ移動させる第2熱退避動作とがある。
【0071】
図4は、貯湯システム11が行う集熱動作の概略を示している。貯湯タンク14は、底部の配管接続口(入口)に接続された給水管15から給水の供給を受けて、通常は満水の状態にある。集熱動作時、制御ユニット60は、切替弁25を第1接続口25aと第2接続口25bとが連通し第3接続口25cを閉鎖した状態に設定した上で、循環ポンプ24を駆動する。
【0072】
図4では、集熱動作において熱媒体(水)が循環する経路を太線で示してある。また各部において熱媒体が流れる方向を矢印で示してある。詳細には、シスターン19内の熱媒体は、循環ポンプ24の作用により、第3熱媒配管22c等を通じて集熱装置21に向かって流れ、集熱装置21を通る際に加熱されて昇温し、第4熱媒配管22dから貯湯タンク14内の熱交換用配管18を経てシスターン19へ戻るように循環する。熱交換用配管18を通る熱媒体の温度より貯湯タンク14内の熱交換用配管18の周囲の水温が低い場合、熱交換用配管18にて熱媒体の熱が貯湯タンク14内の水へ移動して貯湯タンク14内の水が加熱される。
【0073】
熱交換用配管18は貯湯タンク14の下部にある。また、貯湯タンク14の底部から給水が供給され、貯湯タンク14の天井部の配管接続口(出口)から接続配管16へ湯水が流出するので、貯湯タンク14内の水温は底部が低く天井部ほど高い温度勾配になっている。
【0074】
貯湯タンク14の湯水が出湯などに使用されない状態で集熱運転が長く継続すると、貯湯タンク14下部の熱交換用配管18の周辺の水温が上昇し、熱交換用配管18内を流れる熱媒体と熱交換用配管18の周囲の水との温度差が少なくなり、熱交換用配管18による貯湯タンク14内の湯水の加熱効率が低下する。言い換えると、熱交換用配管18を通る際に熱媒体の温度があまり下がらなくなるので、シスターン19を介して集熱装置21に送り出される熱媒体の温度も比較的高くなり、集熱装置21での太陽熱の熱回収効率(太陽熱の利用効率)が低下する。
【0075】
そこで、貯湯システム11は、浴槽3の水位が設定水位未満などの条件を満たして浴槽3への注湯が可能ならば、貯湯タンク14内の湯水を浴槽3に注湯する第1熱退避動作を行う。また、浴槽3に設定水位の湯水が有ってこれ以上注湯できない場合は、貯湯タンク14の湯水の熱を水-水熱交換器20を介して浴槽水へ移動させる第2熱退避動作を行うようになっている。
【0076】
<第1熱退避動作>
図5は、第1熱退避動作において湯水が流れる経路を太線で示してある。第1熱退避動作は前述の集熱動作と並行に行われる、もしくは、第1熱退避動作中の集熱動作は停止される。第1熱退避動作では、貯湯システム11の制御ユニット60は風呂給湯器12に対してバーナ73の燃焼(加熱動作)を停止させた状態で注湯電磁弁78を開くように、すなわち、燃焼なしの注湯動作を指示する。
【0077】
注湯電磁弁78が開くと、貯湯タンク14の上部の湯水が接続配管16、混合弁17を通じて風呂給湯器12に供給される。この湯水の一部は風呂給湯器12内の熱交換器72を経て、残りの湯水はバイパス管81を経てそれぞれ連結管77に至り、注湯電磁弁78を経た後、風呂往き管31と風呂戻り管32の2つの経路に分かれて浴槽3へ注湯される。
【0078】
第1熱退避動作では、浴槽3に注湯される湯の温度が風呂の設定温度になるように、混合弁17の混合比を設定する。ここでは、接続配管16や熱交換器72を通る際の温度低下を考慮して、混合弁17の出側の温度が風呂の設定温度+2℃になるように混合弁17の混合比を制御する。
【0079】
貯湯タンク14の上部の湯水が注湯に使用されると、これに伴って貯湯タンク14の下部に給水管15から冷たい給水が補充されて、熱交換用配管18の周囲の水温が低下する。これにより、集熱動作における太陽熱の熱回収効率(太陽熱の利用効率)が向上し回復する。
【0080】
第1熱退避動作は、集熱動作での太陽熱の熱回収効率が回復したら終了する。そして、再び太陽熱の熱回収効率が低下したら第1熱退避動作を開始する。したがって、第1熱退避動作による浴槽3への注湯は、少しずつ間欠的に行われる。このように、第1熱退避動作による浴槽3への注湯を少しずつ間欠的に行うので、貯湯タンク14の上部に十分な量の熱い湯が溜まっている状態を維持でき、使用者による次の出湯要求に対応することができる。
【0081】
<第2熱退避動作>
図6は、第2熱退避動作における熱媒体の循環経路および浴槽水の循環経路を示している。
図6では、第2熱退避動作において熱媒体(水)が循環する経路を太線で、浴槽水の循環経路を太破線で示してある。さらに各部において熱媒体が流れる方向および浴槽水の流れる方向をそれぞれ矢印で示してある。
【0082】
第2熱退避動作では、制御ユニット60は、切替弁25を第1接続口25aと第3接続口25cとが連通し第2接続口25bを閉鎖した状態に設定した上で、循環ポンプ24を駆動する。これにより、熱媒体は、集熱装置21を迂回し、水-水熱交換器20と貯湯タンク14とを通る迂回循環経路を循環する。また、風呂給湯器12に対して燃焼(加熱動作)を停止させた状態で風呂循環ポンプ85を駆動するように指示(燃焼なしの追い焚き動作を指示)する。これにより、水-水熱交換器20の外側管路20bを経由する追い焚き循環経路を通じて浴槽水が循環する。
【0083】
第2熱退避動作は、浴槽3に所定量(所定水位)以上の湯水が存在すること、浴槽3内の湯水の温度が設定温度以下であることなどが稼動条件になっている。第2熱退避動作では、水-水熱交換器20において、内側管路20aを通って循環する熱媒体から外側管路20bを通って循環する浴槽水へ熱が移動し、熱交換用配管18にて貯湯タンク14内の湯水の熱が熱媒体に移動する。すなわち、熱媒体を媒体して、貯湯タンク14下部の湯水の熱が浴槽水に移動し、浴槽水は昇温し、貯湯タンク14下部の湯水は温度低下する。
【0084】
第2熱退避動作では、熱媒体の循環経路を、集熱装置21を迂回する迂回循環経路に切り替えた上で、熱媒体の循環ポンプ24を全速で作動させる。また、浴槽水を循環させる風呂給湯器12の風呂循環ポンプ85が速度可変の場合は、風呂循環ポンプ85も全速で作動させる。
【0085】
シスターン19が大気開放型なので、集熱装置21を迂回させて熱媒体の循環経路を短くすると、循環経路における圧損が少なくなり、循環ポンプ24による熱媒体の搬送量が増加し、貯湯タンク14下部の湯水の温度を低下させる効率が向上する。しかし、集熱装置21を迂回させることで集熱装置21に熱媒体が流れなくなるので、集熱装置21内に停留している熱媒体の温度が太陽熱を受けてどんどん上昇する。前述したように集熱装置21と貯湯システム11の本体とを繋ぐ連絡配管は耐熱温度が90℃〜95℃なので、集熱装置21内に停留している熱媒体がこの耐熱温度を超える前に、熱媒体が集熱装置21を通って循環するように循環経路を通常状態に戻す必要がある。
【0086】
そこで、熱媒体を循環させる循環ポンプ24や浴槽水を循環させる風呂給湯器12の風呂循環ポンプ85を全速で作動させる。これにより、貯湯タンク14内の湯水から浴槽水への単位時間当たりの熱の移動量が増加するので、短時間で効率よく貯湯タンク14下部の湯水の温度が低下する。その結果、第2熱退避動作が短時間で終了し、熱媒体が集熱装置21を迂回して循環する期間を短縮することができる。
【0087】
次に、集熱動作および熱退避動作を含む集熱運転全体の動作の流れを説明する。
【0088】
図7は、集熱運転全体の動作フローを示している。ここでは、貯湯タンク14下部の水温を第2温度センサ42の検出温度で判断するものとする。貯湯システム11は、集熱運転において第2温度センサ42の検出温度が40℃未満ならば(ステップS101;Yes)、
図4に示した通常の集熱動作を継続する(ステップS102)。
【0089】
第2温度センサ42の検出温度が40℃以上の場合は(ステップS101;No)、浴槽3内の水位が設定水位未満か否かを判断する(ステップS103)。なお、貯湯システム11の制御ユニット60は、浴槽3内の水位や浴槽水の温度の検出を風呂給湯器12に依頼し、その応答を風呂給湯器12から受け取ることで、浴槽3内の水位や浴槽水の温度を認識する。
【0090】
浴槽3内の水位が設定水位未満ならば(ステップS103;Yes)、
図5に示した第1熱退避動作を行う。詳細には、風呂給湯器12に対して、バーナ73の燃焼なしに注湯電磁弁78を開くように要求する。また、混合弁17の出側の湯温が、たとえば、風呂の設定温度+2℃になるように混合弁17を制御する。第1熱退避動作による注湯動作を行うことで、貯湯タンク14の下部には給水が補充され、貯湯タンク14下部の湯水の温度が低下する。
【0091】
第1熱退避動作の開始後、制御ユニット60は、第2温度センサ42の検出温度が、40℃より低い所定の温度(ここでは35℃とする)以下になるか否か(ステップS105)、および浴槽3の水位が設定水位に到達するか否か(ステップS106)を監視し、第2温度センサ42の検出温度が35℃以下になった場合(ステップS105;Yes)、もしくは浴槽3の水位が設定水位に到達した場合は(ステップS106;Yes)、第1熱退避動作を停止させる(ステップS107)。具体的には、風呂給湯器12に対して注湯電磁弁78を閉じるように、すなわち、燃焼なしの注湯動作を停止するように指示する。その後、ステップS101に戻って処理を継続する。
【0092】
上記のように第2温度センサ42の検出温度が40℃になった場合に第1熱退避動作を開始し、35℃に下がったら第1熱退避動作を停止させるので、第1熱退避動作は間欠的に繰り返し行われて、浴槽3に少しずつ注湯される。そのため、第1熱退避動作に起因して貯湯タンク14上部の高温の湯水が短時間に大量に減少することはなく、熱い湯を貯湯タンク14の上部に十分確保しながら、貯湯タンク14下部の湯水の温度を下げて、太陽熱の熱回収効率低下を防ぐことができる。
【0093】
浴槽3の水位が設定水位に達しているときは(ステップS103;No)、浴槽3内の湯水の温度が風呂の設定温度未満か否かを調べる(ステップS108)。浴槽3内の湯水の温度が風呂の設定温度未満の場合は(ステップS108;Yes)、熱媒体の循環経路を、集熱装置21を迂回する迂回循環経路に切り替えて(ステップS109)、
図6に示した第2熱退避動作を開始する(ステップS110)。詳細には、風呂給湯器12に対して燃焼(加熱動作)を停止させた状態で風呂循環ポンプ85を駆動するように指示する。熱媒体の循環ポンプ24は全速で駆動する。また、風呂給湯器12の風呂循環ポンプ85が速度可変ならば、風呂給湯器12に対して風呂循環ポンプ85を全速で動作させるように指示する。
【0094】
これにより、貯湯タンク14下部の湯水の熱が水-水熱交換器20にて浴槽水へ移動するようになり、貯湯タンク14下部の湯水の温度が低下する。
【0095】
第2熱退避動作の開始後、制御ユニット60は、第2温度センサ42の検出温度が40℃より低い所定の温度(ここでは35℃とする)以下になるか否かを監視する(ステップS111)。第2温度センサ42の検出温度が35℃以下になったら(ステップS111;Yes)、第2熱退避動作を停止させる。(ステップS107)。具体的には、風呂給湯器12に対して風呂循環ポンプ85の停止を指示する。さらに、熱媒体の循環経路を、集熱装置21を経由する通常の循環経路に戻し、循環ポンプ24の速度制御を通常の制御に戻す。(ステップS113)。その後、ステップS101へ移行して処理を継続する。
【0096】
浴槽3内の湯水の温度が風呂の設定温度に達しているときは(ステップS108;No)、通常の集熱動作を行う(ステップS102)。この場合、第1、第2いずれの熱退避動作も実行できないので太陽熱の熱回収効率は低いが、集熱動作を行うことで、太陽熱を貯湯タンク14の湯水に蓄熱することができる。
【0097】
なお、第2温度センサ42等の検出水温が、規定の上限温度(たとえば80℃)に達した場合は、集熱運転自体(
図7の処理)が中止される。
【0098】
上記のように、浴槽3が既に設定水位に達していて注湯できない場合でも、浴槽水を追い焚きする第2熱退避動作によって貯湯タンク14下部の湯水の温度を下げることができるので、太陽熱の熱回収効率の低下を防ぐことができる。
【0099】
本発明では、集熱運転中に貯湯タンク14内の湯水の温度が上昇し、これ以上の蓄熱が難しくなった場合でも、貯湯タンク14内の湯水を浴槽3へ注湯する第1熱退避動作、あるいは、貯湯タンク14内の湯水の熱で浴槽水を昇温(追い焚き)する第2熱退避動作を行うことで、貯湯タンク14内の湯水の温度を下げて、太陽熱の熱回収効率の低下を防ぐことができる。第1、第2の熱退避動作は、言い換えれば、浴槽3を太陽熱の蓄熱場所として利用する動作であり、浴槽3は、貯湯タンク14のサブタンク的な役割を果たす。
【0100】
次に、浴槽3に退避させた熱を貯湯タンク14に戻す風呂熱回収運転について説明する。
【0101】
風呂熱回収運転は、風呂の残り湯の熱を利用して貯湯タンク14内の湯水を加熱する動作である。すなわち、サブタンク(浴槽)に退避させた熱を貯湯タンク14に戻す動作である。
【0102】
風呂熱回収運転における湯水および熱媒体の循環経路は、
図6に示す第2熱退避動作と同様である。すなわち、風呂熱回収運転では、制御ユニット60は、切替弁25を第1接続口25aと第3接続口25cとが連通し第2接続口25bを閉鎖した状態に設定した上で、循環ポンプ24を駆動する。これにより、集熱装置21を通らずに、水-水熱交換器20と貯湯タンク14とを通って熱媒体が循環する。また、風呂給湯器12に対して燃焼(加熱動作)を停止させた状態で風呂循環ポンプ85を駆動するように指示する。これにより、浴槽水が、水-水熱交換器20の外側管路20bを含む追い焚き循環経路を循環する。
【0103】
風呂熱回収運転は、貯湯タンク14内の水温(たとえば、第1温度センサ41の検出温度)が浴槽3の水温より低いことが運転条件となっており、水-水熱交換器20において、外側管路20bを通る浴槽水から内側管路20aを通る熱媒体へ熱が移動し、この熱が熱交換用配管18の部分で貯湯タンク14内の水へ移動することで、貯湯タンク14内の水が加熱される。
【0104】
より詳細には、風呂熱回収運転では、まず、風呂循環ポンプ85を一時的に作動させ、浴槽水があるか否かを確認する。そして、浴槽水があり、かつ、浴槽水の温度が第1温度センサ41の検出温度より所定温度(たとえば、15℃)以上高い場合に風呂熱回収運転を行い、差が10℃以下もしくは1時間を越えると運転を停止する。時間的制限は、風呂循環ポンプ85の耐久性を考慮したものである。
【0105】
このように、風呂熱回収運転では、サブタンクとしての浴槽3に退避させた熱を必要に応じて貯湯タンク14に戻すことができる。たとえば、夜になって1日の集熱運転が終了し、かつ、風呂の自動運転がオフになったときに風呂熱回収運転を行えば、翌日の集熱運転の負担が軽減される。
【0106】
以上、本発明の実施の形態を図面によって説明してきたが、具体的な構成は実施の形態に示したものに限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲における変更や追加があっても本発明に含まれる。
【0107】
たとえば、第1熱退避動作中は、集熱動作を停止してよいし、集熱動作を並行に行うようにしてもよい。
【0108】
また、実施の形態では、第2熱退避動作の実行中は、熱媒体の循環経路を迂回循環経路に切り替えるようにしたが、熱媒体の循環経路は集熱動作と同様にしておき、第2熱退避動作の実行中に集熱動作を並行して行うように構成してもよい。
【0109】
図8は、集熱運転と第2熱退避動作とを並行に実行する場合の浴槽水および熱媒体の経路を示している。同図では、集熱動作において熱媒体(水)が循環する経路を太線で示してあり、浴槽水の循環経路を太破線で示してある。集熱動作を並行に実行すれば、集熱装置21に熱媒体が停留しないので、第2熱退避動作を継続でき、切替弁25の切り替え回数を少なくすることができる。
【0110】
また、実施の形態では第2温度センサ42の検出温度を、第1熱退避動作および第2熱退避動作を実行するか否かの判断基準としたが、第1温度センサ41など、貯湯タンク14下部の湯水の温度を検出するセンサであれば他のセンサでもかまわない。なお、第1熱退避動作および第2熱退避動作を実行するか否かの判断基準は、太陽熱の熱回収効率の低下・回復を判断できれば、他の方法でもよい。
【0111】
実施の形態では、第2温度センサ42の検出温度が40℃以上になることを熱退避動作の開始条件とし、第2温度センサ42の検出温度が35℃以下になることを熱退避動作の停止条件としたが、これらの温度は例示であり、適宜に設定すればよい。
【0112】
また、第2熱退避動作の終了を判断する温度は38℃など、第2熱退避動作の開始条件となる40℃に比較的近い温度にしてもよい。すなわち、迂回循環経路に切り替えている間に集熱装置21に停留している熱媒体の温度はどんどん上昇するので、この温度が架橋ポリエチレン製の連絡配管の耐熱温度を越えないように、第2熱退避動作の停止を判断する閾値温度と第2熱退避動作の開始条件となる閾値温度との温度差を、第1熱退避動作の場合より小さくし、1回の第2熱退避動作が短時間のうちに停止・終了するようにしてもよい。
【0113】
また、迂回循環経路に切り替えて第2熱退避動作を行っている際に、集熱装置21に設けた高温センサ51の温度が連絡配管の耐熱温度に近い所定の温度に達したとき、強制的に第2熱退避動作を停止させて、あるいは第2熱退避動作を継続させたまま、熱媒体の循環経路を通常の循環経路に戻し、集熱装置21を経由して熱媒体が循環するようにしてもよい。
【0114】
このほか、実施の形態では、バーナ73を燃焼させて加熱するタイプの風呂給湯器12を使用したが、風呂給湯器の熱源はバーナに限定されるものではない。
【0115】
また、貯湯タンク14から供給する湯水を出湯と風呂の注湯に利用可能であればよく、貯湯システム11の後段に風呂給湯器12を設けることは必須ではない。たとえば、接続配管16を途中で分岐し、一方は出湯栓に通じ、他方は注湯弁を介して浴槽3に通じるような構成でもよく、この場合、貯湯システム11からその注湯弁の開閉を制御すればよい。さらに貯湯システム11が、浴槽水の循環経路と浴槽水を循環させるポンプとを備える構成としてもよい。
【0116】
実施の形態では、水-水熱交換器20を利用して第2熱退避動作を行うようにしたが、たとえば、貯湯タンク14内の下部に、第2の熱交換用配管を通し、風呂往き管31もしくは風呂戻り管32の途中にこの第2の熱交換用配管を介挿するような構成としてもよい。また第2の熱交換用配管を通すか迂回させるかを切り替える弁を設け、通常の追い焚き動作では迂回させ、第2熱退避動作を行う場合は浴槽水が第2の熱交換用配管を経由して循環するように構成してもよい。
【0117】
なお、実施の形態では、風呂給湯器12を一缶二水路型としたが風呂の追い焚きと給湯とを別々の熱交換器で行う給湯器であってもかまわない。