【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1による電磁弁は、
ボディ(1)と、ボビン(2)と、前記ボビン(2)の外周に巻回された電磁コイル(3)と、前記ボビン(2)の内周側に固定的に配置されるとともに前記電磁コイル(3)への通電によって励磁される固定鉄心(4)と、前記ボビン(2)の内周側であって前記固定鉄心(4)と同軸上に配置されるとともに前記電磁コイル(3)への通電によって励磁され前記固定鉄心(4)に磁気吸引される可動鉄心(5)と、前記固定鉄心(4)及び前記可動鉄心(5)間に配置されるとともに前記可動鉄心(5)を前記固定鉄心(4)から離間する方向に付勢するバネ手段(7)と、前記ボディ(1)に設けられた弁室(13)と、前記弁室(13)に設けられた弁座(14)と、前記可動鉄心(5)のストローク方向一端に保持され前記弁座(14)に接離可能に当接する弁体(6)と、を備える電磁弁において、
前記弁室(13)は1次側の入力ポート(15)に直接連通するとともに前記弁座(14)内周の弁孔(16)を介して2次側の出力ポート(17)に連通し、
前記弁体(6)は、ゴム状弾性体
によって円板状に成形され、その径方向中央に前記弁座(14)内周の弁孔(16)に通じる軸方向の貫通孔(6d)が設けられ、その外周面に環状を呈する下向きの段差部(6a)が設けられ、前記段差部(6a)より上側の部位が大径の円板部である大径部(6b)とされるとともに下側の部位が小径の円板部である小径部(6c)とされ、前記大径部(6b)の上端面(6e)に前記可動鉄心(5)の下端面(5a)に対し接離可能に当接するシールリップ(6f)が設けられ、前記小径部(6c)の下端面(6h)は前記弁座(14)に当接する平坦面とされ、前記大径部(6b)の外周面に円周上一部の溝状流路(6g)が軸方向に貫通して設けられ、
前記可動鉄心(5)は、その下端部に円筒状の保持部(5b)が設けられ、前記保持部(5b)の内周側に前記弁体(6)が軸方向に移動可能に収容されるとともに、前記弁体(6)を前記保持部(5b)から抜け止めするため前記保持部(5b)の先端に内径方向ヘ向けて折り曲げ部(5c)が設けられ、前記折り曲げ部(5c)に前記弁体(6)の段差部(6a)が係合することによって前記弁体(6)
が前記保持部(5b)に対して抜け止めされ、
当該電磁弁が閉弁状態にあり、前記弁体(6)がその下端面(6h)を前記弁座(14)に当接するとともにその上端面(6e)に設けたシールリップ(6f)を前記可動鉄心(5)の下端面(5a)に当接したとき、前記可動鉄心(5)の保持部(5b)下端に設けた折り曲げ部(5c)と前記弁体(6)の段差部(6a)との間に所定の軸方向間隙(c
1)が設定されることによって、前記弁体(6)は前記軸方向間隙(c
1)の範囲で前記可動鉄心(5)に対し軸方向に相対変位することが可能とされ、前記シールリップ(6f)が前記可動鉄心(5)の下端面(5a)に当接したときのシール面積(S
1)が、前記弁体(6)が前記弁座(14)に当接したときのシール面積(S
2)の2分の1よりも小さく設定され、
前記可動鉄心(5)の折り曲げ部(5c)の先端と前記弁体(6)の小径部(6c)との間に所定の径方向間隙(c
2)が設定され、前記径方向間隙(c
2)と前記溝状流路(6g)とを通して、前記弁体(6)の可動鉄心(5)側の端面に対し1次流体圧が作用可能とされていることを特徴とする。
【0010】
上記構成を備える本発明の電磁弁は、その常態(非通電時)において、バネ手段のバネ力(反力)および流体圧(1次流体圧)によって弁体が弁座に押し付けられた状態にあり、よって弁は閉弁している。弁体には弁座内周の弁孔に通じる貫通孔が設けられているが、弁体の可動鉄心側の端面であって貫通孔の周りに設けられたシールリップが可動鉄心に当接しているため、貫通孔は実質的に閉じている。またこのとき、可動鉄心に加わっている閉弁方向の力F
1は、
F
1=(バネ手段のバネ力)+(シールリップによるシール面積)×(流体圧)・・・・(イ)式
であり、一方、弁体に加わっている閉弁方向の力F
2は、
F
2=(バネ手段のバネ力)+((弁座によるシール面積)−(シールリップによるシール面積))×(流体圧)・・・・(ロ)式
であり、シールリップによるシール面積を弁座によるシール面積よりも小さく設定することにより、F
1<F
2となるように寸法を設定する。次いで、コイルに通電することにより可動鉄心および固定鉄心間に吸引力Pが発生し、この吸引力PがF
1を超えた時点(P>F
1・・・・(ハ)式)で可動鉄心が固定鉄心へ向けて移動するが、弁体は可動鉄心に対し可動鉄心のストローク方向へ所定量に亙って相対変位可能であることから、瞬間的に可動鉄心のみが微量移動する。そして可動鉄心が微量移動することで可動鉄心がシールリップから離れ、可動鉄心および弁体間のシール性が無くなり、流体圧が弁体の貫通孔を経て弁孔側(出力側)まで加わることとなる。この状態において弁体の前後には圧力差が無くなり、かつ可動鉄心も離脱していることからバネ手段のバネ力も無いため、F
2≒0となる。最終的に弁体は可動鉄心に保持されて弁座から離れるため、弁は開弁状態となる。これを弁体が可動鉄心に一体に組み付けられた従来技術では、上記(ハ)式ではなく、
P>(バネ手段のバネ力)+(弁座によるシール面積)×(流体圧)・・・・(ニ)式
で開弁することから、高水圧地域でも作動させるためには大きな吸引力が必要となり作動音も大きくなるところ、本発明によれば、弁体におけるシールリップによるシール面積を小さく設定することで小さな吸引力でも作動させることが可能となり、同時に作動音の低減も達成することができる。
【0011】
可動鉄心が弁体を相対変位可能に保持するため可動鉄心には円筒状の保持部を設けるのが好適であり、また保持部が弁体を抜け止めするため保持部にはその先端に内径方向へ向けての折り曲げ部を設けるのが好適である。また、弁体の可動鉄心側の端面に対し1次流体圧を作用させるため、弁体の外周面に円周上一部の流路を設けたり、保持部および弁体間に径方向間隙を設定したり、あるいは可動鉄心に連通穴を設けたりするのが好適である。