(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901939
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ベースプレート
(51)【国際特許分類】
H01L 23/36 20060101AFI20160331BHJP
H01L 25/07 20060101ALI20160331BHJP
H01L 25/18 20060101ALI20160331BHJP
H05K 7/20 20060101ALI20160331BHJP
H02M 7/48 20070101ALI20160331BHJP
H02M 3/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
H01L23/36 C
H01L25/04 C
H05K7/20 D
H02M7/48 Z
H02M3/00 Y
【請求項の数】7
【外国語出願】
【全頁数】13
(21)【出願番号】特願2011-240740(P2011-240740)
(22)【出願日】2011年11月2日
(65)【公開番号】特開2012-99821(P2012-99821A)
(43)【公開日】2012年5月24日
【審査請求日】2014年10月29日
(31)【優先権主張番号】10189684
(32)【優先日】2010年11月2日
(33)【優先権主張国】EP
(73)【特許権者】
【識別番号】505063441
【氏名又は名称】アーベーベー・テヒノロギー・アーゲー
(74)【代理人】
【識別番号】100108855
【弁理士】
【氏名又は名称】蔵田 昌俊
(74)【代理人】
【識別番号】100091351
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 哲
(74)【代理人】
【識別番号】100088683
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 誠
(74)【代理人】
【識別番号】100109830
【弁理士】
【氏名又は名称】福原 淑弘
(74)【代理人】
【識別番号】100075672
【弁理士】
【氏名又は名称】峰 隆司
(74)【代理人】
【識別番号】100095441
【弁理士】
【氏名又は名称】白根 俊郎
(74)【代理人】
【識別番号】100084618
【弁理士】
【氏名又は名称】村松 貞男
(74)【代理人】
【識別番号】100103034
【弁理士】
【氏名又は名称】野河 信久
(74)【代理人】
【識別番号】100140176
【弁理士】
【氏名又は名称】砂川 克
(72)【発明者】
【氏名】リディア・フェラー
(72)【発明者】
【氏名】サムエル・ハルトマン
【審査官】
松田 直也
(56)【参考文献】
【文献】
国際公開第2008/123172(WO,A1)
【文献】
国際公開第2007/125878(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 23/36
H01L 25/07
H01L 25/18
H02M 3/00
H02M 7/48
H05K 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ベースプレート(34)、特にパワーモジュール(10)の為のベースプレート(34)、であって、金属、特にアルミニウム、で形成された母材(38)を備えていて、
ここにおいては、少なくとも2つの補強材(42)が母材(38)中において互いに隣り合わせに設けられていて、
ここにおいては、補強材(42)が互いに離れていて、
ベースプレート(34)を放熱器(36)に固定する為の複数の貫通孔(40)が母材(38)中においてベースプレート(34)の縦に沿うとともに幅に沿い設けられていて、
ベースプレート(34)の幅に沿う貫通孔間には補強材(42)が設けられておらず、 ベースプレート(34)が少なくとも部分的に弓形の如く形成されており、そして、弓形がベースプレート(34)の幅のみに渡り形成されている、
ベースプレート。
【請求項2】
少なくとも2つの補強材(42)が炭化珪素から形成されている、請求項1に記載されているベースプレート。
【請求項3】
少なくとも2つの補強材(42)が相互間に、1mm乃至5mmの範囲内、特に3mm、の距離の隙間を伴って互いに配列されている、請求項1又は2に記載されているベースプレート。
【請求項4】
最大の弓形振れ高さが100μm±50μmである、請求項1乃至3のいずれか1項に記載されているベースプレート。
【請求項5】
補強材(42)の全面積が、ベースプレート(34)の面積に関して少なくとも70%、特にベースプレート(34)の面積に関して少なくとも85%、である、請求項1乃至4のいずれか1項に記載されているベースプレート。
【請求項6】
母材(38)が、補強材(42)上及び補強材(42)間に形成された金属層として形成されている、請求項1乃至5のいずれか1項に記載されているベースプレート。
【請求項7】
ベースプレート(34)の熱膨張係数の最大値が、8−12ppm/kの範囲内、特に10ppm/k、にある、請求項1乃至6のいずれか1項に記載されているベースプレート。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ベースプレートに関係しており、特にパワーモジュールの為のベースプレートに関係している。
【背景技術】
【0002】
パワー半導体の使用は熱を発生させるという損失を導くので、熱の取り扱いは、パワーモジュール,即ち高パワー半導体、のパッケージの為の重要な問題の一つである。型(die)において発生された熱は、放熱器を介して環境へと排出されなければならない。モジュールは放熱器上に設けられ、そして、熱はベースプレートを介してモジュールの内部構造から放熱器へと流れ、ここに於いてベースプレートは熱抵抗に対する主要な貢献物の一つである。従って、ベースプレートの熱抵抗の最適化及び減少は高パワー半導体モジュールの熱の取扱い,信頼性,そして寿命に大きな影響を持つ。
【0003】
ヨーロッパ特許(EP)2012354A1からは、アルミニウム炭化珪素複合体、及びアルミニウム炭化珪素複合体の個々の主要面上に形成された主構成要素としての金属含入アルミニウムで形成された複数のアルミニウム層を備えている、パワーモジュールの為のベースプレートが知られている。ベースプレートと熱放散フィン、即ち放熱器、との間の隙間を減少させるよう、ベースプレートは凸状の弓形を有するよう形成されている。
【0004】
ヨーロッパ特許(EP)1973157A1からは、主構成要素として金属含入アルミニウムが含浸されている平板形状炭化珪素多孔性本体であるアルミニウム炭化珪素複合体、及びアルミニウム炭化珪素複合体の主要面の一つ上にのみ形成された主要構成要素としての金属含入アルミニウムで形成された1つのアルミニウム層を備えている。また、ベースプレートと熱放散フィン、即ち放熱器、との間の隙間を減少させるよう、ベースプレートは凸状の弓形を有するよう形成されている。
【0005】
これらのベースプレートは、放熱器の表面の形状、即ち粗さ、に適用される能力に限界がある。これは、ベースプレートと放熱器との間の容積の大きな凹所の形成が導かれる可能性があり、これにより熱放散特性が減少される。さらに、十分な熱放散特性を得る為に、これらのベースプレートはしばしば内部張力を伴い放熱器ばかりでなくパワーモジュールの内部構造に固定されている。結果として、ベースプレートが割れる危険性がある。
【0006】
PCIMヨーロッパ2009会議報告書、アユミ マルタ(Ayumi Maruta),ミツハル タバタ(Mitsuharu Tabata),2500A/1200V Dual IGBT モジュールから、複数の分離したベースプレート、即ちベースプレート区域、がその上に配置されている冷却フィンを備えているパワーモジュールの配置が知られている。
【0007】
ベースプレートが放熱器に接続される場合、通常は、高い熱伝達性を有している熱放散グリース,ゲル(gel),又はマットが接続されるべき部分に適用され、そしてベースプレートが、ベースプレートの周辺部分中に設けられている孔を介した螺子により、放熱器、即ち熱放散ユニット、に固定されている。上述されているような配置においては、しばしば、個々のベースプレート間の隙間の形成を完全には避けることができない。これらの隙間の形成は、従って、隙間を介してのグリースの漏れ、又は、ゲル,他の粒子,又はそれらと同様なものの低分子量分子の如き材料が、モジュールの内側から外側へと拡散する危険性、を導く。グリースの損失は、ベースプレートから放熱器への熱放散効果を減少させるという不利益を導く。
【発明の概要】
【0008】
従って、この発明の目的は、当該技術分野において知られている不利益の少なくとも1つを無くす、改良されたベースプレートを提供することである。
【0009】
この目的は、請求項1に従っているベースプレートにより達成される。この発明の好適な実施形態は、従属請求項中に規定されている。
【0010】
この発明に従っているベースプレートは特にパワーモジュールの為に適している。それは、金属、特にアルミニウム、で形成された母材を備えていて、ここにおいては、少なくとも2つの補強材が母材中において互いに隣り合わせに設けられていて、そしてここにおいては、補強材が互いに離れている。
【0011】
結果として、この発明に従えば、ベースプレートは、パワーモジュール、即ちパワーモジュールの内部構造、から放熱器へと熱を抽出する熱拡散器(heat spreader)として作用する、少なくとも2つの独立したそして分離されている補強材を有する。分離されている補強材はそれにより母材中に配置され、そして、従って、母材中に好適に十分埋設されているインサート(insert)を形成する。
【0012】
補強材はそれにより母材に比較してより剛く(stiff)、母材は従って補強材に比較してより延性(ductile)がある。安定性が従って補強材により主に形成されていて、これにより母材はそれ自体がより曲げやすい材料で形成されている。好ましくは、より延性(ductile)がある母材材料が剛い(stiff)補強材を完全に取り囲んでいて、そして、補強材を共に保持する。
【0013】
大きな構造強度を有している補強材の不連続な構造のお蔭により、ベースプレートは全体として、或る限度内、特に補強材間の隙間において、曲げやすい。この効果は、もしも母材が、アルミニウムの如き延性(ductile)がある金属で形成されているのであれば、特に明確である。これに関して、この発明に従えば、アルミニウムで形成されている母材は、母材が純粋なアルミニウム又は主たる構成要素としてアルミニウムを有している金属で形成されていることを意味している。
【0014】
この発明に従っているベースプレートは従って、補強材それ自体が互いに独立して反応できるので、放熱器の表面の配置(geometry)及び形状(topography)に対し非常に良く適合されることが出来る。この適合は、放熱器の潜在的な粗い表面、即ち望ましくない不均一、にもかかわらず、放熱器の表面とベースプレートとの間の非常に密接な接触を導く。この非常に密接な接触は、放熱器の表面とベースプレートとの間の多くの大きな容量の熱絶縁凹所の阻止を導き、そして従って、それらの間の改良された熱伝達を導く。この発明に従っているベースプレートを備えているパワーモジュールの熱放散特性は結果として改良される。
【0015】
さらに、独立していて、そして分離されている補強材の提供のお蔭で、ベースプレート内の内部応力は強く減少されて、ベースプレートを割る、そして従って破壊するより低い危険性を導く。ベースプレートの耐久性、即ち寿命、は従って向上される。これに続き、パワーモジュール内側の応力が減少される。一例として、パワーモジュールの設置の間の小さくなったサブストレイト曲げが提供される。
【0016】
さらには、不連続な、そして分離されている補強材が、連続していて、そしてより延性(ductile)がある母材材料内に配置されているという事実のお蔭で、放熱器が全体としてベースプレートにより覆われている。結果として、例えば上昇した温度による、熱放散グリース(heat dissipation grease)の漏れが、確実に避けられる。このような漏れは減少された熱放散特性を導くので、熱放散特性の耐久性が向上される。従って、当該技術分野において知られているような幾つかのベースプレートの提供の不利益が取り除かれる。さらに、汚染が確実に避けられる。
【0017】
補強材が、取り囲んでいる材料、即ち母材、とともに、好ましくは板形状に形成されている。この発明に従えば、表現「板形状にされている(plate-shaped)」は、幅及び/又は縦(length)が高さに関してより大きいことを意味する。これは、ベースプレートがパワーモジュール中に良く導入されそして使用されることを可能にし、それにより良い熱放散特性を可能にできる。
【0018】
この発明の好適な実施形態に於いては、ベースプレートを放熱器に固定する為の複数の貫通孔が母材中においてベースプレートの縦(length)に沿うとともに幅に沿い設けられていて、ここにおいては、ベースプレートの幅に沿う貫通孔間には補強材が設けられていない。詳細には、ベースプレートの縦(length)に沿い、好ましくは2つ以上の貫通孔が設けられており、そして幅に沿っては2つの貫通孔で十分である。これは、ベースプレートの改良された曲げやすさを可能にし、そしてさらには後者の内側の応力を減少させる。母材の領域においては、材料は延性(ductile)であり、従って、例えば放熱器に対するベースプレートの確実な固定を可能にする。
【0019】
幅に沿い、又は縦(length)に沿いは、貫通孔が幅又は縦(length)の方向に沿って延出している一つの線中に本質的には設けられていることを意味する。幅は従ってベースプレートのより短い側を意味し、縦(length)は後者のより長い側を意味する。
【0020】
更には、この発明の好適な実施形態においては、少なくとも2つの補強材が炭化珪素(silicon carbide(SiC))から形成されている。これは、複合材の良好な安定性を導く高度な機械的強度を有するセラミック補強材である。更には、炭化珪素セラミックは、その寿命の間にその形状,容積(bulk),又は特性を変化させない。例えばアルミニウムもまたさらに耐久性及び熱安定性に関して良好な安定した特性を有しているので、特にアルミニウムで形成された母材との組み合わせにおいては、設置されたベースプレートの塑性変形及び内部割れは何も生じない。
【0021】
さらに、炭化珪素は、180W/mK以上の範囲、特に180W/mK−200W/mKの範囲に存在している高度な熱伝達性を発揮する。従って、この材料、そして即ちこの発明に従っているベースプレートは、非常に良好な熱抽出特性を有する。しかしながら、適切である個々の材料の組み合わせを使用することも出来る。
【0022】
この発明のさらなる実施形態に従えば、
少なくとも2つの補強材が
相互間に1mm乃至5mmの範囲内、特に3mm、の距離
の隙間を伴って互いに配列されている。この配列は、補強材による放熱器の良好な覆いを許容し、これにより補強材が互いに独立して動作するとともにベースプレートが曲げやすくなることを許容する。これは、放熱器の表面に対するベースプレートの非常に密接な接触を可能にする。
【0023】
この発明のまたさらなる実施形態に従えば、ベースプレートが少なくとも部分的に弓形(bow)の如く形成されている。これは、放熱器の表面とベースプレートとの間に潜在的に存在している隙間を減少させることが出来る。従って、この実施形態においては、放熱器の表面に対するベースプレートの接触がまた更に向上されることができる。独立している、そして分離されている補強材の提出のお蔭により、この発明に従っているベースプレートは曲げ応力に耐えることが可能にされている。
【0024】
これに関し、弓形(bow)の好適な幾何学的な寸法は、好適には100μm±50μmである最大の弓形振れ高さにより規定されることが出来る。このような弓形(bow)は、放熱器とベースプレートとの間の接触に関し向上された特性を有する。
【0025】
母材中に埋設されている補強材が互いに分離されているという事実のお蔭で、弓形はベースプレートの幅のみに渡り形成されていることが出来る。ベースプレートの全縦(length)に渡る弓形の形成は必要でなく;それはベースプレートの半分又は1/3にのみに減少されることが出来る。代わりに、ベースプレートの縦(length)に渡る弓形が完全に避けられる。このことは、たった1つの湾曲が押され、即ち形成され、なければならないという利点を導く。ベースプレートは従って、より高い再生能力を伴いより複雑さの低い方法で製造されることが出来る。
【0026】
この発明のさらにもう一つの好適な実施形態に従え
ば、補強材
の全面積が、ベースプレートの
面積に関して少なくとも70%の、特にベースプレートの
面積に関して少なくとも85
%、を有している。これは、この補強材により主に影響された十分に高度な熱抽出特性を導く。しかしながら、ベースプレートの曲げやすさは、放熱器の表面に対するベースプレートの特別な順応性を得るのに十分である。さらには、前記補強材の構造強度のお蔭で、パワーモジュールの内部構造の放熱器に対するベースプレートの張り(spanning)の後でさえ、これらの構造を維持する安定した弓形(bow)が形成されることが出来る。それによる寸法は、母材の表面に関する全ての補強材の、即ちベースプレートそれ自体の、表面に対応している。
【0027】
この発明のもう1つの好適な実施形態に従えば、母材が補強材上及び補強材間に形成された金属層として形成されている。この実施形態においては、この発明に従ったベースプレートは、製造中におけるコスト削減を時間の削減と共に導く容易な方法での製造を可能が可能になる。
【0028】
これに関しては、補強材が金属層により十分覆われていることが好ましい。これは、この発明に従っているベースプレートが強化された構造安定性を有することを可能にする。さらには、特に耐久性金属(ductile metal)が母材を形成する為に使用されるのであれば、ベースプレートと冷却フィンとの間の接触がさらに向上される。
【0029】
この発明のさらに好適な実施形態に従えば、ベースプレートの熱膨張係数(CTE)の最大値が、8−12ppm/kの範囲内、特に10ppm/k、にある。これは、ベースプレートがパワーモジュールの内部構成要素の熱膨張係数と一致することを可能にする。熱応力が従って小さくされることが出来、パワーモジュールの耐久性を向上させる。
【0030】
この発明の主題のさらなる特徴,特性,そして利点は、従属請求項,図面,そしてこの発明に従ったベースプレートの一実施形態及び例を例示した個々の図面及び例の以下の記載中に開示されている。
【図面の簡単な説明】
【0031】
【
図1】
図1は、パワーモジュールの配置の側断面図であり;
【
図2】
図2は、この発明の第1実施形態に従っているベースプレートの上面図及び側面図であり;
【
図3】
図3は、この発明のさらなる実施形態に従っているベースプレートの上面図及び側面図であり;
【
図4】
図4は、この発明のさらなる実施形態に従っているベースプレートの上面図及び側面図であり;
【
図5】
図5は、この発明のさらなる実施形態に従っているベースプレートの上面図及び側面図であり;
【
図6a】
図6aは、当該技術の状態に従っている、ベースプレートと放熱器との間の接触を示す図であり;そして、
【
図6b】
図6bは、この発明に従っている、ベースプレートと放熱器との間の接触を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0032】
図1においては、パワーモジュール10の配置が概略的に示されている。詳細には、パワーモジュール10の内部構造が記載されている。パワーモジュール10はハウジング12を備えていて、その内部には少なくとも1つの半導体装置14が配置されている。半導体装置14は例示的には絶縁ゲートバイポーラトランジスタ(insulated gate bipolar transistor: IGBT),ダイオード,金属酸化物半導体領域効果トランジスタ(metal oxide semiconductor field-effect transistor: MOSFET),又はそれらと同様なものであることが出来る。
図1に従えば、ダイオード及びIGBTが設けられている。半導体装置14又は複数の半導体装置14は端子16を介して、そして好ましくは補助端子18を介して連結可能であり、ここにおいて半導体装置14は好ましくはアルミニウム接合ワイヤ20により接合されている。
【0033】
絶縁体としてエポキシ22の層が半導体装置14上に配置されていることが出来る。半導体装置14はさらに、窒化アルミニウムセラミック絶縁体(aluminium nitride ceramic insulator)として形成されていることが出来るサブストレイト24上に配置されていることが出来る。端子16は補助端子18も同様に蒸着物(metallization)26、特に銅蒸着物(copper metallization)、及び半田28、又はその他、を介してサブストレイト24に連結されている。しかしながら、超音波溶接の如き同等の連結を適用することも出来る。更には、サブストレイト24はその底側で更なる蒸着物(metallization)30、特に銅蒸着物(copper metallization)、に連結されている。ハウジング12の内側の残りの容積は、例えば絶縁ゲル(insulating gel)32で充たされている。
【0034】
動作の間に、パワーモジュール10は、電気導体中の抵抗のお蔭で、たくさんの熱エネルギー、即ち熱、を発生させる。結果として、発生された熱はパワーモジュール10の内部からその外側へと放散されなければならない。この目的の為に、パワーモジュール10はベースプレート34を備えている。ベースプレート34はその上側で半導体装置14と蒸着物(metallization)30及び半田31を介し熱接続されており、そしてさらに冷却フィン、即ち放熱器36、に熱的に連結されている。ベースプレート34と放熱器36との間には、熱放散(thermal dissipation)グリース,ゲル(gel),又はマット(mat)の如き熱伝導層35が設けられている。
【0035】
一般的には、放熱器36は高い熱伝導性を伴った材料で形成されていて、そして、パワーモジュール10の内側から環境への熱エネルギー、即ち熱、を放散させることを許容する。従って、熱は、パワーモジュール10が適切に働くことを確実にする為に、パワーモジュール10の内部構造からベースプレート34及び放熱器36を介してパワーモジュール10の外側へと流れる。
【0036】
この発明に従っているベースプレート34が
図2中に概略的に示されている。ベースプレート34は金属で形成されている母材38を備えている。好ましくは、母材38はアルミニウムで形成されている。この金属はどちらかというと延性(ductile)であり、そして放熱器36の表面との非常に接近した接触を得る為に変形されることが出来る。しかしながら、母材38は適切な如何なる金属で形成されていることが出来る。詳細には、このようなアルミニウムについで、構成要素として、そして特にその主要な構成要素として、アルミニウムを備えている合金が好適である。
【0037】
ベースプレート34と放熱器36との間の接触をさらに向上させる為に、ベースプレート34の表面粗さはできる限り低くなければならない。表面粗さの適切な値は、3μm以下、詳細には2,3μm以下、の範囲にある。これは、大きな容積を有しており、ベースプレート34と放熱器36との間のパワーモジュール10の熱放散性能を低下させる凹所の形成を減少させる。
【0038】
母材38においては、貫通孔40が、放熱器36へのベースプレート34の固定の為に設けられている。補強材42は機械加工するのが難しいので、貫通孔40は母材38、即ち本体材料(bulk material)、中に形成されている。放熱器36へのベースプレート34の固定は、放熱器36中にねじ込められた螺子により、又は放熱器36へベースプレート34を確実に固定する別の連結により、実現されることが出来る。
【0039】
良好な熱放散を可能にする為に、少なくとも2つの補強材42が母材38中に配置されている。補強材42は互いに隣に位置されているが離れて配置されているように、互いに離されている。詳細には、補強材42は典型的にはセラミック配合物(ceramic compound)、特に炭化珪素(silicon carbite: SiC)で形成されていて、そしてその為に特別な熱伝達性を提供する。炭化珪素は、補強材42が良好な構造強度を有することを、そしてさらには良好な熱放散特性を有することを得に許容する。
【0040】
複数の貫通孔40が母材38中にベースプレート34の縦(length)に沿うばかりでなく幅にも沿い設けられていることが好ましく、そこにおいてはベースプレート34の幅に沿う貫通孔40間には何の補強材42も設けられていない。
【0041】
図2の実施形態は、それに限定されるのではないが、3個の補強材42を備えている。これらは、母材38の金属中に埋設されていて、そして好ましくは、前記金属、即ち母材38により完全に覆われている。好適な例に於いては、母材38及び従ってベースプレート34は120mm×160mm乃至170mm×210mmの範囲内の寸法を有することができる。特に好適な例においては、ベースプレート34は137mm×187mmの寸法に形成されていることが出来る。個々の補強材は少なくとも50mm×100mmの寸法で、好適な実施形態に於いては57mm×104mmの寸法で、形成されていることが出来る。
【0042】
図2に従っている例においては、補強材42は、母材38の延性材料(ductile material)、即ちアルミニウム材料、中に十分に埋設されている。更には、補強材42のセラミック材料の凹所(cavity)、即ち細孔(pore)、は母材38の材料、詳細にはアルミニウム、で完全に満たされており、従って好適には補強材を完全に覆い、そしてそれらの間の全ての隙間(gap)を完全に覆う。
【0043】
ベースプレート34は、異なった機能/要求を満たさなければならない。それは、パワーモジュール10の内側から環境へと熱を移動させなければならない。ベースプレート34は従って、その表面に渡り放熱器36へと熱を移動させる熱拡散器(heat spreader)として働く。従って、熱伝導率(thermal conductivity)は出来る限り高く(180W/(mK)(20℃))以上でなければならない。これは、アルミニウムから母材38を形成することによるとともに、挿入物、即ち補強材42、の為の材料として炭化珪素を使用することにより、実現されている。
【0044】
ベースプレート34と放熱器36との間の出来る限り密接した表面接触を得る為に、ベースプレート36の底側は湾曲されていることが出来る。これは、
図2において参照符号Xにより規定されている、線B−B´に沿った断面図において明らかである。ベースプレート34の湾曲されている幾何学的形状(geometry)、即ち弓形(bow)の形成、のお蔭により、放熱器36への固定の間に、ベースプレート34は放熱器36にさし渡らせられ(spanned)、放熱器36に対するベースプレート34の向上された接触を導く。しかしながら、この発明に従えば、ベースプレート34は弓形(bow)として部分的に形成されているのみである。これは、湾曲が、
図1の横断面
図Xからそれを見ることが出来るように、ベースプレート34の幅に渡り形成されている弓形(bow)に限定されることが出来ることを意味している。反対に、ベースプレート34の縦(length)に渡る湾曲は必要でなく、このことは同様に、
図1において参照符号Yにより規定されている、線A−A´に沿った断面図から明らかに見ることが出来る。しかしながら、勿論、ベースプレート34の所望の特性に従い、ベースプレート34の縦(length)に沿い、例えば全長さに沿い、半分又は1/3に沿う弓形(bow)を伴ったベースプレート34を形成することが可能である。この発明に従えば、幅はその長さ(length)に関してベースプレートの短い側である。
【0045】
更には、この発明に従っているベースプレート34の最大弓形振れ高さ(maximum bow deflection height)は100μm±50μmであることが出来る。
【0046】
良好な曲げ強度(flexural strength)及び破壊耐久性(fracture toughness)は従って割れを阻止するのに役立つ。ベースプレート34の曲げ強度(flexural strength)は300MPaと500MPaとの間の範囲内、特に400MPa、にあることが出来、破壊耐久性(fracture toughness)は7MPam
1/2乃至9MPam
1/2の範囲内、特に8.1MPam
1/2、にあることが出来る。
【0047】
この発明に従っているベースプレート34を準備する工程は以下の様である。
【0048】
第1には、セラミック予備成形物(ceramic preform)が製造される。これは、例えば、開いた小孔(open pore)を有している、詳細には発泡体(foam)の形状の、例えばセラミック材料、好ましくは炭化珪素(silicium carbide)、を焼結することにより、実現されることが出来る。さらなる工程においては、そのように準備された予備成形物が、必要であれば、成形されることが出来る。一例として、予備成形物は、所望の形状,又は幾何学的寸法(geometry)を得るよう型押しされる(stamped)か又は機械加工される(machined)ことが出来る。予備成形物の形状は好ましくは長四角形又は正方形である。しかしながら、放熱器36の幾何学的寸法(geometry)に従い、補強材42は、ベースプレート34が放熱器36と密接に接触するよう放熱器36上に位置されることが出来る如何なる形状を有することが出来る。所望の方法により予備成形物を形作った後には、少なくとも2つの予備成形物が型(form)中に置かれる。その後、液体金属、好ましくはアルミニウム、が高温及び高圧で型(form)中に浸透され、それにより予備成形物の小孔(pore)及び複合体間の隙間を充填する。補強材42に関する炭化珪素の含有量は、最適な機械的容積特性(mechanical bulk property)の為には、62vol%−28vol%であることが出来る。さらには、予備成形物は好ましくは金属により十分覆われている。
【0049】
記載されている工程は補強材42が金属材料中に埋設されることを可能にし、後者が母材38を形成することが出来、その中に補強材42が配置されている。結果として、母材38は、予備成形物を金属材料、好ましくはアルミニウム、で覆うことにより形成されることが出来る。
【0050】
上述したことに関して、補強材42が1mm乃至5mmの範囲内、特に3mm、の距離で配置されているように、補強材42を配置することが好ましい。補強材42間のこのような距離は、ベースプレート42の十分な曲げやすさを提供する為には本質的である。もしも補強材42が互いにあまりにも接近して位置されていると、このような曲げやすさは、補強材42の剛さ(stiffness)及び構造的な強度の故に、阻止される。しかしながら、十分な熱放散を得る為には、補強材42の距離は制限されなければならない。
【0051】
更には、補強材42が或る水準以下の互いの間の距離を伴い配置されていると、塑性変形が母材材料の潜在能力を超えるかもしれないという事実のお蔭により、母材材料中に割れが形成される危険性が生じる。従って、母材38と補強材42との間の接触領域における応力は余りにも高くなることが出来る。
【0052】
図3中には、この発明に従っているベースプレート34のさらなる例が示されている。
図3に従うと、ベースプレート34は3個の補強材42を備えている。しかしながら、明らかに見ることが出来るように、補強材42は、
図2に関してより大きな表面を有する。
図3に従えば、母材38、即ち金属配合物(metallic compound)、は主に、補強材42上に設けられた金属の層、即ち被覆、で形成されており、それにより個々の補強材42間の隙間を充填している。この場合には、熱放散能力は
図2に関してより大きい。
【0053】
この発明に従っているベースプレート34のまたさらなる実施形態が
図4中に示されている。
図4に従っている実施形態は、概略的には
図2の実施形態に対応している。しかしながら、
図4に従うと、3個の補強材42に代わり2個のみが存在している。この実施形態に於いては、ベースプレート34はそれ自体がより小さく、より小さなパワーモジュールにおいて使用されることが出来るという利点を導く。2つの分離されている補強材42がその中に配置されている連続している母材38を提供することにより、ベースプレート34は依然として曲げやすく、ベースプレート34と放熱器36の表面との間の向上された接触を十分に導く。この実施形態の好適な例においては、母材38、そして従ってベースプレート34は120mm×100mm乃至170mm×150mmの範囲内の寸法を有することが出来る。特に好適な例に於いては、ベースプレート34は137mm×127mmの寸法に形成されることが出来る。個々の補強材42は少なくとも50mm×100mmの寸法、好適な実施形態に於いては57mm×104mmの寸法、で形成されることが出来る。
【0054】
図5中に示されているのは、依然として2個の補強材42を備えているベースプレート34に関係している、この発明のさらなる実施形態である。この実施形態においては、ベースプレート34は、特に補強材42の寸法に関しては
図3のものと比較することが出来る。
【0055】
図6a及び6bにおいては、放熱器36の表面44との当該技術の現在の状態に従っているベースプレート46の接触と、放熱器36の表面44とのこの発明に従っているベースプレート34の接触との間の比較が概略的に示されている。
【0056】
図6aに従うと、当該技術の現在の状態に従っているベースプレート46が示されていて、それは放熱器36の表面44と接触している。ベースプレート46は、金属層50により覆われている補強材48を備えている。金属層50は補強材48と同様に連続的な方法で形成されている。表面44の粗さのお蔭により、ベースプレート46と放熱器36の表面44との間に凹所(cavity)52が形成されている。これらの凹所(cavity)52は、一般的にはベースプレート46と放熱器36との間の良好な熱の流れを阻止し、それにより熱放散特性を低下させる。
【0057】
図6bに従うと、この発明に従っているベースプレート34が示されている。ベースプレート34は連続した母材38を備えていて、その中には少なくとも2つ、
図6bに従うと3つ、の分離されていて、そして独立している補強材42が配置されている。母材38の、特に補強材42間の隙間領域における、曲げやすさのお蔭により、ベースプレート34は変形する、即ち曲がる、従って、放熱器36の表面44の形状に適合する能力を有している。これは、凹所(cavity)52が潜在的に存在することを非常に小さくすることを許容する。結果として、ベースプレート34と表面50との間のより接近した接触が達成される。熱放散特性が従って向上される。
【0058】
開示された実施形態に対する他の変形は、図面,明細書の記載,そして添付の特許請求の範囲の検討から、請求された発明を実現する中で当該技術分野において習熟した人々により理解され達成されることが出来る。特許請求の範囲において、用語「備えている(comprising)」は他の構成要素又は工程を除外しない、そして不定形「1つ(a又はan)」は複数を除外しない。或る測定(measure)が互いに異なった従属請求項において記載されているという単なる事実は、これらの測定の組み合わせを有効に使用することが出来ないということを示していない。請求項における如何なる参照符号も発明の範囲を限定するようには解釈されるべきではない。
なおこの明細書には以下の発明が記載されている。
[1].
ベースプレート、特にパワーモジュール(10)の為のベースプレート、であって、金属、特にアルミニウム、で形成された母材(38)を備えていて、ここにおいては、少なくとも2つの補強材(42)が母材(38)中において互いに隣り合わせに設けられていて、そしてここにおいては、補強材(42)が互いに離れている、ベースプレート。
[2].
ベースプレート(34)を放熱器(36)に固定する為の複数の貫通孔(40)が母材(38)中においてベースプレート(34)の縦に沿うとともに幅に沿い設けられていて、ここにおいては、ベースプレート(34)の幅に沿う貫通孔間には補強材(42)が設けられていない、前記[1].に記載されているベースプレート。
[3].
少なくとも2つの補強材(42)が炭化珪素から形成されている、前記[1].又は前記[2].に記載されているベースプレート。
[4].
補強材(42)が、1mm乃至5mmの範囲内、特に3mm、の距離で互いに配列されている、前記[1].乃至前記[3].のいずれか1つに記載されているベースプレート。
[5].
ベースプレート(34)が少なくとも部分的に弓形の如く形成されている、前記[1].乃至前記[4].のいずれか1つに記載されているベースプレート。
[6].
最大の弓形振れ高さが100μm±50μmである、前記[5].に記載されているベースプレート。
[7].
弓形が、ベースプレート(34)の幅のみに渡り形成されている、前記[5].又は前記[6].に記載されているベースプレート。
[8].
全ての補強材(42)が共に、ベースプレート(34)の寸法に関して少なくとも70%の、特にベースプレート(34)の寸法に関して少なくとも85%の、寸法を有している、前記[1].乃至前記[7].のいずれか1つに記載されているベースプレート。
[9].
母材(38)が、補強材(42)上及び補強材(42)間に形成された金属層として形成されている、前記[1].乃至前記[8].のいずれか1つに記載されているベースプレート。
[10].
ベースプレート(34)の熱膨張係数の最大値が、8−12ppm/kの範囲内、特に10ppm/k、にある、前記[1].乃至前記[9].のいずれか1つに記載されているベースプレート。
【0059】
10…パワーモジュール(power module)、12…ハウジング(housing)、14…半導体装置(semiconductor device)、16…端子(terminal)、18…補助端子(auxiliary terminal)、20…アルミニウム接合ワイヤ(aluminium bond wire)、22…エポキシ(epoxy)、24…サブストレイト(substrate)、26…蒸着物(metallization)、28…半田(solder)、30…蒸着物(metallization)、31…半田(solder)、32…絶縁ゲル(insulating gel)、34…ベースプレート(base plate)、35…熱伝達層(heat conducting layer)、36…放熱器(heat sink)、38…母材(matrix)、40…貫通孔(through hole)、42…補強材(reinforcement)、44…表面(surface)、46…ベースプレート(base plate)、48…補強材(reinforcement)、50…金属層(metallic layer)、52…凹所(cavity)。