特許第5901960号(P5901960)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901960
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】電動弁
(51)【国際特許分類】
   F16K 31/04 20060101AFI20160331BHJP
   F16K 1/34 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   F16K31/04 Z
   F16K1/34 F
【請求項の数】2
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2011-281622(P2011-281622)
(22)【出願日】2011年12月22日
(65)【公開番号】特開2013-130271(P2013-130271A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年9月10日
(73)【特許権者】
【識別番号】391002166
【氏名又は名称】株式会社不二工機
(74)【代理人】
【識別番号】100091096
【弁理士】
【氏名又は名称】平木 祐輔
(74)【代理人】
【識別番号】100105463
【弁理士】
【氏名又は名称】関谷 三男
(72)【発明者】
【氏名】原田 貴雄
(72)【発明者】
【氏名】田渕 健資
【審査官】 柏原 郁昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−320711(JP,A)
【文献】 特開2008−267464(JP,A)
【文献】 特開2001−108139(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0247900(US,A1)
【文献】 米国特許第06460567(US,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16K 31/04
F16K 1/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
弁室、該弁室に開口する横向きの第1入出口、前記弁室に開口する縦向きの弁座付き弁口、及び該弁口に連なる第2入出口を有する弁本体と、前記弁口を開閉すべく前記弁室に昇降可能に配在された弁体と、該弁体を昇降させるための電動モータを有する昇降駆動手段と、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁ばねと、を備え、前記弁口の口径と前記弁体の上方に画成される背圧室の室径とが略同一に設定されるとともに、前記弁体内に、前記弁口と前記背圧室とを連通させるべく下端面が開口した均圧通路が設けられている電動弁であって、
前記均圧通路の下端開口面積を前記弁口面積で除した値が0.5以上で1.0未満となるように各部の寸法が設定されていることを特徴とする電動弁。
【請求項2】
前記弁体における前記弁座に接離するシール面が、所要のシール性が得られるように、前記弁座に対して実質的に線接触する円錐面、球面、楕円を長軸又は短軸に周りに回転させた楕球面で構成されていることを特徴とする請求項1に記載の電動弁。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ヒートポンプ式冷暖房システム等に使用するのに好適な電動弁に係り、特に、流体が双方向(第1流れ方向とその逆の第2流れ方向)に流され、かつ、少なくとも一方向には大流量が流される流路に対応した電動弁に関する。
【背景技術】
【0002】
この種の電動弁として、従来、例えば、弁室、該弁室に開口する横向きの第1入出口、前記弁室に開口する縦向きの弁口、及び該弁口に連なる第2入出口を有する弁本体と、前記弁口を開閉すべく前記弁室に昇降可能に配在された弁体と、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁ばねと、該開弁ばねの弾発力に抗するように前記弁体を下降制御し、この結果、該弁体を昇降させるための電動モータを有する昇降駆動手段と、を備えたものが考えられている(例えば特許文献1参照)。
【0003】
また、電動弁において、前記弁口の口径と前記弁体の上方に画成される背圧室の室径とを略同一に設定するとともに、弁口ないし第2入出口と前記背圧室とを連通させるべく、前記弁体を上下に貫通するように均圧通路を設け、弁口ないし第2入出口の圧力を前記均圧通路を介して背圧室に導入することにより、閉弁状態において弁体に作用する押し下げ力(閉弁方向に働く力)と押し上げ力(開弁方向に働く力)とをバランス(差圧をキャンセル)させ、もって、弁体の駆動トルクを低減して、電動弁の小型化、大容量化、省電力化等を図ろうとしたものも考えられている(例えば特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−267464号公報
【特許文献2】特開2000−320711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献2に所載の電動弁のように、弁口の口径と背圧室の室径とを略同一に設定するとともに、差圧をキャンセルすべく弁体を上下に貫通するように均圧通路を設けたものにおいては、流体が第1流れ方向(第1入出口→第2入出口)に流される場合は、開弁時において弁体を押し下げる力よりも弁体を押し上げる力が上回り、弁体には上方向荷重が発生し、流体が第2流れ方向(第2入出口→第1入出口)に流される場合は、開弁時において弁体を押し上げる力よりも弁体を押し下げる力が上回り、弁体に下方向荷重が発生し、流体が第1の方向に流されるときと第2の方向に流されるときとでは、開弁時に弁体に作用する荷重の方向が変化する。
【0006】
したがって、このような圧力バランス構造を、開弁ばねを備えた電動弁に適用しようとした場合、下方向荷重は、弁体を閉弁方向に押し下げる力となるので、より小さなばね荷重の開弁ばねを使用できるようにするには、流体が第2流れ方向に流されるときにおいて、弁体に作用する下方向荷重(閉弁方向に働く力)可及的に小さくすることが望まれる。
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、流体が第2流れ方向に流されるときにおいて、下方向荷重(閉弁方向に働く力)を可及的に小さくし得、もって、より小さなばね荷重の開弁ばねを使用できるようにして、更なる小型化、大容量化、省電力化等を図ることのできる電動弁を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記の目的を達成すべく、本発明に係る電動弁は、基本的には、弁室、該弁室に開口する横向きの第1入出口、前記弁室に開口する縦向きの弁座付き弁口、及び該弁口に連なる第2入出口を有する弁本体と、前記弁口を開閉すべく前記弁室に昇降可能に配在された弁体と、該弁体を昇降させるための電動モータを有する昇降駆動手段と、前記弁体を開弁方向に付勢する開弁ばねと、を備え、前記弁口の口径と前記弁体の上方に画成される背圧室の室径とが略同一に設定されるとともに、前記弁体内に、前記弁口と前記背圧室とを連通させるべく下端面が開口した均圧通路が設けられ、前記均圧通路の下端開口面積を前記弁口面積で除した値が0.5以上で1.0未満となるように各部の寸法が設定されていることを特徴としている。
【0009】
好ましい態様では、前記弁体における前記弁座に接離するシール面が、所要のシール性が得られるように、前記弁座に対して実質的に線接触する円錐面、球面、楕円を長軸又は短軸に周りに回転させた楕球面で構成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る電動弁では、均圧通路開口面積を弁口面積で除した値が0.5以上となるように各部の寸法が設定されるので、流体が第2流れ方向に流されるときにおいて、下方向荷重(閉弁方向に働く力)を許容範囲に抑えることができ、これにより、より小さなばね荷重の開弁ばねを使用できるようになり、その結果、小型化、大容量化、省電力化等を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係る電動弁の第1実施例の閉弁状態を示す縦断面図。
図2図1に示される第1実施例の開弁状態を示す縦断面図。
図3】本発明に係る電動弁の第2実施例の閉弁状態を示す縦断面図。
図4】本発明に係る電動弁の作用効果の説明に供されるグラフであり、弁体に作用する荷重と均圧通路開口面積との関係を示す。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態を図面を参照しながら説明する。
【0013】
図1は、本発明に係る電動弁の第1実施例の閉弁状態を示す縦断面図、図2は、図1に示される第1実施例の電動弁の開弁状態を示す縦断面図である。
【0014】
図示の電動弁1は、例えばヒートポンプ式冷暖房システムにおいて膨張弁として使用するのに好適なもので、流体(冷媒)が双方向(第1流れ方向とその逆の第2流れ方向)に流され、かつ、少なくとも一方向には大流量が流される流路に対応した双方向流通型の電動弁である。
【0015】
図において、電動弁1は、板金製の筒状基体6を有する弁本体5と、この弁本体5内に昇降可能に配在された弁体20と、この弁体20を昇降させるべく、弁本体5の上側に取り付けられたステッピングモータ50とを備える。
【0016】
弁本体5の筒状基体6には、弁室7が形成されるとともに、この弁室7に開口する横向きの第1入出口(導管継手)11が取り付けられ、さらに、その底部には下側から弁室7に開口する縦向きの弁口9及び弁座8aが形成された弁座部材8が固着され、この弁座部材8には、前記弁口9に連なる第2入出口(導管継手)12が取り付けられている。
【0017】
筒状基体7の上面開口部には、段付き筒状基台13が取着され、この基台13の上端部には、モータ50の一部を構成するキャン58の下端部が溶接等により接合されている。筒状基台13の内周側には隔壁14c付き筒状保持部材14が圧入等により固定され、この筒状保持部材14の上部には、下部内周にめねじ15iが設けられためねじ付き軸受部材15がかしめ係止固定されている。筒状保持部材14の隔壁14cの直上は、圧縮コイルばねからなる開弁ばね25が収納されるばね室14aとされている。
【0018】
また、前記弁体20は、前記弁座部材8の弁座8aに接離して弁口9を開閉する下部が逆円錐台状の弁体部20Aと、これより小径の胴部20Bとを有し、胴部20Bの上部が筒状保持部材14における隔壁14cより下側の弁体ガイド穴14bに摺動自在に嵌挿されている。上記弁体部20Aの下面は、所要のシール性が得られるように、前記弁座8aに対して実質的に線接触する円錐面からなるシール面20aとなっている。
【0019】
一方、ステッピングモータ50は、ヨーク51、ボビン52、コイル53、樹脂モールドカバー54等からなる、キャン58に外嵌固定されたステータ55と、キャン58内に回転自在に配在され、ロータ支持部材56がその上部内側に固着されたロータ57とを有している。また、ロータ57の内周側には、ロータ支持部材56に一体的に設けられた太陽歯車41、筒状保持部材14に固着された筒状体の先端に固定された固定リング歯車47、前記太陽歯車41及び固定リング歯車47に歯合する遊星歯車42、該遊星歯車42を回転自在に支持するキャリア44、前記遊星歯車42に歯合するリング状の出力歯車45、該出力歯車45に固着された出力軸46等からなる不思議遊星歯車式減速機構40が付設されている。前記固定リング歯車47の歯数は、前記出力歯車45の歯数とは異なるようにされている。
【0020】
前記出力歯車45には出力軸46が固着されている。この出力軸46の上部に設けられた穴に支持軸49の下部が挿通されており、該支持軸49に前記キャリア44、太陽歯車41(ロータ支持部材56)が挿通されている。
【0021】
支持部材48はキャン58の内径とほぼ同一径を有しており、キャン58内部において、該キャン58の上部とロータ支持部材56との配置されている。そして前記支持軸49の上部は、前記支持部材48の中心部に設けられた穴に挿通されている。
【0022】
前記減速機構40の出力軸46は、前記めねじ付き軸受部材15の上部に回転自在に嵌挿され、この出力軸46の回転が、前記軸受部材15に設けられためねじ15iに螺合するおねじ17eが設けられたおねじ付き回転昇降軸17に伝達される。出力軸46の下部にはスリット状嵌合部46aが設けられ、回転昇降軸17には前記スリット状嵌合部46aに摺動自在に嵌合する板状部17aが突設されており、出力軸46が回転すると、前記めねじ15iとおねじ17eによるねじ送りにより回転昇降軸17が回転しながら昇降せしめられる。
【0023】
回転昇降軸17の下方には、該回転昇降軸17の下方への推力がボール18、ボール受座19を介して伝達される段付き筒状の推力伝達部材23が配在されている。なお、ボール18を介在させていることにより、回転昇降軸17が回転しながら下降しても、回転昇降軸17から推力伝達部材23へは下方への推力のみが伝達され、回転力は伝達されない。
【0024】
推力伝達部材23は、上から順に、内周に前記ボール受座19が嵌め込まれた大径上部23a、前記筒状保持部材14の隔壁14cに摺動自在に挿通せしめられた中間胴部23b、該中間胴部23bより小径の小径下部23cからなっており、その内部には、後述する均圧通路32の上部を構成する貫通孔32d及び後述する背圧室30に開口する複数個の横孔32eが設けられている。なお、貫通孔32dの上端開口はボール受座19により閉塞されている。
【0025】
推力伝達部材23の小径下部23cは、弁体20の上部嵌合穴20dに圧入等により嵌合固定されており、弁体20と推力伝達部材23は一体に昇降せしめられる。弁体20の上端面と推力伝達部材23の中間胴部23bの下端段差部との間には、前記小径下部23c圧入時において押さえ部材24が挟み込まれて固定されており、この押さえ部材24と弁体20の上端部に設けられた環状溝と前記弁体ガイド穴14bとの間にはOリング等のシール部材38が装着されている。
【0026】
また、筒状保持部材14の隔壁14cより上側のばね室14aには、圧縮コイルばねからなる開弁ばね25がその下端を隔壁14cに当接させた状態で配在されるとともに、この開弁ばね25の付勢力(引き上げ力)を推力伝達部材23を介して弁体20に伝達すべく、上下に鍔状引っ掛け部28a、28bを有する引き上げばね受け体28が配在されている。引き上げばね受け体28の上引っ掛け部28aは、開弁ばね25の上に乗せられ、下引っ掛け部28bは推力伝達部材23の大径上部23aの下端段差部を掛止するようになっている。
【0027】
したがって、モータ50(ロータ57)が一方向に回転せしめられるときには、前記めねじ15iとおねじ17eによるねじ送りにより回転昇降軸17が回転しながら例えば下降せしめられ、回転昇降軸17の推力により、推力伝達部材23及び弁体20が開弁ばね25の付勢力に抗して押し下げられ、最終的には弁体20の弁体部20aが弁座締切部8aに着座して弁口9が閉じられる。それに対し、モータ50(ロータ57)が他方向に回転せしめられるときには、前記めねじ15iとおねじ17eによるねじ送りにより回転昇降軸17が回転しながら例えば上昇せしめられ、それに伴い推力伝達部材23及び弁体20が開弁ばね25の付勢力によって引き上げられて、弁体部20aが弁座締切部8aからリフトして弁口9を開く。
【0028】
前記弁体20の上方で押さえ部材24と筒状保持部材14の隔壁14cとの間には、背圧室30が画成されている。また、弁体20内には、該弁体20の先端部と背圧室30とを連通させるべく、下から順に、下端が開口したスカート部32a、太通路部32b、及び細通路部32cを有する均圧通路32が設けられている。前記細通路部32cは、貫通孔32d及び横孔32eを介して背圧室30に連通している。ここでは、閉弁状態において弁体に作用する押し下げ力(閉弁方向に働く力)と弁体に作用する押し上げ力(開弁方向に働く力)とをバランス(差圧をキャンセル)させるべく、背圧室30の室径と弁口9の口径とは略同一に設定されている。
【0029】
そして、本第1実施例の電動弁1においては、弁口9の口径がDc(例えば10から15mm程度)で、その開口面積(以下、弁口面積)がScとされている。また、前記均圧通路32の下端通路径DXがD5で、その開口面積(以下、均圧通路開口面積)SXはS5とされており、該均圧通路開口面積S5を前記弁口面積Scで除した値S5/Scは、0.7となっている(S5/Scが0.7となるように各部の寸法が設定されている)。
【0030】
一方、図3に示される第2実施例の電動弁2においては、第1実施例と同様に、弁口9の口径がDc(例えば10から15mm程度)で、その開口面積(以下、弁口面積)がScとされているのに対し、前記均圧通路32の下端通路径DXがD5より大きいD6で、均圧通路開口面積SXはS5より大きいS6とされており、該均圧通路開口面積S6を前記弁口面積Scで除した値S6/Scは、0.9となっている(S6/Scが0.9となるように各部の寸法が設定されている)。図3において、図1及び図2と同一の符号は、同一又は同等部分をあらわしている。
【0031】
ここで、弁体20に作用する荷重(上方向荷重、下方向荷重)と均圧通路開口面積SXを前記弁口面積Scで除した値SX/Scとの関係をより細密に調べるべく、前記均圧通路開口面積SXがS5、S6のもの以外に、均圧通路開口面積SXがS5より小さいS1、S2、S3、S4(以上小さい順)と、S6より大きいS7のものを用意した。この場合、S1/Sc=0.05、S2/Sc=0.10、S3/Sc=0.30、S4/Sc=0.50、S5/Sc=0.70、S6/Sc=0.90、S7/Sc=0.95とされ、これら7種の電動弁について、第1流れ方向(第1入出口11→第2入出口12)と第2流れ方向(第2入出口12→第1入出口11)の両方について弁体20に作用する荷重の変化を解析した結果を図4に示す。
【0032】
図4おいて、横軸は、弁開口面積Kxを弁口面積Scで除した値Kx/Scとなっている。また、縦軸は、弁体に作用する荷重を示し、正の値は弁体に上向きに作用する荷重を表し、負の値は弁体に下向きに作用する荷重を表している。
【0033】
弁開口面積Kxは、開弁状態を示す図2おいて符号Kxで示される如くに、弁座8aとシール面20aとを結ぶ円錐台状部の最小側面積(流体の通過面積)を示しており、弁体20のリフト量が大きくなるほど増大する。
【0034】
図4からは、第1流れ方向(第1入出口11→第2入出口12)時においては、均圧通路開口面積SX(S1〜S7)を弁口面積Scで除した値SX/Scが0.30より小さくてかつ半開状態から全開状態に近い(Kx/Scが0.5を超えた)とき以外は、弁体に作用する荷重が0より大きくなり、弁体20には上方向荷重が発生することがわかる。
【0035】
それに対し、第2流れ方向(第2入出口12→第1入出口11)時には、均圧通路開口面積SX(S1〜S7)の大きさ如何に関わらず、弁体に作用する荷重が0より小さくなり、弁体20には下方向荷重が発生する。この場合、特に、均圧通路開口面積SXを弁口面積Scで除した値SX/Scが0.30より小さいときは、Kx/Scが大きくなるにつれて弁体20に許容できないほどの下方向荷重(40[N]を越える力、図4において領域Ezで示す)が作用し、これが開弁ばね25のばね荷重をさほど小さくすることができない要因となっている。
【0036】
この場合、均圧通路開口面積SXを弁口面積Scで除した値SX/Scが大きいほど、弁体20に作用する下方向荷重は小さくなり、SX/Scが0.50以上(第1実施例の電動弁1では0.70、第2実施例の電動弁2では0.90)であれば、下方向荷重が40[N]を越えることはなく、許容範囲内に抑えることができる。
【0037】
このように、均圧通路開口面積SXを弁口面積Scで除した値SX/Scが0.50以上となるように各部の寸法を設定することにより、流体が第2流れ方向に流されるときにおいて、下方向荷重(閉弁方向に働く力)を許容範囲に抑えることができ、そのため、より小さなばね荷重の開弁ばねを使用でき、その結果、当該電動弁のさらなる小型化、大容量化、省電力化等を図ることができる。
【0038】
なお、この種の電動弁においては、所要のシール性を得るため(接触圧を大きくするため)、弁体20における弁座8aに接離するシール面20aを、弁座8aに対して実質的に線接触する円錐面、球面、楕円を長軸又は短軸に周りに回転させた楕球面で構成する必要があり、弁体として平型のものは採用できないので、均圧通路開口面積SXを弁口面積Scで除した値SX/Scは最大でも0.95程度となる。
【0039】
また、本発明の電動弁は、ヒートポンプ式冷暖房システムに適用されるだけではなく、他のシステムにも適用できることは言うまでもない。
【符号の説明】
【0040】
1、2 電動弁
5 弁本体
7 弁室
8 弁座部材
8a 弁座
9 弁口
11 第1入出口
12 第2入出口
20 弁体
20a シール面
25 開弁ばね
28 引き上げばね受け体
30 背圧室
32 均圧通路
50 ステッピングモータ
55 ステータ
57 ロータ
図1
図2
図3
図4