【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、実施形態に係る医用画像診断装置について図面を参照して詳細に説明する。尚、各図において同一箇所については同一の符号を付す。
【0009】
(実施例1)
図1は、一実施形態に係る医用画像診断装置である磁気共鳴診断装置(以下、MRI装置と呼ぶ)の構成を示すブロック図である。
【0010】
図1において、MRI装置10は、静磁場を形成する筒状の静磁場用磁石11と、静磁場用磁石11の内部に設けられたシムコイル12と、傾斜磁場コイルユニット13、及びRFコイル14を備えている。これらは図示しない架台(ガントリ)に内蔵されている。傾斜磁場コイルユニット13は、X軸傾斜磁場コイル13x、Y軸傾斜磁場コイル13y及びZ軸傾斜磁場コイル13zで構成され、静磁場用磁石11の内部において筒状に形成されている。
【0011】
また、MRI装置10には、制御系15が設けられている。制御系15は、静磁場電源16、傾斜磁場電源17、シムコイル電源18を有し、さらに受信機19、送信機20、シーケンスコントローラ21、ホスト計算機22、演算ユニット23を具備している。シーケンスコントローラ21は、ホスト計算機22及び演算ユニット23に接続され、ホスト計算機22には、入力部24が接続されている。またホスト計算機22及び演算ユニット23には、バスライン25を介して記憶部26、画像処理ユニット27、表示部28が接続されている。
【0012】
静磁場用磁石11は、静磁場電源16に接続され、静磁場電源16から供給された電流により撮像領域に静磁場を形成させる。また傾斜磁場電源17は、X軸、Y軸、及びZ軸の傾斜磁場電源で構成され、X軸傾斜磁場コイル13x、Y軸傾斜磁場コイル13y、Z軸傾斜磁場コイル13zに電流を供給し、撮像領域にそれぞれX軸方向の傾斜磁場Gx、Y軸方向の傾斜磁場Gy、Z軸方向の傾斜磁場Gzを形成する。
【0013】
静磁場用磁石11の内側には、同軸上に筒状のシムコイル12が設けられている。シムコイル12は、シムコイル電源18に接続され、シムコイル電源18からシムコイル12に電流が供給されて静磁場が均一化されるようにしている。
【0014】
またRFコイル14は、送信機20及び受信機19に接続されている。RFコイル14は、送信機20から高周波信号を受けて被検体Pに送信するとともに、被検体P内部の原子核スピンを高周波信号によって励起し、それに伴って発生したエコー信号(NMR信号:Nuclear Magnetic Resonance信号)を受信して受信機19に供給する。
【0015】
一方、シーケンスコントローラ21は、CPU及びメモリを備え、ホスト計算機22から送られてきたパルスシーケンス情報を記憶し、この情報に従って傾斜磁場電源17、送信機20及び受信機19の動作を制御する。パルスシーケンス情報とは、一連のパルスシーケンスに従って傾斜磁場電源17、受信機19及び送信機20を駆動させるために必要な情報であり、例えば傾斜磁場電源17に印加すべきパルス電流の強度や印加時間、印加タイミング等に関する情報を含む。
【0016】
送信機20は、シーケンスコントローラ21からの制御情報に基づいてRFコイル14に高周波信号を供給する機能を備え、受信機19は、RFコイル14から受けたNMR信号に所定の信号処理を施すとともに、A/D変換することでデジタル化されたNMR信号である原データを生成する機能を備えている。
【0017】
またホスト計算機22は、受信機19からのデジタル量の原データを、シーケンスコントローラ21を介して入力し、フーリエ変換(FT)等の画像再構成処理を施すことにより被検体Pの画像データを再構成させる機能を有する。したがって、ホスト計算機22は、撮影画像を生成する画像生成部を構成する。
【0018】
演算ユニット23は、受信機19が受信したエコーデータ(生データ)を、シーケンスコントローラ21を介して入力し、メモリ上の2次元又は3次元のk空間に(フーリエ空間又は周波数空間とも呼ばれる)にエコーデータを配置し、エコーデータを2次元又は3次元フーリエ変換して実空間の画像データに再構成する。
【0019】
入力部24は、各種の指示情報等を入力するものであり、操作卓上に各種のスイッチやキーボード、マウス等を備えて成り、ユーザ(医師、技師等)が希望する撮影条件や検査の開始、寝台上の天板29の移動等の指示情報を入力することができる。記憶部26は、再構成された画像データ等を保存する。画像処理ユニット27は、詳しくは
図3以降で説明するが、各種の画像情報を生成して、表示部28に画像を表示する。尚、画像処理ユニット27等での画像処理は、コンピュータ(シーケンスコントローラ21に備えたCPU、及び記憶部26のメモリやHDD等)でプログラムを実行することにより行われる。
【0020】
尚、寝台上の天板29は、架台の静磁場(傾斜磁場コイルユニット13内の撮像領域内)を通過しながら移動可能に設けられている。この天板27には被検体Pが載置される。尚、RFコイル14は架台に内蔵されず、天板29や被検体P近傍に設けられる場合もある。
【0021】
図2は、第1の実施形態に係るMRI装置を利用した診療支援装置のシステム構成図である。
図2において、MR収集部30は、
図1のMRI装置10のハードウェアと、シーケンスコントローラ21等の制御部、入力部24部、表示部28、記憶部26等を含む。
【0022】
MR収集部30は、MR画像を収集するもので、各種のシーケンス画像収集部31、温度モニタ画像収集部32及び局所励起位置制御部33に接続している。シーケンス画像収集部31は、ホスト計算機22における再構成処理部に相当し、MR収集部30とシーケンス画像収集部31は、形態画像を収集する画像収集部を構成する。温度モニタ画像収集部32は、加熱治療の各段階で収集した画像データを再構成し、温度モニタ画像を取得する。温度モニタ画像は、撮影した部位の温度情報を示す画像である。
【0023】
局所励起位置制御部33は、局所励起する位置を制御するものである。MRI装置10は、局所励起位置制御部33で指定した位置を局所励起するため、RFコイル14に印加する高周波電力を制御し、磁性体微粒子(後述)の発熱現象を利用してゼロ磁場領域にある磁性体微粒子を発熱させ、ピンポイントでの選択的な加熱制御を行う。したがって、RFコイル14と局所励起位置制御部33は、局所励起部を構成する。
【0024】
また各種シーケンス画像収集部31及び温度モニタ画像収集部32は、画像処理ユニット27に接続されている。画像処理ユニット27は、局所励起位置制御部33を制御して、病巣領域の腫瘍の位置をピンポイントで発熱させ温熱治療を行う。また発熱に伴う病巣領域(腫瘍等)の温度変化が分かるように温度分布画像を生成する。さらに、3D画像やMPR画像上にリアルタイムに変化する温度分布画像を合成して治療の進み具合等を把握できるようにする。
【0025】
図3は、画像処理ユニット27の構成を示すブロック図である。
図3において、画像処理ユニット27は、複数のボリュームデータを管理する管理部40を有する。管理部40は、ボリュームデータ1,2…nをロードするロード部411,412…41nを制御し、処理に必要なボリュームデータをロードする。ロードした複数のボリュームデータは、位置合わせ部42によって位置合わせする。即ち、入力された複数のボリュームデータを装置内座標系に基づいて空間的に同じ位置に配置する。
【0026】
位置合わせ部42で位置合わせした複数のボリュームデータは、合成データ作成部50に供給される。合成データ作成部50は、複数のボリュームデータから得られる画像情報から合成表示用の画像データを作成するもので、マッピングオーダ指定部51、マッピングデータ出力部52を有する。マッピングオーダ指定部51は、作成された複数の画像データの合成表示時の優先度や、入力データのオン/オフ等を指定する。
【0027】
マッピングデータ出力部52は、合成表示用の元データを作成するもので、マッピングオーダ部531,532,533…53nと、同一空間位置の画素値情報取得ユニット54、神経束データ作成ユニット55、温度分布画像作成ユニット56、腫瘍、各種臓器等のデータ作成ユニット57、及び色成分合成ユニット58を含む。
【0028】
マッピングオーダ部531,532,533…53nは、ロードしたボリュームデータを合成表示する際の優先度を設定し、データのオン/オフの情報を生成する。同一空間位置の画素値情報取得ユニット54は、マッピングオーダ部531,532,533…53nからの複数のデータ間で、装置内座標系に基づいて空間的に同じ位置に存在する画素を抽出して提供する。
【0029】
神経束データ作成ユニット55は、神経束のデータを作成し提供する。温度分布画像作成ユニット56は、温度モニタ画像から発熱箇所と発熱情報を取得し表示用の温度分布画像を作成する。腫瘍、各種臓器等のデータ作成ユニット57は、癌組織、腫瘍、脳、その他の臓器等の画像データを抽出し提供するもので、画像抽出部を構成する。
【0030】
色成分合成ユニット58は、神経束、温度分布画像、腫瘍、各種臓器のデータを合成表示する際の色やカラーテーブル等を、個々のデータについて設定し提供する。色成分合成ユニット58は、合成パラメータ設定部60に接続されている。
【0031】
合成パラメータ設定部60は、マッピングデータ出力部52で作成されたデータを表示する際のパラメータを設定するもので、半透明合成パラメータ設定部61と、画像表示パラメータ設定部62を含む。半透明合成パラメータ設定部61は、画像を合成する際の透明度を設定する。画像表示パラメータ設定部62は、画像の拡大率やWW/WLの値など、表示時のパラメータを設定する。
【0032】
合成パラメータ設定部60は、レンダリング情報処理部63に接続されている。レンダリング情報処理部63は、入力されたそれぞれのボリュームデータを表示する際のパラメータの調整をするもので、Opacity(不透明度)、Color、Position等、一般的なボリュームレンダリングのパラメータを調整する。
【0033】
レンダリング情報処理部63は、レンダリング画像作成部64に接続されている。レンダリング画像作成部64は、MPRユニット65と3Dユニット66を含む。MPRユニット65は、入力された複数のデータと各種表示パラメータによって、複数データの合成表示を行うもので、MPR(Multi Planer Reconstruction)画像を作成して提供する。3Dユニット66は、入力された複数のデータと各種表示パラメータによって、複数データの合成表示を行うもので、3Dボリュームレンダリング画像(MIP、SVR、PVR等)を作成して提供する。
【0034】
レンダリング画像作成部64からの画像データは、表示部24に出力される。尚、色成分合成ユニット58、合成パラメータ設定部60、レンダリング情報処理部63及びレンダリング画像作成部64は、画像合成部を構成する。
【0035】
また、加熱焼灼位置指定部70及び加熱焼灼位置移動調整・合成表示部71を設けている。加熱焼灼位置指定部70は、画素値情報取得ユニット54からの情報を基に加熱焼灼位置を指定し、色分け合成ユニット58を制御する。また加熱焼灼位置移動調整・合成表示部71は、加熱焼灼位置指定部70からの情報をもとにレンダリング画像作成部64を制御し、加熱焼灼位置を指定するための3D-ROIを合成表示し、これを移動する。また加熱焼灼位置指定部70は、
図2の局所励起位置制御部33に加熱焼灼位置の情報を提供する。
【0036】
次に、実施形態に係る医用画像診断装置10の動作を説明する。以下は、主に
図3の画像処理ユニット27の動作を説明するものである。
【0037】
本実施形態では、癌組織等の病巣領域に集まる薬剤を患者に投与し、薬剤が集まった場所を元に、治療する病巣領域の位置を特定し、特定した病巣領域をピンポイントで発熱させて温熱治療することができ、MRI装置10で、診断、治療、経過観察といった一連の処理の支援を行う。先ず、一連の処理を簡単に説明する。
【0038】
MRI装置10は、プロトン密度画像やT1強調画像、T2強調画像等に代表される形態情報の収集と表示が可能である。また局所励起を行うことができ、温度情報を得ることができる。尚、医用画像には、腫瘍等の大きさや動き等を知るための形態画像と、体内の代謝や循環等の機能を知るための機能画像がある。
【0039】
また局所励起は、造影効果のあるガドリニウム等の磁性体ナノ粒子(磁性体微粒子)を薬剤と一緒に病巣領域に直接、又は近隣の血管より注入して投与し、RFコイル14に高周波電力を印加することで、磁性体微粒子を発熱させ、ピンポイントで選択的な加熱制御を行うものである。こうして、MRI装置10は、造影効果のある磁性体微粒子の集まっている箇所の画素のみを抽出し、抽出した画素の位置を前記3D画像やMPR画像の上に合成表示する。また任意の領域を励起させることで当該領域のみを部分的に加熱し、その領域の温度情報を可視化する。例えば、T1強調画像やT2強調画像等の形態画像の上に温度分布画像を表示し、形態画像と温度の情報を3D画像やMPR画像上で合成表示する。
【0040】
さらに、トラクトグラフィ(神経束の表示)の画像や、神経束の情報と癌組織病巣領域の画像を使用して癌組織の悪性度を評価した結果を、3D画像やMPR画像の上に合成表示する。画像上に種々の情報(磁性体微粒子の位置、神経束の情報、癌組織の悪性度を評価した情報等)を合成表示することで、表示画像を元に治療計画を立てることができる。
【0041】
また、合成表示した複数の情報の重なり度を分析し、重なり度の強い箇所は別の色で強調して表示する。これにより、焼灼する位置や範囲、焼灼する順番、焼灼する回数等の焼灼スケジュールを、ユーザが画像を見ながら決定することができる。上記計画を、コンピュータ上であたかも治療を実行しているかのようにシミュレーション表示するため、治療位置、治療範囲、磁性体微粒子の発熱の状況等を、シミュレーション表示(自動実行)しながら、3D画像やMPR画像上にリアルタイムに合成表示することができる。
【0042】
以下、上記した一連の処理を、図を用いて具体的に説明する。
【0043】
(1)先ず、MRI装置10で、患者の造影前データを収集し、それらのデータを3D画像やMPR画像で表示する。
図4は、造影前のプロトン密度強調画像の一例を示す。この画像では病巣領域の指摘はできない。
【0044】
(2)次に、癌組織(病巣領域)に集まる薬剤を投与するのと一緒に磁性体を帯びた磁性体微粒子を投与する。例えば、癌組織に集まる薬剤をコーティングした造影効果のあるガドリニウム等の磁性体ナノ粒子を、病巣領域に直接、又は近隣の血管より注入する。薬剤は、ナノ粒子にコーティングすることで一緒に投与することができる。
【0045】
(3)薬剤を投与したのち、MRI装置10で、病巣領域のある部分を撮影し、造影後のデータを収集する。そして収集したデータをもとに、3D画像やMPR画像を表示する。
図5は、造影後の画像の一例を示す。
図5では、磁性体微粒子の部分に高信号の病巣領域100が認められる。
【0046】
(4)次に、造影前のデータと造影後のデータで差分を取り、造影剤(薬剤又は磁性体微粒子)の情報を抽出する。ここでは薬剤の集まっている箇所、又はナノ粒子の集まっている箇所を抽出する。また病巣領域の箇所を特定できる場合は、その位置に関して、薬剤およびナノ粒子の滞留を確認する。抽出した造影剤の情報は、3D画像やMPR画像の上に合成表示される。差分をとった場合、
図5の病巣領域100のみが抽出され、表示される。
【0047】
(5)表示された画像上で、病巣領域の3D画像と磁性体微粒子の分布により、焼灼する位置を特定する。癌組織に造影剤が集まっていることが確認できるまで、上記、(3)〜(4)の処理を繰り返す。尚、
図4,
図5では、撮影画像が1つの場合を示しているが、色々な角度方向から見た断面画像等を同時に表示することで、病巣領域を容易に確認することができる。
【0048】
図6は、造影前の複数の角度方向から見た断面画像の一例を示す。
図7は、同じ角度方向から見た造影後の断面画像の一例を示す。
図7において、矢印で示す部分100が磁性体微粒子の部分、つまり病巣領域100に相当する。
図8は、造影前の画像と造影後の画像の差分画像の一例を示し、複数の角度方向から見た差分画像が表示される。矢印で示す部分が病巣領域100に相当する。
【0049】
(6)焼灼する位置、つまり病巣領域が特定できたら、病巣領域に対し効果的に焼却できる位置を、病巣領域の大きさと焼却範囲の大きさから自動調整する。
【0050】
(7)また、トラクトグラフィ(神経束の表示)の画像、神経束の情報と癌組織病巣領域の画像を使用して癌組織の悪性度を評価した結果のデータを、前記3D画像やMPR画像の上に合成表示する。
【0051】
(8)次に、こうして得られた画像を参照しながら治療する場所の選定、発熱温度の上限、一度に焼灼する大きさ、焼灼する順番等のパラメータを設定する。
【0052】
(9)パラメータが決まったら、目標位置に対する焼却を実施する。ここでは、設定した目標範囲に磁場を与えて磁性体微粒子を発熱させ、その熱で癌を治療する。即ち、局所励起を使用して、磁性体微粒子の発熱に充分な磁場を任意の一定時間、上記の設定条件に基づいて発生させる。
【0053】
(10)局所励起を実施している間、画面上に表示された造影剤の情報や解剖画像の情報を合成表示した3D画像やMPR画像上の、局所励起している領域(造影剤の滞留している領域をも含む)内に存在するピクセルの色を、装置より取得した温度情報データに従って、色付けして合成表示する。
【0054】
(11)次に事前に取得した発熱カーブのデータと、局所励起によって発熱している治療中の領域の発熱データを比較し、その温度の違いを、上記3D画像とMPR画像上に合成表示する。例えば、治療中の領域を、初めは青色で表示し、温度が高くなるにつれて黄色、赤色の様に、発熱の温度によって色を変える。こうして、治療中の領域(発熱箇所)示し、かつその領域の温度分布を示す画像(温度分布画像)が得られる。
【0055】
図9は、温度分布画像の一例を示す。
図7の表示画像を基準画像としたとき、
図9では、温度の上昇によって発熱している治療中の領域の画像100の色が変化する。温度が高くなるにつれて画像100は黄色、赤色のように発熱の温度によって色が変わる。
【0056】
図10は、事前に発熱カーブのデータを取得するための一手法を示す説明図である。
図10の(a)、はファントムであり、(b)は、薬剤でコーティングされた磁性体ナノ粒子(磁性体微粒子)をファントムに注入した状態を示している。(c)は、RFパルスにより磁場をかけて局所励起し、磁性体微粒子を発熱させ、発熱に関するデータを取得する状態を示す。
【0057】
また
図11は、発熱に関するデータであり、発熱量と磁場をかける時間の関係を示すデータの一例を示す。
図11のデータをもとに、どれくらいの時間、磁場をかけると、どの程度の温度になるかが分かる。したがって、時間情報をもとに治療中の領域の温度を把握することができ、それぞれの温度に対応して表示色を変化させることで、発熱状態を知らせることができる。尚、事前に発熱カーブのデータを取得するには、
図10の例に限らず、MRI装置10が温度モニタ機能を有していれば、それを利用すればよい。
【0058】
こうして、局所励起により発熱している治療中の領域の画像100を表示し、かつ発熱の温度によって色を変えることにより、リアルタイムで治療位置、治療範囲、磁性体微粒子の発熱の状況等をシミュレーション表示し、3D画像やMPR画像上にリアルタイムに合成表示することができる。
【0059】
図12は、上記(7)の処理で述べた、神経束の情報と癌組織の画像の表示方法の一例を示す説明図である。
図12では、神経束と癌組織(病巣領域)との関係に応じて癌組織の画像の表示形態を変えて(色付けして)表示する例を示す。
図12(a)は、腫瘍100の表面に近い神経束101までの距離によって、腫瘍のピクセルに付ける色を変える例である。腫瘍表面からの垂線102が神経束101に近いほど濃い色を付けることで、例えば
図12(b)のように腫瘍表面の色を変えることができる。
【0060】
図13は、癌組織(腫瘍)の画像を色付けして表示する他の例を示す。
図13(a)は、垂線上に存在する画素(p1,p2…pn)の回りの任意の領域内にある神経束101の数により、腫瘍100上のピクセルに付ける色を変える例を示している。
図13(b)に拡大して示すように、例えば注目ピクセルの領域内に神経束101が3本あるときは赤系統の色でピクセルを着色し、注目ピクセルの領域内に神経束101が1本あるときは青系統の色でピクセルを着色する。
図13(c)は、腫瘍全体を上記の着色方法で色付けしたときの表示例を示す。
【0061】
また
図14は、腫瘍100と神経束101の関係を可視化した表示例を示す。
図14(a)は、腫瘍100に神経束101が近接している場合を示す。(b)は腫瘍100の中を神経束101が通過している場合を示す。また(c)は、腫瘍100の周辺の浮腫の中を神経束101が通過している場合を示す。さらに(d)は腫瘍100の中を神経束101が通過し、かつ神経束101が途切れている場合を示す。腫瘍の悪性度が高い場合は、細胞分裂を起こして神経束101が途切れ、神経として機能しないことがある。したがって、神経束101の表示形態を変えることで悪性度を判断することができる。
【0062】
また
図15は腫瘍100と神経束101の関係を可視化した他の表示例を示す。
図15(a)は、腫瘍100に神経束101が近接している場合を示し、神経束101を例えば青系統の色で表示した例である。(b)は、腫瘍100の中を神経束101が通過している場合を示し、神経束101を例えば赤系統の色で表示する。また(c)は、腫瘍100の周辺の浮腫の中を神経束101が通過している場合を示し、神経束101を例えば紫系統の色で表示する。さらに(d)は腫瘍100の中を神経束101が通過し、かつ神経束101が途切れ途切れになっている場合を示し、神経束101を例えば緑系統の色で表示した例である。したがって、
図15のような表示例でも神経束101の色を変えることで悪性度を判断することができる。
【0063】
また、
図16は腫瘍100と神経束101の関係を可視化したさらに他の表示例を示す。
図16(a)は、腫瘍100の中を神経束101が通過し、30%程度の神経束が途切れている場合を示し、腫瘍100を例えば青系統の色で表示した例である。(b)は、腫瘍100の中を神経束101が通過し、60%程度の神経束が途切れている場合を示し、腫瘍100を例えば赤系統の色で表示した例である。また(c)は、腫瘍100の中を神経束101が通過しており、神経束101の途切れが他と比べて多い領域103を例えば白系統の色で表示して強調するようにした場合を示す。さらに(d)は腫瘍100の中を神経束101が通過し、かつ全ての神経束101が途切れている場合を示し、例えば腫瘍100を濃い赤系統の色で表示した例である。したがって、
図16のような表示例でも腫瘍100の色を変えることで神経束101との関係、つまり悪性度を判断することができる。
【0064】
図17は、神経束、腫瘍、脳表面等の3D画像を重ね合わせて表示した例を示す説明図である。
図17では、ブロードマンの脳地
図104を並列的に表示し、
図13(c)の神経束と腫瘍の合成
図105を、脳表面の3D画像106に合成して表示した例である。腫瘍の中に入り込んだ神経束の先端が到達している場所の一定範囲の領域の色を変えて表示することができる。
【0065】
また脳地図内104の領域P1に相当する部分を3D画像106の中に表示しており、神経の破損が運動機能のどの部分に影響を及ぼすかを示すことができる。このように、ブロードマンの脳地図と照らし合わせることで、影響範囲を理解しやすくすることができる。
【0066】
図18は、神経束、腫瘍、脳表面等の3D画像を重ね合わせて表示した他の例を示す説明図である。
図18では、ブロードマンの脳地
図104を並列的に表示し、さらにT2強調画像による脳表面3D画像107を合成して表示した例である。
図18でも腫瘍の中に入り込んだ神経束の先端が到達している場所の一定範囲の領域の色を変えて表示している。また脳地図内の領域P1に相当する部分をT2強調画像による脳表面3D画像107にも表示している。
【0067】
図19は、局所励起の動作を説明する図であり、(a)は、局所励起するために磁性体微粒子を付着させる部分108を含む画像の一例を示し、(b)は、局所励起による加熱治療と温度モニタ画像の取得までの処理を示すフローチャートである。
【0068】
図19(b)において、ステップS0はスタートステップであり、ステップS1では、病巣領域に薬剤を投与するのと一緒に磁性体微粒子を投与する。ステップS2では、MRI装置にて撮影した画像をもとに局所励起する場所の位置決めを行う。ステップS3では、MRI装置により温度モニタ用の基準画像を撮像し、基準画像を取得する。次にステップS4では、ステップS2で位置決めした場所にRFパルスを与え、高周波(RF)のエネルギーが最も加わるように磁性体微粒子を付着させた部分108(
図19(a))を加熱する。
【0069】
そして一旦、加熱を中断し、ステップS5ではMRI装置により温度モニタ画像を取得する。ステップS4とステップS5を繰り返し、局所励起した部分の温度を計測し、予め設定した温度に達するとステップS6で終了する。
【0070】
図20は、局所励起による加熱治療と温度モニタ画像の取得までの他の処理方法を示すフローチャートである。
図20において、ステップS10はスタートステップであり、ステップS11では、病巣領域に薬剤を投与するのと一緒に磁性体微粒子を投与する。
【0071】
ステップS12では、MRI装置にて撮影した画像をもとに局所励起する場所の位置決めを行う。ステップS13では、MRI装置により温度モニタ用の基準画像を撮像し、基準画像を取得する。次にステップS14では、Multi TransmitによりRFコイル14に送信する高周波(RF)の位相を操作し、ステップS12で位置決めした場所にRFのエネルギーが最も加わるようにし、磁性体微粒子を付着させた部分を加熱する。
そして一旦、加熱を中断し、ステップS15ではMRI装置により温度モニタ画像を取得する。ステップS14とステップS15を繰り返し、局所励起した部分の温度を計測し、予め設定した温度に達するとステップS16で終了する。
【0072】
図21は、電磁照射による加熱治療と温度モニタ画像の取得までのさらに他の処理方法を示すフローチャートである。
図21において、ステップS20はスタートステップであり、ステップS21では、病巣領域に薬剤を投与するのと一緒に磁性体微粒子を投与する。
【0073】
ステップS22では、MRI装置にて撮影した画像をもとに局所励起する場所の位置決めを行う。ステップS23では、MRI装置により温度モニタ用の基準画像を撮像し、基準画像を取得する。次にステップS24では、RFコイル14に高周波パルスを供給し、磁性体微粒子を付着させた部分に高周波磁場を照射し、ステップS22で位置決めした場所付近を加熱する。
【0074】
またステップS25ではMRI装置により温度モニタ画像を取得する。ステップS25のあと加熱した部分の温度を計測し、予め設定した温度に達するとステップS26で温熱治療を完了し、ステップS24での電磁照射を終了させ、加熱を中止し、ステップS27で終了する。尚、高周波加熱する照射コイルは、RFコイル14と兼用してもよいし、照射コイルを別個に設置することもできる。
【0075】
図22は、以上述べた各種の画像を1つの画面に表示した例、即ち加熱治療中のモニタリング画像の表示例を示す。
図22では、病巣領域の焼灼位置を示す画像(a)を表示し、造影剤や病巣領域の発熱の状況を可視化するために、造影剤画像、形態画像、機能画像、発熱の様子を示す画像、神経束の情報、癌組織の悪性度を示す情報等を、3D(SVRやMIP)画像、MPR画像等の上に合成表示した例である。
【0076】
例えば、(b),(c),(d)のように、病巣領域(発熱箇所)をそれぞれ異なる角度方向から見た断面画像を表示し、腫瘍部100を温度によって色を変えて表示する。また(e)のように、腫瘍100、神経束101、脳表面106等の3D画像を重ね合わせた画像を表示する。モニタリング画像には、磁場を掛けて発熱している状況を、リアルタイム、又は任意時間間隔毎に合成表示することができる。
【0077】
以上述べたように本発明の実施形態によれば、低侵襲で癌組織のみをピンポイントで繰り返し治療を行うことができ、診断〜治療〜経過観察の過程を1台の装置上で実現することができ、診断治療の支援効果が飛躍的に向上する。
【0078】
また、表示されている画像上で、焼灼する位置や範囲、焼灼する順番、焼灼する回数等を決定できるので、癌組織を温熱治療するための治療計画の立案や、治療の可否の判断、インフォームドコンセント等、診断治療に必要な多くの情報をユーザや患者に対して提供できる。さらに、治療位置、治療範囲、磁性体微粒子の発熱の状況等をシミュレーション表示しながら、3D画像やMPR画像上にリアルタイムに合成表示でき、MRI装置自身の臨床の場での有用性がより向上する。
【0079】
以上、本発明のいくつかの実施形態を述べたが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これらの実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これらの実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。