【実施例】
【0036】
以下、実施例および比較例によって本発明をさらに詳細に説明する。
【0037】
本発明のオストミーパウチ用潤滑剤組成物の例として、実施例1〜7の潤滑剤組成物の処方を表1に示した。これらの組成物は、常法により調製した。すなわち、d)成分にb)成分を添加し、加温、溶解した後、c)成分を添加して混合、溶解し、常温まで冷却し、次いでa)成分を添加し、混合、溶解して、実施例1〜7の各組成物とした。また、比較例1〜9の潤滑剤組成物の処方を、表1に併せて示した。比較例1、2および4の組成物は、前記実施例の組成物と同様に調製した。比較例3の組成物は、c)成分を配合しない他は、実施例1の組成物と同様に調製した。比較例5〜9の組成物は、a)成分、b)成分およびc)成分をそれぞれe)成分、f)成分およびg)成分に代えて、実施例1の組成物と同様に調製した。なお、表1において、各成分の含有量は質量%により表した。
【0038】
【表1】
【0039】
実施例および比較例の各潤滑剤組成物について、以下の評価を行った。
【0040】
[潤滑性:オストミーパウチへの流入・下方への移動]
オストミーパウチ(アルケア株式会社製「プロケアー2ドレナブルD」)を、底部排出口を閉じた上で、クランプによって垂直に吊り下げた。実施例および比較例の各潤滑剤組成物8gを、上部の開口部より注入し、手でパウチ全体を軽く揉むようにして潤滑剤組成物を全体に行きわたらせた後、1分間静置した。1分経過後、人工糞便としてビーンズペースト(Bruce Foods Corporation社製「カサフィエスタ リフライドビーンズ」)50gを、上部の開口部よりオストミーパウチ内部にシリンジを用いて注入した。前記ペーストの注入完了時から測時を開始し、前記ペーストの下端がオストミーパウチ底部に到達した時点で終了とした。各組成物に対して3回測定を行い、オストミーパウチ底部への移動時間の合計が90秒以下の潤滑剤組成物を、潤滑性に優れる組成物であると評価した。
【0041】
[潤滑性:オストミーパウチからの排出性]
上記と同様の方法で、オストミーパウチ内に150gのビーンズペーストを注入した。底部に前記ペーストが到達した状態でパウチの底部排出口を開き、前記ペーストをパウチから自由に落下させることによって排出時間を評価した。底部排出口を開いた時から、前記ペーストがすべて落下するまでの時間を測定し、排出時間とした。排出時間が20秒以下の潤滑剤組成物を、潤滑性に優れる組成物であると評価した。
【0042】
[こびりつき防止性]
クランプによって垂直に吊り下げたオストミーパウチに、上記ビーンズペースト150gをシリンジを用いて注入し、その状態で8時間静置した。8時間経過後、パウチの底部排出口を開き、ビーンズペーストをパウチから自由に落下させた。ビーンズペースト排出後のパウチ内面の状態について、20名のパネラーに評価させ、下記の基準により点数化させた。
<点数化基準>
2点:こびりつきがほとんどなく、2回以下のすすぎで洗い流せる場合。
1点:こびりつきが少量あるものの、3〜5回のすすぎで洗い流せる場合。
0点:こびりつきが多く、6回以上すすぐ、もしくはこすり洗いをしないと洗い流せない場合。
【0043】
20名のパネラーの評価点の合計を求めて、下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
◎:評価点の合計が35点以上であり、かつ0点としたパネラーがいない場合;こびりつき防止性に非常に優れる潤滑剤組成物である。
○:評価点の合計が30点以上35点未満であるか、または合計点が35点以上で、0点としたパネラーが1名または2名である場合;こびりつき防止性に優れる潤滑剤組成物である。
△:評価点の合計が20点以上30点未満である場合;こびりつき防止性にやや欠ける潤滑剤組成物である。
×:評価点の合計が20点未満である場合;こびりつき防止性に欠ける潤滑剤組成物である。
【0044】
[使用性]
30mLのボトルに充填した本発明の潤滑剤組成物をオストミーパウチ(アルケア株式会社製「プロケアー2ドレナブルD」)に塗布した際の使用性について、20名のパネラーに評価させ、下記の基準により点数化させた。
<点数化基準>
2点:液だれがなく、パウチ内部にすばやく均一に広がると感じた場合。
1点:液だれがほとんどなく、パウチ内部に均一に広がりやすいと感じた場合。
0点:液だれがある、もしくはパウチ内部に均一に広がりにくいと感じた場合。
【0045】
20名のパネラーの評価点の合計を求めて、下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
◎:評価点の合計が35点以上であり、かつ0点としたパネラーがいない場合;使用性に非常に優れる潤滑剤組成物である。
○:評価点の合計が30点以上35点未満であるか、または合計点が35点以上で、0点としたパネラーが1名または2名である場合;使用性に優れる潤滑剤組成物である。
△:評価点の合計が20点以上30点未満である場合;使用性にやや欠ける潤滑剤組成物である。
×:評価点の合計が20点未満である場合;使用性に欠ける潤滑剤組成物である。
【0046】
[消臭機能]
実施例および比較例の各潤滑剤組成物3gをそれぞれ1L三角フラスコに投入した。これにモデル悪臭(アンモニア150ppm、トリメチルアミン20ppm、アセトアルデヒド100ppm、硫化水素20ppm、メチルメルカプタン5ppm、イソ吉草酸50ppm)を投入して密封し、30分間静置した。20名をパネラーとし、30分間静置した後の臭気について、20名のパネラーにより評価させ、下記の基準により点数化させた。
<点数化基準>
2点:臭気が大幅に低減されていると感じた場合。
1点:臭気が低減されていると感じた場合。
0点:臭気が低減されていないと感じた場合。
【0047】
20名のパネラーの評価点の合計を求めて、下記の基準に従って評価した。
<評価基準>
◎:評価点の合計が35点以上であり、かつ0点としたパネラーがいない場合;消臭効果が非常に高い潤滑剤組成物である。
○:評価点の合計が30点以上35点未満であるか、または合計点が35点以上で、0点としたパネラーが1名または2名である場合;消臭効果が高い潤滑剤組成物である。
△:評価点の合計が20点以上30点未満である場合;消臭効果が低い潤滑剤組成物である。
×:評価点の合計が20点未満である場合;消臭効果が非常に低い潤滑剤組成物である。
【0048】
[保存安定性]
実施例および比較例の各潤滑剤組成物を透明ガラス容器に密封して、5℃、25℃、40℃の各温度で1ヶ月間保存し、その外観を観察して、以下に示す基準に従い4段階で評価し、◎または○の場合に、保存安定性が良好な潤滑剤組成物であると評価した。
<評価基準>
◎:安定性良好(外観の変化がなく、不均一な濁りや沈殿が全く観察されない。)
○:安定性おおむね良好(外観の変化がほとんどなく、不均一な濁りや沈殿がほとんど観察されない。)
△:安定性やや不良(若干の分離または変色、濁りもしくは沈殿が確認される。)
×:安定性不良(分離または変色、濁りもしくは沈殿が明確に確認される。)
【0049】
以上の評価結果を表2に示した。また、実施例および比較例の各潤滑剤組成物について、25℃におけるpHおよび粘度を測定し、表2に併せて示した。なお、粘度は、B型粘度計により、ローター番号:3番、ローター回転数:12rpm、測定時間:100秒間の条件で測定した。
【0050】
【表2】
【0051】
実施例1〜7の本発明の潤滑剤組成物は、いずれも潤滑性に優れ、排泄物の流入や、下方への移動を円滑にした。また、消臭機能、使用性および保存安定性が良好であり、パウチ内部へのこびりつき防止性にも優れるものであった。
【0052】
一方、a)成分の含有量が本願所定の範囲を超えている比較例1の潤滑剤組成物においては、保存安定性が悪かった。b)成分の含有量が本願所定の範囲を超えている比較例2の潤滑剤組成物においては、潤滑性が不十分であり、さらには使用性にやや欠けると評価された。c)成分を含有しない比較例3の潤滑剤組成物においては、こびりつき防止性と消臭機能についての評価が低下した。c)成分の含有量が本願所定の範囲を超えている比較例4の潤滑剤組成物においては、潤滑性の低下が認められた。a)成分を含有せず、代わりにクエン酸銅を含有する比較例5の潤滑剤組成物においては、こびりつき防止性の評価が低く、消臭機能も不十分であると評価された。また、40℃で保存した場合において、濁りと澱の発生を認めた。a)成分を含有せず、代わりにエピガロカテキンガレートを含有する比較例6の潤滑剤組成物においても、こびりつき防止性の評価が悪く、消臭機能が不十分であると評価された。b)成分を含有せず、代わりにカチオン化セルロースを含有する比較例7の潤滑剤組成物においては、潤滑性および使用性が不十分であった。また、調製直後から澱を生じて不均一となり、保存安定性にも欠けるものであった。b)成分を含有せず、代わりにキサンタンガムを含有する比較例8の潤滑剤組成物においては、潤滑性が悪く、こびりつき防止性についても不十分であると評価された。c)成分を含有せず、代わりにリン酸水素ナトリウムを含有する比較例9の潤滑剤組成物においては、こびりつき防止性が悪く、消臭機能も不十分であると評価された。