(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
架橋されたジエン系ゴム粒子からなるゴムゲルをビニル系モノマーで膨潤させた後、前記ゴムゲルを有機溶剤に分散させて、分散液中で前記ビニル系モノマーをラジカル重合させることにより得られた、ゴムゲルの内部にビニル系ポリマーを含むゴムゲル−ポリマー複合体からなるゴム用配合剤を、マトリックスゴム成分としてのジエン系ゴムと混合する、タイヤ用ゴム組成物の製造方法。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の実施に関連する事項について詳細に説明する。
【0010】
実施形態に係るゴム用配合剤は、ゴムゲル内部にビニル系ポリマーを含むゴムゲル−ビニルポリマー複合体である。かかるゴム配合剤は、架橋されたジエン系ゴム粒子からなるゴムゲルをビニル系モノマーで膨潤させた後、該ゴムゲルを有機溶剤に分散させて、分散液中で前記ビニル系モノマーをラジカル重合させることにより得られる。このようにゴムゲルをビニル系モノマーで膨潤させることで、ゴムゲル内部にビニル系モノマーが取り込まれ、取り込んだビニル系モノマーをゴムゲル中で重合することにより、ゴムゲル本体の分子鎖に対して高度に絡み合った状態にビニル系ポリマーが生成される。そのため、かかる絡み合いによりゴムゲル中にビニル系ポリマーが存在する確率が高くなり、ゴムゲルの弾性率を向上することができる。すなわち、ゴムゲルとビニル系ポリマーをゴム組成物の混練時に添加混合する場合に比べて、ゴムゲル内部にビニル系ポリマーが存在する確率が高くなり、ゴムゲルの高弾性化を図ることができる。
【0011】
上記ゴムゲルは、ジエン系ゴム構造を有する架橋体からなる微粒子状ゴムであり、ゴム分散液を架橋することにより製造することができる。ゴム分散液としては、懸濁重合により製造されるゴムラテックス、溶液重合されたゴムを水中に乳化させて得られるゴム分散液などが挙げられ、また、架橋剤としては、有機ペルオキシド、硫黄系架橋剤など挙げられる。また、ゴム粒子の架橋は、ゴムの乳化重合中に、架橋作用を持つ多官能化合物との共重合によっても行うことができる。具体的には、例えば、特開平6−57038号公報、特開平10−204225号公報、特表2004−504465号公報、特表2004−506058号公報、特表2004−530760号公報などに開示の方法を用いることができる。
【0012】
ゴムゲルを構成するジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴム、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、ニトリルゴムなどが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。好ましくは、ポリブタジエンゴム、スチレンブタジエンゴムを主成分とするものである。
【0013】
ゴムゲルのガラス転移温度(Tg)は20℃以下であることが好ましく、より好ましくは−100〜−10℃であり、更に好ましくは−100〜−50℃である。ガラス転移温度の低いゴムゲルを用いることでヒステリシスロスを低くして低発熱化を図ることができる。ゴムゲルのガラス転移温度は、ベースとなるジエン系ゴムの種類と、その架橋度により調整することができる。ガラス転移温度は、JIS K7121に準拠して示差走査熱量測定(DSC)を用いて測定される値(昇温速度20℃/分)である。
【0014】
ゴムゲルの粒径は、マトリックスゴム成分に対する分散性や低発熱性、補強性等の観点から、平均粒子径(DIN 53 206によるDVN値(d
50))が5〜2000nmであることが好ましく、より好ましくは10〜500nmであり、更に好ましくは20〜200nmである。
【0015】
ゴムゲルとしては、特に限定するものではないが、トルエン膨潤指数Qiが2〜16であるものが好ましく用いられる。トルエン膨潤指数は、より好ましくは3〜10であり、更に好ましくは4〜8である。トルエン膨潤指数Qiが小さすぎると、ビニル系モノマーによる膨潤が小さくなってゴムゲル内部で重合させることが困難となるおそれがある。逆にQiが大きすぎると、粒子が柔らかくなり、補強効果を向上する効果が小さくなるおそれがある。ここで、トルエン膨潤指数は、ゴムゲルをトルエンに膨潤させた後、乾燥させることにより測定される。すなわち、ゴムゲル250mgを、トルエン25mL中で、24時間、振とう下に膨潤させ、20000rpmで遠心分離してから、濡れ質量を秤量し、次いで70℃で質量一定まで乾燥させてから、乾燥質量を秤量して、Qi=(ゲルの濡れ質量)/(ゲルの乾燥質量)により求められる。
【0016】
ゴムゲルとしては、官能基を有する変性ジエン系ゴム粒子であってもよい。官能基としては、例えば、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、チオール基、スルホ基などのヘテロ原子を含むものが挙げられる。このような官能基は、ジエン系ゴムの重合時に、官能基が導入されたモノマーを用いて合成してもよく、また重合後の活性末端に官能基を導入してなる末端変性ゴムを用いることもできる。また、上記架橋によりジエン系ゴム粒子を作製した後に、その粒子表面のC=C二重結合に対して官能基を有する化合物を反応させることにより、粒子表面に官能基を組み込むこともできる。
【0017】
ゴムゲル内部で重合させる上記ビニル系モノマーとしては、通常のラジカル重合可能なビニル基を持つ各種ビニル系化合物を用いることができ、該ビニル基はその一部の水素がアルキル基等の置換基で置換されたものであってもよい。ビニル系モノマーは、ゴムゲルを膨潤させるため、常温(25℃)で液体のものを用いることが好ましい。
【0018】
ビニル系モノマーとしては、例えば、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸ヘキシル、アクリル酸オクチル、アクリル酸エチルヘキシル、アクリル酸デシル、アクリル酸ステアリル、及びこれらのメタクリル酸化合物などの炭素数1〜18のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステル(即ち、アクリル酸エステル及び/又はメタクリル酸エステル);
スチレン、α−メチルスチレン、p−メチルスチレン、ビニルトルエンなどの芳香族アルケニル化合物;及び、
エチレン、プロピレン、イソブチレンなどのオレフィン化合物などが挙げられる。これらは、それぞれ1種単独で用いても、2種以上を組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、好ましくは(メタ)アクリル酸エステルを用いることであり、より好ましくは炭素数1〜4のアルキル基を持つ(メタ)アクリル酸エステルを用いることである。
【0019】
これらのビニル系モノマーをゴムゲルに添加することで、ゴムゲルを膨潤させる。その際、ビニル系モノマーの添加量は、ゴムゲル−ポリマー複合体に導入しようとするビニル系ポリマーの量に応じて設定することができ、例えば、ゴムゲル100質量部に対して、10〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量部である。
【0020】
ゴムゲルをビニル系モノマーで膨潤させた後、反応溶媒として有機溶剤を加えて、膨潤させたゴムゲルを有機溶剤に分散させる。有機溶剤としては、沈殿重合法を行うために、ビニル系モノマーは溶解するが、ビニル系ポリマーは沈殿(不溶)するような溶剤を用いることができる。具体的には、エタノール、メタノール、プロパノール、イソプロパノール、アセトンなどが用いられる。
【0021】
次いで、ゴムゲルを分散させた分散液にラジカル重合開始剤を添加して、分散液中でビニル系モノマーをラジカル重合させる。ラジカル重合開始剤としては、過酸化物型開始剤、アゾ型開始剤などの一般的なラジカル重合で用いられる開始剤を用いることができる。このようにしてラジカル重合させることにより、ゴムゲル内部にビニル系ポリマーが形成されるので、濾過して有機溶剤と分離し、乾燥することにより、ゴム用配合剤としてのゴムゲル−ポリマー複合体が得られる。
【0022】
該ゴムゲル−ポリマー複合体において、上記ビニル系ポリマーは、数平均分子量Mnが12000〜100000であることが好ましい。ビニル系ポリマーの分子量が小さすぎると、弾性率の向上効果が小さく、十分な高弾性化効果が得られないおそれがあり、また低発熱性の効果も不十分となるおそれがある。該数平均分子量は、15000〜50000であることがより好ましい。数平均分子量はGPC測定より求められる。
【0023】
該ゴムゲル−ポリマー複合体において、上記ビニル系ポリマーは、ガラス転移温度が60〜150℃であることが好ましい。ビニル系ポリマーのガラス転移温度が低すぎると、使用時の発熱によりビニル系ポリマーの弾性率が低下するため、十分な高弾性化効果が得られないおそれがある。該ガラス転移温度は80〜130℃であることがより好ましい。ガラス転移温度は、DSCを用いて測定される(昇温速度20℃/min)。
【0024】
該ゴムゲル−ポリマー複合体において、ビニル系ポリマーの含有量は、ゴムゲル100質量部に対して10〜90質量部であることが好ましく、より好ましくは10〜50質量部、更に好ましくは15〜35質量部である。ビニル系ポリマーの含有量が少なすぎると、弾性率の向上効果が不十分となるおそれがある。逆に、含有量が多すぎると、低発熱性が損なわれるおそれがある。なお、複合体中に含まれるビニル系ポリマーの量は、ゴムゲルに添加するビニル系モノマーの量や、ラジカル重合開始剤の量を変量することにより、調整することができる。
【0025】
実施形態に係るゴム組成物は、上記ゴムゲル−ポリマー複合体とともに、マトリックスゴム成分としてのジエン系ゴムを含有するものであり、すなわち、ジエン系ゴムを連続相として、これに分散相としてのゴムゲル−ポリマー複合体が分散したものである。このようにゴムゲル−ポリマー複合体をゴム組成物に配合することにより、ゴムゲルとビニル系ポリマーを混練時に添加し混合する場合に比べて、高弾性化と低発熱性のバランスを向上することができる。その理由は次のように考えられる。ゴムゲル−ポリマー複合体は、上記のようにビニル系ポリマーが導入されたことにより弾性率の高いものである。また、ゴムゲルは、それ自体がマトリックスゴムと硫黄架橋することができる。これらの理由により、ゴムゲル−ポリマー複合体は擬似的な補強剤の役割を果たすことができる。そのため、ゴムゲルとビニル系ポリマーを混練時に添加する場合に比べて、ゴムゲル−ポリマー複合体を配合することによって、より効果的に補強性を向上することができるので、低発熱性の悪化を抑えながら高弾性化を図ることができ、よって、高弾性化と低発熱性のバランスが向上する。
【0026】
上記マトリックスゴム成分としてのジエン系ゴムとしては、架橋されていない原料ゴムが用いられ、当然のことながら架橋されたジエン系ゴム粒子であるゴムゲルは、該マトリックスゴム成分としてのジエン系ゴムには含まれない。該ジエン系ゴムとしては、例えば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、スチレン−ブタジエンゴム(SBR)、ポリブタジエンゴム(BR)、スチレン−イソプレンゴム、ブタジエン−イソプレンゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合体ゴム、ニトリルゴム(NBR)、ブチルゴム(IIR)などが挙げられ、これらはそれぞれ単独で用いても2種以上併用してもよい。上記の中でも、タイヤ用に用いる場合、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、スチレン−ブタジエンゴム、ポリブタジエンゴムのいずれか1種又は2種以上のブレンドが好ましい。
【0027】
上記ゴムゲル−ポリマー複合体の配合量は、上記マトリックスゴム成分としてのジエン系ゴム100質量部に対して、1〜100質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜50質量部であり、更に好ましくは5〜30質量部である。ゴムゲル−ポリマー複合体の配合量が少なすぎると、弾性率を向上させる効果が不十分となり、逆に、配合量が多すぎると、破断伸びが低下してしまう。
【0028】
本実施形態に係るゴム組成物には、シリカやカーボンブラック等の補強性充填剤(無機充填剤)を配合することが好ましい。これらの補強性充填剤は、マトリックスゴム成分との混練時に上記ゴムゲル−ポリマー複合体を剪断によって分散させる効果を発揮すると考えられる。そのため、補強性充填剤を配合することにより、ゴムゲル−ポリマー複合体による弾性率の向上効果を発揮させやすくすることができ、また、破断伸びの低下を抑えることができる。補強性充填剤の配合量は、上記マトリックスゴム成分としてのジエン系ゴム100質量部に対して30〜150質量部であることが好ましく、より好ましくは30〜100質量部であり、更に好ましくは40〜70質量部である。
【0029】
該補強性充填剤としてのシリカとしては、特に限定されず、湿式シリカ、乾式シリカなどが挙げられ、そのうち含水珪酸を主成分とする湿式シリカを用いることが好ましい。シリカのBET比表面積は、特に限定されないが50〜250m
2/gであることが好ましく、より好ましくは130〜220m
2/gである。BET比表面積は、BET法による窒素吸着比表面積であり、ISO 5794に記載のBET法に準拠し測定される。なお、補強性充填剤としてシリカを配合する場合、スルフィドシランやメルカプトシランなどのシランカップリング剤を併用することが好ましく、シランカップリング剤は、通常、シリカ100質量部に対して2〜25質量部にて用いることができる。
【0030】
また、該補強性充填剤としてのカーボンブラックとしては、特に限定されず、例えば、SAFクラス(N100番台)、ISAFクラス(N200番台)、HAFクラス(N300番台)、FEF(N500番台)、GPF(N600番台)(ともにASTMグレード)のものなどが挙げられる。なお、これらのカーボンブラックやシリカ等の補強性充填剤は、いずれか一種を単独で用いてもよく、あるいはまた複数種を組み合わせて用いてもよい。
【0031】
本実施形態に係るゴム組成物には、上記の成分の他に、軟化剤、可塑剤、老化防止剤、亜鉛華、ステアリン酸、加硫剤、加硫促進剤など、ゴム組成物において一般に使用される種々の添加剤を任意に配合することができる。ゴム組成物を製造するに際しては、マトリックスゴム成分としてのジエン系ゴムに、ゴムゲル−ポリマー複合体、補強性充填剤、及びこれらの添加剤を添加し、混合(混練)すればよい。通常は、第1混合段階で、加硫剤や加硫促進剤などの加硫系添加剤を除く薬品を、ゴムゲル−ポリマー複合体及び補強性充填剤とともに、マトリックスゴム成分としてのジエン系ゴムに添加し混練しておいて、その後の第2混合段階で、第1混合段階で得られた混練物に加硫系添加剤を添加し混合することによりゴム組成物を製造することができる。混合には、ゴム組成物の調製において一般に用いられるバンバリーミキサーやオープンロール、単軸混練機、二軸混練機等の混合機を用いることができる。
【0032】
上記加硫剤としては、硫黄、硫黄含有化合物等が挙げられ、特に限定するものではないが、その配合量は、マトリックスゴム成分としてのジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜10質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。また、加硫促進剤の配合量としては、該ジエン系ゴム100質量部に対して0.1〜7質量部であることが好ましく、より好ましくは0.5〜5質量部である。
【0033】
このようにして得られるゴム組成物は、常法に従い加硫成形することにより、例えば、トレッドやサイドウォール、ベルトやプライのトッピングゴム、ビードフィラー、リムストリップ等のタイヤ、コンベアベルト、防振ゴムなどの各種用途に用いることができる。好ましくは、該ゴム組成物は、低発熱性の悪化を抑えながら、高弾性化を図ることができるので、空気入りタイヤのゴム部材として用いることであり、タイヤに要求される補強性と低燃費性のバランスを向上することができる。
【実施例】
【0034】
以下、本発明の実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0035】
[ゴムゲルの合成]
ゴムゲルの合成はブタジエンラテックスを合成した後に有機過酸化物を添加し橋架けを行うことにより行った。詳細には、反応容器に、蒸留水252gと、ロジン酸カリウム(荒川化学工業株式会社製「ロンジスK25」)6.6gと、ナフタリンスルホン酸ホルマリン縮合物Na塩(花王株式会社製「デモールN」)0.14gと、塩化カリウム0.70gと、テトラエチレンペンタミン0.14gと、ドデカンチオール0.34gを入れ、窒素バブリングした後、反応容器を0℃に保ち、液化ブタジエン100.8gを気化法にて反応容器へ移送、乳化させた。その後、クメンヒドロキシペルオキシド0.28gを添加して重合を開始し、24時間反応を行うことで、ブタジエンラテックスを得た。
【0036】
合成したブタジエンラテックスのゴムゲル濃度が20質量%になるように蒸留水を加えた後、ブタジエンラテックス(20質量%)200gに、t−ブチルパーオキシラウレート(日本油脂株式会社製「パーブチルL」)3.6gを添加し、反応容器の温度を40℃にし、30rpmで撹拌、緩やかに窒素バブリングを行った。2時間後、設定温度を緩やかに上昇させて、1時間ほどかけて90℃にした。ゲル化反応中は撹拌速度を5rpmにし、窒素バブリングは止めた。4時間反応後、室温に戻しエタノールを注ぐことで試料(ゴムゲル)を析出させた。その後、試料を洗浄し、真空乾燥することにより、Tg=−80℃、平均粒子径=130nm、トルエン膨潤指数Qi=4.7であるゴムゲル(ポリブタジエンゲル)を得た。
【0037】
[ゴムゲル−ポリマー複合体1の作製]
上記で得られたゴムゲル100質量部にメタクリル酸メチルモノマー100質量部を加えて膨潤させた後、エタノール1000重量部を加えてゴムゲルを分散させた。その分散液に、ラジカル重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)0.33質量部を加えた後、N
2ガスで1時間バブリングを行った。バブリング終了後、密栓をして60℃で1日反応させた。得られたものをろ過し、減圧乾燥にて回収を行うことにより、ゴムゲル内部にポリメタクリル酸メチル(PMMA)が導入されたゴムゲル−ポリマー複合体1(以下、複合体1)を得た。なお、重合反応の確認は、NMR及びGPCで行った。
【0038】
詳細には、キャラクタリゼーションは複合体をTHF溶液で抽出した後、エバポレーターで溶媒を除去した。そこで得られたもの(ポリマー)をTHF(GPC用)及び重クロロホルム(NMR用)に再度溶解させた。
【0039】
数平均分子量測定のため、GPCサンプル濃度は1g/Lに調整した。カラムは40℃に温調したPLgel 3μ Mixed−E(2本)(ポリマーラボラトリーズ社製)を用いた。展開溶媒にはTHFを0.7mL/minの流速で展開させた。検出器には 示差屈折率検出器(RI)を用いた。標準サンプルにポリスチレンを用いて数平均分子量Mnを決定した。
【0040】
NMRは
1H−NMR測定にて、モノマーの除去の確認及びピークのブロード化による高分子量化について確認した。
【0041】
得られた複合体1において、該複合体中に含まれるPMMAの含有量、PMMAの数平均分子量及びガラス転移温度を下記表1に示す。
【0042】
[ゴムゲル−ポリマー複合体2の作製]
ゴムゲル100質量部にメタクリル酸メチルモノマー40質量部を加えて膨潤させた後、エタノール1000重量部を加えてゴムゲルを分散させ、その分散液にAIBN0.13質量部を加え、その他は複合体1と同様にして、ゴムゲル−ポリマー複合体2(以下、複合体2)を得た。
【0043】
[ゴムゲル−ポリマー複合体3の作製]
ゴムゲル100質量部にメタクリル酸メチルモノマー20質量部を加えて膨潤させた後、エタノール1000重量部を加えてゴムゲルを分散させ、その分散液にAIBN0.07質量部を加え、その他は複合体1と同様にして、ゴムゲル−ポリマー複合体3(以下、複合体3)を得た。
【0044】
[ゴムゲル−ポリマー複合体4の作製]
ゴムゲル100質量部にスチレンモノマー100質量部を加えて膨潤させた後、エタノール1000重量部を加えてゴムゲルを分散させた。その分散液にAIBN0.31質量部を加えた後、N
2ガスで1時間バブリングを行った。バブリング終了後、密栓をして60℃で1日反応させた。得られたものをろ過し、減圧乾燥にて回収を行うことにより、ゴムゲル内部にポリスチレン(PS)が導入されたゴムゲル−ポリマー複合体4(以下、複合体4)を得た。なお、重合反応の確認は、複合体1と同様にNMR及びGPCで行った。得られた複合体4において、該複合体中に含まれるPSの含有量、PSの数平均分子量及びガラス転移温度を下記表1に示す。
【0045】
【表1】
【0046】
[第1実施例]
バンバリーミキサーを使用し、下記表2に示す配合(質量部)に従って、ゴム組成物を調製した。詳細には、第一混合段階で、硫黄と加硫促進剤を除く成分を添加混合し、次いで、得られた混合物に、最終混合段階で硫黄と加硫促進剤を添加混合して、ゴム組成物を調製した。表中の各成分については以下の通りである。なお、表中のゴムゲルは、上記複合体の合成に使用した原料と同じものである。
【0047】
・IR:ポリイソプレンゴム、JSR株式会社製「IR2200」
・シリカ:デグサ社製「Ultrasil VN3」、BET比表面積=168m
2/g
・カーボンブラック:東海カーボン株式会社製「シースト3」、HAF
・PMMA:ポリメタクリル酸メチル、ナカライテスク株式会社製「メタクリル酸メチル(ポリマー)」
・ポリスチレン:ナカライテスク株式会社製「スチレン(ポリマー)」
・シランカップリング剤:デグサ社製「Si75」
・ステアリン酸:花王株式会社製「ルナックS−20」
・亜鉛華:三井金属鉱業株式会社製「亜鉛華3号」
・硫黄:鶴見化学工業株式会社製「粉末硫黄」
・加硫促進剤CZ:住友化学株式会社製「ソクシノールCZ」
・加硫促進剤D:大内新興化学工業株式会社製「ノクセラーD」
【0048】
得られた各ゴム組成物について、160℃×20分で加硫して所定形状の試験片を作製し、得られた試験片を用いて、複素弾性率E
*と、損失係数tanδと、破断時伸びEBと、を測定した。測定方法は以下の通りである。
【0049】
・E
*:JIS K6394に準じて、温度25℃、周波数10Hz、動歪み5%、静歪み10%の条件で、複素弾性率E
*を測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど複素弾性率が高く、高弾性化効果に優れることを示す。
【0050】
・tanδ:JIS K6394に準じて、温度25℃、周波数10Hz、動歪み5%、静歪み10%の条件で、損失係数tanδを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が小さいほどtanδが小さく、従って、ヒステリシスロスが小さく、低発熱性(低燃費性)に優れることを示す。
【0051】
・EB:JIS K6251に準じた引張り試験(ダンベル状3号形)により、破断時の伸びを測定し、比較例1の値を100とした指数で表示した。指数が大きいほど、破断時の伸びが大きく、好ましい。
【0052】
結果は表2に示す通りであり、ゴムゲル−ポリマー複合体を配合した実施例1〜4であると、基準配合である比較例1に対して、高弾性化と低発熱性のバランスが向上していた。なお、実施例3では、ゴムゲル−ポリマー複合体中のポリマー量が少ないことから、比較例1に対して弾性率はやや低下したが、低発熱性は顕著に改善されており、そのため、両者のバランスは向上したといえる。実施例1、5及び6の結果より、ゴムゲル−ポリマー複合体の配合量が多いほど、弾性率の向上幅は大きくなるが、多すぎると破断伸びが低下する傾向があった。
【0053】
これに対し、ビニル系ポリマーのみ単独で用いた比較例2,3では、高弾性化の効果には優れるものの、低発熱性が大幅に悪化していた。また、実施例1及び4に対してそれぞれ同量のゴムゲル及びビニル系ポリマーを別々に添加した比較例4及び5では、低発熱性と高弾性化のバランスという点で、対応する実施例に対し明らかに効果が劣っていた。
【0054】
実施例7,8は、補強性充填剤の配合量が比較例1に対して少ないものであったが、弾性率は同等以上であり、また低発熱性も改善されており、従って、両性能のバランスは向上していた。なお、実施例7,8の結果より、補強性充填剤の配合量が少ないと、弾性率の向上効果が小さく、またゴムゲル−ポリマー複合体の分散性が悪化するためか、破断伸びが悪化していた。但し、これらの実施例7及び8は、補強性充填剤の配合量が同程度の比較例6に対しては、顕著な高弾性化の効果が認められた。
【0055】
【表2】
【0056】
[第2実施例]
バンバリーミキサーを使用し、下記表3に示す配合(質量部)に従って、第1実施例と同様にしてゴム組成物を調製した。表中の各成分については以下の通りであり、その他は第1実施例と同じである。
【0057】
・SBR:スチレンブタジエンゴム、JSR株式会社製「SBR1502」
・BR:ポリブタジエンゴム、JSR株式会社製「BR01」
【0058】
得られた各ゴム組成物について、第1実施例と同様に、試験片を作製した上で複素弾性率E
*と損失係数tanδと破断時伸びEBを測定した。測定方法は上記の通りであるが、ここでは比較例7の値を100とした指数で表示した。
【0059】
結果は表3に示す通りであり、第1実施例と同様、マトリックスゴム成分となるジエン系ゴムの種類を変更しても、ゴムゲル−ポリマー複合体を配合することで、破断伸びを大幅に悪化させることなく、高弾性化しかつ低発熱性も改善されるという優れた効果が得られた。
【0060】
【表3】