(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下に、本発明の実施の形態について図面を参照しながら説明する。
【0016】
図1(A)および
図1(B)は、一実施形態の液晶表示装置の構成を模式的に示す平面図である。
図1(A)に示すように本実施形態の液晶表示装置は、セグメント表示領域(第1表示領域)Sとドット表示領域D(第2表示領域)を有する。セグメント表示領域Sには、文字「ST」の表示を行うためのセグメント表示部S1と文字「LY」の表示を行うためのセグメント表示部S2が配置されている。ドット表示領域Dには、01〜20の5行4列の矩形状画素により構成されるドット表示部D1が配置される。本実施形態の液晶表示装置は、セグメント表示領域Sにおける液晶層厚がドット表示領域Dよりも薄いマルチギャップ構造を採用している。また、液晶表示装置には、裏面に少なくとも表示領域全体を照明するバックライトと液晶層に電圧を印加するための駆動回路が設けられている。
【0017】
図1(B)に示すように、バックライトは、セグメント表示領域Sをカバーする領域BL1とドット表示領域Dをカバーする領域BL2に分割されている。具体的には、バックライトは、例えばそれぞれの領域BL1、BL2は隔壁で分割され、それぞれの領域BL1、BL2内に無機LEDチップ等の光源が配置され、各表示領域の直下で点灯させる直下型構造を有する。あるいは、バックライトは、領域BL1とBL2の境界に反射板を配置し、各領域BL1、BL2の側面に光源を配置し、導光板にて光を伝播させて照明するサイドライト型構造を有してもよいし、領域BL1、BL2がそれぞれ有機LED等の面発光光源であってそれぞれの領域が分割して駆動可能な構造を有してもよい。また、いずれの場合であってもバックライトの各領域BL1、BL2における照明色は相互に異なってもよい。また、相対的に液晶層厚が薄く応答速度が高速なセグメント表示領域Sにおいてはバックライトの照明光を複数の色にて間欠点灯させつつセグメント表示部のスイッチング動作と同期させるフィールドシーケンシャル駆動を行うことによってマルチカラー表示を実現することもできる。この場合、バックライトは分割されていても、されていなくても表示を行うことは可能である。
【0018】
図2は、第1実施形態の液晶表示装置の構成を模式的に示す断面図である。
図2に示す第1実施形態の液晶表示装置は、対向配置された第1基板11および第2基板12と、両基板の間に配置された液晶層20を主に備える。第1基板11の外側には第1偏光板31が配置され、第2基板12の外側には第2偏光板32が配置され、第2基板12と第2偏光板32の間には視角補償板33が配置されている。液晶層20の周囲はシール材(図示省略)によって封止されている。
【0019】
第1基板11および第2基板12は、それぞれ、例えばガラス基板、プラスチック基板等の透明基板である。第1基板11と第2基板12との相互間にはスペーサーが分散して配置されている。これらのスペーサーにより、第1基板11と第2基板12との間隙が所定距離(例えば数μm程度)に保たれる。
【0020】
液晶層20は、第1基板11と第2基板12の相互間に設けられている。本実施形態においては、液晶層20は、誘電率異方性Δεが負(Δε<0)の液晶材料(ネマティック液晶材料)を用いて構成されており、モノドメインの垂直配向に配向制御されている。
【0021】
第1偏光板31および第2偏光板32は、例えば、各々の吸収軸が互いに略直交するように配置されている。また、第1偏光板31および第2偏光板32は、いずれか一方の吸収軸が各表示領域の左右方向に対して時計回りに45°、他方の吸収軸が反時計回りに45°に配置されている。視角補償板33は、例えば負の二軸光学異方性を有する視角補償板であり、第2基板12と第2偏光板32の間に配置されている。なお、この視角補償板33は、第1基板11と第1偏光板31の間に配置されていてもよい。また、第1基板11と第1偏光板31の間、第2基板12と第2偏光板32の間の双方に視角補償板が配置されてもよい。
【0022】
電極13および電極14は、それぞれ第1基板11の一面上に設けられている。また、電極16および電極17は、それぞれ第2基板12の一面上に設けられている。各電極13、14、16、17は、例えばインジウム錫酸化物(ITO)などの透明導電膜を適宜パターニングすることによって構成されている。ここでは、電極13と電極16とが対向する領域がドット表示領域Dに相当し、電極14と電極17とが対向する領域がセグメント表示領域Sに相当する。
【0023】
配向膜15は、第1基板11の一面側に各電極13、14を覆うようにして設けられている。同様に、配向膜18は、第2基板12の一面側に、各電極16、17を覆うようにして設けられている。本実施形態においては、配向膜15および配向膜18として液晶層20の初期状態(電圧無印加時)における配向状態を垂直配向状態に規制するもの(垂直配向膜)が用いられている。各配向膜15、18にはラビング処理等の配向処理が施されており、各配向膜15、18は液晶層20の液晶分子に対して90°に近い角度のプレティルト角を付与する。
【0024】
液晶性樹脂膜(液晶性樹脂層)19は、第2基板12の配向膜18上であってセグメント表示領域S内に設けられている。この液晶性樹脂膜19は、例えば液晶性を有する感光性樹脂層を用いて形成することができる。また、この液晶性樹脂膜19は導電性を有しないことが好ましい。この液晶性樹脂膜19は、液晶層20の電圧無印加時における配向状態とほぼ等しい配向状態を有する。このような分子配向状態は、液晶性樹脂膜19の形成時に、第2基板12上に設けられた配向膜18による配向規制力を利用することで実現できる。具体的には、液晶性樹脂膜19は、所定の材料液を第2基板12の配向膜18上に塗布し、セグメント表示領域Sのみが感光される様に遮光膜でパターニングされたフォトマスクに略密着された状態で紫外線を露光後、アルカリ水溶液にて現像、焼成することによりパターン形成される。このとき、配向膜18上に塗布されることでこの配向膜18による配向規制力を受ける。
【0025】
上記した第1実施形態の液晶表示装置において、液晶性樹脂膜19の屈折率異方性をΔn1、液晶層20の液晶材料の屈折率異方性をΔn2、液晶性樹脂膜19の厚さをd1、第1基板11と第2基板12の基板間距離をd2とすると、セグメント表示領域SのリタデーションRsは、Rs=Δn1d1+Δd2(d2−d1)と表され、ドット表示領域DのリタデーションRdは、Rd=Δn2d2と表される。このため、セグメント表示部S1、S2とドット表示部D1が電圧無印加時において外観観察時に等しく視認されるためにRsとRdをほぼ等しくするには、Δn1とΔn2がほぼ等しければよいことになる。したがって、第1実施形態の液晶表示装置は、液晶性樹脂膜19の屈折率異方性Δn1と液晶層20の液晶材料の屈折率異方性Δn2がほぼ等しくなるように各々の材料を選択している。
【0026】
なお、液晶性樹脂膜19の屈折率異方性Δn1と液晶層20の液晶材料の屈折率異方性Δn2が異なる場合であっても、セグメント表示部S1、S2とドット表示部D1が電圧無印加時において外観観察時に等しく視認されるようにすることができる。以下、その実施形態を説明する。
【0027】
図3は、第2実施形態の液晶表示装置の構成を模式的に示す断面図である。第2実施形態の液晶表示装置は、Δn1>Δn2の場合に適した構造を有する。なお、第1実施形態の液晶表示装置(
図2参照)と共通する構成要素については同一符号を付しており、それらについては詳細な説明を省略する。第2実施形態の液晶表示装置は上記した第1実施形態の液晶表示装置との比較では、第2基板12上に透光性樹脂膜21aが設けられた点が主に異なっている。
【0028】
透光性樹脂膜(透光性樹脂層)21aは、第2基板12上であってセグメント表示領域S内に設けられている。この透光性樹脂膜21aは、等方的な光学特性を有する透明な感光性樹脂を用いて形成されている。
【0029】
配向膜18aは、電極16、17および透光性樹脂膜21aを覆って第2基板12の一面上に形成されている。
【0030】
液晶性樹脂膜19aは、第2基板12の配向膜18a上であってセグメント表示領域S内に、透光性樹脂膜21aと重畳するように設けられている。
【0031】
上記した第2実施形態の液晶表示装置において、液晶性樹脂膜19aの屈折率異方性をΔn1、液晶層20の液晶材料の屈折率異方性をΔn2、液晶性樹脂膜19aの厚さをd1、第1基板11と第2基板12の基板間距離をd2、透光性樹脂膜21aの厚さをd3とすると、セグメント表示領域SのリタデーションRsは、Rs=Δn1d1+Δd2(d2−d1−d3)と表され、ドット表示領域DのリタデーションRdは、Rd=Δn2d2と表される。このため、セグメント表示部S1、S2とドット表示部D1が電圧無印加時において外観観察時に等しく視認されるためにRsとRdをほぼ等しくするには、液晶性樹脂膜19aの厚さd1と透光性樹脂膜21aの厚さd3を調整すればよい。すなわち、Rs=Rdとなるためには、Δn1d1−Δn2(d1+d3)=0の条件を満たせばよいので、これをさらに変形すると、d1/d3=Δn2/(Δn1−Δn2)の関係式が得られる。したがって、液晶性樹脂膜および液晶材料の各屈折率異方性Δn1、Δn2が決まりΔn2/(Δn1−Δn2)の値が決まれば、この値とd1/d3がほぼ等しくなるように各厚さd1、d3を調整すればよい。
【0032】
図4は、第3実施形態の液晶表示装置の構成を模式的に示す断面図である。第3実施形態の液晶表示装置は、Δn1<Δn2の場合に適した構造を有する。なお、第1実施形態の液晶表示装置(
図2参照)と共通する構成要素については同一符号を付しており、それらについては詳細な説明を省略する。第3実施形態の液晶表示装置は、上記した第1実施形態の液晶表示装置との比較では第2基板12上に透光性樹脂膜21bが設けられた点が主に異なっており、第2実施形態の液晶表示装置との比較では液晶性樹脂膜19bと透光性樹脂膜21bを設けた位置が主に異なっている。
【0033】
透光性樹脂膜(透光性樹脂層)21bは、第2基板12上であってドット表示領域D内に設けられている。この透光性樹脂膜21bは、等方的光学特性を有する透明な感光性樹脂を用いて形成されている。なお、ドット表示部Dの電極16は透光性樹脂膜21aの形成後にその上に形成されてもよい。
【0034】
配向膜18bは、電極16、17および透光性樹脂膜21bを覆って第2基板12の一面上に形成されている。
【0035】
液晶性樹脂膜19bは、第2基板12の配向膜18b上であってセグメント表示領域S内に設けられている。
【0036】
上記した第3実施形態の液晶表示装置において、液晶性樹脂膜19bの屈折率異方性をΔn1、液晶層20の液晶材料の屈折率異方性をΔn2、液晶性樹脂膜19bの厚さをd1、第1基板11と第2基板12の基板間距離をd2、透光性樹脂膜21bの厚さをd3とすると、セグメント表示領域SのリタデーションRsは、Rs=Δn1d1+Δn2(d2−d1)と表され、ドット表示領域DのリタデーションRdは、Rd=Δn2(d2−d3)と表される。このため、セグメント表示部S1、S2とドット表示部D1が電圧無印加時において外観観察時に等しく視認されるためにはd1/d3とΔn2/(Δn2−Δn1)が略等しくなるように調整すればよい。
【0037】
なお、上記したいずれの実施形態においても、液晶性樹脂膜がセグメント表示領域のほぼ全面に配置された構造を示したが、液晶性樹脂膜は各セグメント表示部のみに配置されていてもよい。例えば、
図1に示した表示パターンであれば、文字「ST」と「LY」の表示がなされる白抜き部分のみ選択的に液晶性樹脂膜を設けてもよい。また、いずれの実施形態においても、セグメント表示部とドット表示部はスタティック駆動又はマルチプレックス駆動されるが、両者で同じ駆動条件であってもよく、別々でもよい。さらに、上記においてはセグメント表示部とドット表示部が混在した液晶表示装置に関して示してきたが、全面がセグメント表示またはドット表示であってもよい。この場合であっても、表示領域内を複数の領域に分割し、それら各分割領域について上記した実施形態と同様にマルチギャップ構造を導入すればよい。
【0038】
(実施例1)
以下、Δn1とΔn2が略等しく、かつ液晶層が垂直配向である液晶表示装置(
図2参照)の実施例を説明する。
【0039】
厚さ0.7mmの青板ガラスの一方の面を研磨した後にSiO
2膜によるアンダーコートを施し、さらにITO(インジウム錫酸化物)からなる透明導電膜を基板全面に成膜してなるシート抵抗30Ω/sq.の基板(下基板)を用意した。そして、この下基板の透明導電膜に対してフォトリソグラフィー工程およびウェットエッチング工程を行うことにより、ドット表示部およびセグメント表示部のそれぞれに対応したパターンの透明電極を形成した。
【0040】
次に、透明電極を形成した下基板に、表面自由エネルギーが37.5mN/mを示す垂直配向膜をフレキソ印刷にてパターン形成し、この垂直配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の上方位に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0041】
次いで、一方の基板上に、屈折率異方性が約0.1であり液晶性を示す感光性樹脂を含有する溶液をスピンナーにて塗布し、60℃で120秒間のプリベーク後、所望のパターンのフォトマスクを介して密着露光機にて高圧水銀ランプ光源による紫外線を1000mJ露光した。露光後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)0.1%水溶液にて浸漬現像を行い、純水リンスすることにより現像液と純水を置換し、下基板を乾燥させ、240℃のオーブンにて20分間焼成した。なお、触針式段差計の測定結果から液晶性樹脂膜の膜厚は約3.0μmであった。
【0042】
上基板も下基板と同様にして所定パターンの透明電極を形成した後に垂直配向膜を形成し、この垂直配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の下方位に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0043】
次に、上基板側のドット表示部にステンレスマスクを配置した状態にて粒径3μmのプラスティックスペーサーを乾式散布法にて基板面内にランダムに散布した。このようにしてセグメント表示領域にのみスペーサーを配置した状態の上基板をクリーンオーブン内にて120℃で10分間焼成することにより、スペーサーを基板面に固着させた。
【0044】
また、セグメント表示領域にステンレスマスクを配置した状態にて粒径6μmのプラスティックスペーサーを乾式散布法にて基板面内にランダムに散布した。このようにしてドット表示領域にのみスペーサーを配置した状態の上基板をクリーンオーブン内にて120℃で10分間焼成することにより、スペーサーを基板面に固着させた。
【0045】
次に、下基板側に粒径が6μmのシリカ粒子が2wt%混入したシール材を両基板が重なる面内領域外形枠より1mm小さく枠状にディスペンサーにて塗布した。また、液晶表示装置の右側辺の一部に真空注入用の注入口を配置した。上基板と下基板を基板端面にて位置合わせして貼り合わせ、一定の圧力でプレスした状態にて150℃で60分間焼成した。
【0046】
次に、注入口から上基板と下基板の間にΔεが負でΔnが約0.1の液晶材料を真空注入にて注入し、注入口を紫外線硬化樹脂で封止した後、120℃で60分間焼成した。
【0047】
その後、上基板と下基板の合体物であるセルを中性洗剤で洗浄し乾燥させた後、下基板の外側に、面内位相差45nmで厚さ方向位相差が440nmの負の二軸光学異方性を有する視角補償板が一体となっている偏光板をその吸収軸方向が液晶層の層厚方向の略中央における分子配向方位に対して吸収軸が略45°になるようにして貼り合わせた。同様に、上基板の外側に、偏光板をその吸収軸方向が下基板側の偏光板の吸収軸方向と略直交するようにして貼り合わせた。以上により実施例1の液晶表示装置が完成した。
【0048】
実施例1の液晶表示装置の電圧無印加時における正面方向および斜め方向からの外観観察より、セグメント表示領域とドット表示領域の間で光学特性の違いがほぼ視認されず、良好なノーマリーブラック状態が得られることを確認できた。すなわち、上下基板内のリタデーションと視角補償板によるリタデーションが良好に相殺されていることが分かった。また、この実施例1の液晶表示装置に外部駆動回路を接続し、各表示部を1/6デューティ、1/4バイアスにて明表示させることにより表示パターン通りの表示状態を実現することができ、かつ応答速度についてはセグメント表示部の方が速いことが分かった。しかし、同じ駆動条件ではセグメント表示部とドット表示部の透過率が異なることが確認された。各表示部を別々に駆動することにより表示輝度がほぼ等しくなるように調整できることから駆動回路および駆動条件は別々にする方が好ましいといえる。さらに、液晶性樹脂膜が配置されたセグメント表示部はデューティ比を低下させて動作させた方が応答速度の高速化には有利である。
【0049】
(実施例2)
以下、Δn1>Δn2かつ液晶層が垂直配向である液晶表示装置(
図3参照)の実施例を説明する。
【0050】
厚さ0.7mmの青板ガラスの一方の面を研磨した後にSiO
2膜によるアンダーコートを施し、さらにITO(インジウム錫酸化物)からなる透明導電膜を基板全面に成膜してなるシート抵抗30Ω/sq.の基板(下基板)を用意した。そして、この下基板の透明導電膜に対してフォトリソグラフィー工程およびウェットエッチング工程を行うことにより、ドット表示部およびセグメント表示部のそれぞれに対応したパターンの透明電極を形成した。
【0051】
この下基板にネガ型透光性感光性樹脂をスピンナーで塗布し、ホットプレート上にて100℃で120秒間仮焼成した後、セグメント表示領域のみ露光されるパターンのフォトマスクを介して密着露光機にて200mJ露光した。露光後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)1%水溶液にて浸漬現像を行い、純水リンスすることにより現像液と純水を置換し、基板を乾燥させ、220℃のオーブンにて30分間焼成した。なお、触針式段差計の測定結果から遮光樹脂膜と透光性樹脂膜の積層層厚は約1.0μmであった。
【0052】
次に、透明電極を形成した下基板に、表面自由エネルギーが37.5mN/mを示す垂直配向膜をフレキソ印刷にてパターン形成し、この垂直配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の上方位に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0053】
次いで、一方の基板上に、屈折率異方性が約0.15であり液晶性を示す感光性樹脂を含有する溶液をスピンナーにて塗布し、60℃で120秒間のプリベーク後、セグメント表示領域のみ露光されるパターンのフォトマスクを介して密着露光機にて高圧水銀ランプ光源による紫外線を1000mJ露光した。露光後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)0.1%水溶液にて浸漬現像を行い、純水リンスすることにより現像液と純水を置換し、下基板を乾燥させ、240℃のオーブンにて20分間焼成した。なお、触針式段差計の測定結果から液晶性樹脂膜の膜厚は約2.0μmであった。
【0054】
上基板も下基板と同様にして所定パターンの透明電極を形成した後に垂直配向膜を形成し、この垂直配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の下方位に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0055】
次に、上基板側のドット表示部にステンレスマスクを配置した状態にて粒径3μmのプラスティックスペーサーを乾式散布法にて基板面内にランダムに散布した。このようにしてセグメント表示領域にのみスペーサーを配置した状態の上基板をクリーンオーブン内にて120℃で10分間焼成することにより、スペーサーを基板面に固着させた。
【0056】
また、セグメント表示領域にステンレスマスクを配置した状態にて粒径6μmのプラスティックスペーサーを乾式散布法にて基板面内にランダムに散布した。このようにしてドット表示領域にのみスペーサーを配置した状態の上基板をクリーンオーブン内にて120℃で10分間焼成することにより、スペーサーを基板面に固着させた。
【0057】
次に、下基板側に粒径が6μmのシリカ粒子が2wt%混入したシール材を両基板が重なる面内領域外形枠より1mm小さく枠状にディスペンサーにて塗布した。また、液晶表示装置の右側辺の一部に真空注入用の注入口を配置した。上基板と下基板を基板端面にて位置合わせして貼り合わせ、一定の圧力でプレスした状態にて150℃で60分間焼成した。
【0058】
次に、注入口から上基板と下基板の間にΔεが負でΔnが約0.1の液晶材料を真空注入にて注入し、注入口を紫外線硬化樹脂で封止した後、120℃で60分間焼成した。
【0059】
その後、上基板と下基板の合体物であるセルを中性洗剤で洗浄し乾燥させた後、下基板の外側に、面内位相差45nmで厚さ方向位相差が440nmの負の二軸光学異方性を有する視角補償板が一体となっている偏光板をその吸収軸方向が液晶層の層厚方向の略中央における分子配向方位に対して吸収軸が略45°になるようにして貼り合わせた。同様に、上基板の外側に、偏光板をその吸収軸方向が下基板側の偏光板の吸収軸方向と略直交するようにして貼り合わせた。以上により実施例2の液晶表示装置が完成した。
【0060】
実施例2の液晶表示装置の電圧無印加時における正面方向および斜め方向からの外観観察結果、並びに外部駆動回路を接続してマルチプレックス駆動したときの動作状態は実施例1の液晶表示装置と同等であった。
【0061】
(実施例3)
以下、Δn1<Δn2かつ液晶層が垂直配向である液晶表示装置(
図4参照)の実施例を説明する。
【0062】
厚さ0.7mmの青板ガラスの一方の面を研磨した後にSiO
2膜によるアンダーコートを施し、さらにITO(インジウム錫酸化物)からなる透明導電膜を基板全面に成膜してなるシート抵抗30Ω/sq.の基板(下基板)を用意した。そして、この下基板の透明導電膜に対してフォトリソグラフィー工程およびウェットエッチング工程を行うことにより、ドット表示部およびセグメント表示部のそれぞれに対応したパターンの透明電極を形成した。
【0063】
この下基板にネガ型透光性感光性樹脂をスピンナーで塗布し、ホットプレート上にて100℃で120秒間仮焼成した後、ドット表示領域のみ露光されるパターンのフォトマスクを介して密着露光機にて200mJ露光した。露光後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)1%水溶液にて浸漬現像を行い、純水リンスすることにより現像液と純水を置換し、基板を乾燥させ、220℃のオーブンにて30分間焼成した。なお、触針式段差計の測定結果から遮光樹脂膜と透光性樹脂膜の積層層厚は約2.0μmであった。
【0064】
次に、透明電極を形成した下基板に、表面自由エネルギーが37.5mN/mを示す垂直配向膜をフレキソ印刷にてパターン形成し、この垂直配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の上方位に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0065】
次いで、一方の基板上に、屈折率異方性が約0.1であり液晶性を示す感光性樹脂を含有する溶液をスピンナーにて塗布し、60℃で120秒間のプリベーク後、セグメント表示領域のみ露光されるパターンのフォトマスクを介して密着露光機にて高圧水銀ランプ光源による紫外線を1000mJ露光した。露光後、TMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)0.1%水溶液にて浸漬現像を行い、純水リンスすることにより現像液と純水を置換し、下基板を乾燥させ、240℃のオーブンにて20分間焼成した。なお、触針式段差計の測定結果から液晶性樹脂膜の膜厚は約3.0μmであった。
【0066】
上基板も下基板と同様にして所定パターンの透明電極を形成した後に垂直配向膜を形成し、この垂直配向膜に対して、ラビング処理により液晶表示装置の下方位に均一なプレティルト配向状態が得られるようにした。
【0067】
次に、上基板側のドット表示部にステンレスマスクを配置した状態にて粒径3μmのプラスティックスペーサーを乾式散布法にて基板面内にランダムに散布した。このようにしてセグメント表示領域にのみスペーサーを配置した状態の上基板をクリーンオーブン内にて120℃で10分間焼成することにより、スペーサーを基板面に固着させた。
【0068】
また、セグメント表示領域にステンレスマスクを配置した状態にて粒径4μmのプラスティックスペーサーを乾式散布法にて基板面内にランダムに散布した。このようにしてドット表示領域にのみスペーサーを配置した状態の上基板をクリーンオーブン内にて120℃で10分間焼成することにより、スペーサーを基板面に固着させた。
【0069】
次に、下基板側に粒径が6μmのシリカ粒子が2wt%混入したシール材を両基板が重なる面内領域外形枠より1mm小さく枠状にディスペンサーにて塗布した。また、液晶表示装置の右側辺の一部に真空注入用の注入口を配置した。上基板と下基板を基板端面にて位置合わせして貼り合わせ、一定の圧力でプレスした状態にて150℃で60分間焼成した。
【0070】
次に、注入口から上基板と下基板の間にΔεが負でΔnが約0.15の液晶材料を真空注入にて注入し、注入口を紫外線硬化樹脂で封止した後、120℃で60分間焼成した。
【0071】
その後、上基板と下基板の合体物であるセルを中性洗剤で洗浄し乾燥させた後、下基板の外側に、面内位相差45nmで厚さ方向位相差が440nmの負の二軸光学異方性を有する視角補償板が一体となっている偏光板をその吸収軸方向が液晶層の層厚方向の略中央における分子配向方位に対して吸収軸が略45°になるようにして貼り合わせた。同様に、上基板の外側に、偏光板をその吸収軸方向が下基板側の偏光板の吸収軸方向と略直交するようにして貼り合わせた。以上により実施例3の液晶表示装置が完成した。
【0072】
実施例3の液晶表示装置の電圧無印加時における正面方向および斜め方向からの外観観察結果、並びに外部駆動回路を接続してマルチプレックス駆動したときの動作状態は実施例1の液晶表示装置と同等であった。
【0073】
なお、本発明は上述した実施形態並びに各実施例の内容に限定されるものではなく、本発明の要旨の範囲内において種々に変形して実施をすることが可能である。