【実施例】
【0030】
それぞれソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロースを糖または糖アルコールとして使用し、70℃に加熱しながら4種類の水溶液(試料1〜4)を調製した。それぞれの水溶液を、ゼラチンを基剤とするソフトカプセル皮膜に充填・封入した。充填・封入工程における水溶液の温度は、45℃とした。試料1〜4の水溶液について、糖または糖アルコールの種類及び水溶液の濃度(質量%)を、表1に示す
【0031】
【表1】
【0032】
試料1〜4の溶液が充填されたソフトカプセルは、何れも、内容物の水分含有率が15質量%以下となるまで常温(25℃)で乾燥することにより、糖または糖アルコールが析出し、内容物は固体状態となった。
【0033】
ここで、糖または糖アルコールの溶解度が大き過ぎれば、内容物の水分含有率を低下させても、なかなか糖または糖アルコールが析出しない。一方、糖または糖アルコールの溶解度が小さ過ぎれば、もともとの水溶液の濃度が低くなるため、析出量が不十分となる。この点で、試料1〜4に使用した糖または糖アルコールは、何れも内容物の水分含有率を少なくとも15質量%に低下させる乾燥処理と、実用的な温度変化(45℃で溶液を充填・封入し、常温まで冷却する)で、十分な量を析出させて内容物を固体状態とすることができ、極めて実用性が高いと言うことができる。
【0034】
次に、糖または糖アルコールの水溶液としてソルビトール水溶液(70質量%水溶液)を使用し、摂取目的成分としてビタミンC(粉末)を添加して充填用組成物を調製し、ゼラチンを基剤とするソフトカプセル被膜に充填・封入してソフトカプセルを製造した。ソルビトール水溶液にビタミンCを添加・混合する際の温度は70℃とし、充填用組成物をソフトカプセル被膜に充填・封入する際の温度は45℃とし、両時点でビタミンCの溶解性を確認した。また、ソフトカプセル被膜への充填性を評価するため、ソフトカプセル被膜に充填・封入する温度(45℃)における充填用組成物の粘度を、B型粘度計((No.4ローター,回転速度100rpm)で測定した。製造されたソフトカプセルについて、内容物の水分含有率が15質量%以下となるまで常温で乾燥し、ソルビトールの析出を観察した。この検討は、ソルビトールとビタミンCとの配合割合の異なる、5種類の充填用組成物(試料11〜15)について行った。試料11〜15の充填用組成物の組成を、表2に示す。また、70℃及び45℃におけるビタミンCの溶解性と、45℃における充填用組成物の粘度を、表2にあわせて示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示すように、ビタミンCの割合が40質量%の試料15では、ビタミンCがソルビトール水溶液に完全に溶解しなかった。また、ビタミンCの割合が30質量%の試料14は、70℃においてビタミンCがソルビトール水溶液に溶解したものの、45℃に温度が低下することにより、ビタミンCの沈殿が生成した。一方、ビタミンCの割合がそれぞれ10質量%、20質量%の試料11,12では、70℃においても45℃においても、ビタミンCはソルビトール水溶液に完全に溶解した。従って、摂取目的成分であるビタミンCが均一に含有された、同一品質のソフトカプセルを製造するためには、充填用組成物におけるビタミンCの割合を20質量%以下とすることが望ましい。なお、ビタミンCの割合が20質量%以下である試料11〜13の充填用組成物の45℃における粘度は、何れも小さく、ソフトカプセル被膜への充填性は良好であった。
【0037】
更に、試料11〜13の充填用組成物が充填されたソフトカプセルは、何れも、内容物の水分含有率が15質量%以下となるまで常温で乾燥することにより、ソルビトールが析出し、内容物は固体状態となった。
【0038】
これらのソフトカプセル(試料11〜13の充填用組成物が充填されたソフトカプセル)について、崩壊性を評価した。崩壊性は、常温における崩壊試験と、通常の保存条件より過酷な温度下で所定期間保存し、崩壊性の経時的な変化を評価する加速試験により評価した。ここで、常温における崩壊試験は、日本薬局方に規定された崩壊試験法に則って行い、20分以内にカプセル被膜が完全に崩壊した場合に「良好」と評価し、そうでない場合を「不良」と評価した。また、加速試験は、保存温度を40℃とし、所定期間の保存後に同じく日本薬局方に規定された試験法に則って崩壊試験を行い、20分以内にカプセル被膜が完全に崩壊した場合に「良好」と評価し、そうでない場合を「不良」と評価した。加速試験における保存期間は、1ヶ月(常温保存の6ヶ月に相当)、2ヶ月(常温保存の1年に相当)、4ヶ月(常温保存の2年に相当)とした。崩壊性の評価結果を、表2にあわせて示す。
【0039】
表2に示すように、試料11〜13の充填用組成物が充填されたソフトカプセルは、何れも良好な崩壊性を示し、保存に伴う経時的な崩壊性低下も見られなかった。
【0040】
次に、それぞれソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロースを糖または糖アルコールとして使用した水溶液に、摂取目的成分としてビタミンC(粉末)を添加して充填用組成物を調製し、4種類の充填用組成物(試料21〜24)を調製した。充填用組成物におけるビタミンCの濃度は、何れも20質量%とした。それぞれの充填用組成物を、ゼラチンを基剤とするソフトカプセル被膜に充填・封入してソフトカプセルを製造した。糖または糖アルコールの水溶液にビタミンCを添加・混合する際の温度は70℃とし、充填用組成物をソフトカプセル被膜に充填・封入する際の温度は45℃とした。
【0041】
それぞれの充填組成物について、上記と同様に、70℃及び45℃におけるビタミンCの溶解性を確認すると共に、45℃における充填用組成物の粘度を測定した。また、それぞれの充填用組成物を充填・封入したソフトカプセルについて、内容物の水分含有率が15質量%以下となるまで常温で乾燥し、糖または糖アルコールの析出を観察した。更に、上記と同様の方法で、常温における崩壊試験と加速試験を行い、崩壊性の評価を行った。これらの結果を、充填組成物の組成と共に、表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
試料21〜24の充填用組成物では、70℃においても45℃においても、糖または糖アルコールの水溶液へのビタミンCの溶解性は良好であった。また、試料21〜24の充填用組成物の45℃における粘度は、何れも小さく、ソフトカプセル被膜への充填性は良好であった。更に、試料21〜24の充填用組成物が充填されたソフトカプセルは、何れも、内容物の水分含有率が15質量%以下となるまで常温で乾燥することにより、糖または糖アルコールが十分に析出し、内容物は固体状態となった。加えて、試料21〜24の充填用組成物が充填されたソフトカプセルは、何れも良好な崩壊性を示し、保存に伴う経時的な崩壊性低下も見られなかった。
【0044】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0045】
例えば、上記の実施形態では、ソフトカプセル被膜の基剤としてゼラチンを使用する場合を例示したが、これに限定されない。本発明は、内容物に着目して内容物の漏出を抑制するものであるため、ソフトカプセル被膜の種類を問うものではなく、例えば、ヒプロメロース(HPMC)や澱粉など非ゼラチンの基剤を、ソフトカプセル被膜の基剤として使用することができる。