特許第5901998号(P5901998)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5901998
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ソフトカプセルの製造方法
(51)【国際特許分類】
   A61K 47/10 20060101AFI20160331BHJP
   A61K 9/48 20060101ALI20160331BHJP
   A61K 47/26 20060101ALI20160331BHJP
   A61J 3/07 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   A61K47/10
   A61K9/48
   A61K47/26
   A61J3/07 P
【請求項の数】1
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2012-40281(P2012-40281)
(22)【出願日】2012年2月27日
(65)【公開番号】特開2013-173714(P2013-173714A)
(43)【公開日】2013年9月5日
【審査請求日】2015年2月24日
(73)【特許権者】
【識別番号】503315676
【氏名又は名称】中日本カプセル 株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100098224
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 勘次
(74)【代理人】
【識別番号】100140671
【弁理士】
【氏名又は名称】大矢 正代
(72)【発明者】
【氏名】山中 穰
(72)【発明者】
【氏名】山中 利恭
(72)【発明者】
【氏名】須原 渉
(72)【発明者】
【氏名】梅村 英行
(72)【発明者】
【氏名】諸岡 智弘
【審査官】 山村 祥子
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−309525(JP,A)
【文献】 特開2012−006861(JP,A)
【文献】 特開2009−196958(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 9/00−9/72
A61K 47/00−47/48
A61J 3/07
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
糖または糖アルコールを含有する水溶液をソフトカプセル被膜に封入した後で、前記水溶液を糖または糖アルコールについて過飽和として糖または糖アルコールを析出させ、ソフトカプセル被膜に封入された内容物を固体状態とする
ことを特徴とするソフトカプセルの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ソフトカプセルの製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般的なソフトカプセルでは、ゼラチン等の水溶性物質で形成されたカプセル皮膜内に、非水溶性の内容物が充填されている。その内容物は、油溶性の目的物質が溶媒としての油脂に溶解されている場合、難油溶性の目的物質が分散媒としての油脂に懸濁されている場合、及び、DHA(ドコサヘキサエン酸)、EPA(エイコサペンタエン酸)等のように、カプセルに充填しようとする目的物質自体が油状である場合に大別される。何れの場合も、従来のソフトカプセルの内容物は、“油状の液体”であると言うことができる。
【0003】
ソフトカプセルについては、カプセル被膜が損傷し内容物が漏出することがあり、問題視されていた。例えば、落下やカプセル同士の衝突など外部から加わる衝撃によって、カプセル被膜が損傷することがある。また、ソフトカプセルを冷蔵、冷凍保存する場合など、環境が低温となることで、カプセル被膜が割れることがある。特に、ロータリーダイ式でソフトカプセル被膜を成形する場合は、皮膜液から形成された二枚のシートがヒートシールされることにより形成される接合部(継ぎ目)の強度が低く、接合部に添ってソフトカプセル被膜が損傷し、内容物が漏出する傾向があった。
【0004】
このようなソフトカプセル被膜の損傷により内容物が漏出するという問題を解決することを目的として、従来、カプセル被膜を厚くする試みがなされてきた。また、カプセル被膜を二重構造とし、外側層で内側層の接合部を埋めることにより接合部を強化すると共に、外側層における可塑剤・保水剤の含有率を内側層より低くすることにより、カプセル被膜の湿潤化・軟化を抑制する技術も提案されている(特許文献1参照)。
【0005】
しかしながら、カプセル被膜を厚くすると、ソフトカプセルの崩壊性が低下するという問題があった。また、特許文献1の技術のようにカプセル被膜を複数層とする場合は、同じくソフトカプセルの崩壊性が低下するおそれがあることに加え、製造工程数が増加し、労力負担が増すと共に、付加的な設備を要するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
そこで、本発明は、上記の実情に鑑み、崩壊性が低下するおそれなく内容物の漏出が抑制されたソフトカプセルを、簡易に製造できるソフトカプセルの製造方法の提供を、課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するため、本発明にかかるソフトカプセルの製造方法は、「糖または糖アルコールを含有する水溶液をソフトカプセル被膜に封入した後で、前記水溶液を糖または糖アルコールについて過飽和として糖または糖アルコールを析出させ、ソフトカプセル被膜に封入された内容物を固体状態とする」ものである。
【0008】
「前記水溶液を糖または糖アルコールについて過飽和とする」処理は、糖または糖アルコールの水溶液をソフトカプセル被膜に封入した後で、水溶液における溶媒(水)を蒸発させる、すなわち、ソフトカプセル被膜に封入された内容物の水分含有率を低下させることにより行うことができる。また、糖または糖アルコールの水溶液を高温で調製することによって高濃度とし、ソフトカプセル被膜に封入した後で温度を低下させることにより、糖または糖アルコールの溶解度を低下させることによっても、「前記水溶液を糖または糖アルコールについて過飽和とする」ことができ、上記の処理と併用することができる。
【0009】
「糖または糖アルコール」としては、トレハロース、マルトース、ラクトース、セロビオース等の二糖類、グルコース、マンノース、ガラクトース等の単糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、マンニトール、マルチトール、ラクチトール等の糖アルコールを例示することができる。
【0010】
なお、糖または糖アルコールを含有する水溶液には、ソフトカプセルによって摂取しようとする目的の成分(以下、「摂取目的成分」と称する)を含有させることができる。ここで、摂取目的成分は、医薬成分、生薬成分、健康食品成分、栄養補助成分を、特に限定することなく使用することができるが、水溶性または親水性の成分が好適である。
【0011】
上記構成のソフトカプセルの製造方法では、ソフトカプセル皮膜に充填する時点で、糖または糖アルコールは液体(水溶液)の状態であるため、ソフトカプセル皮膜内に充填する処理を問題なく行うことができる。そして、糖または糖アルコールの水溶液は、ソフトカプセル皮膜に封入された後で過飽和とされることにより、糖または糖アルコールが析出する。従って、十分に乾燥させ、内容物の水分含有率を低下させることにより、糖または糖アルコールを固体状態とすることができる。また、摂取目的成分等の他の成分を内容物として含有する場合も、固体状態の糖または糖アルコールの中に他の成分を取り込ませ、内容物全体を固体状態とすることができる。
【0012】
これにより、仮にソフトカプセル皮膜が損傷したとしても、内容物が漏出しにくいソフトカプセルを製造することができる。加えて、従来のソフトカプセルでは、内容物が液体であるため、環境の温度変化による内容物の膨張・収縮が大きく、ソフトカプセル皮膜が損傷しやすい。これに対し、本発明では内容物が固体状態であるため、温度変化により容物が膨張・収縮しにくく、ソフトカプセル皮膜の損傷自体を抑制することができる。
【0013】
内容物の漏出を抑制するという課題に対し、従来技術は、カプセル皮膜側を改良するというアプローチであったのに対し、本発明では、内容物に着目して課題の解決を図っている。これにより、ソフトカプセル皮膜の崩壊性に影響を与えることなく、内容物の漏出が抑制されたソフトカプセルを製造することができる。また、糖または糖アルコールの水溶液を、ソフトカプセル皮膜に封入する組成物に含有させること以外は、従来からの定法通りの製造工程で製造することができる。そのため、付加的な工程や設備を要することなく、簡易に、内容物の漏出が抑制されたソフトカプセルを製造することができる。加えて、従来のソフトカプセルは内容物が液体であったのに対し、本発明によれば、内容物が固体である斬新なソフトカプセルを提供することができる。
【0014】
次に、本発明により製造されるソフトカプセルは、「糖または糖アルコールを含有する内容物が、固体状態でソフトカプセル被膜に封入されている」ものである。
【0015】
本構成のソフトカプセルは、上述の製造方法により製造されるものであり、崩壊性が低下するおそれなく、内容物の漏出が抑制されている。
【発明の効果】
【0016】
以上のように、本発明の効果として、崩壊性が低下するおそれなく内容物の漏出が抑制されたソフトカプセルを、簡易に製造できるソフトカプセルの製造方法を、提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の一実施形態であるソフトカプセルの製造方法(以下、単に「製造方法」と称することがある)、及び、該製造方法により製造されるソフトカプセルについて説明する。本実施形態の製造方法は、糖または糖アルコールを含有する水溶液をソフトカプセル被膜に封入した後で、前記水溶液を糖または糖アルコールについて過飽和として糖または糖アルコールを析出させ、ソフトカプセル被膜に封入された内容物を固体状態とするものである。
【0018】
より具体的には、本実施形態の製造方法は、糖または糖アルコールの水溶液を含有する充填用組成物を調製する充填用組成物調製工程と、ソフトカプセル皮膜の原液であるカプセル皮膜液を調製する皮膜液調製工程と、ソフトカプセル皮膜の成形と同時にソフトカプセル皮膜内に充填用組成物を充填し封入する成形・充填工程と、成形・充填工程後のソフトカプセルを乾燥させる乾燥工程とを具備している。
【0019】
充填用組成物調製工程では、糖または糖アルコールを水に溶解させ水溶液とする。このとき、加温することにより糖または糖アルコールの溶解度を大きくし、糖または糖アルコールを高濃度に含有する水溶液とすることができる。この水溶液の溶媒としては、純水のほか、水に有機溶媒を添加した溶媒を使用してもよい。そして、糖または糖アルコールの水溶液に、摂取目的成分を添加することにより、充填用組成物が調製される。摂取目的成分は、糖または糖アルコールの水溶液に溶解または懸濁させることができるが、懸濁させた場合は、充填用組成物が油状である場合に比べて分散質が沈殿しやすい。そのため、摂取目的成分が均一に含有された、同一品質のソフトカプセルを製造するためには、糖または糖アルコールの水溶液に溶解させることができる成分が、摂取目的成分として好適である。
【0020】
皮膜液調製工程では、皮膜基剤を溶媒に溶解し、カプセル皮膜液とする。例えば、ゼラチンを皮膜基剤とする場合、加熱しながらゼラチンを水に溶解し、流延に適する粘度のカプセル皮膜液を調製する。なお、カプセル皮膜液には、可塑剤、着色剤、光隠ぺい剤、防腐剤等の添加物を添加することができる。
【0021】
成形・充填工程は、ロータリーダイ式の成形装置を使用して行うことができる。ここで、一般的なロータリーダイ式成形装置は、カプセル皮膜液をフィルム状に成形するキャスティングドラムと、外表面に成形鋳型が形成された一対のダイロールと、ダイロール間に配されたくさび状のセグメントと、セグメント内に充填用組成物を圧入すると共に、セグメントの先端から充填用組成物を押し出すポンプとを主に具備している。
【0022】
そして、まず、高温に保持されてゾル状態にあるカプセル皮膜液が、キャスティングドラム表面に流延され、冷却されてゲル化することによりフィルム化される。次に、形成されたフィルムの二枚が、セグメントに沿って一対のダイロール間に送入される。その後、一対のダイロールの相反する方向への回転に伴い、二枚のフィルムがヒートシールされて上方に開放したソフトカプセル皮膜が形成され、この中にセグメントから押し出された充填用組成物が充填される。これと同時に、二枚のフィルムが上部でヒートシールされ、閉じた内部空間に充填用組成物が封入されたソフトカプセルが形成される。
【0023】
乾燥工程では、ソフトカプセル皮膜内に封入された内容物及びソフトカプセル皮膜の水分含有率が、所定の水分含有率となるまで、乾燥器内でソフトカプセルを乾燥させる。この工程により、ソフトカプセル皮膜内に封入された内容物から溶媒が蒸発し、糖または糖アルコールの水溶液が過飽和となって、糖または糖アルコールが析出する。また、カプセル皮膜に充填用組成物を充填・封入した時点に比べて、水溶液の温度が低下することにより、糖または糖アルコールの飽和濃度が低下するため、これによっても糖または糖アルコールが析出する。
【0024】
この乾燥工程において、十分に乾燥させることにより、内容物は固体状態となる。なお、糖または糖アルコールの種類にもよるが、内容物の水分含有率が5質量%〜15質量%となるまで乾燥させると、それ以上は水分含有率が低下しない状態となる。この状態では、内容物中に残存する水分は結晶水であるため、ソフトカプセル皮膜に水分が移行することはない。従って、ソフトカプセル皮膜が水溶性であっても、内容物の水分によって軟化・劣化するおそれはない。
【0025】
上記の製造工程により、糖または糖アルコールを含有する内容物が、固体状態でソフトカプセル被膜に封入されている構成のソフトカプセルが製造される。
【0026】
上記構成のソフトカプセルは、仮にソフトカプセル皮膜が損傷したとしても、内容物は流動性のない固体であるため、外部に漏出しにくい。加えて、内容物が固体状態であるため、温度変化により内容物が膨張・収縮しにくく、ソフトカプセル皮膜の損傷自体が抑制されている。
【0027】
また、内容物の漏出の抑制を、内容物の側から図るというアプローチであるため、ソフトカプセル皮膜の崩壊性が低下するおそれがない。加えて、従来の製造方法に比べて付加的な工程や設備を要することなく、簡易に上記構成のソフトカプセルを製造することができる。
【0028】
更に、糖及び糖アルコールは、水に溶解する反応が吸熱反応である。そのため、ソフトカプセルを飲み込まずに口腔内で崩壊・溶解させた場合は、冷涼感のある食感を楽しむことができる。また、従来のソフトカプセルは内容物が油状物質であったのに対し、本実施形態では充填用組成物のベースが水溶液である。これにより、ソフトカプセル皮膜が崩壊した際に、内容物の溶解性が高いという利点を有する。
【0029】
なお、内容物が固形状態であり、温度変化により内容物が膨張・収縮しにくいため、カプセル皮膜液にグリセリン等の可塑剤を添加することなく、ソフトカプセル皮膜を成形しても良い。ソフトカプセル被膜が可塑剤を含有しないことにより、高温・高湿下におけるソフトカプセル皮膜の軟化を抑制することができ、ソフトカプセル皮膜の変形による損傷(つぶれ、破れ)を低減できると共に、ソフトカプセル同士の付着を抑制することができる。
【実施例】
【0030】
それぞれソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロースを糖または糖アルコールとして使用し、70℃に加熱しながら4種類の水溶液(試料1〜4)を調製した。それぞれの水溶液を、ゼラチンを基剤とするソフトカプセル皮膜に充填・封入した。充填・封入工程における水溶液の温度は、45℃とした。試料1〜4の水溶液について、糖または糖アルコールの種類及び水溶液の濃度(質量%)を、表1に示す
【0031】
【表1】
【0032】
試料1〜4の溶液が充填されたソフトカプセルは、何れも、内容物の水分含有率が15質量%以下となるまで常温(25℃)で乾燥することにより、糖または糖アルコールが析出し、内容物は固体状態となった。
【0033】
ここで、糖または糖アルコールの溶解度が大き過ぎれば、内容物の水分含有率を低下させても、なかなか糖または糖アルコールが析出しない。一方、糖または糖アルコールの溶解度が小さ過ぎれば、もともとの水溶液の濃度が低くなるため、析出量が不十分となる。この点で、試料1〜4に使用した糖または糖アルコールは、何れも内容物の水分含有率を少なくとも15質量%に低下させる乾燥処理と、実用的な温度変化(45℃で溶液を充填・封入し、常温まで冷却する)で、十分な量を析出させて内容物を固体状態とすることができ、極めて実用性が高いと言うことができる。
【0034】
次に、糖または糖アルコールの水溶液としてソルビトール水溶液(70質量%水溶液)を使用し、摂取目的成分としてビタミンC(粉末)を添加して充填用組成物を調製し、ゼラチンを基剤とするソフトカプセル被膜に充填・封入してソフトカプセルを製造した。ソルビトール水溶液にビタミンCを添加・混合する際の温度は70℃とし、充填用組成物をソフトカプセル被膜に充填・封入する際の温度は45℃とし、両時点でビタミンCの溶解性を確認した。また、ソフトカプセル被膜への充填性を評価するため、ソフトカプセル被膜に充填・封入する温度(45℃)における充填用組成物の粘度を、B型粘度計((No.4ローター,回転速度100rpm)で測定した。製造されたソフトカプセルについて、内容物の水分含有率が15質量%以下となるまで常温で乾燥し、ソルビトールの析出を観察した。この検討は、ソルビトールとビタミンCとの配合割合の異なる、5種類の充填用組成物(試料11〜15)について行った。試料11〜15の充填用組成物の組成を、表2に示す。また、70℃及び45℃におけるビタミンCの溶解性と、45℃における充填用組成物の粘度を、表2にあわせて示す。
【0035】
【表2】
【0036】
表2に示すように、ビタミンCの割合が40質量%の試料15では、ビタミンCがソルビトール水溶液に完全に溶解しなかった。また、ビタミンCの割合が30質量%の試料14は、70℃においてビタミンCがソルビトール水溶液に溶解したものの、45℃に温度が低下することにより、ビタミンCの沈殿が生成した。一方、ビタミンCの割合がそれぞれ10質量%、20質量%の試料11,12では、70℃においても45℃においても、ビタミンCはソルビトール水溶液に完全に溶解した。従って、摂取目的成分であるビタミンCが均一に含有された、同一品質のソフトカプセルを製造するためには、充填用組成物におけるビタミンCの割合を20質量%以下とすることが望ましい。なお、ビタミンCの割合が20質量%以下である試料11〜13の充填用組成物の45℃における粘度は、何れも小さく、ソフトカプセル被膜への充填性は良好であった。
【0037】
更に、試料11〜13の充填用組成物が充填されたソフトカプセルは、何れも、内容物の水分含有率が15質量%以下となるまで常温で乾燥することにより、ソルビトールが析出し、内容物は固体状態となった。
【0038】
これらのソフトカプセル(試料11〜13の充填用組成物が充填されたソフトカプセル)について、崩壊性を評価した。崩壊性は、常温における崩壊試験と、通常の保存条件より過酷な温度下で所定期間保存し、崩壊性の経時的な変化を評価する加速試験により評価した。ここで、常温における崩壊試験は、日本薬局方に規定された崩壊試験法に則って行い、20分以内にカプセル被膜が完全に崩壊した場合に「良好」と評価し、そうでない場合を「不良」と評価した。また、加速試験は、保存温度を40℃とし、所定期間の保存後に同じく日本薬局方に規定された試験法に則って崩壊試験を行い、20分以内にカプセル被膜が完全に崩壊した場合に「良好」と評価し、そうでない場合を「不良」と評価した。加速試験における保存期間は、1ヶ月(常温保存の6ヶ月に相当)、2ヶ月(常温保存の1年に相当)、4ヶ月(常温保存の2年に相当)とした。崩壊性の評価結果を、表2にあわせて示す。
【0039】
表2に示すように、試料11〜13の充填用組成物が充填されたソフトカプセルは、何れも良好な崩壊性を示し、保存に伴う経時的な崩壊性低下も見られなかった。
【0040】
次に、それぞれソルビトール、キシリトール、エリスリトール、トレハロースを糖または糖アルコールとして使用した水溶液に、摂取目的成分としてビタミンC(粉末)を添加して充填用組成物を調製し、4種類の充填用組成物(試料21〜24)を調製した。充填用組成物におけるビタミンCの濃度は、何れも20質量%とした。それぞれの充填用組成物を、ゼラチンを基剤とするソフトカプセル被膜に充填・封入してソフトカプセルを製造した。糖または糖アルコールの水溶液にビタミンCを添加・混合する際の温度は70℃とし、充填用組成物をソフトカプセル被膜に充填・封入する際の温度は45℃とした。
【0041】
それぞれの充填組成物について、上記と同様に、70℃及び45℃におけるビタミンCの溶解性を確認すると共に、45℃における充填用組成物の粘度を測定した。また、それぞれの充填用組成物を充填・封入したソフトカプセルについて、内容物の水分含有率が15質量%以下となるまで常温で乾燥し、糖または糖アルコールの析出を観察した。更に、上記と同様の方法で、常温における崩壊試験と加速試験を行い、崩壊性の評価を行った。これらの結果を、充填組成物の組成と共に、表3に示す。
【0042】
【表3】
【0043】
試料21〜24の充填用組成物では、70℃においても45℃においても、糖または糖アルコールの水溶液へのビタミンCの溶解性は良好であった。また、試料21〜24の充填用組成物の45℃における粘度は、何れも小さく、ソフトカプセル被膜への充填性は良好であった。更に、試料21〜24の充填用組成物が充填されたソフトカプセルは、何れも、内容物の水分含有率が15質量%以下となるまで常温で乾燥することにより、糖または糖アルコールが十分に析出し、内容物は固体状態となった。加えて、試料21〜24の充填用組成物が充填されたソフトカプセルは、何れも良好な崩壊性を示し、保存に伴う経時的な崩壊性低下も見られなかった。
【0044】
以上、本発明について好適な実施形態を挙げて説明したが、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、以下に示すように、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、種々の改良及び設計の変更が可能である。
【0045】
例えば、上記の実施形態では、ソフトカプセル被膜の基剤としてゼラチンを使用する場合を例示したが、これに限定されない。本発明は、内容物に着目して内容物の漏出を抑制するものであるため、ソフトカプセル被膜の種類を問うものではなく、例えば、ヒプロメロース(HPMC)や澱粉など非ゼラチンの基剤を、ソフトカプセル被膜の基剤として使用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0046】
【特許文献1】特開2007−320875号公報