特許第5902045号(P5902045)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5902045-練歯磨組成物 図000005
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902045
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】練歯磨組成物
(51)【国際特許分類】
   A61K 8/73 20060101AFI20160331BHJP
   A61K 8/20 20060101ALI20160331BHJP
   A61Q 11/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   A61K8/73
   A61K8/20
   A61Q11/00
【請求項の数】6
【全頁数】16
(21)【出願番号】特願2012-133138(P2012-133138)
(22)【出願日】2012年6月12日
(65)【公開番号】特開2013-256464(P2013-256464A)
(43)【公開日】2013年12月26日
【審査請求日】2015年3月19日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000918
【氏名又は名称】花王株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000084
【氏名又は名称】特許業務法人アルガ特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100077562
【弁理士】
【氏名又は名称】高野 登志雄
(74)【代理人】
【識別番号】100096736
【弁理士】
【氏名又は名称】中嶋 俊夫
(74)【代理人】
【識別番号】100117156
【弁理士】
【氏名又は名称】村田 正樹
(74)【代理人】
【識別番号】100111028
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 博人
(72)【発明者】
【氏名】戸井 学
【審査官】 松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平10−291921(JP,A)
【文献】 特開2008−013528(JP,A)
【文献】 特開平09−266779(JP,A)
【文献】 特開2002−047159(JP,A)
【文献】 特開2011−011995(JP,A)
【文献】 特開平11−12147(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 8/00−8/99
A61Q 1/00−90/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)食塩 5質量%以上25質量%以下、
(B)エーテル化度0.5以上1.5以下のカルボキシメチルセルロース又はその塩 0.2質量%以上1.5質量%以下、及び
(C)水 10質量%以上50質量%以下
を含有し、かつ
成分(B)が、無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数が8個以上80個以下であるカルボキシメチルセルロースで構成されている練歯磨組成物。
【請求項2】
さらに(D)重曹を含有し、成分(A)と成分(D)の質量比((A)/(D))が0.3以上2以下である請求項1に記載の練歯磨組成物。
【請求項3】
さらに(E)ラウリル硫酸ナトリウムを含有する請求項1又は2に記載の練歯磨組成物。
【請求項4】
さらに(F)N−アシルアミノ酸又はその塩を含有する請求項1〜3のいずれか1項に記載の練歯磨組成物。
【請求項5】
さらに(G)カラギーナンを含有する請求項1〜4のいずれか1項に記載の練歯磨組成物。
【請求項6】
成分(A)の平均粒径が、100μm以上1500μm以下である請求項1〜5のいずれか1項に記載の練歯磨組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、練歯磨組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
食塩は、炎症を起こした歯肉中の組織液を吸収することにより、歯肉局所における循環が改善される作用をもたらすといわれており、歯周疾患の予防効果や治療効果を発揮する成分として、従来より練歯磨や粉歯磨等各種の口腔用組成物に配合されている。ところが、食塩の配合量によっては塩味が増して嗜好性が損なわれるおそれもあるため、こうした点も加味しながら食塩による効果を最大限取り入れるべく、種々の開発がなされている。
【0003】
例えば、特許文献1には、平均粒径が700〜1400μmの粒状食塩を含有する口腔用組成物が開示されており、かかる粒状食塩によりマッサージ効果を高めて血流量を増大させ、歯周病の予防・治療効果の向上を図っている。また、特許文献2には、食塩、重曹及び殺菌剤を含有する口腔用組成物が開示されており、かかる組成物を用いることにより殺菌剤の口腔内での有効濃度を向上させることが記載されている。さらに特許文献3には、粒径の大きな食塩を配合した歯磨組成物が開示されており、食塩を多量に含有してもこれを徐々に溶解させて食塩による効果を十分に発揮させながら、良好な外観をも呈することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−152424号公報
【特許文献2】特開平7−258050号公報
【特許文献3】特開平5−58865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上記特許文献1〜3に記載されるように、練歯磨組成物においても食塩の含有量を高めようとする場合、食塩が有する高い電解性により、保存後に使用感が変化してしまう可能性がある。なかでも、保形性やなめらかな使用感を得る点から、さらに粘結剤としてカルボキシメチルセルロース又はその塩を配合した場合、これを特定のエーテル化度を有する好適なものとしても、低温での保存下では練歯磨組成物の粘性が高くなり、チューブ容器や吐出容器から吐出しにくくなることを十分に回避できないことが判明した。
【0006】
したがって、本発明の課題は、食塩を高濃度で含有しながら、カルボキシメチルセルロース又はその塩を含有しても、低温における粘度上昇が抑制され、かつ容器からの吐出性が良好な練歯磨組成物を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
そこで本発明者は、種々検討したところ、エーテル化度が0.5以上1.5以下であって、無水グルコース単位当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数が特定の範囲にあるカルボキシメチルセルロースで構成されているカルボキシメチルセルロース又はその塩を特定の量で用いることにより、良好な使用感を保持しつつ、食塩を高濃度で含有しても低温における粘度上昇を効果的に抑制することができ、容器からの吐出を容易にし得る練歯磨組成物が得られることを見出した。
【0008】
すなわち、本発明は、次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)食塩 5質量%以上25質量%以下、
(B)エーテル化度0.5以上1.5以下のカルボキシメチルセルロース又はその塩 0.2質量%以上1.5質量%以下、及び
(C)水 10質量%以上50質量%以下
を含有し、かつ
成分(B)が、無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数が8個以上80個以下であるカルボキシメチルセルロースで構成されている練歯磨組成物を提供するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明の練歯磨組成物によれば、高濃度の食塩を含有し、かつカルボキシメチルセルロース又はその塩を含有していても、低温における粘度上昇を効果的に抑制することができるとともに、チューブ容器や吐出容器からの吐出性も良好なものとすることができ、かかるカルボキシメチルセルロース又はその塩を含有することによる良好な保形性やなめらかな使用感を十分に付与することが可能である。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施例及び比較例において、カルボキシメチルセルロースナトリウムを構成するカルボキシメチルセルロースにおける無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数を求めるにあたり、用いた検量線を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明の練歯磨組成物は、食塩(A)を5質量%以上25質量%以下含有する。成分(A)をかかる特定の量で含有することにより、適度な塩味を呈しつつ、炎症を起こした歯肉中の組織液を吸収して収斂感を高めたり、マッサージ効果をもたらしたりして、歯周疾患の予防効果や治療効果を十分に発揮させることができる。成分(A)の食塩としては、口腔内での溶解を緩和に進行させて塩辛さが急激に増大するのを抑制する観点、及び口腔内における良好な感触を保持しマッサージ効果を向上する観点から、平均粒径が好ましくは300μm以上であり、より好ましくは400μm以上であり、さらに好ましくは500μm以上であり、好ましくは2000μm以下であり、より好ましくは1500μm以下であり、さらに好ましくは1200μm以下である。なお、特定の粒径の食塩を組成物において実現する観点から、平均粒径が好ましくは500μm以上、より好ましくは700μm以上、好ましくは2000μm以下の粒状の食塩を配合して得る練歯磨組成物が好ましい。
【0012】
なお、食塩の粒子径は、篩を用いることができる程度に乾燥させた後に、以下のように測定される。
篩:JIS標準篩 φ75mm
目開き:上段より、それぞれ1000μm、850μm、710μm、600μm、500μmの目開きを有する篩の下に受器を有する。
振盪機:ミクロ型電磁振動機M−2型(筒井理化学器機(株))
方法:試料15gを1000μm篩上に載せ、電磁振動機にて5分間分級する。850μm、710μm、600μm、及び500μmの目開きを有する篩上に存在する食塩の合計量を粒子径500μm以上1000μm未満の食塩とする。
【0013】
粒状の食塩は、製造中に溶解して粒径が小さくなるため、製造後に得られた組成物中での平均粒径が上記範囲になるよう、予め組成物中での所望の量よりも多い量の粒状食塩を配合して製造するのが好ましい。そして、粒状の食塩が組成物において分散していることが好ましく、かかる観点から、後述する成分(B)、成分(G)等の粘結剤、湿潤剤、及び水等を混合した後の工程において加えることが好ましく、加熱工程を終了した後の工程において加えることが好ましく、製造の最終工程において加えることが好ましい。
【0014】
成分(A)の含有量は、使用時における良好な感触を保持しつつ歯周疾患の予防効果や治療効果を十分に発揮する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、5質量%以上であって、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上である。そして、同様の観点から、25質量%以下であって、好ましくは20質量%以下である。
【0015】
本発明の練歯磨組成物は、エーテル化度0.5以上1.5以下のカルボキシメチルセルロース又はその塩(B)を0.2質量%以上1.5質量%以下含有し、かかる成分(B)は、無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数が8個以上80個以下であるカルボキシメチルセルロースで構成されている。かかる成分(B)の特定のカルボキシメチルセルロース又はその塩を含有することにより、良好な保形性や使用感を保持しつつ、低温での保存下においても粘度上昇を効果的に抑制して、容器からの吐出性が低下するのを有効に防止することができる。
【0016】
成分(B)のエーテル化度は、良好な保形性、使用感又は糸曳き性の観点から、0.5以上1.5以下であって、好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.2以下である。ここでエーテル化度とは、グルコース単位あたりのカルボキシメチル基の置換度をいう。エーテル化度は、例えばCMC工業会分析法(灰化法)に従い得ることができる。カルボキシメチルセルロースナトリウム1gを精秤し、磁性ルツボに入れて600℃で灰化し、灰化によって生成した酸化ナトリウムをN/10硫酸でフェノールフタレインを指示薬として滴定し、カルボキシメチルセルロースナトリウム1gあたりの滴定量YmLを次式に入れて計算し、求めたエーテル化度を示すことができる。
エーテル化度=(162×Y)/(10,000−80×Y)
【0017】
成分(B)は、無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数が8個以上80個以下であるカルボキシメチルセルロースで構成されている。このように、成分(B)を構成するカルボキシメチルセルロースが、無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位が特定の個数であることにより、成分(B)は特定のエーテル化度を有することと相まって、成分(A)を高濃度で含有していても、低温での保存下において粘度の上昇を効果的に抑制することができる。
【0018】
成分(B)を構成するカルボキシメチルセルロースにおける無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数は、低温での保存下における粘度上昇を効果的に抑制する観点から、8個以上であって、好ましくは9個以上である。そして、同様の観点から、80個以下であって、好ましくは60個以下であり、より好ましくは50個以下である。このような成分(B)の市販品としては、例えば、CMC 127T(ダイセル化学工業(株)製)等が挙げられる。
【0019】
なお、成分(B)を構成するカルボキシメチルセルロースにおける無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数とは、セルロースの加水分解酵素であるセルラーゼによってカルボキシメチルセルロースをグルコース単位にまで加水分解した際、無水グルコース単位1000個当たりに存在する、カルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数を示すものである。なお、カルボキシメチル基で置換されているとは、グルコース単位に存在するOH基のうち、1以上のOH基のHがカルボキシメチル基に置換されていることをいう。このような、カルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数を求めるには、ムタロターゼ・グルコースオキシダーゼ(GOD)法にしたがい、カルボキシメチル基で置換されていないグルコースから生成した過酸化水素が発色試薬と反応することにより生じる赤色色素の吸光度を測定することにより、カルボキシメチル基で置換されていないグルコースの濃度を求めて換算する。かかるカルボキシメチル基で置換されていないグルコースの濃度は、ブドウ糖標準液を用い、縦軸yをカルボキシメチル基で置換されていないグルコースの濃度、横軸xを水の吸光度との差とする、原点O((x,y)=(0,0))を通る検量線を作製することによって求める。より具体的には、実施例に記載の方法にしたがって得られる。
【0020】
カルボキシメチルセルロースの塩(B)としては、ナトリウム塩、カリウム塩などのアルカリ金属塩、アンモニウム塩などが挙げられ、口腔内への適用、コスト面や入手容易性等の観点から、カルボキシメチルセルロースナトリウムが好ましい。
カルボキシメチルセルロース又はその塩(B)は、適度な粘性と保形性、及び製造性の観点から、1%の水溶液の25℃における粘度が100mPa・s以上、1000mPa・s以下であることが好ましく、500mPa・s以下であることがより好ましく、200mPa・s以上であることが好ましい。
【0021】
成分(B)の含有量は、良好な保形性や使用感を保持しつつ低温での保存下における粘度上昇を効果的に抑制する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、0.2質量%以上であって、好ましくは0.4質量%以上である。そして、同様の観点から、成分(B)の含有量は、本発明の練歯磨組成物中に、1.5質量%以下であって、好ましくは1.2質量%以下である。
【0022】
本発明の練歯磨組成物は、水(C)を10質量%以上50質量%以下含有する。成分(C)の水をかかる特定の量で含有することにより、成分(A)の食塩を有効に溶解させて歯周疾患の予防効果や治療効果を十分に発揮させるとともに、成分(B)の特定のカルボキシメチルセルロース又はその塩に成分(C)の水を吸収させて適度な粘性を発現することができる。
【0023】
水(C)の含有量は、成分(A)を良好に溶解させる観点、及び成分(B)により適度な粘性と滑らかさを発現させる観点から、本発明の練歯磨組成物中に、10質量%以上であって、好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上である。そして、同様の観点から、50質量%以下であって、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である。
【0024】
また、成分(C)の水に対する成分(A)の食塩の質量比((A)/(C))は、成分(A)の良好な溶解性と適度な塩味とを両立させる観点、及び成分(A)による歯周疾患の予防効果や治療効果を十分に発揮させる観点から、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上であり、食塩を粒状で組成物中に存在させる点から、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.2以下であり、さらに好ましくは1以下である。
【0025】
なお、練歯磨組成物の水分量は、配合した水分量及び配合した成分中の水分量から計算によって算出することもできるが、例えばカールフィッシャー水分計で測定することができる。カールフィッシャー水分計としては、例えば、微量水分測定装置(平沼産業(株))を用いることができる。この装置では、練歯磨組成物を5gとり、無水メタノール25gに懸濁させ、この懸濁液0.02gを分取して水分量を測定することができる。
【0026】
本発明の練歯磨組成物は、さらに重曹(D)を含有することが好ましい。かかる成分(D)を含有することにより、適度な塩味を保持しつつ、成分(A)の食塩がもたらす収斂感をより高めることができ、またマッサージ効果を増強させることもできる。さらに、本発明の練歯磨組成物は、重曹(D)を含有する場合であっても、低温において粘度が上昇して固くなることを抑制することができる。重曹(D)の含有量は、良好な保形性を保持しつつ収斂感やマッサージ効果をより高める観点から、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である。
【0027】
また、成分(A)と成分(D)の質量比((A)/(D))は、適度な塩味を保持しながら優れた歯周疾患の予防効果や治療効果を発揮させる観点から、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、好ましくは2以下であり、より好ましくは1.3以下であり、さらに好ましくは0.9以下である。
【0028】
なお、成分(D)の平均粒径は、マッサージ効果をより高める観点から、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは80μm以上であり、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは250μm以下である。
【0029】
本発明の練歯磨組成物は、さらにラウリル硫酸ナトリウム(E)を含有することが好ましい。かかる成分(E)を含有することにより、良好な泡立ちを確保することができる。成分(E)の含有量は、良好な泡立ちを確保して汚れ除去性能や使用感を高める観点から、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上である。そして、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である。
【0030】
本発明の練歯磨組成物は、さらにN−アシルアミノ酸又はその塩(F)を含有することが好ましい。かかる成分(F)は、成分(E)との併用により、成分(A)を多く含有する本発明の練歯磨組成物の組成においても、良好な泡立ちと泡質をもたらすことができ、優れた汚れ除去効果や使用感を付与することができる。N−アシルアミノ酸のアシル基は、泡質の向上と泡立ち、及び良好な汚れ除去効果や使用感をもたらす観点から、飽和又は不飽和の直鎖又は分岐鎖を有する脂肪酸又はこれらの混合脂肪酸を由来としたものであって、カプリロイル基、ラウロイル基、ミリストイル基、パルミトイル基、ココイル基、ステアロイル基から選ばれる1種又は2種以上が好ましい。
【0031】
N−アシルアミノ酸のアミノ酸部分としては、グルタミン酸、アスパラギン酸、グリシン、アラニン、スレオニン、メチルアラニン、サルコシン、リジン、アルギニン等が挙げられる。なかでも、良好な汚れ除去効果を保持する観点から、酸性アミノ酸であるのが好ましく、グルタミン酸、アスパラギン酸から選ばれる1種以上がより好ましく、グルタミン酸がさらに好ましい。また、これらのアミノ酸部分はD体、L体或いはD体とL体の混合物のいずれであってもよく、L体であるのが好ましい。
【0032】
N−アシルアミノ酸又はその塩(F)は、1種単独で用いてもよく、2種以上組み合わせて用いてもよい。なかでも、良好な泡立ちをもたらして汚れ除去効果を高める観点から、N−ラウロイルグルタミン酸、N−ミリストイルグルタミン酸、N−ココイルグルタミン酸、N−ラウロイルアスパラギン酸、又はこれらの塩から選ばれる1種以上が好ましく、N−ラウロイルグルタミン酸、N−ミリストイルグルタミン酸、又はこれらの塩から選ばれる1種以上がより好ましい。
【0033】
N−アシルアミノ酸塩の塩としては、ナトリウム、カリウム等のアルカリ金属塩;カルシウム、マグネシウム等のアルカリ土類金属塩;アルミニウム、亜鉛等の他の無機塩;アンモニウム塩;モノエタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン等の有機アミン塩;アルギニン、リジン、ヒスチジン、オルニチン等の塩基性アミノ酸塩等の有機塩が挙げられる。なかでも、香味や入手容易性の点から、アルカリ金属塩が好ましく、ナトリウム塩がより好ましい。
【0034】
N−アシルアミノ酸又はその塩(F)の含有量は、成分(E)のラウリル硫酸ナトリウムとも相まって十分な泡立ちをもたらす観点から、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上である。そして、成分(F)の含有量は、適度な泡立ちと脱泡性の観点から、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である。
【0035】
本発明の練歯磨組成物は、カラギーナン(G)を含有しなくてもよいが、含有することがより好ましい。成分(G)を含有することにより、より良好な保形性や使用感を確保することができる。成分(G)の含有量は、保形性や使用感を確保する観点から、本発明の練歯磨組成物中に、好ましくは0質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上である。そして、成分(G)の含有量は、使用感の観点から、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下である。また、本発明の練歯磨組成物は、成分(B)及び成分(G)以外の他の粘結剤を本発明の効果を阻害しない範囲で含有することができる。成分(B)及び成分(G)以外の他の粘結剤としては、成分(B)以外のカルボキシメチルセルロースナトリウム、キサンタンガム、アルギン酸ナトリウム、ポリアクリル酸ナトリウム、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキプロピルセルロース、ポリビニルアルコール、コンドロイチン硫酸ナトリウム、及びメトキシエチレン無水マレイン酸共重合体からなる水溶性高分子が挙げられ、使用感の点からキサンタンガムが好ましい。他の粘結剤は含有しないか、配合する場合の含有量は、本発明の練歯磨組成物中に0.5質量%以下であることが好ましく、0.2質量%以下であることがより好ましく、0.1質量%以下であることがさらに好ましい。
【0036】
なお、本発明の練歯磨組成物は、製造から3日以上経過後の25℃における粘度(X)が、1500dPa・s以上であることが好ましく、2000dPa・s以上であることがより好ましく、5000dPa・s以下であることが好ましく、4000dPa・s以下であることがより好ましい。また、かかる(X)と、製造から3日以上経過後に5℃で1日間保存した後の5℃における粘度(Y)との差が、7500dPa・s以下であるものが好ましく、6500dPa・s以下であるものが好ましい。なお、製造から3日以上経過後に5℃で1日間保存した後の5℃における粘度(Y)が10000dPa・s以下であるものが好ましく、9000dPa・s以下であるものが好ましい。本発明の練歯磨組成物の粘度(X)及び(Y)は、ヘリパス型粘度計(東機産業(株)製、VISCOMETER TVB−10)を用いて、各々所定の温度で、ロータT−C、(回転数)2.5rpm、1分間の条件で測定することができる。なお、粘度が6000dPa・sを超える場合にはロータT−Eを用いる。
【0037】
本発明の練歯磨組成物は、常法により製造することができ、上記成分の他、本発明の効果を損なわない範囲内で、グリセリン、ソルビトール、プロピレングリコール、1,3−ブチレングリコール、エチレングリコール、ポリエチレングリコール等の湿潤剤;モノフルオルリン酸ナトリウム、フッ化スズ、フッ化ナトリウム等の歯質強化剤;塩化ベンゼトニウム、塩化セチルピリジニウム等の殺菌剤;水酸化ナトリウム等のpH調整剤;グリチルレチン酸等の抗炎症剤;ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油等の非イオン性界面活性剤;サッカリンナトリウム、ステビオサイド等の甘味剤;二酸化チタン等の着色剤・色素類;ペパーミント油、スペアミント油、メントール、アネトール等の香料;炭酸カルシウム、シリカ等の研磨剤等を適宜含有することができる。
【0038】
本発明の練歯磨組成物を製造するにあたり、成分(B)、成分(G)を含む粘結剤、湿潤剤、及び水を混合する工程の後において、成分(E)、成分(F)、成分(A)、研磨剤、及び香料を配合して混合する工程を備えることが好ましい。本発明の練歯磨組成物が、成分(D)重曹を含有する場合には、成分(B)、成分(G)を含む粘結剤、湿潤剤、及び水を混合する工程の後において、成分(D)重曹を配合し混合する工程を経て、次にpH調整剤を配合して混合する工程を経て、その後に成分(E)、成分(F)、成分(A)、研磨剤、及び香料を配合して混合する工程を備えることが好ましい。なお、成分(B)、成分(G)を含む粘結剤、湿潤剤、及び水を混合する工程において、成分(A)の食塩の一部を配合し混合することが、後に粒状の食塩の粒の形状や大きさを維持する上で好ましい。
【0039】
練歯磨組成物は、使い易さの観点から、チューブ容器、スクイズ容器などの手指による押圧により押し出し吐出する容器に収容することが好ましい。チューブ容器は、チューブの一方の端部が融着によって密封され、他方の端部が吐出口を一体に備える樹脂製の肩部に連続しており、吐出口が蓋で密封可能にされている容器である。スクイズ容器は、例えばブロー成形により薄肉の本体と吐出口が一体に成形された容器であり、薄肉の本体を手指で押圧すれば容易に平たくすることができる容器である。そして、本発明の練歯磨組成物は、チューブ容器及びスクイズ容器から選ばれる1種の押し出し容器に収容された容器入り練歯磨組成物としても、低温において良好な吐出性能を確保することができる。
【0040】
上述した実施態様に関し、本発明はさらに以下の練歯磨組成物を開示する。
[1]次の成分(A)、(B)及び(C):
(A)食塩 5質量%以上25質量%以下、
(B)エーテル化度0.5以上1.5以下のカルボキシメチルセルロース又はその塩 0.2質量%以上1.5質量%以下、及び
(C)水 10質量%以上50質量%以下
を含有し、かつ
成分(B)が、無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数が8個以上80個以下であるカルボキシメチルセルロースで構成されている練歯磨組成物。
【0041】
[2]成分(A)の含有量は、5質量%以上であって、好ましくは8質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、25質量%以下であって、好ましくは20質量%以下である上記[1]の練歯磨組成物。
[3]成分(A)の平均粒径は、好ましくは300μm以上であり、より好ましくは400μm以上であり、さらに好ましくは500μm以上であり、好ましくは2000μm以下であり、より好ましくは1500μm以下であり、さらに好ましくは1200μm以下である上記[1]又は[2]の練歯磨組成物。
【0042】
[4]成分(B)のエーテル化度は、0.5以上1.5以下であって、好ましくは0.6以上であり、より好ましくは0.8以上であり、好ましくは1.2以下である上記[1]〜[3]のいずれか1の練歯磨組成物。
[5]成分(B)を構成するカルボキシメチルセルロースは、無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数が、8個以上であって、好ましくは9個以上であり、80個以下であって、好ましくは60個以下であり、より好ましくは50個以下である上記[1]〜[4]のいずれか1の練歯磨組成物。
[6]成分(B)の含有量は、0.2質量%以上であって、好ましくは0.4質量%以上であり、1.5質量%以下であって、好ましくは1.2質量%以下である上記[1]〜[5]のいずれか1の練歯磨組成物。
【0043】
[7]成分(C)の含有量は、10質量%以上であって、好ましくは12質量%以上であり、より好ましくは15質量%以上であり、50質量%以下であって、好ましくは45質量%以下であり、より好ましくは40質量%以下である上記[1]〜[6]のいずれか1の練歯磨組成物。
[8]成分(C)の水に対する成分(A)の食塩の質量比((A)/(C))は、好ましくは0.2以上であり、より好ましくは0.3以上であり、さらに好ましくは0.5以上であり、好ましくは1.5以下であり、より好ましくは1.2以下であり、さらに好ましくは1以下である上記[1]〜[7]のいずれか1の練歯磨組成物。
【0044】
[9]さらに(D)重曹を含有する上記[1]〜[8]のいずれか1の練歯磨組成物。
[10]成分(D)の含有量は、好ましくは5質量%以上であり、より好ましくは10質量%以上であり、好ましくは30質量%以下であり、より好ましくは25質量%以下であり、さらに好ましくは20質量%以下である上記[9]の練歯磨組成物。
[11]成分(D)の平均粒径は、好ましくは30μm以上であり、より好ましくは80μm以上であり、好ましくは500μm以下であり、より好ましくは250μm以下である上記[9]又は[10]のいずれか1の練歯磨組成物。
【0045】
[12]成分(A)と成分(D)の質量比((A)/(D))は、好ましくは0.3以上であり、より好ましくは0.5以上であり、好ましくは2以下であり、より好ましくは1.3以下であり、さらに好ましくは0.9以下である上記[9]〜[11]のいずれか1の練歯磨組成物。
[13]さらに(E)ラウリル硫酸ナトリウムを含有する上記[1]〜[12]のいずれか1の練歯磨組成物。
[14]成分(E)の含有量は、好ましくは0.5質量%以上であり、より好ましくは1質量%以上であり、好ましくは2.5質量%以下であり、より好ましくは2質量%以下である上記[13]の練歯磨組成物。
【0046】
[15]さらに(F)N−アシルアミノ酸又はその塩を含有する上記[1]〜[14]のいずれか1の練歯磨組成物。
[16]成分(F)の含有量は、好ましくは0.01質量%以上であり、より好ましくは0.05質量%以上であり、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.5質量%以下である上記[15]の練歯磨組成物。
[17]さらに(G)カラギーナンを含有する上記[1]〜[16]のいずれか1の練歯磨組成物。
[18]成分(G)の含有量は、好ましくは0質量%以上であり、より好ましくは0.01質量%以上であり、さらに好ましくは0.02質量%以上であり、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0.8質量%以下である上記[17]の練歯磨組成物。
[19]チューブ容器及びスクイズ容器から選ばれる1種の押し出し容器に収容されている[1]〜[18]の練歯磨組成物。
【実施例】
【0047】
以下、本発明について、実施例に基づき具体的に説明する。なお、表中に特に示さない限り、各成分の含有量は質量%を示す。
【0048】
[実施例1〜4、比較例1]
表1に示すカルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC1〜6)を用い、表2に示す組成の練歯磨組成物を常法にしたがって調製した。得られた各練歯磨組成物を用い、下記に示す測定及び評価を行った。なお、各練歯磨組成物の製造は、カルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ソルビトール、グリセリン及び精製水を混合した後、pH調整剤を配合して混合し、次いで最後にラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、食塩、シリカ、炭酸カルシウム及び香料を配合し混合した。
なお、各カルボキシメチルセルロースナトリウムを構成するカルボキシメチルセルロースにおける無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数は、以下の方法により求めた。
【0049】
《カルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数の測定》
(1)グルコース単位への分解
各カルボキシメチルセルロースナトリウムから1質量%濃度の水溶液を調製し、室温(25℃)でマグネティックスターラーにより4時間撹拌して溶液Aを得た。一方、セルラーゼ(アスペルギルス由来、和光製薬製)0.01gに蒸留水を加えて全量50gとした酵素溶液Bを調製した。次いで、溶液A4mLと酵素溶液B1mLとをボルテックスミキサー(SHIBATA TEST TUBE MIXER TTM―1、柴田科学株式会社製)にて15秒間撹拌混合した後、室温(25℃)で48時間おきにボルテックスミキサーにて10秒間攪拌混合しながら144時間放置して、試料液Cを得た。
【0050】
(2)グルコース量の定量
グルコースキット(グルコースCII-テストワコー、和光純薬工業(株)製)を用い、ムタロターゼ・グルコースオキシダーゼ(GOD)法にしたがって定量を行った。具体的には、上記(1)で得られた試料液C 0.02mLとグルコースキット中の発色試液3mlとをボルテックスミキサーにて10秒間撹拌混合した。次いで、室温(25℃)で20分間放置し、発色試液と反応して生じた赤色色素量を505nmにて吸光度を測定し、測定した吸光度と蒸留水の吸光度との差に基づき、検量線を用いてカルボキシメチル基で置換されていないグルコース量を求めた。上記発色試液は、グルコースキット中の発色剤1びんと緩衝液1びんとを混合して調製したものである。
なお、上記検量線は、グルコースキット中のブドウ糖標準液を用い、蒸留水で所望の濃度(50mg/dL、100mg/dL、200mg/dL)に希釈した検量用の試験液と、蒸留水そのものの試験液について、上記と同様の操作によって吸光度を測定した。測定した吸光度と蒸留水(ブランク)との吸光度の差を横軸、縦軸をグルコースの濃度、即ち、カルボキシメチル基で置換されていないグルコースの濃度とし、原点Oを通るように検量線を作製した。作製した検量線を図1に示すとともに、各カルボキシメチルセルロースナトリウムのカルボキシメチル基で置換されていないグルコースの濃度の結果を表1に示す。
【0051】
【表1】
【0052】
《製造後25℃における粘度(X)の測定(25℃粘度)》
得られた練歯磨組成物を製造直後から25℃で3日保存した後、ヘリパス型粘度計(東機産業(株)製、VISCOMETER TVB−10)を用いて、25℃で、ロータT−C、(回転数)2.5rpm、1分間の条件で測定した。結果を表2に示す。
【0053】
《製造後から低温保存した後における粘度(Y)の測定(5℃粘度)》
得られた練歯磨組成物を製造直後から25℃で3日保存した後、さらに5℃で1日間保存した後、ヘリパス型粘度計(東機産業(株)製、VISCOMETER TVB−10)を用いて、5℃で、ロータT−E、(回転数)2.5rpm、1分間の条件で測定した。上記粘度(X)との差((Y)−(X))及び粘度比((Y)/(X))の算出結果も併せ、結果を表2に示す。
【0054】
《5℃での押出し性》
5℃における押し出し性は、各練歯磨組成物をチューブ容器に収容し、5℃で1日保存した後、5℃において練歯磨組成物を1cm押出した際の押出しやすさを以下の基準で評価した。評価は2名の専門パネラーの協議により行った。評価結果を表2に示す。なお、押し出し性の評価に用いたチューブ容器は、胴部が開口部を融着前は筒状であり、最内層が直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)であって、外側に印刷層(ニスを含む)を備え、印刷層/低密度ポリエチレン(LDPE)/接着剤/高密度ポリエチレン(HDPE)/接着剤/アルミニウム/接着剤/ポリエチレンテレフタレート(PET)/接着剤/LLDPE 全体で100μmの厚みで構成される、一般に用いられるチューブ容器である。そして、チューブ容器の胴部は、一方の端部を融着により接着されており、接着部の長さは60mmであり、他方の端部は吐出口を一体に備えるポリエチレン製の肩部に連続し、吐出口の口径は8mmである。
A:押し出し容易である。
B:やや押し出しにくい。
C:固くて押し出しにくい。
【0055】
《25℃での歯磨組成物の滑らかさ》
歯磨組成物の滑らかさは、25℃において、2名の専門パネラーが1gの歯磨組成物を歯ブラシにとり、歯磨きを行い、以下の基準について協議により評価した。
A:歯磨組成物が口中で滑らかに広がる。
B:歯磨組成物の流動性に乏しく、ゲル感が強い。
ここで、ゲル感とは、ゼラチンや寒天で保形性をもたせた組成物のように、一定の負荷をかけると壊れるが流動性に乏しく感触をいう。従って、練歯磨組成物がゲル感が強い場合は、保形性はあるが、流動性に乏しく組成物が口中で滑らかに広がりにくい。
【0056】
《25℃での歯磨組成物の糸曳き》
歯磨組成物の糸曳き性は、25℃において、2名の専門パネラーが1gの歯磨組成物を歯ブラシの上に吐出することにより評価を行い、以下の基準により評価した。
AA:糸曳き性がない。
A :やや糸曳き性がある。
B :糸曳き性がある。
【0057】
【表2】
【0058】
表2に示すように、実施例と比較例の歯磨組成物は25℃における粘度が概ね同程度になるように製造したが、無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数が8個以上80個以下であるカルボキシメチルセルロースナトリウムを含有する実施例1〜4の歯磨組成物は、5℃においても吐出が容易な程度の粘度上昇に抑えられている。一方、比較例1の歯磨組成物は、5℃において粘度上昇が高いため、チューブ容器からやや押し出しにくくなっている。
【0059】
[実施例5〜13、比較例2]
表1に示すカルボキシメチルセルロースナトリウムを用い、表3に示す組成の練歯磨組成物を常法にしたがって調製した。なお、練歯磨組成物の製造は、表1に示すカルボキシメチルセルロースナトリウム、カラギーナン、モノステアリン酸ポリオキシエチレンソルビタン、ソルビトール、グリセリン及び精製水を混合した後に、重曹を混合し、次にpH調整剤を混合し、最後にラウリル硫酸ナトリウム、ラウロイルグルタミン酸ナトリウム、シリカ、炭酸カルシウム、食塩、及び香料を配合して混合した。得られた各練歯磨組成物を用い、上記と同様にして測定及び評価を行った。
結果を表3に示す。
【0060】
【表3】
【0061】
表3に示すように、重曹を配合した練歯磨組成物においても、無水グルコース単位1000個当たりのカルボキシメチル基で置換されていないグルコース単位の個数が8個以上80個以下である実施例5〜13は、5℃における粘度上昇が抑制されたのに対し、比較例2の練歯磨組成物は5℃における粘度上昇が高く、チューブ容器から押し出しにくくなっている。
図1