特許第5902061号(P5902061)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902061
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】燃料ポンプ
(51)【国際特許分類】
   F02M 37/08 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   F02M37/08 E
【請求項の数】7
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-165448(P2012-165448)
(22)【出願日】2012年7月26日
(65)【公開番号】特開2014-25390(P2014-25390A)
(43)【公開日】2014年2月6日
【審査請求日】2015年1月14日
(73)【特許権者】
【識別番号】000116574
【氏名又は名称】愛三工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000110
【氏名又は名称】特許業務法人快友国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】本田 義彦
【審査官】 津田 健嗣
(56)【参考文献】
【文献】 実開平4−21752(JP,U)
【文献】 特開2007−288985(JP,A)
【文献】 特開平10−299600(JP,A)
【文献】 特開昭62−83223(JP,A)
【文献】 特開昭62−83224(JP,A)
【文献】 実開昭63−90092(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F02M 37/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
ハウジング内の一方の側に配置されているポンプ部と、
ハウジング内の他方の側に配置されていると共にポンプ部と連通しているモータ部と、
ハウジングの他方の側の端面を塞ぐアッパボディと、を備えており、
ハウジングの一方の側には、ポンプ部と連通する吸入口が設けられており、
アッパボディには、モータ部と連通する吐出口と、モータ部と連通してモータ部から外部へ燃料を流出可能な流出口が設けられており、
モータ部は、ポンプ部を駆動するモータを備えており、
アッパボディとモータの間には、ポンプ部からモータ部を通ってハウジングの他方の側に向かって流れる燃料が流入する燃料室と、その燃料室から分岐する第1分岐流路が設けられており、
吐出口は、燃料室に開口しており、燃料室内の燃料が第1分岐流路を介さずに吐出口に供給される一方、
流出口は、第1分岐流路に開口しており、燃料室内の燃料が第1分岐流路を介して流出口に供給され
燃料室から第1分岐流路が伸びる方向は、モータ部の軸線に対して直交する方向に伸びていることを特徴とする燃料ポンプ。
【請求項2】
燃料室から第1分岐流路が伸びる方向は、燃料室から吐出口に流れる燃料の流れる方向と平行とはならないことを特徴とする請求項1に記載の燃料ポンプ。
【請求項3】
第1分岐流路の一端は燃料室に接続されており、
第1分岐流路は、その流路断面積が他の部分よりも小さい絞り部を有しており、
絞り部は、第1分岐流路の一端と流出口が開口する部分の間に位置していることを特徴とする請求項1又は2に記載の燃料ポンプ。
【請求項4】
流出口は、ジェットポンプに燃料を供給するためのジェットポンプ供給口である、請求項1〜3のいずれか一項に記載の燃料ポンプ。
【請求項5】
アッパボディには、モータ部と連通するリリーフ口がさらに設けられており、
リリーフ口には、ポンプ部から吐出される燃料の圧力が閾値を超えたときに作動するリリーフ弁が配されており、
アッパボディとモータの間には、燃料室から分岐する第2分岐流路がさらに設けられており、
リリーフ口は、第2分岐流路に開口しており、燃料室内の燃料が第2分岐流路を介してリリーフ口に供給されることを特徴とする請求項4に記載の燃料ポンプ。
【請求項6】
アッパボディをモータ部の軸線方向の無限遠から見たときに、モータ部の軸線と吐出口を結ぶ直線に対して一方側にジェットポンプ供給口が位置しており、他方側にリリーフ口が位置していることを特徴とする請求項5に記載の燃料ポンプ。
【請求項7】
モータは、ロータと、ロータの外周に沿って配置されるステータと、を備えており、
ハウジングとステータの外周面の間には燃料流路が形成されておらず、
ロータとステータの間に、ポンプ部から吐出される燃料を燃料室に導く燃料流路が形成されていることを特徴とする請求項1〜6のいずれか一項に記載の燃料ポンプ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、ポンプ部とモータ部とを備える燃料ポンプを開示する。
【背景技術】
【0002】
燃料ポンプから供給される燃料の一部を利用したジェットポンプにより燃料の移送を行う場合がある。かかる場合、通常、燃料ポンプから吐出される燃料が流れる燃料流路に分岐流路を設け、その分岐流路にジェットポンプを接続する構成が採られる。このような構成では、燃料ポンプから伸びる燃料流路に分岐流路を設ける必要が生じ、配管が複雑となる。そこで、燃料ポンプに吐出口とジェットポンプ供給口を設け、ジェットポンプ供給口からジェットポンプに燃料を供給する技術が提案されている(特許文献1,2等)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭62−83223号公報
【特許文献2】特開昭62−83224号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
燃料ポンプに吐出口とジェットポンプ供給口のような流出口を設けた場合、吐出口と流出口の一方から供給される燃料に圧力脈動が生じると、他方から供給される燃料にも圧力脈動が生じる虞がある。例えば、ジェットポンプ供給口から供給される燃料によって生じる圧力脈動によって吐出口から供給される燃料に圧力脈動が生じると、燃料配管が振動して異音発生の原因となったり、燃料使用装置(例えば、エンジン等)に供給される燃料流量が変化してしまう。本明細書では、吐出口とジェットポンプ供給口ような流出口が設けられた燃料ポンプにおいて、吐出口と流出口の一方から供給される燃料に圧力脈動が生じても、他方から供給される燃料に圧力脈動が生じることを抑制することができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本明細書で開示される流体ポンプは、ハウジングと、ハウジング内の一方の側に配置されているポンプ部と、ハウジング内の他方の側に配置されていると共にポンプ部と連通しているモータ部と、ハウジングの他方の側の端面を塞ぐアッパボディと、を備えている。ハウジングの一方の側には、ポンプ部と連通する吸入口が設けられている。アッパボディには、モータ部と連通する吐出口と、モータ部と連通してモータ部から外部へ燃料を流出可能な流出口が設けられている。モータ部は、ポンプ部を駆動するモータを備えている。アッパボディとモータの間には、ポンプ部からモータ部を通ってハウジングの他方の側に向かって流れる燃料が流入する燃料室と、その燃料室から分岐する第1分岐流路が設けられている。吐出口は、燃料室に開口しており、燃料室内の燃料が第1分岐流路を介さずに吐出口に供給される。流出口は、第1分岐流路に開口しており、燃料室内の燃料が第1分岐流路を介して流出口に供給される。
【0006】
この燃料ポンプでは、アッパボディとモータの間に、燃料室と第1分岐流路が設けられる。そして、燃料室内の燃料が第1分岐流路を介さずに燃料室から吐出口に供給され、燃料室内の燃料が第1分岐流路を介して流出口に供給される。吐出口と流出口が同一の空間に開口していないため、一方から供給される燃料に圧力脈動が生じても、他方から供給される燃料に圧力脈動を生じ難くすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】燃料ポンプの正面図を示す。
図2】燃料ポンプの平面図を示す。
図3図2のIII-III断面の断面図を示す。
図4図2のIV-IV断面における燃料の流れる様子を示す。
図5図3のV-V断面の断面図を示す(ただし、ロータの図示を省略している。)。
図6図4のVI-VI断面の端面図を示す。
図7】分岐流路とステータの位置関係を模式的に示す。
図8】変形例の燃料ポンプにおける燃料の流れる様子を示す(図4に示す断面に相当)。
図9】他の変形例の燃料ポンプにおける燃料の流れる様子を示す(図4に示す断面に相当)。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下に説明する実施例の主要な特徴を列記する。なお、以下に記載する技術要素は、それぞれ独立した技術要素であって、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものである。
【0009】
(特徴1) 燃料室から第1分岐流路が伸びる方向は、燃料室から吐出口に流れる燃料の流れる方向と平行とはならないようにしてもよい。このような構成によると、燃料室から吐出口への燃料の流れに乱れが生じることが抑制され、吐出口より滑らかに燃料を吐出することができる。
【0010】
(特徴2) 第1分岐流路の一端は燃料室に接続されており、第1分岐流路は、その流路断面積が他の部分よりも小さい絞り部を有していてもよい。そして、絞り部は、第1分岐流路の一端と流出口が開口する部分の間に位置していてもよい。このような構成によると、一方から供給される燃料の圧力脈動が他方から供給される燃料の流れに影響することをより効果的に抑制することができる。
【0011】
(特徴3) 流出口は、ジェットポンプに燃料を供給するためのジェットポンプ供給口とされている。ジェットポンプ供給口からは常に燃料が流出し、その流出される燃料に圧力脈動が生じ易い。このため、ジェットポンプ供給口に本明細書の技術を適用することで、吐出口から吐出される燃料に圧力脈動が生じることを効果的に抑制することができる。
【0012】
(特徴4) アッパボディには、モータ部と連通するリリーフ口がさらに設けられていてもよい。リリーフ口には、ポンプ部から吐出される燃料の圧力が閾値を超えたときに作動するリリーフ弁が配されていてもよい。アッパボディとモータの間には、燃料室から分岐する第2分岐流路がさらに設けられていてもよい。そして、リリーフ口は、第2分岐流路に開口しており、燃料室内の燃料が第2分岐流路を介してリリーフ口に供給されるようにしてもよい。このような構成によると、リリーフ口から排出される燃料に生じる圧力脈動が、吐出口等から供給される燃料に影響を与えることを抑制することができる。
【0013】
(特徴5) アッパボディをモータ部の軸線方向の無限遠から見たときに、モータ部の軸線と吐出口を結ぶ直線に対して一方側にジェットポンプ供給口が位置しており、他方側にリリーフ口が位置していてもよい。このような構成によると、ジェットポンプ供給口とリリーフ口が分散して配置されるため、燃料ポンプ内の燃料の流れが偏ることを抑制することができる。
【0014】
(特徴6) モータは、ロータと、ロータの外周に沿って配置されるステータと、を備えていてもよい。ハウジングとステータの外周面の間には燃料流路が形成されておらず、ロータとステータの間に、ポンプ部から吐出される燃料を燃料室に導く燃料流路が形成されていてもよい。このような構成によると、第1分岐流路へ燃料室側からのみ燃料が供給される。このため、ジェットポンプ供給口から滑らかに燃料を流出させることができる。
【実施例1】
【0015】
本実施例の燃料ポンプ10は、燃料タンク(図示省略)内に配置され、自動車のエンジン(図示省略)に燃料(例えばガソリン等)を供給する。図1に示すように、燃料ポンプ10は、両端が開口された円筒形状を有するハウジング2を備えている。ハウジング2の上端は、アッパボディ18によって閉じられている。ハウジング2の下端はポンプ部30によって閉じられている。
【0016】
図1,2に示すように、アッパボディ18には、吐出口11と、リリーフ口12と、ジェットポンプ供給口13と、端子挿込口16が設けられている。なお本明細書では、図1の状態で上下を規定する。このため、例えば、吐出口11は、燃料ポンプ10の上端に位置することになる。吐出口11は、図示しない燃料供給路によってエンジンに接続されている。リリーフ口12には、図示しないリリーフ弁が配置されている。燃料ポンプ10内の燃料の圧力が所定の圧力を越えるとリリーフ弁が作動して、燃料ポンプ10内の燃料がリリーフ口12より外部に排出される。これにより、燃料ポンプ10内の圧力が所定の圧力に維持される。ジェットポンプ供給口13は、図示しないジェットポンプに燃料を供給する。端子挿込口16内には、端子70が配置されている。端子挿込口16には、図示しない外部電源に一端が接続された配線(図示省略)の他端(コネクタ)が挿し込まれる。端子挿込口16に配線が挿し込まれると、外部電源と端子70とが電気的に接続される。
【0017】
なお、図2に示すように、アッパボディ18を平面視すると(すなわち、燃料ポンプ10の軸線方向の無限遠からアッパボディ18を見ると)、燃料ポンプ10の軸線と吐出口11を結ぶ直線に対して、リリーフ口12とジェットポンプ供給口13とが線対称に配置されている。すなわち、燃料ポンプ10の軸線と吐出口11を結ぶ直線の一方側にジェットポンプ供給口13が位置し、他方側にリリーフ口12が位置している。
【0018】
図3に示すように、燃料ポンプ10は、モータ部50とポンプ部30を備える。モータ部50はハウジング2内の上端側に配置されており、ポンプ部30はハウジング2内の下端側に配置されている。ポンプ部30は、ケーシング32とインペラ34を備える。ケーシング32は、ハウジング2の下端の開口を閉じる。ケーシング32の下端には、吸入口38が設けられている。吸入口38は、ケーシング32外とケーシング32内(すなわち、インペラ34が収容される空間)とを連通する。ケーシング32の上端には、ケーシング32内とモータ部50とを連通する連通孔(図示省略)が設けられている。ケーシング32内には、インペラ34が収容されている。
【0019】
モータ部50は、ポンプ部30の上方に位置する。モータ部50は、ブラシレスモータであり、三相モータである。モータ部50は、ロータ54とステータ60とを備える。なお、本実施例では、ステータ60の樹脂層66aとアッパボディ18とは一体化されている。ロータ54は、永久磁石を備える。ロータ54の中心には、シャフト52が貫通して固定されている。シャフト52の下端は、インペラ34の中心部に挿入され、貫通している。ロータ54は、シャフト52の両端部に配置された軸受け58,59によって支持され、回転軸Rを中心に回転可能となっている。
【0020】
図5に示すように、ステータ60は、6個のコア90と、3本の端子70と、樹脂層66を備える。6個のコア90は、環状に配置されており、略円筒形状を形成する。6個のコア90の中心部には、ロータ54が配置されている(図3参照)。6個のコア90は、2個のU相のコア90と、2個のV相のコア90と、2個のW相のコア90である。各コア90は、積層された複数枚のコアプレート62と、樹脂製の絶縁材64とを備える。コアプレート62は、磁性体の材料で作製されている。絶縁材64は、複数枚のコアプレート62のうち外周面を除く表面を覆っている。
【0021】
各コア90は、ティース72を備える。ティース72は、コア90の外周縁から、ステータ60の内周に向かって伸びている。ティース72は、ティース本体73とティース先端部74を備える。ティース本体73は、複数個のコア90によって形成される略円筒形状の外周縁から軸心に向かって伸びている。ティース本体73には、コイル線76が巻回されている。コイル線76は、端子70に接続されている。隣接する2個のコア90のティース72及びコイル線76の間には、樹脂層66が充填されている。ティース先端部74は、ティース本体73の内周側の端に連結されている。ティース先端部74は、ロータ54の外周に沿って伸びており、ロータ54の外周面に対向している。ティース先端部74のロータ54の外周面に対向する面は、絶縁材64によって覆われている。
【0022】
隣接する2個のコア90のティース72の間には、燃料通路100が設けられている。燃料通路100は、ティース72を覆う絶縁材64と、ティース72及びコイル線76の間に充填されている樹脂層66によって形成されている。燃料通路100は、ステータ60のポンプ部30側の端(即ち下端)からロータ54の上端よりも上方まで伸びている。燃料通路100は、後述する燃料室102とポンプ部30とを連通する。燃料通路100は、軸方向Rに沿って溝状に伸びている。燃料通路100は、軸方向Rに直交する断面で見たときに、ロータ54とステータ60との隙間に開口している。即ち、燃料通路100は、全長にわたって、ロータ54とステータ60との隙間に連通している。
【0023】
図4に示すように、燃料通路100は、一定区間L1と拡大区間L2とを備える。一定区間L1は、燃料通路100の上端から軸方向Rの中間位置までの区間である。一定区間L1において、燃料通路100の流路面積(軸方向Rに直交する断面における燃料通路100の面積)は一定である。拡大区間L2は、一定区間L1の下端(即ち軸方向Rの中間位置)からポンプ部30側の端(即ち下端)までの区間である。拡大区間L2において、燃料通路100の流路面積は、一定区間L1の下端(即ち吐出口11側)からポンプ部30側の端に向かって拡大している。
【0024】
一方、ステータ60の外周面はハウジング2の内周面に当接し、ステータ60の外周面とハウジング2の内周面との間には隙間が形成されていない。このため、ポンプ部30からモータ部50に流れた燃料は、ステータ60の外周面側を流れることはなく、ロータ54とステータ60の隙間及び燃料通路100のみを通って燃料室102に流れる。
【0025】
図3に示すように、ステータ60のポンプ部30側の端部(即ち下端部)と吐出口11側の端部(即ち上端部)とは、樹脂層66によって覆われている。ステータ60の上端部を覆う樹脂層66aとステータ60の下端部を覆う樹脂層66bとは、隣接するティース72の間に充填されている樹脂層66によって連結されている。樹脂層66は、コアプレート62の外周面を覆っていない。即ち、コアプレート62の外周面は露出している。樹脂層66は、成形型を用いて成形される。成形型内には、絶縁材64に覆われている6個のコア90が配置される。成形型は、コアプレート62の外周面を基準に、成形型に対するコア90の位置決めをすることができる。
【0026】
図4〜6に示すように、アッパボディ18とモータ部50の間には、燃料室102と、燃料室102から分岐する第1分岐流路104及び第2分岐流路106が形成されている。燃料室102は、燃料ポンプ10の軸線に直交する断面(すなわち、図5,6に示す断面)において中央に位置する。燃料室102は、ロータ54とステータ60の隙間及び燃料通路100と連通している。したがって、燃料室102には、ポンプ部30からモータ部50を通ってアッパボディ18に向かって流れる燃料が流入する。図5,6に示すように、吐出口11は、燃料室102に開口している。このため、燃料室102内の燃料がそのまま吐出口11に供給される。
【0027】
第1分岐流路104は、図4,6に示すように、燃料室102から燃料ポンプ10の径方向(すなわち、燃料ポンプ10の軸直方向)に伸びている。第1分岐流路104の一端は燃料室102に接続され、第1分岐流路104の他端はハウジング2に達している。図4に示すように、第1分岐流路104の燃料室102側の端部には絞り部105が形成されている。絞り部105の流路断面積(第1分岐流路104が伸びる方向と直交する断面の面積)は、第1分岐流路104の他の部分の流路断面積よりも小さい。また、第1分岐流路104の他の部分の流路断面積は、吐出口11の流路断面積よりも小さい。第1分岐流路104には、ジェットポンプ供給口13が開口している。ジェットポンプ供給口13が開口する位置は、絞り部105が形成された位置よりも外周側に位置している。したがって、絞り部105は、第1分岐流路104の燃料室102側の端部とジェットポンプ供給口13が開口する部分の間に位置している。このため、ジェットポンプ供給口13には、絞り部105を通過した後の燃料が供給される。
【0028】
第2分岐流路106は、第1分岐流路104と略同様に構成されている。具体的には、第2分岐流路106は、図4,6に示すように、燃料室102から燃料ポンプ10の径方向で、かつ、第1分岐流路104が伸びる方向と反対の方向に伸びている。すなわち、第1分岐流路104が伸びる方向と第2分岐流路106が伸びる方向は180°相違する。図6に示すように、第1分岐流路104が伸びる方向及び第2分岐流路106が伸びる方向は、燃料ポンプ10の軸線と吐出口11を結ぶ直線に対して直交している。したがって、第1分岐流路104と第2分岐流路106とは、燃料ポンプ10の軸線と吐出口11を結ぶ直線に対して線対称となっている。第2分岐流路106の一端は燃料室102に接続され、第2分岐流路106の他端はハウジング2に達している。図4に示すように、第2分岐流路106の燃料室102側の端部にも絞り部107が形成されている。絞り部107の流路断面積(第2分岐流路106が伸びる方向と直交する断面の面積)は、第2分岐流路106の他の部分の流路断面積よりも小さい。また、第2分岐流路106の他の部分の流路断面積は、吐出口11の流路断面積よりも小さい。第2分岐流路106には、リリーフ口12が開口している。リリーフ口12が開口する位置は、絞り部107が形成された位置よりも外周側に位置している。したがって、絞り部107は、第2分岐流路106の燃料室102側の端部とリリーフ口12が開口する部分の間に位置している。このため、リリーフ口12には、絞り部107を通過した後の燃料が供給される。
【0029】
なお、図7に示すように、第1分岐流路104及び第2分岐流路106が形成される位置は、隣接する端子70間に位置している。詳しくは、電圧受給端子70と接続するコイル溶接端子70a、及び、中性点を形成するコイル溶接端子70bの間に位置している。これによって、アッパボディ18とモータ部50の間の限られたスペースに、第1分岐流路104及び第2分岐流路106を配置することを可能にして、燃料ポンプ10の全高の短縮を可能にしている。なお、第1分岐流路と第2分岐流路を形成する位置は、図中のAの方向に限られず、Bの方向又はCの方向としてもよい。さらには、第1分岐流路と第2分岐流路の一方をA又はB又はCの方向に形成し、その形成した方向とは異なる方向(A又はB又はC)に第1分岐流路と第2分岐流路の他方を形成してもよい。
【0030】
次に、燃料ポンプ10の動作について説明する。外部電源から端子70を介して燃料ポンプ10に電力が供給されると、ロータ54が回転する。この結果、インペラ34が回転し、燃料タンクから吸入口38を通過して、ポンプ部30に燃料が吸入される。ポンプ部30に吸入された燃料は、ポンプ部30で昇圧され、モータ部50に流入する。モータ部50に流入した燃料は、ロータ54とステータ60との隙間及び燃料通路100を通過して燃料室102に流れる。燃料室102に流れ込んだ燃料の一部は、吐出口11からエンジンに吐出される。また、燃料室102に流れ込んだ燃料の他の部分は、第1分岐流路104を通ってジェットポンプ供給口13に流れ、また、第2分岐流路106を通ってリリーフ口12に流れる。
【0031】
燃料ポンプ10では、吐出口11が燃料室102に開口する一方、ジェットポンプ供給口13は第1分岐流路104に開口し、リリーフ口12は第2分岐流路106に開口する。したがって、ジェットポンプ供給口13やリリーフ口12から流出する燃料に圧力脈動が生じても、その圧力脈動が吐出口11から吐出される燃料に影響することを抑制することができる。特に、吐出口11の流路断面積は、第1分岐流路104の流路断面積よりも大きく、また、第2分岐流路106の流路断面積よりも大きくされている。さらに、第1分岐流路104の燃料室102側の端部に絞り部105が形成され、第2分岐流路106の燃料室102側の端部に絞り部107が形成されている。これらのため、吐出口11から吐出される燃料に、ジェットポンプ供給口13やリリーフ口12から流出する燃料の圧力脈動が影響することをより低減することができる。その結果、燃料配管の振動を抑制することができたり、吐出口11よりエンジンに安定して燃料を供給することができる。
【0032】
また、第1分岐流路104及び第2分岐流路106が伸びる方向は、燃料室102から燃料ポンプ10の径方向(燃料ポンプ10の軸直方向)となっている。一方、燃料室102から吐出口11に流れる燃料の方向は、燃料ポンプ10の軸方向と平行となっている。このため、第1分岐流路104及び第2分岐流路106への燃料の流れが、吐出口11から吐出される燃料の流れに影響することが抑制され、吐出口11よりスムースに燃料を吐出することができる。
【0033】
さらに、モータ部50では、ステータ54の内側(詳細には、ロータ54とステータ60との隙間及び燃料通路100)のみを燃料が流れ、ステータ54の外側(すなわち、ステータ60とハウジング2の間)を燃料が流れない。このため、燃料室102には、ロータ54とステータ60との隙間及び燃料通路100からのみ燃料が流入し、また、第1分岐流路104及び第2分岐流路106には、燃料室102からのみ燃料が流入する。したがって、吐出口11から燃料がスムースに流出すると共に、ジェットポンプ供給口13及びリリーフ口12から燃料をスムースに流出させることができる。その結果、燃料ポンプ10のポンプ効率を高めることができる。
【0034】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、これらは例示に過ぎず、特許請求の範囲を限定するものではない。特許請求の範囲に記載の技術には、以上に例示した具体例を様々に変形、変更したものが含まれる。
【0035】
(1)上記の実施例では、燃料ポンプ10の上面に吐出口11とジェットポンプ供給口13とリリーフ口12を設けたが、本発明はこのような例に限られない。例えば、図8に示すように燃料ポンプ10の上面に吐出口11とジェットポンプ供給口13のみを設けてもよいし、図9に示すように燃料ポンプ10の上面に吐出口11とリリーフ口12のみを設けてもよい。このような構成であっても、アッパボディ18とモータ部50の間に燃料室102及び分岐流路104又は106を形成することで、吐出口11から吐出される燃料に圧力脈動が生じることを抑制し、エンジンに燃料を安定して供給することができる。
【0036】
(2)上記の実施例では、分岐流路104,106の下側の壁面を上側に突とすることで絞り部105,107を形成していた(図4参照)が、本発明はこのような例に限られない。例えば、分岐流路104,106の上側の壁面を下側に突とすることで絞り部を形成してもよいし、あるいは、分岐流路104,106の両側面の一方を他方に向かって突とすることで絞り部を形成してもよい。
【0037】
(3)上記の実施例では、ステータ60の樹脂層66aとアッパボディ18とが一体化されていたが、ステータの樹脂層とアッパボディとは一体化されずに別体で構成されていてもよい。
【0038】
また、本明細書または図面に説明した技術要素は、単独であるいは各種の組合せによって技術的有用性を発揮するものであり、出願時請求項記載の組合せに限定されるものではない。また、本明細書または図面に例示した技術は複数目的を同時に達成するものであり、そのうちの一つの目的を達成すること自体で技術的有用性を持つものである。
【符号の説明】
【0039】
2:ハウジング
10:燃料ポンプ
11:吐出口
30:ポンプ部
38:吸入口
50:モータ部
54:ロータ
60:ステータ
66:樹脂層
70:端子
100:燃料通路
102:燃料室
104:第1分岐流路
106:第2分岐流路
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9