特許第5902073号(P5902073)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5902073半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902073
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/205 20060101AFI20160331BHJP
   C23C 16/24 20060101ALI20160331BHJP
   C23C 16/02 20060101ALI20160331BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   H01L21/205
   C23C16/24
   C23C16/02
   C23C16/455
【請求項の数】8
【全頁数】19
(21)【出願番号】特願2012-210757(P2012-210757)
(22)【出願日】2012年9月25日
(65)【公開番号】特開2014-67796(P2014-67796A)
(43)【公開日】2014年4月17日
【審査請求日】2015年5月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000001122
【氏名又は名称】株式会社日立国際電気
(74)【代理人】
【識別番号】100145872
【弁理士】
【氏名又は名称】福岡 昌浩
(74)【代理人】
【識別番号】100091362
【弁理士】
【氏名又は名称】阿仁屋 節雄
(72)【発明者】
【氏名】米林 雅広
(72)【発明者】
【氏名】吉野 昭仁
【審査官】 長谷川 直也
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2012/029661(WO,A1)
【文献】 特開2010−010513(JP,A)
【文献】 特開2008−124408(JP,A)
【文献】 特開2008−177289(JP,A)
【文献】 特開平03−064019(JP,A)
【文献】 特開平04−057319(JP,A)
【文献】 特開2012−049509(JP,A)
【文献】 特開2009−059889(JP,A)
【文献】 特開平05−267166(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/205−21/31、21/365、21/469、
21/86、
C23C 16/00−16/56
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
処理室内に収容した基板を第1温度に加熱した状態で、前記基板に対しジクロロシランガスを供給する工程と、前記ジクロロシランガスが供給された前記基板に対しジシランガスを供給する工程と、を複数回繰り返し行う第1工程と、
前記基板の温度を前記第1温度から前記第1温度よりも高い第2温度へ変更する工程と、
前記基板を前記第2温度に加熱した状態で、前記第1工程が施された前記基板に対し前記ジシランガスよりも熱分解温度の高いモノシランガスを供給する第2工程と、を備え、
前記第1温度を、前記モノシランガスが熱分解せずに前記ジシランガスが熱分解する300℃以上375℃以下の範囲内の温度とし、前記第2温度を、前記モノシランガスおよび前記ジシランガスが熱分解する400℃以上475℃以下の範囲内の温度とすることで、前記基板上に、ピンホールのないアモルファスシリコン膜を形成する半導体装置の製造方法。
【請求項2】
前記第1工程では、前記基板上に第1アモルファスシリコン膜を形成する請求項1に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項3】
前記第2工程では、前記第1アモルファスシリコン膜上に、第2アモルファスシリコン膜を形成する請求項2に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項4】
前記基板の表面には酸化膜が形成されており、前記第1アモルファスシリコン膜は、前記酸化膜上に形成される請求項2又は3に記載の半導体装置の製造方法。
【請求項5】
前記第1アモルファスシリコン膜の厚さを0.1nm以下とする請求項2乃至4のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項6】
前記半導体装置は、DRAMまたはFlashメモリーを含む請求項1乃至のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
【請求項7】
処理室内に収容した基板を第1温度に加熱した状態で、前記基板に対しジクロロシランガスを供給する工程と、前記ジクロロシランガスが供給された前記基板に対しジシランガスを供給する工程と、を複数回繰り返し行う第1工程と、
前記基板の温度を前記第1温度から前記第1温度よりも高い第2温度へ変更する工程と、
前記基板を前記第2温度に加熱した状態で、前記第1工程が施された前記基板に対し前記ジシランガスよりも熱分解温度の高いモノシランガスを供給する第2工程と、を備え、
前記第1温度を、前記モノシランガスが熱分解せずに前記ジシランガスが熱分解する300℃以上375℃以下の範囲内の温度とし、前記第2温度を、前記モノシランガスおよび前記ジシランガスが熱分解する400℃以上475℃以下の範囲内の温度とすることで、前記基板上に、ピンホールのないアモルファスシリコン膜を形成する基板処理方法。
【請求項8】
基板を処理する処理室と、
前記処理室内の基板に対しジクロロシランガスを供給するジクロロシランガス供給部と、
前記処理室内の基板に対しジシランガスを供給するジシランガス供給部と、
前記処理室内の基板に対しジシランガスよりも熱分解温度の高いモノシランガスを供給するモノシランガス供給部と、
前記処理室内の基板を加熱するヒータと、
前記処理室内に収容した基板を第1温度に加熱した状態で、前記基板に対しジクロロシランガスを供給する処理と、前記ジクロロシランガスが供給された前記基板に対しジシランガスを供給する処理と、を複数回繰り返し行う第1処理と、前記基板の温度を前記第1温度から前記第1温度よりも高い第2温度へ変更する処理と、前記基板を前記第2温度に加熱した状態で、前記第1処理が施された前記基板に対し前記ジシランガスよりも熱分解温度の高いモノシランガスを供給する第2処理と、を行わせ、その際、前記第1温度を、前記モノシランガスが熱分解せずに前記ジシランガスが熱分解する300℃以上375℃以下の範囲内の温度とし、前記第2温度を、前記モノシランガスおよび前記ジシランガスが熱分解する400℃以上475℃以下の範囲内の温度とすることで、前記基板上に、ピンホールのないアモルファスシリコン膜を形成するように、前記ジクロロシランガス供給部、前記ジシランガス供給部、前記モノシランガス供給部、および前記ヒータを制御するよう構成される制御部と、
を備える基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばDRAMやIC等の半導体装置の製造工程の一工程として、シリコンウエハ等の基板上に、例えば、a−Si(アモルファスシリコン)膜を形成する基板処理工程が行われることがある。係る基板処理工程では、処理室内に基板を搬入する工程と、シリコン含有ガスと塩素含有ガスとを基板上に供給する工程と、処理室内から基板を搬出する工程と、が実施される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−119644
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上述した手法を用いても、所望の膜が形成できないという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一態様によれば、処理室内で基板を処理する半導体装置の製造方法であって、前記基板に対し塩素含有ガスを供給する工程と、前記塩素含有ガスが供給された基板に対しシリコン含有ガスを供給する工程と、を複数回繰り返し行う第一基板処理工程と、該第一基板処理工程が施された基板に対し、シリコン含有ガスを供給する第二基板処理工程と、を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0006】
本発明の他の態様によれば、基板を処理する処理室を備える基板処理装置であって、前記基板に対し塩素含有ガスを供給する塩素含有ガス供給部と、前記基板に対しシリコン含有ガスを供給するシリコン含有ガス供給部と、少なくとも前記塩素含有ガス供給部と、前記シリコン含有ガス供給部とを制御する制御部と、を備え、前記制御部は、前記基板に対し塩素含有ガスを供給し、前記塩素含有ガスが供給された基板に対しシリコン含有ガスを供給することを複数回繰り返し行った後に、前記基板に対し、シリコン含有ガスを供給するよう前記塩素含有ガス供給部及び前記シリコン含有ガス供給部を制御する基板処理装置が提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明に係る半導体装置の製造方法、基板処理方法及び基板処理装置によれば、所望の膜を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の概略構成図である。
図2】本発明の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置が備える処理炉の概略構成図である。
図3】本実施形態の一実施形態に係る基板処理工程のフロー図である。
図4】本発明の一実施形態における効果を示すグラフである。
図5】本発明の一実施形態と比較例との関係を示すグラフ図である。
図6】本発明の一実施形態におけるデポレート時間と膜厚の関係を示すグラフ図である。
図7】比較例としてのデポレート時間と膜厚の関係を示すグラフ図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
<本発明の一実施形態>
以下に、本発明の一実施形態について説明する。
【0010】
(1)基板処理装置の構成
まず、本発明の一実施形態にかかる基板処理装置101の構成例について、図1を用いて説明する。図1は、本発明の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置の概略構成図である。図1に示すように、本実施形態にかかる基板処理装置101は、筐体111を備えている。シリコン等で構成されるウエハ(基板)200を筐体111内外へ搬送するには、複数枚のウエハ200を収納するウエハキャリア(基板収納容器)としてのカセット110が使用される。筐体111内側の前方(図中の右側)には、カセットステージ(基板収納容器受渡し台)114が設けられている。カセット110は、図示しない工程内搬送装置によってカセットステージ114上に載置され、また、カセットステージ114上から筐体111外へ搬出されるように構成されている。
【0011】
カセット110は、工程内搬送装置によって、カセット110内のウエハ200が垂直姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。カセットステージ114は、カセット110を筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させ、カセット110内のウエハ200を水平姿勢とさせ、カセット110のウエハ出し入れ口を筐体111内の後方を向かせることが可能なように構成されている。
【0012】
筐体111内の前後方向の略中央部には、カセット棚(基板収納容器載置棚)105が設置されている。カセット棚105には、複数段、複数列にて複数個のカセット110が保管されるように構成されている。カセット棚105には、後述するウエハ移載機構125の搬送対象となるカセット110が収納される移載棚123が設けられている。また、カセットステージ114の上方には、予備カセット棚107が設けられ、予備的にカセット110を保管するように構成されている。
【0013】
カセットステージ114とカセット棚105との間には、カセット搬送装置(基板収納容器搬送装置)118が設けられている。カセット搬送装置118は、カセット110を保持したまま昇降可能なカセットエレベータ(基板収納容器昇降機構)118aと、カセット110を保持したまま水平移動可能な搬送機構としてのカセット搬送機構(基板収納容器搬送機構)118bと、を備えている。これらカセットエレベータ118aとカセット搬送機構118bとの連携動作により、カセットステージ114、カセット棚105、予備カセット棚107、移載棚123の間で、カセット110を搬送するように構成されている。
【0014】
カセット棚105の後方には、ウエハ移載機構(基板移載機構)125が設けられている。ウエハ移載機構125は、ウエハ200を水平方向に回転ないし直動可能なウエハ移載装置(基板移載装置)125aと、ウエハ移載装置125aを昇降させるウエハ移載装置エレベータ(基板移載装置昇降機構)125bと、を備えている。なお、ウエハ移載装置125aは、ウエハ200を水平姿勢で保持するツイーザ(基板移載用治具)125cを備えている。これらウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連携動作により、ウエハ200を移載棚123上のカセット110内からピックアップして後述するボート(基板支持部材)217へ装填(チャージ)したり、ウエハ200をボート217から脱装(ディスチャージ)して移載棚123上のカセット110内へ収納したりするように構成されている。
【0015】
筐体111の後部上方には、処理炉202が設けられている。処理炉202の下端部には開口が設けられ、かかる開口は炉口シャッタ(炉口開閉機構)147により開閉されるように構成されている。なお、処理炉202の構成については後述する。
【0016】
処理炉202の下方には、ボート217を昇降させて処理炉202内外へ搬送する昇降機構としてのボートエレベータ(基板支持部材昇降機構)115が設けられている。ボートエレベータ115の昇降台には、連結具としてのアーム128が設けられている。アーム128上には、ボート217を垂直に支持するとともに、ボートエレベータ115によりボート217が上昇したときに処理炉202の下端部を気密に閉塞する蓋体としてのシールキャップ219が水平姿勢で設けられている。主に、ウエハ移載機構125(ウエハ移載装置125a、ウエハ移載装置エレベータ125b、ツイーザ125c)、ボートエレベータ115、アーム128により、少なくとも1枚のウエハ200を処理室201内外に搬入出する搬入出手段が構成される。
【0017】
ボート217は複数本の保持部材を備えており、複数枚(例えば、50枚〜150枚程度)のウエハ200を、水平姿勢で、かつその中心を揃えた状態で垂直方向に整列させて多段に保持するように構成されている。ボート217の詳細な構成については後述する。
【0018】
カセット棚105の上方には、供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット134aが設けられている。クリーンユニット134aは、清浄化した雰囲気であるクリーンエアを筐体111の内部に流通させるように構成されている。
【0019】
また、ウエハ移載装置エレベータ125bおよびボートエレベータ115側と反対側である筐体111の左側端部には、クリーンエアを供給するよう供給ファンと防塵フィルタとを備えたクリーンユニット(図示せず)が設置されている。図示しない前記クリーンユニットから吹き出されたクリーンエアは、ウエハ移載装置125a及びボート217の周囲を流通した後に、図示しない排気装置に吸い込まれて、筐体111の外部に排気されるように構成されている。
【0020】
次に、本実施形態にかかる基板処理装置101の動作について説明する。
【0021】
まず、カセット110が、図示しない工程内搬送装置によって、ウエハ200が垂直姿勢となりカセット110のウエハ出し入れ口が上方向を向くように、カセットステージ114上に載置される。その後、カセット110は、カセットステージ114によって、筐体111の後方に向けて縦方向に90°回転させられる。その結果、カセット110内のウエハ200は水平姿勢となり、カセット110のウエハ出し入れ口は筐体111内の後方を向く。
【0022】
カセット110は、カセット搬送装置118によって、カセット棚105ないし予備カセット棚107の指定された棚位置へ自動的に搬送されて受け渡されて一時的に保管された後、カセット棚105又は予備カセット棚107から移載棚123に移載されるか、もしくは直接移載棚123に搬送される。
【0023】
カセット110が移載棚123に移載されると、ウエハ200は、ウエハ移載装置125aのツイーザ125cによって、ウエハ出し入れ口を通じてカセット110からピックアップされ、ウエハ移載装置125aとウエハ移載装置エレベータ125bとの連続動作によって移載室124の後方にあるボート217に装填(チャージ)される。ボート217にウエハ200を受け渡したウエハ移載機構125は、カセット110に戻り、次のウエハ200をボート217に装填する。
【0024】
予め指定された枚数のウエハ200がボート217に装填されると、炉口シャッタ147によって閉じられていた処理炉202の下端部が、炉口シャッタ147によって開放される。続いて、シールキャップ219がボートエレベータ115によって上昇されることにより、ウエハ200群を保持したボート217が処理炉202内へ搬入(ローディング)される。ローディング後は、処理炉202にてウエハ200に任意の処理が実施される。かかる処理については後述する。処理後は、ウエハ200およびカセット110は、上述の手順とは逆の手順で筐体111の外部へ払出される。
【0025】
(2)処理炉の構成
続いて、本実施形態にかかる処理炉202の構成について、図2を用いて説明する。図2は、本発明の一実施形態で好適に用いられる基板処理装置101が備える処理炉202の概略構成図である。
【0026】
図2に示すように、処理炉202は、反応管としてのプロセスチューブ203を備えている。プロセスチューブ203は、内部反応管としてのインナーチューブ204と、その外側に設けられた外部反応管としてのアウターチューブ205と、を備えている。インナーチューブ204は、例えば石英(SiO)または炭化シリコン(SiC)等の耐熱性材料により構成されている。インナーチューブ204は、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。インナーチューブ204内の筒中空部には、基板としてのウエハ200を処理する処理室201が形成されている。アウターチューブ205は、インナーチューブ204と同心円状に設けられている。アウターチューブ205は、内径がインナーチューブ204の外径よりも大きく、上端が閉塞し下端が開口した円筒形状に形成されている。アウターチューブ205は、例えば石英または炭化シリコン等の耐熱性材料により構成されている。
【0027】
アウターチューブ205の下方には、アウターチューブ205と同心円状にマニホールド209が配設されている。マニホールド209は、例えばステンレス等により構成されている。マニホールド209は、上端及び下端が開口した円筒形状に形成されている。マニホールド209は、インナーチューブ204の下端部とアウターチューブ205の下端部とにそれぞれ係合している。マニホールド209は、インナーチューブ204の下端部とアウターチューブ205の下端部とをそれぞれ支持するように設けられている。なお、マニホールド209とアウターチューブ205との間には、シール部材としてのOリング220aが設けられている。マニホールド209がヒータベース251に支持されることにより、プロセスチューブ203は垂直に据え付けられた状態となっている。主に、プロセスチューブ203とマニホールド209とにより反応容器が形成される。
【0028】
処理室201内には、基板保持具としてのボート217が、マニホールド209の下端開口の下方側から搬入されるように構成されている。ボート217は、複数枚の基板としてのウエハ200を、水平姿勢であって互いに中心を揃えた状態で、所定の間隔で配列させて保持するように構成されている。ボート217は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料から構成されている。ボート217の下部には、円板形状をした断熱部材としての断熱板216が、水平姿勢で多段に複数枚配置されている。断熱板216は、例えば石英や炭化珪素等の耐熱性材料から構成されており、ヒータ206からマニホールド209への熱伝導を抑制する。
【0029】
マニホールド209の下端開口には、反応容器を気密に閉塞することが可能な炉口蓋体としてのシールキャップ219が設けられている。シールキャップ219は、例えばステンレス等の金属から構成されており、円盤状に形成されている。シールキャップ219の上面には、マニホールド209の下端と接合するシール部材としてのOリング220bが設けられている。シールキャップ219は、マニホールド209の下端に、反応容器の垂直方向下側から当接するように構成されている。
【0030】
シールキャップ219の下方(すなわち処理室201側とは反対側)には、ボート217を回転させる回転機構254が設けられている。回転機構254が備える回転軸255は、シールキャップ219を貫通するように設けられている。回転軸255の上端部は、ボート217を下方から支持している。したがって、回転機構254を作動させることにより、ボート217及びウエハ200を処理室201内で回転させることが可能である。また、この回転軸255を通してパージガス(N等)を流すこともできる。
【0031】
シールキャップ219は、プロセスチューブ203の外部に垂直に設けられた昇降機構としてのボートエレベータ115によって、垂直方向に昇降されるように構成されている。ボートエレベータ115を作動させることにより、ボート217を処理室201内外へ搬送(ボートローディング或いはアンローディング)させることが可能である。
【0032】
回転機構254及びボートエレベータ115には、駆動制御部237が電気的に接続されている。駆動制御部237は、回転機構254及びボートエレベータ115が所望のタイミングで所望の動作をするように制御する。
【0033】
プロセスチューブ203の外側には、プロセスチューブ203と同心円状に処理室201内を加熱する加熱機構としてのヒータ206が設けられている。ヒータ206は円筒形状であり、保持板としてのヒータベース251に支持されている。ヒータベース251は、マニホールド209を支持するように構成されている。
【0034】
プロセスチューブ203内には、温度検出器としての温度センサ263が設置されている。ヒータ206と温度センサ263とには、温度制御部238が電気的に接続されている。温度制御部238は、温度センサ263により検出された温度情報に基づいて、処理室201内の温度が所望のタイミングで所望の温度分布となるように、ヒータ206への通電具合を制御する。
【0035】
シールキャップ219には、第1ガス供給ノズル230aと第2ガス供給ノズル230bとがそれぞれ鉛直方向に貫通するように設けられている。第1ガス供給ノズル230aの下流端及び第2ガス供給ノズル230bの下流端は、それぞれインナーチューブ204の下方に開口しており、インナーチューブ204内に下方から上方に向けてガスを供給するように構成されている。第1ガス供給ノズル230aの上流端には、シリコン(Si)含有ガス及び不活性ガスを供給する第1ガス供給管270aの下流端が接続されている。また、第2ガス供給ノズル230bの上流端には、不活性ガスを供給する第2ガス供給管270bの下流端が接続されている。
【0036】
第1ガス供給管270aの上流側には、塩素含有ガスとしてのジクロロシラン(SiHCl)ガスを供給する塩素含有ガス供給管271、シリコン含有ガスとしてのジシラン(Si)ガスを供給するシリコン含有ガス供給管272、及びパージガス或いはキャリアガスとしての不活性ガスとして例えば、窒素(N)ガスを供給する第1不活性ガス供給管273の下流端が接続されている。塩素含有ガス供給管271には、上流側から順に、ジクロロシランガス供給源271a、流量制御部としてのマスフローコントローラ271b、バルブ271cが設けられている。シリコン含有ガス供給管272には、上流側から順に、ジシランガス供給源272a、マスフローコントローラ272b、バルブ272cが設けられている。第1不活性ガス供給管273には、上流側から順に、窒素ガス等の不活性ガスの供給源としての第1不活性ガス供給源273a、マスフローコントローラ273b、バルブ273cが設けられている。なお、第1不活性ガス供給管273から供給される不活性ガスは、処理室201内をパージするパージガスや、シリコン含有ガスを希釈して運搬するキャリアガスとして機能する。
【0037】
第2ガス供給管270bの上流側には、不活性ガスとしての窒素(N)ガスを供給する第2不活性ガス供給管274の下流端が接続されている。第2不活性ガス供給管274には、上流側から順に、窒素ガス等の不活性ガスの供給源としての第2不活性ガス供給源274a、マスフローコントローラ274b、バルブ274cが設けられている。なお、第2不活性ガス供給管274から供給される不活性ガスは、処理室201内をパージするパージガスとして機能する。
【0038】
主に、第1ガス供給ノズル230a、第1ガス供給管270a、塩素含有ガス供給管271、シリコン含有ガス供給管272、ジクロロシランガス供給源271a、ジシランガス供給源272a、マスフローコントローラ271b,272b、バルブ271c,272cにより成膜ガス供給系が構成される。また、主に、第1ガス供給ノズル230a、第2ガス供給ノズル230b、第1ガス供給管270a、第2ガス供給管270b、第1不活性ガス供給管273、第2不活性ガス供給管274、第1不活性ガス供給源273a,第2不活性ガス供給源274a、マスフローコントローラ273b,274b、バルブ273c,274cにより不活性ガス供給系が構成される。また、主に、成膜ガス供給系、不活性ガス供給系により、本実施形態に係るガス供給系が構成される。
【0039】
なお、上述のガス供給系の各構成部品には、ガス流量制御部235が電気的に接続されている。ガス流量制御部235は、ガス供給系の各構成部品が、所望のタイミングで所望の動作をするよう制御する。
【0040】
マニホールド209の側面部には、処理室201内を排気するガス排気管231が設けられている。ガス排気管231は、マニホールド209の側面部を貫通しており、インナーチューブ204とアウターチューブ205との隙間によって形成される筒状空間250の下端部に連通している。ガス排気管231の下流側(マニホールド209との接続側と反対側)には、上流側から順に、圧力検出器としての圧力センサ245、圧力調整装置としてのAPC(Auto Pressure Contoroller)バルブ242、真空ポンプ246が設けられている。主に、ガス排気管231、圧力センサ245、APCバルブ242及び真空ポンプ246により、本実施形態に係る排気系が構成される。
【0041】
なお、圧力センサ245及びAPCバルブ242には、圧力制御部236が電気的に接続されている。圧力制御部236は、圧力センサ245により検知した圧力情報に基づいて、処理室201内の圧力が所望のタイミングにて所望の圧力(真空度)となるように、APCバルブ242の開度を制御する。
【0042】
ガス流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237及び温度制御部238は、基板処理装置101全体を制御する主制御部239に電気的に接続されている。主に、ガス流量制御部235、圧力制御部236、駆動制御部237、温度制御部238及び主制御部239により、本実施形態に係る制御部としてのコントローラ240が構成されている。
【0043】
(3)基板処理工程
続いて、DRAMやIC等の半導体装置の製造工程の一工程として実施される基板処理工程について、主に図2及び3を用いて説明する。図3は、本実施形態の一実施形態に係る基板処理工程のフロー図である。
係る基板処理工程では、ウエハ200に対し塩素含有ガスを供給するステップと、塩素含有ガスが供給されたウエハ200に対しシリコン含有ガスを供給するステップとを複数回繰り返し行う処理工程と、該処理工程が施されたウエハ200に対し、シリコン含有ガスを供給する処理工程と、を備える。
例えば、ウエハ200に対し塩素含有ガスを供給するステップと、塩素含有ガスが供給されたウエハ200に対しシリコン含有ガスを供給するステップとを複数回繰り返し行い、ウエハ200に対し、アモルファス(非晶質)シリコン体若しくは第一アモルファスシリコン膜を形成する処理工程と、該処理工程が施されたウエハ200に対し、シリコン含有ガスを供給し、ウエハ200上若しくはアモルファスシリコン体、又は、第一アモルファスシリコン膜に対し、第二アモルファスシリコン膜を形成する第二基板処理工程と、を備える。
具体的には、例えば、上述の基板処理装置101を用い、ウエハ200上にアモルファスシリコン膜を形成する。以下の説明において、基板処理装置101を構成する各部の動作はコントローラ240によって制御される。
【0044】
(ウエハ搬入工程(S1、S2))
ず、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降させ、マニホールド209の下端を開口させる。そして、処理対象のウエハ200、例えば、複数枚のウエハ200を、ボート217に搬送し、装填(ウエハチャージ:S1)する。そして、複数枚のウエハ200を支持したボート217を、ボートエレベータ115によって上昇させて、処理室201内に搬入(ボートロード:S)する。そして、マニホールド209の下端開口部を、Oリング220bを介してシールキャップ219によりシールする。
【0045】
なお、処理対象のウエハ200表面には、例えば大気中の酸素成分に曝される等により自然酸化膜としてのSiO膜が予め形成されている。成膜の下地面に形成されたSiO膜は、薄膜の成長が開始される迄の時間を増大させる要因となる。すなわち、成膜初期では、基板表面上に薄膜が堆積されるのに時間的な遅れを発生する。この成膜されない時間をインキュベーションタイムとも呼ぶが、成膜の下地面に形成されたSiO膜は、薄膜の成長が開始される迄のインキュベーションタイムを増大させる要因となる。
【0046】
(減圧及び昇温工程(S3、S4、S5、S6))
続いて、真空ポンプ246を作動させ、APCバルブ242を開けることにより、ガス排気管231により処理室201内を真空排気する。この際、処理室201内が所望の圧力(処理圧力)となるように、圧力センサ245で検知(測定)した圧力情報に基づいてAPCバルブ242の開度をフィードバック制御する。また、ヒータ206を通電加熱してウエハ200表面の温度を昇温する。この際、処理室201内が所望の温度(処理温度)となるように、温度センサ263により検出された温度情報に基づいてヒータ206への通電量をフィードバック制御し、ウエハ200を温める。また、回転機構254を作動させ、ウエハ200の回転を開始させる。その際、バルブ274を開き、回転機構254の軸部からパージガス(N)を流し、ボート217及びウエハ200を回転させながら真空引きする。処理室201内の圧力調整、温度調整及びウエハ200の回転は、後述する第2の成膜工程が完了した後(S20)まで継続する。
【0047】
(第1の成膜工程、第1−1の処理工程(S7))
続いて、バルブ271c,273cを開き、マスフローコントローラ271bにより流量調整された塩素含有ガスとしてのジクロロシラン(SiHCl)ガスあるいは、元素Clを含む塩素含有ガスを処理室201内に供給する。元素Clを含む塩素含有ガスとしては、好適には、元素Clと元素Siを含む塩素およびシリコン含有ガスを供給すると良い。
【0048】
処理室201内に供給されたガス(ジクロロシランあるいは塩素含有ガス)は、インナーチューブ204内を下方から上方へと流れ、インナーチューブ204とアウターチューブ205との隙間によって形成される筒状空間250内を上方から下方へ流れた後、ガス排気管231からプロセスチューブ203外へと排出される。ジクロロシランガスあるいは塩素含有ガスが処理室201内を通過する際にウエハ200の表面に接触する。
【0049】
ジクロロシランガスあるいは塩素含有ガス供給時の処理室201内の温度範囲は300〜400℃、圧力範囲は到達圧力〜133Pa、ジクロロシランガスあるいは塩素含有ガス供給流量範囲は0〜1000sccm、Nパージガスの流量範囲は0〜1000sccmとし、回転機構軸部からのNパージガスの流量は300sccmが好ましい。例えば、処理温度375℃、圧力40Pa、処理ガスであるジクロロシランガス200sccmを5分間供給する。
【0050】
(パージ工程(S8、S9))
所定の時間が経過して所望の膜厚(厚さが例えば1nm以下)の薄膜がウエハ200上に形成されたら、バルブ271cを閉じ、処理室201内へのジクロロシランガスあるいは塩素含有ガスの供給を停止すると共に、処理室201内の残留ガスをガス排気管231から排気する。なお、バルブ273cを開けたままとすることで、処理室201内からの残留ガスの排出を促すと共に、処理室201内の雰囲気を窒素ガスによりパージする。
【0051】
(第1の成膜工程、第1−2の処理工程(S10))
所定の時間が経過して処理室201内からのジクロロシランガスあるいは塩素含有ガスの排出が完了したら、バルブ272c,273cを開き、マスフローコントローラ272bにより流量調整されたシリコン含有ガスとしてのSi(ジシランガスを、第1ガス供給管270aを介して処理室201内に供給する。この時の処理室201内の温度範囲は300〜400℃、圧力範囲は到達圧力〜133Pa、成膜ガス供給流量範囲は0〜500sccm、パージガス(N)の流量範囲は0〜1000sccmで、例えば成膜温度375℃、圧力40Pa、成膜ガス(ジシラン)流量は100sccmとして5分間供給する。
【0052】
(パージ工程(S11、S12))
その後、処理室201内の残留ガスを排気して(S11)、不活性ガス(例えば、Nガス)で処理室201内及び第1ガス供給管270aをパージする(S12)。
【0053】
処理室201内に供給されたガス(ジシランガス)は、インナーチューブ204内で混合して下方から上方へと流れ、インナーチューブ204とアウターチューブ205との隙間によって形成される筒状空間250内を上方から下方へ流れた後、ガス排気管231からプロセスチューブ203外へと排出される。ジシランガスが処理室201内を通過する際にウエハ200の表面に接触する。
【0054】
前述した第1−1の処理工程と第1−2の処理工程を合わせて1サイクルとして、複数回、所定のサイクル数実施し、基板上に核又は初期薄膜(サイクルシード)を形成する。所定のサイクル数の成膜工程を実施していなければ、再度S7へ戻り第1−1の処理工程、第1−2の処理工程を所定のサイクル数となるまで実施する。具体的には、例えば、アモルファスシリコン体若しくは第一アモルファスシリコン膜がウエハ200上に形成される。すなわち、ウエハ200表面もしくはウエハ200表面に形成されたSiO膜は、アモルファスシリコン体若しくは第一アモルファスシリコン膜に覆われた状態となる。アモルファスシリコン体若しくは第一アモルファスシリコン膜は、ウエハ200上に第二アモルファスシリコン膜を成長させ易くする。
【0055】
例えば、第1−1の処理工程において、処理ガスとして塩素含有およびシリコン含有ガスを用いた場合には、さらに、第1−2の処理工程において、ウエハ200上に供給されるジシラン中のシリコン原子を結晶核として形成させ易くする。
【0056】
(温度調整・安定・パージ工程(S14、S15))
所定のサイクル数の成膜工程を実施していれば、S14へ進み、供給ガス配管及び供給ノズル内のパージ及び、処理室201内の温度調節・温度安定・パージを行う。この場合は、第1成膜工程の成膜圧力以下でパージするのが好ましい。処理室201内を真空引きとNによりパージを繰り返してサイクルパージを行う。サイクルパージの回数は3〜10回が好ましい(S15)。
【0057】
第2成膜工程の成膜温度にするために、成膜温度調整を実施し、温度を安定させてウエハ200を所望の温度まで熱する。ボート217が回転しているため、ウエハ200の温度を均一にすることが可能である。成膜温度範囲は、第1成膜工程の300〜420℃又は、400〜525℃である。
【0058】
(第2の成膜工程(S16))
第2成膜工程では、第1成膜工程により形成されたウエハ200上の核又は初期成膜上に、例えばSiHやSiのようなシリコン含有ガスを供給し、第二アモルファスシリコン膜を形成する。
成膜条件は、処理室201内の温度範囲は、400〜525℃又は300〜420℃、圧力範囲は、真空到達〜133Pa又は、真空到達〜266Pa、成膜供給ガス流量範囲は、0〜500sccm、パージガス(N)流量範囲は、0〜1000sccmである。
SiHを供給する場合は、一般的に400℃から熱分解が開始される。よって、温度範囲は400〜500℃が好ましい。例えば、成膜温度475℃で圧力は90Pa、SiHのガス供給流量が150sccmで所定の時間供給し、成膜させる。
Si(ジシラン)の場合は、熱分解は300℃以下で開始される。よって、成膜温度が420℃以下で使用するのが好ましい。例えば、成膜温度が375℃、成膜圧力が100Pa、成膜供給ガスが100sccmで所定の時間を供給し、薄膜を形成させる(S16)
(パージ工程(S17、S18))
その後、処理室201内の残留ガスを排気し(S17)、不活性ガス(例えばN)で処理室201内及び供給ノズルをパージする(S18)。
所定の時間が経過して所望の膜厚の第二アモルファスシリコン膜がウエハ200上に形成されたら、バルブ272cを閉じ、処理室201内へのSiH又はSiの供給を停止すると共に、処理室201内の残留ガスをガス排気管231から排気する(S17)。その後、不活性ガス(例えば)で処理室201内及び供給ノズルをパージする。この場合、第2成膜工程の成膜圧力以下でパージするのが好ましい(S18)。
(降温および大気圧復帰工程(S20))
そして、ヒータ206への通電を停止して、処理室201内及びウエハ200を所定温度にまで降温させる。また、バルブ273c、274cを開けたままとすることで、処理室201内からの残留ガスの排出を促すと共に、処理室201内の雰囲気を窒素ガスに置換し、更にAPCバルブ242の開度を調整することで、処理室201内の圧力を大気圧に復帰させる(S20)。また、ウエハ200の回転を停止させる。
【0059】
(ボートアンロード工程(S21))
続いて、ボートエレベータ115によりシールキャップ219を下降させて、マニホールド209の下端を開口させるとともに、処理済のウエハ200を保持したボート217を下降させて、処理室201から引き出す(S21:ボートアンロー)。この際、バルブ273c,274cは開けたままとし、反応容器内に窒素ガスを常に流しておくことが好ましい。また、真空ポンプ246による真空排気は継続させたままとし、APCバルブ242の開度を調整して処理室201内の圧力を制御することが好ましい。そして、搬出したボート217から、一定の時間でウエハ200を冷却して、処理済のウエハ200を取り出して(S22:ウエハディスチャージ)、本実施形態にかかる基板処理工程を終了する。
【0060】
なお、本実施形態に係る第1−1の処理工程(S7〜9)の処理条件としては、
処理温度:300〜400℃、
ジクロロシランガス又は元素Cl含有ガス供給流量:1〜1000sccm
処理圧力:到達圧力〜133Pa
パージN流量範囲は0〜1000sccm
ボート回転機構軸部からのN流量は300sccm
が例示される。
例えば、成膜温度375℃、圧力40Pa、ジクロロシランガス又は元素Cl含有ガス供給流量200sccmを5分間供給する。
【0061】
また、本実施形態に係る第1−2の処理工程(S10〜12)の処理条件としては、
処理温度:300〜400℃、
処理圧力:到達圧力〜133Pa
ジシランガス供給流量:0〜500sccm
パージN流量範囲は0〜1000sccm
示される。
例えば、処理温度375℃、圧力40Pa、成膜ガス(ジシラン)流量100sccmを5分間供給する。
第1成膜工程におけるそれぞれの処理条件を、それぞれの範囲内のある値で一定に維持することで、ウエハ200上に島状の核又は極薄膜が形成される。
【0062】
アモルファスシリコン膜が形成されたウエハ200は、DRAMやFlashメモリー、Logic等の工程や後工程に使用され、成膜温度の低温化、例えば、400℃以下や微細化に伴う等の薄膜化への対応が求められている。一般的にアモルファスシリコン膜を形成するガス原料では、例えば525℃以下で、SiH(モノシラン)ガス又は、Si(ジシラン)ガスを使用し、アモルファスシリコン膜を形成する。例えば、SiHガスを使用する場合は、400℃から熱分解が開始され、成膜温度は400〜545℃でa−Si膜を形成する。しかしながら、a−Si膜の膜厚が、例えば、5nm以下のa−Si膜では、形成した薄膜にピンホールが発生し、連続膜を形成することが困難であった。
【0063】
また、ピンホール発生の抑制及び連続膜を形成出来ない理由として、基板上に成膜されない時間領域と、基板上に均一に成膜されない成膜遅れ時間領域があるためと考えられている。
図7は、比較例としてのデポレート時間と膜厚の関係を示すグラフ図である。縦軸はウエハ面内における膜厚を示している。横軸は成膜時間を示している。このように成膜初期では、基板表面上に薄膜が堆積されるのに時間的な遅れを発生する。
この成膜されない時間(インキュベーションタイム)では、基板上に島状の核が形成されていると考えられている。この核の大きさの違いが膜成長に影響し、薄膜のピンホールの発生に影響していた。また、低温にて成膜する場合、成膜温度が例えば400℃以下では、SiHガスの場合、膜が形成されないという問題があった。
【0064】
また、SiHの代用のガスとして、Siをガス使用した場合は、成膜温度が低いため、デポレート(成膜速度)が遅くなり、BCl(3塩化ホウ素)による触媒効果が必要とされ、B−Doped Si(ボロンドープシリコン)膜等が用いられる。B−Doped Si膜を用いる場合、B(ボロン)濃度が高いとエッチングレートが低くなり、成膜後の加工が難しくなるという問題があった。また、B拡散による電気特性の影響が懸念されている。
【0065】
これに対し、本実施形態では、前記の第1成膜工程で、ウエハ200に対し異なる2種類の処理ガスとして、例えば、異なる2種類のシリコン含有ガスを交互に供給し、基板上にアモルファスシリコン体若しくは第一アモルファスシリコン膜である、島状のような核及び初期成膜を形成させる。好適には、異なる2種類のシリコン含有ガスの一つに塩素元素を含むシリコン含有ガスを用いる。第1成膜工程で形成される島状のような核の大小は、第2成膜工程での膜形成を大きく左右する。よって、第1成膜工程では、基板の成膜温度の制約と第2成膜工程でどのような膜質や電気特性を持つ膜質及び形成させる膜厚で決定する必要性がある。また、島状のような核の大小の制御がしやすい。また、島状のような核を形成させる他、必要に応じ、或いは、一定の極薄膜、例えば0.1nm以下で初期薄膜を形成させて、第2成膜工程で所定の形成される膜厚を処理することも可能である。
【0066】
第2成膜工程では、基板の成膜温度制約や形成する膜厚で成膜ガスの選択性が容易となる。
【0067】
図4は、本発明の一実施形態における効果を示すグラフである。具体的には、第2成膜工程で成膜ガスモノシラン(SiH)を供給し、膜厚5nmを形成したときの、第1成膜工程での成膜圧力制御の効果を示す。縦軸はウエハ面内における膜厚均一性を示し、単位をプラスマイナス%(パーセント)で示している。横軸は第1成膜工程における処理室内の圧力値を示している。第1成膜工程では成膜圧力が低圧化で成膜形成に効果がある事を示している。すなわち、第1成膜工程における処理室内の圧力値を低くするとウエハ面内における膜厚均一性を向上させることができる。また、この時の基板の表面観察をしたところ、ピンホールは発生していないことを確認している。
【0068】
図5は、本発明の一実施形態と比較例との関係を示すグラフ図である。具体的には、本実施形態での第2成膜工程で、成膜ガスとしてジシラン(Si)を供給し、成膜を行った場合の効果を示す。本実施形態のように第1成膜工程と第2成膜工程とを連続して実施するように組み合わせた場合の方が、第1成膜工程と第2成膜工程とを各々独立させて実施する場合よりもデポレート(成膜速度)が向上し、ウエハ面内の膜厚均一性も向上していることが分かる。これは、第1成膜工程で、島状のような核を形成している事を示している。
【0069】
図6は、本発明の一実施形態におけるデポレート時間と膜厚の関係を示すグラフ図である。縦軸はウエハ面内における膜厚を示している。横軸は成膜時間を示している。比較例として、図5に示した条件にて行った場合に比べ、本実施形態を適用することでインキュベーションタイムを短縮することができることがわかる。
【0070】
<本発明の更に他の実施形態>
以上、本発明の実施形態を具体的に説明したが、本発明は上述の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々変更可能である。
【0071】
例えば、上述の実施形態では、第1ガス供給ノズル230aや第2ガス供給ノズル230bをそれぞれ1本ずつ設けるようにしていたが、本発明は係る形態に限定されない。例えば、第1ガス供給ノズル230aや第2ガス供給ノズル230bをそれぞれ複数本ずつ設けるようにし、そのときの各ノズルの長さを互いに異ならせるようにしてもよい。ウエハ200保持領域内の高さの異なる複数箇所からガスを供給するようにすれば、ガスの分解や消費によるローディング効果の発生を抑制でき、ウエハ200間の膜厚、膜質均一性を向上させることが可能となる。
【0072】
上述の実施形態では、ジシランガスを第1ガス供給ノズル230aから供給し、シランガスを第2ガス供給ノズル230bから供給するようにしていたが、本実施形態は係る形態に限定されず、同一のガス供給ノズルから供給するようにしてもよい。また、ジシランガスとシランガスを第1ガス供給ノズル230aから供給するようにしていたが、それぞれ別のガス供給ノズルから供給するようにしてもよく、ジシランガスを第2ガス供給ノズル230bから供給するようにしてもよい。また不活性ガスは他のガス供給ノズルから供給するようにしてもよい。なお、不活性ガスとしては窒素ガスに限らず、ArガスやHeガス等の他の希ガスを用いてもよい。
【0073】
上述の実施形態では、一度に複数枚の基板を処理するバッチ式の基板処理装置を用いて成膜する例について説明したが、本発明はこれに限定されず、一度に1枚または数枚の基板を処理する枚葉式の基板処理装置を用いて成膜する場合にも、好適に適用できる
また、上述した実施形態では、インナーチューブとアウターチューブを構成する形態で説明したが、インナーチューブのないアウターチューブのみを構成する形態であっても本発明は適用可能である。
【0074】
本実施形態に係る効果
本発明によれば、以下に示す1つまたは複数の効果を奏する。
【0075】
(a)本実施形態によれば、基板上の界面に発生するピンホール及びボイドの抑制・制御が可能となる。特に、アモルファスシリコン極薄膜のステップカバレッジにおいて、ウエハ上の界面に発生するピンホール及びボイドを抑制・制御が可能となる。
【0076】
(b)本実施形態によれば、アモルファスシリコン膜において、ウエハの成膜温度規制による成膜ガスの選択が可能となる。
【0077】
(c)本実施形態によれば、10nm以下、好適には5nm以下でのアモルファスシリコン薄膜形成が可能となる。
【0078】
(d)本実施形態によれば、均一に成膜されない領域及びインキュベーションタイムの短縮の改善効果がある。
【0079】
(e)アモルファスシリコン極薄膜、例えば5nm以下でピンホールなし及び連続性成膜を形成し、かつ、均一に成膜形成が可能となる。
<本発明の好ましい態様>
以下、本発明の好ましい態様について付記する。
【0080】
(付記1)
本発明の一態様によれば、
処理室内で基板を処理する半導体装置の製造方法であって、前記基板に対し塩素含有ガスを供給する工程と、
前記塩素含有ガスが供給された基板に対しシリコン含有ガスを供給する工程と、
を複数回繰り返し行う第一基板処理工程と、
該第一基板処理工程が施された基板に対し、シリコン含有ガスを供給する第二基板処理工程と、を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0081】
(付記2)
本発明の他の態様によれば、
基板を処理する処理室を備える基板処理装置であって、
前記基板に対し塩素含有ガスを供給する塩素含有ガス供給部と、
前記基板に対しシリコン含有ガスを供給するシリコン含有ガス供給部と、
少なくとも前記塩素含有ガス供給部と、前記シリコン含有ガス供給部とを制御する制御部と、
を備え、前記制御部は、前記基板に対し塩素含有ガスを供給し、前記塩素含有ガスが供給された基板に対しシリコン含有ガスを供給することを複数回繰り返し行った後に、前記基板に対し、シリコン含有ガスを供給するよう前記塩素含有ガス供給部及び前記シリコン含有ガス供給部を制御する基板処理装置が提供される。
【0082】
(付記3)
本発明のさらに他の態様によれば、
処理室内で基板を処理する半導体装置の製造方法であって、前記基板に対し塩素含有ガスを供給する工程と、
前記塩素含有ガスが供給された基板に対しシリコン含有ガスを供給する工程と、
を複数回繰り返し行い、前記基板に対し、アモルファスシリコン体若しくは第一アモルファスシリコン膜を形成する第一基板処理工程と、
該第一基板処理工程が施された基板に対し、前記シリコン含有ガスを供給し、前記基板上若しくは前記アモルファスシリコン体、又は、前記第一アモルファスシリコン膜に対し、第二アモルファスシリコン膜を形成する第二基板処理工程と、を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0083】
(付記4)
本発明のさらに他の態様によれば、
処理室内で基板を処理する半導体装置の製造方法であって、前記基板に対し塩素及びシリコン含有ガスを供給する工程と、
前記塩素及びシリコン含有ガスが供給された基板に対し前記塩素及びシリコン含有ガスとは異なるガス種のシリコン含有ガスを供給する工程と、
を複数回繰り返し行い、前記基板に対し、アモルファスシリコン体若しくは第一アモルファスシリコン膜を形成する第一基板処理工程と、
該第一基板処理工程が施された基板に対し、前記シリコン含有ガスを供給し、前記基板上若しくは前記アモルファスシリコン体、又は、前記第一アモルファスシリコン膜に対し、第二アモルファスシリコン膜を形成する第二基板処理工程と、を備える半導体装置の製造方法が提供される。
【0084】
(付記5)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好適には、
前記第一基板処理工程は、前記基板の温度が300℃以上400℃以下で実施される。
【0085】
(付記6)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好適には、
前記第二基板処理工程は、前記基板の温度が300℃以上525℃以下で実施される。
【0086】
(付記7)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好適には、
前記第一基板処理工程は、前記処理室内の圧力が1Pa以上133Pa以下で実施される。
【0087】
(付記8)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好適には、
前記第二基板処理工程は、前記処理室内の圧力が1Pa以上133Pa以下で実施される。
【0088】
(付記9)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好適には、
前記第一基板処理工程では、前記塩素含有ガスとしてジクロロシラン(SiHCl)ガスを供給する。
【0089】
(付記10)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好適には、
前記第一基板処理工程では、前記シリコン含有ガスとしてジシラン(Si)ガスを供給する。
【0090】
(付記11)
付記1の半導体装置の製造方法であって、好適には、
前記第二基板処理工程では、前記シリコン含有ガスとしてジシラン(Si)ガス若しくはモノシラン(SiHガスを供給する。
【0091】
(付記12)
本発明のさらに他の態様によれば、
処理室内で基板を処理する基板処理方法であって、前記基板に対し塩素含有ガスを供給する工程と、
前記塩素含有ガスが供給された基板に対しシリコン含有ガスを供給する工程と、
を複数回繰り返し行い、前記基板に対し、アモルファスシリコン体若しくは第一アモルファスシリコン膜を形成する第一基板処理工程と、
該第一基板処理工程が施された基板に対し、前記シリコン含有ガスを供給し、前記基板上若しくは前記アモルファスシリコン体、又は、前記第一アモルファスシリコン膜に対し、第二アモルファスシリコン膜を形成する第二基板処理工程と、を備える基板処理方法が提供される。
【符号の説明】
【0092】
101・・・基板処理装置
200・・・ウエハ(基板)
201・・・処理室
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7