(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
1種以上のエポキシ樹脂(E)と1種以上の両親媒性エポキシ樹脂硬化剤(H)とを、水中で相反転重合において反応させることによって得られるナノ多孔性ポリマー発泡体(NP1)の、運輸手段ならびに産業建設およびプラント建設における、断熱材としての使用であって、ただし、該ポリマー発泡体のバインダー含量は15〜39.9重量%の範囲であり、粉末ナノ多孔性ポリマー発泡体(NP2)を、ナノ多孔性ポリマー発泡体(NP1)の製造における相反転重合の間に添加し、ここで、該粉末ナノ多孔性ポリマー発泡体(NP2)は、1種以上のエポキシ樹脂(E)と両親媒性のエポキシ樹脂硬化剤(H)とを水中で相反転重合において反応させ、次いで粉末状に変換することによって得られる、使用。
(A)エポキシ化ポリエチレンオキシド、エポキシ化ポリプロピレンオキシドおよびポリエチレン-プロピレンオキシドからなる群から選択される、少なくとも1種のエポキシ化ポリアルキレンオキシド、
(B)ビスフェノールAエポキシドおよびビスフェノールFエポキシドからなる群から選択される、少なくとも1種のエポキシ化芳香族ヒドロキシ化合物、および
(C)ビスフェノールAおよびビスフェノールFからなる群から選択される、少なくとも1種の芳香族ヒドロキシ化合物
を含む混合物を反応させることによって中間体を生成させ、次いで、該中間体をポリアミン(P)と反応させることによって得られるエポキシ樹脂硬化剤(H)を使用する、請求項1に記載の使用。
【発明を実施するための形態】
【0008】
本発明の目的において、ナノ多孔性ポリマー発泡体(i)は、内部空洞を有するポリマーである。これらは、マクロ孔とミクロ孔の両方を有するスポンジ様の構造体であり、ミクロ孔が優勢であり、ミクロ孔は10〜500nm、特に10〜100nmの範囲の平均横断面を有する。
【0009】
本発明の目的において、ナノ多孔性ポリマー発泡体の「バインダー含量」は、ナノ多孔性ポリマー発泡体におけるバインダーの含量である。ここで、バインダーは、本特許出願の目的において、硬化剤(H)およびエポキシ樹脂(E)の反応生成物である。したがって、バインダー含量は、このようにして定義されるバインダーの全ポリマー発泡体系における割合である。
【0010】
本発明により使用されるナノ多孔性ポリマー発泡体(NP1)は、高い機械的強度と同時に低い熱伝導性を有する。これは、材料を、構造的、機械的な耐荷重性断熱材として使用するために、特に魅力的にする。
【0011】
〔エポキシ樹脂(E)〕
エポキシ化合物(E)は、1分子あたりに平均して少なくとも2個の末端または側部エポキシ基を有するポリエポキシドである。これらのエポキシ化合物は、飽和または不飽和のどちらであってもよく、脂肪族、脂環式、芳香族または複素環式であってよく、また、ヒドロキシル基を有していてもよい。これらは、混合および反応の条件下でどのような妨害性の2次反応をも引き起こさない置換基(例えば、アルキルまたはアリール置換基、エーテル基など)を含むこともできる。
【0012】
これらのエポキシ化合物は、好ましくは、多価(好ましくは二価)のアルコール、フェノール、これらのフェノールの水素添加生成物および/またはノボラック(酸性触媒の存在下での一価または多価フェノールとアルデヒド、特にホルムアルデヒドとの反応生成物)の水素添加生成物に基づくポリグリシジルエーテルである。
【0013】
これらのエポキシ化合物のエポキシ当量は、好ましくは85〜3200、特に170〜830の範囲である。ある物質のエポキシ当量は、1モルのオキシラン環を含む該物質の量(g)である。
【0014】
多価フェノールとしては、好ましくは、次の化合物が挙げられる:レゾルシノール、ヒドロキノン、2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン(ビスフェノールA)、ジヒドロキシジフェニルメタン(ビスフェノールF)の異性体混合物、テトラブロモビスフェノールA、4,4'-ジヒドロキシジフェニルシクロヘキサン、4,4'-ジヒドロキシ-3,3-ジメチルジフェニルプロパン、4,4'-ジヒドロキシビフェニル、4,4'-ジヒドロキシベンゾフェノール、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)エタン、1,1-ビス(4-ヒドロキシフェニル)イソブタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4-ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4-ヒドロキシフェニル)スルホンなど、ならびに、上記化合物の塩素化および臭素化生成物;ビスフェノールAがきわめて好ましい。
【0015】
また化合物(E)として、多価アルコールのポリグリシジルエーテルも適当である。このような多価アルコールの例は、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール(n=1〜20)、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセロール、イソソルビドおよび2,2-ビス(4-ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンである。
【0016】
また、化合物(F)として、ポリカルボン酸のポリグリシジルエーテルを使用することも可能であり、これらは、エピクロロヒドリンまたは同様のエポキシ化合物と、脂肪族、脂環式または芳香族ポリカルボン酸(例えば、シュウ酸、コハク酸、アジピン酸、グルタル酸、フタル酸、テレフタル酸、ヘキサヒドロフタル酸、2,6-ナフタレンジカルボン酸、および二量体化リノレン酸)とを反応させることにより得られる。その例は、アジピン酸ジグリシジル、フタル酸ジグリシジルおよびヘキサヒドロフタル酸ジグリシジルである。
【0017】
複数のエポキシ化合物(E)の混合物を使用することもできる。
【0018】
ナノ多孔性ポリマー発泡体(NP1)の製造において、上記のように、本発明の硬化剤(H)を水性媒体中でエポキシ化合物(E)と相反転重合(PIP)において反応させ、この目的において当業者に既知の追加の添加剤および/または加工助剤を任意に使用することもできる。その例は、顔料、セメント、砂利、脱気剤、消泡剤、分散剤、沈降防止剤、促進剤、遊離アミン、レベリング添加剤、伝導性改良剤である。
【0019】
〔エポキシ樹脂硬化剤(H)〕
本発明の目的において、両親媒性エポキシ樹脂硬化剤(H)は、親水性および疎水性の構造要素を有するエポキシ樹脂硬化剤である。
【0020】
25℃で水に自己乳化し、25℃で水にエポキシ樹脂(E)を乳化させることもできる両親媒性エポキシ樹脂硬化剤を使用することが好ましい。
【0021】
以下の成分:
(A)エポキシ化ポリエチレンオキシド、エポキシ化ポリプロピレンオキシドおよびポリエチレン-プロピレンオキシドからなる群から選択される、少なくとも1種のエポキシ化ポリアルキレンオキシド、
(B)ビスフェノールAエポキシドおよびビスフェノールFエポキシドからなる群から選択される、少なくとも1種のエポキシ化芳香族ヒドロキシ化合物、および
(C)ビスフェノールAおよびビスフェノールFからなる群から選択される、少なくとも1種の芳香族ヒドロキシ化合物
を含む混合物を反応させて中間体を生成させ、次いで、この中間体をポリアミン(P)と反応させることによって得られる硬化剤(H)を使用することが好ましい。
【0022】
1つの態様において、成分(A)、(B)および(C)のみを反応させて中間体を生成させ、この中間体をさらにポリアミン(P)と反応させる。
【0023】
さらなる態様において、のちにポリアミン(P)と反応させて硬化剤を生成させる中間体を、化合物(A)、(B)および(C)に加えて化合物(D)を用いて製造する。化合物(D)は、トリオールのトリグリシジルエーテルおよびジオールのジグリシジルエーテルからなる群から選択される化合物である。化合物(D)のベースとなる適当なジオールおよびトリオールの例は、以下のものである:エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、1,3-プロピレングリコール、1,4-ブチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、シクロヘキサンジオール、シクロヘキサンジメタノール、ネオペンチルグリコール、1,2,6-ヘキサントリオール、グリセロールおよびトリメチロールプロパン。
【0024】
〔化合物(A)〕
本発明の目的において、エポキシ化ポリエチレンオキシドは、ポリエチレンオキシドの2つの末端OH基を、例えば、エピクロロヒドリンとの反応によりオキシラン基に変換することによって得られる化合物である。使用するポリエチレンオキシドは、80〜3000の範囲の平均分子量を有してよく、これは、当業者に知られる方法で、2〜18個の炭素原子を有するアルキレンジオールへのエチレンオキシドの重合を開始することによって製造することができる。
【0025】
本発明の目的において、エポキシ化ポリプロピレンオキシドは、ポリプロピレンオキシドの2つの末端OH基を、例えばエピクロロヒドリンとの反応により、オキシラン基に変換することによって得られる化合物である。使用するポリプロピレンオキシドは、110〜3000の範囲の平均分子量を有してよく、これは、当業者に知られる方法で、2〜18個の炭素原子を有するアルキレンジオールへのプロピレンオキシドの重合を開始することによって製造することができる。
【0026】
本発明の目的において、ポリエチレン-プロピレンオキシドは、ポリエチレン-プロピレンオキシドの2つの末端OH基を、例えばエピクロロヒドリンとの反応により、オキシラン基に変換することによって得られる化合物である。使用するポリエチレン-プロピレンオキシドは、80〜3000の範囲の平均分子量を有していてよい。本発明の目的において、用語ポリエチレン-プロピレンオキシドは、エチレンオキシドおよびプロピレンオキシドの共重合によって得られる化合物を意味し、この場合、2つの反応物質の重合を、同時にまたはブロック的に行うことができ、プロピレンオキシドの重合および/またはエチレンオキシドの重合を、当業者に知られる方法で、2〜18個の炭素原子を有するアルキレンジオールにおいて開始する。
【0027】
化合物(A)を単独で、または互いに混合して使用することができる。
【0028】
〔化合物(B)〕
本発明の目的において、ビスフェノールAエポキシドは、通常、慣習的に、ビスフェノールAとエピクロロヒドリンとを反応させることによって、および/またはこれをさらなる反応によりビスフェノールAと重合させることによって得られる化合物である。したがって、これらの化合物は、ビスフェノールAジグリシジルエーテルとして、または、通常、エポキシ樹脂としても知られている。市販製品は、Shell製のEpikote 828、1001、1002、1003、1004などである。
【0029】
使用するビスフェノールAエポキシドの分子量は、380〜3000の範囲であることが好ましい。
【0030】
本発明の目的において、ビスフェノールFエポキシドは、通常、慣習的に、ビスフェノールFとエピクロロヒドリンとを反応させることによって、および/またはこれをさらなる反応によりビスフェノールFと重合させることによって得られる化合物である。したがって、これらの化合物は、ビスフェノールFジグリシジルエーテル、または、通常、ビスフェノールFエポキシ樹脂としても知られている。
【0031】
使用するビスフェノールFエポキシドの分子量は、350〜3000の範囲であることが好ましい。
【0032】
化合物(B)を単独で、または互いに混合して使用することができる。
【0033】
〔化合物(C)〕
ビスフェノールAは、当業者に周知であり、以下の式:
【0035】
ビスフェノールFも同様に当業者に周知である。
【0036】
化合物(C)を単独で、または互いに混合して使用することができる。
【0037】
〔化合物(P)〕
本発明の目的において使用するポリアミン(P)は、1分子あたり少なくとも2個の窒素原子および少なくとも2個の活性アミノ水素原子を有する第一級および/または第二級アミンである。脂肪族、芳香族、脂肪族-芳香族、脂環式および複素環式のジアミンおよびポリアミンを使用することができる。適当なポリアミン(P)の例は、以下である:ポリエチレンアミン(エチレンジアミン、ジエチレントリアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミンなど)、1,2-プロピレンジアミン、1,3-プロピレンジアミン、1,4-ブタンジアミン、1,5-ペンタンジアミン、1,3-ペンタンジアミン、1,6-ヘキサンジアミン、3,3,5-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、3,5,5-トリメチル-1,6-ヘキサンジアミン、2-メチル-1,5-ペンタンジアミン、ビス(3-アミノプロピル)アミン、N,N'-ビス(3-アミノプロピル)-1,2-エタンジアミン、N-(3-アミノプロピル)-1,2-エタンジアミン、1,2-ジアミノシクロヘキサン、1,3-ジアミノシクロヘキサン、1,4-ジアミノシクロヘキサン、アミノエチルピペラジン、ポリ(アルキレンオキシド)ジアミンおよびトリアミン(例えば、Jeffamine D-230、Jeffamine D-400、Jeffamine D-2000、Jeffamine D-4000、Jeffamine T-403、Jeffamine EDR-148、Jeffamine EDR-192、Jeffamine C-346、Jeffamine ED-600、Jeffamine ED-900、Jeffamine ED-2001など)、メタ-キシリレンジアミン、フェニレンジアミン、4,4'-ジアミノジフェニルメタン、トルエンジアミン、イソホロンジアミン、3,3'-ジメチル-4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、4,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2,4'-ジアミノジシクロヘキシルメタン、1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、メチレン架橋を介して連結されたポリ(シクロヘキシル芳香族)アミンの混合物(MBPCAAとしても知られる)、およびポリアミノアミド。ポリエチレンアミン、特にジエチレントリアミンが特に好ましい。
【0038】
化合物(P)を単独で、または互いに混合して使用することができる。
【0039】
〔中間体の製造〕
1つの態様において、化合物(A)および(B)を0.1:1〜5:1のモル比で使用して中間体を製造する。
【0040】
1つの態様において、中間体は、化合物(A)および(B)(これらの化合物はそれぞれ1分子あたり2個のオキシラン基を含む)の合計:化合物(C)(この化合物は1分子あたり2個のOH基を含む)のモル比が、1.1:1〜10:1の範囲であるように使用して製造する。言い換えれば、化合物(A)および(B)の合計中のオキシラン環:化合物(C)の反応性水素原子の当量比を、1.1:1〜10:1の範囲に設定する。
【0041】
さらなる態様において、即ち、硬化剤の製造過程において少なくとも1つの化合物(D)をも使用する場合、中間体の製造の際に、化合物(A)、(B)および(D)(これらの化合物はそれぞれ1分子あたり2個のオキシラン基を含む)の合計:化合物(C)(この化合物は1分子あたり2個のOH基を含む)のモル比が、1.1:1.0〜10.0:1.0の範囲内であるように設定する。言い換えれば、化合物(A)、(B)および(D)の合計中におけるオキシラン環:化合物(C)の反応性水素原子の当量比を、1.1:1.0〜10.0:1.0の範囲に設定する。
【0042】
明瞭化の理由から、以下に説明する。表現「当量比」は当業者によく知られている。当量という用語の背景にある基本的な考えは、反応に関与する物質について、所望の反応に関与する反応性基を考慮することである。当量比の言及は、使用する化合物(x)および(y)中の全反応性基の間の数値比を表す。ここで、反応性基とは、反応することができるできるだけ小さい基であると解されることを念頭に置かなければならず、したがって、用語反応性基は、用語官能基と同じではない。したがって、例えばH-酸性化合物の場合、OH基またはNH基はそのような反応性基を構成するが、同じ窒素原子上に2個の反応性H原子が位置するNH
2基はそうではないことを意味する。ここで、官能基NH
2中の2個の水素原子は反応性基であるとみなされるため、官能基NH
2は2個の反応性基(すなわち水素原子)を有する。
【0043】
1つの態様において、中間体の製造を、触媒、特にトリフェニルホスフィンまたはヨウ化エチルトリフェニルホスホニウムの存在下で行う。ここで、触媒の量は、化合物(A)、(B)および(C)の全体量に基づいて約0.01〜1.0重量%である。
【0044】
中間体のエポキシ価(%EpO)は、好ましくは10%EpO未満、特に5%EpO未満である。エポキシ価の定義およびその分析的測定についての詳細は、本明細書の実施例の項において見ることができる。
【0045】
〔硬化剤(H)の製造〕
上記に述べたように、中間体とポリアミン(P)とを反応させて硬化剤を製造する。
【0046】
1つの態様において、中間体およびポリアミン(P)を、(P)のアミノ窒素原子上の反応性H原子:中間体におけるオキシラン基の当量比が、4:1〜100:1の範囲内であるような量で使用する。
【0047】
中間体とポリアミンとの反応は、好ましくは、最初にポリアミンを過剰に導入して、実質的に1分子のポリアミン(好ましくはジエチレントリアミン)が、中間体化合物のエポキシ基のそれぞれと反応するのを確実にするようにして行う。遊離アミン含量をできるだけ少なくするために、過剰のアミンを蒸留によって除去することができる。
【0048】
〔相反転重合(PIP)〕
本発明の目的において、相反転重合(PIP)とは、以下を意味する。両親媒性エポキシ樹脂硬化剤(H)が乳化剤として機能する状態で、水中のエポキシ樹脂(E)の水性エマルジョンを最初に製造する。この系(以下、反応系とも称される)を、最初は水中油型エマルジョン(O/Wエマルジョン)である。このO/Wエマルジョンの油成分は、もちろんエポキシ樹脂である。
【0049】
それに続く樹脂および硬化剤の反応(重付加の意味での硬化)の過程において相反転が起こり、すなわち、反応系が、O/W型のエマルジョンからW/O型のエマルジョンに変化し、ここで、水は分散相として硬化ポリマーによって囲まれる。これは、重付加のために硬化剤が次第に疎水性になるため、硬化の過程において、硬化剤の元の乳化剤特性が変化することによる。
【0050】
完全な硬化の後で、有機マトリックスの空洞に水相を含む多孔性のポリマーマトリックスが存在する。この水相を、所望により、乾燥によって除去することができ、空気が充填された空洞が生じる。このための必要な条件は、相反転重合が起こること、および、反応系から水が逃げることができないことである。これは様々な方法で工業的に実現することができる。
【0051】
第1に、反応系を密閉型中に導入することができる。また、反応系を開放系中に導入した後で、例えば、(a)十分な大気湿度を気相(通常は周囲空気)との界面に存在させ、反応系の上層からの水の乾燥または損失を防ぐこと、あるいは(b)気相との界面を、例えばポリマーフィルムにより覆うことを確保してもよい。
【0052】
上記のPIPを行うための変法は損失のない態様であるが、反応系を開放系に導入するが、界面から気相への水の損失を妨げるために特別の措置を採らない、PIPを行うためのさらなる変法が存在する。この場合、水の損失により、この界面に密度の高い化学耐性構造(クリアワニスとも称され得る)を形成させ、この中で妨げられることなくPIPを行うことができるように、表面下に位置する反応系の一部に水障壁を形成する。反応系の完全な硬化後に、密度の高い化学耐性層(通常、0.1〜0.3mmの厚みである)を機械的方法により除去することができる。
【0053】
硬化した系がナノ多孔性構造であることは、得られた材料が透明ではなく白色であることから、視覚的に見ることができる。
【0054】
好ましい態様において、エポキシ樹脂(E)および硬化剤(H)を、2:1〜1:2の当量比で使用してPIPを行う。ここで、(E):(H)の当量比が1:1であることが特に好ましい。
【0055】
PIPは、O/Wエマルジョンが存在する初期相、およびW/Oエマルジョンの形成によって示される硬化相によって特徴付けられる。PIPを、0〜100%の大気湿度において行うことができる。PIP反応系の水分含量は、(全反応系に基づいて)95〜20重量%の範囲内で変化させてよい。
【0056】
必要に応じて増粘剤を反応系に添加することもできる。
【0057】
反応系の硬化は、広い温度範囲、好ましくは1℃〜99℃、特に5℃〜60℃で行うことができる。
【0058】
好ましい態様において、粉末ナノ多孔性ポリマー発泡体(NP2)を、本発明により使用するナノ多孔性ポリマー発泡体(NP1)の製造における相反転重合の間に添加し、ここで、該粉末ナノ多孔性ポリマー発泡体(NP2)は、1種以上のエポキシ樹脂(E)と両親媒性のエポキシ樹脂硬化剤(H)とを水中で相反転重合において反応させ、続いて粉末状に変換することによって得られる。この態様は、明らかに、得られたポリマー発泡体において「NP1マトリックス」中に「NP2アイランド」が取り込まれるように、ナノ多孔性ポリマー発泡体(NP1)の製造の過程における相反転重合の間に、粉末ナノ多孔性ポリマー発泡体(NP2)は、まず初めに製造され、次いで粉末状に導入され、任意に水で湿潤されること意味する。「NP2アイランド」のバインダー含量は、「NP1マトリックス」のバインダー含量よりも低いことが好ましく、この特定の配位の利点は、この方法が、有機ナノ発泡体において有機ナノ発泡体と称され得るコンポジットを与えることであり、意図される用途に最適な、鍵となる特性である熱伝導性および機械的強度を組み合わせて備えることを可能とする。
【0059】
本発明は、さらに、1種以上のエポキシ樹脂と両親媒性エポキシ樹脂硬化剤とを、水中で、相反転重合において反応させることにより得ることができるナノ多孔性ポリマー発泡体(NP1)を提供し、ここで、該ナノ多孔性ポリマー発泡体の製造における相反転重合の間に粉末ナノ多孔性ポリマー発泡体(NP2)が組み込まれ、ここで、該粉末ナノ多孔性ポリマー発泡体(NP2)は、1種以上のエポキシ樹脂と両親媒性エポキシ樹脂硬化剤との、水中、相反転重合における反応、続く粉末状への変換により得ることができ、ただし、該ポリマー発泡体のバインダー含量は、15〜39.9重量%の範囲である。
【0060】
1つの態様において、本発明のナノ多孔性ポリマー発泡体(NP1)は、防火特性を改善する物質を含む。これは、さらなる物質をナノ多孔性ポリマー発泡体中に組み込むことによって達成することができ、これを相反転重合の過程の間に行うことが特に有利であり得る。そのような適当な難燃性添加剤の例は、Cognis製の難燃剤 VP 5453/4である。
【0061】
1つの態様において、難燃性添加剤、疎水化剤および殺生物剤からなる群から選択される1種以上の添加剤をナノ多孔性ポリマー発泡体(NP1)中に組み込む。
【実施例】
【0062】
〔省略形〕
以下において、
・EEW=エポキシ当量(上記の通り)
・MW=平均分子量
・RPM=回転/分
・%=重量%(他に明示することがなければ)
【0063】
〔使用した原料〕
エポキシ樹脂(E):Chem Res E20 (Cognis GmbH)
硬化剤(H):以下の硬化剤H1を製造した:
〔硬化剤H1〕
ポリ(プロピレングリコール)ジグリシジルエーテル(EEW:326およびMW:652)44gを、20℃で、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(Cognis製のChemres E20、EEW:194)46.2g、ビスフェノールA14.0g、およびトリフェニルホスフィン0.1gと混合した。このようにして得られた混合物を160℃まで加熱し、エポキシ価が3.95%になるまで、この温度で約3.5時間撹拌した。次いで、60℃まで冷却し、該温度でジエチレントリアミン121.4gを添加した。発熱反応が弱まった後、反応混合物を再び160℃で2時間加熱した。
【0064】
過剰のジエチレントリアミンを、遊離アミンがもはや蒸留されなくなるまで、減圧下で留去した(200℃の下部温度まで、および10mバール未満の圧力まで)。次いで、混合物を90℃まで冷却し、十分に撹拌しながら水89.5gと混合した。
【0065】
これにより、2140mPasの粘度(ニート、ブルックフィールド、10rpm、40℃)、60%の固形分、および134のアミン価を有する、205.6gの透明な琥珀色液体を得た。
【0066】
〔使用実験例1〜3〕
エポキシ樹脂(E)および硬化剤(H)を、撹拌ビーカー(直径95mm、高さ120mm)に入れ、Pendraulik撹拌装置(モデルLM34)を設定1(約465回転/分)で用いて予備乳化した。使用した(E)および(H)の量を、表1に示す。均質な白色の着色は、適当な均質化を示した。続いて、水を数回に分けて添加した(個々の水の量を表1に示す)。撹拌速度は、塊の形成が全くないように設定した。予備乳化から処理までの合計時間は約7分間であった。エポキシ樹脂:硬化剤の当量比を1:1で使用して全ての実験を行った。
【0067】
NP1中におけるNP2の組み合わせ材料を製造するために、まず、より低いバインダー含量を有する材料を準備し、テフロン(登録商標)型内で、水の蒸発を避けるように覆って硬化させた。硬化時間は、55℃で24時間であった。55℃で48時間後に乾燥が終了した。材料を粉砕し、実験例2に示されるように水で湿潤し、続いて注意深く撹拌し、より高いバインダー含量を有するエマルジョン中に入れた。このようにして得られたエマルジョンをテフロン(登録商標)型中に注入し、実験例2に示されるように硬化した。
【0068】
実験例1〜3の詳細は表1に示され得る。実験例1
は実験例2で使用する粉末ナノ多孔性ポリマー発泡体の製造例であり、実験例2は本発明によるものである。実験例
3は比較例である。
【0069】
〔試料の準備〕
圧縮強さ測定用の試験試料を製造するために、離型剤T3(Ebalta製)でコートした適当なシリコーン型を使用した。熱伝導性測定用のプレートは、離型剤Loxiol G40(Cognis製)でコートしたテフロン(登録商標)型中で製造した。鋳造組成物を、脱型するまで覆ったが、気密されるような密閉は行わなかった。試験試料を48時間後に脱型し、乾燥には、55℃で約48時間を要した。
【0070】
〔熱伝導性測定〕
熱伝導性は、ISO8301(熱流束測定法に対応する)に従って測定した。プレート寸法は150mm×150mmであり、層厚は20〜25mmの間で変化した。NETZSCH製の測定装置モデルHFM 436/3/1Eを測定に使用し、接触圧力は65Nであった。選択した測定温度は10℃であり、20Kの温度差を有していた。これは、断熱材のための標準的な測定である。プレートを室温で7日間乾燥し、次いで55℃で一定重量まで後乾燥した。測定前に、試料を室温で少なくとも72時間保存し、標準条件下での特別の保存を行わなかった。
【0071】
〔圧縮強さの測定〕
圧縮強さの測定は、DIN53452またはDIN53454に基づく方法によって行った。標準条件下での保存を行わなかった。試料の幾何的な変化を正確に予測することができなかったので、それを考慮しなかった。Bluehill 2.0 ソフトウエアを備えたInstron製の汎用試験機、モデル5565を、測定装置として使用した。高さ27mmおよび直径12mmの寸法を有する円筒形試験試料を、圧縮試験に用いた。試験速度はDIN標準に示され得る。硬化は55℃で行った。
【0072】
【表1】
【0073】
注:
(1)「バインダー含量」の行は、単に情報として役立つ。ここでバインダーとは、単に硬化剤H1とエポキシ樹脂(Chem Res E20)との反応生成物である。したがって、バインダー含量は、系全体においてこのようにして定義されるバインダーの%である。実験例1のバインダー含量の算出を、例えば、次のように示すことができる。エポキシ樹脂とアミン硬化剤(硬化剤H1)との反応は、分子の一部の脱離を伴わない重付加であるため、得られるバイダーの量を得るためには樹脂および硬化剤の質量による割合を合計する。使用したエポキシ樹脂 Chemres E20は100%ベースを考慮する(79.8g)。使用した硬化剤H1は60%の固形分を有するので、0.6×88.0g=52.8gのみを考慮する。これにより、系中のバインダーの量は、52.8g+79.8g=132.6gとして得られる。系全体はさらに716.19gの水を含み、したがって、88.0g+79.8g+716.1g=883.9gを含む。よって、系全体中のバインダーの割合は、次のようになる:
バインダー(%)=132.6×100/883.9=15.00%。
(2)n.d.は、「測定せず」を意味する。
(3)d.i.は、「脱イオン化」を意味する。