特許第5902166号(P5902166)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902166
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】手術用ガイド
(51)【国際特許分類】
   A61F 2/46 20060101AFI20160331BHJP
   A61F 2/34 20060101ALI20160331BHJP
   A61B 17/56 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   A61F2/46
   A61F2/34
   A61B17/56
【請求項の数】15
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2013-524258(P2013-524258)
(86)(22)【出願日】2011年8月12日
(65)【公表番号】特表2013-537454(P2013-537454A)
(43)【公表日】2013年10月3日
(86)【国際出願番号】US2011047670
(87)【国際公開番号】WO2012021857
(87)【国際公開日】20120216
【審査請求日】2014年8月8日
(31)【優先権主張番号】61/480,552
(32)【優先日】2011年4月29日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/461,096
(32)【優先日】2011年1月13日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/374,053
(32)【優先日】2010年8月16日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/373,650
(32)【優先日】2010年8月13日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】397071355
【氏名又は名称】スミス アンド ネフュー インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100108453
【弁理士】
【氏名又は名称】村山 靖彦
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100089037
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邊 隆
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(72)【発明者】
【氏名】メイソン・ジェームズ・ベッテンガ
【審査官】 石田 宏之
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2008/0009952(US,A1)
【文献】 特開2010−082448(JP,A)
【文献】 特開昭60−108045(JP,A)
【文献】 米国特許出願公開第2005/0107799(US,A1)
【文献】 米国特許出願公開第2008/0009874(US,A1)
【文献】 米国特許第5976148(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 2/46
A61B 17/56
A61F 2/34
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
手術用ガイドであって、
特定の患者の寛骨臼の一部に合致するように構成された外面を備える第1の部分であって、前記患者の円索を収容するよう構成された第1の部分を具備し、
前記第1の部分は第2の部分を受けるよう構成されており、この第2の部分は、(i)前記手術用ガイドが前記寛骨臼に対して結合された際にアライメント軸線が前記寛骨臼に対して所定の向きで配置されるように前記アライメント軸線を規定しているアライメント部分と、(ii)前記軸線に沿ったガイドロッドの挿入を、患者固有挿入深さまでに制限するよう構成された深さ制限特徴部と、を備えることを特徴とする手術用ガイド。
【請求項2】
前記第1の部分は、円索を受け入れるよう構成されたリセスを有することを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項3】
前記第1の部分は、実質的に、三日月形状であることを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項4】
前記第1の部分は、前記寛骨臼に対して係合したとき、寛骨臼窩を覆わないような寸法とされていることを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項5】
前記第1の部分は、前記第1の部分が前記寛骨臼に対して結合された際に、寛骨臼窩の位置に一致する位置において、前記第1の部分を貫通する開口を有することを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項6】
前記第1の部分は、前記第1の部分が前記寛骨臼に対して結合された際に、寛骨臼切痕の位置に一致する位置において、スロットを有する壁を含むことを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項7】
前記スロットは、前記寛骨臼切痕にまたがることを特徴とする請求項6に記載の手術用ガイド。
【請求項8】
前記外面は、単一の、既定の向きで寛骨臼と係合するような寸法とされることを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項9】
前記第2の部分は前記第1の部分から分離可能であり、かつ、前記第2の部分は、既定の向きで前記第1の部分と係合するように構成されることを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項10】
前記アライメント部分は、前記アライメント軸線に沿って貫通孔を有するポストを含むことを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項11】
前記深さ制限特徴は、前記ポストの患者固有高さであることを特徴とする請求項10に記載の手術用ガイド。
【請求項12】
前記深さ制限特徴は、患者固有挿入深さを越えて、前記ガイドロッドの挿入を阻止するために器具と係合するよう構成されることを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項13】
前記第2の部分は、患者の組織に合致するような寸法とされた第2の外面を含むことを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項14】
前記深さ制限特徴は、前記寛骨臼の内側壁を貫通して突出しないように前記ガイドロッドの挿入を制限するような寸法とされていることを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【請求項15】
前記患者固有挿入深さは、前記寛骨臼の皮質性骨との前記ガイドロッドの確実な係合を可能とすることを特徴とする請求項1に記載の手術用ガイド。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は手術用ガイドに関する。
【0002】
本願は、2010年8月13日提出の「Method of Patient Specific Alignment Pin Placing for Acetabular Shell Alignment」という名称の米国仮出願番号第61/373,650号、2011年1月13日提出の「Systems, Methods, and Devices for Facilitating Acetabular Surgical Procedures」という名称の米国仮出願番号第61/461,096号、2010年8月16日提出の「Patient Specific Alignment Block for Placing an Acetabular Shell Alignment Pin」という名称の米国仮出願番号第61/374,053号、そして2011年4月29日提出の「Instrumentation Utilizing Patient-Matched Features」という名称の米国仮出願番号第61/480,552号の優先権ならびに完全な利益を主張する(その内容の全ては、この引用によって本明細書中に組み込まれる)。
【背景技術】
【0003】
外科医は、患者の寛骨臼内に寛骨臼カップなどのプロテーゼを移植するためにヒップ関節形成を実施する際に(あるいは、さもなければ、患者の組織内にプロテーゼを移植するために別な整形手術を実施する際に)、さまざまな手術用器具を使用する。たとえば、外科医は、寛骨臼を削り出し、これによって、その中に人工カップを定着させることができるソケットを形成するために、リーマ(あるいは別の切削デバイス)を使用するであろう。インパクターもまた、寛骨臼内の適所へとカップを押しやるために使用されることがある。
【0004】
手術中、外科医は、寛骨臼カップが最終的に位置決めされ、そして最大限に可能な精度で意図したとおりに方向付けられるように、可能な限り正確に器具が方向付けられるように注意を払う必要がある。さもなければ、寛骨臼カップが適切に位置決めされない場合(たとえば、それが過度に浅いかあるいは過度に大きなカップ傾斜角を有する場合)、患者は、寛骨臼カップあるいは寛骨臼カップと共に使用されるコンポーネントの過剰な損耗を経験するであろう。別な問題としては、脱臼、衝突、制限された動作範囲、感染、あるいはインプラントの拒絶反応が挙げられる。さらに、不適切なアライメントは、外科医が手術をフリーハンドで実施する場合に一層生じやすい。
【0005】
さらに、外科医は、寛骨臼を過度に穿孔したり、あるいは過度にリーマ処理しないように注意を払う必要がある。たとえば、ある外科的技術では、ガイドロッドが、手術の間、別な手術用器具(リーマあるいはインパクターなど)をガイドするために寛骨臼内に挿入される。ガイドロッドが寛骨臼内に過度に深く挿入された場合、ガイドロッドは寛骨臼の内側壁を傷付けるか、さもなければその強度を低下させ、あるいは寛骨臼の後方の別な組織を損傷させることがある。同様に、リーマなどの手術用器具は、寛骨臼内で骨を過剰に(あるいは過小に)リーマ処理することがある。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0006】
手術用ガイドは、少なくとも部分的に患者の組織(解剖学的構造)に合致する外面を含む。手術用ガイドは、所望の位置および/または方向で、患者の組織と係合できる。
【0007】
手術用ガイドは、特定の患者の寛骨臼と係合するよう構成された部分を含むことができる。手術用ガイドは、寛骨臼に対するアライメント軸線を有することができる。手術用ガイドは、ヒップの靭帯が存在する場合に、この手術用ガイドが寛骨臼と係合するように、ノッチ、スロット、リセスあるいは溝を有することができる。
【0008】
手術用ガイドは、たとえばドリリング、リーミング、あるいはアライメントピンなどのガイドロッドの挿入といった外科的処置の深さを制限する深さ制限特徴(機構)を含むことができる。深さ制限特徴は、寛骨臼の過剰ドリリングあるいは過剰リーミングを防止できる。ある実施形態では、深さ制限特徴は、手術用ガイドのモジュラーポストの特性、たとえば、ポストの予め決定された、患者適合高さであってもよい。ドリル、ドライバーあるいはリーマなどの手術用ガイドと共に使用するための手術用器具は、過剰ドリリングあるいは過剰リーミングを防止するために、調整可能な患者適合機械的ストッパーを有することができる。
【0009】
ある一般的な態様によれば、手術用ガイドは、特定の患者の寛骨臼の一部に合致するよう構成された外面を含む第1の部分を備える。この第1の部分は、患者の円索に対応するように構成される。第1の部分は第2の部分を受けるように構成されるが、この第2の部分は、(i)手術用ガイドが寛骨臼に結合された際にアライメント軸線が寛骨臼に対して所定の向きで配置されるように、アライメント軸線を有するアライメント部分と、(ii)患者固有挿入深さまでに軸線に沿ったガイドロッドの挿入を制限するよう構成された深さ制限特徴とを含む。
【0010】
実施形態は、任意選択で、以下の特徴の一つ以上を含んでもよい。たとえば、第1の部分は、円索を受け容れるよう構成されたリセスを有する。第1の部分は実質的に三日月形状である。第1の部分は、寛骨臼に係合したとき、寛骨臼窩を覆わないような寸法とされる。第1の部分は、この第1の部分が寛骨臼に結合された際に、寛骨臼窩の位置に対応する位置で第1の部分を貫通する開口を有する。第1の部分は、それが寛骨臼に係合したとき、寛骨臼切痕の位置に対応する位置にスロットを有する壁を備える。このスロットは寛骨臼切痕にまたがっている。
【0011】
上記外面は、単一の所定の向きで、寛骨臼と係合するような寸法とされる。第2の部分は、第1の部分から分離可能であり、かつ、第2の部分は、所定の向きで第1の部分と係合するよう構成される。上記アライメント部分は、アライメント軸線に沿った貫通孔を有するポストを含む。深さ制限特徴は、このポストの患者固有高さである。深さ制限特徴は、患者固有挿入深さを越えて、ガイドロッドの挿入を妨げるために、器具と係合するよう構成される。第2の部分は、患者の組織と合致するような寸法とされた第2の外面を含む。深さ制限特徴は、ガイドロッドの挿入を、寛骨臼の内側壁を貫通して突出しないように制限するような寸法とされる。患者固有挿入深さは、寛骨臼の皮質骨とのガイドロッドの確実な係合を可能とする。
【0012】
別な一般的態様によれば、方法は、ガイドを関節に結合するステップであって、ガイドは特定の患者の組織のためにカスタマイズされたものであるステップと、ガイドによって形成される軸線に沿ってかつガイドによって形成される挿入深さまで関節内にガイドロッドを挿入するステップと、関節からガイドを取り外すステップと、ガイドロッドのポジションに基づいて関節の一部をリーマ処理するステップとを含む。
【0013】
実施形態は、以下の特徴の一つ以上を含んでいてもよい。たとえば、ガイドロッドのポジションに基づいて関節の一部をリーマ処理することは、ガイドロッドとのリーマの係合によってリーマ処理深さが制限されるように関節の一部をリーマ処理することを含む。ガイドロッドのポジションに基づいて関節の一部をリーマ処理することは、ガイドロッドによって規定される軸線に沿って関節の一部をリーマ処理することを含む。ガイドによって規定される軸線に沿ってかつガイドによって規定される挿入深さまで関節内にガイドロッドを挿入することは、所定の挿入深さに達したとき、ガイドの一部と器具を係合させることを含む。ガイドによって規定される軸線に沿ってかつガイドによって規定される挿入深さまで関節内にガイドロッドを挿入することは、所定の挿入深さに達したとき、ガイドの一部との器具の係合に応答してガイドロッドを駆動することを停止させることを含む。
【0014】
ガイドは、ガイドロッドの挿入深さを制限するためにガイドロッド挿入器具と係合する特徴部を含む。ガイドは、患者の組織の一部に実質的に合致する外面を含む。ガイドは、外面を含む第1の部分と、第1の部分から分離可能な第2の部分とを含み、かつ、第2の部分は、軸線に沿った開口を有しかつガイドロッドの挿入深さを制限するためにガイドロッド挿入器具と係合するポストを含む。ガイドは、部分的にその第2の部分の周囲で延在する第1の部分を含み、かつ、関節からガイドを取り外すことは、第2の部分から第1の部分を分離させること、関節から第2の部分を取り外すこと、そして関節から第2の部分を取り外した後に関節から第1の部分を取り外すことを含む。ガイドロッドのポジションに基づいて関節の一部をリーマ処理することは、患者に関する最大リーマ処理深さを設定するためにリーマを調整することを含む。
【0015】
別な一般的な態様によれば、システムは、関節の一部に合致すると共に、ガイドが関節に結合された際に、軸線が関節に対して所定のポジションを有するように、この軸線を規定するガイドと、ガイドとの器具の係合がガイドロッドの挿入深さを制限するように、当該軸線に沿って関節内にガイドロッドを挿入するよう構成された器具と、リーマのガイドロッドとの係合が関節に対するリーマ処理深さを制限するように関節をリーマ処理するよう構成されたリーマとを含む。
【0016】
実施形態は、以下の特徴の一つ以上を含んでいてもよい。たとえば、リーマは、ガイドロッドを受け容れかつガイドロッドのアライメントに基づいて関節をリーマ処理するよう構成される。リーマは、ガイドロッドに対するリーマ処理深さを設定するために調整可能である。ガイドは、第1の部分と、この第1の部分に対して取り付け可能な第2の部分とを含む。第1の部分は、第2の部分の周りで部分的に延在し、かつ、第2の部分は、軸線に沿った孔を有するポストを含む。このポストは、ガイドロッドの挿入深さを制限するために器具と係合するよう構成される。ポストの高さは特定の患者のためにカスタマイズされ、かつ、ポストの端部は器具と係合するように構成される。器具は、ガイドとの係合に応答して、ガイドロッドを駆動するのを停止するよう構成される。ガイドとの係合に応答してガイドロッドを駆動するのを停止するために、器具は、ガイドロッドに結合されたドライバーへのパワーを低減するか、あるいはドライバーからガイドロッドに対して結合されたビットを解放するようによう構成される。
【0017】
一つ以上の実施形態の詳細を図面ならびに以下の説明において言及する。別な特徴、目的および利点は、以下の説明、図面ならびに特許請求の範囲の記載から明らかである。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】寛骨臼と係合された手術用ガイドの斜視図である。
図2】アライメントポストと結合された手術用ガイドの斜視図である。
図3】ドライバーと共に示す、手術用ガイドおよびアライメントポストの斜視図である。
図4】寛骨臼内に設置されたガイドロッドと共に示す、手術用ガイドおよびアライメントポストの斜視図である。
図5】ガイドロッドと共に示す、手術用ガイドの斜視図である。
図6】手術用ガイドおよびアライメントポストの斜視図である。
図7】寛骨臼内に挿入されたガイドロッドおよびガイドロッドに結合されたリーマドームの側断面図である。
図8】リーマドームの斜視図である。
図9】代替手術用ガイドの斜視図である。
図10図9の手術用ガイドの側断面図であり、ドライバーと共に使用するためのガイドロッドおよびコネクターも示されている。
図11】代替リーマドームの斜視図である。
図12】リーマのハンドルの斜視断面図である。
図13】インパクターの斜視断面図である。
図14】患者適合特徴部を有するデバイスを製造するためのプロセスを示す流れ図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
各図中、同様の参照数字は同じ構成要素を指し示す。
【0020】
図1および図2を参照すると、手術用ガイド10は、患者の関節に対する外科的アライメントを確立するために使用できる。手術用ガイド10は、患者の解剖学的構造のためにカスタマイズできる。手術用ガイド10は、所定の向きで患者の組織と係合する患者適合特徴部を含むことができる。
【0021】
ヒップ関節の関節形成のために、たとえば、手術用ガイド10、あるいはモジュラーアライメントポスト30のような取り外し可能なモジュール(図2)は、患者の組織と係合した際に、寛骨臼に対する寛骨臼埋め込み軸線を規定できる。手術用ガイド10あるいは取り外し可能なモジュールはまた、たとえば、ガイドロッドの挿入のためのあるいは寛骨臼をリーマ処理するための患者固有深さを確立する患者適合特徴を含むことができる。
【0022】
本明細書で説明する技術およびデバイスは概して患者の寛骨臼への処置のために構成されるが、この技術およびデバイスはまた、大腿骨頭部、関節窩、上腕骨、橈骨、尺骨、腓骨、脛骨、近位大腿骨、足、踝関節、手首、四肢、あるいはその他の骨性あるいは軟骨質部位といった、組織の別な部分への処置において使用可能である。
【0023】
患者の組織の特徴は、磁気共鳴イメージング(MRI)、X線(デジタルX線を含む)、超音波、コンピュータートモグラフィー(CT)、あるいはその他の技術によって獲得したイメージングデータを用いて示すことができる。イメージングデータは、患者の組織の三次元モデルを創出するために処理でき、そして患者の組織の重要な特徴を特定することができる。上記モデルによって示される表面および輪郭に基づいて、デバイスの表面、輪郭、寸法およびその他の特徴を、図14に関してさらに説明するように、患者の組織に適合するように製造できる。
【0024】
図1および図6を参照すると、ガイド10は、患者の寛骨臼72の少なくとも一部に合致するかあるいは実質的に合致する患者適合外面11を含む。図示する例では、患者適合面11のジオメトリーは、実質的な合致を容易にし、あるいは、さもなければ、実質的に独特のポジションおよび/または向きで(たとえば、単一のポジション、バージョン、傾斜、および/または寛骨臼72内でのその他の回転ポジションで)特定の患者の寛骨臼72にフィットする。患者適合面11はガイド10の全外面にわたって連続的に延在する必要はない。むしろ、外面の選ばれた部分が患者適合面11を含んでいてもよい。患者適合面11は、患者の寛骨臼72に対するガイド10の全体的安定性を改善するためにテクスチャー加工されてもよい。たとえば、テクスチャー加工は、患者の寛骨臼72と患者適合面11との間の摩擦を増大させる、セレーション、ポイント、クロスハッチ、溝、リッジ、バンプ、あるいは返しを含んでいてもよい。
【0025】
ガイド10は寛骨臼72内に実質的にあるいは完全に収容されるような寸法とすることができる。ある実施形態では、ガイド10は、寛骨臼72を越えて延在でき、かつ、(たとえば、寛骨臼縁74および骨盤70の別な非関節面を含む)患者の骨盤70の別な部分と合致するよう構成された患者適合面を含むことができる。ガイド10はまた、寛骨臼72に対してガイド10を固定するためにピン20あるいは別なファスナーをそれぞれ受けることができる一つ以上の孔18を有することができる。
【0026】
ガイド10は、開口12およびスロット16を有する側壁14を含む。開口12は、ガイド10の概ね中心位置を通るように形成できる。スロット16は開口12からガイド10の外縁17へと形成でき、こうして、ガイド10の中心を通ってガイド10の周面あるいは外縁17へと至る開放チャネルが形成される。ガイド10は、こうして、外縁17がスロット16によるものを除いて欠けていない実質的に三日月形状とすることができる。代替例として、構造的強度増大のために、サポート構造体がスロット16を横切って延在できる。たとえば、サポート構造体(図示せず)は、ガイド10の縁の周面に切れ目が存在しないように外縁17に沿って延在できる。
【0027】
開口12およびスロット16の位置は、ガイド10が寛骨臼72と係合したときに、特定の組織部分に合致できる。たとえば、開口12および/またはスロット16は、円索に対応する位置において形成できる。ガイド10は、したがって、骨盤70と係合したとき、患者の円索を収容するような寸法とすることができる。ガイド10は、開口12、スロット16、および/またはその外面におけるリセス内に円索を受け容れることができる。この結果、外科医は、ガイド10を寛骨臼内に挿入するために円索を除去する必要がない。
【0028】
同様に、ガイド10は、それが寛骨臼72と係合したときに、開口12およびスロット16の位置が患者の寛骨臼窩の位置に対応するような寸法とすることができる。開口12および/またはスロット16の位置によって、ガイド10が寛骨臼72と係合したときに、寛骨臼窩が部分的に覆われていないか、あるいは実質的に完全に覆われていないようにすることができる。壁14はまた、骨盤70の寛骨臼切痕76に対応する位置にスロット16を有することができる。たとえば、スロット16は、ガイド10が寛骨臼72と係合したときに、寛骨臼切痕76にまたがることができる。ある実施形態では、ガイド10の外面(これは、患者適合面11と同一の広がりを持っていても、もっていなくてもよい)は、スロット16が寛骨臼切痕76において整列した状態で、ガイド10の中心の周りで少なくとも270度に延在することができる。
【0029】
開口12を有する壁14は、モジュラーアライメントポスト30を受けるように構成できる。ガイド10およびアライメントポスト30は分離可能であってもよい。モジュラーポスト30の代替例として、ガイド10およびポストあるいは別なアライメント機構が単一の一体ユニットとして形成されてもよい。
【0030】
ポスト30は、寛骨臼72に当接してもよいが、それに当接する必要はない。ある実施形態では、ポスト30の端部31は、寛骨臼72の一部に実質的に合致する患者適合面を含む。したがって、ポスト30の端部31は、ただ一つのポジションおよび/または向きで寛骨臼72と係合できる。ポスト30の患者適合面は、ガイド10内でのポスト30の所望の回転ポジションを確立するために、患者の特定の組織に十分に合致するジオメトリーを有することができる。
【0031】
壁14は、所定の向きで、ポスト30に対して結合するための係合構造体を含むことができる。したがって、患者の組織に対するポスト30のポジションは、ガイド10とのポスト30の係合によって決定可能である。付加的あるいは代替構造体を、開口12に対するポスト30の所望の回転方向の向きおよび/または開口12内でのポスト30の所望の深さを確立するために付与することができる。たとえば、ガイド10の側壁14およびポストの側壁32(あるいはそれと関連付けられた他の構造体)の一方または両方が、開口12内でのポスト30の所望の深さおよび/または開口12に対するポスト30の所望の回転方向の向きを確立するように形成され、寸法とされ、配置され、かつ/または方向付けられてもよい。側壁14および32は、回転方向の向きおよび開口12に沿ったポスト30の深さの一方または両方を制限するために相互作用するキー構造体を備えていてもよい。
【0032】
ポスト30は、ガイド10およびポスト30が寛骨臼72に結合されたとき、アライメント軸線35が寛骨臼72に対して所定の向きで配置されるように、アライメント軸線35を有することができる。ポスト30は、寛骨臼72内に挿入するためのガイドロッドあるいはドリルビットを受けるための開口34を有することができる。開口34の向きは、それがガイドロッドの所望の経路と同一直線上にあるように、患者固有データに基づいて手術前に決定できる。
【0033】
ポスト30は、寛骨臼72内にガイドロッドが差し込まれる深さを制限するために手術用器具と係合するよう構成された深さ制限特徴部を含んでいてもよい。この深さ制限特徴部は、たとえば、ポスト30の端部36であってもよく、これは、ポスト30の長さLによって設定される寛骨臼72に対するポジションを有する。ポスト30の端部36は、リーマ処理あるいは穿孔あるいはガイドロッドの挿入を制限するために、手術用器具と相互作用するよう構成することができる。たとえば、端部36は、ガイドロッド用のドライバーといった器具がさらに前進するのを阻止する機械的ストッパーとして機能し得る。端部36はまた、手術用器具の前進を終わらせるためにスイッチあるいはその他の機構と係合することができる。
【0034】
ポスト30の長さLは、たとえば、特定の患者に関して決定された所望のドリル深さ、挿入されるガイドロッドの周知の特性、そして使用される器具の特性に基づいて、決定できる。ガイドロッドの所望の挿入深さは、患者の骨盤70に関するイメージングデータを用いて決定されたモデルによって示されるように、患者の骨性組織から決定されてもよい。たとえば、所望の挿入深さは、ガイドロッドが骨盤の皮質骨と安定的かつ確実な係合状態に達する十分な深さを実現するように選択できる。さらに、挿入深さは、ガイドロッドが寛骨臼72の内側壁を貫通して突出しないように選択できる。
【0035】
ある実施形態では、ガイドロッドのある特徴部は、ガイドロッドの挿入後、寛骨臼72のリーマ処理深さを制限できる(図7参照)。したがって、寛骨臼72の所望のリーマ処理深さはまた、長さLの選択において考慮されてもよい。
【0036】
ポスト30は患者固有挿入深さを規定するためにカスタム製造されてもよい。これに代えて、ポスト30は、増加的に変化する長さを有する標準的なサイズを備えた一式のポストから選択されてもよい。外科医は、したがって、患者固有挿入深さを設定するために、患者にとって適切な長さLを提供するポスト30を選択できる。
【0037】
ある実施形態では、深さ制限特徴部は、寛骨臼72に対するポスト30の端部36のポジション以外の特徴部であってもよい。たとえば、深さ制限特徴部は、これに代えて、側壁32の構造体あるいは開口34内の構造体であってもよい。代替例として、深さ制限特徴部はガイド10の一部であってもよい。
【0038】
図1ないし図5を参照すると、外科医はガイド10およびポスト30を用いて所定の外科的アライメントを確立できる。図1を参照すると、外科医は寛骨臼72内にガイド10を挿入し、そしてガイド10が寛骨臼72と係合するようにガイド10の向きを調整している。ガイド10は円索に適合するので、外科医は円索を除去する必要はない。外科医は、続いて、寛骨臼72に対してガイド10を固定するために、孔18を経て一つ以上のピン20を挿入できる。
【0039】
図2を参照すると、外科医はガイド10の開口12内にポスト30を挿入している。ポスト30は、たとえば、寛骨臼72との係合および/またはガイド10の側壁14との係合によって、安定した所定のポジションに配置できる。所定のポジションでは、ポストは外科処置用のアライメント軸線35を規定し、かつ、ガイドロッドの挿入を患者固有深さまでに制限するような寸法とされる。
【0040】
ある実施形態では、アライメント軸線35は寛骨臼窩内に延在し、したがってポスト30は寛骨臼窩を越えて配置される。ポスト30およびアライメント軸線35は、これに代えて、寛骨臼72の異なる部分において確定されてもよく、中央に配置される必要はない。
【0041】
図3および図4を参照すると、外科医は、ガイドロッド60をポスト30の開口34内に挿入し、アライメント軸線35に沿ってガイドロッド60を整列させている。外科医はドライバー50あるいはその他の器具を、寛骨臼72内へとガイドロッドを前進させるために使用する。ドライバー50は、外科医が寛骨臼72あるいは患者の組織の別な部分内にガイドロッド60を前進させることを助ける、(動力式であろうと手動式であろうと)いかなるツールであってもよい。
【0042】
ガイドロッド60は、寛骨臼72内に挿入されかつこれによって別な手術用器具のためのガイドとして機能するように少なくともある程度の距離だけ突出する、いかなるロッド、シャフト、あるいはピンであってもよい。望むならば、ガイドロッド60は、寛骨臼72内で骨と係合するための構造体(たとえばネジ山)を有することができる。ある実施形態では、ガイドロッド60は、それを取り外し可能なドライバー50によって寛骨臼内に回転によって押し込むことができるような一端にネジ山を備えた長尺なピンである。取り外し可能なドライバー50およびガイドロッド60はいずれも、ガイドロッドの回転動作へとドライバーの回転動作を変換するために、互いに相互作用するための構造体を含み得る。たとえば、ガイドロッド60は、二つの構造体を互いに結合するために、ドライバー50の適切な形状の孔内に収まるための平坦な部分を備えたシャンクを含んでいてもよい。
【0043】
いったんドライバー50のショルダーがポスト30の端部36に当接すると、ドライバー50は、さらに寛骨臼72内にガイドロッド60を前進させることができない。したがって、ポスト30とのドライバー50の係合は、オーバードリリングを、あるいはガイドドリルの過度に深い挿入を阻止する。さらに、ドライバー50がポスト30と係合するまでガイドロッド60を挿入することによって、外科医は、ガイドロッド60が組織に十分に入り込み、好ましい、すなわち患者固有深さに達した状態を確実に得ることができる。
【0044】
ある実施形態では、ポスト30に対するドライバー50の係合は、さらなる挿入を制限するために、ドライバーからピンを外すことができる。代替例として、ポスト30との係合は、さらなる挿入を制限するために、動力式ドライバーへの電力をカットするスイッチを起動させることができる。
【0045】
図4を参照すると、ドライバー50は取り外され、そしてガイドロッド60が、寛骨臼72内に所望のドリル深さに挿入された状態で示されている。
【0046】
図5を参照すると、ポスト30はガイドロッド60の周囲から取り外すことが、あるいはそこから滑らせて外すことができ、ガイドロッドは適所に残る。ある実施形態では、ガイド10に対するポスト30の回転方向の向きは、患者の特定の組織に対するポスト30の高さに影響を与え、そして、(たとえば端部31における)ポスト30の患者適合面は、ポスト30の高さが、患者の組織に配置されたとき、手術前プランと一致することを保証することを容易にし得る。
【0047】
外科医は、いったんガイドロッド60が寛骨臼72内に挿入されると、ガイド10を取り外すことができる。ガイド10によって形成されたスロット16は、ガイド10の周面に対して開口する。この開口は、ガイドロッド60のポジションおよび/または向きを乱す実質的なリスクを伴わずに、ガイドロッド60からのガイド10の取り外しを容易にする。外科医は、必要ならば、たとえば、寛骨臼72およびスロット16内で、それを前後に動かすことによって、ガイドロッド60を乱すことを伴わずに、ガイド10を操作できる。さらに、スロット16および開口12は、患者適合面11と寛骨臼72との間の吸引を低減することによって、ガイド10の取り外しを容易にする。
【0048】
スロット16は必要ではなく、ある実施形態では、ガイドはスロット16を持たなくてもよい。外科医は、ガイドロッド60が開口12を貫通している状態で、ガイドロッド60の上でガイド10を直接引っ張ることによって、スロット16なしでガイドを取り外すことができる。そうした実施形態では、ガイドの外面の凹状部分あるいは患者適合面11は(たとえば、骨盤70の位置75に対応する)円索を受け入れることができる。
【0049】
いったんガイド10が取り外されると、ガイドロッド60は、別な手術用器具用のガイドとして機能するために適所に留まるが、これはまた、所望の深さが維持されることを保証するために患者適合特徴部を含み得る。たとえば、単に寛骨臼72からある程度の量の骨を削り出すことが望ましいであろう。
【0050】
図7および図8を参照すると、ガイドロッド60を受け入れるための開口84を有するリーマドーム80が設けられてもよい。リーマドーム80は、所望のリーマ処理深さを維持するような寸法とされた距離Dを伴うショルダー82を含んでいてもよい。使用時、ガイドロッド60上のショルダー62はリーマドーム80のショルダー82と接触し、リーマドーム80が所望のリーマ処理深さを超えて骨性組織をリーマ処理するのを妨げる。さらに、外科医は、ショルダー62,82間の接触状態に達するまで、リーマ処理を停止しないことを心得ている。代替例として、器具の一部が、リーマ処理の深さを制限するために、(ショルダー62ではなく)ガイドロッド60の端部61と係合できる。ある実施形態では、ガイドロッド60の長さ、ガイドロッド60上のショルダー62のポジション、リーマドーム80の距離Dおよび他のパラメーターを患者に適合させることができる。
【0051】
ある実施形態では、標準的な器具および/またはガイドロッドが使用でき、かつ、患者固有挿入深さはリーマ処理深さを規定できる。ガイドロッド60の挿入深さは、ショルダー62あるいは端部上側部分61が、好ましいリーマ処理深さを設定するために、患者の寛骨臼72に対する適切なポジションで配置されるように、(患者の組織のモデルによって示される許容可能範囲内で)調整可能である。
【0052】
図9ないし図13は、所望の深さおよび向きで、寛骨臼72内にプロテーゼを挿入するために使用できる別なデバイスを示している。
【0053】
図9および図10を参照すると、ガイド110は患者の寛骨臼72内にフィットするような寸法とされる。ある実施形態では、ガイド110の外面の少なくとも一部は、患者の寛骨臼72の少なくとも一部に実質的に合致する患者適合面122を含む。患者適合面122は、ただ一つのポジションおよび/または向きで、寛骨臼72と合致するか、あるいは、さもなければ、それに対してフィットしてもよく、かつ、ガイド10の患者適合面のための上述したような特徴部を含むことができる。
【0054】
望むならば、ガイド10は、(図10に示すように)それを寛骨臼72に対して固定するためにピン120を受けるような寸法とされた孔118を有することができる。さらに、ガイド110は、延在部114あるいはガイド110の別な一体部分を貫通する開口112を有することができる。開口112は、寛骨臼72内に挿入されるガイドロッド160を受けるような寸法とされる。開口112の向きは、開口112がガイドロッド160の所望の経路と一直線上にあるように、患者固有データに基づいて施術前に決定可能である。ガイドロッド160は、寛骨臼72内に挿入されかつこれによって別な手術用器具のためのガイドとして機能するように少なくともある程度の距離だけ突出する、いかなるロッド、シャフト、あるいはピンであってもよい。望むならば、ガイドロッド160は、寛骨臼72の骨と係合するための構造体(たとえばネジ山あるいは返し)を有することができる。
【0055】
図10は、寛骨臼72内に挿入されているガイドロッド160を示す断面図である。コネクター170が、ガイドロッドが寛骨臼72内に所望のドリル深さで挿入されることが保証されるように、ドライバー(図示せず)と共に使用されてもよい。ドライバーと共に使用するためのコネクターは、所望のドリル挿入深さに関連する患者固有データに基づく長さを備えていてもよい。別な実施形態では、コネクター170は標準的な長さであってもよく、かつ、その深さは、患者固有データを用いて確定される孔を含むポストによって調整されてもよい。ドライバーがコネクター170の端部171に、いったん当接すると、ドライバーは、それ以上、寛骨臼内へとガイドロッド60を前進させることができない。したがって、ガイドロッド160は、所望のドリル深さを上回って(あるいはそれを下回って)挿入されない。ガイドロッド160が挿入された後、コネクター170をガイドロッド160から外すことができ、ピン120をガイド110から外すことができ、そしてガイド110を寛骨臼72から外すことができ、こうして、寛骨臼72内の適所にガイドロッド160が残される。
【0056】
ガイドロッド160は、リーマ(図11および図12)あるいはインパクター190(図13)といった別な手術用器具用のガイドとして機能する。そうしたその他の手術用器具はまた、所望の深さを維持するための患者適合特徴部を含んでいてもよい。たとえば、リーマドーム180およびハンドル184が寛骨臼72をリーマ処理するために設けられてもよい。リーマドーム180は、さまざまな方式で、ハンドル184に対して結合し得る。たとえば、ドーム180は、ハンドル184の端部における切欠き183内に収容されるクロスバー182を備えることができる。クロスバー182はハンドル184上の後退可能なピン185を押し下げ、続いて、ドーム180は、クロスバー182が切欠き183のアンダーカット内に収容されるように、ハンドル184に対して回転させられる。他の構造体、たとえばネジ山などを、代替的に使用できる。
【0057】
図12を参照すると、リーマハンドル184は、ガイドロッド160を受け入れる中心孔186を有する。外科医が寛骨臼をリーマ処理するとき、ガイドロッド160は孔186内を前進する。最終的に、ガイドロッド160の端部161は孔186内の表面187と係合し、リーマを「底付き」させる。ガイドロッド160が当接面187と接触するとき、外科医は、それ以上、寛骨臼72をリーマ処理できなくなる。
【0058】
孔186の長さDは、患者のイメージングデータに基づいてもよい。リーマハンドル184は、長さDを変更するために調整可能であってもよい。患者の寛骨臼72が単に所定の深さまでリーマ処理される場合、長さDは、たとえばガイドロッド160の長さ、および寛骨臼72に対するガイドロッド160のポジションを考慮して、所望の深さに基づいて設定できる。たとえば、ガイドロッド160が公知の挿入深さで設置されかつガイドロッド160が公知の長さを有する場合、長さDは、ガイドロッド160の長さマイナス挿入深さ、プラス所望のリーマ処理深さと等しくてもよい。リーマの特性を調整することの代替例として、患者固有長さを有するガイドロッドを使用できる。
【0059】
図13を参照すると、インパクター190のハンドルは、ガイドロッド160を受け入れる中心孔191を有することができる。孔191は、ガイドロッド160の軸線に沿った衝突をガイドする貫通孔であってもよいが、ガイドロッド160の端部161に対して底付きしない。インパクター190は、衝突の間、ガイドロッド160の端部161を打撃しないように構成でき、これによって、寛骨臼72の内側壁を通ってガイドロッド160を押しやること、あるいはそれとがガイドロッド160が係合する皮質骨にダメージを与えるのが回避される。
【0060】
したがって、外科施術は、本明細書で説明した患者適合特徴部を有するデバイスを用いて実施できる。たとえば、外科医は、ヒップ関節を外し、関節にアクセスするための切り込みを形成し、そして寛骨臼内にガイドを挿入する。外科医は、ガイドが所定の向きで寛骨臼と係合するように、患者適合外面を寛骨臼に対して係合させる。
【0061】
(図2のように)中央ポストが使用されるとき、外科医はまたポストを挿入してもよい。その後、外科医は寛骨臼内にガイドロッドを挿入するためにガイドを使用し得る。ガイドおよび/またはポストの患者適合特徴部は、ガイドロッドが単に寛骨臼内に、ある所定の深さまで配置されることを保証するのを助ける。その後、外科医はガイドおよび/またはポストを取り外し、寛骨臼内に固定された状態でガイドロッドを残すことができる。続いて、外科医は、インプラントを受け入れるために寛骨臼を前処理するために、寛骨臼をリーマ処理することができる。望むならば、寛骨臼をリーマ処理するために使用される手術用ツールは、寛骨臼が所望の量だけリーマ処理されることを保証するのを助けるためにガイドロッド上の構造体と係合する患者適合特徴部を含んでいてもよい。次に、外科医は寛骨臼内にプロテーゼを移植し、望むならば、インパクターを用いてプロテーゼに衝撃を加えることができる。
【0062】
図14を参照すると、プロセス200が、患者適合特徴部を有する、本明細書で説明したデバイスを形成するために使用できる。同じ一般的な説明は、(患者適合面122あるいは本明細書で説明した所望の深さのいずれかといった)患者適合特徴部の全てに関係する。
【0063】
プロセス200は、特定の患者の組織のジオメトリーあるいは他の態様に関するイメージングデータを得ることを含む(202)。イメージングデータは、関心のある骨および/または軟骨面に関するデータ、あるいは、リーマ加工あるいはドリリングための関連する機械軸線あるいは所望の深さを特定するのに十分なデータを含み得る。イメージングデータは、磁気共鳴イメージング(MRI)、X線(デジタルX線を含む)、超音波、コンピュータートモグラフィー(CT)、あるいはその他の技術によって得ることができる。説明を容易にするために、本明細書では概して「イメージングデータ」を例に挙げているが、ある実施形態では、関心のある組織に関する十分なデータを得るために非イメージベース技術を使用できる。ある実施形態では、イメージングデータは、関心のある組織の全部分(たとえば寛骨臼全体)には関係せず、その代わりに、ある重要なあるいは所望の解剖学的ポイントあるいは領域(たとえば寛骨臼の内側部分)にのみ関係する。
【0064】
イメージングデータは、患者適合デバイスの特性を決定するために処理されるが(204)、これは、患者の組織の一部に合致するような寸法とされた表面の輪郭を決定することを含む。「患者適合デバイス」との用語は、概して、患者適合特徴部を有する本明細書で説明したデバイスのいずれかを呼ぶために使用している。イメージングデータを処理することは、たとえば、患者の組織の三次元モデルを形成し、そして患者の組織に対する器具および/またはインプラントの所望のポジション、向き、あるいは深さを特定することを含んでいてもよい。イメージングデータを処理することはまた、アライメント軸線、切断面あるいは他の構造体あるいは基準を明示することを含み得る。ある実施形態では、患者適合デバイスあるいはその一部は、三次元モデル、明示された基準データ、および、そこから患者適合デバイスが規定される「ブランク」といったその他の入力に基づいて、自動的に(たとえばプログラムに基づいて)規定される。
【0065】
特定の患者に関する外科的アライメント軸線あるいは他の外科的アライメントは、患者の組織の三次元モデルに関して規定できる。上記患者適合デバイスは、患者の組織に対する外科的アライメント軸線を規定するように形成できる。手術の間、患者適合デバイスは、たとえば、デバイスが患者の寛骨臼と係合させられた際に、患者の組織に対する所望の外科的アライメントの位置および向きを指し示すことができる。
【0066】
モデルに対する外科的アライメント軸線を規定するために、患者に関する解剖学的基準骨格のポジションがモデルに対して決定できる。たとえば、イメージングデータを得るために使用されるイメージングデバイス、たとえばMRIスキャナーあるいはCTスキャナーのアライメントは、解剖学的基準骨格の近似として使用できる。たとえば、患者が背中を下にしてMRIテーブル上に横たわっているとき、テーブルと平行な平面は、概して、患者の前額面内に存在する。サジタル平面は、テーブルの長さに沿って、テーブルと直交するように延在し、そして横断面は前額面およびサジタル平面と直交する。
【0067】
代替例として、解剖学的目印をモデル内で特定でき、そして解剖学的基準骨格をこの目印の位置に基づいて規定できる。たとえば、患者のためのサジタル平面は、腰椎に対応するポイント、恥骨結合に対応するポイント、そして尾てい骨に対応するポイントの一つ以上によって規定できる。恥骨‐腸骨軸線は、恥骨結合に対応するポイント(あるいは恥骨の冠の前方尖端)および腸骨の上前棘状突起の前方尖端によって規定できる。前額面は、サジタル軸線に対して直交するように、そして恥骨‐腸骨軸線と交差するように規定できる。交差面はサジタル平面および前額面と直交するように規定できる。
【0068】
モデルに関して解剖学的基準骨格が特定された後、アライメント軸線を解剖学的基準骨格に対して規定できる。アライメント軸線の向きは、アライメント軸線に沿った寛骨臼内への寛骨臼カップの設置が患者の組織に対する寛骨臼カップの所望の傾斜角度および/または前傾角度を生じるように規定できる。アライメント軸線は、その設置ポジションにおいて寛骨臼カップの表面を体現する平面に対して直交する向きを有することができる。寛骨臼カップに関する傾斜角度および/または前傾角度は特定の患者に関して特定可能である。
【0069】
アライメント軸線は、患者のヒップ関節に関する運動の中心と交差するように規定できる。回転の中心は、たとえば、寛骨臼の面に近似するベストフィット球体の中心として特定できる。回転の中心は、モデルの寛骨臼の面に対して球体をデータ嵌め込みし、そして球体の中心を特定することによって決定できる。
【0070】
ある実施形態では、患者に関する解剖学的基準骨格に対するアライメント軸線の向きを特定するのではなく、アライメント軸線の向きはモデルの寛骨臼リムに対して垂直な向きとして規定できる。モデルの寛骨臼リム上のポイントと交差するベストフィット平面を創出することができる。アライメント軸線は、続いて、このベストフィット平面と直交するように、そしてベストフィット球体の中心と交差するように規定できる。
【0071】
ある実施形態では、上記処理の一つ以上を、単一のデバイスとしてであろうとネットワークシステムとしてであろうと、コンピューター器機を用いて実施できる。そうしたコンピューター器機は、一つ以上の記憶デバイス、一つ以上のプロセッサー、および入・出力インターフェースを提供するサブシステムを含むことができるが、これは、一つ以上のモデルを創出することを含む、上記ステップの少なくともいくつかを実施することを容易にすることができる。上記ステップの一つ以上は、コンピューター支援設計(CAD)ソフトウエアパッケージあるいは別な種類の設計ソフトウエアパッケージを用いて実施できる。
【0072】
プロセス200は、患者適合デバイス(206)を形成あるいは製造することを含んでいてもよい。デバイスを製造するために使用可能な技術の例は、たとえば、機械加工、三次元プリンティング、選択的レーザー焼結、およびモールディングプロセスを含む。
【0073】
数多くの実施形態について説明した。だが、本発明の趣旨および範囲から逸脱することなく、さまざまな変更が可能であることは明らかである。したがって、その他の実施形態も特許請求の範囲の記載の範疇に包含される。
【符号の説明】
【0074】
10 手術用ガイド
11 患者適合外面
12 開口
14 側壁
16 スロット
17 外縁
18 孔
20 ピン
30 モジュラーアライメントポスト
31 端部
32 側壁
34 開口
35 アライメント軸線
36 端部
50 ドライバー
60 ガイドロッド
62 ショルダー
70 骨盤
72 寛骨臼
76 寛骨臼切痕
80 リーマドーム
82 ショルダー
84 開口
110 ガイド
112 開口
114 延在部
118 孔
120 ピン
122 患者適合面
160 ガイドロッド
161 端部
170 コネクター
171 端部
180 リーマドーム
182 クロスバー
183 切欠き
184 ハンドル
185 ピン
186 中心孔
187 表面(当接面)
190 インパクター
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14