【実施例】
【0049】
実施例
【0050】
実施例1:GPまたはイワベンケイからの抽出及び精製
【0051】
オボロヅキ(GPという)の葉を磨砕し、−20℃で凍結乾燥して粉末とした後、抽出の前に防湿室内において25℃で保管した。最初に、1.5gのGP粉末を10mlの100%メタノール(MeOH)と共に5分間ボルテックスで撹拌し、その後1500gで5分間遠心分離した。上清を除去した後、10mlのH
2O、100%アセトン、100%メタノール、100%エタノール、70%エタノール、50%エタノール、100%DMSO、30%DMSOを各ペレットに添加して各抽出物の再懸濁を行った。懸濁物を5分間ボルテックスで撹拌して混合し、1500gで5分間、2回遠心分離した後、再度9300gで5分間遠心分離し、0.45μmフィルタを使用して層流により室温でろ過した。30%DMSOの上清は、Sephadex LH−20カラムにより4つの画分(F1〜F4)に分画されるか、−20℃で150mg/mlの原液(30%DMSO GP抽出物という)として保管された。GP抽出物またはHH−F3画分は、活性化合物を取得するため、透析膜(MWCO 12−14,000)(Spectrum Laboratories、Rancho Dominguez、CA)により水に対して透析された。ウェスタンブロットによるAURKA、AURKB、FLJ10540のタンパク質レベル解析を使用してHH−F3画分と呼ばれる活性分子を解析した。加えて、HH−F3画分をさらにHPLCと
1H−NMRスペクトル及び
13C−NMRスペクトルにより解析し、活性分子の構造を識別した。
【0052】
同様に、イワベンケイ(RSという)植物を凍結乾燥して粉末とした後、抽出の前に防湿室内において25℃で保管した。1.5gのRS粉末を10mlのH
2Oに溶解させ、1500gで5分間遠心分離した後、0.45μmフィルタを使用して層流により室温でろ過した。試料は150mg/mlの原液として−20℃で保管された。
【0053】
本発明のHH−F3画分の化学分析によると、
1H−NMRスペクトル及び
13C−NMRスペクトルにおける大量の芳香族シグナルから、その主要成分がポリフェノール化合物であることが識別された。HH−F3画分中の主要な化合物は、凍結乾燥後のその特有のピンク色と、部分的に分銀色の金属様の光沢という特徴から、タンニンであることが識別された。濃縮タンニン定量の比色分析法(OD
500でのモニタリング時標準としてカテキンを使用)によって判定されたHH−F3画分のタンニン総含量は約68%であった。HH−F3画分のHPLCフィンガープリント(
図1)によると、化合物の2群(A群とB群)はHH−F3画分において異なる分子量の範囲を有することが示され、かつB群では1つの主成分と1つの微量成分が検出された。プロアントシアニジンに富んだ高分子量の画分、HH−F3a(出発原料HH−F3の量と比較して収率71.9%)が透析を使用してHH−F3画分から調製された。簡単に説明すると、HH−F3(112.1mg)を透析膜(MWCO 12−14,000)により水に対して透析し、内膜画分(HH−F3A、80.6mg)と外膜画分(7.4mg)を得た。この画分が活性化合物を含み、これはウェスタンブロットによるAURKAの消失を測定することで判定された(
図6D)。HH−F3aのプロアントシアニジン画分の主要骨格はプロアントシアニジンポリマーであると判定され(以下を参照)、平均分子量(mMW)、平均重合度(mDP)、PC:PD率及び立体化学(シス:トランス)を含むその生理化学的特性を表1に示す。mMWとmDPは、分解された末端と伸長したモノマーの比率を分析することで判定される。さらに、調製手順を簡潔にするため、GP抽出物を水に対して直接透析する別の方法(方法II)が実施され、方法IIにより調製された化合物の生理化学的データも表1に示す。表1に示された生理化学的特性によると、方法IIにより調製された画分は方法I(HH−F3aの調製に使用した方法)によるそれと同じであることが示唆されている。
【化7】
HH−F3aの予測構造:プロデルフィニジン比率が高い(>95%)重合性プロアントシアニジン(21<n<38)。
【表1】
【0054】
GP由来の重合性化合物はこれまで報告されていないため、別の貴重なイワベンケイ属(Crassulaceous)の薬草、イワベンケイ(Rhodiola rosea)(ゴールデンルート)由来のポリフェノール化合物がHH−F3aの構造識別の参照化合物として使用される。イワベンケイは重合性プロアントシアニジン(PAC)を有することが報告されている。HH−F3a画分における主要化合物の構造はイワベンケイのプロアントシアニジン化合物と非常に類似している(表2参照)が、プロシアニジン単位(PC単位)に対するシグナルはマイナー(<5%)で、これは
13C NMRスペクトル(δ
C 114ppm、B環C−2’及びC−5’)では検出不能であった。さらに、PAC化合物はヴィティスヴェニフェラ(Vitis vinifera)など多くの一般的なブドウ品種でよく見受けられる。したがって、ヴィティスヴェニフェラ由来のPACも比較に用いられる。表2にイワベンケイとヴィティスヴェニフェラ(一般的なブドウ品種)由来のプロアントシアニジンポリマーの生理化学的特性を示す。表2のデータと比較して、HH−F3a画分のプロアントシアニジン化合物は、PD対PCの比率が2.5倍以内、イワベンケイのmDPとmMWの3.0倍、ヴィティスヴェニフェラのmDPの30〜80倍、mMWの1.1〜4.9倍、3−O−ガロイル%の4.7〜41.3倍それぞれ高かった。知り得る限りにおいて、GP由来のプロアントシアニジン化合物が単離されたことはなく、同じ生理化学的特性を持つプロアントシアニジン化合物はこれまで報告されていない。この証拠は、HH−F3a画分中のプロアントシアニジン化合物が新規化合物であることを示唆しており、それは3,4,5−トリヒドロキシベンジル部分(PD単位のB環と没食子酸を含む)に富んでおり、イワベンケイにおいて見られるものと非常に類似しているが、ブドウの皮と種に見られるものよりずっと高い。
【表2】
【0055】
実施例3:実施例の効果
【0056】
1.生存試験
【0057】
細胞を24ウェルプレートに植え(4,000〜5,000細胞/ウェル)、一夜培養した後、30%DMSO GP抽出物またはHH−F3画分で0、24、48、または72時間処理した。処理後、細胞を1xPBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM Na
2HPO
4、2mM KH
2PO
4)で軽く3回洗浄し、その後0.5μg/mlの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)で2時間培養した。培地を除去し、濃い青色の結晶を室温で10分間100%DMSOに溶解させた。ELISAリーダーにより570nmでOD値を測定した。
【0058】
2.ウェスタンブロット
【0059】
すべての試料を95℃で10分間加熱することにより変性させ、8%または10%のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により濃縮ゲルと分離ゲルそれぞれ80Vと100Vで分離させた。SDS−PAGEの後、Bio−Rad転写システムを使用してタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に転写した。タンパク質の転写後、膜をポンソーSで染色し、タンパク質転写の効率と均一性を確認した。室温において30分間5%無脂肪脱脂粉乳(BD)で膜をブロックした後、一次抗体と4℃で一夜培養した。その後1xトリス緩衝生理食塩水Tween−20(TBST)で3回(各回10分間)膜を洗浄し、膜を二次抗体と2時間培養した後、1xTBSTで3回(各回10分間)膜を洗浄した。HRP基質過酸化物溶液/ルミノール試薬(Immobilon
TMウエスタン化学発光基質、ミリポア;1:1の割合で混合)を添加して二次抗体のシグナルを可視化し、富士フイルムLAS4000ルミノイメージアナライザーで検出した。
【0060】
3.細胞計数
【0061】
細胞を12ウェルプレートに(10,000〜30,000細胞/ウェル)一夜植えた後、HH−F3画分で0、24、48、または72時間処理した。細胞をトリプシン処理してから0.4%トリパンブルーと混合した後、カウントした。
【0062】
4.細胞周期解析及びフローサイトメトリー
【0063】
細胞をトリプシン処理して1xPBSで3回洗浄した後、800gで5分間遠心分離した。続いて、PBSに溶解した70%エタノールに細胞を再懸濁し、−20℃で16時間以上維持した。800gで5分間遠心分離した後、100μg/mlのリボヌクレアーゼA(Sigma−Aldrich)を含む冷PBSに細胞ペレットを20分間再懸濁した。その後細胞を20μg/mlのヨウ化プロピジウム(PI、Sigma−Aldrich)で20〜30分間染色し、DNA含量をBD FACSCantoで測定してFlowJoソフトウェアで解析した。
【0064】
5.ミトコンドリア膜電位試験
【0065】
Cayman Chemical社より購入したヨウ化5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンゾイミダゾールカルボシアニン(JC−1)を使用してミトコンドリア膜電位の解析を行った。培養した細胞を7000細胞/ウェルの密度で96ウェルブラックプレートに植え、一夜培養した後、HH−F3画分有りまたは無しで48時間処理した。JC−1染色溶液を各ウェルに添加して37℃の暗所において15〜30分間軽く混合した。プレートを室温において400gで5分間遠心分離し、上清を除去した。その後、各ウェルにJC−1アッセイ緩衝液を添加してから、室温において400gで5分間遠心分離した後、上清を除去した。最後に、各ウェルにJC−1アッセイ緩衝液を添加して蛍光プレートリーダーを使用し、解析した。
【0066】
6.ROSレベルの測定
【0067】
超酸化物ラジカル(O
2−)の細胞内産生をハイドロエチジン蛍光色素(AAT Bioquest, Inc.)で評価した。細胞はHH−F3画分有りまたは無しで48時間処理された。ハイドロエチジン(10μm)を各ウェルに添加して37℃の暗所において30〜60分間軽く混合した。細胞の蛍光を波長520nm(励起)と610nm(蛍光)でモニタリングした。
【0068】
細胞内過酸化物レベルはジクロロフルオレセイン(DCFH)ジアセタート(Marker Gene Technologies, Inc.)で判定した。HH−F3画分での48時間の処理後、培地をアスピレーションして細胞をPBSで2回洗浄した。続いて、37℃の暗所において無血清培地で細胞をDCFHと最終濃度20μMで30〜60分間培養した。細胞を再度PBSで洗浄し、200μlの培地に保持した。細胞の蛍光を波長485nm(励起)と528nm(蛍光)でモニタリングした。
【0069】
7.動物及び試験環境
【0070】
試験期間開始時点で6週齢の雄ウィスター系白(Wistar albino)ラット(150〜180g)120匹が使用された。研究期間中、動物はすべて標準食物と水を自由摂食し、疾病誘発の7日前に順化した。
【0071】
試験方法
【0072】
ラットは正常群(N=10)、ジエチルニトロサミン(DEN)群(N=30)、低用量GP群(N=30)、高用量GP群(N=30)に無作為に分割された。さらに追加の5匹のラットをHH−F3処理群として含めた。正常群を除くすべての群において、ラットは毎日唯一の飲用水源として100ppm(v/v)のDEN(Sigma−Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)水溶液を63日間飲用し、64日目からさらに14日間水道水を供給した。DEN溶液は毎週調製され、それまでの用量に対する反応としての動物の体重増減に基づき個別の用量で調製された。42日目以降目に見える肝臓腫瘍が記録され、63日目以降には肝線維症が観察された。試験期間中、動物は毎週体重測定を行って体重の増加を計算し、水消費量も毎週計測された。低用量群のラットには1匹当たり0.6g、高用量群のラットには1匹当たり1.8gの凍結乾燥したGP粉末がそれぞれ42日目から3週間にわたって毎日与えられた。
【0073】
採取手順及び肝臓の形態学的評価
【0074】
すべての動物は84日目に安楽死された。動物は一夜の絶食後、CO
2吸入によって犠牲死された。ラットの犠牲死後、体、肝臓、脾臓の重量を測定し、正中開腹による解剖の後、器官の状況が記録された。迅速にすべての肝葉を採取し、各時間点で肝臓表面の状態、肝臓病巣、持続性結節(PN)、または癌の進行具合を徹底的に検査した。その後、肝臓を5mmの切片にカットした。すべての肝臓表面上及び5mmの切片内の肉眼で確認できる結節をカウントし、その数量と大きさを判定した。
【0075】
腫瘍量の評価
【0076】
DENが与えられた動物における腫瘍形成の過程を確立するため、すべての肝葉が迅速に採取され、かつすべての肝臓表面上及び5mmの切片内の肉眼で確認できる結節をカウントし、その数量と大きさを判定した。腫瘍量は各動物の直径が3mmを超える全腫瘍結節の体積合計を計算し、群を比較することで判定された。
【0077】
胆汁流速
【0078】
動物を犠牲死させる前に80mg/kgのケタミンによる深麻酔後、胆汁流速が測定された。胆汁流速の測定には、総胆管内にPE10シリコンチューブを配置してから、計算用ポリエチレンチューブに接続した。チューブ内の胆汁流量を5分間隔で測定した。
【0079】
組織病理学的評価
【0080】
血液排出後、腫瘍を含む約5mm厚の組織片を各肝葉から取り出した。5μm厚の切片を切り出してヘマトキシリン・エオジンで染色し、公開されている診断基準を使用して組織病理学的分析を行った。
【0081】
α−平滑筋アクチン(α−SMA)免疫組織化学染色
【0082】
肝臓試料をホルマリンで固定し、パラフィンで包埋した後、5μmの切片を切り出した。切片は脱パラフィン処理と再水和後、0.03%の過酸化水素で10分間処理し、内在性ペルオキシダーゼ活性を失活させた。続いてPBSで2回洗浄した後、切片をマウス抗ヒトα−SMAモノクローナル抗体(1:50希釈、DakoCytomation、デンマーク)と室温で1時間培養した。α−SMA染色のため、切片を洗浄し、二次抗体、ウサギ抗マウスIgG(1:200希釈)と室温でさらに1時間培養した。切片は同様に形成された。染色後、切片をヘマトキシリンで対比染色して顕微鏡で検査した。デジタルカメラシステムHC−2500(Fuji Photo Film)、Adobe Photoshopバージョン5.0J、Image−Pro Plusバージョン3.0.1Jを使用してα−SMA陽性区域(肝臓切片のmm
2/cm
2)の割合を測定した。
【0083】
肝臓中のヒドロキシプロリン含量試験
【0084】
肝臓試料の重量を計測し、20mgの冷凍試料を20mlの6N HCl中で加水分解して慎重に磨砕した。さらに、1mgの組織に6N HClを加え、総量を30mlとした。HCl中で磨砕された組織を120℃で16時間加水分解した。しばらく氷の上で冷却した後、8000gで10分間遠心分離し、上清を除去して新しいチューブに入れ替えた。蒸発で失われた体積を水で補充した。等しい体積の6N NaOHを加えて混合し、リトマス紙を使用して溶液をpH4〜9に調整した。40μlの中和後の試料溶液を96ウェルのELISAプレートに加え、5mlの7%クロラミンT(Sigma−Aldrich)と20mlの酢酸/クエン酸緩衝液を含む溶液を使用して酸化した。その後、150mlのエールリッヒ試薬を添加した。最終混合物を60℃で35分間培養した後、室温でさらに10分間培養し、その後560nmで吸光値を測定した。100、80、60、40、20、0mg/mlの標準4−ヒドロキシ−L−プロリン(Sigma−Aldrich)を含有する標準溶液を同様に処理した。この範囲(r=0.99)で標準曲線は線形であった。肝臓ヒドロキシプロリンレベルの値はヒドロキシプロリン(mg)/肝湿重量(g)として表された。すべての試験は3回繰り返して実施された。
【0085】
酸化ストレスの免疫細胞化学分析
【0086】
ニトロブルーテトラゾリウム(NBT、Sigma−Aldrich)潅流法を使用して肝臓におけるデノボROS産生部位を特定した。NBT潅流肝臓を取り除き、亜鉛/ホルマリン溶液中で固定し、ホルマザン沈殿物の組織検査を行った。Adobe Photoshop 7.0.1画像ソフトウェア分析を使用して青色NBT沈殿物の密度を判定した。
【0087】
結果
【0088】
Huh7細胞及びMahlavu細胞における異なるGP調製物の効果
【0089】
GPの潜在的生物活性を試験するため、水抽出物、ブタノール抽出物、アセトン抽出物、メタノール抽出物、100%エタノール抽出物、70%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物、100%DMSO抽出物、30%DMSO抽出物を含む抽出物の異なる調製物を調製し、ヒトHCC細胞の処理に使用した。
図1に示すように、GP抽出物の異なる調製物によって生じた成長抑制効果を剤量依存的方法で評価した。MTT試験結果によると、30%DMSO抽出物がHuh7細胞(
図2A)とMahlavu(
図2B)細胞の生存性を大幅に抑制することが示された。
【0090】
GPが間期と有糸分裂中の両方で活性化した肝星細胞とHCC細胞株におけるAURKA、AURKB、FLJ10540タンパク質発現レベルを低下させた
【0091】
AURKA、AURKB、FLJ10540は癌遺伝子であり、HCC中で過剰に発現される。このため、GP抽出物の異なる調製物がヒトHCC細胞株中のこれら癌タンパクを抑制するかを試験した。結果、GP抽出物(方法の段落で説明されるように、100%メタノールから取得した後、30%DMSOで抽出、ここでは30%DMSO GP抽出物という)が、活性化された肝星細胞(HSC−T6)においてFlj10540とAurkbのタンパク質発現レベルを抑制し(
図3A)、かつHCC細胞(HepG2とHuh7)におけるFLJ10540、AURKA、AURKBのタンパク質発現レベルが抑制された(
図3B)ことが分かった。AURKAとFLJ10540両方の発現レベルは間期より中期の間より高い。次に、GPがHCC細胞において有糸分裂中にこれら2つのタンパク質の発現を抑制するかを調査した。Huh7細胞とHepG2細胞を50〜75μg/mlのノコダゾールで18時間処理し、続いてノコダゾールを洗浄せずに30%DMSO GP抽出物で3時間処理した。これまでの発見と同様に、AURKA、AURKB、FLJ10540が有糸分裂中高い発現を示した。AURKA、AURKB、FLJ10540のタンパク質発現レベルは間期と中期の両方の間減少した(
図3C)が、PIN1、HURP、PLKを含め検査した他の有糸分裂タンパク質において大幅な変化は観察されなかった(データは未提示)。
【0092】
30%DMSO GP抽出物(HH−F3画分)のみHCC細胞株におけるAURKAタンパク質発現を抑制したが、異なる溶剤から調製されたその他抽出物は抑制しなかった
【0093】
ヒトHCC Huh7細胞を500μg/mlのGP抽出物の異なる調製物で48時間処理した。30%DMSO抽出物はこれら細胞においてAURKAのタンパク質発現レベルを大幅に抑制した(
図4A)。対照的に、水またはブタノールから得たGP抽出物は、3時間の処理後、HepG2細胞におけるAURKAまたはAURKBのタンパク質発現レベルを抑制しなかった(
図4B)。AURKAとFLJ10540はHCCにおいて過剰発現されるため、GPがHCC細胞の成長に影響を有するかを検査した。その結果、30%DMSO GP抽出物が50%の細胞生存率抑制濃度(IC
50)でHuh7細胞とMahlavu細胞の細胞毒性を引き起こすことが分かり、IC
50値はそれぞれ48時間の処理後約500μg/mlと250μg/mlであった(
図5)。
【0094】
HH−F3がHCC細胞株におけるAURKAタンパク質発現を抑制した
【0095】
30%DMSO GP抽出物が活性化された肝星細胞と肝癌細胞においてAURKA及びFLJ10540のタンパク質発現レベルを抑制し(
図2)、GP中の活性分子を生成するためにこの試験を使用できることが示唆された。Sephadex LH−20カラムを使用して、30%DMSO GP抽出物から4画分を取得した(
図6A)。3時間の処理後ウェスタンブロットで分析したところ第3画分(HH−F3という)のみHepG2細胞においてAURKAとAURKBの発現を抑制したが、一方でその他の画分(HH−F1、HH−F2、HH−F4)はAURKAとAURKBタンパク質発現を抑制しなかった(
図6B)。総合すると、30%DMSOから調製されたGP抽出物とHH−F3画分は、3時間の処理後HepG2細胞におけるAURKAとAURKBのタンパク質発現レベルを抑制した(
図6B及び
図6C)。さらに、HH−F3画分から透析を使用してHH−F3aと呼ばれる活性細画分を(出発原料HH−F3と比較して71.9%の収率で)取得した。このHH−F3a画分には、(HH−F3b画分にはないが)活性化合物が含有され、これはウェスタンブロットによりAURKAの消失を測定することで判定された(
図6D)。
【0096】
HH−F3画分はHSC−T6細胞とHCC細胞株において細胞生存率を減少する
【0097】
細胞生存率におけるHH−F3画分の効果を調査するため、Huh7、Mahlavu、PLC5、HSC−T6細胞を濃度5、25、50、75、100μg/mlのHH−F3画分で24、48、72時間処理した。MTT試験での検査によると、これら試験細胞タイプの生存率は、HH−F3処理の結果抑制された。Huh7、Mahlavu、PLC5、HSC−T6細胞におけるHH−F3画分での処理のIC
50値は72時間でそれぞれ約50、37.5、75、20μg/mlであった(
図7A〜
図7D)。この発見をさらに確認するため、細胞生存率をHuh7、Mahlavu、PLC5細胞のトリパンブルー染色で検査した。HH−F3画分処理の24、48、72時間後、濃度5、25、50、75、100μg/mlで、時間及び剤量依存的な細胞生存率の減少が示された(
図7E〜
図7G)。総合すると、30%DMSO GP抽出物とHH−F3画分のいずれもHCC細胞株と活性肝星状細胞の細胞生存率を抑制することができる。
【0098】
次に、Huh7、Mahlavu、PLC5、HSC−T6細胞を25、50、75μg/mlのHH−F3画分で3時間処理した。HH−F3画分は試験した3つすべてのHCC細胞株とHSC−T6細胞において、AURKA及びFLJ10540の両方の発現を抑制した(
図8Aと
図8B)。このHH−F3画分の抑制効果が転写レベルで発生したのか否かを調査するため、FLJ10540とオーロラキナーゼファミリー(AURKA、AURKB、AURKC)の遺伝子発現レベルの変化を検査した。HepG2細胞を50μg/mlのHH−F3画分で6時間処理した後、マイクロアレイ(U133Aチップ、Affymetrix)で遺伝子発現レベルを解析し、ウェスタンブロットでタンパク質レベルを解析した。対照群と比較して、HH−F3画分での処理後、タンパク質レベルが低下したにも関わらず、前述の特定の遺伝子発現レベルにおいて変化はなかった(データ未提示)。このため、HH−F3画分は恐らく転写レベルではなくタンパク質レベルでHCC細胞の成長を調整すると考えられる。
【0099】
HH−F3画分がHCC細胞株においてアポトーシスによる細胞死をもたらす
HCC細胞の細胞周期プロファイルにおけるHH−F3画分の効果について、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用し、抽出物を解析した。Huh7細胞とMahlavu細胞を5、25、50μg/mlのHH−F3で48時間処理した。
図8Aに示すように、HH−F3画分はHuh7細胞とMahlavu細胞の細胞周期進行を阻害した。50μg/mlのHH−F3画分による48時間の処理後、Huh7のsub−G1細胞群の増加は22%であり、Mahlavu細胞では26%であった。HH−F3画分はMahlavu細胞においてHuh7細胞よりも大きなsub−G1細胞群の増加を生み出しており、これは前述した細胞毒性効果(
図9A)と一致している。次にHuh7細胞とMahlavu細胞におけるHH−F3画分のアポトーシス細胞死誘発能力を検査した。濃度5、25、50μg/mlでの24時間と48時間の処理後、開裂カスパーゼ−3と開裂PARPのタンパク質発現レベルは剤量依存的に増加した。同じ濃度下で、HH−F3画分もアポトーシス分子FASの上方制御と、BCL2及びBCL−XLの下方制御を生じた(
図9C)。これらのデータは、HH−F3画分がカスパーゼ依存的なアポトーシス細胞死を誘発することを示している(
図9B)。
【0100】
HH−F3画分がHCC細胞株においてミトコンドリア膜電位を減少させ、ROSを増加させる
【0101】
活性酸素(ROS)とミトコンドリアは、生理的条件及び病理学的条件のいずれにおいてもアポトーシス誘導において重要な役割を果たす。次にHH−F3画分が外因性経路または内因性経路を介してアポトーシスを引き起こすかを調査した。内因性経路の指標の1つであるミトコンドリア膜電位がHCC細胞で変化されるかを試験した。Huh7細胞とMahlavu細胞を5、25、50μg/mlのHH−F3画分で処理し、48時間の処理後細胞のミトコンドリア膜電位を検査した。対照群と比較して、アポトーシス細胞の数が増加した。これは、HH−F3画分での処理後膜電位がHuh7細胞とMahlavu細胞で減少したミトコンドリア膜電位(ΔΨ)の結果(
図10A)と一致している。
【0102】
いくつかの報告において、ROSはΔΨの損失後のみ産生されることが示されている。ROSは超酸化物陰イオン、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルを含み、これらすべてが酸素から派生している。ROSは光合成と酸素呼吸中の電子伝達プロセスの結果として産生され、正常な細胞機能に必要な生理濃度で、細胞内シグナリングと酸化還元調節に関与する。過剰なレベルのROSは酸化ストレスを引き起こし、これは脂質、タンパク質及びDNAの酸化を引き起こすため、細胞にとって潜在的に有害である。HH−F3画分でHCC細胞を刺激することでROSの産生に変化が生じるか否かを試験した。O
2−の細胞内産生をハイドロエチジン蛍光色素で評価し、細胞内過酸化物のレベルをDCFHジアセタートで判定した。HH−F3画分で細胞を処理した後、HCC細胞における細胞内過酸化物(
図10Cと
図10D)及び超酸化物(
図10Eと
図10F)の細胞産生が増加した。これは、HH−F3画分が内在性経路を介してアポトーシスを引き起こすことを示唆している。
【0103】
HH−F3画分がAktのリン酸化を減少させ、PTENの発現を増強する
【0104】
例えばAKT経路など一部の細胞増殖経路はアポトーシスの抑制とHCCにおける異常に関連がある。HH−F3がHCC細胞に細胞毒性を引き起こしたため、HH−F3がHCC細胞における細胞増殖経路に影響するかを調査した。Huh7細胞を5、25、50μg/mlの濃度のHH−F3で48時間それぞれ処理した。Huh7細胞では、HH−F3の処理下でAKTのSer
473リン酸化が下方制御されたが、トータルのAKTタンパク質は影響されなかった(
図11)。興味深いことに、HH−F3はPI3k/AKT依存シグナリング負の調節因子であるホスファターゼテンシンホモログ(PTEN)のタンパク質レベルを活性化した。これらの結果は、HH−F3が細胞増殖のAKTシグナル伝達経路を調節し、細胞アポトーシスを誘発する可能性を示唆している。
【0105】
GP抽出物が肝硬変動物の胆汁排出を増加させた
【0106】
肝臓機能を反映する胆汁流速の測定(
図12A)、肝硬変に関連する門脈圧亢進症の指標である脾臓重量/体重の比率の定量化(
図12B)、及びDENにより誘発されるα−SMA発現の解析(
図12D)によって肝硬変も評価した。すべてのデータが高用量GPによる処理後、肝硬変の状態の改善を示し、胆汁流量の増加、脾臓サイズの減少、α−SMA(+)区域の割合の大幅な減少を示した。
【0107】
GP抽出物とHH−F3が硬変した肝臓におけるヒドロキシプロリン含量を減少した
【0108】
肝臓のヒドロキシプロリン含量レベルを測定することで肝線維症を判定した。DEN誘発動物においてヒドロキシプロリンレベルの大幅な増加が観察された(143±30μg/g)。対照的に、低用量GP、高用量GPまたはHH−F3での処理後、ヒドロキシプロリン含量はそれぞれ98±18μg/g(P<0.05DEN群と比較)、70±10μg/g(P<0.05)、72±8.2μg/g(P<0.05)であった(
図12C)。
【0109】
GP抽出物とHH−F3が酸化ストレスを減少した
【0110】
NBT(Nitrotetrazolium blue chloride)は超酸化物に曝露されると不溶性の青色ホルマザン誘導体に還元される染色剤であり、青色沈殿物は組織中の超酸化物の存在を示す組織学的マーカーとして光学顕微鏡検査により判別できる。10倍視野下で最も濃い染色区域を観察してNBT(+)集合密度を判定した。DEN誘発動物においてNBT(+)集合の大幅な増加が観察された(23±3)。対照的に、低用量GP、高用量GPまたはHH−F3での処理後、NBT(+)集合密度はそれぞれ13±4(P<0.05DEN群と比較)、4.2±0.6(P<0.005)、6.2±2.1(P<0.05)であった(
図12E)。これらの結果は、DENによって誘発される酸化ストレスがGP抽出物とHH−F3の処理によって減少される可能性を示唆している。
【0111】
GP抽出物とHH−F3が腫瘍量を減少した
【0112】
犠牲死させた動物から取得した肝臓を5mmの切片にスライスした。直径3mmを超える目に見える腫瘍結節すべての数をカウントし、大きさを測定した。腫瘍量は腫瘍結節の体積合計で表されている。目に見える腫瘍がDEN誘発動物において観察された(腫瘍量2350±905mm
3)。対照的に、低用量GP、高用量GPまたはHH−F3での処理後、肝臓における腫瘍量はそれぞれ110±105mm
3(P<0.005DEN群と比較)、23±31mm
3(P<0.005)、86±12(P<0.05)であった(
図12F)。肝臓の代表的な写真にはラットの硬変した肝臓に複数の肝臓腫瘍が見られた。これらの動物では表面の肉芽形成と境界に起伏のある複数の肝臓腫瘍の形成が観察され、低用量GP、高用量GPまたはHH−F3での処理後、目に見える腫瘍の数と起伏のある肝臓表面が改善された。
【0113】
イワベンケイ抽出物の試験も実施し、それらがHCC細胞株の細胞生存率を抑制し、AURKAタンパク質発現を下方制御することが分かった(
図13)。
【0114】
本発明が属する技術分野における当業者が、更なる例示の必要なく、ここにおける説明に基づいて本発明をその最大限の範囲で利用することができると確信される。したがって、提示した説明及び請求の範囲は本発明の範囲を限定するものではなく、例示を目的としたものであると理解されるべきである。