特許第5902174号(P5902174)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902174
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】抗癌性抽出物及び化合物
(51)【国際特許分類】
   C07D 311/62 20060101AFI20160331BHJP
   A61K 31/353 20060101ALI20160331BHJP
   A61K 36/41 20060101ALI20160331BHJP
   A61P 35/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   C07D311/62
   A61K31/353
   A61K36/41
   A61P35/00
【請求項の数】8
【全頁数】24
(21)【出願番号】特願2013-530555(P2013-530555)
(86)(22)【出願日】2011年9月30日
(65)【公表番号】特表2013-544766(P2013-544766A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】CN2011080480
(87)【国際公開番号】WO2012041256
(87)【国際公開日】20120405
【審査請求日】2013年7月12日
(31)【優先権主張番号】61/388,180
(32)【優先日】2010年9月30日
(33)【優先権主張国】US
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】509069917
【氏名又は名称】ナショナル ヤン−ミン ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100081422
【弁理士】
【氏名又は名称】田中 光雄
(74)【代理人】
【識別番号】100084146
【弁理士】
【氏名又は名称】山崎 宏
(74)【代理人】
【識別番号】100122301
【弁理士】
【氏名又は名称】冨田 憲史
(74)【代理人】
【識別番号】100157956
【弁理士】
【氏名又は名称】稲井 史生
(74)【代理人】
【識別番号】100170520
【弁理士】
【氏名又は名称】笹倉 真奈美
(72)【発明者】
【氏名】ホアン・チ−イン
【審査官】 鶴見 秀紀
(56)【参考文献】
【文献】 特開2007−145825(JP,A)
【文献】 Chen,Shu-Ju et al,In vitro Antioxidant and Antiproliferative Activity of the Stem Extracts from Graptopetalum paraguayense,American Journal of Chinese Medicine ,2008年,36(2),pp.369-383
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07D 311/62
A61K 31/353
A61K 36/00−36/9068
A61P 35/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下の式(I)の構造を備え、
【化1】

式中、Rのうち1つがH、またはプロシアニジン(PC)単位であり、その他がOHまたはプロデルフィニジン(PD)単位であり、nが21〜38までの数字であり、PC単位:PD単位が1:20以下であることを特徴とする、化合物。
【請求項2】
グラプトペタルム属、イワベンケイ属、エケベリア属から構成される群より選択された植物由来であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物
【請求項3】
ボロヅキまたはイワベンケイ由来であることを特徴とする、請求項1に記載の化合物。
【請求項4】
治療に有効な量の請求項1の化合物と、製薬上許容できる担体を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項5】
抗癌活性を有することを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項6】
癌の予防または治療に用いる医薬組成物であって、治療有効量の請求項1の化合物と、製薬上許容できる担体を含むことを特徴とする、医薬組成物。
【請求項7】
前記癌が肝臓癌である、請求項に記載の医薬組成物。
【請求項8】
前記肝臓癌が肝細胞癌(HCC)であることを特徴とする、請求項に記載の医薬組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
発明の分野
本発明は植物から抽出された抗癌活性を備えた新規抽出物及び新規化合物に関する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
オボロヅキ(Graptopetalum Paraguayense、GP)は漢方薬草の一種であり、健康にさまざまな有益性がある。古い中国の処方によると、GPは肝臓病の緩和、血圧の抑制、肌の美白、痛み及び感染の緩和、炎症の抑制、脳機能の改善など有益な効果を多く備えているとされている。
【0003】
研究において、GPの葉の抽出物がチロシナーゼ及びアンジオテンシン変換酵素の活性を抑制し、体外試験において遊離基を除去できることが示されている(Chen,S−J et al.、Studies on the inhibitory effect of Graptopetalum Paraguayense E. Walther extracts on the angiotensin converting enzyme.Food Chemistry 100:1032〜1036、2007;Chung, Y−C et al.、Studies on the antioxidative activity of Graptopetalum Paraguayense E. Walther. Food Chemistry 91:419〜424、2005;Huang,K−F et al.、Studies on the inhibitory effect of Graptopetalum Paraguayense E. Walther extracts on mushroom tyrosinase. Food Chemistry 89:583〜587、2005.)。GPの水及び50%エタノール、95%エタノール茎抽出物には抗酸化活性があることが分かり、これら抽出物のヒトHCC細胞株(HepG2)の増殖に対する抑制作用について分析が行われた(Chen, SJ et al.、In vitro antioxidant and antiproliferative activity of the stem extracts from Graptopetalum Paraguayense. Am J Chin Med 36:369〜383、2008)。体内試験の研究ではGPの葉抽出物がミクログリア活性、酸化ストレス、iNOS発現を抑制し、虚血性脳障害を軽減することが示された(Kao,TK et al.、Graptopetalum Paraguayense E. Walther leaf extracts protect against brain injury in ischemic rats. Am J Chin Med 38:495〜516、2010.)。
【0004】
Hsuにより2004年に出願され、2008年に登録された米国特許第7364758号において、体内及び体外試験でオボロヅキからのエタノール抽出物には抗肝繊維症と抗炎症の効果があることが開示されている。その後2008年に出願され、2009年に登録されたその一部継続出願である米国特許第7588776号では、オボロヅキの水溶性画分が炎症、脂肪変性、繊維症など肝臓病または肝疾患の治療に効果があることが示された。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
発明の概要
本発明は植物、特にグラプトペタルム属(Graptopetalum sp.)の植物から単離された新規抽出物及びその画分、新規化合物に関するものである。また本発明は、新規抽出物または新規化合物を使用した癌、特に肝細胞癌(HCC)の治療向けの新たな方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
一側面によれば、本発明はグラプトペタルム属(Graptopetalum sp.)、イワベンケイ属(Rhodiola sp.)、エケベリア属(Echeveria sp.)から構成される群より選択された植物からジメチルスルホキシド(DMSO)で抽出された、抗癌活性を備えた抽出物を提供する。本発明は予期せずしてDMSO抽出物に抗癌活性があることを発見した。
【0007】
本発明の一実施形態において、前記植物はオボロヅキ(Graptopetalum paraguayense)またはイワベンケイ(Rhodiola rosea)である。本発明の一実施例において、前記抽出物は植物を30%DMSOで抽出して得られる。
【0008】
別の一側面によれば、本発明はグラプトペタルム属(Graptopetalum sp.)、イワベンケイ属(Rhodiola sp.)、エケベリア属(Echeveria sp.)から構成される群より選択された植物、特にオボロヅキまたはイワベンケイから得た豊富な抗癌成分を含む画分を提供する。この画分はジメチルスルホキシド(DMSO)で前記植物を抽出した後、クロマトグラフィーで単離して、細胞毒性作用と、癌細胞中のAURKA、AURKB、FLJ10540の発現を下方制御する効果を備えたHH−F3と呼ばれる画分を得ることで調製される。
【0009】
本発明の一実施形態において、Sephadex LH−20カラムがクロマトグラフィーカラムに使用される。本発明によると、本発明による前記画分は高い細胞毒性作用を備え、Huh7及びHepG2細胞中におけるAURKA、AURKB、FLJ10540の発現の下方制御に有効である。
【0010】
HH−F3画分の機構解明において、HH−F3画分がHCCのアポトーシスを誘発したことが分かった。つまり、HH−F3画分には癌細胞、特にHCCの治療効果があることが示された。
【0011】
さらに別の一側面によれば、本発明は以下の式(I)の構造を備え、
【化1】

式中、Rのうち1つがH、またはプロシアニジン(PC)であり、その他がOHまたはプロデルフィニジン(PD)単位であり、nが21〜38までの数字であり、PC単位:PD単位<1:20である、化合物を提供する。前記プロシアニジン(PC)単位の構造が、
【化2】
であり、前記プロデルフィニジン(PD)の構造が、
【化3】
である。
【0012】
本発明によると、前記式(I)の化合物は、グラプトペタルム属(Graptopetalum sp.)、イワベンケイ属(Rhodiola sp.)、またはエケベリア属(Echeveria sp.)から構成される群より選択された植物から単離することができる。本発明の一実施形態において、前記化合物はオボロヅキまたはイワベンケイの画分から精製される。式(I)の化合物は3,4,5−トリヒドロキシベンジル部分が豊富で、抗癌活性を備えていることが分かった。
【0013】
さらに別の一側面によれば、本発明は本発明の抽出物、画分、または化合物、及び製薬上許容できる担体を含む組成物または医薬組成物を提供する。さらに、前記医薬組成物は肝臓癌、特にHCCなどの癌の予防または治療において有効な抗癌活性を備えている。
【0014】
さらに別の一側面によれば、本発明は癌、特にHCCの治療用薬剤の調製における、本発明の抽出物、画分、または式(I)で表される化合物の使用を提供する。
【0015】
さらに別の一側面によれば、本発明は、本発明の抽出物、画分、または化合物の治療に有効な量を必要とする患者に投与することを含む、癌の予防または治療方法を提供する。本発明の一実施例において、前記癌はHCCである。
【0016】
図面の簡単な説明
本発明の上述の概要と、以下に述べる詳細な説明は、付属の図面と共に参照することでより良く理解されるであろう。本発明を例示する目的のため、図面には現時点で好ましい実施形態が示されている。ただし、本発明は図面に示される実施形態に限定されないと理解されるべきである。
【0017】
図面において:
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1はクロマトグラムと溶出勾配曲線をそれぞれ線Xと線Yで示した、本発明によるHH−F3画分のHPLCフィンガープリントである。
【0019】
図2図2は本発明によるHH−F3画分の細胞毒性増加効果を示す図である。そのうち、図2(A)はHuh7における効果、図2(B)はMahlavu細胞における効果を異なる溶剤から調製された他の抽出物と比較して示す。そのうちHuh7細胞(A)とMahlavu細胞(B)は水、アセトン、メタノール、100%エタノール、70%エタノール、50%エタノール、100%DMSO、30%DMSOから調製されたGP抽出物で、100、150、250、500、750、1000、1500μg/mlの濃度において72時間処理された後、細胞のMTT試験が行われた。これら抽出物の調製のうち、30%DMSO GP抽出物が72時間の時点でHuh7細胞とMahlavu細胞において最も顕著な細胞生存率の抑制効果を示した。
【0020】
図3図3はHSC−T6(A)、HepG2及びHuh7細胞((B)と(C))における間期とM期中の複数の有糸分裂調節因子分解減少における、本発明によるHH−F3画分の効果を示す図である。そのうち(A)HSC−T6細胞は30%DMSO GP抽出物で処理され、細胞溶解物に抗Flj10540及び抗Aurkb抗体でイムノブロット試験が行われた。(B)HepG2及びHuh7細胞は、多様な濃度の30%DMSO GP抽出物で処理され、細胞溶解物に抗FLJ10540、抗AURKA、抗AURKB抗体でイムノブロット試験が行われた。(C)HepG2及びHuh7細胞は75ng/mlのノコダゾール(NOC)で16〜18時間処理された。同調剤(synchronizing agent)での前処理後、750μg/mlの30%DMSO GP抽出物またはビヒクル対照(30%DMSO)でさらに3時間処理され、抗FLJ10540、抗AURKA、抗AURKB抗体を使用してウェスタンブロットが行われた。重要点は次のとおりである。(1)AURKA、AURKB、FLJ10540は間期細胞と比較して有糸分裂期細胞で高い発現を示した。(2)間期と中期におけるAURKA、AURKB、FLJ10540のタンパク質発現レベルが30%DMSO GP抽出物での処理後、いずれも抑制された。
【0021】
図4図4はHCC細胞株:Huh7細胞(A)及びHepG2とHuh7細胞(B)における、本発明によるHH−F3画分のAURKAタンパク質発現抑制効果を示す図である。そのうち(A)Huh7細胞は、水、アセトン、メタノール、100%エタノール、70%エタノール、50%エタノール、100%DMSO、30%DMSOから調製されたGP抽出物で、500μg/mlの濃度において48時間処理された。30%DMSO GP抽出物による処理後、AURKA発現レベルが抑制された。(B)HepG2及びHuh7細胞においてAURKA、AURKB、FLJ10540の発現レベルは水及びBuOH画分によって抑制されなかった。
【0022】
図5図5は2つのHCC細胞株:Huh7細胞(A)とMahlavu細胞(B)において、本発明によるHH−F3画分の細胞毒性発生における時間依存的及び剤量依存的反応を示す図である。そのうちHuh7細胞(A)とMahlavu細胞(B)は30%DMSO GP抽出物で、0、250、500、750、1000μg/mlの濃度において24、48、72時間処理された後、MTT試験が行われた。Huh7細胞及びMahlavu細胞において30%DMSO GP抽出物によって引き起こされた成長抑制のIC50値はそれぞれ48時間で約500μg/mlと250μg/mlであった。
【0023】
図6図6はHCC細胞株におけるAURKAタンパク質発現に対するGPの異なる精製画分の効果を示す図である。図6(A)はGP抽出物と本発明によるHH−F3画分の精製方式を示す。図6(B)は30%DMSO GP抽出物、HH−F1、HH−F2、HH−F3、HH−F4で3時間処理されたHepG2細胞を示す。HepG2細胞においてHH−F1、HH−F2、HH−F4画分での処理でAURKA及びAURKB発現レベルは抑制されなかった。図6(C)は30%DMSO GP抽出物とHH−F3画分での処理後にAURKAの発現が抑制されたことを示す。図6(D)はHH−F3a画分での処理後にAURKAの発現が抑制されたことを示す。
【0024】
図7図7はHuh7細胞(A、E)、Mahlavu細胞(B、F)、PLC5細胞(C、G)、HSC−T6細胞(D)の細胞生存率における本発明によるHH−F3画分の抑制効果を示す図である。ここで、Huh7(A、E)、Mahlavu(B、F)、PLC5(C、G)、HSC−T6(D)細胞がHH−F3画分で5、25、50、75μg/mlの濃度において24、48、72時間処理された後、MTT試験(A〜D)とトリパンブルー試験(E〜F)が行われた。Huh7、Mahlavu、PLC5、HSC−T6細胞においてHH−F3画分での処理により引き起こされた細胞生存率抑制のIC50値はそれぞれ72時間で約50、37.5、75、20μg/mlであった。
【0025】
図8図8はHCC細胞株と活性肝星状細胞においてHH−F3画分がAURKAとFLJ10540を下方制御することを示す図である。図8(A)はHuh7、Mahlavu、PLC5細胞がHH−F3画分で25、50または75μg/mlの濃度において3時間処理され、抗FLJ10540と抗AURKA抗体でのイムノブロット解析によると、AURKAとFLJ10540両方の発現が濃度依存的に下方制御されたことを示す。図8(B)はHSC−T6細胞がHH−F3画分で5、15、50μg/mlの濃度において3時間処理され、Flj10540発現が濃度依存的に下方制御されたことを示す。
【0026】
図9図9はHCC細胞株においてアポトーシスを引き起こすHH−F3画分の効果を示す図である。ここでHuh7細胞とMahlavu細胞がHH−F3で5、25、50μg/mlの濃度において48時間処理された。図9(A)は細胞をヨウ化プロピジウム(PI)で染色し、フローサイトメトリーにより分析したDNA含量を示す。sub−G1細胞群の増加はHH−F3画分がHuh7細胞とMahlavu細胞のアポトーシスまたは壊死を誘発することを示している(*P<0.05、**P<0.001)。図9(B)と図9(C)は、HH−F3画分での24時間と48時間(B)、及び48時間(C)の処理後、抗開裂カスパーゼ−3及び開裂PARP(B)及び抗FAS、抗Bcl−2、抗Bcl−xL(C)について細胞可溶化物のイムノブロット解析を行った。結果、開裂カスパーゼ−3、開裂PARP、FASの発現レベルが増加し、一方Bcl−2とBcl−xLが減少したことから、細胞にアポトーシスが起こったことが示された。
【0027】
図10図10はHCC細胞株でのミトコンドリア膜電位の減少とROS産生の増加におけるHH−F3画分の効果を示す。図10(A)と図10(B)はJC−1ミトコンドリア膜電位試験を使用してHuh7細胞とMahlavu細胞のミトコンドリア膜電位(ΔΨ)を解析し、細胞のΔΨがHH−F3画分で5、10、15、25、50μg/mlの濃度において48時間(n=2)処理した後、減少したことを示している(RFU=ΔΨ)。図10(C)と図10(D)は、ハイドロエチジン(HE)染色によって測定した細胞内超酸化物(O)レベルが、5、10、15、25、50μg/mlの濃度における48時間のHH−F3画分処理後に対照のHCC細胞(DMSOで処理されたHuh7細胞とMahlavu細胞)と比較して大幅に減少したことを示している。図10(E)と図10(F)は、DCFHで測定した細胞内過酸化物のレベルが、5、10、15、25、50μg/mlの濃度における48時間のHH−F3画分処理後に対照のHCC細胞(DMSOで処理されたHuh7細胞とMahlavu細胞)と比較して増加したことを示している。HH−F3画分での処理後、Huh7細胞とMahlavu細胞において細胞内過酸化物と超酸化物の産生が剤量依存的に増加したことが分かった。
【0028】
図11図11はHuh7細胞でのAKT−Ser473リン酸化抑制とPTENタンパク質発現の活性化におけるHH−F3画分の効果を示す図である。抗FLJ10540、抗AURKA、抗AKT−Ser473、抗PTEN抗体でのイムノブロット解析によると、25、50、または75μg/mlの濃度においてHH−F3画分で48時間処理した後、AURKA、FLJ10540、AKT−Ser473が発現が下方制御され、一方PTENが濃度依存的に上方制御された。
【0029】
図12図12は硬変した肝臓と腫瘍量におけるヒドロキシプロリン含量の減少に関するGP抽出物と本発明によるHH−F3画分の効果を示す。ここで動物は4群に分けられ、材料及び方法で説明するように、水道水のみ(正常群)またはDEN溶液(他群)が供給された。図12(A)は肝硬変動物における胆汁流量(肝機能を測定するために記録された)の減少を示している(*P<0.05、ANOVA)。図12(B)は、肝硬変動物における脾臓肥大を示しており、ここでは脾臓重量と体重(BW)が測定され、脾臓重量/BWとして表されている。DEN群の脾臓重量/BW比は正常群より大幅に高く、脾腫が肝硬変に関連する門脈圧亢進症に起因するものであることを示しており(P<0.05、ANOVA)、一方で高用量群の脾臓重量/BW比のみがDEN群(P<0.05、ANOVA)よりも大幅に低かった。図12(C)は、硬変した肝臓におけるコラーゲン含量の増加を示しており、ここで肝硬変は肝臓のヒドロキシプロリン含量のレベルを測定することで判定され、高用量群、HH−F3群と対照群を比較したとき大幅な減少が観察された。図12(D)はDENにより誘発されたα−SMAの発現を示している。DEN処理の過程において各群からの肝臓試料のホルマリン/パラフィン切片を抗α−SMA抗体で染色し、デジタルカメラシステムにより10倍視野下で最も濃い染色区域を観察してα−SMA(+)区域の割合を判定した(*P<0.05、**P<0.005、ANOVA)。図12(E)はDENにより誘発された酸化ストレスを示す。NBT(Nitrotetrazolium blue chloride)は超酸化物に曝露されると不溶性の青色ホルマザン誘導体に還元される染色剤であり、青色沈殿物は組織中の超酸化物の存在を示す組織学的マーカーとして光学顕微鏡検査により判別でき、材料及び方法で説明するように、10倍視野下で最も濃い染色区域を観察してNBT(+)集合密度を判定した。図12(F)は腫瘍量の測定を示しており、ここでは犠牲死させた動物から取得した肝臓を5mmの切片にスライスし、直径が3mmより大きい可視の腫瘍結節すべての数をカウントして大きさを測定した。腫瘍量は結節の体積合計で表されている(**P<0.005、***P<0.001 DEN群と比較)。図(G)は化学物質誘発HCCと肝硬変の外観図であり、ここで飲用水中にDENを添加して9週間経口投与したマウスの肝臓には、硬変した肝臓内に複数の肝臓腫瘍が発生し、これら動物には表面の肉芽形成と境界に起伏のある複数の肝臓腫瘍の形成が観察された。
【0030】
図13図13はHCC細胞株の細胞生存抑制と、AURKAタンパク質発現の下方制御におけるイワベンケイ抽出物の効果を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
発明の説明
異なる定義がなされていない限り、本明細書で使用するすべての技術用語および科学用語は、本発明が属する分野の当業者が通常理解するものと同じ意味を有する。
【0032】
本明細書において使用される「ある」、「その」等の単数形には、文脈上明らかに単数である場合を除いて、複数の指示対象も含まれる。即ち、例えば「(ある)試料(a sample)」と言う場合には、こうした試料及び当業者に公知のその等価物が複数ある場合も含まれる。
【0033】
本発明は、グラプトペタルム属、イワベンケイ属、またはエケベリア属から構成される群より選択された植物をDMSOで抽出して調製した新規抽出物(GP抽出物という)を提供する。本発明は予期せずしてGP抽出物に抗癌活性があることを発見した。
【0034】
本発明によると、前記抽出物はこの技術において一般的に用いられる、または標準的な方法を用い、前記植物をジメチルスルホキシド(DMSO)で抽出して調製することができる。本発明の一実施例において、植物の葉を磨砕・凍結乾燥して粉末状とし、DMSO、好ましくは30%のDMSOとボルテックスで撹拌(vortexed)した。DMSOでの抽出前にメタノール(MeOH)での抽出が含まれてもよい。
【0035】
「グラプトペタルム属(Graptopetalum)」という用語は、グラプトペタル属のあらゆる植物、その一部あるいは複数の部分を指す。2つ以上のグラプトペタル属の種、またはその一部の組み合わせも含まれる。グラプトペタルム属は好ましくはオボロヅキ(Graptopetalum paraguayense)である。
【0036】
本明細書で使用する「イワベンケイ属(Rhodiola)」という用語は、イワベンケイ属のあらゆる植物、その一部あるいは複数の部分を指す。2つ以上のイワベンケイ属の種、またはその一部の組み合わせも含まれる。イワベンケイ属は好ましくはイワベンケイ(Rhodiola rosea)である。
【0037】
本明細書で使用する「エケベリア属(Echeveria)」という用語は、エケベリア属のあらゆる植物、その一部あるいは複数の部分を指す。2つ以上のエケベリア属の種、またはその一部の組み合わせも含まれる。エケベリア属は好ましくは養老(Echeveria peacockii)である。
【0038】
本発明の好ましい一実施例において、前記植物はオボロヅキまたはイワベンケイである。
【0039】
本明細書で使用する「抽出物」という用語は、抽出される物質を溶媒に浸漬するか、または溶媒と混合して得られた溶液を指す。本発明において、抽出物はDMSO抽出物である。
【0040】
本発明は、豊富な抗癌成分を含むグラプトペタルム属、イワベンケイ属、エケベリア属から構成される群より選択される植物からの画分も提供する。前記画分はジメチルスルホキシド(DMSO)で前記植物を抽出し、その後クロマトグラフィーで単離してHH−F3と呼ばれる画分を得ることで調製される。本発明の一実施例において、前記植物はオボロヅキまたはイワベンケイである。前記画分はDMSOで前記植物を抽出し、クロマトグラフィーで単離して、HH−F3と呼ばれる画分が得られる。本発明の一実施例において、Sephadex LH−20カラムがクロマトグラフィーに使用される。前記画分は細胞毒性を生じる効果と、癌細胞、特にHuh7細胞やHepG2細胞などのHCC細胞株においてAURKA、AURKB、FLJ10540の発現を下方制御する効果を有することが分かった。HH−F3画分の機構解明を行い、それによるとHH−F3画分がHCCのアポトーシスを誘発したことが示された。したがって、HH−F3画分は癌、特にHCCなど肝臓癌の予防または治療用の治療剤となり得る。
【0041】
本発明の一実施例により、HH−F3画分から透析によってHH−F3aと呼ばれる細画分が取得された。その後、HH−F3a画分から既知のプロアントシアニジン化合物とは異なる活性化合物が単離された。取得された前記化合物は、3,4,5−トリヒドロキシベンジル部分において豊富にプロアントシアニジン(プロアントシアニジン)を含有する。前記化合物は次の式(I)の構造で示される。
【化4】
式中、Rのうち1つがH、またはプロシアニジン(PC)単位であり、その他がOHまたはプロデルフィニジン(PD)単位であり、nが21〜38までの数字であり、PC単位:PD単位<1:20である。前記プロシアニジン(PC)単位の構造が、
【化5】
であり、前記プロデルフィニジン(PD)の構造が、
【化6】
である。
【0042】
したがって、本発明は抗癌活性を有することが実証されている式(I)の化合物を提供する。本発明の一実施例において、式(I)の前記化合物は、グラプトペタルム属、イワベンケイ属またはエケベリア属の植物からDMSOでDMSO抽出物を抽出して取得することができる。ウェスタンブロットによるAURKAの下方制御の解析を使用してDMSO抽出物を選択し、透析と更なる精製により「HH−F3a」と呼ばれる細画分を得る。
【0043】
本発明は、治療有効量の本発明の抽出物、画分または式(I)の化合物と、製薬上許容できる担体を含む、医薬組成物を提供する。
【0044】
本明細書で使用する「治療有効量」という用語は、治療の意図する目的を達するに足る薬剤の量を指す。例えば、HCCの治療に有効なグラプトペタルム属の量は、HCC細胞を殺すに足る量である。特定の薬剤の治療に有効な量は、薬剤の性質、投与経路、薬剤を受け入れる動物の種及び大きさ、投与の目的などの要因によって異なる。個別案における治療に有効な量は、本発明の開示及び分野において確立された方法に基づき当業者が経験的に判断することができる。
本発明の医薬組成物は、非経口または経口投与を含むがこれらに限定されない、適切な経路で投与することができる。非経口投与向けの医薬組成物には、溶液、懸濁液、乳剤、及び使用直前に溶媒に溶解または懸濁される固形注射用組成物が含まれる。注射剤は1つ以上の活性成分を希釈剤で溶解、懸濁、または乳化させて調製することができる。前記希釈剤の例としては、注射用蒸留水、生理食塩水、植物油、アルコール、及びそれらの組み合わせが挙げられる。さらに、前記注射剤は安定剤、可溶化剤、懸濁剤、乳化剤、緩和剤、緩衝化剤、保存料などを含むことができる。前記注射剤は最終製剤手順において滅菌されるか、または滅菌手順によって調製される。本発明の医薬組成物は、例えば凍結乾燥により、滅菌固形製剤として調製することもでき、滅菌後、または使用直前に滅菌注射用水またはその他滅菌希釈剤に溶解させて使用することができる。
【0045】
本発明によると、前記組成物は経口経路で投与してもよく、その場合前記組成物は固形または液体の形態とすることができる。固形組成物は錠剤、丸剤、カプセル剤、分散性粉末剤、顆粒剤などを含む。また、前記経口組成物は口腔に付着されるうがい薬及び舌下錠も含む。カプセル剤は硬質カプセルと軟質カプセルを含む。経口用途のこれら固形組成物において、1つ以上の活性化合物が単独で、または希釈剤、結合剤、崩壊剤、潤滑剤、安定剤、可溶化剤と混合して従来の製剤に調製される。必要時、そのような製剤はコーティング剤で剤皮を施すか、2層以上のコーティング層で剤皮を施すことができる。一方、経口投与向けの液体組成物は、薬学的に許容可能な水溶液、懸濁液、乳濁液、シロップ、エリキシル剤などを含む。そのような組成物において、一般的な希釈剤(精製水、エタノール、それらの混合物など)中で1つ以上の活性化合物が溶解、懸濁または乳化される。そのような希釈剤のほか、前記組成物は湿潤剤、懸濁剤、乳化剤、甘味剤、香味剤、香料、保存料、緩衝化剤などなどを含むこともできる。
【0046】
実施例中で本発明の抽出物、画分または化合物、あるいはその医薬組成物がHCC細胞においてアポトーシスを引き起こしたことが確認されており、それらが抗癌活性を備え、癌、特にHCCの予防または治療に用いることができることが示唆されている。また一方で、線維症、特に肝線維症の治療に有効であることが示唆されている。
【0047】
したがって、本発明は癌、特にHCCの治療用薬剤の調製における、本発明の抽出物、画分、または式(I)で表される化合物の使用を提供する。また、本発明は、必要とする患者に、治療に有効な量の本発明の抽出物、画分または化合物を投与することを含む、癌または線維症、特にHCC及び肝線維症の予防または治療方法を提供する。
【0048】
以下の実施例は、本発明を例示しているが、本発明の範囲を限定するものと解釈されてはならない。
【実施例】
【0049】
実施例
【0050】
実施例1:GPまたはイワベンケイからの抽出及び精製
【0051】
オボロヅキ(GPという)の葉を磨砕し、−20℃で凍結乾燥して粉末とした後、抽出の前に防湿室内において25℃で保管した。最初に、1.5gのGP粉末を10mlの100%メタノール(MeOH)と共に5分間ボルテックスで撹拌し、その後1500gで5分間遠心分離した。上清を除去した後、10mlのHO、100%アセトン、100%メタノール、100%エタノール、70%エタノール、50%エタノール、100%DMSO、30%DMSOを各ペレットに添加して各抽出物の再懸濁を行った。懸濁物を5分間ボルテックスで撹拌して混合し、1500gで5分間、2回遠心分離した後、再度9300gで5分間遠心分離し、0.45μmフィルタを使用して層流により室温でろ過した。30%DMSOの上清は、Sephadex LH−20カラムにより4つの画分(F1〜F4)に分画されるか、−20℃で150mg/mlの原液(30%DMSO GP抽出物という)として保管された。GP抽出物またはHH−F3画分は、活性化合物を取得するため、透析膜(MWCO 12−14,000)(Spectrum Laboratories、Rancho Dominguez、CA)により水に対して透析された。ウェスタンブロットによるAURKA、AURKB、FLJ10540のタンパク質レベル解析を使用してHH−F3画分と呼ばれる活性分子を解析した。加えて、HH−F3画分をさらにHPLCとH−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルにより解析し、活性分子の構造を識別した。
【0052】
同様に、イワベンケイ(RSという)植物を凍結乾燥して粉末とした後、抽出の前に防湿室内において25℃で保管した。1.5gのRS粉末を10mlのHOに溶解させ、1500gで5分間遠心分離した後、0.45μmフィルタを使用して層流により室温でろ過した。試料は150mg/mlの原液として−20℃で保管された。
【0053】
本発明のHH−F3画分の化学分析によると、H−NMRスペクトル及び13C−NMRスペクトルにおける大量の芳香族シグナルから、その主要成分がポリフェノール化合物であることが識別された。HH−F3画分中の主要な化合物は、凍結乾燥後のその特有のピンク色と、部分的に分銀色の金属様の光沢という特徴から、タンニンであることが識別された。濃縮タンニン定量の比色分析法(OD500でのモニタリング時標準としてカテキンを使用)によって判定されたHH−F3画分のタンニン総含量は約68%であった。HH−F3画分のHPLCフィンガープリント(図1)によると、化合物の2群(A群とB群)はHH−F3画分において異なる分子量の範囲を有することが示され、かつB群では1つの主成分と1つの微量成分が検出された。プロアントシアニジンに富んだ高分子量の画分、HH−F3a(出発原料HH−F3の量と比較して収率71.9%)が透析を使用してHH−F3画分から調製された。簡単に説明すると、HH−F3(112.1mg)を透析膜(MWCO 12−14,000)により水に対して透析し、内膜画分(HH−F3A、80.6mg)と外膜画分(7.4mg)を得た。この画分が活性化合物を含み、これはウェスタンブロットによるAURKAの消失を測定することで判定された(図6D)。HH−F3aのプロアントシアニジン画分の主要骨格はプロアントシアニジンポリマーであると判定され(以下を参照)、平均分子量(mMW)、平均重合度(mDP)、PC:PD率及び立体化学(シス:トランス)を含むその生理化学的特性を表1に示す。mMWとmDPは、分解された末端と伸長したモノマーの比率を分析することで判定される。さらに、調製手順を簡潔にするため、GP抽出物を水に対して直接透析する別の方法(方法II)が実施され、方法IIにより調製された化合物の生理化学的データも表1に示す。表1に示された生理化学的特性によると、方法IIにより調製された画分は方法I(HH−F3aの調製に使用した方法)によるそれと同じであることが示唆されている。
【化7】
HH−F3aの予測構造:プロデルフィニジン比率が高い(>95%)重合性プロアントシアニジン(21<n<38)。
【表1】
【0054】
GP由来の重合性化合物はこれまで報告されていないため、別の貴重なイワベンケイ属(Crassulaceous)の薬草、イワベンケイ(Rhodiola rosea)(ゴールデンルート)由来のポリフェノール化合物がHH−F3aの構造識別の参照化合物として使用される。イワベンケイは重合性プロアントシアニジン(PAC)を有することが報告されている。HH−F3a画分における主要化合物の構造はイワベンケイのプロアントシアニジン化合物と非常に類似している(表2参照)が、プロシアニジン単位(PC単位)に対するシグナルはマイナー(<5%)で、これは13C NMRスペクトル(δ 114ppm、B環C−2’及びC−5’)では検出不能であった。さらに、PAC化合物はヴィティスヴェニフェラ(Vitis vinifera)など多くの一般的なブドウ品種でよく見受けられる。したがって、ヴィティスヴェニフェラ由来のPACも比較に用いられる。表2にイワベンケイとヴィティスヴェニフェラ(一般的なブドウ品種)由来のプロアントシアニジンポリマーの生理化学的特性を示す。表2のデータと比較して、HH−F3a画分のプロアントシアニジン化合物は、PD対PCの比率が2.5倍以内、イワベンケイのmDPとmMWの3.0倍、ヴィティスヴェニフェラのmDPの30〜80倍、mMWの1.1〜4.9倍、3−O−ガロイル%の4.7〜41.3倍それぞれ高かった。知り得る限りにおいて、GP由来のプロアントシアニジン化合物が単離されたことはなく、同じ生理化学的特性を持つプロアントシアニジン化合物はこれまで報告されていない。この証拠は、HH−F3a画分中のプロアントシアニジン化合物が新規化合物であることを示唆しており、それは3,4,5−トリヒドロキシベンジル部分(PD単位のB環と没食子酸を含む)に富んでおり、イワベンケイにおいて見られるものと非常に類似しているが、ブドウの皮と種に見られるものよりずっと高い。
【表2】
【0055】
実施例3:実施例の効果
【0056】
1.生存試験
【0057】
細胞を24ウェルプレートに植え(4,000〜5,000細胞/ウェル)、一夜培養した後、30%DMSO GP抽出物またはHH−F3画分で0、24、48、または72時間処理した。処理後、細胞を1xPBS(137mM NaCl、2.7mM KCl、10mM NaHPO、2mM KHPO)で軽く3回洗浄し、その後0.5μg/mlの3−(4,5−ジメチルチアゾール−2−イル)−2,5−ジフェニルテトラゾリウムブロミド(MTT)で2時間培養した。培地を除去し、濃い青色の結晶を室温で10分間100%DMSOに溶解させた。ELISAリーダーにより570nmでOD値を測定した。
【0058】
2.ウェスタンブロット
【0059】
すべての試料を95℃で10分間加熱することにより変性させ、8%または10%のSDS−ポリアクリルアミドゲル電気泳動(SDS−PAGE)により濃縮ゲルと分離ゲルそれぞれ80Vと100Vで分離させた。SDS−PAGEの後、Bio−Rad転写システムを使用してタンパク質をポリフッ化ビニリデン(PVDF)膜に転写した。タンパク質の転写後、膜をポンソーSで染色し、タンパク質転写の効率と均一性を確認した。室温において30分間5%無脂肪脱脂粉乳(BD)で膜をブロックした後、一次抗体と4℃で一夜培養した。その後1xトリス緩衝生理食塩水Tween−20(TBST)で3回(各回10分間)膜を洗浄し、膜を二次抗体と2時間培養した後、1xTBSTで3回(各回10分間)膜を洗浄した。HRP基質過酸化物溶液/ルミノール試薬(ImmobilonTMウエスタン化学発光基質、ミリポア;1:1の割合で混合)を添加して二次抗体のシグナルを可視化し、富士フイルムLAS4000ルミノイメージアナライザーで検出した。
【0060】
3.細胞計数
【0061】
細胞を12ウェルプレートに(10,000〜30,000細胞/ウェル)一夜植えた後、HH−F3画分で0、24、48、または72時間処理した。細胞をトリプシン処理してから0.4%トリパンブルーと混合した後、カウントした。
【0062】
4.細胞周期解析及びフローサイトメトリー
【0063】
細胞をトリプシン処理して1xPBSで3回洗浄した後、800gで5分間遠心分離した。続いて、PBSに溶解した70%エタノールに細胞を再懸濁し、−20℃で16時間以上維持した。800gで5分間遠心分離した後、100μg/mlのリボヌクレアーゼA(Sigma−Aldrich)を含む冷PBSに細胞ペレットを20分間再懸濁した。その後細胞を20μg/mlのヨウ化プロピジウム(PI、Sigma−Aldrich)で20〜30分間染色し、DNA含量をBD FACSCantoで測定してFlowJoソフトウェアで解析した。
【0064】
5.ミトコンドリア膜電位試験
【0065】
Cayman Chemical社より購入したヨウ化5,5’,6,6’−テトラクロロ−1,1’,3,3’−テトラエチルベンゾイミダゾールカルボシアニン(JC−1)を使用してミトコンドリア膜電位の解析を行った。培養した細胞を7000細胞/ウェルの密度で96ウェルブラックプレートに植え、一夜培養した後、HH−F3画分有りまたは無しで48時間処理した。JC−1染色溶液を各ウェルに添加して37℃の暗所において15〜30分間軽く混合した。プレートを室温において400gで5分間遠心分離し、上清を除去した。その後、各ウェルにJC−1アッセイ緩衝液を添加してから、室温において400gで5分間遠心分離した後、上清を除去した。最後に、各ウェルにJC−1アッセイ緩衝液を添加して蛍光プレートリーダーを使用し、解析した。
【0066】
6.ROSレベルの測定
【0067】
超酸化物ラジカル(O)の細胞内産生をハイドロエチジン蛍光色素(AAT Bioquest, Inc.)で評価した。細胞はHH−F3画分有りまたは無しで48時間処理された。ハイドロエチジン(10μm)を各ウェルに添加して37℃の暗所において30〜60分間軽く混合した。細胞の蛍光を波長520nm(励起)と610nm(蛍光)でモニタリングした。
【0068】
細胞内過酸化物レベルはジクロロフルオレセイン(DCFH)ジアセタート(Marker Gene Technologies, Inc.)で判定した。HH−F3画分での48時間の処理後、培地をアスピレーションして細胞をPBSで2回洗浄した。続いて、37℃の暗所において無血清培地で細胞をDCFHと最終濃度20μMで30〜60分間培養した。細胞を再度PBSで洗浄し、200μlの培地に保持した。細胞の蛍光を波長485nm(励起)と528nm(蛍光)でモニタリングした。
【0069】
7.動物及び試験環境
【0070】
試験期間開始時点で6週齢の雄ウィスター系白(Wistar albino)ラット(150〜180g)120匹が使用された。研究期間中、動物はすべて標準食物と水を自由摂食し、疾病誘発の7日前に順化した。
【0071】
試験方法
【0072】
ラットは正常群(N=10)、ジエチルニトロサミン(DEN)群(N=30)、低用量GP群(N=30)、高用量GP群(N=30)に無作為に分割された。さらに追加の5匹のラットをHH−F3処理群として含めた。正常群を除くすべての群において、ラットは毎日唯一の飲用水源として100ppm(v/v)のDEN(Sigma−Aldrich、米国ミズーリ州セントルイス)水溶液を63日間飲用し、64日目からさらに14日間水道水を供給した。DEN溶液は毎週調製され、それまでの用量に対する反応としての動物の体重増減に基づき個別の用量で調製された。42日目以降目に見える肝臓腫瘍が記録され、63日目以降には肝線維症が観察された。試験期間中、動物は毎週体重測定を行って体重の増加を計算し、水消費量も毎週計測された。低用量群のラットには1匹当たり0.6g、高用量群のラットには1匹当たり1.8gの凍結乾燥したGP粉末がそれぞれ42日目から3週間にわたって毎日与えられた。
【0073】
採取手順及び肝臓の形態学的評価
【0074】
すべての動物は84日目に安楽死された。動物は一夜の絶食後、CO吸入によって犠牲死された。ラットの犠牲死後、体、肝臓、脾臓の重量を測定し、正中開腹による解剖の後、器官の状況が記録された。迅速にすべての肝葉を採取し、各時間点で肝臓表面の状態、肝臓病巣、持続性結節(PN)、または癌の進行具合を徹底的に検査した。その後、肝臓を5mmの切片にカットした。すべての肝臓表面上及び5mmの切片内の肉眼で確認できる結節をカウントし、その数量と大きさを判定した。
【0075】
腫瘍量の評価
【0076】
DENが与えられた動物における腫瘍形成の過程を確立するため、すべての肝葉が迅速に採取され、かつすべての肝臓表面上及び5mmの切片内の肉眼で確認できる結節をカウントし、その数量と大きさを判定した。腫瘍量は各動物の直径が3mmを超える全腫瘍結節の体積合計を計算し、群を比較することで判定された。
【0077】
胆汁流速
【0078】
動物を犠牲死させる前に80mg/kgのケタミンによる深麻酔後、胆汁流速が測定された。胆汁流速の測定には、総胆管内にPE10シリコンチューブを配置してから、計算用ポリエチレンチューブに接続した。チューブ内の胆汁流量を5分間隔で測定した。
【0079】
組織病理学的評価
【0080】
血液排出後、腫瘍を含む約5mm厚の組織片を各肝葉から取り出した。5μm厚の切片を切り出してヘマトキシリン・エオジンで染色し、公開されている診断基準を使用して組織病理学的分析を行った。
【0081】
α−平滑筋アクチン(α−SMA)免疫組織化学染色
【0082】
肝臓試料をホルマリンで固定し、パラフィンで包埋した後、5μmの切片を切り出した。切片は脱パラフィン処理と再水和後、0.03%の過酸化水素で10分間処理し、内在性ペルオキシダーゼ活性を失活させた。続いてPBSで2回洗浄した後、切片をマウス抗ヒトα−SMAモノクローナル抗体(1:50希釈、DakoCytomation、デンマーク)と室温で1時間培養した。α−SMA染色のため、切片を洗浄し、二次抗体、ウサギ抗マウスIgG(1:200希釈)と室温でさらに1時間培養した。切片は同様に形成された。染色後、切片をヘマトキシリンで対比染色して顕微鏡で検査した。デジタルカメラシステムHC−2500(Fuji Photo Film)、Adobe Photoshopバージョン5.0J、Image−Pro Plusバージョン3.0.1Jを使用してα−SMA陽性区域(肝臓切片のmm/cm)の割合を測定した。
【0083】
肝臓中のヒドロキシプロリン含量試験
【0084】
肝臓試料の重量を計測し、20mgの冷凍試料を20mlの6N HCl中で加水分解して慎重に磨砕した。さらに、1mgの組織に6N HClを加え、総量を30mlとした。HCl中で磨砕された組織を120℃で16時間加水分解した。しばらく氷の上で冷却した後、8000gで10分間遠心分離し、上清を除去して新しいチューブに入れ替えた。蒸発で失われた体積を水で補充した。等しい体積の6N NaOHを加えて混合し、リトマス紙を使用して溶液をpH4〜9に調整した。40μlの中和後の試料溶液を96ウェルのELISAプレートに加え、5mlの7%クロラミンT(Sigma−Aldrich)と20mlの酢酸/クエン酸緩衝液を含む溶液を使用して酸化した。その後、150mlのエールリッヒ試薬を添加した。最終混合物を60℃で35分間培養した後、室温でさらに10分間培養し、その後560nmで吸光値を測定した。100、80、60、40、20、0mg/mlの標準4−ヒドロキシ−L−プロリン(Sigma−Aldrich)を含有する標準溶液を同様に処理した。この範囲(r=0.99)で標準曲線は線形であった。肝臓ヒドロキシプロリンレベルの値はヒドロキシプロリン(mg)/肝湿重量(g)として表された。すべての試験は3回繰り返して実施された。
【0085】
酸化ストレスの免疫細胞化学分析
【0086】
ニトロブルーテトラゾリウム(NBT、Sigma−Aldrich)潅流法を使用して肝臓におけるデノボROS産生部位を特定した。NBT潅流肝臓を取り除き、亜鉛/ホルマリン溶液中で固定し、ホルマザン沈殿物の組織検査を行った。Adobe Photoshop 7.0.1画像ソフトウェア分析を使用して青色NBT沈殿物の密度を判定した。
【0087】
結果
【0088】
Huh7細胞及びMahlavu細胞における異なるGP調製物の効果
【0089】
GPの潜在的生物活性を試験するため、水抽出物、ブタノール抽出物、アセトン抽出物、メタノール抽出物、100%エタノール抽出物、70%エタノール抽出物、50%エタノール抽出物、100%DMSO抽出物、30%DMSO抽出物を含む抽出物の異なる調製物を調製し、ヒトHCC細胞の処理に使用した。図1に示すように、GP抽出物の異なる調製物によって生じた成長抑制効果を剤量依存的方法で評価した。MTT試験結果によると、30%DMSO抽出物がHuh7細胞(図2A)とMahlavu(図2B)細胞の生存性を大幅に抑制することが示された。
【0090】
GPが間期と有糸分裂中の両方で活性化した肝星細胞とHCC細胞株におけるAURKA、AURKB、FLJ10540タンパク質発現レベルを低下させた
【0091】
AURKA、AURKB、FLJ10540は癌遺伝子であり、HCC中で過剰に発現される。このため、GP抽出物の異なる調製物がヒトHCC細胞株中のこれら癌タンパクを抑制するかを試験した。結果、GP抽出物(方法の段落で説明されるように、100%メタノールから取得した後、30%DMSOで抽出、ここでは30%DMSO GP抽出物という)が、活性化された肝星細胞(HSC−T6)においてFlj10540とAurkbのタンパク質発現レベルを抑制し(図3A)、かつHCC細胞(HepG2とHuh7)におけるFLJ10540、AURKA、AURKBのタンパク質発現レベルが抑制された(図3B)ことが分かった。AURKAとFLJ10540両方の発現レベルは間期より中期の間より高い。次に、GPがHCC細胞において有糸分裂中にこれら2つのタンパク質の発現を抑制するかを調査した。Huh7細胞とHepG2細胞を50〜75μg/mlのノコダゾールで18時間処理し、続いてノコダゾールを洗浄せずに30%DMSO GP抽出物で3時間処理した。これまでの発見と同様に、AURKA、AURKB、FLJ10540が有糸分裂中高い発現を示した。AURKA、AURKB、FLJ10540のタンパク質発現レベルは間期と中期の両方の間減少した(図3C)が、PIN1、HURP、PLKを含め検査した他の有糸分裂タンパク質において大幅な変化は観察されなかった(データは未提示)。
【0092】
30%DMSO GP抽出物(HH−F3画分)のみHCC細胞株におけるAURKAタンパク質発現を抑制したが、異なる溶剤から調製されたその他抽出物は抑制しなかった
【0093】
ヒトHCC Huh7細胞を500μg/mlのGP抽出物の異なる調製物で48時間処理した。30%DMSO抽出物はこれら細胞においてAURKAのタンパク質発現レベルを大幅に抑制した(図4A)。対照的に、水またはブタノールから得たGP抽出物は、3時間の処理後、HepG2細胞におけるAURKAまたはAURKBのタンパク質発現レベルを抑制しなかった(図4B)。AURKAとFLJ10540はHCCにおいて過剰発現されるため、GPがHCC細胞の成長に影響を有するかを検査した。その結果、30%DMSO GP抽出物が50%の細胞生存率抑制濃度(IC50)でHuh7細胞とMahlavu細胞の細胞毒性を引き起こすことが分かり、IC50値はそれぞれ48時間の処理後約500μg/mlと250μg/mlであった(図5)。
【0094】
HH−F3がHCC細胞株におけるAURKAタンパク質発現を抑制した
【0095】
30%DMSO GP抽出物が活性化された肝星細胞と肝癌細胞においてAURKA及びFLJ10540のタンパク質発現レベルを抑制し(図2)、GP中の活性分子を生成するためにこの試験を使用できることが示唆された。Sephadex LH−20カラムを使用して、30%DMSO GP抽出物から4画分を取得した(図6A)。3時間の処理後ウェスタンブロットで分析したところ第3画分(HH−F3という)のみHepG2細胞においてAURKAとAURKBの発現を抑制したが、一方でその他の画分(HH−F1、HH−F2、HH−F4)はAURKAとAURKBタンパク質発現を抑制しなかった(図6B)。総合すると、30%DMSOから調製されたGP抽出物とHH−F3画分は、3時間の処理後HepG2細胞におけるAURKAとAURKBのタンパク質発現レベルを抑制した(図6B及び図6C)。さらに、HH−F3画分から透析を使用してHH−F3aと呼ばれる活性細画分を(出発原料HH−F3と比較して71.9%の収率で)取得した。このHH−F3a画分には、(HH−F3b画分にはないが)活性化合物が含有され、これはウェスタンブロットによりAURKAの消失を測定することで判定された(図6D)。
【0096】
HH−F3画分はHSC−T6細胞とHCC細胞株において細胞生存率を減少する
【0097】
細胞生存率におけるHH−F3画分の効果を調査するため、Huh7、Mahlavu、PLC5、HSC−T6細胞を濃度5、25、50、75、100μg/mlのHH−F3画分で24、48、72時間処理した。MTT試験での検査によると、これら試験細胞タイプの生存率は、HH−F3処理の結果抑制された。Huh7、Mahlavu、PLC5、HSC−T6細胞におけるHH−F3画分での処理のIC50値は72時間でそれぞれ約50、37.5、75、20μg/mlであった(図7A図7D)。この発見をさらに確認するため、細胞生存率をHuh7、Mahlavu、PLC5細胞のトリパンブルー染色で検査した。HH−F3画分処理の24、48、72時間後、濃度5、25、50、75、100μg/mlで、時間及び剤量依存的な細胞生存率の減少が示された(図7E図7G)。総合すると、30%DMSO GP抽出物とHH−F3画分のいずれもHCC細胞株と活性肝星状細胞の細胞生存率を抑制することができる。
【0098】
次に、Huh7、Mahlavu、PLC5、HSC−T6細胞を25、50、75μg/mlのHH−F3画分で3時間処理した。HH−F3画分は試験した3つすべてのHCC細胞株とHSC−T6細胞において、AURKA及びFLJ10540の両方の発現を抑制した(図8A図8B)。このHH−F3画分の抑制効果が転写レベルで発生したのか否かを調査するため、FLJ10540とオーロラキナーゼファミリー(AURKA、AURKB、AURKC)の遺伝子発現レベルの変化を検査した。HepG2細胞を50μg/mlのHH−F3画分で6時間処理した後、マイクロアレイ(U133Aチップ、Affymetrix)で遺伝子発現レベルを解析し、ウェスタンブロットでタンパク質レベルを解析した。対照群と比較して、HH−F3画分での処理後、タンパク質レベルが低下したにも関わらず、前述の特定の遺伝子発現レベルにおいて変化はなかった(データ未提示)。このため、HH−F3画分は恐らく転写レベルではなくタンパク質レベルでHCC細胞の成長を調整すると考えられる。
【0099】
HH−F3画分がHCC細胞株においてアポトーシスによる細胞死をもたらす
HCC細胞の細胞周期プロファイルにおけるHH−F3画分の効果について、ヨウ化プロピジウム(PI)染色を使用し、抽出物を解析した。Huh7細胞とMahlavu細胞を5、25、50μg/mlのHH−F3で48時間処理した。図8Aに示すように、HH−F3画分はHuh7細胞とMahlavu細胞の細胞周期進行を阻害した。50μg/mlのHH−F3画分による48時間の処理後、Huh7のsub−G1細胞群の増加は22%であり、Mahlavu細胞では26%であった。HH−F3画分はMahlavu細胞においてHuh7細胞よりも大きなsub−G1細胞群の増加を生み出しており、これは前述した細胞毒性効果(図9A)と一致している。次にHuh7細胞とMahlavu細胞におけるHH−F3画分のアポトーシス細胞死誘発能力を検査した。濃度5、25、50μg/mlでの24時間と48時間の処理後、開裂カスパーゼ−3と開裂PARPのタンパク質発現レベルは剤量依存的に増加した。同じ濃度下で、HH−F3画分もアポトーシス分子FASの上方制御と、BCL2及びBCL−XLの下方制御を生じた(図9C)。これらのデータは、HH−F3画分がカスパーゼ依存的なアポトーシス細胞死を誘発することを示している(図9B)。
【0100】
HH−F3画分がHCC細胞株においてミトコンドリア膜電位を減少させ、ROSを増加させる
【0101】
活性酸素(ROS)とミトコンドリアは、生理的条件及び病理学的条件のいずれにおいてもアポトーシス誘導において重要な役割を果たす。次にHH−F3画分が外因性経路または内因性経路を介してアポトーシスを引き起こすかを調査した。内因性経路の指標の1つであるミトコンドリア膜電位がHCC細胞で変化されるかを試験した。Huh7細胞とMahlavu細胞を5、25、50μg/mlのHH−F3画分で処理し、48時間の処理後細胞のミトコンドリア膜電位を検査した。対照群と比較して、アポトーシス細胞の数が増加した。これは、HH−F3画分での処理後膜電位がHuh7細胞とMahlavu細胞で減少したミトコンドリア膜電位(ΔΨ)の結果(図10A)と一致している。
【0102】
いくつかの報告において、ROSはΔΨの損失後のみ産生されることが示されている。ROSは超酸化物陰イオン、過酸化水素、ヒドロキシルラジカルを含み、これらすべてが酸素から派生している。ROSは光合成と酸素呼吸中の電子伝達プロセスの結果として産生され、正常な細胞機能に必要な生理濃度で、細胞内シグナリングと酸化還元調節に関与する。過剰なレベルのROSは酸化ストレスを引き起こし、これは脂質、タンパク質及びDNAの酸化を引き起こすため、細胞にとって潜在的に有害である。HH−F3画分でHCC細胞を刺激することでROSの産生に変化が生じるか否かを試験した。Oの細胞内産生をハイドロエチジン蛍光色素で評価し、細胞内過酸化物のレベルをDCFHジアセタートで判定した。HH−F3画分で細胞を処理した後、HCC細胞における細胞内過酸化物(図10C図10D)及び超酸化物(図10E図10F)の細胞産生が増加した。これは、HH−F3画分が内在性経路を介してアポトーシスを引き起こすことを示唆している。
【0103】
HH−F3画分がAktのリン酸化を減少させ、PTENの発現を増強する
【0104】
例えばAKT経路など一部の細胞増殖経路はアポトーシスの抑制とHCCにおける異常に関連がある。HH−F3がHCC細胞に細胞毒性を引き起こしたため、HH−F3がHCC細胞における細胞増殖経路に影響するかを調査した。Huh7細胞を5、25、50μg/mlの濃度のHH−F3で48時間それぞれ処理した。Huh7細胞では、HH−F3の処理下でAKTのSer473リン酸化が下方制御されたが、トータルのAKTタンパク質は影響されなかった(図11)。興味深いことに、HH−F3はPI3k/AKT依存シグナリング負の調節因子であるホスファターゼテンシンホモログ(PTEN)のタンパク質レベルを活性化した。これらの結果は、HH−F3が細胞増殖のAKTシグナル伝達経路を調節し、細胞アポトーシスを誘発する可能性を示唆している。
【0105】
GP抽出物が肝硬変動物の胆汁排出を増加させた
【0106】
肝臓機能を反映する胆汁流速の測定(図12A)、肝硬変に関連する門脈圧亢進症の指標である脾臓重量/体重の比率の定量化(図12B)、及びDENにより誘発されるα−SMA発現の解析(図12D)によって肝硬変も評価した。すべてのデータが高用量GPによる処理後、肝硬変の状態の改善を示し、胆汁流量の増加、脾臓サイズの減少、α−SMA(+)区域の割合の大幅な減少を示した。
【0107】
GP抽出物とHH−F3が硬変した肝臓におけるヒドロキシプロリン含量を減少した
【0108】
肝臓のヒドロキシプロリン含量レベルを測定することで肝線維症を判定した。DEN誘発動物においてヒドロキシプロリンレベルの大幅な増加が観察された(143±30μg/g)。対照的に、低用量GP、高用量GPまたはHH−F3での処理後、ヒドロキシプロリン含量はそれぞれ98±18μg/g(P<0.05DEN群と比較)、70±10μg/g(P<0.05)、72±8.2μg/g(P<0.05)であった(図12C)。
【0109】
GP抽出物とHH−F3が酸化ストレスを減少した
【0110】
NBT(Nitrotetrazolium blue chloride)は超酸化物に曝露されると不溶性の青色ホルマザン誘導体に還元される染色剤であり、青色沈殿物は組織中の超酸化物の存在を示す組織学的マーカーとして光学顕微鏡検査により判別できる。10倍視野下で最も濃い染色区域を観察してNBT(+)集合密度を判定した。DEN誘発動物においてNBT(+)集合の大幅な増加が観察された(23±3)。対照的に、低用量GP、高用量GPまたはHH−F3での処理後、NBT(+)集合密度はそれぞれ13±4(P<0.05DEN群と比較)、4.2±0.6(P<0.005)、6.2±2.1(P<0.05)であった(図12E)。これらの結果は、DENによって誘発される酸化ストレスがGP抽出物とHH−F3の処理によって減少される可能性を示唆している。
【0111】
GP抽出物とHH−F3が腫瘍量を減少した
【0112】
犠牲死させた動物から取得した肝臓を5mmの切片にスライスした。直径3mmを超える目に見える腫瘍結節すべての数をカウントし、大きさを測定した。腫瘍量は腫瘍結節の体積合計で表されている。目に見える腫瘍がDEN誘発動物において観察された(腫瘍量2350±905mm)。対照的に、低用量GP、高用量GPまたはHH−F3での処理後、肝臓における腫瘍量はそれぞれ110±105mm(P<0.005DEN群と比較)、23±31mm(P<0.005)、86±12(P<0.05)であった(図12F)。肝臓の代表的な写真にはラットの硬変した肝臓に複数の肝臓腫瘍が見られた。これらの動物では表面の肉芽形成と境界に起伏のある複数の肝臓腫瘍の形成が観察され、低用量GP、高用量GPまたはHH−F3での処理後、目に見える腫瘍の数と起伏のある肝臓表面が改善された。
【0113】
イワベンケイ抽出物の試験も実施し、それらがHCC細胞株の細胞生存率を抑制し、AURKAタンパク質発現を下方制御することが分かった(図13)。
【0114】
本発明が属する技術分野における当業者が、更なる例示の必要なく、ここにおける説明に基づいて本発明をその最大限の範囲で利用することができると確信される。したがって、提示した説明及び請求の範囲は本発明の範囲を限定するものではなく、例示を目的としたものであると理解されるべきである。
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