【実施例】
【0048】
当業者には、テクノロジーが進歩するにつれて本発明の概念を様々なやり方で実施可能なことが明白である。本発明及びその実施形態は下記の実施例に限定されず、請求項の範囲内で変化し得る。
【0049】
実施例1:ノロウイルスVLPの作製及び精製
ノロウイルスGII−4カプシド遺伝子の抽出及びクローニング
ノロウイルスGII−4を1999年、フィンランドにおいて患者の便から単離した。便からのRNAを、QiaAmp RNAウイルスミニキット(Qiagen社、ドイツ)を使用して抽出した。ノロウイルスVP1カプシド遺伝子(1620bp)の完全遺伝子を含有するDNA断片を、逆転写酵素ポリメラーゼ連鎖反応法(RT−PCR)により以下のプライマー:JV24順方向(5’−GTGAATGAAGATGGCGTCGA−3’;SEQ ID NO:1)(Buesa et al.,2002)及び逆方向(5’−TTATAATGCACGTCTACGCCC−3’;SEQ ID NO:2)を使用して増幅した。VP1カプシド配列の完全長DNAコピーを、ABI PRISM(商標)310ジェネティックアナライザ(Applied Biosystems社、米国)でシーケンシングすることによって得た。問題のノロウイルス株を、EMBL/GenBank及びEuropean Food−borne Viruses in network(FBVE)に基づいて遺伝子クラスタに分類した(GenBank配列データベース受入番号AF080551)。完全VP1カプシド遺伝子を、以下のプライマー:GII−4−順方向(5’CACAGGATCCATGAAGATGGCGTCGAATGAC−3’;SEQ ID NO:3)及びGII−4−逆方向(5’CTCTGAATTCTTATAATGCACGTCTACGCCCCGCTCCA−3’;SEQ ID NO:4)を使用してPTC−200 DNAエンジン(MJ Research社)で増幅した。増幅した断片をpCR2.1−TOPOベクター(Invitrogen社、米国)にクローニングし、更にバキュロウイルスpFastBac1トランスファーベクター(Invitrogen社)にサブクローニングした。化学的にコンピテントなTOP10大腸菌細胞への形質転換後、VP1を、ABI PRISM(商標)310ジェネティックアナライザ(Applied Biosystems社)でシーケンシングすることによって検証した。
【0050】
ノロウイルスGII−12及びGI−3カプシド遺伝子の抽出及びクローニング
フィンランドにおいて、ノロウイルスに感染した患者から便検体を回収した。RNAを上述したように抽出した(Qiagen社)。ノロウイルスGII−12 VP1カプシド遺伝子及びGI−3 VP1カプシド遺伝子を、RT−PCRにより以下のプライマー:
GII−12−順方向(5’−GTGAATGAAGATGGCGTCGA−3’;SEQ ID NO:5)、
GII−12逆方向(5’TTACTGTACTCTTCTGCGCCC−3’;SEQ ID NO:6)、
GI−3順方向(5’−GTAAATGATGATGGCGTCTAA−3’;SEQ ID NO:7)及び
GI−3逆方向(5’−TGGGCCATTATGATCTCCTAAT−3’;SEQ ID NO:8)を使用して増幅した。アンプリコン(1.6Kb)をシーケンシングし、株を、EMBL/GenBank及びFBVEに基づいて分類した(GenBank配列データベース受入番号:GII−12 AJ277618、GI−3 AF414403)。ノロウイルスVP1カプシド遺伝子(GII−12、GI−3)はコドン最適化された。GII−12をpFastBacDualトランスファーベクター(Invitrogen社)にクローニングし、GI−3をpFastBac1トランスファーベクター(Invitrogen社)にクローニングした。
【0051】
ノロウイルスカプシド組み換えバキュロウイルス(BV)ストックの調製
組み換えバクミドを作りだすために、pFastBacコンストラクトを、製造業者の指示通りにBac−to−Bacバキュロウイルス発現系(Invitrogen社)によりDH10BacTMコンピテント大腸菌に形質転換した。バクミドDNAを2mlのオーバーナイトLB培養物からPureLink HiPure Plasmid DNAミニプレップキット(Invitrogen社)により精製した。組み換えバクミドDNAをPCRにより分析してバクミド中の遺伝子の存在を検証した。pUC/M13を分析するために、順方向及び逆方向プライマー(Invitrogen社)を使用した。VLPが、Bac−to−Bac発現系に従った組み換えバキュロウイルスを感染させたスポドプテラ・フルギペルダ(Spodoptera frugiperda)(Sf9)昆虫細胞で作製された。より明確に説明すると、Sf9細胞を、マルチディッシュ6ウェル(Nunc、Thermo Fisher社、デンマーク)に1x10
6細胞/ml(無血清培地)(Sf 900 SFM III、Invitrogen社)で播種し、セルフェクチン(Invitrogen社)を使用してバクミドDNA(1μg)によりトランスフェクションを行った。細胞を26℃で成長させ、トランスフェクションから72時間後に収穫した。細胞懸濁液を500xgで5分間にわたって遠心分離にかけ、上清(P1バキュロウイルスストック)をアリコートし、4℃で保存した。Sf9細胞にバキュロウイルスP1ストックで感染させ、感染から6日後(dpi)に細胞懸濁液を500xgで5分間にわたって遠心分離し、アリコートした上清(P2バキュロウイルスストック)を4℃で保存した。P2ストックの感染多重度(MOI)として表わされるバキュロウイルス力価(プラーク形成単位:pfu)を、BacPakラピッドタイターキット(Clontech laboratories社、米国)で求めた。
【0052】
組み換え(r)ノロウイルスカプシドの発現並びにVLPの作製及び精製
ノロウイルスVLPの作製のために、200mlのSf9細胞培養物を密度1x10
6細胞/mlで準備し、細胞に感染多重度1のP2ストックで感染させた。6日目に、感染させた細胞培養物を3000xgでの30分間にわたる4℃での遠心分離により清澄化した。上清中のVLPを、100,000xgでの2時間にわたる4℃での超遠心分離(L8−60Mウルトラセントリフュージ、ベックマンSW−32.1 Tiロータ)により濃縮し、ペレットを3mlの0.2MのTris−HCl(pH7.3)に再懸濁させた。VLPを10〜60%の不連続スクロース勾配にロードし、100,000xgでの1時間にわたる4℃での超遠心分離に供した。画分を、底部に孔を開けて回収した。約25個の画分が回収され、各画分を、カプシドタンパク質の発現についてSDS−PAGEで分析した。第1のスクロース勾配画分の指示した画分の分析により、35%スクロースに遊走したカプシドタンパク質のはっきりとしたピークが示され、これらの画分をプールした。更に、GII−4 VLPを追加の不連続スクロース勾配(35〜60%)で精製した。VLPを含有する画分を回収し、プールした。スクロースを一晩にわたる1Lのリン酸緩衝食塩水(PBS)に対する透析により除去した。VLPを限外濾過により濃縮した。簡単に説明すると、最高15mlの透析済みの生成物を、製造業者の指示通りにAmicon Ultra 30kDa遠心分離フィルタ装置(Millipore社、ドイツ)を使用して濃縮した。VLPをPBS中で4℃で保存した。全体のタンパク質濃度を、Pierce(登録商標)BCAプロテインアッセイ(Thermo Scientific社、米国)を使用して数量化した。純度及び完全性を、12%SDS−PAGEとそれに続く濃度分析、EMにより検証した。
【0053】
実施例2:ロタウイルス抗原
A.ロタウイルスrVP6の作製及び精製
ロタウイルスVP6の抽出及びクローニング
VP6遺伝子セグメントの完全ヌクレオチド配列を得るために、G1[P8]RT−PCR強陽性の急性胃腸炎患者から得た10%便懸濁液のRNAを、製造業者の指示に従って、QIAamp RNAウイルスミニキット(Qiagen社)により抽出した。抽出したdsRNAを、1362bpのVP6を作りだすアンプリコンの特異的プライマー対(Matthijnssens et al.,2006)とのRT−PCR反応に供した。アンプリコンを、QIAquickゲル抽出キット(Qiagen社)により精製し、ABI PRISM TM 310ジェネティックアナライザ(Applied Biosystems社)によりシーケンシングした。VP6アンプリコンの配列はコドン最適化され、pFastBac1ベクター(Invitrogen社)にクローニングされた。
【0054】
ロタウイルスVP6組み換えバキュロウイルス(BV)ストックの調製
ストックの調製は、本質的に、ノロウイルスに関して上述した通りに行われた。
【0055】
ロタウイルスrVP6の作製及び精製
組み換えVP6の作製については、200mlのSf9昆虫細胞に、感染多重度5pfu/細胞、細胞濃度1x10
6細胞/mlでVP6の遺伝子を含有している組み換えバキュロウイルスを感染させた。培養物の上清を6dpiで回収し、1000rpmで20分間にわたって+4℃で清澄化した。組み換えタンパク質を、100000xgでの1.5時間にわたる+4℃での超遠心分離により濃縮し、ペレットを0.2MのTris−HCl(pH7.3)に再懸濁させ、連続スクロース勾配(10〜60%)で、100000xg、16時間、+4℃で精製した。追加のスクロース勾配精製も適用し得る。VP6タンパク質を含有するスクロースの画分をプールし、一晩にわたってPBSに対して透析し、Amicon Ultra50遠心分離フィルタユニット(Millipore社)での遠心分離により濃縮した。タンパク質をPBS中で4℃で保存した。全体のタンパク質濃度を、Pierce(登録商標)BCAプロテインアッセイを使用して数量化した。純度及び完全性を、12%SDS−PAGEとそれに続く濃度分析、EMにより検証した。
【0056】
B.2層(dl)ロタウイルスVP2/VP6 VLPの作製及び精製
ロタウイルスVP2の抽出及びクローニング
VP2遺伝子セグメントの完全ヌクレオチド配列を得るために、同じG1[P8]RT−PCR陽性急性胃腸炎患者のRNAをQIAamp RNAウイルスミニキット(Qiagen社)により、ロタウイルスrVP6の作製及び精製に関して説明したように抽出した。RT−PCR反応を、VP2の特異的プライマー対(Matthijnssens et al.,2006)を使用して行うことによって2662bpのアンプリコンを作製した。このアンプリコンを、VP6に関して用いたやり方と同様のやり方で精製及びシーケンシングした。VP2アンプリコンの配列はコドン最適化され、またpFastBacDualベクター(Invitrogen社)にクローニングされた。
【0057】
ロタウイルスVP2組み換えバキュロウイルス(BV)ストックの調製
ストックの調製は、本質的に、ノロウイルスに関して上述した通りに行われた。
【0058】
ロタウイルスdl VP2/VP6 VLPの作製及び精製
ロタウイルス2層(dl)VP2/VP6 VLPを作製するために、Sf9昆虫細胞に、同感染多重度/細胞、細胞濃度1x10
6細胞/mlでVP2及びVP6の遺伝子を含有する組み換えBVを同時感染させた。培養物の上清を7dpiで回収し、1000rpmで20分間にわたって+4℃で清澄化した。組み換えVP2/6−VLPを、組み換えノロウイルスVLPと同様に濃縮し、連続スクロース勾配で精製した。VP2及びVP6を含有するスクロースの画分をプールし、PBSに対して透析し、Amicon Ultra−100遠心分離フィルタユニット(Millipore社)での遠心分離により濃縮した。VLPをPBS中で4℃で保存した。全タンパク質を、Pierce(登録商標)BCAプロテインアッセイ(Thermo Scientific社)を使用して数量化した。VP2/6の純度及び完全性を、12%SDS−PAGE及びEMで検証した。VP2/VP6サンプル中のVP6の割合を、濃度分析により数量化した。
【0059】
実施例3:キメラタンパク質(GII−4カプシド+VP6)の作製及び精製
キメラタンパク質調製物を、Sf9昆虫細胞に、感染多重度5のノロウイルスGII−4 rBV及び感染多重度5のロタウイルスVP6 rBVを同時感染させることによって作製した。同時感染させた昆虫細胞の上清を、6dpiで収穫した。細胞培養物を、3000xgでの30分間にわたる4℃での遠心分離により清澄化し、上清を100000xgで2時間にわたって4℃で超遠心分離した。ペレットを0.2MのTris−HCl(pH7.3)に再懸濁させ、キメラタンパク質を、連続スクロース勾配(10〜60%)により100000xgで3時間にわたって4℃で同時精製した。両方の組み換えタンパク質(それぞれNVカプシド及びRV VP6)を含有する画分を、底部に孔を開けて回収し、SDS−PAGEにより分析した。キメラタンパク質を含有する40%スクロースからの画分をプールし、スクロースをPBSに対する透析により除去した。透析済みの生成物を、Amicon Ultra30kDa遠心分離フィルタ装置で濃縮した。生成物をPBS中で4℃で保存した。全体のタンパク質濃度を、Pierce(登録商標)BCAプロテインアッセイ(Thermo Scientific社)を使用して数量化した。各タンパク質の純度及び完全性を、12%SDS−PAGEとそれに続く濃度分析、EMにより検証した。
【0060】
実施例4:ノロウイルス及びロタウイルスVLPのキャラクタリゼーション
SDS−PAGE及び濃度数量化
サンプルを、アクリルアミド12%の分離ゲルとアクリルアミド5%の濃縮ゲルのポリアクリルアミドゲル(Biorad Laboratories社、米国)を使用したSDS−PAGE(ドデシル硫酸ナトリウムポリアクリルアミドゲル電気泳動)にかけた。サンプルを5分間にわたって、2%SDS、5%β−メルカプトエタノール、62.0mM Tris−HCl(pH6.8)、25%グリセロール及び0.01%ブロモフェノールブルー(Biorad社)を含有するレムリサンプルバッファ中で沸騰させた。ゲルをPageBlue TMタンパク質染色溶液(Fermentas社、リトアニア)で染色した。
【0061】
SDS−PAGEゲル上のタンパク質の帯を、AlphaEase(登録商標)FCソフトウェア(Alpha Innotech社、米国)で製造業者の指示に従って数量化した。
【0062】
図1Aは、矢印で印をつけた、期待される分子量の特定されたタンパク質ののったページブルー染色ゲルの写真である。GII−4カプシド及びロタウイルスVP6のキメラタンパク質が、スクロース勾配の同じ画分で検出された。
図1Aは、SDS−PAGE上の精製されたタンパク質を示す。
【0063】
電子顕微鏡法(EM)
調製物を、3%酢酸ウラニル(UA)(pH4.6)で陰性染色した。3μlのタンパク質サンプルをカーボンコートグリッドに30秒間にわたって適用した。グリッドを乾燥させ、3μlのUAをグリッドに更に30秒間にわたって適用した。過剰な液体を除去し、グリッドを、FEI Tecnai F12電子顕微鏡(Phillips Electron Optics社、オランダ)(120kVで動作)で観察した。
【0064】
各タンパク質を、EM下でモルホロジーについて観察し(
図1B)、GII−4 VLP、rVP6細管及びdl VP2/VP6 VLPを含めた高次構造体が確認された。rVP6の細管を示すが、いずれの形態のrVP6タンパク質も構築され得て、以下に限定するものではないが、三量体並びに球体及びシートを含めた高次多量体構造体が含まれる。GII−4 VLP及びrVP6を比1:1でカクテルに混合しても、タンパク質の完全性又はカクテル中のいずれの成分のモルホロジーも損なわれなかった。同様の形態学的特徴がカクテルワクチン及びキメラワクチンでも認められ、GII−4 VLPで充填されたrVP6細管を特定している。NVカプシド及びRV VP6の他の構造体も形成され得る。
【0065】
実施例5:マウスの免疫化
生後7〜9週間の雌のBALB/cマウス(4〜5匹のマウス/グループ)を、0週目及び3週目の2回にわたる異なるワクチンの皮内(ID)又は筋肉内(IM)投与により免疫化した。一部の例において、マウスはワクチンで1度しか免疫化されなかった。免疫化に使用したワクチンは以下の通りであった:GII−4 VLP、rVP6タンパク質、dl VP2/VP6 VLP、カクテル(GII−4 VLPとrVP6との混合物)、キメラワクチン及びカクテルVLP(GII−4 VLPとdl VP2/VP6 VLPとの混合物)。採用したワクチン用量は、50μg、10μg、1μg及び0.1μgであった。殆どの場合、マウスを、10μgの単独ワクチン製剤又は20μgの混合ワクチン(カクテル又はキメラ)で免疫化した。10μgの各単独ワクチン成分をカクテルワクチンは含有している。例えば、カクテルワクチンを得るために、PBS中の10μgのGII−4 VLPを10μgのPBS中のrVP6とインビトロで混合し、+4℃で保存した。血液(血清)サンプル及び便を0(採血前、免疫のない血清)、2、3及び4週目に回収した。マウスを、最後の免疫化から2週間後に安楽死させ、便、全血及びリンパ組織を回収した。ワクチン製剤を投与していないナイーブなマウスをコントロールとして使用した。
【0066】
実施例6:ワクチンによって誘導される免疫応答の用量反応、動力学及び期間
マウスのグループ(5匹のマウス/グループ)を、0日目及び21日目にIM及びID経路で10、1又は0.1μgのGII−4 VLPで免疫化した。血清を0、2、3及び4週目に回収し、マウスを5週目に殺した。回収した各血清を1:200の希釈でNV特異的IgGについて試験した。用量10及び1μgで同様の応答レベルが誘発されたが、用量0.1μgでは若干低い応答が観察された(
図2)。加えて、上記のマウスグループからのプールした血清のエンドポイント力価は同様であった(
図3)。コントロールであるナイーブなマウスはNVに応答しなかった。
図4は、毎週回収した血清で測定された免疫応答の動力学を示す。免疫化の時点を矢印で示す。結果は、1回の免疫化が極めて強力な免疫応答を、特には用量10μg及び1μgで誘導することを示す。用量50μgは、用量10μgと同様の応答を誘導し、これは用量10μgで応答がプラトーに達することを示す。つまり、これらの結果から用量10及び1μgが最適な用量であることがわかる。ただし、その他の用量のワクチン製剤も使用し得る。加えて、用量10μgでは、25週目まで衰えることのない長期間にわたって持続する免疫応答が誘導された(
図5)。
【0067】
実施例7:便の分析
血清から腸管内腔内へのIgGの移動は、NV、RV等の腸内病原菌からの防御と関連づけられている。RV感染からの防御を仲介する又は疾患から回復させる、腸管内でのIgGの能力は、小児における受動免疫グロブリン処置から明らかになっている。
【0068】
単独ワクチン製剤又は混合ワクチンのIgGの考えられ得る移動への影響を試験するために、新鮮なマウスの便を、100mMのNaCl、1mMのCaCl
2、0.05%Tween、1%アプロチニン及び10μMのロイペプチン(全てSigma−Aldrich社製)を含有する10mMのTrisバッファに懸濁させ、ボルテックスにより均質化した10%の便懸濁液を再構成した。均質化した懸濁液を氷上で20分間にわたって維持し、15分間にわたって18000xg、+4℃で遠心分離に供した。上清を抽出し、−80℃で保存した。
【0069】
便サンプルを、血清抗体ELISAについて説明したように、若干の変更を加えてノロウイルスGII−4及びロタウイルスVP6特異的IgGについてELISAで試験した。コーティング及びブロッキング後、便サンプル(10%便懸濁液)を1:2から連続的に1:32まで2倍希釈し、プレートに加えた。ヤギ抗マウスIgG−HRP(Sigma−Aldrich社)を1:3000に希釈し、プレートを展開し、上述したように吸光度を測定した。
【0070】
図8は、極めて高いレベルのNV特異的IgGが免疫化マウスの便で検出されたが、コントロールのマウスの便では検出されなかったことを示す。
【0071】
実施例8:血清分析
マウスのグループを、上述したように各単独ワクチン製剤又は混合ワクチンで免疫化した。IgGサブタイプIgG1及びIgG2aを、免疫化マウスの血清から測定することによってワクチン製剤によって誘導される免疫応答のタイプを求められるようにした。Tヘルパー(Th)1/Th2ダイコトミーと優勢な免疫グロブリンアイソタイプとの関係を求めた。IgG1はTh2タイプ応答、IgG2aはTh1タイプ応答と分類された。Th1タイプは細胞性免疫を促進し、Th2タイプは体液性免疫を促進する。
【0072】
ノロウイルス血清IgG及びIgGサブタイプELISA
免疫化マウス及びコントロールのマウスからの血清を、酵素結合免疫吸着測定法(ELISA)により免疫グロブリンG(IgG)、IgG1及びIgG2aについて試験した。ノロウイルスGII−4、GII−12及びGI−3 VLPを、10mMのPBS中、それぞれ濃度0.2μg/ml、0.4μg/ml及び1μg/ml(100μl/ウェル)で96ウェルマイクロタイタープレート(Nunc Immuno Maxisorp、Thermo Fisher Scientific社、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)のコーティング(4℃、一晩)に使用した。0.05%のTween20を含有するPBS(PBS−T)で3回洗浄した後、プレートを室温(RT)で1時間にわたって5%のスキムミルク(Sigma−Aldrich社)を含有するPBSでブロックした。次にウェルを3回、PBS−Tで洗浄し、1時間にわたって37℃で、1%のスキムミルクを含有するPBS−T中で1:200に希釈した100μlの血清又は2倍希釈系列と共にインキュベートした。全ての血清サンプルを2重のウェルで試験した。6回洗浄した後、PBS−T中の1%ミルク中で1:4000に希釈した西洋ワサビペルオキシダーゼ(HRP)抱合抗マウスIgG(Sigma−Aldrich社)をウェルに加えた。
【0073】
抗GII−4 IgGサブタイプ応答を、PBS−T中の1%ミルク中で1:6000に希釈したヤギ抗マウスIgG1又はIgG2a HRP抱合体(Invitrogen社、カールスバッド、カリフォルニア州)を使用して調べた。インキュベーション後(1時間、37℃)、プレートを洗浄し、o−フェニレンジアミンジヒドロクロリド(SIGMAFAST OPD、Sigma−Aldrich社)基質を濃度0.4mg/mlで添加した。プレートを暗所において室温で30分間にわたってインキュベートし、反応を2Mの硫酸(H
2SO
4)で止めた。波長490nmでの吸光度(光学密度、OD)を、マイクロプレートリーダー(Victor2 1420、Perkin Elmer社、ウォルサム、マサチューセッツ州、米国)で測定した。ナイーブなマウスからの1つの既知の陽性血清サンプル及び1つの陰性血清サンプルをコントロールとして全てのプレートに加えた。ブランクのウェル(血清を入れていないウェル)からのバックグラウンドシグナルを、プレートでのOD測定値の全てから引いた。正味の吸光度値が設定したカットオフ値より高い場合はサンプルを陽性とみなし、計算は以下の通りに行われた:平均OD(ナイーブなマウス)+3xSD及び少なくとも0.100OD。
【0074】
ロタウイルス血清IgG及びIgGサブタイプELISA
VP6タンパク質を、バイカーボネート/カーボ―ネートバッファ(0.1mMのNa
2CO
3、0.8mMのNaHCO
3、pH9.55)中、濃度1μg/ml(100μl/ウェル)で96ウェルマイクロタイタープレートのコーティングに使用した。上記のステップ後、ELISAを、ノロウイルスの場合のELISAと同様にして行った。交差反応性ロタウイルス特異的血清抗体の検出に関して、ポリクローナルウサギ抗ロタウイルス(ヒト)(DAKO)をバイカーボネート/カーボネートバッファで1:200に希釈し、100μl/ウェルをマイクロタイタープレートのコーティングに使用した(+4℃、一晩)。PBS−Tで4回洗浄した後、プレートを、上述したようにして調製した100μl/ウェルのロタウイルス抗原(4℃、一晩)でコーティングした。PBS−Tで4回洗浄した後、プレートを+37℃で1時間にわたって5%のスキムミルクを含有するPBSでブロックした。このステップの後、ELISAを、ノロウイルスの場合の血清ELISAと同様にして行った。
【0075】
血清IgGの強度及びサブタイプ
図6、7はそれぞれノロウイルス及びロタウイルス特異的血清IgG滴定を示す。コントロールのマウスを除いて、免疫化したマウスのどのグループについてもエンドポイント力価はかなり高かった(逆数力価>4〜5log10)。これらの結果は、混合ワクチン中の成分による特異的免疫応答の相互阻害又は抑制がないことを示している。
【0076】
図9、10は、本発明のワクチン製剤の全てが、バランスのとれた混合型、すなわちTh1タイプ及びTh2タイプの免疫応答を誘導することを示している。この両方のタイプの免疫応答がノロウイルス及び/又はロタウイルスへの感染からの防御を仲介しているらしいことを考えると、このことは重要な観察結果である。Th細胞はB細胞を支援し(細胞間の接触又は可溶性サイトカインにより)、特にはワクチン全般が誘導しようとする長期間にわたるメモリー応答に必要なメモリーB細胞への分化を支援する。RV VP6特異的Th細胞はマウスロタウイルス感染からの防御を誘導し、またRVの異型のVP4又はVP7分子上の中和エピトープに特異的なB細胞に同種の支援を行う(Esquivel FR,Arch.Virology 2000;Peralta et al.,Virology Journal,2009)。従って、Th細胞は、異型の免疫応答の誘導に重要である。
【0077】
実施例9:免疫応答のアビディティ
抗体アビディティは、機能的抗体の成熟又は親和性の成熟の尺度である。高アビディティの抗体は、ワクチンの防御効力と大きく相関することが示されている(Makidon et al.,2008)。発明者は、血液中に高アビディティのNV特異的IgG抗体を有するより年齢の高い子供は、抗体が低アビディティの2歳未満の子供よりNVへの感染が少ないことを以前に示している(Nurminen et al.,2010)。
【0078】
NV及びRV抗体のアビディティを求めるために、尿素溶出により低アビディティの抗体を除去した[Kanno and Kazuyama,2002]。ELISAアッセイを、追加の尿素インキュベーションステップを除いて上述のように行った。抗原(ノロウイルスGII−4 VLP又はロタウイルスVP6タンパク質)をコーティングしたプレート上での血清のインキュベーション後、血清をプレートから吸引し、PBS−T中の8Mの尿素(Sigma−Aldrich社)を添加した。5分間のインキュベーション後、処理を繰り返した。プレートを4回洗浄し、それからHRP抱合抗マウスIgGを添加し、プレートを上述したようにして展開した。アビディティインデックスを、[尿素がある場合のOD/尿素がない場合のOD]x100%として計算し、インデックスの値が50%を超える場合を高アビディティとみなした。
【0079】
単独又は混合ワクチンでの免疫化は、高アビディティのNV−及びRV特異的IgG抗体を誘導した(アビディティインデックスはそれぞれ50%を超える)。結果は、本ワクチン製剤が、防御特性を有する高アビディティ抗体の強力な誘導物質であることを示す(
図11)。
【0080】
実施例10:交差反応性免疫応答
異なる血清型(G1P8、G2P6、G4P6、G8P10、G12P4、BRV、RRV)のロタウイルスを胎児アカゲザル腎臓(MA104)細胞(MA104)中で培養し、交差反応性研究のためのELISAにおける抗原として使用するために用意した。
【0081】
免疫化したマウス及びコントロールのマウスからの血清を、実施例8で説明したようにELISAでノロウイルス及びロタウイルス抗体について試験した。ノロウイルスGII−4誘導血清抗体は、異種GI−3及びGII−12抗原に対して交差反応性であった(
図12、上のパネル)。更に、ワクチン製剤で免疫化したマウスのロタウイルス特異的血清抗体は、サブグループ1及び2に属する様々なヒト、ウシ及びサルロタウイルス株に対して交差反応性であった(
図12、下のパネル)。
【0082】
驚くべきことに、ロタウイルスVP6抗原では、ロタウイルスVP6単独ワクチンと比較して、混合ワクチンで免疫化したマウスの血清におけるGI−3に対する交差反応性免疫応答は約50%上昇した(
図12、上のパネル)。この結果は、本混合ワクチンの抗原性成分により相乗効果がもたらされることを示している。
【0083】
実施例11:ブロッキングアッセイ
ブロッキングアッセイは、NVについての代替中和アッセイである。NVは、インビトロの培地では成長しないため、古典的な意味でのウイルスが結合して許容細胞に感染するのをブロックする抗体での中和アッセイを行うことができない。近年、ヒト組織/血液型抗原(HBGA)が、とりわけ粘膜表面の細胞(例えば、腸細胞)上で発現するNVの受容体として発見された。例えば、糖Hタイプ3がNV GII−4の推定上の受容体として特定されているため、GII−4 VLPは上記の糖に結合する(L Huhti et al.,2010)。受容体へのNV VLPの結合は、中和特性を有する抗体でブロックされると予測される。実際、GII−4 VLPのHタイプ3への結合は、飲用水媒介の急性胃腸炎の大流行中にNVに感染しなかった子供からの血清でブロックすることができた(K Nurminen et al.,2010)。NVへの感染からの防御は、血清の強力なブロッキング活性と相関関係にあった。従って、抗体のブロッキング活性は、様々なワクチンアプローチを考慮にいれる場合、NV防御の関連する代替マーカーになり得る。
【0084】
NV VLPのHBGA Hタイプ3への結合をブロックするためのアッセイを、免疫化したマウス及びコントロールのマウスの血清で行った。マイクロタイタープレートを、濃度2μg/mlでPBS中のGII−4又はGI−3 VLP(pH7.2)でコーティングし、4時間にわたって室温でインキュベートした。洗浄後、プレートをPBS中の5%のミルクと共に一晩、4℃でインキュベートした。1:200〜1:6400まで連続的に希釈した血清をウェルに加え、プレートを1時間にわたって37℃でインキュベートした。血清を吸引後、100μlのビオチン化Hタイプ3又はLewis B(Leu
b)(Lectinity Holdings社、モスクワ、ロシア)(コントロール)を、1%のミルクを含有するPBS−T中の濃度20μg/ml又は40μg/mlで添加した。37℃での4時間後、ウェルを洗浄し、ストレプトアビジン抱合HRP(Thermo Fisher Scientific社)の1:2000希釈物を添加し、1時間にわたって37℃でインキュベートした。呈色反応の進行及び波長490nmでの吸光度の測定を上述した通りに行った。血清なしでインキュベートしたウェルのOD測定値を、Hタイプ3のGII−4 VLPへの結合についての最大シグナルとみなした。ブロッキングインデックスは以下のようにして計算した:100%−(OD[血清あり]/OD[血清なし]x100%)。VLPの陰性コントロールLeu
bHBGAへの結合は検出されなかった。ブランクのウェル(HBGAが入っていないウェル)からのバックグラウンドシグナルを、試験したサンプルのOD値の全てから引いた。
【0085】
図13A及び13Bはそれぞれ、GII−4及びGI−3のその推定上の受容体Hタイプ3への結合のブロッキングを示している。混合ワクチンと比較すると、単独ワクチンで免疫化したマウスのHタイプ3へのGII−4 VLPの結合を最大限ブロックするには2倍大きい力価が必要であった(
図13C)。この結果は、混合ワクチン中のrVP6タンパク質が、GII−4特異的血清のブロッキング活性を抑制又は阻害していないことを示す。それどころか、混合ワクチン製剤で免疫化したマウスの血清の注目に値するブロッキング活性は、これまでの実験で検出されたものと同様のrVP6タンパク質のアジュバント効果を示す。更に、発明者のデータは、遺伝子群間の交差防御が、発明者の研究で使用したワクチン製剤で容易に検出可能であることを示す。この種の観察結果は、ノロウイルスワクチン研究の分野において極めて稀である。また、この結果は、ウイルスの1つの株/遺伝子型(いわゆる一価ワクチン)での免疫化は、上述したようにワクチン製剤に含まれていない他の株に対する交差反応性又は異型免疫応答を誘導するだけではなく、異種ウイルスの結合もブロックし、それを中和することを示す。
【0086】
実施例12:抗体分泌細胞(ASC)ELISPOT
抗体分泌細胞(ASC)は、プラズマB細胞及び病原体からの長期間にわたる防御を担い、ワクチン接種で誘導しようとするメモリー応答の特徴である病原体への再曝露と同時に迅速に病原体に反応するメモリーB細胞(メモリー応答)に分割される。ELISPOTアッセイを用いて、免疫化したマウスの脾臓におけるIgG抗体分泌プラズマ細胞及びメモリーB細胞の頻度を検出した。
【0087】
安楽死させたマウスの脾臓をハンクス平衡塩類溶液(HBSS)(Sigma−Aldrich社)に回収した。脾臓の構造体をメスで切断し、70μmセルストレーナ(Becton、Dickinson and Company社、米国)で単細胞懸濁液に解離させた。懸濁液を300xgで10分間にわたって遠心分離し、細胞をHBSSに再懸濁させた。赤血球を1:10に希釈したHBSSで溶解させ、その後、懸濁液のモル濃度を2xHBSSで回復させた。脾細胞懸濁液を3回洗浄し、凍結培地(40%FBS、10%DMSOを補充したRPMI、Sigma−Aldrich社)で凍結させ、後に使用するために液体窒素中で保存した。
【0088】
96ウェルPVDFプレート(Millipore社)を一晩、+4℃でノロウイルスGII−4 VLP又はロタウイルスVP6タンパク質で、濃度40μg/ml(100μl/ウェル中)でコーティングした。脾細胞を液体窒素から解凍し、洗浄し、培地(10%FBS、100U/mlペニシリン、100μg/mlストレプトマイシン、50μMの2−メルカプトエタノール及び2mMのL−グルタミンを補充したRPMI−1640)に懸濁させた。プレートを洗浄、ブロックした後、脾細胞を濃度4x10
5細胞/ウェルで添加し、一晩、+37℃、5%CO
2でインキュベートした。プレートを6回、PBS−Tで洗浄し、ヤギ抗マウスIgG−HRP(Sigma−Aldrich社)をウェルに希釈1:1000で添加した。3時間の室温でのインキュベーション後、プレートをしっかりと洗浄し、DAB基質(SigmaFAST DAB、Sigma−Aldrich社)で展開し、スポットを数えた。コントロールであるナイーブな動物のウェルに現れるスポットを実験グループから引いた。データを、GII−4 VLP又はVP6特異的抗体分泌細胞(ACS)として表わし、1x10
6細胞ごとに正規化した。
【0089】
一部の例では、細胞をインビトロで4日間にわたってGII−4 VLP又はrVP6と共にインキュベートし、洗浄し、メモリーB細胞の数量化との関連で説明したようにプレーティングした。インビトロでの刺激を受けていない細胞で行ったELISPOTアッセイから得られたスポットを、活発に分泌するプラズマ細胞とみなした。4日間にわたって培養した細胞で得られたスポットは、プラズマ細胞でできたスポットを引いた後、メモリーB細胞活性を表す。
【0090】
図14は、本ワクチン製剤がNV及びRV特異的IgG抗体を産生するプラズマB細胞を誘導することを示す。また、特異的IgG抗体を分泌するメモリーB細胞が高頻度で単独及び混合ワクチンで同様の量で誘導され、誘導される応答がメモリー応答であることを示す。
【0091】
参考文献