特許第5902190号(P5902190)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902190
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】連続的に可変なダンパ装置
(51)【国際特許分類】
   F16F 9/50 20060101AFI20160331BHJP
   F16F 9/34 20060101ALI20160331BHJP
   F16F 9/32 20060101ALI20160331BHJP
   F16F 9/46 20060101ALI20160331BHJP
   B60G 13/08 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   F16F9/50
   F16F9/34
   F16F9/32 N
   F16F9/46
   B60G13/08
【請求項の数】32
【全頁数】25
(21)【出願番号】特願2013-539790(P2013-539790)
(86)(22)【出願日】2011年11月22日
(65)【公表番号】特表2013-545048(P2013-545048A)
(43)【公表日】2013年12月19日
(86)【国際出願番号】NL2011000076
(87)【国際公開番号】WO2012070932
(87)【国際公開日】20120531
【審査請求日】2014年8月13日
(31)【優先権主張番号】2005740
(32)【優先日】2010年11月22日
(33)【優先権主張国】NL
(73)【特許権者】
【識別番号】513127467
【氏名又は名称】トラクティブ・サスペンション・ベスローテン・フエンノートシャップ
【氏名又は名称原語表記】TRACTIVE SUSPENSION B.V.
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】特許業務法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】リンデマン,エリック・アレクサンダー
【審査官】 塚原 一久
(56)【参考文献】
【文献】 特開平02−256936(JP,A)
【文献】 実開昭58−034582(JP,U)
【文献】 特開2004−162915(JP,A)
【文献】 特開昭57−090475(JP,A)
【文献】 特開2003−106473(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F16F 9/00−9/58
F16K 31/06−31/11
B60G 13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダンパ装置であって、シリンダを含み、前記シリンダは、前記シリンダを第1のチャンバおよび第2のチャンバに分離するピストンを伴い、前記チャンバは作動液を充填することが可能であり、前記ダンパ装置は、さらに、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間のバイパスチャネルと、それに接続されたバルブ部材とを含み、前記バルブ部材は:
磁界を生成するためのコイルユニットと;
前記コイルユニットによって生成された磁界を案内するための実質的に閉じた磁性ループとを含み、前記磁性ループはガイド部材と閉鎖部材とを含み、前記閉鎖部材は、前記バイパスチャネルを開閉するために第1の方向において前記ガイド部材に対して可動であり、前記磁性ループは、前記閉鎖部材の前記移動を可能にするために前記ガイド部材と前記閉鎖部材との間に第1のギャップをさらに含み;前記バルブ部材はさらに、
前記閉鎖部材を前記第1の方向においてばね付勢下に置くよう配されるばね装置と;
前記第1のギャップに配置され、前記閉鎖部材および/または前記ガイド部材に接続される、非磁性スペーサとを含み;
前記コイルユニットを駆動することは、前記閉鎖部材に作用する磁力を生成して、それをばね付勢に抗して前記ガイド部材に向かって移動させ、それによって前記第1のギャップを下げ、
前記磁性ループは、前記第1のギャップに起因する第1の磁気抵抗、および前記磁性ループの残りに起因する第2の磁気抵抗を有し、前記第2の磁気抵抗は、少なくとも前記ガイド部材に向かう前記閉鎖部材の移動の一部において増大するように、前記磁性ループは構成されることにおいて特徴付けられる、ダンパ装置。
【請求項2】
前記磁性ループは前記閉鎖部材と前記ガイド部材との間にさらなるギャップを含み、前記さらなるギャップは、少なくとも前記ガイド部材に向かう前記閉鎖部材の移動の一部において増大する、請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記閉鎖部材は前記第1の方向において先細りの形式を有し、前記さらなるギャップは前記第1の方向に垂直な方向において形成される、請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記磁性ループは、少なくとも前記ガイド部材に向かう前記閉鎖部材の移動の一部において磁気的に飽和するように構成される、求項1〜3のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項5】
動作中において、前記コイルユニットを通る電流が予め規定された最小のレベルと等しい場合に、前記閉鎖部材は前記ガイド部材に関して第1の位置に丁度達し、前記閉鎖部材および前記ガイド部材は各々前記第1のギャップに近接して端部領域を有し、前記閉鎖部材および/または前記ガイド部材の前記端部領域は、アーチ形または先の尖った形状を有し、動作中において、前記閉鎖部材が前記第1の位置にあるかまたはその位置に近く、前記電流のレベルが前記予め規定された最小のレベルにあるかまたはそのレベルに近いとき、前記端部領域は磁気飽和を示す、請求項4に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記電流が前記予め規定された最小のレベルにあるとき、前記第1の位置またはその位置の近くで前記閉鎖部材に作用するばね力は、前記閉鎖部材に作用する磁力をおよそ補償するように、前記ばね装置のばね定数および前記磁性ループの透磁率は構成される、請求項5に記載のダンパ装置。
【請求項7】
前記閉鎖部材の前記端部領域および前記ガイド部材の前記端部領域は、対を規定し、
一方の端部領域はアーチ形の突起を有し、別の端部領域は対応するアーチ形の窪みを有
し;
一方の端部領域は先の尖った構造を有し、別の端部領域は前記先の尖った構造を少なくとも部分的に受けるために好適なV型溝を有し;
一方の端部領域は第1の針状形状を有し、別の端部領域は前記第1の針状形状に対してずれて置かれる第2の針状形状を有し、前記第1の位置に移動するときに、前記端部領域が少なくとも部分的に互いを通過することを可能にし;
前記端部領域の形状は実質的に相補的である、請求項5または6に記載のダンパ装置。
【請求項8】
前記端部領域の形状は、前記端部領域間の最短距離が前記第1の方向における前記端部領域間の最小距離より有意に小さいような状態である、請求項5〜7のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項9】
前記シリンダは、前記ピストンが配置される主な細長いチャンバを含み、前記主なチャンバは、第1および第2の開口部を設けられた壁を有し、前記第1および第2の開口部は、前記第1および第2のチャンバにそれぞれ接続され、前記バイパスチャネルは、前記主なチャンバに平行に延在し前記第1および第2の開口部を接続する補助の細長いチャンバとして形成される、求項1〜8のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項10】
前記第1または第2の開口部に固定的に接続され、前記補助チャンバにおいて延在する補助パイプ部材によって、前記バイパスチャネルが少なくとも部分的に形成される、請求項9に記載のダンパ装置。
【請求項11】
前記バイパスチャネルは前記ピストンを通って延在するチャネルとして形成される、請求項1〜8のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項12】
前記ピストンに固定的に接続されるかまたは前記ピストンと一体的に形成され前記シリンダの長手方向軸に平行な軸方向に延在するパイプ部材によって前記バイパスチャネルが少なくとも部分的に形成され、前記パイプ部材は前記第1のチャンバとの流体流通を可能にする貫通穴を有する、請求項11に記載のダンパ装置。
【請求項13】
前記閉鎖部材は、前記パイプ部材または前記補助パイプ部材内に配置されたスリーブを含み、前記ダンパ装置は、前記ばね装置を案内して前記閉鎖部材をばね付勢下に置くための、軸方向に細長いばねガイドをさらに含む、請求項10または12に記載のダンパ装置。
【請求項14】
前記閉鎖部材は、前記パイプ部材または前記補助パイプ部材のまわりに配置されたスリーブを含む、請求項10または12に記載のダンパ装置。
【請求項15】
前記パイプ部材は、ピストンロッドに固定的に接続されるか、または前記ピストンロッドの一部を形成し、前記パイプ部材は、前記ピストンロッドの端部に接続され、前記ピストンロッドは、前記コイルユニットのために電気配線を担持するためのチャネルを含む、請求項12、または請求項12および請求項13、または請求項12および請求項14に記載のダンパ装置。
【請求項16】
可変な減衰力を得るよう前記閉鎖部材および/または前記バイパスチャネルとそれぞれ協働する前記バイパスチャネルおよび/または前記閉鎖部材の開口部または複数個の開口部は、使用中において前記ダンパ装置によって提供される、結果として生じる減衰力が、前記コイルユニットを通る電流の予め規定された関数であるように、形状化または分布される、求項1〜15のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項17】
前記予め規定された関数は実質的に線形関数である、請求項16に記載のダンパ装置。
【請求項18】
前記複数個の開口部は、前記パイプ部材、前記補助部材および/または前記閉鎖部材の周囲に沿って均一に分布するが、前記開口部の密度は前記第1の方向に沿って変動する、請求項10または12に係る、請求項16または17に記載のダンパ装置。
【請求項19】
前記コイルユニットはソレノイドを含む、求項1〜18のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項20】
前記ソレノイドは、前記第1の方向に沿って延在する長手方向軸を有して、本質的に円筒状に形状化され、前記第1のギャップが前記第1の方向において前記ソレノイドのおおよそ半ばに位置するように、前記閉鎖部材および前記ガイド部材は構成される、請求項19に記載のダンパ装置。
【請求項21】
前記閉鎖部材は、前記コイルユニットが十分に駆動されるときに、流体通路を閉じるように構成される、求項1〜20のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項22】
前記ばね装置は、より低いばね定数を有する第1のばねと、より高いばね定数を有する第2のばねとを含み、それによって、前記ばね装置の力距離特性においてニーポイントを得、前記ニーポイントは、前記流体通路が十分に開いている前記閉鎖部材の位置に対応し、前記コイルユニットが駆動されないとき前記閉鎖部材はばね付勢により部分的に前記流体通路を閉じるように前記閉鎖部材および前記ばね装置は構成され、力均衡は、前記コイルユニットを通る適度な電流レベルを用いて、前記ニーポイントに対応する前記閉鎖部材の位置で達成される、請求項21に記載のダンパ装置。
【請求項23】
前記第1のばねは前記パイプ部材に関して固定的に取り付けられ、前記第2のばねは前記ばねガイドに結合され、前記ばねガイドは前記ニーポイントを調整するように前記パイプ部材または前記補助パイプ部材に関して軸方向に可動である、請求項22および請求項13に記載のダンパ装置。
【請求項24】
前記ピストンは、開かれた前記バイパスチャネルより有意に高い流動抵抗を有する、前記第1のチャンバと前記第2のチャンバとの間の流体流通のためのさらなるバイパスチャネルを含む、求項1〜23のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項25】
前記バイパスチャネルと前記第1または第2のチャンバとの間に配置された制限装置をさらに含み、前記制限装置は、前記バイパスチャネルより有意に高い流動抵抗を有する、求項1〜24のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項26】
前記制限装置は、制限チャネルと、前記制限チャネルの端部に接続された弾性的に変形可能なクロージャとを含み、前記クロージャは、流体が、第1のピストン方向における前記ピストンの運動に対応して、前記クロージャに向かって前記制限チャネルを通って第1の制限方向に流れるとき、前記制限チャネルを少なくとも部分的に開き、流体が、前記第1のピストン方向の反対の第2のピストン方向における前記ピストンの運動に対応して、前記第1の制限方向の反対の方向に流れるとき、前記制限チャネルを閉じるように構成される、請求項25に記載のダンパ装置。
【請求項27】
前記流体が前記クロージャに向かって前記制限チャネルを通って前記第1の制限方向に流れるとき、前記クロージャは前記流体によって遠ざかるように曲げられるかまたは押されるように構成される、請求項26に記載のダンパ装置。
【請求項28】
前記制限装置は、さらなる制限チャネルと、前記さらなる制限チャネルの端部に接続されたさらなる弾性的に変形可能なクロージャとを含み、前記さらなるクロージャは、流体が、前記第2のピストン方向における前記ピストンの運動に対応して、前記さらなるクロージャに向かって前記さらなる制限チャネルを通って第2の制限方向に流れるとき、前記さらなる制限チャネルを少なくとも部分的に開き、流体が、前記第1のピストン方向における前記ピストンの運動に対応して、前記第2の制限方向の反対の方向に流れるとき、前記さらなる制限チャネルを閉じるように構成される、請求項26または27に記載のダンパ装置。
【請求項29】
前記流体が前記さらなるクロージャに向かって前記さらなる制限チャネルを通って前記第2の制限方向に流れるとき、前記さらなるクロージャは前記流体によって遠ざかるように曲げられるかまたは押されるように構成される、請求項28に記載のダンパ装置。
【請求項30】
前記制限装置は、前記制限チャネルまたは前記さらなる制限チャネルに向かってある方向にそれぞれ前記クロージャまたは前記さらなるクロージャに張力および/または予荷重をかけるように、ある要素を含む、請求項25〜29のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項31】
前記制限装置は前記バルブ部材に組入れられる、請求項25〜30のいずれかに記載のダンパ装置。
【請求項32】
前記制限装置は前記第2のチャンバ内において前記バイパスチャネルに接続される、請求項25〜30のいずれかに記載のダンパ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明はダンパ装置に関する。特に、この発明は、減衰力を変動させることが可能であるダンパ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
そのようなダンパ装置は、請求項1のプリアンブルによって規定されるように、EP 2236854 A1から公知である。
【0003】
この公知のダンパ装置は、シリンダと、シリンダを第1および第2のチャンバに分離するピストンとを含む。ピストンにおける通路は、作動液が第1のチャンバと第2のチャンバとの間を流れることを可能にする。ピストンはピストンロッドに接続される。バイパスチャネルがピストンロッドの内部において延在し、それによって、第1および第2のチャンバを接続する。内部バルブ部材が、少なくとも部分的にバイパスチャネルを開くかまたは閉じるために、シリンダの内部でピストンロッドに接続される。内部バルブは、バイパスチャネルの開口部を開くかまたは閉じるように第1の末端の位置から第2の末端の位置に軸方向に可動である閉鎖部材と、閉鎖部材に接続されて閉鎖部材を第1の位置内に押進めるばね力を生成するばねとを含む。バルブ部材は、さらに、磁界を生成して、閉鎖部材を起動して、ばね力に抗して第1の位置から第2の位置に移動するようにするための電気的なコイルと、生成された磁界を案内するためのガイド部材とを含む。ギャップが、ガイド部材と閉鎖部材との間に設けられる。非磁性スペーサが、ギャップに配置され、閉鎖部材に接続される。ともになって、ガイド部材、閉鎖部材およびギャップは実質的に閉じた磁性ループを形成する。
【0004】
公知のダンパを用いると、衝撃吸収が以下の態様で実現され得る。まず、バイパスチャネルが十分に閉じられた状態では、作動液がピストンにおいて狭い通路を流れる場合、ピストンはシリンダに対して移動することしか許されないので、高い減衰レベルが得られる。バイパスチャネルを開くことによって、この減衰レベルは低下されることが可能である。したがって、調整可能な減衰レベルを得ることが可能である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
公知のダンパによって実現することが可能である減衰力は正確に設定することが可能ではないことが分かった。さらに、公知のダンパは、ある動作条件の下では不安定性を示す。さらなる欠点は、公知のダンパは、圧縮方向およびリバウンド方向の両方において緩衝装置のより低速なピストン速度減衰で減衰をほとんどまたは全く与えない自由な流れのバイパスを有するということである。低周波車体運動に対する制御を達成するために、少なくともリバウンド運動はわずかに減衰されるべきである。低周波本体運動に対する制御に加えて、最低レベルの低速ピストン速度減衰は、何が車両の車輪に起こっているかを運転手が感じるのに必要である。
【0006】
公知のダンパにおけるバルブ部材は、ピストンにおける通路を通る流れに平行な自由な流れの連通するバイパスを開くことになる。作動液、例えば油の流れに対するバイパスの影響は、流体の流れの両方の方向に対して同一になる。ダンパを圧縮している間、減衰力の特性は、バイパスを介する作動液のある自由な流れから恩恵を受けることになる。圧縮中のバイパス油の自由な通過は、高周波車輪運動の吸収に肯定的な効果があることになる。しかしながら、緩衝装置を延在している間、減衰力の特性は、バイパスを介する作動液の同じ自由な流れから恩恵を受けないことになる。それは、車両のばね上質量の低周波運動を制御する十分な減衰圧力を可能にしないことになる。
【0007】
通電されたとき、つまり、有意に高い電流が電気的なコイルを流れるとき、公知のダンパの内部のバルブ部材は、ピストンにおける通路を通る流れに平行な自由な流れの連通するバイパスを開くことになる。時間の90パーセントを超えて、車両は、開かれた、公道で用いられている。これらの車両の運転手は、それらのサスペンションのために、最も恐らくは快適な設定を選択するであろう。公知のダンパの場合においては、サスペンションの快適なセッティングは、自由な流れの連通するバイパスを開くために電気的なコイルを駆動することによって達成される。従って、エネルギー消費は、最も一般的な動作モードに対してかなり高い。
【0008】
この発明の目的は、上述の欠点が生じないかまたは少なくともより少ない程度でしか生じない、改善されたダンパ装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
この目的は請求項1に記載のダンパ装置で達成されるが、それは、磁性ループは、第1のギャップに起因する第1の磁気抵抗、および磁性ループの残りに起因する第2の磁気抵抗を有し、第2の磁気抵抗は、少なくともガイド部材に向かう閉鎖部材の移動の一部において増大するように、磁性ループは構成されることにおいて特徴付けられる。
【0010】
公知のダンパはある動作条件の下では不安定になる可能性を有することが分かった。慎重な研究の後、これらの不安定性は磁界対閉鎖部材位置の特性により生じることが分かった。これらの特性の一例が図1に示される。この図においては、ニュートンでの閉鎖部材上の磁力が、電気的なコイルを通る電流の3つの電流値について、ミリメートルでの閉鎖部材の位置に対して示される。ここで、2mmの位置は十分に開いたバイパスチャネルに対応し、0mmの位置は十分に閉じたバイパスチャネルに対応する。同じ図において、曲線が、ばねによって閉鎖部材にかけられたばね力を示して示される。ばね力が磁力に等しいとき、均衡が達成される。
【0011】
図1から分かるように、いくつかの電流値について、単一の曲線上にこの均衡が生じる1つより多い点を識別することが可能である。これは、ピストンが不安定な挙動を示すことを意味する。通常の使用中においては、ダンパは振動を経験し、その結果、ダンパは、ばね力が磁力に等しい異なる点の間を移動するかもしれない。
【0012】
図1のさらなる検討は、ばね力曲線および磁力曲線上の複数の交差する点の問題は閉鎖部材位置に対する高い値での磁力曲線の強い上向きの傾向に関係することを示す。これらの位置は、閉鎖部材とガイド部材との間のギャップが非常に小さい状況に対応する。これらの小さいギャップのため、磁性ループの磁気抵抗は劇的に低減し、非常に高い磁界が生成されることを可能にする。一般に、磁界は閉鎖部材の位置とともに線形により多く増大し、一方、ばね力曲線はおおよそ線形である。結果的に、いくつかの電流値に対して、複数の交点が可能である。
【0013】
コイルユニットによって生成される磁界の強度は、磁性ループの磁気抵抗に依存する。磁気抵抗は、透磁率は低く、磁気抵抗は高い、ギャップに帰することが可能である部分と、閉鎖部材およびガイド部材を含む、ループの残りに帰することが可能である別の部分とを有する。この後者の部分は通常低い磁気抵抗を有し、なぜならば、閉鎖部材およびガイド部材のために用いられる材料は高い透磁率を有するからである。
【0014】
この発明によれば、ダンパ装置の不安定性の問題が解決可能であるのは、磁性ループが、磁性ループの残りの磁気抵抗が、少なくともガイド部材に向かう閉鎖部材の移動の一部において増大するようである場合である。ここで、閉鎖部材がガイド部材に接触するか当接する点に閉鎖部材があるか、またはその点で近いとき、磁気抵抗における増大が通常必要であることが注目される。磁気抵抗における増大は、ギャップの長さを減少させることによって引起された磁気抵抗における減少を部分的に補償する。結果的に、図2に示されるように磁力およびばね力の曲線を得ることが可能である。この図から、磁力に対応する曲線が、図1における対応する曲線が示すように上向きの曲げを示さないことは明らかである。結果的に、単一の交点を各電流レベルに対して識別することが可能である。公知のダンパに比較して、この発明に従うダンパ装置は、閉鎖部材の位置決めのよりよい制御、およびしたがってダンパ装置によって提供される減衰力のよりよい制御を有する。
【0015】
一般に、磁力曲線とばね力曲線との間の増大した角度は、平衡点(つまり交点)の安定性および精度を決定する、と言える。ギャップが大きいときの相対的に高い磁力を、大きなギャップのためのそれよりは高いが、ギャップが小さいときの相対的に低い磁力と組合せると、平衡状態の安定性が改善される。
【0016】
ある実施例においては、磁性ループの残りの磁気抵抗における増大は、閉鎖部材とガイド部材との間にさらなるギャップを含む磁性ループによって達成される。このさらなるギャップは、少なくともガイド部材に向かう閉鎖部材の移動の一部において増大する。さらなる実施例においては、閉鎖部材は第1の方向に先細りの形式を有する。次いで、さらなるギャップは第1の方向に垂直な方向に形成される。先細りの形式のために、閉鎖部材がガイド部材に向かって移動するとき、さらなるギャップは増大する。エアギャップにおける増大のために、磁気抵抗は上がることになる。
【0017】
別の、またはさらなる実施例では、磁性ループが、少なくともガイド部材に向かう閉鎖部材の移動の一部において磁気的に飽和するように構成される場合に、磁気抵抗における増大を得ることができる。ここで、磁気飽和は、磁気誘導がもはや磁界に比例して増大しないという現象として解釈されるべきである。このプロセスは、有効透磁率の低下によって記載することが可能である。磁気抵抗は透磁率に反比例するので、磁気抵抗は磁気飽和のため増大することになる。
【0018】
ある実施例においては、動作中において、コイルユニットを通る電流が予め規定された最小のレベルと等しい場合に、閉鎖部材はガイド部材に関して第1の位置に丁度達し、閉鎖部材およびガイド部材は各々第1のギャップに近接して端部領域を有する。閉鎖部材および/またはガイド部材の端部領域は、アーチ形または先の尖った形状を有し、動作中において、閉鎖部材が第1の位置にあるかまたはその位置に近く、電流レベルが予め規定された最小のレベルにあるかまたはそのレベルに近いとき、端部領域は磁気飽和を示す。さらなる実施例においては、第1の位置は、閉鎖部材およびガイド部材が非磁性スペーサを介して当接される位置に対応する。
【0019】
閉鎖部材および/またはガイド部材の端部領域を形状化することによって、2つの効果が得られる。まず、磁界のための端部領域の有効断面積は、径方向において測定されたとき、下げられ、それによって、磁気抵抗を増大させる。第2に、より高い磁界は端部領域に存在し、それによって、磁気飽和のプロセスを加速することになる。
【0020】
当業者は、上に記載された両方の手段、つまり、さらなるギャップを増大することおよび磁気飽和を誘導することは、同時にまたは個々に適用することが可能であることを理解する。
【0021】
ある実施例においては、電流が前記予め規定された最小のレベルにあるとき、第1の位置またはその位置の近くで閉鎖部材に作用するばね力は、閉鎖部材に作用する磁力をおよそ補償するように、ばね装置のばね定数および磁性ループの透磁率は構成される。
【0022】
迅速に所望の減衰レベルを設定できるためには、閉鎖部材は、コイルユニットを通る電流の新しい電流設定に迅速に反応する必要がある。その目的のために、閉鎖部材はそれ自体低い質量を有する必要がある。さらに、閉鎖部材にかけられ得る力は高くあるべきである。結果的に、ばね定数およびループの磁気特性の両方は、これを可能にすべきである。これは十分に高いばね定数を伴うばねおよび十分に高い透磁率を伴う磁性材料の選択によって達成することが可能である。
【0023】
ある実施例においては、閉鎖部材の端部領域およびガイド部材の端部領域は、対を規定し、一方の端部領域はアーチ形の突起を有し、別の端部領域は対応するアーチ形の窪みを有し、または一方の端部領域は先の尖った構造を有し、別の端部領域は先の尖った構造を少なくとも部分的に受けるために好適なV型溝を有し、または一方の端部領域は第1の針状形状を有し、別の端部領域は第1の針状形状に対してずれて置かれる第2の針状形状を有し、第1の位置に移動するときに、端部領域が少なくとも部分的に互いを通過することを可能にする。当業者は、磁界が混んでいるために磁気飽和が生じることを促進するために好適な形状を含む複数の他の構成が可能であることを理解するだろう。関連する端部領域の相補的な形状を有することによって、対称な挙動を得ることが可能である。さらに、相補的な形状は、閉鎖部材およびガイド部材の相互の変位に関してより寛容である。
【0024】
ある実施例においては、端部領域の形状は、端部領域間の最短距離が第1の方向における端部領域間の最小距離より有意に小さいような状態である。第1の方向における距離は閉鎖部材の機械的な移行または運動、つまりバイパスチャネルが開閉されることを可能にするよう交差されるよう必要とする距離に関係付けられる。しかしながら、最短距離は、磁気抵抗、およびしたがってコイルユニットによって生成され得る磁界強度に対して関連する距離である。これらの距離が大いに異なるように端部領域の形状を構成することによって、より高い磁界を、第1の方向に沿って測定された同様の距離で達成することが可能である。先に言及されたように、より高い磁界は、閉鎖部材がより迅速に反応することを可能にする。もちろん、好適なばね装置が用いられなければならない。
【0025】
ある実施例においては、シリンダは、ピストンが配置される主な細長いチャンバを含む。主なチャンバは、第1および第2の開口部を設けられた壁を有し、第1および第2の開口部は、第1および第2のチャンバにそれぞれ接続される。この場合、バイパスチャネルは、好ましくは主なチャンバに平行に延在し第1および第2の開口部を接続する補助の細長いチャンバとして形成される。補助チャンバは主なチャンバの壁に接続された小さな管の形式であってもよい。
【0026】
さらなる実施例においては、第1または第2の開口部に固定的に接続され、補助チャンバにおいて延在する補助パイプ部材によって、バイパスチャネルが少なくとも部分的に形成される。
【0027】
代替的実施例においては、バイパスチャネルはピストンを通って延在するチャネルとして形成される。さらなる実施例においては、ピストンに固定的に接続されるかまたはピストンと一体的に形成され、シリンダの長手方向軸に平行な軸方向において延在するパイプ部材によって、バイパスチャネルが少なくとも部分的に形成される。パイプ部材は、第1のチャンバとの流体流通を可能にする貫通穴、好ましくは放射状の貫通穴を有する。ある実施例においては、複数の貫通穴がパイプ部材の周囲に沿って配置される。
【0028】
さらなる実施例においては、閉鎖部材は、パイプ部材または補助パイプ部材の内側に配置されたスリーブを含む。この場合、ダンパ装置は、ばね装置を案内して閉鎖部材をばね付勢下に置くための、軸方向に細長いばねガイドをさらに含む。異なるさらなる実施例においては、閉鎖部材は、パイプ部材または補助パイプ部材のまわりに配置されたスリーブを含む。
【0029】
閉鎖部材が、貫通穴に垂直な方向に、例えばパイプ部材または補助パイプ部材上を摺動することによって、パイプ部材または補助パイプ部材に関して入れ子式に摺動するスリーブの形式である場合、貫通穴を通って流れる作動液によってスリーブの対称的な装填を得ることが可能である。放射状の貫通穴がスリーブにおいて設けられることも可能である。そのような場合においては、バイパスチャネルの開口部は、スリーブにおける穴およびパイプ部材における貫通穴を整列させることを伴う。貫通穴がパイプ部材の周囲のまわりで均一に分布される場合、対称な力が閉鎖部材にかけられる。それによって、スリーブがパイプ部材に一方的に押圧され、それによってパイプ部材と閉鎖部材との間の摩擦抵抗を増大する状況を、回避することが可能である。
【0030】
さらなる実施例においては、パイプ部材は、ピストンロッドに固定的に接続されるか、またはピストンロッドの一部を形成する。さらなる実施例においては、パイプ部材はピストンロッドの端部に接続される。ピストンロッドは、コイルユニットのために電気配線を担持するためのチャネルを含んでもよい。
【0031】
ある実施例においては、可変な減衰力を得るよう閉鎖部材および/またはバイパスチャネルとそれぞれ協働するバイパスチャネルおよび/または閉鎖部材の開口部または複数個の開口部は、使用中においてダンパ装置によって提供される減衰力が、コイルユニットを通る電流の予め規定された関数、好ましくは実質的に線形関数であるように、形状化または分布される。ここで、開口部または複数個の開口部は、バイパスチャネルを開くようにバイパスチャネルの1つ以上の開口部に沿って持って来ることが可能である、第1のチャンバへのバイパスチャネルの開口部または閉鎖部材における開口部を指す。この開口部またはこれらの開口部は、閉鎖部材によって、部分的にまたは十分に覆うことが可能である。バイパスチャネルの有効開口を変動させることによって、流動抵抗対閉鎖部材位置特性を修正することが可能である。次いで、閉鎖部材の位置は、磁力とばね力との間の均衡に依存する。従って、所与の電流掃引に対して、閉鎖部材の結果的な位置が予測可能である。ダンパ装置の減衰力は電流レベルに比例すべきであると述べることによって、所望の流動抵抗を各電流レベルに対して計算することが可能である。計算された流動抵抗から、有効開口を計算することが可能である。この有効開口は、第1の方向において変動する形状を伴う単一の開口部、または密度が第1の方向において変動するが、好ましくは第1の方向に垂直な方向において均一に分布する複数個の開口部として実現することが可能であるが。1つの例は、上述のパイプ部材、補助パイプ部材および/または閉鎖部材の周囲に沿った開口部の分布である。この分布は均一であるが、開口部の密度は第1の方向において変動する。例えば、閉鎖部材の所与の位置に対して、10個の開口部の列が閉鎖部材によって覆われてもよいが、わずかな上方向変位によって、すべてパイプ部材または補助パイプ部材の周囲に沿って均一に分布する12個の開口部を伴う列をさらに覆う結果となるかもしれない。特性において、第1の方向における閉鎖部材の運動が異なる流動抵抗を結果として生じないであろう死点を防ぐために、開口部の分布は互い違いに配列されてもよい。
【0032】
ある実施例においては、コイルユニットはソレノイドを含む。このことは、他の形状またはコイルの使用を排除しはしない。複数のコイルの組合せも、永久磁石と電気的なコイルとの組合せも、排除されない。
【0033】
さらなる実施例においては、ソレノイドは第1の方向に沿って延在する長手方向軸を有して、本質的に円筒状に形状化される。第1のギャップが第1の方向においてソレノイドのおおよそ半ばに位置するように、閉鎖部材およびガイド部材は構成され得る。この位置は、ギャップの他の位置と比較して、高磁界強度を達成することが可能であることが分かった。
【0034】
この発明は、コイルユニットが十分に駆動されるとき、つまり、相対的に高い電流を用いて、閉鎖部材がバイパスチャネルを十分に開くように、ダンパ装置が構成されることを可能にする。そのようなシステムは高い電流で相対的に低い減衰レベルを可能にする。しかしながら、ほとんどのダンパは、車両においては、高い快適なレベルが重要である状況下で用いられるので、コイルユニットが十分に駆動されるとき、閉鎖部材がバイパスチャネルを閉じれば、よりエネルギー効率がよい。
【0035】
さらなる実施例においては、緊急状況下で、利用可能な電流源または電圧源がないとき、バイパスチャネルが十分に開かれるのを防ぐ手段が取られる。そのような状況では、より大きな減衰を有することが通常必要とされるかまたは所望され、なぜならば車両は極限状況にあるかもしれないからである。その目的のために、ばね装置は、低いばね定数を有する第1のばね、たとえば波ばねと、より高いばね定数を有する第2のばねとを含んでもよく、それによって、ばね装置の力距離特性においてニーポイントを得てもよい。このニーポイントは、流体通路が十分に開いている閉鎖部材の位置に対応するようにされ得る。コイルユニットが駆動されないとき閉鎖部材はばね付勢により流体通路を部分的に閉じるように、閉鎖部材およびばね装置は構成され得る。これは、極端な条件下においていくらかの減衰を可能にする。ニーポイントに対応する位置に閉鎖部材を移動するためには、より低いばね定数のために、適度な電流レベルが必要である。しかしながら、その点、つまり閉鎖部材がバイパスチャネルを部分的に閉じ始めるところを越えて移動するとき、より多くの電流が必要であり、なぜならば、その領域においては、より高いばね定数を有するばねが支配的になるからである。
【0036】
このフェールセーフ機構は、さらに、単一のばね定数を有する一つのばねで作動する。しかしながら、そのようなシステムは、バイパスチャネルを十分に開く必要があるとき、常に相対的に高い電流レベルを必要とするだろう。
【0037】
閉鎖部材がパイプ部材または補助パイプ部材に配置される実施例においては、第1のばねはパイプ部材に関して固定的に取り付けられてもよく、第2のばねはばねガイドに結合されてもよい。ばねガイドが、ニーポイントを調整するようパイプ部材または補助パイプ部材に関して軸方向において可動であれば、有利である。例えば、ツールを用いてばねガイドを回転させることによってばねガイドが軸方向に移動することを可能にするねじ筋接続を用いて、バルブのハウジングにばねガイドを取り付けることができるかもしれない。
【0038】
ある実施例においては、ピストンは、開かれたバイパスチャネルより有意に高い流動抵抗を有する、第1のチャンバと第2のチャンバとの間の流体流通のためのさらなるバイパスチャネルを含む。従って、バイパスチャネルが十分に閉じられているとき、減衰はさらなるバイパスチャネルによって決定される。バイパスチャネルが部分的または十分に開いたとき、減衰は主にバイパスチャネルによって決定される。そのような構成は、バイパスチャネルのための相対的に大きな断面、およびさらなるバイパスチャネルのための相対的に小さな断面を有することによって達成することが可能である。
【0039】
減衰挙動は、ピストンがシリンダに対して移動する速度に依存する。車両が平坦な地形上を移動するとき、または車両が非常にゆっくり移動する場合、ピストンは衝撃を吸収するために非常に速く移動する必要はない。これらの状況においては、バイパスチャネルの影響は無視できる。しかしながら、車両が速く移動するとき、および/または地形が粗いとき、ピストンの迅速な反応および高い吸収が必要である。そのような状況の下では、バイパスチャネルの相対的に大きな断面さえ、減衰作用に有意な寄与を有する。減衰挙動がこれらの種類の挙動間で切り換わる点は、バイパスチャネルの開口部を閉鎖部材で変動させることによって設定することが可能である。さらに、低速速度または滑らかな地形では、より大きな減衰を達成することが望ましいかもしれない。
【0040】
この要求を満たすために、ダンパ装置は、バイパスチャネルと第1または第2のチャンバとの間に配置された制限装置を含んでもよい。制限装置は、開かれたバイパスチャネルより有意に高い流動抵抗を有する。これは非常に適度な条件下であっても減衰することを可能にする。
【0041】
ある実施例においては、制限装置は、制限チャネルと、制限チャネルの端部に接続された弾性的に変形可能なクロージャとを含む。クロージャは、流体が、第1のピストン方向におけるピストンの運動に対応して、クロージャに向かって制限チャネルを通って第1の制限方向に流れるとき、制限チャネルを少なくとも部分的に開き、流体が、第1のピストン方向の反対の第2のピストン方向におけるピストンの運動に対応して、第1の制限方向の反対の方向に流れるとき、制限チャネルを閉じるように構成される。そのような制限装置は、減衰がシリンダの行程の種類に依存して異なることを可能にする。一方の方向においては、制限装置が減衰を決定し、他方の方向においては、制限チャネルが遮断されるので、減衰は、ピストンにおけるさらなるバイパスチャネルによって決定される。その制限はピストンの運動、例えばリバウンド行程または圧縮行程に依存する。これらの運動の1つにおいては、制限チャネルは閉じられ、別の運動中においては、それは少なくとも部分的に開かれる。
【0042】
さらなる実施例においては、流体がクロージャに向かって制限チャネルを通って第1の制限方向に流れるとき、クロージャは流体によって遠ざかるように曲げられるかまたは押されるように構成される。
【0043】
さらなる実施例においては、制限装置は、さらなる制限チャネルと、さらなる制限チャネルの端部に接続されたさらなる弾性的に変形可能なクロージャとを含む。ここでも、さらなるクロージャは、流体が、第2のピストン方向におけるピストンの運動に対応して、さらなるクロージャに向かってさらなる制限チャネルを通って第2の制限方向に流れるとき、さらなる制限チャネルを少なくとも部分的に開き、流体が、第1のピストン方向におけるピストンの運動に対応して、第2の制限方向の反対の方向に流れるとき、さらなる制限チャネルを閉じるように構成される。
【0044】
さらなる実施例においては、さらなるクロージャは、流体がさらなるクロージャに向かってさらなる制限チャネルを通って第2の制限方向に流れるとき、流体によって遠ざかるように曲げられるかまたは押されるように構成される。ある実施例においては、第1および第2の制限方向は反対方向である。
【0045】
制限チャネルは、制限装置が減衰レベルをピストンの両方の移動方向において決定することを可能にする。
【0046】
さらなる実施例においては、制限装置は、制限チャネルまたはさらなる制限チャネルに向かってある方向にそれぞれクロージャまたはさらなるクロージャに張力および/または予荷重をかけるように、スペーサのようなある要素を含む。スペーサ、またはクロージャに張力および/または予荷重をかける他の手段は、クロージャの変形挙動が変更されることを可能にする。例えば、使用に先立って、スペーサは、クロージャに異なるように予荷重をかける異なるスペーサと置換されてもよい。その結果、同様の油圧の下でクロージャの弾性変形は異なることになる。結果的に、制限装置の流動抵抗は変更され、それによって、低速速度および/または滑らかな地形で、より多いまたはより少ない減衰を提供する。
【0047】
制限装置はバルブ部材に組入れられることが可能であり、またはそれは第2のチャンバ内においてバイパスチャネルに接続されることが可能である。
【0048】
次に、この発明を、添付の図面を参照して、より詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0049】
図1】先行技術ダンパ装置のための閉鎖部材の位置の関数としての、ばね力と磁力との間の均衡を示す。
図2】この発明に従うダンパ装置のための閉鎖部材の位置の関数としての、ばね力と磁力との間の均衡を示す。
図3】この発明に従うダンパ装置の実施例の断面である。
図4A図3のダンパ装置のバルブ部材の拡大した断面図であり、バイパスチャネルは十分に開かれる図である。
図4B図3のダンパ装置のバルブ部材の拡大した断面図であり、バイパスチャネルは閉じられる図である。
図5図3のダンパ装置のバルブ部材のバルブスライダを示す。
図6A】油がリバウンド行程中に図4のダンパ装置のリバウンドバイパスフロースロットルの内部でどのように移動するかを示す。
図6B】油が圧縮行程中に図4のダンパ装置の圧縮バイパスフロースロットルの内部でどのように移動するかを示す。
図7A】この発明に従う閉鎖部材およびガイド部材の端部領域の異なる形状を呈示する。
図7B】この発明に従う閉鎖部材およびガイド部材の端部領域の異なる形状を呈示する。
図7C】この発明に従う閉鎖部材およびガイド部材の端部領域の異なる形状を呈示する。
図8図3のダンパ装置における閉鎖部材およびガイド部材の端部領域における磁気飽和を示す。
図9A図3のダンパ装置のためのフェールセーフ機構の実施例を示す。
図9B図3のダンパ装置のためのフェールセーフ機構の実施例を示す。
図10A図9Aのフェールセーフ機構において用いられるばね装置を示す。
図10B図9Aのフェールセーフ機構において用いられるばね装置に対応するばね力特性を示す。
図11A】より線形か、または他の態様での所望の電流減衰力特性を可能にする、図3における実施例のパイプ部材における開口部の考えられ得る構成を示す。
図11B】より線形か、または他の態様での所望の電流減衰力特性を可能にする、図3における実施例のパイプ部材における開口部の考えられ得る構成を示す。
図12A】バルブが非通電時に閉じられ、通電時に開く、実施例を示す。
図12B】バルブが非通電時に閉じられ、通電時に開く、実施例を示す。
図13】この発明に従うバルブ部材の異なる実施例を示す。
【発明を実施するための形態】
【0050】
図3は、この発明に従うダンパ装置または緩衝装置1の実施例を示す。油圧緩衝装置1は、車両の本体側と車両の車輪側との間に置かれ、本体側に接続されるシリンダ2および車輪側に接続されるピストンロッド3を設けられる。その目的のために、ピストンロッド3は、シリンダ2の下側端部から外へ突出する取り付け穴3aを含む。油圧緩衝装置1は、上記のそれとは逆の意味で、つまり、シリンダ2は車輪側に接続され、ピストンロッド3は本体側に接続されるような意味で、取り付けることも考えられ得る。
【0051】
自由に可動な分離ピストン6は、シリンダ2を高圧ガスチャンバ4およびオイルチャンバ5に区分するものであり、シリンダ2の長手方向軸に沿って摺動するためにシリンダ2に嵌められる。高圧ガスチャンバ4は高圧ガスを充填され、オイルチャンバ5は油を油圧緩衝装置作動液として充填される。
【0052】
オイルチャンバ5は、ピストンロッド3のシリンダ側端部上に設置されたスロットルピストン7によって、上側または第2のオイルチャンバ5aおよび下側または第1のオイルチャンバ5bに区分される。
【0053】
ピストンロッド3は、シリンダ2に関して可動に取り付けられ、単一の構成要素として形成することが可能である、下側端部ロッドガイド―リバウンドバンパー―および封止ユニット保持部8を貫通する中空シャフト9を用いて構築される。
【0054】
ピストンロッド3の運動は、圧縮止めゴム10がシリンダ端部キャップ11に接触することによって制限される。ピストンロッド3の中空シャフト9は、ソレノイドのコイル33に接続された電線の案内のために用いられる(図4参照)。下側端部ロッドガイド―リバウンドバンパー―および封止ユニット保持部8を通って貫通するピストンロッド3の側は、バルブ部材30に接続され、それは、図4A図4B図5図6Aおよび図6Bと関連して次に記載される。
【0055】
バルブ部材はバルブベース31を含み、それはピストンロッド3に接続される。それは、ピストンロッド3の内部のねじ切りされたボンドによって接続されるピストン柱−バルブスライダガイド36をさらに含む。ピストン柱−スライダガイド36はアルミニウムまたはステンレス鋼のような非磁性材料からなり、この実施例においては複数の機能を有する。
【0056】
半径方向穴54はバルブベース31およびピストン柱−スライダガイド36を通って中空シャフト9に向かって穿孔されて、ソレノイドのコイル33の電気的接続のためのワイヤを案内する。コイル33は、バルブベース31の上に載置され、図4Aおよび図6Aにおいて示されるボビン34のようなフランジを有する円筒形部品のまわりに巻きつけられるかであり得る。しかしながら、コイル33は、フランジを有する円筒形部品の支持のない熱結合型であってもよい。ディスク状のスペーサ35がボビン34の上に置かれる。バルブハウジング32は、図6Aにおいて示されるようなねじ切りされたボンドによるか、またはバルブハウジング32の底部端でロックされたシームを用いることのいずれかによって、バルブベース31の外径に接続される。バルブハウジング32内側では、ディスク状のスペーサ35は内側バルブハウジング縁部32aに抗して載置される。内側バルブハウジング縁部32aは、ディスク状のスペーサ35を支持するように構成され、図4Aにおいて示されるように機械加工することが可能であり、またはそれは座金もしくは止め輪と組合せたバルブハウジング溝によって構築されてもよい。
【0057】
バルブスライダ37の形式の閉鎖部材は、シリンダ2の長手方向軸に沿って摺動するために、ピストン柱―スライダガイド36に関して可動に取り付けられる。バルブスライダ37は一方の側にスライダ縁部37aを備える。スライダ縁部37aは、コイル巻き付けバルブコントラばね40を保持する非磁性スペーサ42を保持している。バルブコントラばね40は波ばね39に接続される。バルブコントラばね40の上の予荷重は、コントラばね保持部38の厚みおよび波ばね39の厚みの変動によって調整することが可能である。
【0058】
シリンダ2に沿ったバルブスライダ37の移動は、湾曲したスペーサ41によって制限されている。他方の側においては、シリンダ2に沿ったバルブスライダ37の移動は、バルブスライダ37のV溝が彫られた側の側において、非磁性隔離スペーサ42によって制限されている。
【0059】
バイパスフロースロットルピストンアセンブリ43は、ピストン柱―スライダガイド36に適合される。アセンブリ43は、バイパスフロースロットルピストン44を含み、それは、バルブハウジング32の上側内径に抗するピストン44の外側径のわずかなプレス嵌めによって流体流れ封止される。バイパスフロースロットルピストン44の両方の平らにされた表面においては、弾性的に変形可能な板45aおよび45bがピストンナット70に与えられるトルクによってクランプされる。弾性的に変形可能な板45bは、バイパスフロースロットルピストン44の一方の側において、弁体46に予荷重をかける。 ともに、それらはリバウンドバイパスフロースロットルを形成する。バイパスフロースロットルピストン44の別の側の弾性的に変形可能な板45aは、弁体47に予荷重をかける。ともに、それらは圧縮バイパスフロースロットルを形成する。
【0060】
圧縮バイパスフロースロットルおよびリバウンドバイパスフロースロットルは、バイパスフロースロットルピストン44における通路52および53を介する油の流れを制限する制限装置の実施例である。リバウンドバイパスフロースロットルはリバウンド行程中においては通路52における油の流れを制限し、一方、圧縮行程中においては通路52における油の流れを実質的に遮断する。他方、圧縮バイパスフロースロットルは圧縮行程中においては通路53における油の流れを制限し、一方、リバウンド行程中においては通路53における油の流れを実質的に遮断する。
【0061】
ピストン7を支持するピストン柱−バルブスライダガイド36は油通路を有する。第一に、主なバイパス通路60が軸方向に穿たれる。第二に、複数の通路61が径方向に穿たれる。ピストン柱−バルブスライダガイド36における通路61は、バルブスライダ37の内側上のリング状のオイルチャンバ62と流体流通状態にある(図5のバルブスライダ37の詳細な図を参照)。バルブスライダ37の内側の通路63はオイルチャンバ62を通って穿たれ、オイルチャンバ62と流体流通状態にある。図4Aにおいて示される完全な非通電状態では、バルブスライダ37は硬化鋼の湾曲したスペーサ41に抗して載置される。ピストンロッド3が非通電状態で上方向に移動するとき、バイパス油は主なバイパス通路60を通って複数の通路61に流れ、リング状のオイルチャンバ62に入る。リング状のオイルチャンバ62から、バイパス油は複数の通路63を通って流れてオイルチャンバ64内に入る。オイルチャンバ64は、バイパスフロースロットルピストン44の右手側で、圧縮バイパス油通路53と流体流通状態にある。この通路における油は弾性的に板45Aを変形し、弁体47を開く。結果的に、油はオイルチャンバ5b内に流れ込むことを可能にされる。ピストンロッド3がソレノイドの非通電状態でリバウンド行程の一部として下方向に移動するときバイパス油はオイルチャンバ5bからバイパスフロースロットルピストン44のリバウンドバイパス油通路52に流れ込む。リバウンドバイパス油通路53の内側の油は弾性的に弁板45Bを変形し、弁体46を開く。結果的に、油はオイルチャンバ64内に流れ込むことを許される。オイルチャンバ64はバルブスライダ37の内側で複数の通路63と流体流通状態にあるので、油はオイルチャンバ64から複数の通路63を通ってリング状のオイルチャンバ62に流れ込むことを許される。バルブスライダ37の内側のリング状のオイルチャンバ62から、リバウンドバイパス油は、ピストン柱―バルブスライダガイド36の複数の通路61内に流れ込み、主なバイパス通路60を通って第2のオイルチャンバ5aに流れ込む。非通電ソレノイド状態において上下運動がバイパス流れのためにほんのわずかしか減衰されないように、絞り板46および47は、シリンダ2に関してピストンの低速度でピストンロッド3の上方向及び下方向の移動に抗してほんの小さな抵抗しか構成しない。
【0062】
バイパス流れの抵抗は、ソフトな設定を担い、すべての異なる適用例、車両および状況に対して非常によく調整可能である。この発明に従うダンパ装置の構築は、両方向における主なスロットルピストン上のバイパスを介する流量が、複数の油通路61の断面の開口面積をいかなるパイロット段階またはサーボ段階もなしで直接増大または低減させることによって調整されてもよいように行われる。これは、円筒状に形状化されたバルブスライダ37を、上方向に移動させてバイパス通路61を介する流量を増大し、下方向に移動させてバイパス通路61を介する流量を低減するようにすることによって行われる。円筒状に形状化されたバルブスライダ37による調整の直接的な特徴は、円筒状に形状化されたバルブスライダ37の位置が、油の流れまたは圧力差によって開始される、かけられる力によって影響を受けることなく、最も迅速な、可能な減衰応答を確実にする。
【0063】
図12Aおよび図12Bは、この発明によって包含される別の実施例を示す。図4Aにおける実施例と異なり、バルブスライダ37は開口部を含まない。したがって、円筒状に形状化されたバルブスライダ37を下方向に移動することは、バイパス通路61を介する流量を増大させ、それを上方向に移動することは、バイパス通路61を介する流量を減少させる。
【0064】
図4A図4Bおよび図12Bを参照して、弾性的に変形可能な板45aの上、および弾性的に変形可能な板45bの下で、硬化鋼の湾曲したスペーサ41および48は、それらの最も小さな直径の長さに依存して、弾性的に変形可能な板45a、45bがより多くまたはより少なく予荷重をかけられて、それぞれバイパス流れ制限を増大または減少させ得るように、ある態様で設計される。これは、減衰レベルがダンパ装置1の使用に先立って調整されることを可能にする。バイパススロットルバルブ43を構成するすべての部品は、ピストンナット70上に与えられるトルクによってクランプされることが注目される。
【0065】
主な圧縮絞り板49の上において、主なスロットルピストン7は、ピストンナット70上に与えられるトルクによってクランプされるピストン柱−バルブスライダガイド36のより小さな外側径によって中心に置かれる。主なスロットルピストン7は、シリンダ2の軸に沿って移動可能に適合される。主なスロットルピストン7の外径は、油流れ封止され、スロットルピストン7に際限なく縮小されるピストンリング50によってシリンダ2の内側壁に沿って案内される。主なスロットルピストン7の一方の側においては、主なリバウンド絞り板51が、ピストン柱−バルブスライダガイド36のより小さな外側径によって中心におかれ、ピストンナット70上に与えられたトルクによってクランプされる。
【0066】
スロットルピストン7はピストン柱−バルブスライダガイド36の上に取り付けられる。上に言及されるように、スロットルピストン7は、スロットルピストン7の両側において積重ねられた複数個の主なリバウンド絞り板51および主な圧縮絞り板49と、ピストン7の外周上に設置されたピストンリング50とを有し、シリンダ2の軸に沿って可動に適合される。主なリバウンド絞り板51はリバウンド油通路7aの端部開口部分を閉じ、一方、主な圧縮絞り板49は圧縮油通路7bの端部開口部分を閉じる。これらの通路7a、7bは、ディスク状のピストン本体を通って形成される。この実施例においては、リバウンド油通路7aは、左手側に位置決めされ、主なリバウンド絞り板51によって閉じられ、一方、圧縮油通路7bは、主な圧縮絞り板49によって閉じられる。ピストンロッド3が圧縮行程の一部として図4bにおいて示される状態で上方向に移動するとき、油通路7bにおける油は主な圧縮絞り板49を弾性的に変形し、油は、第2のチャンバ5aから第1のチャンバ5b内に流れ込むことを許される。他方、ピストンロッド3がリバウンド行程の一部として下方向に移動するとき、リバウンド油通路7aにおける油は主なリバウンド絞り板51を弾性的に変形し、油は、第1のチャンバ5bから第2のチャンバ5aに流れ込むことを許される。すなわち、上下運動が減衰されるように、絞り板49および51は、ピストンロッド3の上方向及び下方向の移動に抗する抵抗を構成する。主な油流れの抵抗(しっかりとした設定)は、すべての異なる適用例、車両、状況に対して、両方向において非常によく調整可能である。
【0067】
図4aおよび図4bにおいて示される実施例においては、バルブ部材30の構築は、比例ソレノイドを通って流れる電流の大きさを減少させるか増大することによって、円筒状に形状化されたバルブスライダ37が徐々に移動されるように行なわれる。図4においては、以下に単にソレノイドと呼ばれる比例ソレノイドが、そのソレノイドによって生成された磁界を案内するガイド部材と協働する。このガイド部材は構成要素31、32、33、35および37を含む。
【0068】
ともに、これらの構成要素は実質的に閉じた磁性ループを形成する。通常は、構成要素は、高い磁気誘導を確実にするために高い透磁率を有する。図4Aおよび図4Bは、図3のダンパ装置のバルブ部材の拡大した断面図であり、バイパスチャネルは、それぞれ、図4Aにおいては十分に開かれるか、または図4Bにおいては閉じられる。
【0069】
複合ソレノイドは、磁性材料から形成されたケースにおいて非磁性ボビン34のまわりに巻かれた環状形状のコイル33を埋込むことによって形成され、バルブベース31、バルブハウジング32、ディスク状のスペーサ35およびバルブスライダ37によって構成される。この実施例において用いられるソレノイドは、通電されたとき、バルブコントラばね40および波ばね39によって形成され非磁性隔離スペーサ42によって停止されるばね装置を圧縮しながら、バルブスライダ37を下方向に移動させる。非磁性隔離スペーサ42は、バルブベース31の上側端部の角度をつけられた縁部とバルブスライダ37の溝がVに彫られた端部との間の直接接触を防ぐ。これは、磁気ヒステリシス、およびバルブスライダ37のバルブベース31への固着を防ぐ。
【0070】
ソレノイドが完全に非通電状態にされると、バルブスライダ37は、バルブコントラばね40および波ばね39によって形成されたばね装置によって上方向に押され、湾曲したスペーサ41によって規定されたその元の位置に戻る。参照符号33aおよび33bは、コイル33のためのリード線を示し、それらは穴54および中空シャフト9を通って走り、取り付け穴3aで緩衝装置1を出る。
【0071】
非常に限られた磁気エネルギーしか失われないように、ガイド部材はある態様で磁界線を案内する。バルブベース31、バルブハウジング32、ディスク状のスペーサ35およびバルブスライダ37のような、磁界線を案内する構成要素は、コイル33に可能な限り接近している。バルブスライダ37の下側端部で溝がvに彫られた端部とバルブベース31の湾曲した縁部の上側端部との間のエアギャップから離れて、不必要な磁気抵抗は、ガイド部材の構築の内側には見出されない。磁界線を案内するすべての部品の壁厚は、好ましくは一定であり、同じ径方向断面表面積を有する。
【0072】
バルブベース31の湾曲した縁部の上側端部をバルブスライダ37の下側端部の相補的なv字型溝との組合せにおいて用いることによって、磁界に対する有効なエアギャップは、バルブスライダ37の移動より実質的に小さく達成される。後者はシリンダ2の軸に沿ったバルブスライダ37の運動によって決められ、一方、前者は、バルブベース31とバルブスライダ37との間の最短距離によって決められる。この構築は、バルブスライダ37の位置と無関係にコイル33を通るすべての大きさの電流の下で磁力を上げる。
【0073】
この発明のバルブベース31の上側端部での湾曲した縁部およびバルブスライダ37の溝がvに彫られた下側端部の別の恩恵は、この構築がバルブスライダ37の径方向位置に対して強い自己センタリング効果を有するという事実である。径方向の側方の力は生じず、したがって、バルブスライダ37はこれらの側方の力によって引起される摩擦に晒されず、結果として、短い時間で正確なバルブ応答を生じる。公知のダンパ装置に比較して、バルブスライダ37上にかけられる磁力が増大されるので、より高いばね定数を備えたばね装置を用いることが可能である。より高いばね定数はバルブスライダ37に起因する慣性の影響を低減する。
【0074】
当業者は、溝と縁部とを交換することが可能であること、つまりバルブベース31上に構成されたv字型溝およびバルブスライダ37上に構成された湾曲した縁部を理解する。
【0075】
図7A図7Cは、バルブスライダ37およびバルブベース31の端部領域のさまざまな実施例を示す。これらの図においては、端部領域は相補的である。さらに、各図ごとに、バルブスライダ37とバルブベース31との間の垂直方向分離は、端部領域間の最短距離より大きい旨を保持する。図7Aは、図4Aにおける実施例の端部領域の形状をより詳細に示す。同様の先の尖った構造が、図7Bにおいて示される。図7Cはアーチ形の突起とアーチ形の窪みとの組合せを示す。
【0076】
図8は、バルブスライダ37がバルブベース31に非常に接近し、エアギャップが小さい状況における、バルブスライダ37およびバルブベース31における磁気誘導のコンピュータシミュレーションにおける図7Aの先の尖った構造の効果を示す。飽和は、磁界が相対的に高い端部領域で識別することが可能である。バルブスライダ37およびバルブベース31の材料特性のために、磁気飽和が生じ、その結果、磁気誘導における増大は、一定の透磁率と減少するエアギャップとの組合せに基づいて期待されるであろうよりも小さい。より特には、エアギャップに起因する磁気抵抗は、エアギャップ長さにおける減少のため、大きく減少する。しかしながら、これは、ガイド部材の磁気抵抗における増大によって部分的に補償され、それは、この場合では、バルブスライダ37およびバルブベース31の端部領域における磁気飽和に帰することが可能である。
【0077】
図9Aおよび図9Bは、図3のダンパ装置において適用されるフェールセーフ機構の実施例を示す。フェールセーフ機構は、図10Aに示されるように、波ばね39に接続されたバルブコントラばね40を含むばね装置に基づく。波ばねのばね定数は、バルブコントラばね40のそれよりかなり小さく、結果として、図10Bに示されるばね力変位特性をもたらす。
【0078】
ソレノイドが通電されないとき、つまりコイル33を通る電流が低い電流値(例えば0.3〜0.4A)より下に落ちると、波ばね39は、バルブスライダ37を解放して、ピストン柱−バルブスライダガイド36において穿たれた複数の通路61を部分的に閉じることを可能にする。結果的に、第1のチャンバ5bと第2のチャンバ5aとの間の油流れは制限される。この点において、以下が注目され得る。低いピストン速度では、ダンパによってかけられる減衰力は、制限装置、つまり圧縮バイパスフロースロットルおよびリバウンドバイパスフロースロットルによって決められる。高速では、部分的に閉じた通路61に起因する流動抵抗が関係するようになる。通路61にわたる圧力降下は、通路61に近い領域における乱流のためにバルブスライダ37によって可能にされる開口部を通る流れおよびその寸法に依存する。あるピストン速度では、バイパスにわたる圧力降下は、主なスロットルピストンにわたる圧力降下と等しく、油流れを主なスロットルピストン流れとバイパス流れとに分割する。
【0079】
通路61がバルブスライダ37によってより少なく覆われるとき、この徐々の遷移が生じるピストン速度は増大する。結果的に、通路61がソレノイドに通電する電流がない状態において完全に開いているであろうシステムにおいては、利用可能な減衰力は制限されるだろう。そのような状況は、緊急時に、例えばコイルを駆動する電気配線が切断されるとき、生じるかもしれない。フェールセーフ機構を用いることは、ある量の減衰が相対的に低いピストン速度で利用可能であることを保証する。電流が存在しないとき、通路61の有効な開口は、バルブスライダ37の非通電位置のため、より小さい。
【0080】
図1および図2に関連して論じられるように、バルブスライダ37の位置は、磁力とバルブスライダ37にかけられるばね力との間の均衡によって決定される。バルブスライダ37の位置は、油流れに対する通路61での制限を決定する。利用可能な減衰力の比例制御を有することは、減衰力がコイル33を通る電流に比例するであろうということを意味して、望ましいであろう。その目的のため、通路61で形成された制限が所望の比例数を確実にするように、通路61の形状もしくは分布および/またはバルブスライダ37における開口部の形状もしくは分布が修正されてもよい。
【0081】
図11Aは、複数個の通路61がピストン柱−バルブスライダガイド36において形成される例を示す。スライダバルブ37の運動に垂直な方向における通路61の分布は、好ましくは均衡がとれている。しかしながら、通路の密度はスライダバルブ37の移動方向において異なる。これは、スライダバルブ37上に油によってかけられる対称な力を確実にし、そしてそれはスライダ位置−減衰力特性を変更することを可能にする。
【0082】
図11Bは、開口部の密度においてではなく、開口部それ自体の形状において変形が実施される代替的実施例を示す。複数のこれらの開口部は、ピストン柱−バルブスライダガイド36を横切って均一に分布されてもよい。もちろん、両方の解決策を組合せることも可能である。
【0083】
図13は、この発明に従うバルブ部材の異なる実施例を示す。このバルブ部材は図3において示されるダンパにおいて用いることが可能であり、主なバイパス通路160はスロットルピストン7に接続される。
【0084】
図4Aおよび図4Bにおいて示される実施例とは逆に、バルブスライダ137はバルブスライダガイド136内において移動する。後者は、主なバイパス通路160と通路152、153との間の流体流通を可能にするよう、通路161を設けられる。
【0085】
バルブスライダガイド136内では、第1のばね139および第2のばね140が取り付けられる。その目的のために、少なくとも動作中においてバルブスライダガイド136に関して固定された関係にあるばね支持体190が使用される。ばね取り付け台191を用いて、第1のばね139をガイド部材部品192に結合する。
【0086】
ばね139および140の他方の端部の上では、両方のばね139および140と当接するばねディスク193が用いられる。バルブスライダ137はばねディスク193を係合する突起194を設けられる。さらに、ばねディスク193は、中央穴を設けられて、流体をバルブスライダ137のまわりにおいて移動させて、両端上における流体の圧力差を低減する。
【0087】
ばね139、140に予め張力をかけるため、図4Aにおける態様に類似する態様で空間133において取り付けられる電気的なコイル(図示せず)に通電することなしでは、バルブスライダ137は通路161を閉じる態様で、ばねディスク193はバルブスライダ137を押す。頂部側においては、バルブスライダガイド136は、バルブスライダ137の軸方向移動を制限する突起195を設けられる。
【0088】
ばね支持体190は、それのバルブスライダガイド136に関して軸方向位置を変更するように調整することが可能である。この場合、ばね支持体190は、ばね取り付け台191の開口部を介して移動し、それによって、第2の(主な)ばね140のみに予め張力をかけることを変更する。結果的に、ばね−力特性におけるニーポイントは、図10Bにおいて示されるように、より低い変位値にシフトする。
【0089】
バルブハウジング132、ガイド部材部品192、バルブスライダ137は、すべて、高磁力が構築されることを可能にするために、相対的に高い透磁率を有する。しかしながら、図4Aの実施例に類似して、バルブスライダガイド136は、一般に、アルミニウムまたはステンレス鋼のような非磁性材料から形成される。これらの材料の欠点は、それらがバルブスライダ137の(磁性)材料とは異なる熱膨脹係数を有するということである。この係数は、大抵は、より大きい。
【0090】
バルブスライダ137がバルブスライダガイド136と強く係合しすぎて、その結果、バルブの動作を厳しく制限する高い摩擦係数を生じさせる状況を回避するために、熱による径方向膨張における差を考えなければならない。
【0091】
図13の実施例には、バルブスライダ137とバルブスライダガイド136との間のクリアランスが、通常動作条件よりも高温の下では、より大きくなるという利点がある。したがって、高温を伴う極端な条件の下で適切に機能することを確実にするために通常動作条件で相対的に大きいクリアランスを実施する必要はない。通常動作条件の下でより小さいクリアランスを有することによって、流体の漏出を回避および/または低減することが可能である。
【0092】
磁性材料のディスク196は磁性ループの構成要素として用いられる。封止リング197および198は、空間133への流体の移送を防いで、流体と電気的なコイルとの間の接触を防ぐ。
【0093】
この発明をその実施例を用いて記載した。しかしながら、特許請求の範囲によって決定されるこの発明の範囲から逸脱することなく、これらの実施例への修正が考えられ得ることは、当業者には明らかであるはずである。
【0094】
例えば、図4Aにおいては、ギャップをバルブベース31とバルブスライダ37との間に識別することが可能である。先に記載されたように、バルブスライダ37がバルブベース31に接近すると磁気飽和が生じるように、バルブベース31およびバルブスライダ37の端部領域は構成される。結果的に、ギャップの長さにおける減少に起因する磁気抵抗における増大は、磁気飽和による磁気抵抗における増大によって部分的に補償される。
【0095】
同様の効果を得ることが可能であるのは、さらなるギャップをディスク状のスペーサ35とバルブスライダ37との間に識別することが可能であるように、バルブスライダ37が円錐形または先細りの形状を有する場合である。バルブスライダ37がバルブベース31に向かって移動するときにさらなるギャップが増大するようにバルブスライダ37の形状を構成することによって、バルブスライダ37とバルブベース31との間のギャップの長さの減少による磁気抵抗における増大は、再び部分的に補償される。
【0096】
これらの手段は、この発明に従うダンパ装置において単独または組合せて適用することが可能であることは当業者には明らかであるはずである。
図3
図4A
図4B
図5
図6A
図6B
図7A
図7B
図7C
図8
図9A
図9B
図10A
図11A
図11B
図12A
図12B
図13
図1
図2
図10B