特許第5902215号(P5902215)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5902215使い捨て容器及びその制御装置並びにこれらを備えた薬液注入装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902215
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】使い捨て容器及びその制御装置並びにこれらを備えた薬液注入装置
(51)【国際特許分類】
   A61M 5/168 20060101AFI20160331BHJP
   A61J 1/05 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   A61M5/168 500
   A61J1/05 313
【請求項の数】7
【全頁数】18
(21)【出願番号】特願2014-32138(P2014-32138)
(22)【出願日】2014年2月21日
(65)【公開番号】特開2015-144799(P2015-144799A)
(43)【公開日】2015年8月13日
【審査請求日】2014年3月26日
(31)【優先権主張番号】特願2014-500(P2014-500)
(32)【優先日】2014年1月6日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000205007
【氏名又は名称】大研医器株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100067828
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 悦司
(74)【代理人】
【識別番号】100115381
【弁理士】
【氏名又は名称】小谷 昌崇
(74)【代理人】
【識別番号】100168321
【弁理士】
【氏名又は名称】山本 敦
(72)【発明者】
【氏名】山田 圭一
(72)【発明者】
【氏名】多久和 良
(72)【発明者】
【氏名】北籔 晃子
(72)【発明者】
【氏名】漆間 正行
【審査官】 鈴木 洋昭
(56)【参考文献】
【文献】 特開2002−126092(JP,A)
【文献】 特開2002−85556(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61J 1/05
A61M 5/142
A61M 5/168
A61M 37/00
WPI
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
薬液を患者に注入するための薬液注入装置に用いられる使い捨て容器であって、
薬液が充填される薬液容器であり、充填された薬液を導出するための導出部を有する薬液容器と、
接続導体と、前記接続導体を介して供給される駆動電圧によって伸長と収縮とを繰り返す圧電素子と、前記圧電素子の伸長及び収縮によって振動するダイヤフラムとを有し、前記駆動電圧の供給に応じて前記導出部を通じて導出するための力を前記薬液容器内の薬液に与えるポンプと、
前記ポンプに対して駆動電圧を供給するための制御装置と前記接続導体とが電気的に接続された状態で前記制御装置を脱着可能に装着するための装着部とを備え
前記薬液容器は、上端が開口する蛇腹容器と、前記蛇腹容器の開口を塞ぐように前記蛇腹容器の上端に固定された蓋部材とを有し、
前記蓋部材には、前記蛇腹容器内の薬液を導出するための前記導出部と、当該導出部とは別の経路で前記蛇腹容器内に薬液を充填可能な充填部とが形成され、
前記導出部には、前記ポンプが接続され、
前記蛇腹容器は、薬液が充填され、かつ、前記導出部が開放されている状態においてその形状を保持することができ、さらに、前記ポンプにより前記薬液容器内の薬液が前記導出部を通じて前記薬液容器から導出されることに応じて当該薬液容器内の容積が減少するように上下方向に変形可能な剛性を有する、使い捨て容器。
【請求項2】
前記使い捨て容器は、前記導出部から導出された薬液を導くための導管をさらに備え、
前記ポンプは、前記導出部と前記導管との間で前記薬液容器に取り付けられている、請求項に記載の使い捨て容器。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の使い捨て容器に装着される制御装置であって、
前記ポンプの接続導体と電気的に接続可能な接続端子と、
前記接続導体と前記接続端子とが電気的に接続された状態で前記使い捨て容器の装着部が脱着可能に装着される被装着機構とを備えている、制御装置。
【請求項4】
前記制御装置は、前記被装着機構に前記使い捨て容器の装着部が装着された状態で、前記薬液容器を収納可能な容器ケースをさらに備えている、請求項に記載の制御装置。
【請求項5】
前記制御装置は、前記ポンプに供給される駆動電圧を制御するメイン制御部を含む制御装置本体と、前記メイン制御部に対して前記駆動電圧を変更するための指令を無線で出力可能な出力装置とを備えている、請求項又はに記載の制御装置。
【請求項6】
請求項1又は2に記載の使い捨て容器と、
請求項の何れか1項に記載の制御装置とを備えている、薬液注入装置。
【請求項7】
前記薬液容器又は前記制御装置は、前記導出部を通じた薬液の導出量が増加するための指令を前記制御装置に対して出力するための追加投与手段をさらに備えている、請求項に記載の薬液注入装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、薬液容器に充填された薬液を患者へ注入するための薬液注入装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、予め設定された量の薬液が充填されるとともに充填された薬液を導出するための導出部を有する薬液容器と、導出部を通じて導出するための力を薬液容器内の薬液に与えるための駆動部とを備えた薬液注入装置が知られている。
【0003】
例えば、特許文献1に記載の薬液注入装置は、薬液を充填可能なバルーンを有し、薬液の充填により膨張したバルーンの収縮力を利用してバルーン内の薬液をバルーンから導出する。
【0004】
つまり、特許文献1に記載の薬液注入装置では、薬液容器及び駆動部の役割をバルーンが果たしている。
【0005】
また、特許文献1に記載の薬液注入装置は、特定の患者に使用された後、感染を防止するために他の患者に使用されることなく薬液注入装置全体として廃棄される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平5−237194号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、特許文献1に記載の薬液注入装置では、バルーンの寸法精度によって大きく左右されるバルーンの収縮力を利用しているため、薬液の流量精度の向上に限界がある。特に、バルーンの収縮力は、バルーンの膨張の程度に応じて大きく変動するため、流量を一定に保つことも困難である。
【0008】
本発明の目的は、感染を防止しながら薬液の流量精度の向上を図ることができる使い捨て容器、その駆動を制御する制御装置、及びこれらを備えた薬液注入装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記課題を解決するために、本発明は、薬液を患者に注入するための薬液注入装置に用いられる使い捨て容器であって、薬液が充填される薬液容器であり、充填された薬液を導出するための導出部を有する薬液容器と、接続導体と、前記接続導体を介して供給される駆動電圧によって伸長と収縮とを繰り返す圧電素子と、前記圧電素子の伸長及び収縮によって振動するダイヤフラムとを有し、前記駆動電圧の供給に応じて前記導出部を通じて導出するための力を前記薬液容器内の薬液に与えるポンプと、前記ポンプに対して駆動電圧を供給するための制御装置と前記接続導体とが電気的に接続された状態で前記制御装置を脱着可能に装着するための装着部とを備え、前記薬液容器は、上端が開口する蛇腹容器と、前記蛇腹容器の開口を塞ぐように前記蛇腹容器の上端に固定された蓋部材とを有し、前記蓋部材には、前記蛇腹容器内の薬液を導出するための前記導出部と、当該導出部とは別の経路で前記蛇腹容器内に薬液を充填可能な充填部とが形成され、前記導出部には、前記ポンプが接続され、前記蛇腹容器は、薬液が充填され、かつ、前記導出部が開放されている状態においてその形状を保持することができ、さらに、前記ポンプにより前記薬液容器内の薬液が前記導出部を通じて前記薬液容器から導出されることに応じて当該薬液容器内の容積が減少するように上下方向に変形可能な剛性を有する、使い捨て容器を提供する。
【0010】
本発明では、従来の薬液注入装置において導出部を通じて導出するための力を薬液に与えるために設けられている駆動部がポンプと制御装置とに分割されている。
【0011】
ここで、接続導体、圧電素子及びダイヤフラムを有するいわゆるダイヤフラムポンプは、その構造が簡素であるため、使い捨てに適している。また、制御装置は、ポンプの接続導体に対して電気的に接続していればよく、薬液に対して接触しないため、再利用することができる。
【0012】
したがって、特定の患者に使用された使い捨て容器を他の患者に使用することなく使い捨てするとともに、制御装置を再利用することにより、感染を確実に防止することができる。
【0013】
また、ダイヤフラムポンプは、駆動電圧の設定に応じた流量で薬液を精度よく流すことができるので、部品(例えばバルーン)の寸法精度に応じて流量が変動する従来の薬液注入装置と比較して流量の精度を向上することができる。
【0014】
したがって、本発明によれば、感染を防止しながら薬液の流量精度の向上を図ることができる。
【0015】
また、薬液容器は、薬液が充填され、かつ、導出部が開放されている状態において、その形状を保持することができる剛性を有する、つまり、薬液容器は、その収縮力を伴うことなく薬液を充填可能なものである。
【0016】
従来の薬液注入装置では、バルーンに対する薬液の充填によって当該バルーンの収縮力が蓄えられる。つまり、医療従事者は、バルーンの収縮力に対抗する方向の力を薬液に与えながらバルーンに薬液を充填しなければならない。そのため、医療受持者に対して薬液の充填のための多大な労力を与えるという問題がある。
【0017】
これに対し、本発明によれば、従来のように使い捨て容器自体(バルーン自体)に薬液を導出するための動力を発揮させる場合と異なり、薬液容器に薬液を充填する際における医療従事者の労力を軽減することができる。
【0018】
したがって、感染を防止しながら薬液の充填のための労力の軽減と薬液の流量制度の向上との両立を図ることができる。
【0019】
薬液容器、ポンプにより薬液容器内の薬液が導出部を通じて薬液容器から導出されることに応じて当該薬液容器の形状を保持することができる剛性を有する場合、薬液の導出容量に見合った空気を薬液容器内に導入しなければ薬液の導出を維持することができない。
【0020】
そこで、前記蛇腹容器は、前記ポンプにより前記薬液容器内の薬液が前記導出部を通じて前記薬液容器から導出されることに応じて当該薬液容器内の容積が減少する方向に変形可能な剛性を有する
【0021】
そのため、薬液の導出容量に見合った空気を導入しなくても薬液容器が変形することにより薬液の導出を維持することができる。
【0022】
したがって、薬液容器内に空気を導入するための構成を省略して、より使い捨てに適した簡素な薬液容器を提供することができる。
【0023】
ここで、薬液容器に対して導出部を通じて薬液を充填する場合、充填時の薬液の圧力が導出部と連通するポンプに生じるおそれがあるため、この圧力伝達を防止するための手段(例えば、充填時に導出部とポンプとの間の連通を遮断するための経路切換手段)を設ける必要がある。
【0024】
そこで、本発明において、前記薬液容器は、前記導出部とは別の経路で前記薬液容器内に薬液を充填可能な充填部をさらに備えている。
【0025】
そのため、充填時の圧力がポンプに伝達するのを防止するための手段を設けることなく、充填部を通じて薬液容器に薬液を充填することができる。
【0026】
したがって、より使い捨てに適した簡素な薬液容器を提供することができる。
【0027】
ここで、使い捨て容器が導出部から導出された薬液を導くための導管を備えている場合、この導管にポンプを設けることも可能であるが、導管は、比較的に高い可撓性を有するため、当該患者又は周囲の物と導管及びポンプとが接触した場合にポンプが破損する可能性が高くなる。そのため、この場合には、ポンプを保護するための手段を別途設ける必要がある。
【0028】
そこで、前記使い捨て容器が前記導出部から導出された薬液を導くための導管をさらに備えている場合、前記ポンプは、前記導出部と前記導管との間で前記薬液容器に取り付けられていることが好ましい。
【0029】
前記態様によれば、ポンプが薬液容器に取り付けられているため、薬液容器の剛性を借りてポンプを保護することができる。
【0030】
したがって、ポンプを保護するための構成を省略して、より使い捨てに適した簡素な薬液容器を提供することができる。
【0031】
また、本発明は、前記使い捨て容器に装着される制御装置であって、前記ポンプの接続導体と電気的に接続可能な接続端子と、前記接続導体と前記接続端子とが電気的に接続された状態で前記使い捨て容器の装着部が脱着可能に装着される被装着機構とを備えている、制御装置を提供する。
【0032】
本発明に係る制御装置は、前記接続導体と前記接続端子とが電気的に接続された状態で上述した使い捨て容器の装着部が脱着可能に装着される被装着機構を有する。
【0033】
そのため、使い捨て容器に制御装置が装着された状態において、使い捨て容器から高い流量精度で薬液を導出させることができる。
【0034】
また、薬液導出後においては、使い捨て容器から制御装置を取り外した状態で、当該使い捨て容器を廃棄することが可能となる。
【0035】
したがって、上述のように、感染を防止しながら薬液の充填のための労力の軽減と薬液の流量精度の向上との両立を図ることができる。
【0036】
前記制御装置において、前記制御装置は、前記被装着機構に前記使い捨て容器の装着部が装着された状態で、前記薬液容器を収納可能な容器ケースをさらに備えていることが好ましい。
【0037】
前記態様によれば、薬液容器を収納することができるので、薬液容器が周囲の物と接触して変形等することにより当該薬液容器内の薬液の圧力が変動して薬液容器から導出される薬液の流量に悪影響が及ぶのを抑制することができる。
【0038】
特に、上述のように薬液容器がポンプによる薬液の導出に応じて変形可能な剛性を有する場合には、薬液容器が変形し易いため、容器ケースにより薬液容器を保護することが有効である。
【0039】
また、上述のようにポンプが薬液容器に取り付けられている場合には、薬液容器とともにポンプも容器ケース内に収納することができるため、ポンプをより有効に保護することができる。
【0040】
前記制御装置がポンプに供給される駆動電圧を制御するメイン制御部を含む制御装置本体を有する場合、メイン制御部に対して駆動電圧を変更するための指令を出力するための出力部を制御装置本体に一体に設けることも可能である。しかし、この場合には、患者の手の届く範囲に出力部が配置されるため、患者によって薬液の流量が変更されてしまうおそれがある。
【0041】
そこで、前記制御装置は、前記ポンプに供給される駆動電圧を制御するメイン制御部を含む制御装置本体と、前記メイン制御部に対して前記駆動電圧を変更するための指令を無線で出力可能な出力装置とを備えていることが好ましい。
【0042】
前記態様によれば、出力装置は、制御装置本体に対して無線で指令を出力することができるため、制御装置本体を薬液容器とともに患者の近傍に配置するとともに、制御装置本体とは異なる位置(例えば、医療従事者の手元)に出力装置を配置することができる。
【0043】
したがって、患者によって薬液の流量が変更されてしまうのを防止することができる。
【0044】
さらに、本発明は、前記使い捨て容器と、前記制御装置とを備えている、薬液注入装置を提供する。
【0045】
前記薬液注入装置において、前記薬液容器又は前記制御装置は、前記導出部を通じた薬液の導出量が増加するための指令を前記制御装置に対して出力するための追加投与手段をさらに備えていることが好ましい。
【0046】
前記態様によれば、患者が感じる症状の変化に応じて患者自らが追加投与手段を操作することにより、薬液の導出量を増やして前記症状の変化を緩和することができる。例えば、薬液として麻酔薬を使用している場合、患者は、痛みの増加に応じて追加投与手段を操作することにより、麻酔薬の投与量を増やして痛みを緩和することができる。
【発明の効果】
【0047】
本発明によれば、感染を防止しながら薬液の充填のための労力の軽減と薬液の流量精度の向上との両立を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
図1】本発明の実施形態に係る薬液注入装置の全体構成を示す斜視図である。
図2図1の薬液注入装置を分解して示す斜視図である。
図3図2の容器本体と位置決め部材9との係合手順を説明するための構成を示す斜視図である。
図4図2の使い捨て容器の平面図である。
図5図4のV−V線断面図である。
図6】ポンプの動作を説明するための概略断面図であり、ポンプの駆動が停止している状態を示す。
図7】ポンプの動作を説明するための概略断面図であり、ポンプが薬液を吸引した状態を示す。
図8】ポンプの動作を説明するための概略断面図であり、ポンプが薬液を吐出している状態を示す。
図9図4のIX−IX線断面図である。
図10図2に示すケース蓋の底面図である。
図11図10のXI−XI線断面図に相当するものであって、使い捨て容器と位置決め部材とケース蓋との結合状態を示すものである。
図12図2に示すチューブ抜止部の平面図である。
図13】薬液注入装置2の電気的構成を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0049】
以下添付図面を参照しながら、本発明の実施の形態について説明する。なお、以下の実施の形態は、本発明を具体化した例であって、本発明の技術的範囲を限定する性格のものではない。
【0050】
図1及び図2を参照して、薬液注入装置2は、薬液を患者に注入するためのものである。
【0051】
具体的に、薬液注入装置2は、薬液が充填される使い捨て容器2Aと、使い捨て容器2Aから薬液を導出するために使い捨て容器2Aに対して駆動電圧を供給する制御装置2Bとを備えている。
【0052】
なお、図1に示すように配置された薬液注入装置2の上下方向を用いて以下説明する。
【0053】
図2図4及び図5を参照して、使い捨て容器2Aは、薬液が充填される薬液容器4と、薬液容器4内に充填された薬液を当該薬液容器4から導出するためのポンプ5と、薬液容器4から導出された薬液を導くための導管6と、導管6の途中部に設けられた追加投与手段7(図1参照)と、導管6の先端部に設けられた接続部8とを備えている。接続部8は、患者の体内に留置される部分を有する留置部材(カテーテル及び注射針を含む)に接続可能である。
【0054】
薬液容器4は、上端が開口する有底の蛇腹容器11と、蛇腹容器11の開口を塞ぐように蛇腹容器11の上端に固定された蓋部材12と、蓋部材12に形成された充填部26aを塞ぐ栓体13と、蓋部材12に対してポンプ5を取り付けるための取付部材14とを備えている。
【0055】
蛇腹容器11は、楕円形の断面形状を有するとともに上下方向に延びる容器である。また、蛇腹容器11は、薬液が充填され、かつ、後述する導出部26dが開放されている状態において、その形状を保持することができる剛性を有する。一方、蛇腹容器11は、ポンプ5により薬液容器4内の薬液が導出部26dを通じて薬液容器4から導出されることに応じて当該薬液容器4内の容積が減少する方向(上下方向)に変形可能な剛性を有する。
【0056】
蓋部材12は、蛇腹容器11の上部開口内に嵌合した状態で溶着された蓋部材本体26と、蓋部材本体26の周縁部から径方向の外側に突出するフランジ部(装着部)27とを備えている。
【0057】
蓋部材本体26は、当該蓋部材本体26を上下方向に貫通する充填部26aと、蓋部材本体26から上に突出する突出部26bとを備えている。突出部26bは、当該突出部26b内に薬液を通すための連通部26c(図5参照)及び導出部26d(図9参照)を有する。連通部26cは、図5に示すように、突出部26bを水平方向に貫通する。導出部26dは、図9に示すように、突出部26bの下面から上に延びる部分と、この部分の上端部から水平方向に延びて突出部26bの外側に連通する部分とを有する。
【0058】
以下、図6図8を参照して、ポンプ5の構成について説明する。
【0059】
ポンプ5は、底部と底部の周縁部に立設された側壁とを有する筐体15と、筐体15の底部との間にポンプ室15aが形成されるように筐体15の側壁に取り付けられたダイヤフラム16と、ダイヤフラム16のポンプ室15aと反対側の面に設けられた圧電素子17と、圧電素子17に駆動電圧を供給するための接続導体18と、筐体15の底部に形成された導入口15bに設けられた導入側一方弁19と、筐体15の底部に形成された導出口15cに設けられた導出側一方弁20とを備えている。
【0060】
導入側一方弁19は、導入口15b内の薬液の圧力がポンプ室15a内の薬液の圧力を超えた場合に開放して、導入口15bからポンプ室15aに向けた薬液の流れを許容する。
【0061】
導出側一方弁20は、ポンプ室15a内の薬液の圧力が導出口15c内の薬液の圧力を超えた場合に開放して、ポンプ室15aから導出口15cに向けた薬液の流れを許容する。
【0062】
圧電素子17は、交流電源Pからの駆動電圧が供給されることにより、図7及び図8に示すように伸長と収縮とを繰り返す。この圧電素子17の伸縮によってダイヤフラム16は、振動する。なお、図6は、交流電源Pから駆動電圧が供給されていない状態を示す。
【0063】
図7に示すように、交流電源Pから駆動電圧が供給されてポンプ室15aが膨張しようとすると、ポンプ室15a内の圧力低下に伴い、図7に示すように、導出側一方弁20が閉じるとともに導入側一方弁19が開放して、ポンプ室15a内に薬液が導入される。
【0064】
次に、図8に示すように、交流電源Pから駆動電圧によりポンプ室15aが収縮しようとすると、ポンプ室15a内の圧力増加に伴い、図8に示すように、導入側一方弁19が閉じるとともに導出側一方弁20が開いて、ポンプ室15a内の薬液が導出される。
【0065】
このように構成されたポンプ5は、図4図5及び図9に示すように取付部材14によって薬液容器4に取り付けられている。
【0066】
具体的に、取付部材14は、蓋部材12の突出部26bとポンプ5とが互いに密着した状態で突出部26b及びポンプ5を挟んで保持する挟持部14aと、挟持部14aから突出するとともに導管6が接続される被接続部14bとを備えている。
【0067】
挟持部14aは、ポンプ5の導入口15bと突出部26bの導出部26dとが互いに連通し(図9参照)、かつ、ポンプ5の導出口15cと突出部26bの連通部26cとが互いに連通した状態で、ポンプ5及び突出部26bを挟んで保持する。また、ポンプ5が挟持部14aにより突出部26bに取り付けられた状態で、ポンプ5の接続導体18は、上に向けて配置されている。
【0068】
被接続部14bは、導管6の内部と連通部26cとが連通した状態で当該導管6を接続可能である。
【0069】
したがって、ポンプ5の駆動により、蛇腹容器11内の薬液は、導出部26dを通じてポンプ5に導かれ、このポンプ5から連通部26cを通じて導管6内に導かれ、この導管6を通じて患者へ注入される。
【0070】
図1を参照して、追加投与手段7は、患者自らが操作するための追加投与ボタン7aを有し、この追加投与ボタン7aの操作に応じてポンプ5による薬液の導出流量を増加させるための指令を制御装置2Bに出力する。追加投与手段7の具体的構成は、後述する。
【0071】
図2及び図3を参照して、制御装置2Bは、使い捨て容器2Aとは異なり、繰り返し使用されるものである。
【0072】
具体的に、制御装置2Bは、上述した使い捨て容器2Aに取り付けられる位置決め部材9と、位置決め部材9が取り付けられた使い捨て容器2Aを収納する容器ケース(制御装置本体)10と、容器ケース10に内蔵されたメイン制御部28に対して指令を出力するための出力装置3とを備えている。
【0073】
位置決め部材9は、ポンプ5の接続導体18と容器ケース10の接続端子25(図10参照)とを位置決めするためのものである。また、位置決め部材9は、フランジ部27を上から覆うように薬液容器4に取り付けられる板状の部材である。
【0074】
具体的に、位置決め部材9は、容器ケース10に対して位置決め部材9を位置決めするための4対の位置決め片9a(図10参照)と、容器ケース10に対する係合を許容する被係合部9bと、ポンプ5の接続導体18を上に開放するための一対の導体開放穴9cと、導管6を通すための導管挿入穴9dと、薬液容器の充填部26a(図5参照)を上に開放するための充填部開放穴9eと、導管6を保持するための導管保持部9fと、フランジ部27に係合するための一対の係合部9gと、フランジ部27に対して位置決め部材9を位置決めするための一対の位置決め突起9hとを備えている。
【0075】
一対の係合部9g及び一対の位置決め突起9hは、それぞれ位置決め部材9から薬液容器4側に突出している。両位置決め突起9h同士の間のピッチは、フランジ部27に形成された一対の位置決め穴27a同士の間のピッチに相当し、各位置決め突起9hは、各位置決め穴27aに挿入可能な直径を有する。また、係合部9gは、位置決め突起9hの各々が位置決め穴27aの各々に挿入された状態で、フランジ部27に形成された被係合部27bに係合可能な爪を有する。ここで、被係合部27bは、図4に示すように、略楕円形の平面形状を有するフランジ部27の長軸方向の両縁部を短軸と平行な方向に切り欠くことにより形成された部分である。
【0076】
導体開放穴9c、導管挿入穴9d、及び充填部開放穴9eは、それぞれ位置決め部材9を上下方向に貫通する穴である。係合部9gと被係合部27bとが互いに係合した状態で、導体開放穴9cの各々は接続導体18の各々の上に配置され、導管挿入穴9dは被接続部14bの近傍位置の上に配置され、充填部開放穴9eは充填部26a(栓体13)の上に配置される。
【0077】
導管保持部9fは、位置決め部材9から薬液容器4と反対側に突出するとともに互いに対向する一対の壁部を有し、両壁部の間で導管6を保持する。具体的に、導管保持部9fは、図12に示すように、導管挿入穴9dを通して位置決め部材9の上に導かれた導管6を屈曲した状態で保持する。これにより、導管6がその軸方向に引っ張られた場合に、この引っ張り力を導管保持部9fで受けることができるため、当該引っ張り力が薬液容器4まで伝達するのを抑制することができる。
【0078】
位置決め片9a及び被係合部9bは、位置決め部材9から薬液容器4と反対側に突出する。2対の位置決め片9aは、縦方向に互いに対向し、残りの2対の位置決め片9aは、横方向に互いに対向する(図10参照)。被係合部9bは、位置決め部材9上に立設された一対の脚部と、両脚部の上端部同士を連結する梁部とを有し、後述する容器ケース10の係合部22dと係合可能である。
【0079】
図2図10及び図11を参照して、容器ケース10は、薬液容器4(位置決め部材9)に対して脱着可能に装着されるケース蓋22と、ケース蓋22に装着された薬液容器4を収納するケース本体21と、ケース蓋22に設けられた基板23と、基板23に電気的に接続された電池24及び接続端子25とを備えている。
【0080】
ケース蓋22は、装着された薬液容器4を上から覆う天井部と天井部の周縁部から下向きに延びる側壁とを有するケース蓋本体22aと、ケース蓋本体22aの側壁の内側に基板収納室S1及び電池収納室S2を区画する一対の区画リブ22bと、位置決め部材9を位置決めするための4本の位置決めリブ22cと、位置決め部材9に係合可能な係合部22dと、係合部22dを付勢する付勢部材22eと、基板収納室S1を閉じるための基板用蓋22fと、電池収納室S2を閉じるための電池用蓋22gとを備えている。
【0081】
図10に示すように、2本の位置決めリブ22cは、横方向に延び、縦方向に互いに対向する位置決め片9a同士の間に配置される。一方、残りの2本の位置決めリブ22cは、縦方向に延び、横方向に互いに対向する位置決め片9a同士の間に配置される。これにより、ケース蓋22は、位置決め部材9(薬液容器4)に対して位置決めされる。
【0082】
このように位置決めされた状態において、基板23とポンプ5とは、接続端子25を介して互いに電気的に接続される。具体的に、接続端子25は、図11に示すように、基板23から下向きに延び、基板用蓋22fに形成された端子挿入穴22hを通じて基板用蓋22fの下の位置まで延びている。また、上記位置決めの結果、接続端子25は、接続導体18(導体開放穴9c)の上に配置されるため、ケース蓋22に薬液容器4(位置決め部材9)が下から取り付けられることにより、接続端子25と接続導体18とは電気的に接続される。
【0083】
なお、接続端子25は、上下方向に伸縮可能なプローブであり、接続端子25の下端部は、設計上の接続導体18の位置よりも下に配置されている。これにより、接続端子25を縮小させながら、接続端子25と接続導体18とを確実に接続することができる。
【0084】
係合部22dは、上述のように薬液容器4(位置決め部材9)とケース蓋22とが位置決めされた状態で両者を互いに係合可能である。
【0085】
具体的に、係合部22dは、位置決め部材9の被係合部9bに対して上から接触することにより付勢部材22eの付勢力に抗して内側(ケース蓋22により形成される楕円形の中心側)に退避するとともに、被係合部9bの水平方向に延びる梁部(図2参照)の下に到達することにより付勢部材22eの付勢力により外側に移動して被係合部9bの梁部に対して係合可能な爪22iを有する。
【0086】
また、係合部22dは、前記爪22iを内側に変位させるように、ケース蓋本体22aの外側から係合部22dを押し込むための押込操作部22jを有する。医療従事者は、押込操作部22jを押し込むことによりケース蓋22から薬液容器4(位置決め部材9)を取り外すことができる。
【0087】
このように本実施形態では、位置決め部材9及びケース蓋22は、接続導体18と接続端子25とが電気的に接続された状態で使い捨て容器2Aが着脱可能に装着される被装着機構を構成する。
【0088】
なお、本実施形態では、薬液容器4とケース蓋22との間に位置決め部材9を設けるとともに、この位置決め部材9に対し、薬液容器4とケース蓋22との位置決めのための構成を集約することにより、使い捨て容器2Aの構成の簡素化を図っている。しかし、薬液容器4とケース蓋22とを位置決めするための構成を薬液容器4に設けることにより、位置決め部材9を省略することもできる。
【0089】
基板23は、複数の素子と、これらの素子を電気的に接続する回路とを有している。具体的に、基板23は、電池24からの直流電力を交流電力に変換する素子と、この素子と接続端子25とを接続する回路とを備えている。また、基板23上に設けられた素子及び回路によって図13に示すメイン制御部28が構成されている。
【0090】
以下、図13を参照して、薬液注入装置2の電気的構成について説明する。
【0091】
上述のように、薬液注入装置2は、使い捨て容器2Aと、制御装置2Bとを備えている。
【0092】
使い捨て容器2Aは、ポンプ5と、追加投与手段7とを備え、制御装置2Bは、出力装置3と、メイン制御部28とを備えている。
【0093】
出力装置3は、流量設定値等を表示する表示部3aと、流量設定値の変更及び薬液注入の開始及び停止の操作を行うための操作部3bと、操作部3bにより設定された流量設定値に相当する指令を作成するとともに前記表示部3aの表示を制御する出力制御部3cと、出力制御部3cにより作成された指令を無線でメイン制御部28に送信する送信部3dとを備えている。
【0094】
メイン制御部28は、出力装置3から出力された指令を受信する受信部28aと、受信部28aで受信された指令に基づいてポンプ5に出力する駆動電圧を設定する電圧設定部28bと、電圧設定部28bにより設定された駆動電圧を接続端子25を介してポンプ5に出力する出力部28cとを備えている。
【0095】
これにより、出力装置3により設定された流量で薬液が導出されるようにポンプ5を駆動することができる。
【0096】
また、追加投与手段7は、追加投与ボタン7aと、追加投与ボタン7aが押込操作された場合に追加投与量として予め設定された増加流量(出力装置3で設定された流量+予め設定された追加投与流量)に相当する指令を作成する指令作成部7bと、指令作成部7bにより作成された指令を無線でメイン制御部28に送信する送信部7cとを備えている。
【0097】
メイン制御部28の電圧設定部28bは、追加投与手段7からの指令を受信した場合に、出力装置3からの指令を受信した場合と異なる次の処理を実行する。
【0098】
まず、電圧設定部28bは、追加投与手段7からの指令を受信した場合に、追加投与手段7からの前回の指令を受信してから予め設定された時間(以下、ロックアウトタイムという)が経過しているか否かを判定する。
【0099】
電圧設定部28bは、ロックアウトタイムが経過していないと判定すると、当該追加投与手段7からの指令は無効と判断する。これにより、患者に対して過剰な薬液の投与を防止する。
【0100】
一方、電圧設定部28bは、ロックアウトタイムが経過していると判定すると、追加投与手段7からの指令に応じた流量で薬液を導出するための駆動電圧を設定し、予め設定された期間が経過すると、通常の流量(出力装置3による設定流量)で薬液を導出するための駆動電圧に戻す。
【0101】
つまり、追加投与は、患者の症状の変化に応じて短期間で一定量の薬液投与量の増加を許容するものであるため、電圧設定部28bは、一定期間中のみ薬液投与量を増加させるための処理を行う。
【0102】
なお、前記実施形態では、制御装置2B専用の出力装置3を採用しているが、出力装置3は、携帯型情報通信端末(スマートフォン及びタブレット等)により代用することもできる。
【0103】
以上説明したように、従来の薬液注入装置において導出部を通じて導出するための力を薬液に与えるために設けられている駆動部がポンプ5と制御装置2Bとに分割されている。
【0104】
ここで、接続導体18、圧電素子17及びダイヤフラム16を有するいわゆるダイヤフラムポンプ5は、その構造が簡素であるため、使い捨てに適している。また、制御装置2Bは、ポンプ5の接続導体18に対して電気的に接続していればよく、薬液に対して接触しないため、再利用することができる。
【0105】
したがって、特定の患者に使用された使い捨て容器2Aを他の患者に使用することなく使い捨てするとともに、制御装置2Bを再利用することにより、感染を確実に防止することができる。
【0106】
また、ダイヤフラムポンプ5は、駆動電圧の設定に応じた流量で薬液を精度よく流すことができるので、部品(例えばバルーン)の寸法精度に応じて流量が変動する従来の薬液注入装置と比較して流量の精度を向上することができる。
【0107】
したがって、感染を防止しながら薬液の流量精度の向上を図ることができる。
【0108】
また、前記実施形態によれば、以下の効果を奏することができる。
【0109】
薬液容器4は、薬液が充填され、かつ、導出部26dが開放されている状態において、その形状を保持することができる剛性を有する、つまり、薬液容器4は、その収縮力を伴うことなく薬液を充填可能なものである。
【0110】
そのため、従来のように使い捨て容器自体(バルーン自体)に薬液を導出するための動力を発揮させる場合と異なり、薬液容器4に薬液を充填する際における医療従事者の労力を軽減することができる。
【0111】
したがって、感染を防止しながら薬液の充填のための労力の軽減と薬液の流量制度の向上との両立を図ることができる。
【0112】
薬液容器4は、ポンプ5により薬液容器4内の薬液が導出部26dを通じて薬液容器4から導出されることに応じて当該薬液容器4内の容積が減少する方向に変形可能な剛性を有する。これにより、薬液の導出容量に見合った空気を導入しなくても薬液容器4が変形することにより薬液の導出を維持することができる。
【0113】
したがって、薬液容器4内に空気を導入するための構成を省略して、より使い捨てに適した簡素な薬液容器4を提供することができる。
【0114】
ポンプ5は、導出部26dと導管6との間で薬液容器4に取り付けられているため、薬液容器4の剛性を借りてポンプ5を保護することができる。
【0115】
したがって、ポンプ5を保護するための構成を省略して、より使い捨てに適した簡素な薬液容器4を提供することができる。
【0116】
薬液容器4は、導出部26dとは別の経路で薬液容器4内に薬液を充填可能な充填部26aを有している。これにより、充填時の圧力がポンプ5に伝達するのを防止するための手段を設けることなく、充填部26aを通じて薬液容器4に薬液を充填することができる。
【0117】
したがって、より使い捨てに適した簡素な薬液容器4を提供することができる。
【0118】
追加投与手段7が設けられているため、患者が感じる症状の変化に応じて患者自らが追加投与手段7を操作することにより、薬液の導出量を増やして前記症状の変化を緩和することができる。例えば、薬液として麻酔薬を使用している場合、患者は、痛みの増加に応じて追加投与手段7を操作することにより、麻酔薬の投与量を増やして痛みを緩和することができる。
【0119】
薬液容器4を収納可能な容器ケース10が設けられている。これにより、薬液容器4を収納することができるので、薬液容器4が周囲の物と接触して変形等することにより当該薬液容器4内の薬液の圧力が変動して薬液容器4から導出される薬液の流量に悪影響が及ぶのを抑制することができる。
【0120】
特に、上述のように薬液容器4がポンプ5による薬液の導出に応じて変形可能な剛性を有する場合には、薬液容器4が変形し易いため、容器ケース10により薬液容器4を保護することが有効である。
【0121】
また、上述のようにポンプ5が薬液容器4に取り付けられている場合には、薬液容器4とともにポンプ5も容器ケース10内に収納することができるため、ポンプ5をより有効に保護することができる。
【0122】
出力装置3は、容器ケース10に対して無線で指令を出力することができるため、容器ケース10を薬液容器4とともに患者の近傍に配置するとともに、容器ケース10とは異なる位置(例えば、医療従事者の手元)に出力装置3を配置することができる。
【0123】
したがって、患者によって薬液の流量が変更されてしまうのを防止することができる。
【0124】
なお、前記実施形態では、薬液が充填され、かつ、導出部26dが開放されている状態において、その形状を保持することができる剛性を有する薬液容器4を例示したが、薬液容器4は、薬液の充填に応じて収縮力を蓄えるものであってもよい。この場合、ポンプ5による流量制御は、薬液容器4の収縮力を加味して行われる。
【0125】
前記実施形態では、ポンプ5により薬液容器4内の薬液が導出されることに応じて変形可能な剛性を有する薬液容器4(蛇腹容器11)を例示したが、薬液容器は、ポンプ5による薬液の導出時に変形不能な剛性を有するものでもよい。この場合、薬液の導出容量に見合った空気を薬液容器内に導入するための手段(開口部等)を設けることにより薬液の導出を維持することができる。
【0126】
前記実施形態では、導管6と薬液容器4との間で薬液容器4にポンプ5を取り付ける例について説明したが、ポンプ5は、導管6の途中部に設けられていてもよい。この場合、ポンプ5を保護するためのカバー等を設けることが好ましい。
【0127】
前記実施形態では、導出部26dとは別の経路で薬液を薬液容器4に充填可能な充填部26aを有する構成について説明したが、充填部26aを省略するとともに導出部26dを通じて薬液容器4に薬液を充填することもできる。この場合、充填時の薬液の圧力がポンプ5に伝達するのを抑制するための手段(例えば、充填時に導出部とポンプとの間の連通を遮断するための経路切換手段)を設けることが好ましい。
【0128】
前記実施形態では、容器ケース10とは別の部材として出力装置3を設けているが、ポンプ5に対する駆動電圧を変更するための指令を出力する出力部を容器ケース10に設けることもできる。この場合、患者自らによる出力部の操作が不能となるように、ロック機能を設けることが好ましい。
【0129】
前記実施形態では、追加投与手段7がメイン制御部28に対して無線で指令を出力する構成について説明したが、追加投与手段とメイン制御部とが互いに機械的にかつ電気的に接続(有線接続)していてもよい。例えば、メイン制御部28の受信部28aに電気的に接続された接続導体を制御装置2Bに設けるとともに、追加投与手段7の送信部7cに電気的に接続された接続導体を使い捨て容器2Aに設け、これらの接続導体が使い捨て容器2Aに対する制御装置2Bの装着時に互いに接続されるように構成することもできる。
【0130】
前記実施形態では、使い捨て容器2Aの導管6の途中、つまり、使い捨て容器2Aに追加投与手段7を設けているが、追加投与手段7は、使い捨て容器2Aから分離することもできる。このようにすれば、制御装置2Bとともに追加投与手段7も再利用することができる。また、この場合、追加投与手段7の紛失を防止するために、紐等の拘束手段を用いて追加投与手段7を制御装置2Bに繋ぎ止めることが好ましい。
【符号の説明】
【0131】
2 薬液注入装置
2A 使い捨て容器
2B 制御装置
3 出力装置
4 薬液容器
5 ポンプ
6 導管
7 追加投与手段
9 位置決め部材(被装着機構)
10 容器ケース(制御装置本体)
16 ダイヤフラム
17 圧電素子
18 接続導体
22 ケース蓋(被装着機構)
25 接続端子
26a 充填部
26d 導出部
27 フランジ部(装着部)
28 メイン制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13