(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902290
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】心房細動において肺静脈を電気的に隔離するように適合可能な装置
(51)【国際特許分類】
A61B 18/12 20060101AFI20160331BHJP
A61B 18/02 20060101ALI20160331BHJP
A61B 18/00 20060101ALI20160331BHJP
A61B 18/18 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
A61B17/39
A61B17/36 310
A61B17/36 330
A61B17/36 340
【請求項の数】11
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2014-505574(P2014-505574)
(86)(22)【出願日】2012年4月12日
(65)【公表番号】特表2014-518650(P2014-518650A)
(43)【公表日】2014年8月7日
(86)【国際出願番号】EP2012056626
(87)【国際公開番号】WO2012143283
(87)【国際公開日】20121026
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】GE2011A000043
(32)【優先日】2011年4月18日
(33)【優先権主張国】IT
(73)【特許権者】
【識別番号】513263477
【氏名又は名称】アトリカス エッセ.エッレ.エッレ.
(74)【代理人】
【識別番号】110000578
【氏名又は名称】名古屋国際特許業務法人
(72)【発明者】
【氏名】チールチア ジアン バッチスタ
(72)【発明者】
【氏名】ペルフレル エンリコ
【審査官】
木村 立人
(56)【参考文献】
【文献】
特表2003−524506(JP,A)
【文献】
米国特許第6290697(US,B1)
【文献】
米国特許出願公開第2006/0224153(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61B 18/00 ― 18/28
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
心房細動の治療を行うために、肺静脈が心房から延出する位置における組織の周囲領域に対してアブレーションを行うことによって、心房細動において肺静脈を電気的に隔離する装置であって、該装置は、
末端部と遠位部とを有するカテーテル(1)であって、
第1管状要素(2)と、
前記第1管状要素(2)および軸方向に延びる棒状要素(6)と同心状に配置される第2管状要素(4)であって、前記棒状要素(6)が前記第1および第2管状要素(2;4)の遠位端を越えて延出している第2管状要素(4)と、
複数の管状アーム(11)に支持された第1管状円環要素(13)であって、前記アーム(11)は前記遠位端から前記円環要素(13)に向かって延在し、前記カテーテル(1)の遠位端周辺において傘のような形態で展開可能なある種のケージを形成し、前記管状アーム(11)および前記円環要素(13)は互いに、かつ前記カテーテル(1)の前記第2管状要素(4)と連通している、第1管状円環要素(13)と、
径方向のアーム(8)によって前記カテーテル(1)の前記第1管状要素(2)と連通する第2円環管状要素(9)と
を有するカテーテル(1)を備え、
前記要素はすべて、第1の操作状態において、前記第1および第2円環要素(13;9)および関連する管状アーム(11)が収縮した状態で、前記カテーテルの前記遠位端に付着するように構成されており、第2の操作状態において、前記カテーテルの前記遠位端は肺静脈(18)の開口部に挿入され、前記アームが前記肺静脈(18)の前記開口部に対して位置決めされるように、流体が前記第1円環要素(13)へ、そして前記アーム(11)へと送り込まれるように構成されており、第3の操作状態において、アブレーション要素が前記第2の円環要素(9)の内部に導入され、かつ/あるいは該内部において作動させられ、前記静脈の開口部周囲の組織の円形領域のアブレーションを行うために前記第2の円環要素(9)を膨張させて前記肺静脈(18)の開口部(18”)に接触させるように構成されていることを特徴とする装置。
【請求項2】
前記アブレーション要素は冷凍アブレーション要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項3】
前記アブレーション要素は電動アブレーション要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項4】
前記アブレーション要素は熱アブレーション要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項5】
前記アブレーション要素は超音波アブレーション要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項6】
前記アブレーション要素はマイクロ波アブレーション要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項7】
前記アブレーション要素は流体型アブレーション要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項8】
前記アブレーション要素は発光アブレーション要素を備えることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項9】
前記アーム(11)には放射線不透過性マーカが設けられていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項10】
放射線不透過性の流体が前記アーム(11)へと送り込まれることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【請求項11】
前記第1、第2円環要素(13,9)および前記アーム(11;8)が、弾性材料で形成されていることを特徴とする、請求項1に記載の装置。
【発明の詳細な説明】
【0001】
本発明は、肺静脈口に挿入されるカテーテルを用いて行われるアブレーション法による、心房細動の治療のための装置に関する。
心臓内アブレーションの適用において、「アブレーション」という語は、アブレーションが行われた心臓組織からの、また該組織を介した電気信号の伝達を実質的に止める等、組織特性の十分な変更を意味するものとして理解されている。
【0002】
米国特許出願公開第2005/0165391号明細書は、カテーテルによって肺静脈口を心房壁から電気的に隔離させるためのアブレーション装置を開示しており、該カテーテルは、異なる構成において調節可能な複数の形状記憶金属フィラメントを備え、該複数の金属フィラメントを心房へ導入し、アブレーション要素と周囲の組織領域とをアブレーションのために係合させることが可能になっている。しかし、これらの形状記憶金属フィラメントを用いると、剛性あるいは半剛性の構造によって可撓性が低められるため、アブレーションが行われる組織領域に該フィラメントを正確に位置調節することに関して、多数の問題が生じる。また、剛性金属構造が存在することによって、組織が容易に損傷を受ける可能性がある。
【0003】
したがって、本発明の目的は、肺静脈口に挿入されるカテーテルを用いて行われるアブレーション法によって、心房細動の治療を可能にする装置であって、可膨張性のフィラメント様管を用いて、全ての位置決めおよびアブレーション作業が行われる装置を提供することにある。
【0004】
この目的は、請求項1に記載の装置によって達成される。
本発明の装置の更なる目的および利点は、添付の図面を参照して示された以下の好適な実施形態の説明の過程において、より明らかとなる。
【図面の簡単な説明】
【0005】
【
図1】管状要素が部分的に膨張した状態にある、本発明のカテーテルの遠位端の拡大縦断面図である。
【
図2】管状要素がほぼ完全に収縮した状態にある、
図1のカテーテルの遠位端の側面図である。
【
図3】管状要素が膨張した状態にある、
図1および2のカテーテルの遠位端の正面図である。
【
図4】心臓の右心房から心房中隔を経て左心房へと向かう、本発明のカテーテルの経路を示す。
【
図5】本発明のカテーテルが、前記心房内へと通じる肺静脈の1つに導入された状態を示す。
【
図6】カテーテルの可膨張性ケージの前記肺静脈の開口部内での位置決めを示す。
【
図7】前記静脈口の冷凍アブレーションを行うために環状要素が膨張した状態を示す。
【発明を実施するための形態】
【0006】
周知のとおり、心臓は「心房中隔」と呼ばれる壁によって分離された「右心房および左心房」と呼ばれる2つの上部の空洞を有する。2つの大静脈および冠状静脈洞は右心房内に通じており、肺において酸素化された血液を運ぶ4つの肺静脈は、左心房内に通じている。
【0007】
心拍が正常なときには、洞房結節により生成されたインパルスは心筋を収縮させ、血液を送出することを可能にしている。心房細動においては、心房の収縮を引き起こす電気的インパルスが完全に乱れて、不完全な状態で送出されるため、その結果、多数の波面をもたらし、無秩序かつ不完全な収縮を引き起こす。これらの心房収縮は多くの場合、血流力学の観点から非効率的であり、よって、心臓はそのポンプ機能を効率的に果たすことができない。
【0008】
洞調律を回復させるための手段、あるいは、例えば薬理学的あるいは電気的除細動などの、心臓の「除細動」のための手段が数多く提案されている。近年では、経カテーテルアブレーションも導入され成功しており、この技術は肺静脈から左心房への電気的な伝達を遮断するために用いられている。
【0009】
図面を参照すると、
図1〜3において、符号1は本発明のカテーテルを示す。このカテーテル1は、近位端(図示せず)から遠位端まで延在する第1管状要素2を備え、前記遠位端は閉鎖要素3によって閉鎖されている。第2管状要素4は、前記管状要素2と同軸を有するように収容されており、近位端(図示せず)から閉鎖要素3を貫通して遠位端まで延在し、遠位端から少し離れた場所において第2閉鎖要素5にて終端する。該カテーテルは、第3の相対的に剛性の高い棒状の中心要素6によって完成されており、該中心要素6はカテーテルの近位端から、管状要素4と同心を有するように同管状要素内4を通って、閉鎖要素5を貫いて外部に延出している。
【0010】
管状要素2は、閉鎖要素3の上流かつ該閉鎖要素3の近傍に、4つの径方向の穴7を有する。該穴7は同一平面上に配置され、互いに対して90°ずれて配列されており、対応する数の径方向の管状要素8および穴8’を介して、管状要素2と同軸の、円環管状要素9に接続されている。これは以下に説明される目的で、このような構成となっている。
【0011】
管状要素4は、閉鎖要素5の上流かつ該閉鎖要素5の近傍に、4つの管状要素11に接続する4つの穴10を有する。管状要素11は、穴12を介して、円環要素9の直径よりも小さな直径を有する円環要素13に連通して接続されるように、円環要素9によって画定される平面を越えて後方に延出する。
図3により明確に示されているように、穴10、したがって管状要素11は、穴7、したがって管状要素8に対して、45°ずらして配列されている。円環要素13は、以下に説明される目的で、一連の放射線不透過性マーカ14も有する。
【0012】
術中において、上述の装置は、
図2に示されるように完全に収縮した状態にあり、カテーテル1の管状要素4および2に沿って格納されている。この段階でこのように準備されたカテーテルは、上静脈から下行して患者の心臓の右心房15(
図4および5参照)における卵円孔へと導入され、そこから心房中隔16を貫通した後、肺静脈に通じる患者の心臓の左心房17へと導入され、アブレーション治療のために各肺静脈18,18’へと順に挿入される(
図5)。
【0013】
放射線不透過性マーカ14が存在することによって、装置を最適な位置に位置決めすることが非常に容易になる。この段階において、流体がカテーテルの管状要素4を介して注入される。その後この流体は、管4の近位端から遠位端へと流れ、そこから穴10を介してアーム11へと流れ、アーム11から穴12を介して円環要素13へと流れ、よって該円環要素13が膨張させられる。システム位置決めケージのアーム11の独立した動きによって、システム位置決めケージは挿入されている肺静脈の構造に完全に適合し、弾性を有する可膨張性チャンバが肺静脈口の寸法および形状に適合することを可能にする(
図6)。
【0014】
この段階で、極低温流体が、管状要素1、穴7、径方向の管8および穴8’を介して、低温チャンバ9へと導入され、該チャンバ9が肺静脈18の開口部18”の周辺に置かれた状態となり、肺静脈の開口部において組織の冷凍アブレーションが行われるように、チャンバ9が膨張させられる(
図7)。
【0015】
この段階において、低温チャンバ9および位置決めケージ11,13の両者は再度収縮した状態とされ、カテーテルは再度同じ経路を逆方向にたどって抜去されることができる。
【0016】
本発明の装置の有利な点は以下の記載において明らかとなるであろう。肺静脈口に挿入可能なアーム11と円環要素13とにより形成されるケージによって、本発明の装置は、アブレーションが施される組織に対して、安定的かつ正確に位置決めされることが可能である。このことはまた、放射線不透過性マーカ14によるものでもある。また、アブレーションが施される組織に対しての位置決めがより正確に行われるように、このケージが放射線不透過性の流体によって膨張させられてもよい。
【0017】
具体的には、上記の説明において、アブレーション要素として極低温流体を使用することが単に例示的に挙げられているが、このアブレーション要素は電動アブレーション要素、熱アブレーション要素、超音波アブレーション要素、マイクロ波アブレーション要素、流体型アブレーション要素、発光アブレーション要素、あるいは任意の形態の利用可能なエネルギーを使用するアブレーション要素全般であってもよい、ということは理解される。
【0018】
したがって、本発明は、図示および説明された実施形態に限定されるものではなく、実質的に以下に請求される、より広い範囲の発明的思想の範囲に含まれる全ての変形例および改変例を含むものである。