(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
従来のセラミック素地、例えばアルミナを主結晶相とするセラミック素地、すなわち、アルミナ素地として、特開平9−235154号公報、特許第4220869号公報、特許第4413223号公報、特許第4413224号公報及び特許第4578076号公報に記載のアルミナ素地が知られている。
【0003】
特開平9−235154号公報には、重量比でAl
2O
3を83〜97.3%、TiO
2を1〜4%、MnO
2、CuOのいずれかもしくは2種類の合計を1〜4wt%、SiO
2を0.2〜7.0%、CaOを0.25〜1.0%、MgOを0〜1%含むアルミナセラミックスが記載されている。
【0004】
特許第4220869号公報には、平均粒子径が0.5〜2.5μmのAl
2O
3粉末を90〜94質量%含有するとともに、焼結助剤として平均粒子径が1.3μm以下のMn
2O
3粉末を2.0〜5.3質量%、SiO
2粉末を0.5〜4.5質量%及び平均粒子径が3〜5μmのMgCO
3粉末を0.2〜1.3質量%の合計で6〜10質量%含有し、SiO
2/MgCO
3の含有比率がSiO
2/MgO換算で5〜15となるような組成からなるグリーンシートに、導体ペーストを用いて導体層及びメタライズ層を被着形成した後、前記グリーンシートを適宜積層し、1350〜1500℃の焼成最高温度で焼成することが記載されている。
【0005】
特許第4413223号公報には、絶縁基板と、該絶縁基板の内部及び表面の少なくとも一方に設けられた導体層とを具備するセラミックパッケージにおいて、前記絶縁基板が4質量%以上の焼結助剤を含み、Mnを酸化物(Mn
2O
3)換算で2〜8質量%、Siを酸化物換算で1〜6質量%の割合で含むとともに、Al
2O
3を主結晶相とし、MnAl
2O
4結晶を含む、3点曲げ強度が500MPa以上のアルミナ質焼結体(ただし、Mn
2SiO
4結晶を含むものを除く)からなるセラミックパッケージが記載されている。
【0006】
特許第4413224号公報には、絶縁基板と、該絶縁基板の内部又は表面のうち少なくとも一方に設けられた導体層とを具備するセラミックパッケージにおいて、前記絶縁基板が4質量%以上の焼結助剤を含み、Mnを酸化物(Mn
2O
3)換算で2〜8質量%、Siを酸化物換算で1〜6質量%の割合で含むとともに、Al
2O
3を主結晶相とし、MnAl
2O
4結晶を含むアルミナ質焼結体(ただし、Mn
2SiO
4結晶を含むものを除く)からなることを特徴とするセラミックパッケージが記載されている。
【0007】
特許第4578076号公報には、アルミナを主成分とし、少なくとも0.4mol%のZrと、少なくとも3.5mol%のSi、少なくとも1.2mol%のMn、少なくとも1.7mol%のTi、及び少なくとも0.6mol%の周期律表2a族元素からなる群より選択される少なくとも3種類とを酸化物換算で合計6〜24mol%含有し、アルミナ焼結体中のアルミナ粒子の平均粒径が、0.5〜2.0μmであり、熱伝導率が、10W/mK以上であるアルミナ焼結体が記載されている。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明に係るセラミック素地及びその製造方法の実施の形態例を
図1〜
図4を参照しながら説明する。なお、本明細書において数値範囲を示す「〜」は、その前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む意味として使用される。
【0030】
本実施の形態に係るセラミック素地は、Al
2O
3を主結晶相とし、その他、MnTiO
3結晶相のみを含む。
【0031】
具体的には、AlをAl
2O
3換算で85.0〜95.0質量%、MgをMgO換算で0.1〜0.6質量%、SiをSiO
2換算で2.0〜6.0質量%、MnをMnCO
3換算で2.4〜7.1質量%、TiをTiO
2換算で0.1〜2.0質量%含む。この場合、SiO
2及びMgCO
3の含有比率(SiO
2/MgCO
3)がSiO
2/MgO換算で1よりも大であることが好ましい。
【0032】
具体的には、セラミック素地は、Al
2O
3粉末を85.0〜95.0質量%、MgO粉末を0.1〜0.6質量%、SiO
2粉末を2.0〜6.0質量%、MnCO
3粉末を2.4〜7.1質量%、TiO
2粉末を0.1〜2.0質量%含有する成形体を作製した後、前記成形体を1200〜1400℃にて焼成することにより作製される。
【0033】
MgO粉末は、Al
2O
3の焼結助剤として添加され、SiO
2粉末は、Al
2O
3の焼結助剤として、また、Mn
2SiO
4ガラス相を生成させて焼結温度の低下を図るために添加される。MnCO
3粉末は、Mn
2SiO
4ガラス相を生成させて焼結温度の低下を図ると共に、MnTiO
3結晶を生成させてガラス相の強度を向上させるために添加される。TiO
2粉末は、MnTiO
3結晶を生成させてガラス相の強度を向上させるために添加される。
【0034】
これにより、温度1200〜1400℃という低温にて焼結することができ、曲げ強度が600MPa以上のセラミック素地を実現することができる。
【0035】
そして、AlがAl
2O
3換算で85.0質量%未満だと、生成されるAl
2O
3の量が低下し、曲げ強度の低下をもたらす。95.0質量%を超えると、生成されるMn
2SiO
4ガラス相の量が低下し、1200〜1400℃での緻密化が達成されず、また、曲げ強度の低下をもたらす。
【0036】
MgがMgO換算で0.1質量%未満だと、Al
2O
3の焼結性が低下し、曲げ強度の低下をもたらす。0.6質量%を超えると、生成されるMn
2SiO
4ガラス相の量が低下し、1200〜1400℃での緻密化が達成されず、また、曲げ強度の低下をもたらす。
【0037】
SiがSiO
2換算で2.0質量%未満だと、生成されるMn
2SiO
4ガラス相の量が低下し、1200〜1400℃での緻密化が達成されず、また、曲げ強度の低下をもたらす。6.0質量%を超えると、生成されるAl
2O
3の量が低下し、曲げ強度の低下をもたらす。
【0038】
MnがMnCO
3換算で2.4質量%未満だと、生成されるMn
2SiO
4ガラス相の量が低下し、1200〜1400℃での緻密化が達成されず、また、曲げ強度の低下をもたらす。7.1質量%を超えると、生成されるAl
2O
3の量の低下による曲げ強度の低下をもたらす。また、MnAl
2O
4結晶相が生成されることから、緻密化が阻害され強度低下をもたらす。
【0039】
TiがTiO
2換算で0.1質量%未満だと、MnTiO
3結晶相が生成されず、曲げ強度の低下をもたらす。2.0質量%を超えると、TiO
2が単独で存在することによる曲げ強度の低下をもたらす。
【0040】
従って、Al、Mg、Si、Mn及びTiを上述した比率で含有させることで、生成されるMnTiO
3結晶相によってガラス相の強度を高めることができ、その結果、曲げ強度が高くなり、セラミック素地を用いた製品(セラミックパッケージ等)の小型化を促進させることができる。しかも、低い焼成温度にて作製することができ、コストの低廉化に有利になる。
【0041】
ここで、本実施の形態に係るセラミック素地を用いたセラミックパッケージの2つの構成例について
図1〜
図4を参照しながら説明する。
【0042】
第1の構成例に係るセラミックパッケージ(以下、第1パッケージ10Aと記す)は、
図1に示すように、本実施の形態に係るセラミック素地にて構成された積層基板12と、同じく本実施の形態に係るセラミック素地にて
構成された蓋体14とを有する。
【0043】
積層基板12は、少なくとも板状の第1基板16aと、板状の第2基板16bと、枠体18とがこの順番で積層されて構成されている。また、この積層基板12は、第2基板16bの上面に形成された上面電極20と、第1基板16aの下面に形成された下面電極22と、内部に形成された内層電極24と、該内層電極24と下面電極22とを電気的に接続する第1ビアホール26aと、内層電極24と上面電極20とを電気的に接続する第2ビアホール26bとを有する。
【0044】
また、この第1パッケージ10Aは、第2基板16bの上面と枠体18とで囲まれた収容空間28に、水晶振動子30が導体層32を介して上面電極20に電気的に接続されている。さらに、水晶振動子30を保護するため、枠体18の上面に、蓋体14がガラス層34を介して気密に封止されている。
【0045】
上述した第1パッケージ10Aでは、収容空間28内に、水晶振動子30を実装した例を示したが、その他、抵抗体、フィルタ、コンデンサ、半導体素子のうち、少なくとも1種以上を実装してもよい。
【0046】
そして、第1パッケージ10Aを構成する積層基板12及び蓋体14は、本実施の形態に係るセラミック素地にて構成しているため、曲げ強度が600MPa以上である。曲げ強度が600MPaよりも低くなると、蓋体14の封止の際や2次実装の際に熱応力が加わって破壊するおそれがある。あるいは、ハンドリングの際や使用の際の衝撃等により破壊するおそれがある。曲げ強度が600MPa以上であれば、このような破壊のリスクを回避することができる。また、セラミック素地を表面研磨せずに、第1パッケージ10Aの積層基板12及び蓋体14として使用しても、蓋体14を気密封止する際の破壊を防止することができ、第1パッケージ10Aの製造コスト及び信頼性を改善することができる。なお、「曲げ強度」とは、4点曲げ強度をいい、JISR1601(ファインセラミックスの曲げ試験方法)に基づいて室温にて測定した値をいう。
【0047】
そして、本実施の形態に係るセラミック素地が、上述した組成を有することから、温度1200〜1400℃という低温にて焼結させることができる。そのため、セラミック素地の前駆体(焼成前の成形体)と、電極(上面電極20、下面電極22、内層電極24)及びビアホール26(第1ビアホール26a、第2ビアホール26b)とを同時焼成することで、積層基板12を作製することができ、製造工程を簡略化することができる。
【0048】
次に、セラミック素地の製造方法を、例えば第1パッケージ10Aの製造方法に沿って
図2を参照しながら説明する。
【0049】
先ず、
図2のステップS1aにおいて、Al
2O
3粉末を85.0〜95.0質量%、MgO粉末を0.1〜0.6質量%、SiO
2粉末を2.0〜6.0質量%、MnCO
3粉末を2.4〜7.1質量%、TiO
2粉末を0.1〜2.0質量%含有する混合粉末を準備し、ステップS1bにおいて、有機成分(バインダー)を準備し、ステップS1cにおいて、溶剤を準備する。
【0050】
Al
2O
3粉末の平均粒径は、0.7〜2.5μmが好ましい。0.7μm未満だと、MnAl
2O
4結晶相が生成されることから、緻密化が阻害され強度低下をもたらす。2.5μmを超えると、Al
2O
3自身の焼結性の低下により、強度低下をもたらす。
【0051】
MgO粉末の平均粒径は0.1〜1.0μmが好ましい。SiO
2粉末の平均粒径は、0.1〜2.5μmが好ましい。MnCO
3粉末の平均粒径は、0.5〜4.0μmが好ましい。TiO
2粉末の平均粒径は、0.1〜0.5μmが好ましい。
【0052】
これらMgO粉末、SiO
2粉末、MnCO
3粉末、TiO
2粉末において、好ましい範囲の下限値未満だと、粒子の凝集が発生により、分散性が低下し、組成の不均一化、強度低下をもたらす。好ましい範囲の上限値を超えると、粒子自体のサイズが大きくなってしまうため、粒子を均一に分散させることが困難となり、組成の不均一化、強度低下をもたらす。
【0053】
ステップS1bにおいて準備される有機成分(バインダー)は、樹脂、界面活性剤、可塑剤等が挙げられる。樹脂としては、例えばポリビニルブチラールが挙げられ、界面活性剤としては、例えば3級アミンが挙げられ、可塑剤としては、例えばフタル酸エステル(例えばフタル酸ジイソノニル:DINP)が挙げられる。
【0054】
ステップS1cにおいて準備される溶剤は、アルコール系溶剤、芳香族系溶剤等が挙げられる。アルコール系溶剤としては、例えばIPA(イソプロピルアルコール)が挙げられ、芳香族系溶剤としては、例えばトルエンが挙げられる。
【0055】
そして、次のステップS2において、上述の混合粉末に、有機成分及び溶剤を混合、分散させた後、ステップS3において、プレス法、ドクターブレード法、圧延法、射出法等の周知の成形方法によって、セラミック素地の前駆体であるセラミック成形体(セラミックテープとも記す)を作製する。例えば混合粉末に有機成分や溶媒を添加してスラリーを調製した後、ドクターブレード法によって所定の厚みのセラミックテープを形成する。あるいは、混合粉末に有機成分を加え、プレス成形、圧延成形等により所定の厚みのセラミックテープを作製する。
【0056】
ステップS4において、セラミックテープを所望の形状に切断、加工して、第1基板用の広い面積の第1テープと、第2基板用の広い面積の第2テープと、枠体用の第3テープと、蓋体用の第4テープを作製し、さらに、マイクロドリル加工、レーザー加工等により、第1ビアホール26a及び第2ビアホール26bを形成するための貫通孔を形成する。
【0057】
次に、ステップS5において、上述のように作製した第1テープ及び第2テープに対して、上面電極、下面電極、内層電極を形成するための導体ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等の方法により印刷塗布し、さらに、所望により、導体ペーストを貫通孔内に充填する。
【0058】
導体ペーストは、導体成分として、例えばW(タングステン)、Mo(モリブデン)等の高融点金属のうち少なくとも1種を用い、これにAl
2O
3粉末、又はSiO
2粉末、又はセラミック素地と同等の粉末を例えば1〜20質量%、特に8質量%以下の割合で添加したものが好ましい。これにより、導体層の導通抵抗を低く維持したままアルミナ焼結体と導体層の密着性を高め、めっき欠け等の不良の発生を防止することができる。
【0059】
その後、ステップS6において、導体ペーストを印刷塗布した第1テープ及び第2テープ並びに枠体用の第3テープを位置合わせし、積層圧着して、積層体を作製する。
【0060】
次のステップS7において、積層体及び第4テープを、H
2/N
2=30%/70%のフォーミングガス雰囲気(ウェッター温度25〜47℃)で、1200〜1400℃の温度範囲で焼成する。これによって、積層体及び導体ペーストが同時焼成された積層原板が作製される。この焼成によって、上述したように、Al
2O
3を主結晶相とし、その他、MnTiO
3結晶相のみを含むセラミック素地、すなわち、積層原板を作製することができる。
【0061】
焼成雰囲気を、上述のようなフォーミングガス雰囲気で行うことで、導体ペースト中の金属の酸化を防止することができる。焼成温度は、上述した温度範囲が好ましい。焼成温度が1200℃よりも低いと、緻密化が不十分で曲げ強度が600MPaに達せず、また、1400℃よりも高くなると、積層体を構成する第1テープ、第2テープ及び第3テープの収縮率のばらつきが大きくなり、寸法精度が低下する。これは歩留りの低下につながり、コストの高価格化を招く。もちろん、焼成温度が高くなれば、それだけ設備にコストがかかるという問題もある。
【0062】
次に、ステップS8において、上述の積層原板にめっき処理を行って、該積層原板の表面に形成されている導体層に、Ni、Co、Cr、Au、Pd及びCuのうち、少なくとも1種からなるめっき層を形成し、原板の表面に多数の上面電極20及び多数の下面電極22を形成する。
【0063】
その後、ステップS9において、積層原板を複数に分割して、収容空間28を有する複数の積層基板12を作製する。ステップS10において、複数の積層基板12の各収容空間28にそれぞれ水晶振動子30を上面電極20に導体層32を介して実装する。
【0064】
そして、ステップS11において、各積層基板12の上面に、封止用のガラス層34が形成されたセラミック製の蓋体14により気密に封止することによって、内部に水晶振動子30が実装された複数の第1パッケージ10Aが完成する。
【0065】
この第1パッケージ10Aの製造方法(セラミック素地の製造方法)においては、上述したように、Al
2O
3を主結晶相とし、その他、MnTiO
3結晶相のみを含み、曲げ強度が600MPa以上のセラミック素地を作製することができる。すなわち、セラミックパッケージ等の小型化及び薄型化、並びに曲げ強度の向上を図ることができるセラミック素地を、低い焼成温度にて作製することができ、セラミック素地並びにセラミック素地を用いた製品のコストを低減することができる。
【0066】
次に、第2の構成例に係るセラミックパッケージ(以下、第2パッケージ10Bと記す)について、
図3及び
図4を参照しながら説明する。
【0067】
この第2パッケージ10Bは、
図3に示すように、上述した第1パッケージ10Aとほぼ同様の構成を有するが、以下の点で異なる。
【0068】
すなわち、金属蓋体40を、積層基板12の枠体18上に、銀ろう等の高温封止材42を用いて気密封止している。
【0069】
また、積層基板12の枠体18の上面と高温封止材42との間に接合層44が介在されている。この接合層44は、枠体18の上面に、上面電極20と同じ材料で形成されたメタライズ層46と、該メタライズ層46上に形成された例えばニッケル(Ni)の電解めっき層48と、該Niの電解めっき層48上に形成された例えば金(Au)の無電解めっき層50とを有する。
【0070】
金属蓋体40は、厚みが0.05〜0.20mmの平板状に形成され、鉄−ニッケル合金板あるいは鉄−ニッケル−コバルト合金板にて構成されている。この金属蓋体40の下面(全面あるいは枠体18に対応した部分)には、高温封止材42である銀−銅共晶ろう等のろう材が形成されている。厚みは5〜20μm程度である。
【0071】
具体的には、金属蓋体40は、鉄−ニッケル合金板あるいは鉄−ニッケル−コバルト合金板の下面に銀−銅ろう等のろう材箔を重ねて圧延して構成される複合板を打ち抜き金型で所定の形状に打ち抜くことによって作製される。
【0072】
高温封止材42としては、具体的には、下記表1に示すろう材1(85Ag−15Cu)、ろう材2(72Ag−28Cu)、ろう材3(67Ag−29Cu−4Sn)のいずれかを使用することができる。
【0074】
Niの電解めっき層48及びAuの無電解めっき層50は、高温封止材42のメタライズ層46に対する濡れ性を向上させる層として機能する。
【0075】
次に、第2パッケージ10Bの製造方法を
図4を参照しながら説明する。なお、
図2と重複する工程については説明を省略する。
【0076】
先ず、
図4のステップS101において、セラミックテープを作製するための原料粉末、有機成分及び溶剤を準備する。準備する原料粉末、有機成分及び溶剤は、上述したステップS1a、ステップS1b及びステップS1cと同じであるため、その重複説明を省略する。
【0077】
そして、ステップS102において、上述の混合粉末に、有機成分及び溶剤を混合、分散させた後、ステップS103において、プレス法、ドクターブレード法、圧延法、射出法等の周知の成形方法によって、セラミック素地の前駆体であるセラミック成形体(セラミックテープ)を作製する。
【0078】
ステップS104において、セラミックテープを所望の形状に切断、加工して、第1基板16a用の広い面積の第1テープと、第2基板16b用の広い面積の第2テープと、枠体18用の第3テープとを作製し、さらに、マイクロドリル加工、レーザー加工等により、第1ビアホール26a及び第2ビアホール26bを形成するための貫通孔を形成する。
【0079】
一方、ステップS105において、導体ペースト用の原料粉末、有機成分及び溶剤を準備する。準備する原料粉末は、上述したように、W(タングステン)、Mo(モリブデン)、ニッケル(Ni)等の金属粉末のうち少なくとも1種と、これに適宜Al
2O
3粉末、又はSiO
2粉末、又はセラミック素地と同等の粉末を例えば1〜20質量%、特に8質量%以下の割合で添加した混合粉末が挙げられる。準備する有機成分は、樹脂(例えばエチルセルロース)、界面活性剤等が挙げられる。準備する溶剤は、ターペノール等が挙げられる。
【0080】
そして、ステップS106において、上述の混合粉末に、有機成分及び溶剤を混合、分散させて導体ペーストを調製する。
次に、ステップS107において、上述のように作製した第1テープ〜第3テープに対して、導体ペーストをスクリーン印刷、グラビア印刷等の方法により印刷塗布する。
【0081】
その後、ステップS108において、導体ペーストを印刷塗布した第1テープ〜第3テープを位置合わせし、積層圧着して、積層体を作製する。
【0082】
次のステップS109において、積層体を、H
2/N
2=30%/70%のフォーミングガス雰囲気(ウェッター温度25〜47℃)で、1200〜1400℃の温度範囲で焼成する。これによって、積層体及び導体ペーストが同時焼成された積層原板が作製される。この積層原板は、多数の枠体18の形状が一体に配列された形状を有する。また、この焼成によって、導体ペーストが電極(上面電極20等)やメタライズ層46となる。
【0083】
次のステップS110において、アルカリ、酸等で少なくともメタライズ層46の表面を洗浄する(前処理)。すなわち、アルカリ洗浄を行った後、酸洗浄を行う。前処理では、アルカリ及び酸は適当な濃度に希釈されて使用されてもよい。また、前処理は、20℃から70℃程度の温度と、数分から数十分の間で実施される。
【0084】
ステップS111において、Niの電解めっき処理を行って、メタライズ層46上にNiの電解めっき層48(膜厚:1.0〜5.0μm)を形成する。
【0085】
ステップS112において、パラジウム(Pd)の無電解めっき処理を行った後、Auの無電解めっき処理を行って、Niの電解めっき層48上にAuの無電解めっき層50(膜厚:0.05〜0.3μm)を形成する。
【0086】
その後、ステップS113において、積層原板を複数に分割して、それぞれ収容空間28を有する複数の積層基板12を作製する。その後、ステップS114において、複数の積層基板12の各収容空間28にそれぞれ水晶振動子30を上面電極20に導体層32を介して実装する。
【0087】
そして、ステップS115において、裏面に高温封止材42が形成された金属蓋体40を、高温封止材42と枠体18の上面(接合層44)側とを対向させて、枠体18上に被せる。その後、金属蓋体40の相対向する外周縁にシーム溶接機の一対のローラー電極を接触させながら転動させると共に、このローラー電極間に電流を流すことで、高温封止材42の一部を溶融させることにより、枠体18上に金属蓋体40を気密封止する。封止時の雰囲気は、N
2ガス又は真空中で行われる。これにより、内部に水晶振動子30が実装された複数の第2パッケージ10Bが完成する。
【実施例】
【0088】
[第1実施例]
実施例1〜10、比較例1〜7について、セラミック素地の比重、生成された結晶相及び曲げ強度を確認した。
【0089】
(実施例1)
原料粉末を準備した。原料粉末は、平均粒径1.5μmのAl
2O
3粉末、平均粒径0.5μmのMgO粉末、平均粒径4.0μmのSiO
2粉末、平均粒径3.0μmのMnCO
3粉末及び平均粒径0.25μmのTiO
2粉末である。
【0090】
原料粉末を下記表2に示す割合(Al
2O
3粉末:91.0質量%、MgO粉末:0.30質量%、SiO
2粉末:4.0質量%、MnCO
3粉末:4.7質量%(MnO換算で2.9質量%)、TiO
2粉末:1.0質量%)で混合して混合粉末を得た。SiO
2及びMnCO
3の含有比率(SiO
2/MnCO
3)は、SiO
2/MnO換算で1.38とした。得られた混合粉末に、有機成分として、ポリビニルブチラール、3級アミン及びフタル酸エステル(フタル酸ジイソノニル:DINP)を混合し、溶剤として、IPA(イソプロピルアルコール)及びトルエンを混合、拡散してスラリーを調製し、その後、ドクターブレード法にて厚さ60〜270μmのセラミックテープを作製した。得られたセラミックテープを1330℃にて焼成して実施例1に係るセラミック素地を作製した。セラミック素地は、結晶相を確認するための第1セラミック素地と、曲げ強度を確認するための第2セラミック素地を作製した。以下に説明する実施例2〜9並びに比較例1〜7についても同様である。
【0091】
(実施例2)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を92.7質量%、SiO
2粉末を3.0質量%、MnCO
3粉末を3.5質量%、TiO
2粉末を0.8質量%とし、SiO
2/MnCO
3を、SiO
2/MnO換算で1.39とし、焼成温度を1350℃とした点以外は、上述した実施例1と同様にして実施例2に係るセラミック素地を作製した。
【0092】
(実施例3)
原料粉末のうち、MnCO
3粉末の平均粒径を1.0μmとした点以外は、上述した実施例1と同様にして実施例3に係るセラミック素地を作製した。
【0093】
(実施例4)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を94.5質量%、SiO
2粉末を2.0質量%、MnCO
3粉末を2.4質量%、TiO
2粉末を0.5質量%とし、SiO
2/MnCO
3を、SiO
2/MnO換算で1.35とし、焼成温度を1380℃とした点以外は、上述した実施例1と同様にして実施例4に係るセラミック素地を作製した。
【0094】
(実施例5)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を90.2質量%、MgO粉末を0.10質量%とした点以外は、上述した実施例1と同様にして実施例5に係るセラミック素地を作製した。
【0095】
(実施例6)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を90.9質量%、TiO
2粉末を0.1質量%とした点以外は、上述した実施例1と同様にして実施例6に係るセラミック素地を作製した。
【0096】
(実施例7)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を87.6質量%、SiO
2粉末を5.0質量%、MnCO
3粉末を5.9質量%、TiO
2粉末を1.2質量%とし、SiO
2/MnCO
3を、SiO
2/MnO換算で1.37とし、焼成温度を1280℃とした点以外は、上述した実施例1と同様にして実施例7に係るセラミック素地を作製した。
【0097】
(実施例8)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を85.1質量%、SiO
2粉末を6.0質量%、MnCO
3粉末を7.1質量%、TiO
2粉末を1.5質量%とし、SiO
2/MnCO
3を、SiO
2/MnO換算で1.37とし、焼成温度を1250℃とした点以外は、上述した実施例1と同様にして実施例8に係るセラミック素地を作製した。
【0098】
(実施例9)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を89.3質量%、TiO
2粉末を2.0質量%とした点以外は、上述した実施例1と同様にして実施例9に係るセラミック素地を作製した。
【0099】
(実施例10)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を89.7質量%、MgO粉末を0.60質量%とし、焼成温度を1310℃とした点以外は、上述した実施例1と同様にして実施例10に係るセラミック素地を作製した。
【0100】
(比較例1)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を94.0質量%、MgO粉末を3.00質量%、SiO
2粉末を3.0質量%、MnCO
3粉末を0.0質量%、TiO
2粉末を0.0質量%とし、焼成温度を1350℃とした点以外は、上述した実施例1と同様にして比較例1に係るセラミック素地を作製した。
【0101】
(比較例2)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を92.0質量%、MgO粉末を0.34質量%、SiO
2粉末を3.4質量%、MnCO
3粉末を6.4質量%、TiO
2粉末を0.0質量%とし、SiO
2/MnCO
3を、SiO
2/MnO換算で0.87とした点以外は、上述した実施例1と同様にして比較例2に係るセラミック素地を作製した。
【0102】
(比較例3)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を90.2質量%、MgO粉末を0.34質量%、SiO
2粉末を4.4質量%、MnCO
3粉末を5.0質量%、TiO
2粉末を0.0質量%とし、SiO
2/MnCO
3を、SiO
2/MnO換算で1.43とした点以外は、上述した実施例1と同様にして比較例3に係るセラミック素地を作製した。
【0103】
(比較例4)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を88.4質量%、SiO
2粉末を2.9質量%、MnCO
3粉末を8.5質量%、TiO
2粉末を0.0質量%とし、SiO
2/MnCO
3を、SiO
2/MnO換算で0.55とした点以外は、上述した実施例1と同様にして比較例4に係るセラミック素地を作製した。
【0104】
(比較例5)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を88.4質量%、SiO
2粉末を2.9質量%、MnCO
3粉末を8.5質量%とし、SiO
2/MnCO
3を、SiO
2/MnO換算で0.55とした点以外は、上述した実施例1と同様にして比較例5に係るセラミック素地を作製した。
【0105】
(比較例6)
原料粉末のうち、TiO
2粉末を0.0質量%とした点以外は、上述した実施例1と同様にして比較例6に係るセラミック素地を作製した。
【0106】
(比較例7)
原料粉末のうち、Al
2O
3粉末を91.3質量%、MgO粉末を0.0質量%、とした点以外は、上述した実施例1と同様にして比較例7に係るセラミック素地を作製した。
【0107】
(評価)
<比重>
実施例1〜10並びに比較例1〜7の各第2セラミック素地を、媒体を水とするアルキメデス法にて測定した。
【0108】
<結晶相の確認>
実施例1〜10並びに比較例1〜7の各第1セラミック素地を粉砕し、X線回折により同定した。
【0109】
<曲げ強度>
実施例1〜10並びに比較例1〜7の各第2セラミック素地を、JISR1601の4点曲げ強度試験に基づいて室温にて測定した。
【0110】
実施例1〜10並びに比較例1〜7の内訳及び評価結果を表2に示す。
【0111】
【表2】
【0112】
実施例1〜10は、いずれも1200〜1400℃の範囲にて焼結し、セラミック素地を得ることができた。特に、実施例7は1280℃、実施例8は1250℃という低温にて焼結した。また、実施例1〜10は、いずれも比重が3.6よりも大きく、Al
2O
3以外の結晶相として、MnTiO
3結晶相のみが生成されていた。また、曲げ強度は600MPa以上であった。実施例1〜10の中でも、TiO
2粉末を1.5質量%を混合した実施例8は、比重が3.85と最も高く、曲げ強度も680MPaと最も高かった。しかも、上述したように、焼結温度も最も低く、非常に良好であることがわかる。実施例7についても、実施例8に準じて良好である。反対に、TiO
2粉末を好ましい範囲の下限値である0.1質量%を混合した実施例6は、実施例1〜10のうちで、比重が3.70と最も低く、曲げ強度も605MPaと最も低かった。
【0113】
一方、比較例1〜7のうち、比較例1は、比較的高い焼成温度1350℃にて焼結した。また、比較例1、3及び6は、Al
2O
3以外の結晶相は生成されなかったため、曲げ強度は500MPa未満であった。比較例7は、Al
2O
3以外の結晶相として、MnTiO
3結晶相のみが生成されたが、比重が2.50と低く、曲げ強度は500MPa未満であった。比較例2及び4は、Al
2O
3以外の結晶相として、MnAl
2O
4結晶相のみが生成されたが、曲げ強度はいずれも600MPa未満であった。比較例5は、Al
2O
3以外の結晶相として、MnTiO
3結晶相が生成され、比重も3.89と最も高かったが、MnAl
2O
4結晶相が生成されたため、曲げ強度の向上に限界が生じ、やはり、600MPa未満であった。
【0114】
[第2実施例]
実施例11〜14について、積層原板を作製した後に行われる前処理工程で使用するアルカリ、酸の種類によって、Niの電解めっき層及びNiの無電解めっき層の未着発生率、積層原板の曲げ強度の低下率を確認した。前処理は、後述するアルカリ、酸を希釈した溶液中で、室温〜60℃で1〜5分程度で洗浄処理した。なお、Niの電解めっき層の膜厚は1.0〜5.0μmとし、Niの無電解めっき層の膜厚は0.05〜0.3μmとした。
【0115】
(導体ペースト)
この第2実施例を実施するにあたって、メタライズ層46を形成するための複数種の導体ペースト(ペースト1〜6)を準備した。金属粉末及び添加物の混合割合を下記表3に示す。なお、共素地粉末は、上述した実施例1に係るセラミック素地と同等の粉末をいう。
【0116】
【表3】
【0117】
(実施例11)
上述した実施例1に係るセラミック素地を使用し、導体ペーストとしてペースト1を使用し、前処理として、先ず、積層原板をアルカリ(KOH(水酸化カリウム))にて洗浄し、その後、酸(NH
4HF
2(重フッ化アンモニウム)+HCl(塩酸))にて洗浄して、サンプル1とした。同様にして、導体ペーストとしてペースト2〜6を使用して、それぞれサンプル2〜6を作製した。これを実施例11とした。
【0118】
(実施例12)
上述した実施例1に係るセラミック素地を使用し、導体ペーストとしてペースト1を使用し、前処理として、先ず、積層原板をアルカリ(KOH(水酸化カリウム))にて洗浄し、その後、酸(HCl(塩酸))にて洗浄して、サンプル7とした。同様にして、導体ペーストとしてペースト2〜6を使用して、それぞれサンプル8〜12を作製した。これを実施例12とした。
【0119】
(実施例13)
上述した実施例1に係るセラミック素地を使用し、導体ペーストとしてペースト1を使用し、前処理として、先ず、積層原板をアルカリ(KOH(水酸化カリウム))にて洗浄し、その後、酸(H
2SO
4(硫酸))にて洗浄して、サンプル13とした。同様にして、導体ペーストとしてペースト2〜6を使用して、それぞれサンプル14〜18を作製した。これを実施例13とした。
【0120】
(実施例14)
上述した実施例1に係るセラミック素地を使用し、導体ペーストとしてペースト1を使用し、前処理として、積層原板をアルカリ(KOH(水酸化カリウム))にて洗浄して、サンプル19とした。同様にして、導体ペーストとしてペースト2〜6を使用して、それぞれサンプル20〜24を作製した。これを実施例14とした。
【0121】
<評価>
(Niの電解めっき層の未着発生率)
各サンプルについて、前処理後、Niの電解めっき処理を行い、そのときの625個の枠体18に対するNiの電解めっき層が付着していない枠体18の個数の比(個数/625)を求めた。
【0122】
(Niの無電解めっき層の未着発生率)
各サンプルについて、Niの無電解めっき処理を行い、そのときの625個の枠体18に対するNiの無電解めっき層が付着していない枠体18の個数の比(個数/625)を求めた。
【0123】
(曲げ強度の低下率)
各サンプルについて、前処理前の積層原板を、JISR1601の4点曲げ強度試験に基づいて室温にて測定した値をR1とし、前処理後の積層原板を、同じくJISR1601の4点曲げ強度試験に基づいて室温にて測定した値をR2としたとき、(R2/R1)×100(%)を曲げ強度の低下率とした。
【0124】
実施例11〜14の内訳、めっき層の未着発生率及び曲げ強度の低下率を表4に示す。
【0125】
【表4】
【0126】
表4から、実施例11〜13のうちで最も強い酸(NH
4HF
2(重フッ化アンモニウム)+HCl(塩酸))にて洗浄した実施例11は、Niの電解めっき層48及びNiの無電解めっき層50の未着発生率は共に0%であったが、曲げ強度の低下率が15〜20%と最も大きかった。これは、前処理によって、メタライズ層46上のよごれやガラス成分が完全に取り除かれたことにより、各種めっき層の未着発生率が0%になったものと考えられる。反対に曲げ強度が低下したのは、積層原板を構成するセラミック素地の粒界部分にあったガラス成分(粒界の接合に寄与する)の一部が強い酸によってエッチング除去されてしまったことによるものと考えられる。
【0127】
実施例11よりも弱い酸(HCl(塩酸))にて洗浄した実施例12は、Niの無電解めっき層の未着発生率が実施例11よりも高く0〜2%であったが、曲げ強度の低下率が5〜10%であり、実施例11よりも低下が抑えられていた。
【0128】
実施例12よりも弱い酸(HCl(塩酸))にて洗浄した実施例13は、Niの無電解めっき層の未着発生率が実施例12とほぼ同じで、0〜5%であったが、曲げ強度の低下率が0%と良好であった。
【0129】
酸洗浄を行わなかった実施例14は、曲げ強度の低下率が0%と良好であったが、Niの無電解めっき層の未着発生率が5〜10%と高かった。
このことから、前処理は、積層原板をアルカリにて洗浄した後、硫酸等の弱い酸で洗浄することが好ましいことがわかる。
【0130】
なお、本発明に係るセラミック素地及びその製造方法は、上述の実施の形態に限らず、本発明の要旨を逸脱することなく、種々の構成を採り得ることはもちろんである。