特許第5902370号(P5902370)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902370
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】タンク
(51)【国際特許分類】
   F17C 13/00 20060101AFI20160331BHJP
   B65D 90/02 20060101ALI20160331BHJP
   B66C 23/06 20060101ALI20160331BHJP
   B66C 23/18 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   F17C13/00 302Z
   B65D90/02 R
   B66C23/06 Z
   B66C23/18
【請求項の数】3
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2009-222709(P2009-222709)
(22)【出願日】2009年9月28日
(65)【公開番号】特開2011-69466(P2011-69466A)
(43)【公開日】2011年4月7日
【審査請求日】2012年5月16日
【審判番号】不服2014-20330(P2014-20330/J1)
【審判請求日】2014年10月8日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000099
【氏名又は名称】株式会社IHI
(74)【代理人】
【識別番号】100175802
【弁理士】
【氏名又は名称】寺本 光生
(74)【代理人】
【識別番号】100064908
【弁理士】
【氏名又は名称】志賀 正武
(74)【代理人】
【識別番号】100167553
【弁理士】
【氏名又は名称】高橋 久典
(72)【発明者】
【氏名】嶋村 恭弘
(72)【発明者】
【氏名】池内 雅彦
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 正治
(72)【発明者】
【氏名】大平 暢英
(72)【発明者】
【氏名】水野 逸人
【合議体】
【審判長】 千葉 成就
【審判官】 渡邊 豊英
【審判官】 蓮井 雅之
(56)【参考文献】
【文献】 実開平6−76281(JP,U)
【文献】 実開平2−13091(JP,U)
【文献】 特開平11−141799(JP,A)
【文献】 特開平10−37489(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F17C 13/00,B65D 90/02,B66C 23/06,B66C 23/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の貯留物を貯留する中空円筒状のタンク本体と、
該タンク本体の上部に設けられたドーム状の屋根と、
上端が開口するように前記屋根から前記タンク本体内に垂直状態に設けられるポンプバレルと、
該ポンプバレルの内部に収容され、前記タンク本体内の貯留物を汲み上げるポンプと、
前記ポンプバレルの上端を介して前記ポンプを所定の吊具で吊り上げて前記ポンプバレルから取り出すあるいは/及び前記ポンプバレルに収容するためのクレーンと、を備え、
前記クレーンは起伏角が可変自在な起伏式クレーンであり、かつ、前記屋根に支持される旋回フレームが前記屋根において前記ポンプバレルよりも中心側に設けられ、またジブが水平方向において前記ポンプバレルの側方に位置するように格納されることを特徴とするタンク。
【請求項2】
前記クレーンは、起伏角及び旋回角を可変することで、前記吊具を前記ポンプバレル上方に位置させる第1の姿勢と、前記ポンプを搬送する車両の駐車スペース上に位置させる第2の姿勢とをとることを特徴とする請求項1に記載のタンク。
【請求項3】
前記クレーンは、前記ポンプバレルの上端に設けられた蓋を移動させるためのチェーンブロックを備えることを特徴とする請求項1または2に記載のタンク。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、所定の対象物を貯蔵するタンクに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、LNG基地あるいはLPG基地の建設に際し、周辺環境との調和を考慮してLPGタンクやLNGタンクなどの低温タンクを地中に構築することが行われている。このような地中埋設型タンクを施工する場合、円筒状のタンク本体が地下ピット内に構築され、円形ドーム状の屋根がタンク本体を上方から覆うように地表に構築される。タンク屋根には、内部にポンプを収納したポンプバレルの一端が開口状態で設けられている。このような低温タンクには、複数のポンプバレルが屋根からタンク本体内の底部にかけて垂直に設けられており、このポンプバレルの底部には貯留物であるLPGやLNGを外部に払い出すためのポンプが収納されている。
【0003】
また、このような低温タンクは、上記ポンプをメンテナンスする際にポンプバレルからポンプを引き上げるためのクレーンを備えている(特許文献1参照)。このクレーンは、走行と旋回を兼ね備えたジブクレーンであり、低温タンクの屋根の上に設けられている。すなわち、低温タンクに備えられた従来のポンプ引上用クレーンは、屋根上に垂直に設けられたポストによって所定長さのジブを水平状態かつ水平移動自在に支持し、ポストが旋回するとともにホイストがジブに沿って走行することによって、ホイストを所定のポンプバレルの上方に移動させてポンプバレルからポンプを吊り上げるものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平11−292469号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、近年、低温タンクの大容量化に伴う高さ規制や景観上の配慮から、上述したポンプ引上用クレーンの高さを抑える要求が高まっている。しかしながら、従来のポンプ引上用クレーンは、上述したようにジブを支持するためのポストが垂直姿勢で低温タンクの屋根上に立設されているので、屋根上に一定の高さを有するポンプ引上用クレーンが常時立設した状態に存在することになる。したがって、従来の低温タンクにおけるポンプ引上用クレーンは、高さ規制や景観に対する要求に対して十分に対応していないという問題がある。
【0006】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、高さ規制や景観に対する要求に対して十分に対応することを目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するために、本発明に係る第1の解決手段として、所定の貯留物を貯留するタンク本体と、該タンク本体の上部に設けられ、所定の開口が形成された屋根と、開口からタンク本体内に垂直状態に設けられるポンプバレルと、該ポンプバレルの内部に収容され、タンク本体内の貯留物を汲み上げるポンプと、開口を介してポンプを所定の吊具で吊り上げてポンプバレルから取り出すあるいは/及びポンプバレルに収容するためのクレーンと、を備え、クレーンは起伏角が可変自在な起伏式クレーンである、という手段を採用する。
【0008】
本発明に係る第2の解決手段として、上記第1の解決手段において、クレーンは、起伏角及び旋回角を可変することで、吊具をポンプバレル上方に位置させる第1の姿勢と、ポンプを搬送する車両の駐車スペース上に位置させる第2の姿勢とをとる、という手段を採用する。
【0009】
本発明に係る第3の解決手段として、上記第1または第2の解決手段において、クレーンは、開口に設けられた蓋を移動させるためのチェーンブロックを備える、という手段を採用する。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、ポンプを所定の吊具で吊り上げてポンプバレルから取り出すあるいは/及びポンプバレルに収容するためのクレーンとして起伏式クレーンを採用するので、クレーンの不使用時にはクレーンの高さが低く抑えられ、よって高さ規制を解決し、景観性にも優れたタンクを得ることができる。
すなわち、ポンプバレル内のポンプを引き上げるときには、クレーンを起こすことにより一部が高くなるが、それ以外のクレーンの不使用時には、クレーンを伏せた状態とすることでクレーン全体の高さを抑えることができるので、従来技術とは異なり、高さ規制や景観に対する要求に対して十分に対応することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明の一実施形態に係る低温タンクの全体構成を示す側面図である。
図2】本発明の一実施形態に係る低温タンクの一部を示す上面図である。
図3】本発明の一実施形態に係る低温タンクにおけるクレーンの全体構成を示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
次に、図面を参照して本発明の実施形態について説明する。
本実施形態は、種々の貯留物を貯留する各種タンクのうち、LPGやLNGなどの極低温液体を貯留物として貯蔵する低温タンクに関するものである。
【0013】
図1は、低温タンクの全体構成を示した側面図である。図2は、低温タンクの一部を示した上面図である。また、図3は、低温タンク上に備えられた起伏式クレーンの全体構成を示した側面図である。低温タンク1は、略中空円筒状の貯蔵タンク本体2を備え、貯蔵タンク本体2の外周壁(符号2Aで示した)に沿って、複数箇所(本実施形態では5カ所)のポンプバレル3a〜3eが設けられている。
【0014】
ポンプバレル3a〜3eは、貯蔵タンク本体2の屋根2Bから貯蔵タンク本体2の底部までタンク内に垂直に設けられる筒状部材であり、その上端は屋根2B上に開口可能な構造であると共にその底部にはポンプ4が収納されている。このポンプバレル3a〜3eは、一定の領域に複数本が設けられており、本実施形態では、図2のように後述のクレーン5の旋回範囲内に5カ所設けられている。また、ポンプバレル3a〜3eの開口端にはそれぞれヘッドプレート3fが蓋として備えられており、該ヘッドプレート3fにはポンプ4に取り付けられたワイヤ4aの端部が係止されている。
【0015】
クレーン5は、起伏式クレーンである。このクレーン5は、吊荷対象であるポンプを吊り上げる腕をなすジブ6の先端から、ポンプを吊り上げるための吊具7が垂れ下げられた構造となっている。本実施形態では二重(紙面奥行き方向に重なって二つ)の吊具7を備え、各吊具7は、各々ジブ6に沿って掛け回された吊りロープ8により吊り下げられている。吊りロープ8は、ジブ6の基端部に設けられた二つの巻上装置9によりそれぞれ巻取り、繰り出しが行われる。
【0016】
また、ジブ先端部には手動チェーンブロック10が設けられている。チェーンブロック10はヘッドプレート3fを取り外す際に使用されるものであり、ポンプバレルの近傍にわずかにずらすだけでよいため、引き上げ高さはポンプの引き上げ高さと比較して遥かにわずかでよい。
【0017】
さらに、ジブ基端部には、ジブ6を起伏させる起伏シリンダ(アクチュエータ)11と、ジブ6及び起伏シリンダ11の基端部を支持する旋回フレーム12とが設けられている。このように二重の吊り具によりポンプを吊り上げることで、一方の吊りロープ8が何らかの原因により切断された場合であってもポンプをポンプバレル内に落下させることなく安全に引き上げることができる。
【0018】
図2において、X印は、屋根2Bの上におけるクレーン5の位置を示し、Rはクレーン5の旋回範囲を示している。旋回範囲Rの内側に、上記各ポンプバレル3a〜3eの開口が位置していることが分かる。また、タンク本体2の周囲にはLNG輸送用等の配管系20が設けられているが、クレーン5の旋回範囲Rの内側、すなわちクレーン5によって荷下ろし可能な範囲に、搬送車両を駐車する駐車スペース21が設けられている。
【0019】
次に、クレーン5を用いたポンプ4のメンテナンス作業について説明する。
なお、以下では一つのポンプバレル3aに収容されたポンプ4を取り出す作業について説明するが、他のポンプバレル3b〜3eについても同様であるため、説明を省略する。
【0020】
ポンプバレル3aの開口端にはヘッドプレート3fが蓋として備えられているため、まずこの蓋を外す作業を行う。旋回フレーム12によりジブ6を所定角に旋回させるとともに、起伏シリンダ11を駆動してクレーン5の仰角を所定角度に制御することで、手動チェーンブロック10をヘッドプレート3fの直上に位置させる。手動チェーンブロック10を用いてヘッドプレート3fを近傍にずらし、ポンプバレル3aの上端を開放する。
【0021】
次いで、さらにジブ6の角度を制御し、吊具7がポンプバレル3aの直上に来るように制御する。吊具7を下ろし、ヘッドプレート3fに係止されていたワイヤ4aが吊具7に付け替えられる。そして、巻上装置9によりワイヤ4aが巻き上げられることにより、ポンプ4は上方に吊り上げられる。
【0022】
そして、クレーン5を旋回させ、駐車スペース21への搬送前にポンプ仮置場にポンプ4を一時設置し、ポンプ4のパージを行った後、駐車スペース21に駐車している搬送車両の荷台にポンプ4を積み降ろし、搬出してメンテナンスを行う。
なお、メンテナンスが終了した後のポンプ4を再び設置する工程は、上記と略逆の手順で行えばよいため、その説明を省略する。
【0023】
作業終了後は、図3の破線5’で示したようにジブ6を低く下げ、格納状態とする。
ジブ6は従来技術とは異なりポストを介さず、屋根2Bに近い位置にその回転中心が位置していることにより、不使用時には仰角を下げることによってクレーン全体の高さが低くなる。すなわち収納状態では、ジブ6は先端が下がった状態となり、屋根2Bと比較しても高さが十分低い状態となる。
なお、格納時のジブ6の角度は、略水平であってもよいし、ドーム形状の屋根2Bの形状に沿ってより目立たなくなるよう水平よりも角度を低く格納してもよい。
【0024】
本実施形態のタンクによれば、ポンプ4を吊具7で吊り上げてポンプバレル3a〜3eから取り出すあるいは/及びポンプバレル3a〜3eに収容するためのクレーン5として起伏式クレーンを採用するので、不使用時にはクレーン5の高さが低く抑えられることにより、高さ規制を解決し、景観性にも優れた低温タンクを得ることができる。
すなわち、ポンプバレル3a〜3e内のポンプ4を引き上げるときには、ジブ6を起こすことによりジブ6が高くなるが、それ以外のクレーン5の不使用時には、ジブ6を伏せた状態とすることでクレーン5の全体的な高さを抑えることができるので、高さ規制や景観に対する要求に対して十分に対応することができる。
【0025】
また、クレーン5を屋根2B上に配置することで、配管系20の設置面積を確保しつつも、駐車スペース21へのポンプ荷下ろしを可能とすることができる。ジブ6の起伏角度を下げると、ジブ6の先端はより遠くへ位置する。したがって、タンク本体2の外側に位置する、ポンプバレル3a〜3eよりも遠い駐車スペース21にもクレーン5が届きポンプ4を容易に搬送することができる。すなわち、クレーン5の姿勢を変えることにより、ヘッドプレート3fの取り外し姿勢、ポンプ4の引き上げ姿勢、駐車スペース21へのポンプ4の荷下ろし姿勢及、クレーン5の不使用時における格納姿勢を容易に切り替えることができる。
【符号の説明】
【0026】
1…低温タンク、2…タンク本体、2B…屋根、3a〜3e…ポンプバレル、4…ポンプ、5…クレーン、6…ジブ、7…吊具、10…手動チェーンブロック、11…起伏シリンダ、12…旋回フレーム、20…配管系、21…駐車スペース
図1
図2
図3