特許第5902383号(P5902383)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902383
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】配線体及びシーリング構造
(51)【国際特許分類】
   H05K 7/00 20060101AFI20160331BHJP
   H01B 7/00 20060101ALI20160331BHJP
   H01R 13/52 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   H05K7/00 M
   H01B7/00 306
   H01R13/52 301E
【請求項の数】3
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2010-234801(P2010-234801)
(22)【出願日】2010年10月19日
(65)【公開番号】特開2012-89670(P2012-89670A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年9月18日
【審判番号】不服2015-889(P2015-889/J1)
【審判請求日】2015年1月16日
(73)【特許権者】
【識別番号】000006895
【氏名又は名称】矢崎総業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100097113
【弁理士】
【氏名又は名称】堀 城之
(72)【発明者】
【氏名】三浦 一乗
(72)【発明者】
【氏名】鈴木 剛寿
【合議体】
【審判長】 小柳 健悟
【審判官】 冨岡 和人
【審判官】 小関 峰夫
(56)【参考文献】
【文献】 実開平6−7166(JP,U)
【文献】 特開2010−34170(JP,A)
【文献】 特開平6−68931(JP,A)
【文献】 特開平8−22870(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H05K 7/00
H01B 7/00
H01R 13/52
H01R 12/77
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フラットな配線面を有するフレキシブル配線体であって、
前記配線面の外周を覆って形成されており、コネクタハウジングのキャビティに内壁に圧接されるシール部材と、
前記配線面の両表面それぞれに対向配置されて接着され、かつ前記配線面と同幅の平板状の二つの補強板と
前記二つの補強板と前記補強板の間の前記配線面を貫通する貫通孔と、
を有し、
前記シール部材は、弾性材によって形成されており、かつ前記補強板を完全に覆っており、
前記貫通孔には前記シール部材が充填されていることを特徴とするフレキシブル配線体。
【請求項2】
前記補強板は、表面が波形であることを特徴とする請求項1に記載のフレキシブル配線体。
【請求項3】
フラットな配線面を有するフレキシブル配線体と、前記フレキシブル配線体が挿入されたキャビティをシール部材でシールされたコネクタハウジングとを備えたシーリング構造であって、
前記配線面の外周を覆って形成されており、前記コネクタハウジングのキャビティに内壁に圧接されるシール部材と、
前記配線面の両表面それぞれに対向配置されて接着され、かつ前記配線面と同幅の平板状の二つの補強板と
前記二つの補強板と前記補強板の間の前記配線面を貫通する貫通孔と、
を有し、
前記シール部材は、弾性材によって形成されており、かつ前記補強板を完全に覆っており、
前記貫通孔には前記シール部材が充填されていることを特徴とするシーリング構造。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、配線体及びシーリング構造に関する。
【背景技術】
【0002】
下記の特許文献1に示すように、FPC(フレキシブルプリント基板)やFFC(フレキシブルフラットケーブル)等の配線体には、コネクタハウジングのキャビティ等の配線体の引出口と配線体との間をシールするシール部材が一体化されたものがある。
【0003】
この種の配線体では、配線体の捻れや屈曲によりシール部材によるシール性が低下する虞があることから、特許文献2に示すように、FPCの両主面に補強板を固着すると共に、両補強板を覆うようにシール部材を設けて嵌合部を構成することも考えられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2001−155815号公報
【特許文献2】特開2010−34170号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
上記従来の配線体では、電子機器の筐体の貫通穴への嵌合部の出し入れの際等に、FPCが筐体に対して移動したり、補強板が筐体に当接すると、補強板をFPCから剥がそうとする力が働き、補強板とシール部材との間のシール性が低下する虞があった。
【0006】
本発明は斯かる課題に鑑みてなされたもので、補強板とシール部材との間のシール性の低下を防止することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、フラットな配線面を有するフレキシブル配線体であって、前記配線面の外周を覆って形成されており、コネクタハウジングのキャビティに内壁に圧接されるシール部材と、前記配線面の両表面それぞれに対向配置されて接着され、かつ前記配線面と同幅の平板状の二つの補強板と、前記二つの補強板と前記補強板の間の前記配線面を貫通する貫通孔と、を有し、前記シール部材は、弾性材によって形成されており、かつ前記補強板を完全に覆っており、前記貫通孔には前記シール部材が充填されている。
また、前記補強板は、表面が波形であってもよい。
本発明は、フラットな配線面を有するフレキシブル配線体と、前記フレキシブル配線体が挿入されたキャビティをシール部材でシールされたコネクタハウジングとを備えたシーリング構造であって、前記配線面の外周を覆って形成されており、前記コネクタハウジングのキャビティに内壁に圧接されるシール部材と、前記配線面の両表面それぞれに対向配置されて接着され、かつ前記配線面と同幅の平板状の二つの補強板と、前記二つの補強板と前記補強板の間の前記配線面を貫通する貫通孔と、を有し、前記シール部材は、弾性材によって形成されており、かつ前記補強板を完全に覆っており、前記貫通孔には前記シール部材が充填されている。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、シール部材と配線体との間に介在した補強板が、シール部材で全面を覆われて、シール部材と配線体との間に埋設されていることから、補強板が配線体から剥がれて補強板とシール部材との間のシール性が低下するのを防止できる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】本発明の一実施形態のFPCを示す図であり、(a)は前方から見た斜視図,(b)は後方から見た斜視図である。
図2】FPCに補強板を取り付けた状態を示す図であり、(a)は前方からの斜視図,(b)は(a)のA−A矢視断面図である。
図3】FPCにシール部材を定着させた状態を示す図であり、(a)は前方から見た斜視図,(b)は平面図である。
図4】(a)は図3(a)のB−B矢視断面図,(b)は図3(b)のC−C矢視断面図である。
図5】FPCをコネクタハウジングに接続する手順を示す図であり、(a)は引出口に対するFPCの挿入前,(b)挿入後を前方からの斜視図で示している。
図6】コネクタハウジングにFPCが接続された状態を示す正面図であり、(a)は補強板を備えない場合,(b)は補強板を備えた場合を示している。
図7】FPC及び補強板の変形例を示す図であり、(a)は前方からの斜視図,(b)は(a)のD−D矢視断面図である。
図8】FPCにシール部材を定着させた状態を図7(b)の断面で示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態を説明する。
図1は、本実施形態のFPC1を示す図である。図2は、FPC1に補強板12を取り付けた状態を示す図である。図3は、FPC1にシール部材2を定着させた状態を示す図である。
【0011】
図1に示すFPC(フレキシブルプリント基板)1は、コネクタハウジング等のキャビティ内に装着されて、キャビティ内の端子と接続される。FPC1は、シール部材2と一体化されており、前端部にはカバー3が装着されている。
【0012】
図2に示すように、FPC1は、配線が形成されたベースフィルム1Aの上下の両面を、カバーフィルム1Bで覆って構成されている。FPC1の前端部には、後端側に比べて縮幅された縮幅部11が設けられている。縮幅部11の下面には、ベースフィルム1Aで構成される回路を外部と接続するための接続部が設けられている。
【0013】
また、縮幅部11の後方に位置するFPC1の上下の両面には、矩形の平板状を呈した補強板12が、接着剤等で貼り付けられている。両補強板12は、FPC1と等しい左右方向の幅を有しており、図2(b)に示すようにFPC1を挟んで対向して配置されている。
【0014】
縮幅部11の後方に位置したFPC1の左右の両端部には、カバー3をFPC1に取り付けるための貫通孔1a,1bが設けられている。
【0015】
シール部材2は、ゴム等の弾性材から形成されており、図3に示すように、四角ブロック体の外周面に2本の凸部21を前後に並べて設けた形状を有している。前側の凸部21よりも前方に位置したシール部材2の前端部には、テーパ部22が設けられている。
【0016】
図4に断面で示すように、シール部材2は、FPC1の上下の両面に貼り付けられた補強板12を、補強板12の前縁及び後縁に沿って位置したFPC1と共に覆うようにして、FPC1に定着されている。このため、補強板12は、シール部材2で全面を覆われて、シール部材2とFPC1との間に埋設されていることとなる。
【0017】
図1に示すように、カバー3は、縮幅部11の上側を覆った本体31にFPC1の下側から固定部材32を取り付けて、FPC1に固定される。固定部材32は、FPC1の貫通孔1a,1bに嵌合部321a,321bを嵌合させ、固定部311の凸部310に係止部322を係止させることで、本体31に固定される。本体31の平板部312は、前端側にかけて徐々に下降傾斜した傾斜部313を前端部の上面に備え、縮幅部11を収容する収容部(不図示)を下面に備えている。
【0018】
次に、コネクタハウジング4のキャビティ40内にFPC1を装着する作業について説明する。
【0019】
FPC1は、図5(a)に太矢印で示すように、カバー3を本体31が備える平板部312側からキャビティ40内に挿入することで、キャビティ40内に装着される。キャビティ40内に装着されたFPC1は、平板部312の収容部から露出させた上述の接続部が、キャビティ40内の端子に接続される。
【0020】
FPC1と一体化されたシール部材2は、図5(b)に示すようにキャビティ40の前端開口部を塞いで、凸部21を備えた外周面をキャビティ40の内壁面に圧接させ、キャビティ40とFPC1との間をシールする。
【0021】
例えば、図6(a)に示すように、FPC1が、幅方向の中央部を左右の縁部に比べて上方に位置させて屈曲したり、左縁部を右縁部に比べて上方に位置させて捻れた状態で、キャビティ40内に装着されると、FPC1と共にシール部材2が変形して、シール部材2によるシール圧が低下する箇所が生じる虞がある。また、キャビティ40内に装着されたFPC1が、幅方向の中央部を左右の縁部に比べて上方に位置させて屈曲したり、左縁部を右縁部に比べて上方に位置させて捻れた場合にも、FPC1と共にシール部材2が変形して、シール部材2によるシール圧が低下する箇所が生じる虞がある。
【0022】
しかし、シール部材2との間に補強板12が埋設されたFPC1では、図6(b)に示すように、シール部材2が設けられた箇所でのFPC1の屈曲や捻れが、補強板12で抑えられる。このため、FPC1がシール部材2と共に変形してキャビティ40内に装着されたり、キャビティ40内に装着されたFPC1がシール部材2と共に変形して、シール部材2によるシール圧が低下するのが防止される。
【0023】
また、補強板12の一部がシール部材2から外部に露出していると、キャビティ40内へのシール部材2の出し入れやキャビティ40に対するFPC1の移動の際等に、補強板12をFPC1から剥がそうとする力が働く。しかしながら、FPC1では、シール部材2で全面を覆われて、補強板12がシール部材2との間に埋設されていることから、シール部材2の変形や補強板12の当接等でFPC1から剥がそうとする力が補強板12に働くのが防止される。
【0024】
本実施形態によれば、シール部材2とFPC1との間に介在した補強板12が、シール部材2とFPC1との間に埋設されていることから、補強板12が外部と接触してFPC1から剥がれるのを防止することができる。このため、補強板12がFPC1から剥がれて補強板12とシール部材2との間のシール性が低下するのを防止できる。
【0025】
なお、上記実施形態では、補強板12がFPC1の上下の両面に備えられている場合について説明したが、何れか一方の面のみに備えられていてもよい。また、補強板12やシール部材2の形状も、FPC1を出し入れするキャビティ40等の配線体の引出口の形状等に合わせて変更することができる。例えば、補強板12は、表面が波形となっていてもよい。
【0026】
また、上記実施形態ではFPC1を配線体として本発明を適用した場合について説明したが、FFC(フレキシブルフラットケーブル)を配線体としてもよい。また、カバー3の構成も任意であり、上記実施形態での構成には限定されない。また、カバー3を備えない構成としてもよい。
【0027】
また、図7に示すように、FPC1及び補強板12を貫通する貫通孔を設け、シール部材2をFPC1及び補強板12と一体成形してもよい。貫通孔は、FPC1に設けられた貫通孔10Aと、補強板12に設けられた貫通孔12Aとで構成されている。図8に示すように、シール部材2が一体成形によりFPC1に定着されると、貫通孔10A及び貫通孔12A内にシール部材2が充填され、シール部材2がFPC1の上面側と下面側とで貫通孔を通して連結される。
【0028】
この構成によれば、シール部材2をFPC1及び補強板12と一体成形することで、FPC1及び補強板12に対するシール部材2の密着性が高くなり、シール性を高めることができる。また、貫通孔を通してシール部材2がFPC1の上面側と下面側とで連結されることで、FPC1及び補強板12に対するシール部材2の剪断力が高まり、FPC1及び補強板12からシール部材2が剥がれるのを防止できる。また、FPC1及び補強板12に形成する貫通孔の大きさや形状や数量を変更することで、部品毎の要求仕様に合わせて、シール部材2をFPC1及び補強板12に定着させる保持力を調整できる。
【符号の説明】
【0029】
1 FPC
2 シール部材
3 カバー
1A ベースフィルム
1B カバーフィルム
11 縮幅部
12 補強板
1a,1b 貫通孔
21 凸部
22 テーパ部
31 本体
310 凸部
311 固定部
312 平板部
32 固定部材
321a,321b 嵌合部
322 係止部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8