特許第5902384号(P5902384)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902384
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ラベルおよびその製造方法
(51)【国際特許分類】
   G09F 3/10 20060101AFI20160331BHJP
   C09J 7/02 20060101ALI20160331BHJP
   G09F 3/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   G09F3/10 H
   C09J7/02 Z
   G09F3/00 E
【請求項の数】11
【全頁数】9
(21)【出願番号】特願2010-237694(P2010-237694)
(22)【出願日】2010年10月22日
(65)【公開番号】特開2012-88663(P2012-88663A)
(43)【公開日】2012年5月10日
【審査請求日】2013年10月2日
(73)【特許権者】
【識別番号】000130581
【氏名又は名称】サトーホールディングス株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100159053
【弁理士】
【氏名又は名称】今津 康元
(72)【発明者】
【氏名】藤井 義人
(72)【発明者】
【氏名】山室 博巳
【審査官】 櫻井 茂樹
(56)【参考文献】
【文献】 特開2005−321422(JP,A)
【文献】 特開2005−156941(JP,A)
【文献】 特開2000−239621(JP,A)
【文献】 特開2002−294177(JP,A)
【文献】 特開2007−320738(JP,A)
【文献】 特開2004−184514(JP,A)
【文献】 特開2000−321986(JP,A)
【文献】 特公昭63−048707(JP,B2)
【文献】 特許第3474469(JP,B2)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G09F3/00〜3/20
C09J7/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基材シート、前記基材シート上に形成された粘着剤層、および、前記粘着剤層の一部の上に形成された硬化層を有し、
前記硬化層は、アクリル系接着剤を硬化させたものであり、
前記硬化層下の前記粘着剤層の前記一部は、前記硬化層と一体的に硬化しており、
前記粘着剤層の前記一部はラベルの端縁に存在する、
ラベル。
【請求項2】
前記硬化層下の前記粘着剤層の前記一部は、前記粘着剤層から粘着剤が染み出さないよう前記硬化層と一体的に硬化している請求項1記載のラベル。
【請求項3】
前記硬化層下の前記粘着剤層の前記一部は、前記硬化層と一体的に硬化して粘着力を完全に失っている請求項1記載のラベル。
【請求項4】
前記アクリル系接着剤は、ラジカル重合性の紫外線硬化型組成物である請求項1記載のラベル。
【請求項5】
前記硬化層は、厚さ40μm以上60μm以下である請求項1記載のラベル。
【請求項6】
前記硬化層は、前記粘着剤層の全周に形成されている請求項1記載のラベル。
【請求項7】
前記粘着剤層は、ゴム系粘着剤である請求項1記載のラベル。
【請求項8】
前記粘着剤層は、厚さ40μm以上60μm以下である請求項1記載のラベル。
【請求項9】
基材シートに粘着剤を塗布して粘着剤層を形成する粘着剤塗布工程と、
前記粘着剤層の一部にアクリル系接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、
前記粘着剤層の前記一部およびアクリル系接着剤に活性エネルギー線を照射し、前記アクリル系接着剤下の前記粘着剤層の前記一部を前記アクリル系接着剤と一体的に硬化させる硬化層形成工程と、
を有し、
前記粘着剤層の前記一部はラベルの端縁に存在する、
ラベル製造方法。
【請求項10】
前記硬化層形成工程は、前記粘着剤層から粘着剤が染み出さないよう前記アクリル系接着剤下の前記粘着剤層の前記一部を前記アクリル系接着剤と一体的に硬化させる請求項9記載のラベル製造方法。
【請求項11】
前記硬化層形成工程は、前記アクリル系接着剤下の前記粘着剤層の前記一部を前記アクリル系接着剤と一体的に硬化させ、前記粘着剤層の前記一部の粘着力を完全に失わせる請求項9記載のラベル製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ラベルおよびその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、ラベル剥離機を用いたときラベルを確実に離型紙から剥離できるように、樹脂製のラベルの先端縁部を塗料塗布や印刷により硬化させたラベルシートが知られている(例えば、特許文献1を参照)。
しかし、塗料塗布や印刷では粘着剤を完全に硬化させることは困難であり、ラベル剥離機を用いたときラベルを離型紙から剥離できないことがあった。
したがって、粘着剤をより確実に硬化させる技術が求められていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平09−197971号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は、このような問題点を解決するために為されたものであり、その課題は、粘着剤をより確実に硬化させることができるラベルおよびその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、以下のような解決手段により、前記課題を解決する。
(1)基材シート、前記基材シート上に形成された粘着剤層、および、前記粘着剤層の一部の上に形成された硬化層を有し、前記硬化層は、アクリル系接着剤を硬化させたものであり、前記硬化層下の前記粘着剤層の前記一部は、前記硬化層と一体的に硬化しており、前記粘着剤層の前記一部はラベルの端縁に存在する、ラベル。
(2)前記硬化層下の前記粘着剤層の前記一部は、前記粘着剤層から粘着剤が染み出さないよう前記硬化層と一体的に硬化している前記(1)記載のラベル。
(3)前記硬化層下の前記粘着剤層の前記一部は、前記硬化層と一体的に硬化して粘着力を完全に失っている前記(1)記載のラベル。
(4)前記アクリル系接着剤は、ラジカル重合性の紫外線硬化型組成物である前記(1)記載のラベル。
(5)前記硬化層は、厚さ40μm以上60μm以下である前記(1)記載のラベル。
(6)前記硬化層は、前記粘着剤層の全周に形成されている前記(1)記載のラベル。
(7)前記粘着剤層は、ゴム系粘着剤である前記(1)記載のラベル。
(8)前記粘着剤層は、厚さ40μm以上60μm以下である前記(1)記載のラベル。
(9)基材シートに粘着剤を塗布して粘着剤層を形成する粘着剤塗布工程と、前記粘着剤層の一部にアクリル系接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、前記粘着剤層の前記一部およびアクリル系接着剤に活性エネルギー線を照射し、前記アクリル系接着剤下の前記粘着剤層の前記一部を前記アクリル系接着剤と一体的に硬化させる硬化層形成工程と、を有し、前記粘着剤層の前記一部はラベルの端縁に存在する、ラベル製造方法。
(10)前記硬化層形成工程は、前記粘着剤層から粘着剤が染み出さないよう前記アクリル系接着剤下の前記粘着剤層の前記一部を前記アクリル系接着剤と一体的に硬化させる前記(9)記載のラベル製造方法。
(11)前記硬化層形成工程は、前記アクリル系接着剤下の前記粘着剤層の前記一部を前記アクリル系接着剤と一体的に硬化させ、前記粘着剤層の前記一部の粘着力を完全に失わせる前記(9)記載のラベル製造方法。
【発明の効果】
【0006】
本発明によれば、粘着剤をより確実に硬化させることができるラベルおよびその製造方法を提供することができる。
そして、塗料塗布や印刷では硬化させることが困難だったゴム系粘着剤についても硬化させることができる。
また、ラベルのカット面からの粘着剤の染み出しを防ぐことができるラベルおよびその製造方法を提供することができる。
特に、タイヤ用ラベルについて、自動貼り機でのタイヤへの貼着が可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】実施形態1のラベルを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図
図2】実施形態2のラベルを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図
図3】実施形態3のラベルを示す図であって、(a)は平面図、(b)は側面図
図4】本発明の製造方法を示すフローチャート
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、本発明を実施するための最良の形態について図面等を参照して説明する。
【0009】
本発明のラベルは、基材シート、前記基材シート上に形成された粘着剤層、および、前記粘着剤層の一部の上に形成された硬化層を有し、前記硬化層は、アクリル系接着剤を硬化させたものである。
【0010】
(実施形態1)
図1は実施形態1のラベルを示す図であって、図1(a)は平面図、図1(b)は側面図である。
10は実施形態1のラベル、11は基材シート、12は粘着剤層、13は硬化層である。
【0011】
基材シート11は、上質紙やコート紙やアート紙等の紙、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエステル(ポリエチレンテレフタレート)樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリ塩化ビニルやこれを更に塩素化した塩素化ポリ塩化ビニル等の塩化ビニル系樹脂等から成るフィルム、ポリエチレンやポリプロピレン等に充填材を加えて紙のような繊維状に加工した合成紙、およびこれらの積層体や複合材などが用いられる。
基材シート11は、ラミネート加工されたものであってもよい。
基材シート11は、一般的に、商品名、製造会社名、タイヤのサイズ、種類、扁平率や、これらをバーコード表示したデータなどが印刷される。
【0012】
粘着剤層12を形成する粘着剤は、特に限定されるものではなく、たとえば、エマルジョン系、ソルベント系、ホットメルト系の粘着剤が用いられる。素材は、アクリル系、ゴム系など任意である。粘着特性は被貼着物の種類に応じて選定される。例えば、一度貼着した後には剥がす必要がない場合、強粘着や、さらに粘着力が強い超強粘着や、冷凍糊などがある。タイヤに貼り付けるラベルでは、タイヤとの相性のよいゴム系粘着剤が好ましい。
また、粘着剤層12の厚さとしては10μm以上60μm以下が好ましい。タイヤに貼り付けるラベルでは、凹凸面にしっかり粘着するように40μm以上60μm以下が好ましい。
【0013】
硬化層13は、アクリル系接着剤を硬化させたものである。
【0014】
本発明に使用されるアクリル系接着剤としては、例えば、(メタ)アクリレートを主成分とする活性エネルギー線硬化型の組成物が好ましい。活性エネルギー線としては、電子線、可視光線または紫外線などがある。
また、アクリルをベースとし、光重合開始剤、重合防止剤、増粘剤、可塑剤、着色剤等の添加剤を含んだものであってもさしつかえない。
なお、本発明に使用されるアクリル系接着剤は、粘着剤層上に塗布して硬化させる都合上、取り扱いの容易なラジカル重合性の紫外線硬化型組成物が好ましい。
例えば、東亜合成化学社製の商品名「アロニックス(R)」などである。
アクリル系接着剤は、粘着剤層上に塗布して紫外線などを照射することで、アクリル系接着剤およびその下にある粘着剤層を硬化させ、硬化層13とすることができる。
【0015】
硬化層13は、粘着剤層12の一部の上に形成されている。
硬化層13は、粘着剤層12と同等の厚みを有することが好ましい。
具体的には、硬化層13の厚さが10μm以上60μm以下であることが好ましく、タイヤに貼り付けるラベルでは、硬化層13の厚さが40μm以上60μm以下であることが好ましい。
厚塗りの粘着剤層12に対して十分な厚みを備えることで、確実に台紙から剥離させることができる。
【0016】
本発明は、通常であれば粘着力を弱めるために印刷インキやニス等を用いる処を、逆の発想により強力な接着剤を塗布して硬化させ、硬化層とするものである。
また、本発明の硬化層はすでに硬化済みの接着剤および粘着剤である。したがって、粘着力が完全に失われており台紙から容易に剥離できるので、自動貼り機でのタイヤへの貼着が可能になる。
【0017】
硬化層13は、図1に示すように、粘着剤層12の全周に形成されていることが好ましい。
硬化層13を粘着剤層12の全周に形成することで、後述する剥離シートからラベル10を剥離させる際に、どの方向からでも容易に剥離することができる。
なお、硬化層13は、図1(b)に示すように、硬化層13下の粘着剤層12の一部と一体的に硬化されていることが好ましい。
硬化層13および粘着剤層12の一部を一体的に硬化することで、粘着剤の染み出しを防ぐことができる。
また、ラベルをカットした際のカット面に硬化層が形成されていた場合、カット面からの粘着剤の染み出しを防ぐことができる。
【0018】
本発明のラベルは、基材シート11と粘着剤層12との間に、アルミ蒸着面を備えることができる。アルミ蒸着面は、タイヤから基材シート11に硫黄などが浸透しようとするのを遮断し、ラベルの保護をさらに強化して劣化を防止するものである。
なお、ラベルの用途がこれに限られないことは勿論であり、本発明はラベルシート一般に適用することができる。
【0019】
本発明のラベルは、粘着剤層12および硬化層13上に剥離可能に積層される剥離シートを備えることができる。
剥離シートとしては、一般に利用されている通常のものが用いられる。例えば、ポリエチレン被膜を介しシリコーンが表面に塗工された紙、クレー塗装後にスーパーキャレンダーがけしたクラフト紙、グラシン紙、上質セパレータ、各種プラスチックフィルム、等が例示される。
【0020】
(実施形態2)
図2は実施形態2のラベルを示す図であって、図2(a)は平面図、図2(b)は、側面図である。
20は実施形態2のラベル、11は基材シート、12は粘着剤層、23は硬化層である。
実施形態2のラベル20は、硬化層23をラベルの一辺に設けている。
硬化層23により台紙から容易に剥離できるので、自動貼り機によるタイヤへの貼着が可能となる。
【0021】
(実施形態3)
図3は実施形態3のラベルを示す図であって、図3(a)は平面図、図3(b)は、側面図である。
30は実施形態3のラベル、11は基材シート、12は粘着剤層、33は硬化層である。
実施形態3のラベル30は、硬化層33をラベルの角に設けている。
硬化層33により台紙から容易に剥離できるので、自動貼り機によるタイヤへの貼着が可能となる。
【0022】
(製造方法)
本発明のラベル製造方法は、基材シートに粘着剤を塗布して粘着剤層を形成する粘着剤塗布工程と、粘着剤層に接着剤を塗布する接着剤塗布工程と、粘着剤層および接着剤に活性エネルギー線を照射して硬化させる硬化層形成工程と、を有する。
図4を用いて説明する。
図4は、本発明の製造方法を示すフローチャートである。
まず、基材シートを用意する。
そして、S1で、基材シートの上に粘着剤を塗工機、転色機、印刷機、ハケ、バーコーターなどにより塗布して乾燥させ、粘着剤層を形成する(粘着剤塗布工程)。
次に、S2で、粘着剤層上に転色機、印刷機などにより接着剤を塗布する(接着剤塗布工程)。
それから、S3で、粘着剤層および接着剤に紫外線などの活性エネルギー線を照射して硬化させる(硬化層形成工程)。
以上により、本発明のラベルを製造することができる。
【実施例】
【0023】
以下、本発明の実施例について詳細に説明する。
発明者らは以下の実験を行った。
【0024】
[実施例1]
基材シート(リンテック社製、商品名「PET75k2424/PT3/8KA」、85mm×85mm、厚さ75μm)を用意した。
基材シート上に、粘着剤(リンテック社製、商品名「PT3」、ゴム系粘着剤)を市販の塗工機を用いて厚さ40μmとなるように塗布して乾燥し、粘着剤層を形成した。
そして、粘着剤層の全周に幅4mm、厚さ40μmとなるように、ラジカル重合性接着剤(東亞合成社製、商品名「アロニックスLCR0239F」)をフレキソ印刷用のメジウムに混ぜて市販の転色機により塗布して、紫外線を照射し、硬化層を形成した。
以上により、実施例1のラベルを製造した。
【0025】
[実施例2]
粘着剤層の1辺に幅4mm、厚さ40μmとなるように、ラジカル重合性接着剤(東亞合成社製、商品名「アロニックスLCR0239F」)をフレキソ印刷用のメジウムに混ぜて市販の転色機により塗布して、紫外線を照射し、硬化層を形成した。
それ以外の条件は実施例1と同様にして、実施例2のラベルを製造した。
【0026】
[比較例1]
粘着剤層の全周に幅4mm、厚さ40μmとなるように、ニス(TOKA社製、商品名「UP200」)を市販の転色機により印刷し、乾燥させて、粘着力が弱められた弱粘着部を形成した。
それ以外の条件は実施例1と同様にして、比較例1のラベルを製造した。
【0027】
実施例および比較例の主な条件を表1に示す。
【0028】
【表1】
【0029】
(評価)
<自動貼り試験>
実施例および比較例のラベルを、(株)サトー製、商品名「タフアーム」にて市販のタイヤに連続4200枚自動貼りして、吸着板に糊溜まりが生じるか否かを目視により確認した。
○:吸着板に糊溜まりは生じなかった
×:吸着板へ糊溜まりが生じた
【0030】
<粘着剤の染み出し>
実施例および比較例のラベルを市販のタイヤに貼着し、温度40℃、湿度80%RHの環境下に7日放置した。
そして、貼着状態を目視して、粘着剤がカット面から染み出していないかを確認した。
○:染み出しなし
×:染み出しあり
【0031】
【表2】
【0032】
表2から明らかなように、実施例1および実施例2では、自動貼り試験およびカット面からの粘着剤の染み出しについて、良好な結果を得ることができた。
これに対し、比較例1では、自動貼り試験およびカット面からの粘着剤の染み出しについて、実用上問題があった。
【符号の説明】
【0033】
10、20、30 ラベル
11 基材シート
12 粘着剤層
13、23、33 硬化層
図1
図2
図3
図4