(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記構造性複屈折層の少なくとも1つは、少なくとも2つの構造性複屈折層を含み、前記光学的吸収性材料の吸収層は、前記少なくとも2つの構造性複屈折層の間に配設されていることを特徴とする請求項1に記載の機器。
前記光学的吸収性材料は、テルル化カドミウム、テルル化鉛、テルル、ケイ素、硫化カドミウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、及びそれらの組合せからなるグループから選択されることを特徴とする請求項1に記載の機器。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
他のタイプの偏光素子は、スペクトルの可視及び赤外部分で利用できるものであり、それには、長鎖重合体偏光素子、ワイヤーグリッド偏光素子、Glan Thompson結晶偏光素子
等がある。しかしながら、スペクトルの紫外(UV)部分、とりわけ、約350nm未満の波長、については、有能で高性能な偏光素子の同様の十分な供給がなかった。
【0004】
このように有能な偏光素子が不足していることにより、可視及び赤外(IR)と比較して、偏光UV光の、科学、技術、及び工業での応用は制限されていた。しかしながら、半導体の製造、フラットパネル液晶ディスプレイ(LCD)の製造等の工業プロセスにおいて増加しつつあるUV照射の応用をサポートするために、UV偏光素子の必要性は、重大事項となってきている。いくつかのUV照射プロセスにおいて必要とされているような種類の偏光素子は、合理的な許容角を有していなければならず、概ね20:1より大きい透過コントラスト比と、所望の偏光に対する約30%を超える透過効率とを示すことができなければならず、また、高強度環境においても有益な期間(少なくとも1−2か月)活用できるものでなければならない。偏光素子は、使用すべき最も有効な光学的配置が可能となるプレート形態のような利便性のある形成因子を有していることが望ましい。可視スペクトルでのかかる性能レベルは、ワイヤーグリッド偏光素子技術又はいくつかの他の偏光技術により満たされるであろうが、UV領域においては、低い性能要求でさえ満たすことは驚くほど困難であることが分かっている。
【0005】
この要求に対する1つの解決策は、一連のガラス板を組み付け、その積み重ねをUV照射に対してブルースター角で配置することにより形成されるパイルオブプレーツ偏光素子を使用し、P偏光を透過し、S偏光を反射することにより偏光ビームを生成するということであった。このアプローチにより、所望の光学的効率とコントラスト比が得られるが、それは法外に高価で嵩張り、よって実用的な解決策ではなかった。
【0006】
可視及び赤外に使用される商業的に得られるものと類似のアルミナ製ワイヤーグリッド偏光素子がこの要求を満たす役目を果たすと考えられてきた。しかしながら、ワイヤーグリッド技術における現在の技術では不十分であることが経験から分かっている。いくつかの製造者からの概ね100nmまで下がったグリッド周期を有するワイヤーグリッド偏光素子が、240nmと300nmの間のUV応用領域において試験されたが、上述の全ての要求は満たすことができなかった。特に、それらは、有用期間に渡って所望のコントラストレベルを呈することができなかった。基本的な問題は、グリッド周期と比較して波長
が短い(250nmにおいて僅か2.5:1の比)ということにあるようであるが、このことは、コントラスト及び透過性能や、偏光素子がその偏光機能をほとんど失ってしまうような、グリッド内のアルミナ金属配線が酸化アルミナ配線に素早く(例えばせいぜい2,3時間)変わってしまうような工業的UV環境の苛酷さに対して否定的な衝撃を与える。
【0007】
他の提案は、単純にワイヤーグリッド偏光素子の近くに分離した吸収層を加えるか、ワイヤーグリッド偏光素子に吸収層を被膜することである。7,206,059参照。しかし、かかる偏光素子は、配線を使用している。
【0008】
Glan Thompson Alpha BBOのような他のUV偏光素子は、科学分野での応用では満足の
いくものであるが、光学的効率及び許容角についての要求を満たすことができず、工業的応用においては、法外に高価なものとなってしまった。従って、今日では、UV光の工業的応用での要求を満たす、完全に許容できて実用的なUV偏光素子は、存在していない。
【0009】
約20:1を超える透過及び/又は反射におけるコントラストを有し、合理的な許容角を有し、十分な期間、UV光固有の、より高いエネルギーの光子を有し、プレート形態のような合理的な物理的形態を有し、工業的プロセスでの応用で合理的な費用で製造できるような偏光素子又は偏光ビームスプリッターを開発することは有益であることが認識されている。加えて、アルミナのような金属の酸化や、強いUV環境による、重合体のような有機材料の破壊を防止するために、無機的であり、誘電体特性を有する偏光素子を開発することは有益であることが認識されている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、吸収性、紫外域、無機的及び誘電性グリッド偏光機器を提供する。少なくとも2つの層のスタックが、基体の上側に配設されている。少なくとも2つの層の各々は、無機的であると共に誘電性を有する材料で形成されている。少なくとも2つの層の隣接層は、異なる屈折率を有している。少なくとも2つの層のうちの少なくとも1つ
は、概ね400nmよりも短い周期を有する不連続な平行リブの配列で、構造性複屈折層を形成している。少なくとも2つの層の他方は、構造性複屈折層とは異なり、紫外スペクトルに対して光学的吸収性のある材料で形成されて吸収層を
不連続に規定している。
【0011】
他の様相では、本発明は、基体の上側に配設された少なくとも2つの層のスタックを伴った吸収性、紫外域、無機的及び誘電性グリッド偏光機器を提供する。少なくとも2つの層の各々は、無機的であると共に誘電性を有する材料で形成されている。少なくとも2つの層の隣接層は、異なる屈折率を有している。少なくとも2つの層
は、概ね400nmよりも短い周期を有する不連続な平行リブの配列で構造性複屈折層を形成し、各リブは、紫外スペクトルに対して光学的非吸収性を有する材料で形成された透過層と、紫外スペクトルに対して光学的吸収性を有する材料で形成された吸収層と、を有している。
【0012】
他の様相によれば、本発明は、基体の上側に配設された少なくとも2つの層のスタックを伴った吸収性、紫外域、無機的及び誘電性グリッド偏光機器を提供する。スタックの各層は、無機的であると共に誘電性を有する材料で形成されている。スタックの隣接層は、異なる屈折率を有している。スタックの全ての層
は、概ね400nmよりも短い周期を有する不連続な平行リブの配列で構造性複屈折層を形成している。周期と異なる屈折率により、スタックは、入射紫外線ビームを実質的に偏光して2つの直交偏光配向に分離し、それらの偏光の1つを透過又は反射する。スタックの各層の少なくとも1つは、紫外スペクトルに対して光学的吸収性を有する材料で形成され、それらの偏光配向の他方を実質的に吸収する。
【図面の簡単な説明】
【0013】
本発明の更なる特徴及び利点が、添付の図面と共に、以下の詳細な説明から明らかになるであろう。添付図面はいずれも発明の特徴を例示で表すものである。
【
図1a】
図1aは、本発明の一実施形態による吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子の側方断面図である。
【
図1c】
図1cは、
図1aの偏光素子の(理論的に算出された)期待性能のグラフである。
【
図1d】
図1dは、Nb205で形成されたリブを有した
図1aの偏光素子の(理論的に算出された)期待性能のグラフである。
【
図1e】
図1eは、100nmの周期を有するリブを有した
図1aの偏光素子の(理論的に算出された)期待性能のグラフである。
【
図2】
図2は、本発明の他の実施形態による他の吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子の側方断面図である。
【
図3a】
図3aは、本発明の他の実施形態による他の吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子の側方断面図である。
【
図3b】
図3bは、
図3aの偏光素子の(理論的に算出された)期待性能のグラフである。
【
図4a】
図4aは、本発明の他の実施形態による他の吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子の側方断面図である。
【
図4b】
図4bは、
図4aの偏光素子の(理論的に算出された)期待性能のグラフである。
【
図5a】
図5aは、本発明の他の実施形態による他の吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子の側方断面図である。
【
図5c】
図5cは、
図4aの偏光素子の(理論的に算出された)期待性能のグラフである。
【
図6】
図6は、本発明の他の実施形態による他の吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子の側方断面図である。
【
図7】
図7は、
図1aの偏光素子を作製する方法の概略図である。
【
図8】
図8は、本発明の一実施形態による、
図1aの偏光素子を使用した紫外線露光システムの概略図である。
【0014】
図面内の各種特徴は、明確化のために誇張されている。
【0015】
以下、図面に表された実施形態を参照するが、ここでは、その実施形態を記述するために具体的な言語が使用される。しかしながら、それにより発明の範囲を限定することを意図するものではない、ということが理解されるであろう。
【発明を実施するための形態】
【0016】
定義
語句、誘電体は、ここでは、とりわけ金属酸化物、金属窒化物、金属フッ化物、又は他の同様の材料である非金属光学材料を意味するように使用される。加えて、グラファイト、ダイヤモンド、ガラス状炭素等の各種形態の炭素が、本発明の範囲にある誘電体である。
【0017】
説明
上述のように、特に紫外(UV)応用領域のための改良された偏光素子の必要性が認識されてきた。ワイヤーグリッド偏光素子のような無機偏光素子でさえ、UVスペクトルに
おけるこの特別な必要性を満たすことに成功しなかったのであるから、UVスペクトルで固有に働くものの、電磁スペクトルの他の領域において関連しない、又は有益でないような偏光素子を開発するために、応用での要求を調べることは有益である。特に、いくつかのUVでの応用におけるコントラスト比及び透過効率について要求は、可視又は赤外(IR)スペクトルにおける応用機器についての性能の許容レベルとして考えられているものよりもかなり低いことに注意すべきである。このことにより、より創造的なアプローチを使用する可能性が開かれており、全ての光学的効率に渡る強い否定的な影響のために可視又はIRでの応用ではとりわけ考慮されていない、吸収性の材料をも含めて検討することが可能であろう。
【0018】
図1a及び1bに描かれているように、吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子が、本発明による一実施形態において、一般記号10で示されている。偏光素子10は、入射UV光ビーム(“UV”で示される)を実質的に偏光して、実質的に分離した直交偏光配向に分け、その偏光の1つを実質的に吸収するように構成されている。例えば、
図1aに示すように、その偏光素子は、p偏光配向を有したUV光のような1つの偏光配向を透過し、s偏光配向を有したUV光のような他の偏光配向を吸収するように構成されている。s偏光配向は、以下に記述のように、偏光素子のリブに平行に向いている一方、p偏光配向は、リブに対して直交に、又は垂直に向いている。かかる偏光素子10は、半導体の製造、フラットパネル液晶ディスプレイ(LCD)の製造等に分野で利用できる。
【0019】
偏光素子10は、各層を担持又は支持する基体22の上側に配設された膜層18a及び18bのスタック14を有している。スタック14は、少なくとも2層を含んでおり、少なくとも1つが、紫外スペクトルに関し、透過性の、又は非光学的吸収性の層18aであり、少なくとも1つが光学的吸収性の層18bである。透過層18aは、基体上に直接配設されるか、又は吸収層18bよりも基体の近くに位置付けされるので、透過層は、吸収層と基体の間に配設されることとなる。層18a及び18bは、無機的な誘電体材料で形成される。偏光素子の無機的な誘電体材料により、酸化のような、UVビームによる劣化に対して耐性を有している。加えて、基体22も、石英ガラスのような、無機的な誘電体材料で形成されているので、UV光による基体の劣化が更に防止される。従って、偏光素子全体が無機的な誘電体であり、無機的な誘電体材料のみで形成される。
【0020】
透過層18aは、少なくともUVスペクトル領域で光学的透過性を有する材料で形成される。同様に、基体は、UVスペクトル領域で光学的透過性を有する材料で形成される。
【0021】
少なくとも透過層18aは、グリッド32を規定する不連続な平行リブ30の配列を伴った構造性複屈折層26を形成している。リブ30は、二酸化ケイ素(SiO
2)のような無機的な誘電体材料で形成されている。ある面では、
リブ30は、UVビームの波長よりも短い、つまり400nmよりも短い周期Pを有している。他の面では、リブ30又はグリッド32は、UVビームの波長の半分よりも短い、つまり200nmよりも短い周期Pを有している。他の面では、リブ又はグリッドは、160nmよりも短い周期Pを有している。リブ30の構造(周期、幅、厚さ、及び隣接層の異なる屈折率)は、UVビームと相互に作用し、実質的にUVビームを2つの直交する偏光配向に偏光している。ある面では、後に記述のように、グリッド32は、p偏光配向のような、偏光配向の1つを実質的に透過する一方、s偏光配向のような他の偏光配向は、実質的に吸収される。あるいは、グリッドは、s偏光配向を実質的に反射する一方、p偏光配向は、実質的に吸収される。
【0022】
吸収層18bは、二酸化チタンのような、UVスペクトル領域についての光学的吸収材料を含んでいる。従って、吸収層18bは、s偏光配向のような、UVビームの偏光配向の1つを実質的に吸収する。吸収層18bは、グリッド32の一部を形成する平行リブ30の並列により不連続とすることができる。吸収層18bをグリッド32として形成することにより、後により詳細に記述するように、製造者は、全ての層を一回でエッチングすることが可能となる。吸収層の光学的吸収材料は、テルル化カドミウム、ゲルマニウム、テルル化鉛、酸化ケイ素、テルル、二酸化チタン、ケイ素、硫化カドミウム、セレン化亜鉛、硫化亜鉛、及びそれらの組合せを含む。
【0023】
各層又はグリッドの材料は、屈折率n又は有効屈折率を有している。各隣接層又はグリッドは、異なる屈折率(n
1≠n
2)又は異なる有効屈折率を有している。加えて、第一層18aは、基体22の屈折率n
sとは異なる屈折率n
1を有している(n
1≠n
s)。層のスタックは、2つの屈折率、2つの厚さ(異なってもよいし異なっていなくてもよい)、及び2つの材料を有する2つの層による基本パターンを有しており、それらの材料の1つは、UVスペクトルの特定注目領域において光学的吸収性を呈している。この基本パターンが繰り返されれば、1つより多い層対の構造が形成される。連続的光学薄膜材料(図示せず)でできた他の層が、その層対の下に、又はその層対の上に加えられて、他の光学的な恩恵を提供できることに注意すべきである。
【0024】
加えて、各層の厚さは、UVスペクトルの所望の特定範囲について、光学的性能(透過効率及びコントラスト比)を最適化するように製造できる。例えば、
図1aに示すように、透過層18aの厚さt
1は、吸収層18bの厚さt
2により短い。
【0025】
スタック14は、2つの膜層18a−bで示されているが、スタックの膜層の枚数は、変えることができる。ある面では、スタックは、3枚から20枚までの層を有することができる。20枚に満たない層が、所望の偏光を達成できると信じられている。基体の上側のスタック内の全ての膜層の厚さは、2マイクロメーター未満である。
【0026】
2層膜
は、不連続な平行リブ30の配列を伴った構造性複屈折構造を形成している。リブは、扱われる波長よりも短いピッチ又は周期Pを有しており、ある面では、扱われる波長の半分よりも短いものを有している。UV光での応用(λ≒100−400nm)については、リブは、ある面では400nm、他の面では200nm、他の面では160nmよりも短いピッチ又は周期を有している。従って、偏光素子10は、入射UV光ビームを2つの直交偏光配向に分けるが、s偏光配向を有する光(リブの長さ方向に対して平行に向いた偏光配向)は、いくらかのエネルギーが反射するもののほとんどが吸収し、p偏光配向を有する光(リブの長さ方向に対して垂直に向いた偏光配向)は、いくらかのエネルギーが吸収されるものの多くが透過又は通過する。(無論、これらの2つの偏光の分離は、完全ではなく、損失や、反射及び/又は透過の望まれない偏光配向があるということが理解される。)加えて、光の波長の約半分よりも短いピッチを有したリブのグリッド又は配列は、(光の波長の約半分よりも長いピッチを有する)回折格子のようには働かない、ということに注意すべきである。従って、グリッド偏光素子は、回折を回避する。更に、かかる周期は、また、共鳴効果又は他の光学的変則を排除すると信じられている。
【0027】
図1aに示すように、膜層の全て
は不連続な平行リブ30の配列を形成している。リブ30は、介在する溝、ギャップ又はトラフ34により分けられている。この場合、溝34は、膜層18a−18bの双方を貫いて基体22まで延びている。従って、各リブ30は、2層で形成されている。加えて、全ての膜層は、構造性複屈折性を有している。後に議論するように、かかる構成は、製造し易い。
【0028】
リブ30は、矩形で示されているが、無論、
図1bに示すように、リブ及び溝34は、他の各種形状をとることができると理解できる。例えば、リブ及びトラフは、台形、円形、部分正弦波形等とすることができる。
【0029】
溝34は、空気(n=1)で満たされていても満たされていなくてもよい。あるいは、溝34は、入射UV光に関して光学的透過性を有する材料で満たされていてもよい。
【0030】
ある面では、基体の上側のスタック内の全ての膜層の厚さは、1ミクロン未満である。従って、グリッド偏光素子10は、薄く、小型の応用分野に向いている。
【0031】
膜層の複屈折特性や、隣接膜層同士が異なる屈折率を有することにより、グリッド偏光素子10は、入射光の偏光配向を実質的に分離し、s偏光配向を実質的に吸収したり反射し、p偏光を許容量の吸収はあるものの実質的に透過又は通過させる、と信じられる。加えて、少なくとも各層の1つが入射UV光に対して吸収性を有する限り、膜層の数、膜層の厚さ、及び膜層の屈折率は、調整でき、それによりグリッド偏光素子の性能特性を変えることができる、と信じられる。
【0032】
図1cを参照すると、120nmの周期を有する
図1a及び1bの偏光素子10の予測性能(具体的には透過率及びコントラスト比)が示されている。偏光素子10は、250−350nmの特定範囲に渡って40%を超える透過率を有し、特に310nm以上は増加している。加えて、コントラスト比は、概ね270nmの波長で、ピーク(350の値)となっている。
図1eを参照すると、100nmの周期を有する
図1a及び1bの偏光素子10の予測性能が示されている。透過率は、30%を超え、300nm以上では増加している。加えて、コントラストは、260nmでピークを有している。
図1dを参照すると、Nb205で形成されたリブを有した
図1a及び1bの偏光素子10の予測性能が示されている。その偏光素子は、特定範囲250−350nmに渡って40%を超える透過率を有し、それは290nm以上で増加していることが分かる。加えて、コントラスト比は、250nmの波長でピーク(400を超える値)を有している。従って、特別な波長に偏光素子を合わせるために、異なる材料が選択されることが分かる。
【0033】
図2を参照すると、他の吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子又は偏光ビームスプリッターが、本発明による一実施形態において、一般記号10bで示されている。上記記述をここで援用する。また、偏光層18a、リブ30b及びグリッド32bは、基体22bと一体的に形成されている。つまり、吸収層18bを超えて基体に入り込んでエッチングされている。成膜される層がより少ないので、かかる偏光素子10bは、製造がより容易である。従って、偏光素子は、基体22b自体に形成され、そこから延びた複数のリブを有している。膜層に形成された、又は膜層のスタック14bに形成されたリブは、基体のリブの上に配設され、又は基体のリブにより担持されている。基体のリブは、膜層の溝と揃っている介在溝又はトラフを規定している。この構成によれば、基体の一部が構造性複屈折層を形成している。リブ又は溝は、上方の層をエッチングして更に進めて基体までエッチングすることにより形成される。
【0034】
図3aを参照すると、他の吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子又は偏光ビームスプリッターが、本発明による一実施形態において、一般記号10cで示されている。上記記述をここで援用する。また、偏光素子10cは、不連続層18a−cのスタック14cを有している。最上部と底部の層18c及び18aは、透過層であり、
また、グリッド26を規定する不連続なリブ30の配列を伴った構造性複屈折層32を形成している。吸収層18bは、2つの偏光グリッドの間に配設されている。
【0035】
図3bを参照すると、
図3aの偏光素子10cの予測性能を示されている。偏光素子10cの性能は、
図1aの偏光素子10のそれと類似であることが分かる。
【0036】
図4aを参照すると、他の吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子又は偏光ビームスプリッターが、本発明による一実施形態において、一般記号10dで示されている。
上記記述をここで援用する。また、偏光素子10dは、不連続層18a−18fを有しており、それによりグリッドを規定するリブ30の配列を伴った構造性複屈折層32を形成している。各層は、非吸収層18a、18c及び18eと吸収層18b、18d及び18fとの間の交互の層となっている。
【0037】
図4bを参照すると、
図4aの偏光素子10dの予測性能が示されている。透過率は、250−350nmの範囲に渡って30%を超えていることが分かる。加えて、コントラストは、270nmの波長で、ピーク(120の値)となっている。
【実施例1】
【0038】
図1aを参照すると、吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子10の第一非限定例が示されている。
【0039】
グリッド偏光素子10は、基体22の上側に配設された2つの膜層18a及び18bを有している。各膜層は、無機的な誘電体材料で形成されている。つまり、二酸化ケイ素(SiO
2)(266nmにおいて、n≒1.6、k≒0)の層18aと、二酸化チタン(TiO
2)(266nmにおいて、n≒2.7、k≒1.3)の層18bである。2つの層は、それぞれ20nm及び130nmの厚さ(t
1及びt
2)を有している。従って、スタック全体は、概ね150nmの厚さ(t
total)を有している。その薄膜層の双方
は、不連続な平行リブ30の配列26を形成している。従って、全ての層は不連続であり、共に構造性複屈折層を作り上げている。リブは、118nmのピッチ又は周期Pを有し、0.48のデューティー比(リブ幅に対する周期の比)又は57nmのリブ幅を有している。二酸化チタン(TiO
2)材料が、入射UV照射に対する、その光学的指標及び光学的吸収特性により、選択されてきた。構造性複屈折構造は、s偏光を優先的に反射したり吸収する一方で、許容量のエネルギーが損失又は吸収されるもののp偏光を透過する。この所望の性能は、約0°入射(つまり垂直入射)から、法線に対して約75度の角度までの入射角度の範囲に渡って発揮される。
【0040】
表1は、波長(λ)が266nmで、入射角度が0°、15°及び30°の入射UV光のときの、
図1aの偏光素子10の性能を示している。
【0041】
【表1】
【0042】
表1から、グリッド偏光素子は、記述した十分な光学的性能を呈し、UVスペクトルにおいて非常に有用であることが分かる。加えて、偏光素子の開口角は、少なくとも±30
°の角度に渡って拡がっていることが分かる。加えて、リブ又はグリッドの周期を短くすると、透過率が上昇するということが分かる。
【0043】
図1fを参照すると、偏光素子10の実際の性能、透過率及びコントラストが示されている。実際の性能は、期待された性能と類似しており、偏光素子は40%より大きい透過率を有していることが分かる。
【実施例2】
【0044】
図4aを参照すると、吸収性、無機的及び誘電体のUV偏光素子10dの第二非限定例が示されている。
【0045】
偏光素子10dは、基体22の上側に配設された膜層18a−fのスタックを有している。各膜層は、無機的な誘電体材料で形成されている。つまり、二酸化ケイ素(SiO
2)(266nmにおいて、n≒1.6、k≒0)と、二酸化チタン(TiO
2)(266nmにおいて、n≒2.7、k≒1.3)の交互の層である。従って、複数の層は、屈折率(n)の高い値と低い値の間を行き来する。各層は、23nmの厚さを有している。従って、スタック全体は、概ね138nmの厚さ(t
total)を有している。その全膜層
は、不連続な平行リブ30の配列26を形成している。従って、全ての層は不連続であり、構造性複屈折層を作り上げている。リブは、118nmのピッチ又は周期Pを有し、0.4のデューティー比(幅に対する周期の比)又は71nmの幅を有している。
【0046】
表2は、波長(λ)が266nmで、入射角度が0°の入射UV光のときの、
図4の偏光素子10dの性能を示している。
【0047】
【表2】
【0048】
表2から、UV偏光素子は、記述した十分な光学的性能を呈し、UVスペクトルにおいて非常に有用であることが分かる。
【0049】
上の例から、有効なUV偏光素子は、120nmより大きい周期を有し、UVスペクトルの有効領域に渡って動作可能であるということが分かる。
【0050】
図5a及び5bを参照すると、他の吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子又は偏光ビームスプリッターが、本発明による一実施形態において、一般記号10eで示されている。上記記述をここで援用する。また、偏光素子10eは、リブ30及びギャップ34を覆うように配設された平坦化層40を有している。平坦化層は、ギャップを実質的に覆い、他の物質がギャップに入り込むことを実質的に防止しており、それにより空気がギ
ャップ内に実質的に保持されている。平坦化層40は、リブ上に他の層を配設するか、又は偏光素子に他の光学的構成を取り付けるに際し、有用である。平坦化層40は、フッ化チタン(TiFx)を含んでいる。
図5bを参照すると、この実施形態は、基体に対してエッチングを施して各構造性複屈折層のうちの1つを形成することにより、製造したものである。
【0051】
図5cを参照すると、
図5a及び5bの偏光素子10eの予測性能が示されている。偏光素子10eは、約310nmより上の部分で増加する、より低い透過率を有していることが分かる。
【0052】
図6を参照すると、他の吸収性、無機的及び誘電体のグリッド偏光素子又は偏光ビームスプリッターが、本発明による一実施形態において、一般記号10fで示されている。上記記述をここで援用する。また、偏光素子10fは、紫外スペクトル域において誘電性と吸収性の双方を有する材料で形成され
た不連続なリブ30の平行配列を有するグリッド32fを伴う構造性複屈折層を形成するように少なくとも1つの層を備えている。従って、グリッドが偏光化、誘電性及び吸収性グリッド又は層を規定している。この実施形態は、上記実施形態と同様の性能を呈することはないと信じられるものの、ある最小限の性能要求を満たすことができると信じられる。
【0053】
上述のような偏光素子を形成する方法では、基体22を用意することを含んでいる。上述のように、基体は、石英ガラスである。全ての様相において、基体は、電磁照射の所望の波長に対して透過性を有するようなものが選択される。基体は、洗浄され、その他準備される。第一連続層18aが、第一屈折率を有する第一無機的、誘電性光学的透過性(紫外の特定領域で)材料で、基体上に形成される。第二連続層18bが、第二屈折率を有する第二無機的、誘電性光学的吸収性(紫外の特定領域で)材料で、第一連続層の上に形成される。各層には、入射UV光に対して強力な光学的吸収性を呈する材料が選択される。次の各連続層が、第二層の上に形成される。第一及び第二層も、それに続く層も、当該技術分野で知られている真空蒸着、化学気相成長法、スピンコート等により形成される。連続層又は少なくとも第一もしくは第二連続層は、少なくとも1つの構造性複屈折層を規定する平行リブの配列で2つの不連続層を作りだすようにパターン化されている。加えて、全ての連続層が、不連続層を作りだすようにパターン化されている。各層は、当該技術分野で知られているエッチング等によりパターン化される。
【0054】
グリッド偏光素子は、光ビームが当たるように配設され、s偏光を実質的に反射したり吸収し、p偏光を僅かな量のエネルギーの吸収はあるものの実質的に透過させる。
【0055】
図7を参照すると、上で示したような無機的で誘電体のグリッド偏光素子を形成するための他の方法が示されている。この方法は、上で記述した方法と類似であり、それをまず援用する。基体22が得られ、又は準備される。第一連続層48が、第一屈折率を有する第一無機的、誘電性材料で、基体22上に形成される。第一連続層は、平行リブの配列で、不連続層を作りだして、少なくとも1つの構造性複屈折層を規定するようにパターン化されている。そのパターン化は、エッチングマスク50を配設することにより達成される。そして、エッチングマスクは、リソグラフ54によりパターン化される。層48は、パターン化されたエッチングマスク54を通して、エッチングされる。エッチングマスク54は、パターン化された層18aは残したまま、取り除かれる。第二連続層が、第二屈折率を有する第二無機的、誘電性材料で、第一不連続層の上に形成される。他の連続層が、第二層の上に形成され、第二不連続層を形成するようにパターン化される。従って、パターン化は、全ての層について行われるということではないので、少なくとも2つの隣接層が、連続層及び不連続層を含んでいる。
【0056】
他の面では、第二連続層が、第一、及びパターン化された第二連続層の上に形成される。
【0057】
図8を参照すると、上述の偏光素子(10で表わされる)は、紫外線露光システム100で使用できる。システム100は、UVビームを偏光素子10の方へ向ける紫外線源110を有し、そしてその偏光素子は、偏光されたUVビームを透過して露光目標の方へ向かわせる。
【0058】
以上の例は、1つ以上の特定の応用領域における、本発明の原理の例証であるが、当業者であれば、実施化における形態、利用法及び詳細について多数の変形態様を、発明的能力の訓練なくして、また発明の原理及びコンセプトから外れることなく、作り上げることができるということは自明であろう。しかして、発明は、以下に規定された請求の範囲以外のものにより限定されることは意図されていない。