特許第5902452号(P5902452)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902452
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】袋体固定具
(51)【国際特許分類】
   E02D 17/20 20060101AFI20160331BHJP
   E02D 17/18 20060101ALI20160331BHJP
   E02D 5/80 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   E02D17/20 106
   E02D17/18 A
   E02D5/80 Z
【請求項の数】10
【全頁数】14
(21)【出願番号】特願2011-263914(P2011-263914)
(22)【出願日】2011年12月1日
(65)【公開番号】特開2013-117095(P2013-117095A)
(43)【公開日】2013年6月13日
【審査請求日】2014年11月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000000549
【氏名又は名称】株式会社大林組
(73)【特許権者】
【識別番号】391019740
【氏名又は名称】三信建設工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000149206
【氏名又は名称】株式会社大阪防水建設社
(73)【特許権者】
【識別番号】000117135
【氏名又は名称】芦森工業株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】592016784
【氏名又は名称】守谷鋼機株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100099704
【弁理士】
【氏名又は名称】久寶 聡博
(72)【発明者】
【氏名】山本 彰
(72)【発明者】
【氏名】稲川 雄宣
(72)【発明者】
【氏名】滝田 安之
(72)【発明者】
【氏名】山崎 淳一
(72)【発明者】
【氏名】谷室 裕久
(72)【発明者】
【氏名】▲からさき▼ 和孝
(72)【発明者】
【氏名】倉田 正博
(72)【発明者】
【氏名】那須 敦
(72)【発明者】
【氏名】清水 伸敏
【審査官】 富山 博喜
(56)【参考文献】
【文献】 特公昭46−017007(JP,B1)
【文献】 特開平08−189033(JP,A)
【文献】 特開2003−255155(JP,A)
【文献】 特開2005−264448(JP,A)
【文献】 米国特許第03270469(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
E02D 17/00−17/20
E02D 5/22−5/80
E21D 20/00−21/02
B65D 30/00−33/38
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
チューブ状に形成された袋体の端部を該袋体に挿通配置された芯材に固定することでグラウト材が注入される内部空間が前記袋体に形成されるようになっている袋体固定具において、
前記芯材が挿通され該芯材に固着される内スリーブと、該内スリーブと同軸に配置され該内スリーブとの間に前記袋体の端部周縁が挿通される外スリーブとを備えるとともに、前記内スリーブを、前記芯材に固着される内スリーブ本体と、前記袋体の配置側と反対の側にて前記内スリーブ本体から径方向外方に延設され前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側と反対の側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる移動制限部とで構成し、前記袋体の配置側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体が配置された側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部材を備えたことを特徴とする袋体固定具。
【請求項2】
チューブ状に形成された袋体の端部を該袋体に挿通配置された芯材に固定することでグラウト材が注入される内部空間が前記袋体に形成されるようになっている袋体固定具において、
前記芯材が挿通され該芯材に固着される内スリーブと、該内スリーブと同軸に配置され該内スリーブとの間に前記袋体の端部周縁が挿通される外スリーブと、前記袋体の配置側と反対の側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側と反対の側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる移動制限部材とを備えたことを特徴とする袋体固定具。
【請求項3】
前記移動制限部材をスリーブ状に形成してその内周面に雌ネジを形成するとともに該雌ネジと螺合する雄ネジを前記内スリーブの外周面に形成した請求項2記載の袋体固定具。
【請求項4】
前記内スリーブを、前記芯材に固着される内スリーブ本体と、前記袋体が配置された側にて前記内スリーブ本体から径方向外方に延設され前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部とで構成した請求項2又は請求項3記載の袋体固定具。
【請求項5】
前記袋体の配置側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体が配置された側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部材を備えた請求項2又は請求項3記載の袋体固定具。
【請求項6】
前記押圧保持部材をスリーブ状に形成してその内周面に雌ネジを形成するとともに該雌ネジと螺合する雄ネジを前記内スリーブの外周面に形成した請求項1又は請求項5記載の袋体固定具。
【請求項7】
前記内スリーブの外周面側と内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔を該内スリーブに設けた請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の袋体固定具。
【請求項8】
前記内スリーブの内部空間として、該内スリーブの材軸と平行でかつ互いに平行な2本の挿通孔を設けるとともに、その一方を前記芯材が挿通される芯材挿通孔、他方を前記袋体の内部空間にグラウト材を注入するグラウト注入パイプが挿通されるパイプ挿通孔とした請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の袋体固定具。
【請求項9】
前記芯材をPC鋼より線とした請求項1乃至請求項6のいずれか一記載の袋体固定具。
【請求項10】
前記芯材のうち、前記内スリーブから延びる先端露出部分に被覆される芯材被覆用キャップを備えた請求項9記載の袋体固定具。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、地山補強用の袋体を芯材に固定する際に用いられる袋体固定具に関する。
【背景技術】
【0002】
グランドアンカー工法は、法面に配置された法枠等の法面構造体と該法面の背後に拡がる地山に定着されたアンカーとを引張材を介して相互連結するとともに該引張材に緊張力を導入するものであって、引張材に導入された緊張力が法面構造体を介して法面に作用して地山のせん断抵抗が大きくなり、その崩壊を未然に防止することが可能となる。
【0003】
これに対し、ネイリング工法は、芯材である鉄筋を地山に差し込んでその周囲と地山との間にグラウト材を充填するものであって、鉄筋をその全長にわたって地山に定着することで、地山が動き出そうとするときの変形が鉄筋のせん断、曲げあるいは引張剛性で拘束されるものであり、グランドアンカー工法と同様、法面の崩落を防止しその安定化を図ることができる。
【0004】
一方、芯材とそれを取り囲むように配置された袋体とを、地山に先行形成された補強材挿入孔に挿入し、しかる後、袋体の周面が補強材挿入孔の内面に当接するように該袋体にグラウト材を加圧注入する工法が知られている(特許文献1)。
【0005】
かかる工法においては、袋体は、グラウト注入による膨張に伴い、補強材挿入孔を押し拡げるように周面が削孔内面に当接するので、グラウト材が固化した後は、周辺地山と強固に一体化する。
【0006】
すなわち、同工法は、芯材全長にわたる地山への定着力に、袋体の押し拡げ作用による定着力が加わった形で地山の変形を拘束するものであって、ハイスペックネイリング(登録商標)の名称でもわかる通り、従前のネイリング工法よりも定着力が格段に優れたあらたな工法として大いに期待されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−188845号公報
【特許文献2】特開2009−191582号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
上述した袋体を芯材に取り付けるにあたっては、チューブ状に形成された袋体に芯材を挿通した上、該袋体の両端を絞って芯材に固定するが、加圧注入されたグラウト材が袋体の両端と芯材との間から漏出すると、袋体を膨張させることができず、結果として補強材挿入孔を押し拡げることができなくなる。
【0009】
そのため、従来においては、鋼製の拘束バンドや番線で袋体の端部周縁近傍を芯材にしっかりと縛り付けることで、両者の水密性を確保していた(特許文献2)。
【0010】
しかしながら、地山との定着力を高めるべく、袋体内のグラウト圧を大きくしようとすると、袋体の内圧上昇に伴って、袋体の端部周縁近傍を縛っていた拘束バンドや番線が芯材の材軸方向にずれることがあるという問題を生じていた。
【0011】
かかる問題は、結束の緩みや袋体の損傷を招くとともに、緩みが生じた箇所や損傷箇所からグラウト材が漏出し、注入圧が低下して袋体を予定通りに膨張させることができないという事態を招く。
【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、袋体の内圧が大きくなっても袋体端部からのグラウト材の漏出を防止可能な袋体固定具を提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る袋体固定具は請求項1に記載したように、チューブ状に形成された袋体の端部を該袋体に挿通配置された芯材に固定することでグラウト材が注入される内部空間が前記袋体に形成されるようになっている袋体固定具において、
前記芯材が挿通され該芯材に固着される内スリーブと、該内スリーブと同軸に配置され該内スリーブとの間に前記袋体の端部周縁が挿通される外スリーブとを備えるとともに、前記内スリーブを、前記芯材に固着される内スリーブ本体と、前記袋体の配置側と反対の側にて前記内スリーブ本体から径方向外方に延設され前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側と反対の側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる移動制限部とで構成し、前記袋体の配置側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体が配置された側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部材を備えたものである。
【0014】
また、本発明に係る袋体固定具は、チューブ状に形成された袋体の端部を該袋体に挿通配置された芯材に固定することでグラウト材が注入される内部空間が前記袋体に形成されるようになっている袋体固定具において、
前記芯材が挿通され該芯材に固着される内スリーブと、該内スリーブと同軸に配置され該内スリーブとの間に前記袋体の端部周縁が挿通される外スリーブと、前記袋体の配置側と反対の側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側と反対の側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる移動制限部材とを備えたものである。
【0015】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記移動制限部材をスリーブ状に形成してその内周面に雌ネジを形成するとともに該雌ネジと螺合する雄ネジを前記内スリーブの外周面に形成したものである。
【0016】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記内スリーブを、前記芯材に固着される内スリーブ本体と、前記袋体が配置された側にて前記内スリーブ本体から径方向外方に延設され前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部とで構成したものである。
【0017】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記袋体の配置側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体が配置された側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部材を備えたものである。
【0018】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記押圧保持部材をスリーブ状に形成してその内周面に雌ネジを形成するとともに該雌ネジと螺合する雄ネジを前記内スリーブの外周面に形成したものである。
【0019】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記内スリーブの外周面側と内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔を該内スリーブに設けたものである。
【0020】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記内スリーブの内部空間として、該内スリーブの材軸と平行でかつ互いに平行な2本の挿通孔を設けるとともに、その一方を前記芯材が挿通される芯材挿通孔、他方を前記袋体の内部空間にグラウト材を注入するグラウト注入パイプが挿通されるパイプ挿通孔としたものである。
【0021】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記芯材をPC鋼より線としたものである。
【0022】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記芯材のうち、前記内スリーブから延びる先端露出部分に被覆される芯材被覆用キャップを備えたものである。
【0023】
本発明に係る袋体固定具を用いて袋体の端部を芯材に固定するには、まず、芯材を内スリーブに挿通した上、袋体が膨張したときの該袋体の端部位置に合わせて、内スリーブを芯材に固着する。
【0024】
次に、内スリーブと同軸になるように外スリーブを配置するとともに、外スリーブと内スリーブとの間に袋体の端部周縁を挿通する。外スリーブを配置するにあたっては例えば、外スリーブの内側に袋体の端部周縁を予め通した状態で該袋体に芯材を挿通し、かかる状態で芯材に固着された内スリーブに重なるように、袋体の端部周縁とともに外スリーブを芯材の材軸方向に移動させればよい。
【0025】
次に、外スリーブの端部開口のうち、袋体の配置側と反対の側の端部開口が、内スリーブの移動制限部又は内スリーブに予め取り付けられた移動制限部材に形成された当接面に袋体の端部周縁を介して当接されるように、換言すれば、外スリーブの端部開口と内スリーブの移動制限部又は内スリーブに取り付けられた移動制限部材に形成されている当接面との間に袋体の端部周縁が挟み込まれるように、袋体の端部周縁の上から外スリーブを移動制限部又は移動制限部材の方向に押圧し、次いで、その状態で外スリーブが動かないように該外スリーブを保持する。
【0026】
このようにすれば、地山に形成された補強材挿入孔に袋体を挿入した状態で該袋体の内部空間にグラウト材を注入する際、注入圧による袋体の膨張に伴って、外スリーブが芯材の材軸方向に沿って袋体の中央側から端部側へと移動しようとするが、外スリーブは、内スリーブの移動制限部又は内スリーブに取り付けられた移動制限部材を介して芯材から反力を受け、その反力によって外スリーブの移動が制限されるとともに、外スリーブの端部開口と内スリーブの移動制限部又は内スリーブに取り付けられた移動制限部材との間に挟み込まれていた袋体の端部周縁は、さらに強固に挟み込まれる。
【0027】
すなわち、袋体の端部と芯材とは、グラウト材の注入圧が大きければ大きいほど、より強く固定されることとなり、かくしてグラウト材の注入圧が高くなっても、袋体の端部周縁が芯材から外れるおそれがなくなり、グラウト材の漏出を未然に防止することが可能となる。
【0028】
移動制限部材の構造や形態あるいは内スリーブへの取付け構造は任意であるが、例えばスリーブ状に形成してその内周面に雌ネジを形成するとともに該雌ネジと螺合する雄ネジを前記内スリーブの外周面に形成した構成とすることができる。
【0029】
外スリーブは、上述したようにグラウト材の注入圧が大きければ大きいほど、袋体の中央側から端部側へと移動しようとし、袋体の端部周縁を介して移動制限部又は移動制限部材の当接面に強く押圧され、それによって、袋体の端部は、外スリーブと移動制限部又は移動制限部材との間により強く狭着されるが、グラウト注入の開始前後は、グラウト材の注入圧が低いため、外スリーブが逆方向、すなわち袋体の配置側に移動し、袋体と芯材との固着が緩んでしまう懸念がある。
【0030】
そのため、既に述べた通り、外スリーブを袋体の端部周縁の上から移動制限部又は移動制限部材の方向に押圧された状態を保持する必要があるが、そのための具体的手段としては、移動制限部材を用いた構成であれば、例えば従来用いられていた番線や拘束バンドあるいはテープなどを用いて、外スリーブを適宜芯材に固定する構成とすることができる。
【0031】
ここで、前記内スリーブを、前記芯材に固着される内スリーブ本体と、前記袋体が配置された側にて前記内スリーブ本体から径方向外方に延設され前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部とで構成し、又は前記袋体の配置側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体が配置された側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部材を備えた構成とすれば、袋体の端部周縁を介した外スリーブの移動制限部又は移動制限部材への押圧状態を確実に保持することが可能となる。
【0032】
押圧保持部材の構造や形態あるいは内スリーブへの取付け構造は任意であるが、例えばスリーブ状に形成してその内周面に雌ネジを形成するとともに該雌ネジと螺合する雄ネジを前記内スリーブの外周面に形成した構成とすることができる。
【0033】
外スリーブが押圧される対象とその押圧を保持する構成との組み合わせは、移動制限部材と番線等の従来手段、移動制限部材と押圧保持部、移動制限部と押圧保持部材、及び移動制限部材と押圧保持部材の計4つであるが、移動制限部材と押圧保持部、移動制限部と押圧保持部材、又は移動制限部材と押圧保持部材との組み合わせとしたならば、押圧を保持する力あるいは押圧力の調整を容易に行うことができるとともに、これらの組み合わせのうち、移動制限部材と押圧保持部材との組み合わせを採用したならば、さらに内スリーブの位置、すなわち芯材に対する袋体の端部位置を容易に調整することが可能となり、内スリーブを芯材に固着する際の作業精度が緩和される。
【0034】
内スリーブを芯材に固定する手段は任意であり、例えば内スリーブと芯材との隙間に楔を打ち込む、内スリーブの外周面から材軸直交方向に向けて先端が芯材の周面にねじ込まれるように例えば4本のネジを90゜ごとにあるいは3本のネジを120゜ごとに貫通させるといった方法を採用することができるが、前記内スリーブの外周面側と内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔を該内スリーブに設けた場合においては、接着剤充填孔を介して内スリーブの内周面と芯材の周面との隙間にエポキシ樹脂等の接着剤を充填することにより、内スリーブを芯材に強固に固着することが可能となる。
【0035】
本発明は、袋体にグラウト材を注入するためのグラウト注入パイプを芯材と兼用する場合及び個別に設ける場合のいずれについても適用が可能であるが、後者の場合においては、前記内スリーブの内部空間を、該内スリーブの材軸と平行でかつ互いに平行な2本の挿通孔で構成するとともに、その一方を前記芯材が挿通される芯材挿通孔、他方を前記袋体の内部空間にグラウト材を注入するグラウト注入パイプが挿通されるパイプ挿通孔とすればよい。
【0036】
また、芯材とグラウト注入パイプとを個別に設ける場合には、芯材を特にPC鋼より線とすることが可能である。
【0037】
ここで、前記芯材のうち、前記内スリーブから延びる先端露出部分に被覆される芯材被覆用キャップを備えた構成とすれば、PC鋼より線の隙間からグラウト材が漏出するのを未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0038】
図1】本実施形態に係る袋体固定具の材軸に沿った断面図。
図2】本実施形態に係る袋体固定具の全体斜視図。
図3】本実施形態に係る袋体固定具の組立手順を示した説明図。
図4】本実施形態に係る袋体固定具を用いて組み立てられた地山補強材とその施工状況を示した図。
図5】変形例に係る袋体固定具の材軸に沿った断面図。
図6】別の変形例に係る袋体固定具の材軸に沿った断面図。
図7】別の変形例に係る袋体固定具の図であり、(a)は材軸に沿った断面図、(b)はA−A線方向から見た内スリーブの矢視図。
図8】別の変形例に係る袋体固定具の断面図。
【発明を実施するための形態】
【0039】
以下、本発明に係る袋体固定具の実施の形態について、添付図面を参照して説明する。
【0040】
図1は、本実施形態に係る袋体固定具1をその材軸に沿って示した断面図、図2は同じく全体斜視図である。これらの図でわかるように、本実施形態に係る袋体固定具1は、チューブ状に形成された袋体2の各端部3を該袋体に挿通配置されPC鋼より線で構成された芯材4にそれぞれ固定するようになっているとともに、グラウト材が注入される内部空間5が袋体2に形成されるようになっている。
【0041】
袋体固定具1は、芯材4が挿通され該芯材に固着される内スリーブ6と、該内スリーブと同軸に配置され該内スリーブとの間に袋体2の端部周縁7が挿通される外スリーブ8とを備える。
【0042】
内スリーブ6及び外スリーブ8は、例えばステンレス鋼で構成することができる。
【0043】
内スリーブ6は、芯材4に固着される内スリーブ本体9と、袋体2が配置された側にて内スリーブ本体9から径方向外方に延設された押圧保持部10とで構成してあり、押圧保持部10には、外スリーブ8の端部開口のうち、袋体2の配置側の端部開口21が袋体2の端部周縁7を介して当接されるテーパ状の当接面22を形成してある。
【0044】
ここで、内スリーブ6には、押圧保持部10の外周面側とスリーブ本体9の内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔28を設けてあり、該接着剤充填孔を介してスリーブ本体9の内周面と芯材4の周面との隙間にエポキシ樹脂等の接着剤を充填できるようになっている。
【0045】
一方、袋体固定具1は、袋体2の配置側と反対の側にて内スリーブ本体9の外周面に着脱自在に取り付けられるスリーブ状の移動制限部材23を備えており、該移動制限部材には、外スリーブ8の端部開口のうち、袋体2の配置側と反対の側の端部開口24が袋体2の端部周縁7を介して当接されるテーパ状の当接面25を形成してある。
【0046】
移動制限部材23は、その内周面に雌ネジ26を形成してあり、内スリーブ本体9の外周面に形成された雄ネジ27と螺合するようになっている。
【0047】
本実施形態に係る袋体固定具1を用いて袋体2の端部3を芯材4に固定するには、まず図3(a)に示すように、芯材4を内スリーブ6に挿通し、該内スリーブを袋体2が膨張したときの該袋体の端部位置に位置合わせした後、接着剤充填孔28を介してスリーブ本体9の内周面と芯材4の周面との隙間にエポキシ樹脂等の接着剤を充填することで、内スリーブ6を芯材4に固着する。
【0048】
次に、同図(b)に示すように、内スリーブ6と同軸になるように外スリーブ8を配置するとともに、外スリーブ8と内スリーブ6との間に袋体2の端部周縁7を挿通する。外スリーブ8を配置するにあたっては例えば、外スリーブ8の内側に袋体2の端部周縁7を予め通した状態で該袋体に芯材4を挿通し、かかる状態で袋体2の端部周縁7とともに外スリーブ8を芯材4の材軸方向に沿って内スリーブ6の方向に移動させて内スリーブ6に重なるようにればよい。
【0049】
次に、同図(c)に示すように、内スリーブ6のスリーブ本体9に移動制限部材23を取り付けるとともに、外スリーブ8の端部開口21,24が、内スリーブ6の押圧保持部10に形成された当接面22と移動制限部材23に形成された当接面25に袋体2の端部周縁7を介してそれぞれ当接されるように、換言すれば、外スリーブ8の端部開口21と押圧保持部10に形成された当接面22との間、及び外スリーブ8の端部開口24と移動制限部材23に形成された当接面25との間に袋体2の端部周縁7がそれぞれ挟み込まれるように移動制限部材23を内スリーブ6のスリーブ本体9にねじ込む。
【0050】
このようにすると、外スリーブ8は、袋体2の端部周縁7の上から移動制限部材23の方向に押圧されるとともに、押圧保持部10によってその押圧状態が保持される。
【0051】
そのため、上述した手順で芯材4に袋体2の端部3が固定されてなる図4(a)の地山補強材41を同図(b)に示すように地山42に形成された補強材挿入孔43に挿入し、かかる状態で該袋体の内部空間5にグラウト材を注入すると、注入圧による袋体2の膨張に伴って、外スリーブ8が芯材4の材軸方向に沿って袋体2の中央側から端部側へと移動しようとするが、外スリーブ8は、内スリーブ6に取り付けられた移動制限部材23を介して芯材4から反力を受け、その反力によって外スリーブ8の移動が制限されるとともに、外スリーブ8の端部開口24と移動制限部材23の当接面25との間に挟み込まれていた袋体2の端部周縁5は、さらに強固に挟み込まれる。また、外スリーブ8の移動制限部材23への押圧状態は、グラウト材の注入開始前から終了に至るまで、押圧保持部10によって保持される。
【0052】
以上説明したように、本実施形態に係る袋体固定具1によれば、袋体2の中央側から端部側への外スリーブ8の移動が、移動制限部材23によって制限されるとともに、外スリーブ8の端部開口24と移動制限部材23の当接面25との間に挟み込まれていた袋体2の端部周縁5が、グラウト注入作業が進行するにつれてより強固に挟み込まれるため、グラウト材の注入圧が高くなっても、袋体2の端部周縁7が芯材4から外れるおそれがなくなり、かくしてグラウト材の漏出を未然に防止することが可能となる。
【0053】
また、本実施形態に係る袋体固定具1によれば、外スリーブ8の移動制限部材23への押圧状態が押圧保持部10によって確実に保持されるため、グラウト注入の開始前後において、グラウト材の注入圧が低いことにより、外スリーブ8が逆方向、すなわち袋体2の配置側に移動し、袋体2と芯材4との固着が緩んでしまうおそれがなくなる。
【0054】
また、本実施形態に係る袋体固定具1によれば、移動制限部材23を内スリーブ本体9に螺合するように構成したので、外スリーブ8の移動制限部材23への押圧力やそれを保持する力を容易に調整することが可能となる。
【0055】
また、本実施形態に係る袋体固定具1によれば、内スリーブ6の外周面側と内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔28を該内スリーブに設け、該接着剤充填孔を介して内スリーブ6の内周面と芯材4の周面との隙間にエポキシ樹脂等の接着剤を充填するようにしたので、内スリーブ6をPC鋼より線で構成された芯材4に強固に固着することができるとともに、その結果として、芯材4の引張強度特性を十分に発揮させた地山補強が可能となる。
【0056】
本実施形態では、内スリーブ本体9及び該内スリーブ本体から径方向外方に延設された押圧保持部10とで内スリーブ6を構成したが、内スリーブ6に代えて、図5に示すように材軸方向にほぼ同一の断面を有し中央近傍に接着剤充填孔54が形成された内スリーブ51を採用し、該内スリーブのうち、袋体2が配置された側と反対側に移動制限部材23を螺合するとともに、押圧保持部10に代えて、押圧保持部材52を袋体2が配置された側で内スリーブ51に着脱自在に取り付けるように構成してもよい。
【0057】
押圧保持部材52は、外スリーブ8の端部開口のうち、袋体2の配置側の端部開口21が袋体2の端部周縁7を介して当接されるテーパ状の当接面53を形成してあるとともに、内スリーブ51の外周面に形成された雄ネジに螺合される雌ネジを内周面に形成してある。
【0058】
かかる構成によれば、移動制限部材23との協働作用によって外スリーブ8の移動制限部材23への押圧力やそれを保持する力をさらに容易に調整することができるとともに、芯材4に対する内スリーブ51の位置、すなわち袋体2の端部位置を容易に調整することが可能となり、内スリーブ51を芯材4に固着する際の作業精度が緩和される。
【0059】
なお、本変形例においては、押圧保持部材52を操作することによって袋体2の設置側から外スリーブ8の移動制限部材23への押圧力やそれを保持する力を調整することができるが、その他の構成及び作用効果については上述した実施形態とほぼ同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0060】
また、本実施形態では、外スリーブが押圧される対象とその押圧を保持する構成として、移動制限部材と押圧保持部との組み合わせで構成したが、上述の変形例のように移動制限部材と押圧保持部材との組み合わせで構成してもよいし、さらに移動制限部と押圧保持部材との組み合わせで構成してもかまわない。
【0061】
図6はかかる変形例を示したものであり、同変形例に係る袋体固定具は、芯材4が挿通され該芯材に固着される内スリーブ61と、該内スリーブと同軸に配置され該内スリーブとの間に袋体2の端部周縁7が挿通される外スリーブ8とを備えるとともに、内スリーブ61を、芯材4に固着される内スリーブ本体63と、袋体2が配置された側と反対の側にて内スリーブ本体63から径方向外方に延設された移動制限部62とで構成してあり、移動制限部62には、外スリーブ8の端部開口のうち、袋体2が配置される側と反対側の端部開口24が袋体2の端部周縁7を介して当接されるテーパ状の当接面64を形成してある。
【0062】
ここで、内スリーブ61には、移動制限部62の外周面側とスリーブ本体63の内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔28を設けてあり、該接着剤充填孔を介してスリーブ本体63の内周面と芯材4の周面との隙間にエポキシ樹脂等の接着剤を充填できるようになっている。
【0063】
一方、変形例に係る袋体固定具は、袋体2の配置側にて内スリーブ本体63の外周面に押圧保持部材52を着脱自在に取り付けるようになっており、該押圧保持部材には上述したように外スリーブ8の端部開口のうち、袋体2の配置側の端部開口21が袋体2の端部周縁7を介して当接される当接面53を形成してある。
【0064】
本変形例に係る袋体固定具を用いて袋体2の端部3を芯材4に固定するには図3で説明した手順と同様、まず、芯材4を内スリーブ61に挿通し、該内スリーブを袋体2が膨張したときの該袋体の端部位置に位置合わせした後、接着剤充填孔28を介してスリーブ本体63の内周面と芯材4の周面との隙間にエポキシ樹脂等の接着剤を充填することで、内スリーブ61を芯材4に固着する。
【0065】
次に、内スリーブ61と同軸になるように外スリーブ8を配置するとともに、外スリーブ8と内スリーブ61との間に袋体2の端部周縁7を挿通する。
【0066】
次に、内スリーブ61のスリーブ本体63に押圧保持部材52を取り付けるとともに、外スリーブ8の端部開口21,24が、押圧保持部材52に形成された当接面53と移動制限部62に形成された当接面64に袋体2の端部周縁7を介してそれぞれ当接されるように、換言すれば、外スリーブ8の端部開口21と押圧保持部材52に形成された当接面53との間、及び外スリーブ8の端部開口24と移動制限部62に形成された当接面64との間に袋体2の端部周縁7がそれぞれ挟み込まれるように押圧保持部材52を内スリーブ61のスリーブ本体63にねじ込む。
【0067】
このようにすると、外スリーブ8は、袋体2の端部周縁7の上から移動制限部62の方向に押圧されるとともに、押圧保持部材52によってその押圧状態が保持される。
【0068】
以下、他の構成や作用効果については上述した実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0069】
また、本実施形態及びその変形例では、外スリーブが押圧される対象とその押圧を保持する構成として、移動制限部材と押圧保持部との組み合わせ、移動制限部材と押圧保持部材との組み合わせ、又は移動制限部と押圧保持部材との組み合わせで構成したが、押圧保持部や押圧保持部材についてはこれらを省略し、代わりに番線、拘束バンド、テープ等の従来手段によって、袋体の端部周縁を介した外スリーブの移動制限部又は移動制限部材への押圧状態を保持するようにしてもかまわない。
【0070】
すなわち、図5及び図6に係る各変形例から押圧保持部材52をそれぞれ省略するとともに、テープ等を用いて袋体2の端部周縁7を介した外スリーブ8の移動制限部材23又は移動制限部62への押圧状態を保持するようにしてもかまわない。
【0071】
また、本実施形態では、袋体2に形成された内部空間5へのグラウト材注入について詳細に説明しなかったが、図7に示すように、材軸と平行でかつ互いに平行な2本の挿通孔70,71が内部空間として形成され、挿通孔70が芯材4を挿通させるための芯材挿通孔、挿通孔71がグラウト注入パイプ72を挿通させるためのパイプ挿通孔として構成されてなる内スリーブ6′を採用すれば、袋体2に形成された内部空間5にグラウト材を注入することができる。
【0072】
ここで、内スリーブ6′は、芯材4に固着される内スリーブ本体9′と、袋体2が配置された側にて内スリーブ本体9′から径方向外方に延設された押圧保持部10′とで構成してあり、押圧保持部10′には、外スリーブ8の端部開口のうち、袋体2の配置側の端部開口21が袋体2の端部周縁7を介して当接される当接面22を形成してあるとともに、内スリーブ6′には、押圧保持部10′の外周面側とスリーブ本体9′に形成された挿通孔70の内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔28′を設けてあり、該接着剤充填孔を介して挿通孔70の内周面と芯材4の周面との隙間にエポキシ樹脂等の接着剤を充填できるようになっている。
【0073】
以下、他の構成や作用効果については上述した実施形態と同様であるので、ここではその説明を省略する。
【0074】
また、本実施形態では特に言及しなかったが、図8に示すように、芯材4のうち、内スリーブ6aから延びる先端露出部分に被覆される芯材被覆用キャップ101を備えるようにしてもよい。
【0075】
同図に示した芯材被覆用キャップ101は有底円筒状をなすとともに、その内面に形成された雌ネジ104を、内スリーブ6aを構成するスリーブ本体9aの一端に形成された雄ネジ102に螺合することにより、芯材4の先端露出部分を水密に覆うことができるようになっている。
【0076】
芯材4は、複数本のPC鋼線を撚り合わせてなるものであって、かかるPC鋼線同士には隙間が形成されており、グラウト材の粘性その他の状況によっては、PC鋼線同士の隙間からグラウト材がわずかに漏出する懸念があるが、上述の変形例によれば、かかる場合であっても、グラウト材の漏出を完全に防止することが可能となる。
【符号の説明】
【0077】
1 袋体固定具
2 袋体
3 端部
4 芯材
5 内部空間
6,51,61,6′,6a
内スリーブ
7 端部周縁
8 外スリーブ
9,63,9′,9a
スリーブ本体
10,10′ 押圧保持部
21,24 外スリーブの端部開口
22,25,53,64
当接面
23 移動制限部材
26 雌ネジ
27 雄ネジ
28,54,28′
接着剤充填孔
52 押圧保持部材
62 移動制限部
70 芯材挿通孔
71 パイプ挿通孔
72 グラウト注入パイプ
101 芯材被覆用キャップ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8