【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、袋体の内圧が大きくなっても袋体端部からのグラウト材の漏出を防止可能な袋体固定具を提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る袋体固定具は請求項1に記載したように、チューブ状に形成された袋体の端部を該袋体に挿通配置された芯材に固定することでグラウト材が注入される内部空間が前記袋体に形成されるようになっている袋体固定具において、
前記芯材が挿通され該芯材に固着される内スリーブと、該内スリーブと同軸に配置され該内スリーブとの間に前記袋体の端部周縁が挿通される外スリーブとを備えるとともに、前記内スリーブを、前記芯材に固着される内スリーブ本体と、前記袋体の配置側と反対の側にて前記内スリーブ本体から径方向外方に延設され前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側と反対の側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる移動制限部とで構成し
、前記袋体の配置側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体が配置された側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部材を備えたものである。
【0014】
また、本発明に係る袋体固定具は、チューブ状に形成された袋体の端部を該袋体に挿通配置された芯材に固定することでグラウト材が注入される内部空間が前記袋体に形成されるようになっている袋体固定具において、
前記芯材が挿通され該芯材に固着される内スリーブと、該内スリーブと同軸に配置され該内スリーブとの間に前記袋体の端部周縁が挿通される外スリーブと、前記袋体の配置側と反対の側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側と反対の側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる移動制限部材とを備えたものである。
【0015】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記移動制限部材をスリーブ状に形成してその内周面に雌ネジを形成するとともに該雌ネジと螺合する雄ネジを前記内スリーブの外周面に形成したものである。
【0016】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記内スリーブを、前記芯材に固着される内スリーブ本体と、前記袋体が配置された側にて前記内スリーブ本体から径方向外方に延設され前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部とで構成したものである。
【0017】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記袋体の配置側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体が配置された側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部材を備えたものである。
【0018】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記押圧保持部材をスリーブ状に形成してその内周面に雌ネジを形成するとともに該雌ネジと螺合する雄ネジを前記内スリーブの外周面に形成したものである。
【0019】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記内スリーブの外周面側と内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔を該内スリーブに設けたものである。
【0020】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記内スリーブの内部空間として、該内スリーブの材軸と平行でかつ互いに平行な2本の挿通孔を設けるとともに、その一方を前記芯材が挿通される芯材挿通孔、他方を前記袋体の内部空間にグラウト材を注入するグラウト注入パイプが挿通されるパイプ挿通孔としたものである。
【0021】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記芯材をPC鋼より線としたものである。
【0022】
また、本発明に係る袋体固定具は、前記芯材のうち、前記内スリーブから延びる先端露出部分に被覆される芯材被覆用キャップを備えたものである。
【0023】
本発明に係る袋体固定具を用いて袋体の端部を芯材に固定するには、まず、芯材を内スリーブに挿通した上、袋体が膨張したときの該袋体の端部位置に合わせて、内スリーブを芯材に固着する。
【0024】
次に、内スリーブと同軸になるように外スリーブを配置するとともに、外スリーブと内スリーブとの間に袋体の端部周縁を挿通する。外スリーブを配置するにあたっては例えば、外スリーブの内側に袋体の端部周縁を予め通した状態で該袋体に芯材を挿通し、かかる状態で芯材に固着された内スリーブに重なるように、袋体の端部周縁とともに外スリーブを芯材の材軸方向に移動させればよい。
【0025】
次に、外スリーブの端部開口のうち、袋体の配置側と反対の側の端部開口が、内スリーブの移動制限部又は内スリーブに予め取り付けられた移動制限部材に形成された当接面に袋体の端部周縁を介して当接されるように、換言すれば、外スリーブの端部開口と内スリーブの移動制限部又は内スリーブに取り付けられた移動制限部材に形成されている当接面との間に袋体の端部周縁が挟み込まれるように、袋体の端部周縁の上から外スリーブを移動制限部又は移動制限部材の方向に押圧し、次いで、その状態で外スリーブが動かないように該外スリーブを保持する。
【0026】
このようにすれば、地山に形成された補強材挿入孔に袋体を挿入した状態で該袋体の内部空間にグラウト材を注入する際、注入圧による袋体の膨張に伴って、外スリーブが芯材の材軸方向に沿って袋体の中央側から端部側へと移動しようとするが、外スリーブは、内スリーブの移動制限部又は内スリーブに取り付けられた移動制限部材を介して芯材から反力を受け、その反力によって外スリーブの移動が制限されるとともに、外スリーブの端部開口と内スリーブの移動制限部又は内スリーブに取り付けられた移動制限部材との間に挟み込まれていた袋体の端部周縁は、さらに強固に挟み込まれる。
【0027】
すなわち、袋体の端部と芯材とは、グラウト材の注入圧が大きければ大きいほど、より強く固定されることとなり、かくしてグラウト材の注入圧が高くなっても、袋体の端部周縁が芯材から外れるおそれがなくなり、グラウト材の漏出を未然に防止することが可能となる。
【0028】
移動制限部材の構造や形態あるいは内スリーブへの取付け構造は任意であるが、例えばスリーブ状に形成してその内周面に雌ネジを形成するとともに該雌ネジと螺合する雄ネジを前記内スリーブの外周面に形成した構成とすることができる。
【0029】
外スリーブは、上述したようにグラウト材の注入圧が大きければ大きいほど、袋体の中央側から端部側へと移動しようとし、袋体の端部周縁を介して移動制限部又は移動制限部材の当接面に強く押圧され、それによって、袋体の端部は、外スリーブと移動制限部又は移動制限部材との間により強く狭着されるが、グラウト注入の開始前後は、グラウト材の注入圧が低いため、外スリーブが逆方向、すなわち袋体の配置側に移動し、袋体と芯材との固着が緩んでしまう懸念がある。
【0030】
そのため、既に述べた通り、外スリーブを袋体の端部周縁の上から移動制限部又は移動制限部材の方向に押圧された状態を保持する必要があるが、そのための具体的手段としては、
移動制限部材を用いた構成であれば、例えば従来用いられていた番線や拘束バンドあるいはテープなどを用いて、外スリーブを適宜芯材に固定する構成とすることができる。
【0031】
ここで、前記内スリーブを、前記芯材に固着される内スリーブ本体と、前記袋体が配置された側にて前記内スリーブ本体から径方向外方に延設され前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体の配置側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部とで構成し、又は前記袋体の配置側にて前記内スリーブの外周面に着脱自在に取り付けられ前記外スリーブの端部開口のうち、前記袋体が配置された側の端部開口が前記袋体の端部周縁を介して当接される当接面が形成されてなる押圧保持部材を備えた構成とすれば、袋体の端部周縁を介した外スリーブの移動制限部又は移動制限部材への押圧状態を確実に保持することが可能となる。
【0032】
押圧保持部材の構造や形態あるいは内スリーブへの取付け構造は任意であるが、例えばスリーブ状に形成してその内周面に雌ネジを形成するとともに該雌ネジと螺合する雄ネジを前記内スリーブの外周面に形成した構成とすることができる。
【0033】
外スリーブが押圧される対象とその押圧を保持する構成との組み合わせは、
移動制限部材と番線等の従来手段、移動制限部材と押圧保持部、移動制限部と押圧保持部材、及び移動制限部材と押圧保持部材の計4つであるが、移動制限部材と押圧保持部、移動制限部と押圧保持部材、又は移動制限部材と押圧保持部材との組み合わせとしたならば、押圧を保持する力あるいは押圧力の調整を容易に行うことができるとともに、これらの組み合わせのうち、移動制限部材と押圧保持部材との組み合わせを採用したならば、さらに内スリーブの位置、すなわち芯材に対する袋体の端部位置を容易に調整することが可能となり、内スリーブを芯材に固着する際の作業精度が緩和される。
【0034】
内スリーブを芯材に固定する手段は任意であり、例えば内スリーブと芯材との隙間に楔を打ち込む、内スリーブの外周面から材軸直交方向に向けて先端が芯材の周面にねじ込まれるように例えば4本のネジを90゜ごとにあるいは3本のネジを120゜ごとに貫通させるといった方法を採用することができるが、前記内スリーブの外周面側と内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔を該内スリーブに設けた場合においては、接着剤充填孔を介して内スリーブの内周面と芯材の周面との隙間にエポキシ樹脂等の接着剤を充填することにより、内スリーブを芯材に強固に固着することが可能となる。
【0035】
本発明は、袋体にグラウト材を注入するためのグラウト注入パイプを芯材と兼用する場合及び個別に設ける場合のいずれについても適用が可能であるが、後者の場合においては、前記内スリーブの内部空間を、該内スリーブの材軸と平行でかつ互いに平行な2本の挿通孔で構成するとともに、その一方を前記芯材が挿通される芯材挿通孔、他方を前記袋体の内部空間にグラウト材を注入するグラウト注入パイプが挿通されるパイプ挿通孔とすればよい。
【0036】
また、芯材とグラウト注入パイプとを個別に設ける場合には、芯材を特にPC鋼より線とすることが可能である。
【0037】
ここで、前記芯材のうち、前記内スリーブから延びる先端露出部分に被覆される芯材被覆用キャップを備えた構成とすれば、PC鋼より線の隙間からグラウト材が漏出するのを未然に防止することができる。