【課題を解決するための手段】
【0012】
本発明は、上述した事情を考慮してなされたもので、袋体の内圧が大きくなっても袋体端部からのグラウト材の漏出を防止可能な地山補強用袋体を提供することを目的とする。
【0013】
上記目的を達成するため、本発明に係る地山補強用袋体は請求項1に記載したように、芯材が挿通配置できるようにチューブ状に形成され端部が前記芯材に固定されることで内部空間にグラウト材を注入できるようになっている地山補強用袋体において、
袋本体と該袋本体の端部に取り付けられた固定部材とで構成するとともに該固定部材を前記袋本体の端部周縁が外周面に当接される袋側スリーブと該袋側スリーブとの間に前記袋本体の端部周縁を狭着するかしめ部材とで構成し、前記袋側スリーブを、その内側に前記芯材が挿通できるように構成
し、前記芯材が挿通され該芯材に固着される芯材側スリーブを備えるとともに、該芯材側スリーブに前記袋側スリーブを同軸かつ着脱自在に取り付けることができるように、前記芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに螺合される雌ネジを前記袋側スリーブの内周面に形成したものである。
【0016】
また、本発明に係る地山補強用袋体は、前記袋側スリーブの移動を制限する移動制限部を前記芯材側スリーブに突設したものである。
【0017】
また、本発明に係る地山補強用袋体は
請求項3に記載したように、芯材が挿通配置できるようにチューブ状に形成され端部が前記芯材に固定されることで内部空間にグラウト材を注入できるようになっている地山補強用袋体において、
袋本体と該袋本体の端部に取り付けられた固定部材とで構成するとともに該固定部材を前記袋本体の端部周縁が外周面に当接される袋側スリーブと該袋側スリーブとの間に前記袋本体の端部周縁を狭着するかしめ部材とで構成し、前記袋側スリーブを、その内側に前記芯材が挿通できるように構成し、前記芯材が挿通され該芯材に固着される芯材側スリーブを備えるとともに、該芯材側スリーブに前記袋側スリーブを同軸かつ着脱自在に取り付けることができるように、前記芯材側スリーブの一端に形成された雄ネジに螺合され前記袋側スリーブの移動を制限する移動制限部材を備えるとともに、該移動制限部材に前記袋側スリーブを押圧する押圧保持部を前記芯材側スリーブの他端に突設したものである。
【0018】
また、本発明に係る地山補強用袋体は請求項
4に記載したように、芯材が挿通配置できるようにチューブ状に形成され各端が前記芯材にそれぞれ固定されることで内部空間にグラウト材を注入できるようになっている地山補強用袋体において、
袋本体と、
前記芯材が挿通され該芯材に固着されるとともに外周面に雄ネジが形成された第1の芯材側スリーブと、
前記袋本体の一端周縁が外周面に当接される第1の袋側スリーブ及び該第1の袋側スリーブとの間に前記袋本体の一端周縁を狭着する第1のかしめ部材からなり、前記第1の芯材側スリーブの雄ネジに螺合される雌ネジを前記第1の袋側スリーブの内周面に形成してなる第1の固定部材と、
前記芯材が挿通され該芯材に固着されるとともに外周面に雄ネジが形成された第2の芯材側スリーブと、
前記袋本体の他端周縁が外周面に当接される第2の袋側スリーブ及び該第2の袋側スリーブとの間に前記袋本体の他端周縁を狭着する第2のかしめ部材からなり、前記第2の芯材側スリーブの雄ネジに螺合される雌ネジを前記第2の袋側スリーブの内周面に形成してなる第2の固定部材とを備え、
前記芯材の端部のうち、前記袋本体が挿入される側を挿入端部とするとともに、前記第1の芯材側スリーブ及び前記第2の芯材側スリーブのうち、前記挿入端部から離隔した位置に配置される芯材側スリーブを前記第1の芯材側スリーブ、前記挿入端部に近接した位置に配置される芯材側スリーブを前記第2の芯材側スリーブとし、前記第1の袋側スリーブをその内径が前記第2の芯材側スリーブの外径よりも大きくなるように構成したものである。
【0019】
また、本発明に係る地山補強用袋体は、前記第1の芯材側スリーブの端部のうち、前記挿入端部の反対側に位置する端部に前記袋本体の移動を制限する移動制限部を突設し、又は該反対側端部に形成された雄ネジに螺合され前記袋本体の移動を制限する移動制限部材を備えたものである。
【0020】
また、本発明に係る地山補強用袋体は、前記第2の芯材側スリーブの端部のうち、前記挿入端部と同じ側に位置する端部に形成された雄ネジに螺合され前記袋本体の移動を制限する移動制限部材を備えるとともに、該移動制限部材に前記第2の袋側スリーブを押圧する押圧保持部を前記第2の芯材側スリーブの他端に突設したものである。
【0021】
また、本発明に係る地山補強用袋体は請求項
7に記載したように、芯材が挿通配置できるようにチューブ状に形成され各端が前記芯材にそれぞれ固定されることで内部空間にグラウト材を注入できるようになっている地山補強用袋体において、
袋本体と、
前記芯材が挿通され該芯材に固着されるとともに外周面に雄ネジが形成された第1の芯材側スリーブと、
前記袋本体の一端周縁が外周面に当接される第1の袋側スリーブ及び該第1の袋側スリーブとの間に前記袋本体の一端周縁を狭着する第1のかしめ部材からなり、前記第1の芯材側スリーブの雄ネジに螺合される雌ネジを前記第1の袋側スリーブの内周面に形成してなる第1の固定部材と、
前記芯材が挿通され該芯材に固着されるとともに外周面に雄ネジが形成された第2の芯材側スリーブと、
前記袋本体の他端周縁が外周面に当接される第2の袋側スリーブ及び該第2の袋側スリーブとの間に前記袋本体の他端周縁を狭着する第2のかしめ部材からなり、前記第2の芯材側スリーブの雄ネジに螺合される雌ネジを前記第2の袋側スリーブの内周面に形成してなる第2の固定部材とを備え、
前記第1の芯材側スリーブに形成された雄ネジ及び前記第2の芯材側スリーブに形成された雄ネジのうち、一方を右ネジ、他方を左ネジとしたものである。
【0022】
また、本発明に係る地山補強用袋体は、前記第1の芯材側スリーブの端部のうち、前記袋本体が配置される側と反対側に位置する端部に前記袋本体の移動を制限する移動制限部を突設し若しくは該端部に形成された雄ネジに螺合され前記袋本体の移動を制限する移動制限部材を備え、又は前記第2の芯材側スリーブの端部のうち、前記袋本体が配置される側と反対側に位置する端部に前記袋本体の移動を制限する移動制限部を突設し若しくは該端部に形成された雄ネジに螺合され前記袋本体の移動を制限する移動制限部材を備えたものである。
【0023】
また、本発明に係る地山補強用袋体は請求項
9に記載したように、芯材が挿通配置できるようにチューブ状に形成され各端が前記芯材にそれぞれ固定されることで内部空間にグラウト材を注入できるようになっている地山補強用袋体において、
袋本体と、
前記芯材が挿通され該芯材に固着されるとともに外周面に雄ネジが形成された第1の芯材側スリーブと、
前記袋本体の一端周縁が外周面に当接される第1の袋側スリーブ及び該第1の袋側スリーブとの間に前記袋本体の一端周縁を狭着する第1のかしめ部材からなり、前記第1の芯材側スリーブの雄ネジに螺合される雌ネジを前記第1の袋側スリーブの内周面に形成してなる第1の固定部材と、
前記芯材が挿通され該芯材に固着されるとともに一端の外周面に雄ネジが形成された第2の芯材側スリーブと、
前記袋本体の他端周縁が外周面に当接される第2の袋側スリーブ及び該第2の袋側スリーブとの間に前記袋本体の他端周縁を狭着する第2のかしめ部材からなる第2の固定部材と、
前記芯材の端部のうち、前記袋本体が挿入される側を挿入端部とするとともに、前記第1の芯材側スリーブ及び前記第2の芯材側スリーブのうち、前記挿入端部に近接した位置に配置される芯材側スリーブを前記第2の芯材側スリーブとして該第2の芯材側スリーブの雄ネジに螺合され該第2の袋側スリーブの移動を制限するように構成された移動制限部材とを備え、
前記移動制限部材に前記第2の袋側スリーブを押圧する押圧保持部を前記第2の芯材側スリーブの他端に突設するとともに、前記第1の袋側スリーブをその内径が前記第2の芯材側スリーブの外径よりも大きくなるように構成したものである。
【0024】
また、本発明に係る地山補強用袋体は、前記挿入端部から離隔した位置に配置される芯材側スリーブを前記第1の芯材側スリーブとして該第1の芯材側スリーブに前記第1の袋側スリーブの移動を制限する移動制限部を突設したものである。
【0025】
また、本発明に係る地山補強用袋体は、前記固定部材、前記第1の固定部材又は前記第2の固定部材の袋本体側にて前記袋本体を包囲する環状部材を備えたものである。
【0026】
また、本発明に係る地山補強用袋体は、前記芯材側スリーブ、前記第1の芯材側スリーブ又は前記第2の芯材側スリーブの外周面側と内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔を該芯材側スリーブ、該第1の芯材側スリーブ又は該第2の芯材側スリーブに設けたものである。
【0027】
また、本発明に係る地山補強用袋体は、前記芯材側スリーブ、前記第1の芯材側スリーブ又は前記第2の芯材側スリーブの内部空間として、該芯材側スリーブ、該第1の芯材側スリーブ又は該第2の芯材側スリーブの材軸と平行でかつ互いに平行な2本の挿通孔を設けるとともに、その一方を前記芯材が挿通される芯材挿通孔、他方を前記袋本体の内部空間にグラウト材を注入するグラウト注入パイプが挿通されるパイプ挿通孔としたものである。
【0028】
また、本発明に係る地山補強用袋体は、前記芯材をPC鋼より線としたものである。
【0029】
また、本発明に係る地山補強用袋体は、前記芯材のうち、前記芯材側スリーブ、前記第1の芯材側スリーブ又は前記第2の芯材側スリーブから延びる先端露出部分に被覆される芯材被覆用キャップを備えたものである。
【0030】
地山補強用袋体は、芯材が挿通された状態で地山の補強材挿入孔に挿入された後、内部へのグラウト材注入によって径方向に拡がり、補強材挿入孔の孔壁に当接されてさらに該補強材挿入孔を押し拡げるようになっているため、径方向に展開したときの内径は芯材の外径よりも大きくなる。
【0031】
そのため、地山補強用袋体の端部を芯材に固定するにあたっては、例えば地山補強用袋体の端部周縁を襞状に折りたたんだ上で番線等で芯材に固着する必要があるが、剛性が高い芯材を取り回しながらの作業となるため、現場であればもちろん、工場であっても製作には相当の時間を要していた。
【0032】
[第1の発明]
一方、第1の発明に係る地山補強用袋体においては、袋側スリーブ及びかしめ部材からなる固定部材を袋本体の端部に取り付けるにあたり、袋側スリーブの外周面に袋本体の端部周縁を当接した状態でその周囲からかしめ部材をあてがってかしめることにより、袋本体の端部周縁を袋側スリーブとかしめ部材との間に予め狭着する。
【0033】
すなわち、袋本体の端部に固定部材を取り付ける作業については、芯材に直接固着する場合に比べ、剛性が高く全長も長い芯材を取り回す必要がない分、短時間で作業を済ませることが可能となる。加えて、袋本体の端部を芯材に固定する作業自体は、袋側スリーブの内側に芯材を挿通した上、該袋側スリーブを
所定の部材を介して芯材に固着するだけで足りる。
【0034】
そのため、袋本体の端部を芯材に固着する際の全体の作業性が格段に向上する。
【0035】
また、前記芯材が挿通され該芯材に固着される芯材側スリーブを備えるとともに、該芯材側スリーブに前記袋側スリーブを同軸かつ着脱自在に取り付けることができるよう前記芯材側スリーブを構成した
ので、袋本体への芯材挿通作業と芯材への固着作業とを別々に進めることができるため、全体の作業能率をさらに高めることが可能となる。
【0036】
袋側スリーブを芯材側スリーブに同軸かつ着脱自在に取り付けるための該芯材側スリーブの構成は任意であるが、グラウト材注入による内圧上昇に伴い、袋本体が配置された側と反対の側へ袋側スリーブがずれないようにしておけば、グラウト材の漏出をさらに確実に防止することができる。
【0037】
この場合の具体的構成としては、例えば前記芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに螺合される雌ネジを前記袋側スリーブの内周面に形成した構成とし、あるいは前記芯材側スリーブの一端に形成された雄ネジに螺合され前記袋側スリーブの移動を制限する移動制限部材を備えるとともに、該移動制限部材に前記袋側スリーブを押圧する押圧保持部を前記芯材側スリーブの他端に突設した構成とすることが可能である。
【0038】
ここで、前者の構成においては、ネジ同士の係合作用によって袋側スリーブの移動を制限することも可能であるが、前記袋側スリーブの移動を制限する移動制限部を前記芯材側スリーブに突設しておき、袋側スリーブのうち、袋本体が配置された側と反対の側が移動制限部に当接されるように芯材側スリーブを芯材に固着するようにすれば、グラウト材注入による袋側スリーブのずれをいっそう確実に防止することができる。
【0039】
[第2の発明]
第2の発明に係る地山補強用袋体においては、第1の固定部材は、第1の袋側スリーブの外周面に袋本体の端部周縁を当接した状態でその周囲から第1のかしめ部材をあてがってかしめることにより、袋本体の端部周縁を第1の袋側スリーブと第1のかしめ部材との間に予め狭着して構成してあるとともに、第1の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに螺合される雌ネジを第1の袋側スリーブの内周面に形成してある。
【0040】
第2の固定部材も第1の固定部材と同様、第2の袋側スリーブの外周面に袋本体の他端周縁を当接した状態でその周囲から第2のかしめ部材をあてがってかしめることにより、袋本体の他端周縁を第2の袋側スリーブと第2のかしめ部材との間に予め狭着して構成してあるとともに、第2の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに螺合される雌ネジを第2の袋側スリーブの内周面に形成してある。
【0041】
また、第1の袋側スリーブは、その内径が第2の芯材側スリーブの外径よりも大きくなるように構成してある。
【0042】
かかる第1の固定部材や第2の固定部材を介して袋本体の各端部を芯材に固定するには、まず、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブを芯材に先行固着する。
【0043】
ここで、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブは、芯材の端部のうち、後工程において袋本体が挿入される側を挿入端部とするとともに、かかる挿入端部から離隔した位置に第1の芯材側スリーブが、近接した位置に第2の芯材側スリーブがそれぞれ配置されるように芯材に固着する。
【0044】
次に、芯材をその挿入端部から袋本体に挿入し、袋本体の第1の袋側スリーブが第2の芯材側スリーブを通り越した後で第1の芯材側スリーブに到達するように、袋本体を芯材の材軸に沿って前進させる。
【0045】
袋本体の第1の袋側スリーブが第1の芯材側スリーブに到達したならば、袋本体を芯材の材軸廻りに回転させながら、第1の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに第1の袋側スリーブの内周面に形成された雌ネジを螺合するとともに、第2の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに第2の袋側スリーブの内周面に形成された雌ネジを螺合することで、第1の袋側スリーブと第2の袋側スリーブを、第1の芯材側スリーブと第2の芯材側スリーブにそれぞれ取り付ける。
【0046】
かかる構成によれば、袋本体の各端部に第1の固定部材及び第2の固定部材を取り付ける際、芯材に直接固着する場合に比べ、剛性が高く全長も長い芯材を取り回す必要がない分、短時間で作業を済ませることが可能となる。
【0047】
加えて、袋本体の各端部を芯材に固定する作業自体は、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブをそれぞれ芯材に固着し、次いで、これら第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブに第1の袋側スリーブ及び第2の袋側スリーブをそれぞれ取り付けるだけで足りる。
【0048】
また、第1の袋側スリーブの内径を第2の芯材側スリーブの外径よりも大きく設定してあるので、第2の芯材側スリーブを通り越すように第1の袋側スリーブを芯材に沿って移動させることが可能となり、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブの芯材への固着作業を先行して行うことができる。
【0049】
そのため、第1の固定部材及び第2の固定部材の袋本体への取付け作業と第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブの芯材への固着作業とを同時に進行させることができるとともに、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブの芯材への固着作業を全て終えた後で、第1の袋側スリーブ及び第2の袋側スリーブを第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブにそれぞれ取り付けることが可能となり、かくして、剛性が高く取り回しが面倒な芯材に対して袋本体の端部周縁を襞状に折り曲げながら番線や結束バンドで固着していた従来に比べ、内圧上昇によるグラウト材の漏出を防止できるだけではなく、袋本体の各端部を芯材に固着する際の全体の作業性も格段に向上する。
【0050】
また、第1の袋側スリーブは第1の芯材側スリーブとのネジ係合作用により、第2の袋側スリーブは第2の芯材側スリーブとのネジ係合作用により、袋本体が配置された側と反対の側への移動がそれぞれ制限されるため、グラウト材注入によって内圧が上昇してもグラウト材が漏出するおそれがなくなるとともに、袋本体が配置された側への逆方向移動、いわば戻りについても同様に防止されるため、グラウト材の注入開始前後におけるグラウト材の漏出を未然に防止することも可能となる。
【0051】
ここで、前記第1の芯材側スリーブの端部のうち、前記挿入端部の反対側に位置する端部に前記袋本体の移動を制限する移動制限部を突設し、又は該反対側端部に形成された雄ネジに螺合され前記袋本体の移動を制限する移動制限部材を備えたならば、第1の袋側スリーブの移動をさらに確実に防止することが可能となる。
【0052】
また、前記第2の芯材側スリーブの端部のうち、前記挿入端部と同じ側に位置する端部に形成された雄ネジに螺合され前記袋本体の移動を制限する移動制限部材を備えるとともに、該移動制限部材に前記第2の袋側スリーブを押圧する押圧保持部を前記第2の芯材側スリーブの他端に突設したならば、第2の袋側スリーブの移動や逆方向移動をさらに確実に防止することが可能となる。
【0053】
[第3の発明]
第3の発明に係る地山補強用袋体においては、第1の固定部材は、第1の袋側スリーブの外周面に袋本体の端部周縁を当接した状態でその周囲から第1のかしめ部材をあてがってかしめることにより、袋本体の端部周縁を第1の袋側スリーブと第1のかしめ部材との間に予め狭着して構成してあるとともに、第1の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに螺合される雌ネジを第1の袋側スリーブの内周面に形成してある。
【0054】
第2の固定部材も第1の固定部材と同様、第2の袋側スリーブの外周面に袋本体の他端周縁を当接した状態でその周囲から第2のかしめ部材をあてがってかしめることにより、袋本体の他端周縁を第2の袋側スリーブと第2のかしめ部材との間に予め狭着して構成してあるとともに、第2の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに螺合される雌ネジを第2の袋側スリーブの内周面に形成してあるが、第1の芯材側スリーブに形成された雄ネジ及び第2の芯材側スリーブに形成された雄ネジは、一方が右ネジ、他方が左ネジとなっている。
【0055】
かかる第1の固定部材や第2の固定部材を介して袋本体の各端部を芯材に固定するには、第1の芯材側スリーブ、第2の芯材側スリーブ及び袋本体を、該袋本体が第1の芯材側スリーブと第2の芯材側スリーブの間に配置されるように芯材に挿通する。
【0056】
次に、袋本体が芯材に挿通された状態で、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブを芯材に固着する。
【0057】
次に、袋本体を芯材の材軸廻りに回転させながら、第1の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに第1の袋側スリーブの内周面に形成された雌ネジを螺合するとともに、第2の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに第2の袋側スリーブの内周面に形成された雌ネジを螺合する。
【0058】
ここで、第1の芯材側スリーブに形成された雄ネジ及び第2の芯材側スリーブに形成された雄ネジは、一方が右ネジ、他方が左ネジ、換言すれば互いに逆ネジになっているため、袋本体を所定の方向に回転させることにより、第1の袋側スリーブが第1の芯材側スリーブに螺合されると同時に、第2の袋側スリーブが第2の芯材側スリーブに螺合される。
【0059】
かかる構成によれば、袋本体の各端部に第1の固定部材及び第2の固定部材を取り付ける際、芯材に直接固着する場合に比べ、剛性が高く全長も長い芯材を取り回す必要がない分、短時間で作業を済ませることが可能となる。
【0060】
加えて、袋本体の各端部を芯材に固定する作業自体は、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブをそれぞれ芯材に固着し、次いで、これら第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブに第1の袋側スリーブ及び第2の袋側スリーブをそれぞれ取り付けるだけで足りる。
【0061】
また、第1の袋側スリーブは第1の芯材側スリーブとのネジ係合作用により、第2の袋側スリーブは第2の芯材側スリーブとのネジ係合作用により、袋本体が配置された側と反対の側への移動がそれぞれ制限されるため、グラウト材注入によって内圧が上昇してもグラウト材が漏出するおそれがなくなるとともに、袋本体が配置された側への逆方向移動、いわば戻りについても同様に防止されるため、グラウト材の注入開始前後におけるグラウト材の漏出を未然に防止することも可能となる。
【0062】
ここで、前記第1の芯材側スリーブの端部のうち、前記袋本体が配置される側と反対側に位置する端部に前記袋本体の移動を制限する移動制限部を突設し若しくは該端部に形成された雄ネジに螺合され前記袋本体の移動を制限する移動制限部材を備え、又は前記第2の芯材側スリーブの端部のうち、前記袋本体が配置される側と反対側に位置する端部に前記袋本体の移動を制限する移動制限部を突設し若しくは該端部に形成された雄ネジに螺合され前記袋本体の移動を制限する移動制限部材を備えたならば、第1の袋側スリーブ及び第2の袋側スリーブの移動をさらに確実に防止することが可能となる。
【0063】
[第4の発明]
第4の発明に係る地山補強用袋体においては、第1の固定部材は、第1の袋側スリーブの外周面に袋本体の端部周縁を当接した状態でその周囲から第1のかしめ部材をあてがってかしめることにより、袋本体の端部周縁を第1の袋側スリーブと第1のかしめ部材との間に予め狭着して構成してあるとともに、第1の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに螺合される雌ネジを第1の袋側スリーブの内周面に形成してある。
【0064】
一方、第2の固定部材も第1の固定部材と同様、第2の袋側スリーブの外周面に袋本体の他端周縁を当接した状態でその周囲から第2のかしめ部材をあてがってかしめることにより、袋本体の他端周縁を第2の袋側スリーブと第2のかしめ部材との間に予め狭着して構成してあるが、第2の袋側スリーブは、第2の芯材側スリーブに遊嵌されるようになっており、第2の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに螺合される雌ネジが形成された移動制限部材を別途備える。
【0065】
また、第1の袋側スリーブは、その内径が第2の芯材側スリーブの外径よりも大きくなるように構成してある。
【0066】
かかる第1の固定部材や第2の固定部材を介して袋本体の各端部を芯材に固定するには、まず、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブを芯材に先行固着する。
【0067】
ここで、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブは、芯材の端部のうち、後工程において袋本体が挿入される側を挿入端部とするとともに、かかる挿入端部から離隔した位置に第1の芯材側スリーブが、近接した位置に第2の芯材側スリーブがそれぞれ配置されるように芯材に固着する。
【0068】
次に、芯材をその挿入端部から袋本体に挿入し、袋本体の第1の袋側スリーブが第2の芯材側スリーブを通り越した後で第1の芯材側スリーブに到達するように、袋本体を芯材の材軸に沿って前進させる。
【0069】
袋本体の第1の袋側スリーブが第1の芯材側スリーブに到達したならば、袋本体を芯材の材軸廻りに回転させながら、第1の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに第1の袋側スリーブの内周面に形成された雌ネジを螺合する。
【0070】
次に、第2の袋側スリーブが第2の芯材側スリーブに遊嵌された状態で、該第2の芯材側スリーブの外周面に形成された雄ネジに移動制限部材を螺合することにより、第2の芯材側スリーブの他端に形成された押圧保持部との間に第2の袋側スリーブを挟み込む。
【0071】
かかる構成によれば、袋本体の各端部に第1の固定部材及び第2の固定部材を取り付ける作業については、芯材に直接固着する場合に比べ、剛性が高く全長も長い芯材を取り回す必要がない分、短時間で作業を済ませることが可能となる。
【0072】
加えて、袋本体の各端部を芯材に固定する作業自体は、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブをそれぞれ芯材に固着し、次いで、これら第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブに第1の袋側スリーブ及び第2の袋側スリーブをそれぞれ取り付けるだけで足りる。
【0073】
また、第1の袋側スリーブの内径を第2の芯材側スリーブの外径よりも大きく設定することで、第2の芯材側スリーブを通り越すように第1の袋側スリーブを芯材に沿って移動させることが可能となり、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブの芯材への固着作業を先行して行うことができる。
【0074】
そのため、第1の固定部材及び第2の固定部材の袋本体への取付け作業と第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブの芯材への固着作業とを同時に進行させることができるとともに、第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブの芯材への固着作業を全て終えた後で、第1の袋側スリーブ及び第2の袋側スリーブを第1の芯材側スリーブ及び第2の芯材側スリーブにそれぞれ取り付けることが可能となり、かくして、剛性が高く取り回しが面倒な芯材に対して袋本体の端部周縁を襞状に折り曲げながら番線や結束バンドで固着していた従来に比べ、内圧上昇によるグラウト材の漏出を防止できるだけではなく、袋本体の各端部を芯材に固着する際の全体の作業性も格段に向上する。
【0075】
また、第2の袋側スリーブと第2の芯材側スリーブとの着脱構造を螺合ではなく、第2の袋側スリーブを第2の芯材側スリーブに対して遊嵌、すなわち芯材の材軸廻りに回転自在とした上、第2の芯材側スリーブに設けた押圧保持部と該第2の芯材側スリーブに螺合される移動制限部材との間に狭着する構造を採用したことにより、第1の固定部材の第1の袋側スリーブを袋本体とともに芯材の材軸回りに回して第1の芯材側スリーブに螺着する際、第2の固定部材の側から何ら影響を受けることはないし、第2の袋側スリーブを第2の芯材側スリーブに固定する際にも、既に固定作業が終わっている第1の固定部材の側から何ら影響を受けることはない。
【0076】
また、第1の袋側スリーブは、第1の芯材側スリーブとのネジ係合作用により、第2の袋側スリーブは、第2の芯材側スリーブに螺合された移動制限部材の当接作用により、それぞれ袋本体が配置された側と反対の側への移動が制限されるため、グラウト材注入によって内圧が上昇してもグラウト材が漏出するおそれはない。
【0077】
また、第1の袋側スリーブは、第1の芯材側スリーブとのネジ係合作用により、第2の袋側スリーブは、第2の芯材側スリーブに突設された押圧保持部の当接作用により、それぞれ袋本体が配置された側への逆方向移動、いわば戻りが防止されるため、グラウト材の注入開始前後におけるグラウト材の漏出を未然に防止することができる。
【0078】
第1の袋側スリーブは上述したように、第1の芯材側スリーブとのネジ係合作用により、袋本体が配置された側と反対の側への移動ないしはずれが制限されるが、前記第1の袋側スリーブの移動を制限する移動制限部を前記第1の芯材側スリーブに突設したならば、第1の袋側スリーブの移動をさらに確実に防止することが可能となる。
【0079】
[各発明共通]
上述した各発明において、かしめ部材、第1のかしめ部材又は第2のかしめ部材は、例えばステンレス製やアルミニウム製であって、袋側スリーブ、第1の袋側スリーブ又は第2の袋側スリーブの外径よりも内径が大きなスリーブ状のもので構成することが可能であり、袋本体の端部周縁を袋側スリーブ、第1の袋側スリーブ又は第2の袋側スリーブの外周面に沿って例えば襞状に折り曲げて該各袋側スリーブに当接し、その上から各袋側スリーブと同軸になるように被せた後、所定の工具でかしめることにより、袋本体の端部周縁を袋側スリーブ、第1の袋側スリーブ又は第2の袋側スリーブとの間に狭着することができる。
【0080】
ここで、固定部材、第1の固定部材又は第2の固定部材の袋本体側にて袋本体の端部周縁を包囲する環状部材を備えるようにしたならば、グラウト材注入に伴う袋本体の膨張を、固定部材、第1の固定部材又は第2の固定部材の袋本体側で抑制することができるため、かしめ部材、第1のかしめ部材又は第2のかしめ部材を拡げようとする力が低減され、袋本体の端部周縁を袋側スリーブ、第1の袋側スリーブ又は第2の袋側スリーブとの間により確実に狭着しておくことが可能となる。
【0081】
芯材側スリーブ、第1の芯材側スリーブ又第2の芯材側スリーブをどのようにして芯材に固着するかは任意であり、例えばそれらと芯材との隙間に接着剤を充填する、同じくそれらの間に楔を打ち込む、それらの外周面から材軸直交方向に向けて先端が芯材の周面にねじ込まれるように例えば4本のネジを90゜ごとにあるいは3本のネジを120゜ごとに貫通させるといった方法を採用することができるが、接着剤を用いた固着を行うための具体的構成としては例えば、前記芯材側スリーブ、前記第1の芯材側スリーブ又は前記第2の芯材側スリーブの外周面側と内周面側とを互いに連通させる接着剤充填孔を該芯材側スリーブ、該第1の芯材側スリーブ又は該第2の芯材側スリーブに設ける構成を採用することができる。
【0082】
上述した各発明は、地山補強用袋体にグラウト材を注入するためのグラウト注入パイプを芯材と兼用する場合及び個別に設ける場合のいずれについても適用が可能であるが、後者の場合においては、前記芯材側スリーブ、前記第1の芯材側スリーブ又は前記第2の芯材側スリーブの内部空間として、該芯材側スリーブ、該第1の芯材側スリーブ又は該第2の芯材側スリーブの材軸と平行でかつ互いに平行な2本の挿通孔を設けるとともに、その一方を前記芯材が挿通される芯材挿通孔、他方を前記袋本体の内部空間にグラウト材を注入するグラウト注入パイプが挿通されるパイプ挿通孔とすればよい。
【0083】
また、芯材とグラウト注入パイプとを個別に設ける場合には、芯材を特にPC鋼より線とすることが可能である。
【0084】
ここで、前記PC鋼より線のうち、前記芯材側スリーブ、前記第1の芯材側スリーブ又は前記第2の芯材側スリーブから延びる先端露出部分に被覆される芯材被覆用キャップを備えた構成とすれば、PC鋼より線の隙間からグラウト材が漏出するのを未然に防止することができる。