特許第5902457号(P5902457)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902457
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ゴルフクラブヘッド
(51)【国際特許分類】
   A63B 53/04 20150101AFI20160331BHJP
   A63B 53/06 20150101ALI20160331BHJP
【FI】
   A63B53/04 E
   A63B53/06 Z
【請求項の数】6
【全頁数】7
(21)【出願番号】特願2011-268329(P2011-268329)
(22)【出願日】2011年12月7日
(65)【公開番号】特開2013-118961(P2013-118961A)
(43)【公開日】2013年6月17日
【審査請求日】2014年11月28日
(73)【特許権者】
【識別番号】592014104
【氏名又は名称】ブリヂストンスポーツ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100076428
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康徳
(74)【代理人】
【識別番号】100112508
【弁理士】
【氏名又は名称】高柳 司郎
(74)【代理人】
【識別番号】100115071
【弁理士】
【氏名又は名称】大塚 康弘
(74)【代理人】
【識別番号】100116894
【弁理士】
【氏名又は名称】木村 秀二
(74)【代理人】
【識別番号】100130409
【弁理士】
【氏名又は名称】下山 治
(74)【代理人】
【識別番号】100134175
【弁理士】
【氏名又は名称】永川 行光
(72)【発明者】
【氏名】竹地 隆晴
【審査官】 青山 玲理
(56)【参考文献】
【文献】 特開2008−272241(JP,A)
【文献】 特開2005−305115(JP,A)
【文献】 特開2009−195681(JP,A)
【文献】 特開2008−080095(JP,A)
【文献】 登録実用新案第3135034(JP,U)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A63B 53/00−53/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
フェース部と、ソール部とを備えたアイアン型のゴルフクラブヘッドにおいて、
ヘッド本体と、前記ヘッド本体に固着されるフェース部材と、を備え、
前記フェース部材は、
前記フェース部を形成するフェース形成部と、
前記フェース形成部からバック側へ延設され、前記ソール部の前部を形成する前部形成部と、を含み、
前記ヘッド本体は、
前記フェース部材の背面を露出させる開口部を画定する周縁部を含み、
前記周縁部は、
前記ソール部を形成するソール形成部を含み、
前記ソール形成部は、前記前部形成部よりも厚肉であり、
前記ソール形成部の前記フェース部側の端面が、
前記前部形成部のバック側端面が固着される下部領域と、
前記下部領域よりも上方の上部領域と、を含み、
前記上部領域と、前記フェース部材の背面との間の隙間に弾性体が配設され
前記上部領域が凹部を含み、
前記凹部に、前記ヘッド本体と材料が異なる挿入部材を挿入したゴルフクラブヘッド。
【請求項2】
請求項に記載のゴルフクラブヘッドにおいて、
前記弾性体が、合成樹脂材料又は天然樹脂材料からなり、
前記ヘッド本体が金属製であり、
前記挿入部材が前記ヘッド本体よりも制振性能が高い金属製であるゴルフクラブヘッド。
【請求項3】
請求項に記載のゴルフクラブヘッドにおいて、
前記挿入部材の前記フェース部側の端面と、前記上部領域の表面とに、段差があるゴルフクラブヘッド。
【請求項4】
請求項に記載のゴルフクラブヘッドにおいて、
前記周縁部は、
前記ゴルフクラブヘッドのトウ側のサイド部を形成するサイド形成部を含み、
前記サイド形成部の前記フェース部側の端面が、
前記フェース部材の背面に固着される外側領域と、
前記フェース部材の背面から離間した内側領域と、を含み、
前記内側領域と前記上部領域とが連続して形成され、
前記弾性体は、L字型をなし、かつ、前記内側領域及び前記上部領域と、前記フェース部材の背面との間の隙間に配設されたゴルフクラブヘッド。
【請求項5】
請求項1に記載のゴルフクラブヘッドにおいて、
前記フェース部材の背面は、前記前部形成部を除いて平坦であるゴルフクラブヘッド
【請求項6】
請求項1に記載のゴルフクラブヘッドにおいて、
前記前部形成部の前記バック側端面は、前記下部領域に当接した状態で固着されているゴルフクラブヘッド
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アイアン型のゴルフクラブヘッドに関する。
【背景技術】
【0002】
アイアン型のゴルフクラブヘッドの構造として、フェース部材とヘッド本体とを固着したゴルフクラブヘッドが知られている(特許文献1及び2)。特許文献1にはフェース部材とヘッド本体との間に衝撃吸収体を設けたものが開示されている。また、特許文献2には、フェース部材の下端部を後方に折り曲げて、フェース部の下部を撓み易くしたものが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−36006号公報
【特許文献2】特開2008−272241号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
フェース部の下部を撓み易くした場合、スイートスポットから外れてフェース部の下部でゴルフボールを打撃した場合に、飛距離の低下を抑制できる。しかし、撓みが大きくなると打感が悪くなる。
【0005】
本発明の目的は、フェース部の下部を撓み易くしながら、打感を向上することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明によれば、フェース部と、ソール部とを備えたアイアン型のゴルフクラブヘッドにおいて、ヘッド本体と、前記ヘッド本体に固着されるフェース部材と、を備え、前記フェース部材は、前記フェース部を形成するフェース形成部と、前記フェース形成部からバック側へ延設され、前記ソール部の前部を形成する前部形成部と、を含み、前記ヘッド本体は、前記フェース部材の背面を露出させる開口部を画定する周縁部を含み、前記周縁部は、前記ソール部を形成するソール形成部を含み、前記ソール形成部は、前記前部形成部よりも厚肉であり、前記ソール形成部の前記フェース部側の端面が、前記前部形成部のバック側端面が固着される下部領域と、前記下部領域よりも上方の上部領域と、を含み、前記上部領域と、前記フェース部材の背面との間の隙間に弾性体が配設され
前記上部領域が凹部を含み、前記凹部に、前記ヘッド本体と材料が異なる挿入部材を挿入したゴルフクラブヘッドが提供される。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、フェース部の下部を撓み易くしながら、打感を向上することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本発明の実施形態に係るゴルフクラブヘッドの外観図。
図2】(A)は図1の線I−Iに沿う断面図、(B)及び(C)は他の構成例の説明図。
図3】上記ゴルフクラブヘッドの分解斜視図。
図4】ヘッド本体の外観図。
【発明を実施するための形態】
【0009】
図1は本発明の第1実施形態に係るアイアン型のゴルフクラブヘッド1の外観図であり、フェース部側から見た斜視図である。本発明は、アイアン型のゴルフクラブヘッド全般に好適である。
【0010】
ゴルフクラブヘッド1は、フェース部(打撃面)2と、ソール部3と、ホゼル部4と、を備える。ホゼル部4には不図示のシャフトが装着される。フェース部2には複数本のスコアライン2aが形成されている。各々のスコアライン2aはトウ−ヒール方向に延設された、互いに平行な直線状の溝である。
【0011】
ゴルフクラブヘッド1は、ヘッド本体10と、ヘッド本体10に固着されるフェース部材20と、を備える。図2(A)は図1の線I−Iに沿う断面図、図3はゴルフクラブヘッド1の分解斜視図、図4はヘッド本体10の外観図であり、フェース部2側から見た図である。
【0012】
フェース部材20は、フェース形成部21と、フェース形成部21の下端部からバック側へ延設された前部形成部22と、を含む。フェース形成部21はその正面がフェース部2を形成する。前部形成部22はソール部3の前部3a(フェース部2側の部分)を形成する。
【0013】
フェース部材20は、金属材料、例えば、チタン合金、ステンレス、マレージング鋼、鋼合金等で形成される。フェース部材20は、例えば、鋳造や鍛造や、板材をプレスして成型するプレス鍛造等により形成することができる。鋳造は、複雑な形状が作り易いという利点がある。
【0014】
ヘッド本体10はホゼル部4を備える。また、ヘッド本体10はフェース部材20の背面(フェース形成部21の背面21a)をバック側に露出させる開口部10aを含む。開口部10aは、周縁部11によって画定されている。
【0015】
周縁部11は、上部形成部12、トウ側のサイド形成部13、ソール形成部14及びヒール側のサイド形成部15を含む。サイド形成部13は、ゴルフクラブヘッド1のトウ側のサイド部を形成する部分であり、フェース部2側の端面131を含む。端面131は、ソール部3側において、外側領域131aと、内側領域131bとに分かれている。内側領域131bは外側領域131aよりもバック側に凹んでいる。
【0016】
ソール形成部14は、前部3aを除いてソール部3を形成する部分であり、フェース部2側の端面141を含む。端面141は、仮想的に下部領域141aと、下部領域141aよりも上方の上部領域141bとに2分される。上部領域141bと内側領域131bとは互いに連続して形成されている。上部領域141bには凹部142が形成されている。凹部142はヒール側からトウ側に延設され、トウ側においてはやや上方へ曲折して内側領域131bまで延びている。
【0017】
ソール形成部14には、また、重心位置調整用の錘部材16が固着されている。錘部材16はソール形成部14に設けた凹部に固着されている。錘部材16は、例えば、ヘッド本体10とは異なる金属材料から形成される。
【0018】
フェース部材2は、そのフェース形成部21の背面21aが上部形成部12のフェース部2側の端面及び外側領域131aに固着され、その前部形成部22のバック側の端面22aが下側領域141aに固着される。ヘッド本体10とフェース部材2との固着は、例えば、溶接により行う。内側領域131b、上部領域141bはフェース形成部21の背面21aから離間する。
【0019】
図2(A)に示すようにソール形成部14は、前部形成部22よりも厚肉となっている。ソール形成部14を相対的に厚肉とすることで、ゴルフクラブヘッドの剛性向上や低重心化を図れる。また、前部形成部22を含むフェース部材2全体を相対的に薄肉とすることで、打撃時にフェース形成部21を撓み易くすることができる。
【0020】
本実施形態の場合、前部形成部22を設けたことで、ソール形成部14の端面141と、フェース形成部21との間に隙間を形成している。これによって、フェース形成部21の下部を撓み易くしている。この結果、フェース部2の下部でゴルフボールを打撃した場合に、飛距離の低下を抑制できる。
【0021】
ソール形成部14の端面141と、フェース形成部21との間の隙間、より具体的には、上部領域141bと、フェース形成部21の背面21aとの間の隙間に弾性体30が充填され、上部領域141b及び背面21aに密着している。弾性体30は例えば接着剤によって、この隙間に固定される。
【0022】
弾性体30は、例えば、合成樹脂材料や天然樹脂材料(例えば天然ゴム)からなる。弾性体30は、粘弾性体が好ましく、例えば、NBR(アクリロニトリルブタジエンゴム)である。また、弾性体30を、このような樹脂材料に金属粉を混入することで形成し、重心位置の調整を行うようにしてもよい。本実施形態の場合、上記の通り、フェース形成部21の下部を撓み易くしているが、撓みが大きくなると打感が悪くなる場合がある。しかし、この弾性体30により振動が減衰され易くなる。こうして本実施形態では、フェース部2の下部を撓み易くしながら、打感を向上することができる。
【0023】
本実施形態の場合、弾性体30はL字型をなしており、内側領域131bとフェース形成部21の背面21aとの隙間にも延在している。このため、フェース部2のスイートスポットから外れて、トウ側でゴルフボールを打撃した場合にも打感が悪くなることを防止できる。
【0024】
凹部142には、ヘッド本体10と材料が異なる挿入部材40が挿入されている。挿入部材40の材料は、目的に応じて適宜選択できる。重心位置の調整を目的とする場合は、ヘッド本体10と比重が異なる材料とすることができ、特に、低重心化を目的とする場合はヘッド本体10よりも比重が重い、金属材料とすることができる。
【0025】
打感の向上を目的とする場合は、ヘッド本体10よりも制振性能が高い金属材料とすることができる。挿入部材40をヘッド本体10よりも制振性能が高い金属製とすることで、弾性体30と挿入部材40とにより打感の向上を図れる。
【0026】
この場合、挿入部材40は制振合金とすることが好ましい。制振合金としては、例えば、片状黒鉛鋳鉄、マグネシウム合金、サイレンタロイ(Fe-Cr-Al)、Ni−Ti合金、Mn−Cu合金が挙げられる。挿入部材40を制振合金とし、弾性体30を樹脂材料とした場合、制振合金により相対的に高周波数の振動が、また、樹脂材料により相対的に低周波数の振動が、それぞれ抑制され、振動抑制領域を広範囲にすることができる。また、挿入部材40を制振合金とすることで、ソール部3の剛性を確保することができ、また、ゴルフクラブヘッド1の低重心化も図れる。
【0027】
本実施形態の場合、上記の通り、凹部142はトウ側においてはやや上方へ曲折して内側領域131bまで延びている。そして、挿入部材40もトウ側においてはやや上方へ曲折して内側領域131bまで延びている。したがって、挿入部材40を制振合金とした場合、フェース部2のスイートスポットから外れて、トウ側でゴルフボールを打撃した場合に打感が悪くなることを更に防止できる。
【0028】
なお、図(B)及び(C)に示すように、挿入部材40のフェース部側の端面40aと、上部領域141bの表面とには、段差Dがあることが好ましい。つまり、凹部142の深さと、挿入部材40の厚さとに差を設けることが好ましい。このようにすると、挿入部材40が上部領域141bから突出するか(図(B))、凹むことになる(図(C))。図(B)の構成の場合は、挿入部材40の先端が弾性体30に食い込み、図(C)の構成の場合は、弾性体30が凹部142に食い込む。いずれも、弾性体30の脱落防止に役立つことになる。
図1
図2
図3
図4