(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902466
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】レゾルバのインシュレータ、VR型レゾルバ及び、VR型ツインレゾルバ
(51)【国際特許分類】
H02K 3/34 20060101AFI20160331BHJP
H02K 1/04 20060101ALI20160331BHJP
G01D 5/20 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
H02K3/34 B
H02K1/04 A
G01D5/20 110X
【請求項の数】6
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2011-279218(P2011-279218)
(22)【出願日】2011年12月21日
(65)【公開番号】特開2013-132113(P2013-132113A)
(43)【公開日】2013年7月4日
【審査請求日】2014年11月7日
(73)【特許権者】
【識別番号】000114215
【氏名又は名称】ミネベア株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100096884
【弁理士】
【氏名又は名称】末成 幹生
(72)【発明者】
【氏名】乙部 春樹
(72)【発明者】
【氏名】松浦 睦
【審査官】
宮地 将斗
(56)【参考文献】
【文献】
特開2003−174750(JP,A)
【文献】
特開2001−169493(JP,A)
【文献】
特開2009−171695(JP,A)
【文献】
特開2005−168164(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02K 3/30−3/52
G01D 5/20
H02K 1/04
H02K 24/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板を積層したステータコアと、前記ステータコアとギャップを介して回転自在に回転する電磁鋼板を積層したロータとを備えたレゾルバにおける前記ステータコアの突極と巻線を絶縁するインシュレータにおいて、
前記インシュレータは、端子が配置された端子部と、軸方向から見て円環状の形状部分を有し、
前記端子部と前記円環状の形状部分は、一体成形されており、
前記円環状の形状部分に軸方向に突出するワニス流出防止用の壁が形成されるとともに該壁の外周面の前記突極に対応する部分に切り欠き部が形成されることで、前記円環状の形状部分が、前記突極のある部分の幅を狭くした幅の狭い部分と、前記突極の無い部分の幅を広くした幅の広い部分とを備えることを特徴とするレゾルバのインシュレータ。
【請求項2】
前記幅が狭い部分を形成する前記切り欠き部において、前記ステータコアの端面を露出させることを特徴とする請求項1に記載のレゾルバのインシュレータ。
【請求項3】
前記幅の狭い部分は複数あり、
前記複数の幅の狭い部分の一部は、前記ステータコアの前記端面を露出させ、
前記複数の幅の狭い部分の他部は、前記ステータコアの外周に設けられた軸方向に延在する溝を露出させることを特徴とする請求項1または2に記載のレゾルバのインシュレータ。
【請求項4】
前記壁が前記切り欠き部に対応して波状に形成されていることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか一項に記載のレゾルバのインシュレータ。
【請求項5】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレゾルバのインシュレータを備えたことを特徴とするVR型レゾルバ。
【請求項6】
請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレゾルバのインシュレータを備えたことを特徴とするVR型ツインレゾルバ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、径方向の小型化を図ったレゾルバのインシュレータ、VR型レゾルバ及び、VR型ツインレゾルバに関する。
【背景技術】
【0002】
レゾルバを装置やケースに取り付ける構造においては、軸方向から見たステータの端面に、スペース受け部と称されるネジやリベットを取り付けるスペース、あるいは適当な固定部材を接触させるスペースが必要とされる。一方、ステータには、突極を絶縁するための樹脂製のインシュレータが軸方向の前後から装着されるが、このインシュレータにより、上述したステータ受け部の面積が制限される。
【0003】
軸方向から見たステータの径方向の幅が充分に確保できるのであれば、ステータの外径より小さめにインシュレータの外径を決め、インシュレータの外周外側にステータ受け部のスペースを確保すればよい(例えば、特許文献1を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】2010-172164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、レゾルバを小径化した場合、軸方向から見たステータの幅厚みが狭くなり、軸方向から見たインシュレータの外周外側に、ステータ受け部のスペースを確保することが困難となる。ステータ受け部が確保できない場合、インシュレータに直接力を加える構造で上述したレゾルバの固定を行う構造が考えられるが、この構造は、樹脂で作られているインシュレータに大きな圧力が加わるので、インシュレータの変形や破損、経時変化に伴うガタツキの発生といった問題が生じる。また、無理にステータ受け部を設けるためにインシュレータの外径を更に小さくする構造も考えられるが、そうすると、インシュレータの強度が保てなくなり、また樹脂成形の際、樹脂が回りにくくなったりするという問題が生じる。
【0006】
このような背景において、本発明の目的は、小径化したレゾルバにおいて、インシュレータの強度を確保しつつ、ステータの端面にステータ受け部を設けることができるレゾルバのインシュレータ、VR型レゾルバ及び、VR型ツインレゾルバを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
請求項1に記載の発明は、電磁鋼板を積層したステータコアと、前記ステータコアとギャップを介して回転自在に回転する電磁鋼板を積層したロータとを備えたレゾルバにおける前記ステータコアの突極と巻線を絶縁するインシュレータにおいて、前記インシュレータは、端子が配置された端子部と、軸方向から見て円環状の形状部分を有し、前記端子部と前記円環状の形状部分は、一体成形されており、
前記円環状の形状部分に軸方向に突出するワニス流出防止用の壁が形成されるとともに該壁の外周面の前記突極に対応する部分に切り欠き部が形成されることで、前記円環状の形状部分が、前記突極のある部分の幅を狭くした幅の狭い部分と、前記突極の無い部分の幅を広くした幅の広い部分とを備えることを特徴とするレゾルバのインシュレータである。請求項1に記載の発明によれば、幅の狭い部分を利用してステータ受け部のスペースを確保することができる。また、幅の狭い部分を突極のある部分にすることで、インシュレータの強度の低下を抑えることができる。
また、壁によりワニスが外側に流れ出ない構造が得られる。
【0008】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載の発明において、前記幅が狭い部分
を形成する前記切り欠き部において、前記ステータコアの端面を露出させることを特徴とする。
【0009】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載の発明において、前記幅の狭い部分は複数あり、前記複数の幅の狭い部分の一部は、前記ステータコアの前記端面を露出させ、前記複数の幅の狭い部分の他部は、前記ステータコアの外周に設けられた軸方向に延在する溝を露出させることを特徴とする。請求項3に記載の発明によれば、径方向の幅の狭いインシュレータにおいて、ステータ受け部とステータコアをケースに固定する構造を阻害しない構造が得られる。
【0010】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至3のいずれか一項に記載の発明において、
前記壁が前記切り欠き部に対応して波状に形成されていることを特徴とする。
【0011】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレゾルバのインシュレータを備えたことを特徴とするVR型レゾルバである。
【0012】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至4のいずれか一項に記載のレゾルバのインシュレータを備えたことを特徴とするVR型ツインレゾルバである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、小径化したレゾルバにおいて、インシュレータの強度を確保しつつ、ステータの端面にステータ受け部を設けることができるインシュレータ、VR型レゾルバ及び、VR型ツインレゾルバが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】実施形態のステータアッシーの斜視図である。
【
図2】実施形態のステータアッシーの正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態におけるインシュレータ及び、レゾルバについて説明する。
【0016】
図1および
図2には、本発明の実施の形態におけるステータアッシー100が示されている。ステータアッシー100は、バリアブルリラクタンス型レゾルバ(以下、VR型レゾルバと言う)のステータ部分を構成する。ステータアッシー100は、ステータコア200の軸方向の前後からインシュレータ300と400を装着した構造を有している。ステータコア200は、電磁鋼板を打抜き加工したものを軸方向で複数積層したもので、内側に複数の突極(図示する例では、14極)を有した略円環状の形状部分を有している。
図1および
図2では、突極の先端部分における軸中心の方向に面した突極面201が示され、突極の他の部分は、インシュレータ300で覆われ隠れている。図示省略されているが、突極面201の内側の空間において、ロータがステータコア200に対してギャップを有した状態で、且つ、回転自在な状態で保持される。なお、図示省略したロータは、電磁鋼板を積層した構造を有している。
【0017】
インシュレータ300と400は、後述する端子部303の部分を除いて同じ構造を有している。以下、インシュレータ300について説明する。
【0018】
図3は、本発明の実施の形態におけるインシュレータを示している。インシュレータ300は、樹脂を材料とした射出成形法により製造されている。インシュレータ300は、突極延在部カバー301、フランジ部302、端子部303、渡り線用ピン305、壁306、切り欠き部307および308を備えている。突極延在部カバー301は、ステータコア200の内側において軸中心の方向に延在する突極の部分をカバーする。この突極延在部カバー301の上からレゾルバを励磁させる励磁コイル、および角度信号を検出する検出コイルが巻回される。
【0019】
フランジ部302は、薄板状に軸方向に延在し、上述したコイルを保持するためのフランジとして機能する。端子部303は、上述したコイルの端部が絡げられて接続される金属製の絡げピン304が埋め込まれている。絡げピン304の一方側は、励磁コイルまたは検出コイルからの巻線端部が絡げられ、他方側は、外部機器との接続用に使用される。この絡げピン304は、図では一方側から他方側まで、ストレートに形成されているが、これに限定されず、他方側が軸中心から遠ざかるようにL字形状に折り曲がっていてもよい。また、図では、絡げピン304は6本描かれているが、この場合、励磁コイルの巻き始めと巻き終わりで2本、sin相検出コイルの巻き始めと巻き終わりで2本、cos相検出コイルの巻き始めと巻き終わりで2本使用する。なお、この絡げピン304は、6本に限定されることはなく、例えば検出コイルを3相出力(sin(θ)、sin(θ+120°)、sin(θ+240°))の場合は、8本になる。渡り線用ピン305は、上述したコイルの渡り配線が引っ掛けられ、この渡り線を引き回す際に利用される。壁306は、軸方向に突出し、周方向に環状に延在した構造を有している。壁306は、上述したコイルおよび渡り線を固定するためのワニスを塗布する工程において、このワニスが外側に漏れ出ないようにする壁として機能する。この壁306は、インシュレータの全周に渡って形成される。また、本実施形態では、インシュレータ300の環状の部分は、軸方向から見た幅が従来の構造に比較して狭くなっているが、壁306は、この狭さに起因する強度不足を補強する役割も有している。
【0020】
切り欠き部307および308は、突極が設けられている部分の外側、すなわち、周方向における突極延在部カバー301の位置において、インシュレータ300の環状の部分の外周が内側に向かって切り欠かれた構造を有している。
図1および
図2に示すステータアッシー100として組み立てた状態において、切り欠き部307の部分において、ステータコア200の端部の一部(符号202)が軸方向において露出する。つまり、軸方向から見て(
図2の視点から見て)、ステータコア200の端面の一部(符号202)が見える。この軸方向から見て、切り欠き部307の部分で露出するステータコア200の端面の部分がステータ受け部202となる。このステータ受け部202の部分にレゾルバ固定用の部材を突き当てたり、螺子孔を設けたりすることで、レゾルバの装置やケースへの取り付けが行われる。
【0021】
切り欠き部307に対応するインシュレータ400の部分にも同様な構造で同様な役割の切り欠き部401が設けられている。この切り欠き部401でもステータコア200の端面が軸方向で露出し、ステータ受け部202と同様なステータ受け部が構成されている。
【0022】
切り欠き部308は、ステータコア200の外周に設けられた軸方向に延在する溝203と合致する位置に設けられている。溝203は、励磁コイルや検出コイルを巻回する時に使用する巻き線機への取り付けや完成したレゾルバを計測対象機器が収まるケースに取り付ける際に、ケース内側の突起部と噛み合い、ケースに対してレゾルバが回転しないように保持するために利用される。インシュレータ300に切り欠き部308を設けることで、それぞれの障害とならないようにされている。また、切り欠き部308に対応するインシュレータ400の部分にも同様な構造で同様な役割の切り欠き部402が設けられている。
【0023】
切り欠き部307および308が設けられていることで、インシュレータ300および400は、軸方向から見て外周が完全な円周ではなく、ステータコアの突極をカバーする部分で周期的に軸中心の方向に窪んだ波を打たせたような形状を有している。すなわち、インシュレータ300の軸方向から見た略円環状の形状部分は、切り欠き部307が設けられていることで、突極のある部分の幅は相対的に狭く、突極の無い部分の幅は相対的に広い構造を有している。
【0024】
(優位性)
インシュレータ300に切り欠き部307を設けることで、ステータコア200の外径を極限にまで小さくし、それに対応してインシュレータ300の軸方向から見た円環状の形状部分の幅寸法を小さくせざるを得なくても、ステータ受け部202のスペースを確保することができる。また切り欠き部307は、突極延在部カバー301の外側の部分に設けられているので、インシュレータ300の軸方向から見た円環状の形状部分の幅寸法が小さくても、インシュレータ300の強度の低下を抑えることができる。しかし、仮に、切り欠き部307と、突極延在部カバー301の周方向における位置がずれていると、切り欠き部307の部分におけるインシュレータ300の強度が著しく低下する。
【0025】
また、切り欠き部307が設けられた部分では、インシュレータ300における円環状の形状部分の径方向の幅が狭くなるが、その内側に突極延在部カバー301が存在するので、射出成形時における樹脂の移動経路が確保される。このため、切り欠き部307を設けることで樹脂が回り難い部分が形成されても、それに起因して射出成形不良が生じる問題が抑えられる。しかし、仮に、切り欠き部307が、周方向で隣接する突極延在部カバー301の間にあると、その部分におけるインシュレータ300の径方向の寸法が極めて狭くなり、射出成形時における樹脂の移動が阻害されることによる射出成形不良が生じる可能性が増大する。
【0026】
また、コイルの巻回後に行われるワニスの塗布工程において、ワニスがステータコア200の外側に漏れ出る現象が、壁306によって抑えられる。また、壁306によって、軸方向から見た場合の幅の狭さに起因するインシュレータの強度不足が補強される。また、壁306の内側にワニスが溜まった状態で硬化することで、硬化したワニスにより壁306が内周側から補強され、それによりインシュレータ300が補強される。これは、インシュレータ400においても同様である。しかし、仮に、壁306が設けられていない場合、ワニスが流出する問題に加えて、壁306によるインシュレータ300の補強効果、および壁306の内側にワニスが溜まった状態で硬化することよるインシュレータ300の補強効果が得られない。
【0027】
(その他)
本実施形態では、レゾルバがひとつで構成されたシングルレゾルバの構造を例示したが、軸方向に2つのレゾルバを並べて結合させたツインレゾルバの構造に本発明を適用することも可能である。この場合、2つのレゾルバのそれぞれ外側に位置するインシュレータに本発明を適用することにより同様の効果を得ることが出来る。
【0028】
また、本実施形態では、インシュレータ300と400は、端子部303の部分を除いて同じ構造であると説明したが、インシュレータ400にもインシュレータ300と同様の端子部を設けてそれぞれのインシュレータを共通化してもよい。例えば、絡げピン304の端子数の半分を、それぞれのインシュレータの端子部に設けることで、同一形状にすることができる。この場合、絡げピン304の外部接続側をL字形状に折り曲げることで、それぞれの絡げピンが接触しない形状を得ることができる。
【0029】
本発明の態様は、上述した個々の実施形態に限定されるものではなく、当業者が想到しうる種々の変形も含むものであり、本発明の効果も上述した内容に限定されない。すなわち、特許請求の範囲に規定された内容およびその均等物から導き出される本発明の概念的な思想と趣旨を逸脱しない範囲で種々の追加、変更および部分的削除が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0030】
本発明は、レゾルバに利用することができる。
【符号の説明】
【0031】
100…ステータアッシー、200…ステータコア、201…突極面、202…ステータ受け部、203…溝、300…インシュレータ、301…突極延在部カバー、302…フランジ部、303…端子部、304…絡げピン、305…渡り線用ピン、306…壁、307…切り欠き部、308…切り欠き部、400…インシュレータ、401…切り欠き部、402…切り欠き部。