【実施例】
【0019】
図1は、プレス加工機1の外観を示すとともに、光安装置保護カバー10による移動防止機構を示している。
図1(a)の正面図に示すようにプレス加工機1は、左右の支柱7a,7bの間で上下に駆動されるスライド2と、スライド2の底部に係止された上金型3と、当該上金型3に対向する下金型4と、操作盤5とを備えたボルスタプレート6で構成されている。プレス加工機1正面の左右の支柱7a,7bには、取付金具20で係止された光線式安全装置30がブラケット15により取り付けられている。また、光線式安全装置30を覆う光安装置保護カバー10が、複数の特殊ボルト11でブラケット15に取付けられている。この特殊ボルト11の装着及び取外しには、専用の特殊工具が必要である。
【0020】
図1(b)の側面図に示す支柱7に固定されるブラケット15は、作業者とプレス加工機1との間に必要な安全距離を確保するため、支柱7と光線式安全装置30との間隔の調整が可能な伸縮構造を有している。また、光線式安全装置30の投光器30aと受光器30bの間の光軸Lを対向させるため、光軸位置を上下方向に調整することが可能な取付金具20がブラケット15に係止されている。
【0021】
光安装置保護カバー10は、金型やワーク等が光線式安全装置30と接触することを防止するため、光線式安全装置30の外側を覆うL字状に加工されたパネル材である。更に、光線式安全装置30の移動防止機構として、光安装置保護カバー10をブラケット15に取付ける締結ボルトに、専用工具を必要とする特殊ボルト11を使用することで、光線式安全装置30を係止する取付金具20へのアクセスを制限することができる。
【0022】
<光線式安全装置の構造と機能>
図2により、光線式安全装置30の構成と機能について説明する。
図2(a)に示す光線式安全装置30の投光器30aと受光器30bは、外観が同一で対の構成を有している。投光器30aは、光源に複数のLEDの投光素子を等間隔(例えば、20mmの間隔)で配置した投光パネルPaを備え、受光器30bは、LEDの光を検知する受光素子を所定の間隔で配置した受光パネルPbを備えている。投光器30aと受光器30bは、コネクタ33とセンサケーブル32を介して光安制御装置35の投光部35aと受光部35bに接続されている。
【0023】
また、
図2(b)及び
図2(c)に示すように、光線式安全装置30の側面と背面は、ワーク等との接触を防止する光安装置保護カバー10で覆われている。また、プレス加工機1の支柱7に固定用ボルト18で固定されたブラケット15には、取付金具20を介して光線式安全装置30が取付けられる。
【0024】
図2(d)に示すA−A拡大断面図に示すように、投光器30aまたは受光器30bは、コの字形のフレーム30dに、投光パネルPaと受光パネルPbが格納されている。投光パネルPaと受光パネルPbは、フレーム30dの開口部内側に形成されている溝30cに挿入され固定されている。コの字形のフレーム30dは、金属或いは樹脂で形成され、投光パネルPa或いは受光パネルPbを保護する機能を有し、且つ取付金具20を装着するための取付け用スリット31が形成されている。取付金具20のTナット26を挿入するためのT字形状の取付け用スリット31は、図中のフレーム30dの対向する外側の二面あるいは一方の面に形成されている。取付金具20は、プレス加工機1の支柱7に取付けられたブラケット15のリブナット12cにBボルト24で固定されている。
【0025】
光線式安全装置30を取付ける目的は、加工作業時の正しい安全距離を確保することと、作業者の手や腕やワーク等の加工材が誤って加工域に侵入した場合、スライド2のプレス動作を瞬時に停止させて作業者の怪我や機材の破損を防止することである。そのため、光線式安全装置30は、投光器30aと受光器30bの間に水平な光軸Lを形成することで安全装置として機能し、プレス加工機1の上金型3と下金型4の動作領域と操作盤5を操作する作業者等との間に十分な安全距離を確保する。操作中に作業者の手や腕やワーク等が、不用意にプレス加工機1のプレス動作領域に侵入した場合、光安制御装置35により光軸Lが遮られたことを検知して、スライド2の上下動作を緊急停止させ、作業者やプレス加工機1の安全を確保している。また、投光器30aや受光器30bのコネクタ33を外した場合でも、プレス加工機1の緊急停止回路を作動させて安全を確保している。光線式安全装置30で発生させた光軸Lの間隔は、例えば厚さ20mmまでのワークを光軸Lの間を通すことが可能な間隔である。
【0026】
<光安装置保護カバー10の取付け構造>
図3は、光線式安全装置の移動防止機構の構成を示す図である。プレス加工機1の支柱7に光線式安全装置30を取付けるための取付金具20は、
図5に示した取付金具54と同一のものである。まず、光線式安全装置30のフレーム30dに形成されたスリット31にTナット26を移動可能に挿入し、当該Tナット26にA部品22をAボルト23で固定し、ブラケット15のリブナット12cに分割構造のクランプ21をBボルト24で固定する。A部品22は、分割構造のクランプ21のLクランプ21aとIクランプ21bの間に挿入されてCボルト25で固定されている。Aボルト23とCボルト25を緩めることで、光線式安全装置30の位置が上下に移動できる構造である。この取付金具20と光線式安全装置30を覆うように、光安装置保護カバー10がブラケット15に特殊ボルト11で取付けられている。
【0027】
支柱7に固定されるブラケット15は、例えば
図2(d)及び
図3に示す二重の箱型を組合せた構造で、安全距離の延長が必要な場合に高さHの調整が可能な構成を有している。ブラケット15の固定は、片方の箱型を支柱7に固定用ボルト18で締結した後、上箱で閉じる構造のため固定用ボルト18は露出することがない。ブラケット15にはBボルト24を締結固定するために、上箱の締結穴に固定用のネジが切られたリブナット12cが設置されている。尚、ブラケット15の伸縮構造は、図中に示す二重の箱型構造のみに限定するものではなく、安全距離に応じた寸法の一体構造の複数のブラケットを用意し、変更が必要な場合は、適宜必要な寸法のブラケットを選択して使用することも可能である。
【0028】
光線式安全装置30の位置を調整できないようにするには、光安装置保護カバー10をブラケット15に固定する締結ボルトとして、専用工具が必要な特殊ボルト11を使用すれば良い。その結果、作業者が安易に光線式安全装置30の取付け位置の移動や変更ができない光線式安全装置の移動防止機構を構成することができる。ブラケット15には、特殊ボルト11を締結固定するため、上箱の締結穴に固定用のネジが切られたリブナット12a,12bが設置されている。
【0029】
本実施例の光線式安全装置の移動防止機構は、
図5に示した従来の光線式安全装置52の取付金具54をそのまま取付金具20として利用したことで、新たに取付金具20を制作する必要がなく、コストを削減することができる。更に光安装置保護カバー10の大きさは、安全距離Sごとに大きさを変える必要がない。
【0030】
<特殊ボルトを使った移動防止機構>
投光器30aと受光器30bは、安全距離Sを確保するブラケット15により光軸調整を実施して支柱7a,7bに装着されるため、光軸Lにズレが発生することはない。設置時に調整されてた光線式安全装置30の光軸Lは、交換修理等で光線式安全装置30を取り外さない限り再調整の必要は殆どない。光安装置保護カバー10を取付ける目的は、第一に光線式安全装置30と金型やワークとの接触による破損を防止することである。
【0031】
しかし、
図5に示す従来の光線式安全装置52の取付け方法では、作業性を追求するあまり、作業者が露出した締結ボルト56を緩めて光線式安全装置52の取付け位置を安易に調整してしまい、正しい安全距離Sを保障できない。そのため光線式安全装置30取付け位置を、使用者が容易に変更できない光線式安全装置の移動防止機構求められる。
【0032】
例えば特殊ボルト11の例として、
図4(a)に示すヘックスローブボルトがあり、その頭部は六角穴や十文字穴等のような一般的な形状ではなく、中央に突起のある菊型穴を有し、通常「いじり止めねじ」と呼ばれている。ボルトの着脱には、専用工具を必要とする特殊ボルトである。光安装置保護カバー10をプレス加工機1の支柱7に固定する際、この特殊ボルト11を使用し取付けることで、作業者が容易に光線式安全装置30の取付け位置を変更できないようにする。
【0033】
また、
図4(b)に示すように、頭部側面に貫通穴の開いたボルトを使用してセーフティワイヤで連結するロックワイヤ16を装着してもよい。更に、
図4(c)に示す特殊ボルト11の頭部にワラーンティシール等の保証シール17を貼り付けてもよい。このようにすることで、特殊ボルト11を緩めるには専用工具だけでなくロックワイヤ16や保証シール17を切らなければ緩められないこととなり、また、視覚効果により光線式安全装置30の取付け位置の移動防止機能を高めることもできる。
【0034】
また、
図4(d)に示すプレス加工機1の支柱7に直接保護カバーを特殊ボルト11で取付ける構成とし、光安装置保護カバー10Aをクランク形状に形成されたものとしても良い。更に、
図4(e)に示すように、専用工具で着脱される特殊ボルト11と、南京錠19が係止できる環状頭部を有する特殊ボルト11Aを併用し、特殊ボルト11Aと光安装置保護カバー10に形成された連結部10dとを南京錠19で係止する構成でも良い。また、二箇所とも環状頭部を有する特殊ボルト11Aで締結し、その環状頭部を南京錠19で締結する構造であっても良い。
【0035】
以上により、光安装置が金型やワークとの接触することを防止する保護カバーの防止機能と、使用者が容易に光線式安全装置を移動することを防止する機能を有する光線式安全装置の移動防止機構を提供することができる。