特許第5902503号(P5902503)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902503
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】プリントコイル
(51)【国際特許分類】
   H01F 17/00 20060101AFI20160331BHJP
   H01F 27/36 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   H01F17/00 D
   H01F15/04
【請求項の数】3
【全頁数】12
(21)【出願番号】特願2012-31595(P2012-31595)
(22)【出願日】2012年2月16日
(65)【公開番号】特開2013-168553(P2013-168553A)
(43)【公開日】2013年8月29日
【審査請求日】2014年8月6日
(73)【特許権者】
【識別番号】000004695
【氏名又は名称】株式会社日本自動車部品総合研究所
(73)【特許権者】
【識別番号】000004260
【氏名又は名称】株式会社デンソー
(74)【代理人】
【識別番号】110000567
【氏名又は名称】特許業務法人 サトー国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】大岡 信治
(72)【発明者】
【氏名】片岡 良平
【審査官】 池田 安希子
(56)【参考文献】
【文献】 特開平06−290968(JP,A)
【文献】 特開2011−243870(JP,A)
【文献】 特開2001−211048(JP,A)
【文献】 特開平04−144212(JP,A)
【文献】 特開平11−265831(JP,A)
【文献】 特開平10−149929(JP,A)
【文献】 特開2003−158017(JP,A)
【文献】 特開2011−124373(JP,A)
【文献】 特開2004−006922(JP,A)
【文献】 特開2000−150238(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01F 17/00
H01F 27/36
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
導体パターンを有した複数のプリント基板を積層してなる多層配線板の所定の導体パターンにより同心渦巻状の1次巻線(2)及び2次巻線(3)を形成し、それらの巻線間を磁気結合を利用して絶縁するプリントコイル(1)において、
前記1次巻線と2次巻線の間を遮蔽するシールド部(4,5)と、
前記1次巻線及び2次巻線の積層方向に位置する導体パターンにより形成され、前記シールド部と電気的に接続したシールド面(21,41)と、を備え、
前記1次巻線及び2次巻線は、前記シールド部により空間的に囲まれ、
前記シールド部は、前記プリント基板に形成したスルーホールピンを前記1次巻線及び2次巻線に沿うと共に前記多層配線板の積層方向にも積層することで面構造に構成されると共に一定電位に固定され、さらに中間部位がスリット(31)により分断され、
前記スリットは、前記1次巻線と2次巻線の間で直線的に並ばないように設けられていることを特徴とするプリントコイル。
【請求項2】
前記シールド面は、前記1次巻線及び2次巻線に沿って渦巻状に形成されていることを特徴とする請求項記載のプリントコイル。
【請求項3】
前記1次巻線及び前記2次巻線は、前記シールド部の厚み方向のほぼ中心に設けられ、
前記シールド部の厚み方向の寸法は、前記1次巻線及び前記2次巻線と当該シールド部の間の距離寸法以上であることを特徴とする請求項1または2記載のプリントコイル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プリント基板を積層してなる多層配線板により同心渦巻状の1次巻線及び2次巻線を形成し、それらの巻線間を磁気結合を利用して絶縁するプリントコイルに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、プリント基板上に渦巻状の1次巻線と2次巻線を配置したプリントコイルを形成し、絶縁型の電力変換器や、絶縁型の信号伝達装置として使用されている。このようなプリントコイルは、1次巻線と2次巻線の磁気結合を利用して絶縁することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開平04−152609号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
この種のプリントコイルにおいて、例えば特許文献1ではコイルから発生する不要な漏洩電磁界対策のため、プリントコイルの上下面をシールド面によって挟むことを提案している。
しかしながら、このような構成ではプリントコイルから発生する漏洩電磁界を低減することはできるものの、1次巻線と2次巻線の間に発生する寄生容量によって、例えば電圧変動による高周波ノイズがプリントコイルを伝達し、プリントコイルに接続する機器(例えばIGBTのゲート駆動回路)が誤動作する問題がある。
本発明は上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、1次巻線と2次巻線の間を高周波ノイズが伝播することを抑制することができるプリントコイルを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明によれば、1次巻線と2次巻線の間には面構造のシールド部が位置しており、そのシールド部が一定電位に固定ざれているので、1次巻線と2次巻線の間の寄生容量を抑制することができる。これにより、1次巻線と2次巻線の間を高周波ノイズが伝播することを抑制することができる。しかも、シールド部は、プリント基板に形成された渦巻状のスルーホールピンを多層配線板の積層方向に積層することで面構造に形成されているので、シールド部を容易に形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0006】
図1】本発明の第1参考形態におけるプリントコイルを形成する各層の下面図
図2】プリントコイルの断面図
図3】シールド部の製造方法を説明するための図1相当図
図4】電気回路図
図5】高周波ノイズの伝わりやすさを示す図
図6】PALAPの製造方法を示す図
図7】温度に対する弾性率変化を示す図
図8】本発明の第2参考形態を示す図1相当図
図9図2相当図
図10図4相当図
図11】本発明の第3参考形態を示す図1相当図
図12図4相当図
図13】本発明の実施形態を示す図1相当図
図14】本発明の第4参考形態を示す図1相当図
図15図2相当図
図16】本発明の第5参考形態を示す図1相当図
図17図2相当図
図18図4相当図
【発明を実施するための形態】
【0007】
(第1参考形態)
以下、本発明の第1参考形態について図1ないし図7を参照して説明する。
本発明は、可撓性を有した樹脂フィルムに導体パターン及びビアホールを形成したフレキシブルプリント基板を複数枚積層し、それらを一括に熱プレスすることによって多層配線板を製造する技術を利用している。この技術はPALAP(登録商標)と称され、先ずこのPALAPについて図6及び図7により原理的に説明する。
【0008】
PALAPで使用されるフレキシブルプリント基板は、熱可塑性樹脂、例えば結晶転移型の熱可塑性樹脂からなる樹脂フィルムを基材としている。この樹脂フィルムの成分の具体例を示すと、例えばポリエーテルエーテルケトン(PEEK)樹脂35〜65質量%、ポリマーエーテルイミド(PEI)35〜65質量%を含み、厚さは25〜75μmが好ましいとされている。このような結晶転移型の熱可塑性樹脂は、図7に示すように、例えば200℃付近では軟質となるが、それより低い温度でも高い温度でも硬質となる(更に高い温度(約400℃)では溶解する)性状を呈し、また、高温から温度低下する際には、200℃付近でも硬質を保つ。
【0009】
図6はPALAPの製造方法を示している。(a)に示すように、樹脂フィルムaの片面には銅箔やアルミ箔などの金属箔からなる導体箔(厚さ18μm程度)bが貼り付けられており、この導体箔bをエッチングして(b)に示すように導体パターンcを形成する。導体パターンcの形成後、樹脂フィルムaの導体パターンcが形成されていない面に保護フィルムdを貼り付ける。
その後、保護フィルムd側からレーザを照射して、(c)に示すように、導体パターンcを底面とする有底のビアホールeを形成する。ビアホールeの形成はレーザの出力と照射時間を調整することにより、導体パターンcに穴が開かないようにする。ビアホールeの形成に使用するレーザとしては、炭酸ガスレーザ、エキシマレーザなどが考えられる。また、ドリル加工などの機械加工であっても良いが、微細な穴を明けるには、レーザが好ましい。
【0010】
ビアホールeを形成し終えると、次に、積層されるフレキシブルプリント基板相互の電気的接続のために、(d)に示すように、ビアホールe内に導電ペーストfを充填する。この導電ペーストfは、メタルマスクを用いたスクリーン印刷装置により導体パターンc側を下にしてビアホールe内に印刷充填される。そして、この導電ペーストfの印刷充填後、(e)に示すように、保護フィルムdを剥離する。以上のようにしてフレキシブルプリント基板gが製造される。
このようにして製造した複数枚のフレキシブルプリント基板gを導体パターンcが下となるように積層する。このとき、最上層のフレキシブルプリント基板gについては、電子部品、或は外部配線とビアホールeの導電ペーストfによって接続しても良いが、(f)に示すように、最上層のフレキシブルプリント基板gについては導体パターンcが上となるように積層して電子部品或いは外部配線と導体パターンcによって接続するようにしても良い。
【0011】
尚、フレキシブルプリント基板gの積層の際、最下層のフレキシブルプリント基板gの導体パターンcを保護するために、フレキシブルプリント基板gはカバーレイヤhを最下層にしてその上に積層してゆく。また、最上層のフレキシブルプリント基板gを導体パターンcが上を向くように積層した場合には、その導体パターンcを保護するためにカバーレイヤhを最上層のフレキシブルプリント基板g上に載せる。
【0012】
複数枚のフレキシブルプリント基板gを積層した後、それらフレキシブルプリント基板gを、真空加圧プレス(図示せず)によって200〜350℃で0.1〜10MPaの圧力で加圧する(熱プレス)。フレキシブルプリント基板gの樹脂フィルムaは、図7に示すような温度に対する弾性率変化を生ずるので、この熱プレスにより一旦軟化した状態で加圧されることによって樹脂フィルムa同士が相互に融着し、多層配線板iとして完成される。
【0013】
この完成形態にあっては、複数枚のフレキシブルプリント基板gの導体パターンcは、ビアホールe内の導電ペーストfからなるスルーホールを通じて互いに電気的に接続され、また内部に電子部品が埋め込まれていた場合、その部品も導体パターンcに直接的に、或はビアホールeのスルーホールを通じて電気的に接続される。多層配線板iは以上のようにして製造される。尚、その後、多層配線板iをリフロー炉に通して電気・電子部品を実装する場合、300℃程度に加熱されるが、この温度では樹脂フィルムaは軟化することはなく、結晶状態に保たれる。
【0014】
図2は上述したPALAPの技術を用いて製造した本参考形態のプリントコイルの断面を示している。プリントコイル1は、複数枚、例えば7枚のフレキシブルプリント基板(以下、第1〜7層という)1a〜1gを積層して構成される。尚、図2では各層1a〜1gを構成する導体パターン及びカバーレイヤの図示を省略した。
図1は各層1a〜1gの下面図であり、(a)は第1,2層1a,1b、(b)は第3層1c、(c)は第4〜6層1d〜1f、(d)は第7層1gの下面図である。
第3層1cには1次巻線2及び2次巻線3が導体パターンにより形成されている。つまり、1次巻線2及び2次巻線3は、プリントコイル1の中間となる第3層1cの導体パターンにより3ターンの矩形渦巻状に形成されている。1次巻線2と2次巻線3は同心(中心を同じとして)で巻かれ、それぞれの巻線は中心から外方に向かって交互に位置している。
【0015】
一方、1次巻線2と2次巻線3の間にはこれらの巻線2,3と同心で3ターンの矩形渦巻状のシールド部4,5が形成されている。シールド部4は、外側に1次巻線2、内側に2次巻線3が位置するように形成され、シールド部5は、外側に2次巻線3、内側に1次巻線2が位置するように形成されている。シールド部4,5は第1層1aから第6層1fまでを貫通するスルーホールピンで構成されている。つまり、シールド部4,5は、第1〜6層1a〜1fに形成された個々のスルーホールピンが積層方向に連続的に接続してなる。これにより、シールド部4,5は、1次巻線2及び2次巻線3の面方向に対して直交した面構造をなしている。
【0016】
図3はシールド部4,5の製造方法を説明するための図1相当図である。この図3中に示す○印は、レーザ照射により形成されたビアホール6aを模式的に示すもので、ビアホールを連続的に形成することで導電ペーストを充填するための長孔6を矩形渦巻状に形成している。尚、PARAPの製造方法で説明したように、長孔6は底面を導体パターンとする有底の溝部をなしていることから、長孔6に充填した導電ペーストが落下してしまうことはない。また、長孔6により渦巻状に分離された両側部位は導体パターンで連結されていることから、長孔6が形成された層の強度が極端に低下することはない。
以上のような構成の結果、1次巻線2と2次巻線3の間にはこれらを空間的に遮蔽する面構造のシールド部4,5が介在することになる。
【0017】
第3〜7層1c〜1gにはスルーホール2a,3aが形成されている。このスルーホール2a,3aは、第3〜7層1c〜1gをそれぞれ貫通するスルーホールピンを連結して構成されている。第7層1gに位置するスルーホール2a,3aは第7層1gの端部に形成された端子2b,3bと接続されている。
1次巻線2は、第7層1gに設けられた端子2bからスルーホール2aを経由して第3層1cに到達し、3ターンして第3層1cに設けられた端子2cに至る巻線である。2次巻線3は、第7層1gに設けられた端子3bからスルーホール3aを経由して第3層1cに到達し、3ターンして端子3cに至る巻線である。
シールド部4,5には、第3層1cの端部に端子4a、5aが設けられている。
尚、図1及び図2ではプリントコイル1のみを図示したが、実際にはプリントコイル1は多層配線板の所定領域に形成されており、各端子2b,3b,2c,3c,4a,5aは多層配線板に形成された電子回路、或いは他のプリント基板に搭載された電子回路と接続されている。
【0018】
図4は、上記1次巻線2及び2次巻線3から構成されるプリントコイル1を使用したIGBTのゲート駆動回路への適用例を示す電気回路図である。1次巻線2は駆動回路7によって駆動される。駆動回路7には電源8と入力側の基準電位であるGND9が接続され、さらに信号入力であるIN10が接続される。駆動回路7の出力側は1次巻線2の端子2bに接続され、GND9が端子2cに接続される。
2次巻線3の端子3bにはIGBTゲート用の駆動回路11の入力側が接続され、その駆動回路11には電源12と出力側の基準電位13が接続される。2次巻線3の端子3cは基準電位13に接続される。そして、駆動回路11の出力側はIGBT14のゲート端子に接続され、基準電位13はIGBT14のエミッタ端子に接続される。
【0019】
シールド部4,5の端子4a,5aは入力側の基準電位GND9に接続されてGNDに固定されている。このように構成することで、1次巻線2と2次巻線3間の寄生容量を経由してプリントコイル1を伝達する例えば電圧変動による高周波ノイズをシールド部4,5によって遮蔽することができる。よって高周波ノイズはシールド部4,5を経由して流れるため、2次側巻線3に伝播する高周波ノイズを低減することができる。
尚、図4では、シールド部5を1次巻線2と2次巻線3の間から外れた位置に図示したが、これは、シールド部4,5の位置関係の違いを表現するためである。つまり、シールド部4は、外側に1次巻線2、内側に2次巻線3が位置しているのに対して、シールド部5は、外側に2次巻線3、内側に1次巻線2が位置しているからであり、シールド部5がシールド部4と同様に1次巻線2と2次巻線3の間に位置していることは同じである。このような表現方法は、以下の参考形態及び一実施形態でも同一である。
【0020】
図5に電圧変動による高周波ノイズの伝わりやすさを、シールド部4,5の有無で比較した結果を示す。シールド部4,5が無い場合(b)は高周波ノイズが伝わりやすいのに対して、シールド部4,5がある場合(a)は高周波ノイズが伝わりにくくなっていることが分る。
【0021】
さて、1つの層の厚みを75umとすると、6つの層1a〜1fを貫通するシールド部4,5の厚みは450umとなり、1次巻線2及び2次巻線3はシールド部4,5の厚みの中心に位置している。シールド部4,5を形成するスルーホール径は直径100um、1次巻線2及び2次巻線3は幅150umに設定され、巻線部中央とシールド部中心との距離は400umに設定されている。これは、シールド部4,5の厚みのほぼ中心に1次巻線2及び2次巻線3が位置し、更に、各巻線2,3とシールド部4,5との距離以上にシールド部4,5の厚み寸法がある場合に特にシールド効果が高いことから、本参考形態ではこのような関係となるように各部位の寸法を設定している。
【0022】
このような実施形態によれば、次のような効果を奏することができる。
1次巻線2と2次巻線3の間を遮蔽するシールド部4,5を設けたので、1次巻線2と2次巻線3の間の寄生容量を抑制でき、プリントコイル1を高周波ノイズが伝播することを抑制することができる。
プリントコイル1をPALAPにより製造する際に各層1a〜1fに形成されたスルーホールピンを電気的に接続することによりシールド部4,5を形成するようしたので、シールド部4,5を容易に形成することができる。
【0023】
(第2参考形態)
次に本発明の第2参考形態について図8ないし図10を参照して説明するに、第1参考形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。尚、以下の参考形態及び実施形態も先に説明した参考形態と同一部分には同一符号を付して説明を省略する。この第2参考形態は、1次巻線2及び2次巻線3の周囲をシールド部4,5で囲んだことを特徴とする。
図8(a)は第2層1b、(b)は第3層1c、(c)は第4層1d、(d)は第7層1gの下面図である。
第2,4層1b,1dには導体パターンによりシールド面21がそれぞれ形成され、第3,4層1c,1dにはシールド部4,5が形成されている(図9参照)。第3,4層1c,1dに形成されたシールド部4,5は2つのシールド面21と電気的に接続されているので、1次巻線2及び2次巻線3はシールド部4,5で囲まれていることになる。この場合、シールド部4,5はシールド面21で電気的に接続していることから、電気的には一体物として見なすことができる。
【0024】
ここで、シールド面21は1次巻線2及び2次巻線3の形成領域に対応して矩形枠状に形成されていると共に、閉ループを形成しないようにスリット22で分断されている。これは、1次巻線2に高周波信号が流れた場合に発生する高周波磁界によりシールド面21に閉ループ状に流れる渦電流を遮断するためである。一方、シールド部4,5においてシールド面21のスリット22に対応した部位はスリット23により分断されている。これは、シールド面21で発生した渦電流がシールド部4,5を介して流れないようにするためである。
上記構成の場合、シールド部4,5はシールド面21により電気的に一体となっているので、電気回路図としては図10のように表すことができる。
【0025】
このような参考形態によれば、1次巻線2及び2次巻線3はシールド部4,5により空間的に囲まれているので、1次巻線2と2次巻線3の間の寄生容量を効果的に抑制することができる。
プリントコイル1が占める層を2つの層1c,1dに限定することができるので、プリントコイル1の小形化を図ることができると共に、プリントコイル1として使用していない層を他の用途として利用することができる。
【0026】
(第3参考形態)
次に本発明の第3参考形態について図11及び図12を参照して説明する。この第3参考形態は、シールド部4,5が有するインダクタンスを低減したことを特徴とする。
図11に示すようにシールド部4,5はスリット31により分断されている。分断されたシールド部4,5のうち渦巻状の中心側となる部位の端部は第7層1gに形成されたスルーホール4b,5bを介して端子4c、5cに接続されることでGND9に固定される(図12参照)。
このような参考形態によれば、シールド部4,5の全長を短くすることでシールド部4,5が有するインダクタンスを低減することができるので、プリントコイル1の高周波伝達特性が改善され、さらに高周波の信号も伝送することが可能となる。
【0027】
実施形態)
次に本発明の実施形態について図13を参照して説明する。この実施形態は、第3参考形態で説明したシールド部4,5を分断するスリット31が1次巻線2と2次巻線3の間において直線的に並ばないようにしたことに特徴を有する。
第3参考形態では、シールド部4,5を分断するスリット31は、1次巻線2と2次巻線3の間において直線的に並んでおり、このスリット31を介して1次巻線2と2次巻線3の一部が電気的に結合している。これに対して、本実施形態では、図13に示すように、スリット31は1次巻線2及び2次巻線3に沿った方向にずれて形成されており、1次巻線2と2次巻線3の間において直線的に並ばないように構成されている。
このような実施形態によれば、1次巻線2と2次巻線3の間においてシールド部4,5のスリット31が直線的に並ばないようにしたので、1次巻線2と2次巻線3の一部がスリット31を介して電気的に結合することはなく、1次巻線2と2次巻線3の間の寄生容量を一層低減することができる。
【0028】
(第4参考形態)
次に本発明の第4参考形態について図14及び図15を参照して説明する。この第4参考形態は、1次巻線2と2次巻線3を異なる層に配置したことを特徴とする。
図14(a)は第1層1a、(b)〜(g)は第2〜7層1b〜1gの下面図である。第3〜6層1c〜1fにはシールド部4,5が形成され(図15参照)、第2,4,6層1b,1d,1fには導体パターンにより矩形枠状のシールド面21がそれぞれ形成されている。このシールド面21はスリット22により分断されている。
一方、第3層1cには1次巻線2が形成されており、第1〜3層1a〜1cに形成されたスルーホール2aを経由して第1層1aに設けられた端子2bに接続されている。第5層1eには2次巻線3が形成されており、第5〜7層1e〜1gに形成されたスルーホール3aを経由して第7層1gに設けられた端子3bに接続されている。
図15に示すように、1次巻線2及び2次巻線3は積層方向に重なった位置関係となるように配置されていると共に、各巻線2,3がシールド部4,5によりそれぞれ空間的に囲まれている。
このような参考形態によれば、1次巻線2と2次巻線3を異なる層に配置したので、各巻線2,3の巻線密度を高めることができる。
【0029】
(第5参考形態)
次に本発明の第5参考形態について図16ないし図18を参照して説明する。この第5参考形態は、1次巻線2及び2次巻線3をそれぞれ渦巻状のシールド部で囲ったことを特徴とする。
図16に示すように第3,4層1c,1dに形成されたシールド部4は1次巻線2の両側に形成されて当該1次巻線2を挟んだ形態をなしている。第5,6層1e,1fに形成されたシールド部5は(図17参照)、2次巻線3の両側に形成されて当該2次巻線3を挟んだ形態をなしている。
第2,4,6層1b,1d,1fには1次巻線2及び2次巻線3に沿った渦巻状のシールド面41が形成されており、シールド部4,5と電気的に接続している。
図17に示すよぅに、積層方向に重なって位置する1次巻線2及び2次巻線3はこれらを空間的に囲繞するシールド部4,5により渦巻状に囲まれている。
上記構成を示す電気回路図は図18のように表すことができる。
このような参考形態によれば、シールド面41は渦巻状で閉ループをなしておらず渦電流が流れることはないことから、シールド部4,5をスリットにより分断する必要がなく、1次巻線2と2次巻線3の間の寄生容量を効果的に抑制することができる。
【0030】
(その他の実施形態)
本発明は、上記各参考形態及び一実施形態に限定されることなく、次のように変形または拡張できる。
1次巻線2及び2次巻線3は矩形枠状の渦巻状に限られることなく、円環状、楕円環状、多角形環状等の渦巻状に形成しても良い。
プリントコイル1を構成する層は7層に限られるものではない。
シールド部4,5の端子4a,5aは入力側の基準電位GND9に接続することに限定されることはなく、両方の端子を電源8に接続したり、両方の端子を電源12に接続したり、両方の端子を出力側の基準電位13に接続したり、端子4a,5aをそれぞれ別の端子(例えば電源8と電源12など)に接続することも可能である。つまり、シールド部4,5を一定電位に固定できれば、その電位が限定されるものではない。
第2,3参考形態及び一実施形態のスリット22,31を複数設けるようにしてもよい。この場合、スリット22,31によりスリット両側部位を連結することができるので、層単体での強度を高めることができる。
本発明を絶縁型の電力変換器に適用するようにしてもよい。
【符号の説明】
【0031】
図面中、1はプリントコイル、2は1次巻線、3は2次巻線、4,5はシールド部である。
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