特許第5902518号(P5902518)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902518
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】エンジン用応力解析装置
(51)【国際特許分類】
   G01M 15/02 20060101AFI20160331BHJP
【FI】
   G01M15/02
【請求項の数】2
【全頁数】10
(21)【出願番号】特願2012-65163(P2012-65163)
(22)【出願日】2012年3月22日
(65)【公開番号】特開2013-195332(P2013-195332A)
(43)【公開日】2013年9月30日
【審査請求日】2015年2月20日
(73)【特許権者】
【識別番号】000005463
【氏名又は名称】日野自動車株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000512
【氏名又は名称】特許業務法人山田特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】栗山 良太
(72)【発明者】
【氏名】福田 哲也
(72)【発明者】
【氏名】及川 静
(72)【発明者】
【氏名】渋谷 肇
【審査官】 渡邉 勇
(56)【参考文献】
【文献】 特開昭59−092327(JP,A)
【文献】 特開昭62−277535(JP,A)
【文献】 米国特許第04761993(US,A)
【文献】 特開昭58−189524(JP,A)
【文献】 特開2001−311659(JP,A)
【文献】 特開2009−222539(JP,A)
【文献】 特開2004−324597(JP,A)
【文献】 特開2010−287103(JP,A)
【文献】 特開2002−149712(JP,A)
【文献】 特開平08−153297(JP,A)
【文献】 井口 克之 等,ディーゼルエンジンシリンダブロックのトップデッキ隅部の疲労強度に関する有限要素解析,日本機械学會論文集. A編,2009年 8月25日,Vol.75,No.756,1074-1081
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01M 5/00 − 7/08
G01M 15/00 − 15/14
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エンジンの被測定部位における歪を電気信号として検出するセンサ手段と、
該センサ手段で検出された電気信号を増幅する増幅手段と、
該増幅手段で増幅された電気信号に基づきエンジンの被測定部位における静歪を測定する静歪測定部と、前記増幅手段で増幅された電気信号に基づきエンジンの被測定部位における固有振動数を測定する固有振動数測定部と、前記増幅手段で増幅された電気信号に基づきエンジン実動時の被測定部位における変動応力を測定する変動応力測定部とを有する計測演算手段と、
前記エンジンの材料特性値が材料特性値データベースとして記憶された共有サーバ手段と、
前記計測演算手段で求められた静歪測定結果に基づく静歪解析と、前記計測演算手段で求められた固有振動数測定結果に基づく周波数解析と、前記計測演算手段で求められた変動応力測定結果に基づくピーク回転周波数解析と、前記計測演算手段で求められた変動応力測定結果に基づくピーク回転応力解析と、前記計測演算手段で求められた変動応力測定結果に基づく生波形解析とを行い、前記静歪解析結果及び前記共有サーバ手段に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく静的強度評価と、前記周波数解析結果及びピーク回転周波数解析結果に基づく共振評価と、前記ピーク回転応力解析結果及び前記共有サーバ手段に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく変動強度評価とを行う演算解析処理手段と
を備えたことを特徴とするエンジン用応力解析装置。
【請求項2】
前記演算解析処理手段において、前記静的強度評価及び変動強度評価に基づいて両振換算応力を計算し、前記材料特性値としての疲労限応力を用いることにより、安全率を、
安全率=疲労限応力/両振換算応力
の式から求めるよう構成した請求項記載のエンジン用応力解析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、エンジン用応力解析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一般に、車両等に用いられるエンジンにおいては、その開発に際し、部品、例えば、シリンダブロックやシリンダヘッドに作用する応力の解析を行う必要がある。
【0003】
図5は、従来のエンジン用応力解析装置の一例におけるハードウェア構成を示すブロック図であって、エンジンの部品、例えば、シリンダブロックやシリンダヘッドの被測定部位における静歪を測定する静歪測定器1と、エンジン実動時の前記被測定部位における変動応力を測定する変動応力測定器2と、応力解析器3と、共有サーバ4と、レポート作成用パーソナルコンピュータ5とを備えている。
【0004】
尚、前記静歪とは、エンジン停止状態で部品をエンジンに取り付けたときの歪のことをいう。
【0005】
前記静歪測定器1は、前記エンジンの被測定部位に貼り付けられる歪ゲージ6と、該歪ゲージ6で検出された電気信号を増幅する増幅器7と、該増幅器7で増幅された電気信号に基づきエンジンの被測定部位における静歪を測定する静歪測定部8とを備えてなる構成を有し、該静歪測定部8で測定された静歪が紙に出力されるようになっている。
【0006】
前記変動応力測定器2は、前記エンジンの被測定部位に貼り付けられる歪ゲージ6と、該歪ゲージ6で検出された電気信号を増幅する増幅器7と、該増幅器7で増幅された電気信号に基づきエンジン実動時の被測定部位における変動応力を測定する変動応力測定部9、該変動応力測定部9で測定された変動応力を演算処理するパーソナルコンピュータ等の演算処理部10とを備えてなる構成を有し、該演算処理部10で演算処理された変動応力が画面上に表示されると共に、紙に出力されるようになっている。
【0007】
前記応力解析器3においては、前記変動応力測定器2で測定され紙に出力された変動応力をオペレータが手動入力することにより、ピーク回転周波数解析と、ピーク回転応力解析と、生波形解析とが行われ、各解析結果が画面上に表示されると共に、紙に出力されるようになっている。
【0008】
前記共有サーバ4には、エンジンの材料特性値が材料特性値データベース11として記憶されている。
【0009】
前記レポート作成用パーソナルコンピュータ5においては、前記静歪測定器1で測定され紙に出力された静歪と、前記変動応力測定器2で測定され紙に出力された変動応力と、前記共有サーバ4に材料特性値データベース11として記憶されているエンジンの材料特性値とをオペレータが手動入力することにより、静的強度評価と、変動強度評価とが行われ、各評価結果が画面上に表示されると共に、紙に出力されるようになっている。
【0010】
そして、図5に示される従来のエンジン用応力解析装置の一例においては、図6のフローチャートに示される如く、静歪測定器1によるエンジンの被測定部位における静歪測定と、変動応力測定器2によるエンジン実動時の被測定部位における変動応力測定とが計測工程として行われ、該計測工程における静歪測定器1での静歪測定結果に基づく静歪解析が該静歪測定器1により解析工程として行われると共に、前記計測工程における変動応力測定器2での変動応力測定結果に基づくピーク回転周波数解析とピーク回転応力解析と生波形解析とが応力解析器3により解析工程として行われ、該解析工程における静歪測定器1での静歪解析結果及び共有サーバ4の材料特性値データベース11に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく静的強度評価と、前記解析工程における応力解析器3でのピーク回転周波数解析結果、ピーク回転応力解析結果、生波形解析結果及び前記共有サーバ4の材料特性値データベース11に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく変動強度評価とがレポート作成用パーソナルコンピュータ5により評価工程として行われ、該評価工程における静的強度評価と変動強度評価とに基づいてエンジンの製品開発が行われる。
【0011】
尚、前述の如きエンジンの応力解析と関連する一般的技術水準を示すものとしては、例えば、特許文献1がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開2009−222539号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、前述の如き従来のエンジン用応力解析装置においては、前記変動応力測定器2で測定され紙に出力された変動応力をオペレータが応力解析器3に手動入力し、更に、前記静歪測定器1で測定され紙に出力された静歪と、前記応力解析器3で測定され紙に出力された各解析結果と、前記共有サーバ4に材料特性値データベース11として記憶されているエンジンの材料特性値とをレポート作成用パーソナルコンピュータ5にオペレータが手動入力することにより、レポートを作成することが行われていたため、効率が悪く、又、固有振動数測定による周波数解析に手間が掛かっており、共振により高い応力が発生することを評価することに関し改善の余地が残されていた。
【0014】
本発明は、斯かる実情に鑑み、エンジンに作用する応力の解析を効率良く行うことができ、且つある周波数帯での共振による高い応力の発生をも確実に評価し得るエンジン用応力解析装置を提供しようとするものである。
【課題を解決するための手段】
【0017】
本発明は、エンジンの被測定部位における歪を電気信号として検出するセンサ手段と、
該センサ手段で検出された電気信号を増幅する増幅手段と、
該増幅手段で増幅された電気信号に基づきエンジンの被測定部位における静歪を測定する静歪測定部と、前記増幅手段で増幅された電気信号に基づきエンジンの被測定部位における固有振動数を測定する固有振動数測定部と、前記増幅手段で増幅された電気信号に基づきエンジン実動時の被測定部位における変動応力を測定する変動応力測定部とを有する計測演算手段と、
前記エンジンの材料特性値が材料特性値データベースとして記憶された共有サーバ手段と、
前記計測演算手段で求められた静歪測定結果に基づく静歪解析と、前記計測演算手段で求められた固有振動数測定結果に基づく周波数解析と、前記計測演算手段で求められた変動応力測定結果に基づくピーク回転周波数解析と、前記計測演算手段で求められた変動応力測定結果に基づくピーク回転応力解析と、前記計測演算手段で求められた変動応力測定結果に基づく生波形解析とを行い、前記静歪解析結果及び前記共有サーバ手段に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく静的強度評価と、前記周波数解析結果及びピーク回転周波数解析結果に基づく共振評価と、前記ピーク回転応力解析結果及び前記共有サーバ手段に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく変動強度評価とを行う演算解析処理手段と
を備えたことを特徴とするエンジン用応力解析装置にかかるものである。
【0018】
前記エンジン用応力解析装置においては、前記演算解析処理手段において、前記静的強度評価及び変動強度評価に基づいて両振換算応力を計算し、前記材料特性値としての疲労限応力を用いることにより、安全率を、
安全率=疲労限応力/両振換算応力
の式から求めるよう構成することができる。
【0019】
上記手段によれば、以下のような作用が得られる。
【0020】
先ず、センサ手段によりエンジンの被測定部位における歪が電気信号として検出され、該電気信号が増幅手段で増幅される。
【0021】
前記増幅手段で増幅された電気信号に基づき、エンジンの被測定部位における静歪が計測演算手段の静歪測定部で測定されると共に、エンジンの被測定部位における固有振動数が計測演算手段の固有振動数測定部で測定され、前記計測演算手段の静歪測定部で求められた静歪測定結果に基づく静歪解析と、前記計測演算手段の固有振動数測定部で求められた固有振動数測定結果に基づく周波数解析とが演算解析処理手段で行われ、該演算解析処理手段で更に前記静歪解析結果及び共有サーバ手段に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく静的強度評価が行われる。
【0022】
続いて、実際にエンジンを始動して運転を行わせ、この状態で、センサ手段によりエンジン実動時の被測定部位における歪が電気信号として検出され、該電気信号が増幅手段で増幅され、該増幅手段で増幅された電気信号に基づきエンジン実動時の被測定部位における変動応力が計測演算手段の変動応力測定部で測定され、前記計測演算手段の固有振動数測定部で求められた固有振動数測定結果に基づく周波数解析と、前記計測演算手段の変動応力測定部で求められた変動応力測定結果に基づくピーク回転周波数解析と、前記計測演算手段の変動応力測定部で求められた変動応力測定結果に基づくピーク回転応力解析と、前記計測演算手段の変動応力測定部で求められた変動応力測定結果に基づく生波形解析とが演算解析処理手段で行われ、該演算解析処理手段で更に前記周波数解析結果及びピーク回転周波数解析結果に基づく共振評価と、前記ピーク回転応力解析結果及び前記共有サーバ手段に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく変動強度評価とが行われる。
【0023】
前記ピーク回転応力解析結果により、応力値が最大となる回転数を把握することが可能となる。
【0024】
前記生波形解析結果により、エンジン1サイクル中、最大応力が発生している位置が分かり、応力が発生している原因を推定することが可能となる。
【0025】
前記共振評価結果により、ある特定の同じ周波数に高い振幅値が出ている場合、共振による高い応力が発生していると判断することが可能となる。
【0026】
この結果、本発明においては、各解析に必要な測定項目が自動で入力されて解析が行われ、各解析結果のグラフが一つのシートに出力され、しかも、自動で必要項目を抽出し報告書形式で出力が行われるため、従来のエンジン用応力解析装置のように、前記変動応力測定器で測定され紙に出力された変動応力をオペレータが応力解析器に手動入力し、更に、前記静歪測定器で測定され紙に出力された静歪と、前記応力解析器で測定され紙に出力された各解析結果と、前記共有サーバに材料特性値データベースとして記憶されているエンジンの材料特性値とをレポート作成用パーソナルコンピュータにオペレータが手動入力する必要がなくなり、効率が非常に良くなる。
【0027】
又、本発明においては、固有振動数測定による周波数解析が行われ、ある周波数帯で共振により高い応力が発生することをも簡単に評価可能となる。
【0028】
本発明の場合、前記静的強度評価及び変動強度評価に基づいて両振換算応力を計算し、前記材料特性値としての疲労限応力を用いることにより、安全率を求めるようにすると、該安全率をエンジンの製品開発における一つの指標として役立てることが可能となる。
【発明の効果】
【0029】
本発明のエンジン用応力解析装置によれば、エンジンに作用する応力の解析を効率良く行うことができ、且つある周波数帯での共振による高い応力の発生をも確実に評価し得るという優れた効果を奏し得る。
【図面の簡単な説明】
【0030】
図1】本発明のエンジン用応力解析装置の実施例におけるハードウェア構成を示すブロック図である。
図2】本発明のエンジン用応力解析装置の実施例における計測から解析を経て評価に至る流れを示すフローチャートである。
図3】(a)は本発明のエンジン用応力解析装置の実施例におけるピーク回転応力解析結果を示す線図、(b)は本発明のエンジン用応力解析装置の実施例における生波形解析結果を示す線図、(c)は本発明のエンジン用応力解析装置の実施例における共振評価結果を示す線図である。
図4】本発明のエンジン用応力解析装置の実施例における安全率の評価の仕方を示す線図である。
図5】従来のエンジン用応力解析装置の一例におけるハードウェア構成を示すブロック図である。
図6】従来のエンジン用応力解析装置の一例における計測から解析を経て評価に至る流れを示すフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を添付図面を参照して説明する。
【0032】
図1図4は本発明のエンジン用応力解析装置の実施例であって、図中、図5及び図6と同一の符号を付した部分は同一物を表わしており、
エンジンの部品、例えば、シリンダブロックやシリンダヘッドの被測定部位における歪を電気信号として検出する歪ゲージ6からなるセンサ手段12と、
該センサ手段12としての歪ゲージ6で検出された電気信号を増幅する増幅器7からなる増幅手段13と、
該増幅手段13としての増幅器7で増幅された電気信号に基づきエンジンの被測定部位における静歪を測定する静歪測定部8と、前記増幅手段13としての増幅器7で増幅された電気信号に基づきエンジンの被測定部位における固有振動数を測定する固有振動数測定部14と、前記増幅手段13としての増幅器7で増幅された電気信号に基づきエンジン実動時の被測定部位における変動応力を測定する変動応力測定部9とを有する計測演算手段15と、
前記エンジンの材料特性値が材料特性値データベース11として記憶された共有サーバ手段16と、
前記計測演算手段15で求められた静歪測定結果に基づく静歪解析と、前記計測演算手段15で求められた固有振動数測定結果に基づく周波数解析と、前記計測演算手段15で求められた変動応力測定結果に基づくピーク回転周波数解析と、前記計測演算手段15で求められた変動応力測定結果に基づくピーク回転応力解析(図3(a)参照)と、前記計測演算手段15で求められた変動応力測定結果に基づく生波形解析(図3(b)参照)とを行い、前記静歪解析結果及び前記共有サーバ手段16に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく静的強度評価と、前記周波数解析結果及びピーク回転周波数解析結果に基づく共振評価(図3(c)参照)と、前記ピーク回転応力解析結果及び前記共有サーバ手段16に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく変動強度評価とを行うパーソナルコンピュータ等の演算処理部10を有する演算解析処理手段17と
を備えることにより、エンジン用応力解析装置18を構成したものである。
【0033】
本実施例の場合、前記演算解析処理手段17において、前記静的強度評価及び変動強度評価に基づいて両振換算応力を計算し、前記材料特性値としての疲労限応力を用いることにより、安全率を、
[数1]
安全率=疲労限応力/両振換算応力
の式から求めるよう構成してある。
【0034】
因みに、前記両振換算応力とは、繰返し荷重の向きと大きさが時間と共に変化する、いわゆる両振荷重が作用することを想定し、該荷重に抵抗して釣り合いを保とうとする応力に前記変動応力値を換算したものであって、図4に示す如く、横軸に静歪、縦軸に変動応力を取り、予め、前記材料特性値に基づく降伏点応力並びに真破断応力を横軸途中に設定すると共に、前記材料特性値に基づく疲労限応力並びに降伏点応力を縦軸途中に設定しておき、実際に測定される静歪値と変動応力値との交点Dをプロットし、該交点Dと前記真破断応力とを結ぶ直線と縦軸との交点が前記両振換算応力となる。
【0035】
尚、エンジン実動時には、実際に車両で運転される回転並びに負荷を模擬して変化させた、いわゆるスイープ運転を行うようにしてある。
【0036】
次に、上記実施例の作用を説明する。
【0037】
先ず、エンジンの部品、例えば、シリンダブロックやシリンダヘッドの被測定部位にセンサ手段12としての歪ゲージ6が貼り付けられ、該センサ手段12としての歪ゲージ6によりエンジンの被測定部位における歪が電気信号として検出され、該電気信号が増幅手段13としての増幅器7で増幅される。
【0038】
前記増幅手段13としての増幅器7で増幅された電気信号に基づき、エンジンの被測定部位における静歪が計測演算手段15の静歪測定部8で測定されると共に、エンジンの被測定部位における固有振動数が計測演算手段15の固有振動数測定部14で測定され、前記計測演算手段15の静歪測定部8で求められた静歪測定結果に基づく静歪解析と、前記計測演算手段15の固有振動数測定部14で求められた固有振動数測定結果に基づく周波数解析とが演算解析処理手段17の演算処理部10で行われ、該演算解析処理手段17の演算処理部10で更に前記静歪解析結果及び共有サーバ手段16に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく静的強度評価が行われる。
【0039】
続いて、実際にエンジンを始動してスイープ運転を行わせ、この状態で、センサ手段12としての歪ゲージ6によりエンジン実動時の被測定部位における歪が電気信号として検出され、該電気信号が増幅手段13としての増幅器7で増幅され、該増幅手段13としての増幅器7で増幅された電気信号に基づきエンジン実動時の被測定部位における変動応力が計測演算手段15の変動応力測定部9で測定され、前記計測演算手段15の固有振動数測定部14で求められた固有振動数測定結果に基づく周波数解析と、前記計測演算手段15の変動応力測定部9で求められた変動応力測定結果に基づくピーク回転周波数解析と、前記計測演算手段15の変動応力測定部9で求められた変動応力測定結果に基づくピーク回転応力解析(図3(a)参照)と、前記計測演算手段15の変動応力測定部9で求められた変動応力測定結果に基づく生波形解析(図3(b)参照)とが演算解析処理手段17の演算処理部10で行われ、該演算解析処理手段17の演算処理部10で更に前記周波数解析結果及びピーク回転周波数解析結果に基づく共振評価(図3(c)参照)と、前記ピーク回転応力解析結果及び前記共有サーバ手段16に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく変動強度評価とが行われる。
【0040】
即ち、図1に示す本実施例のエンジン用応力解析装置18においては、図2のフローチャートに示す如く、エンジンの被測定部位における静歪測定及び固有振動数測定と、エンジン実動時の被測定部位における変動応力測定とが計測工程として行われ、該計測工程における静歪測定結果に基づく静歪解析と、前記計測工程における固有振動数測定結果に基づく周波数解析と、前記計測工程における変動応力測定結果に基づくピーク回転周波数解析と、前記計測工程における変動応力測定結果に基づくピーク回転応力解析と、前記計測工程における変動応力測定結果に基づく生波形解析とが解析工程として行われ、該解析工程における静歪解析結果及び材料特性値データベース11に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく静的強度評価と、前記解析工程における周波数解析結果及びピーク回転周波数解析結果に基づく共振評価と、前記解析工程におけるピーク回転応力解析結果及び前記材料特性値データベース11に記憶されたエンジンの材料特性値に基づく変動強度評価とが評価工程として行われ、該評価工程における静的強度評価と共振評価と変動強度評価とに基づいてエンジンの製品開発が行われる。
【0041】
前記ピーク回転応力解析結果は、例えば図3(a)に示す如く、横軸に回転数、縦軸に応力値を取った線図として表され、応力値が最大となる回転数を把握することが可能となる。
【0042】
前記生波形解析結果は、例えば図3(b)に示す如く、横軸にエンジンクランクシャフトの角度、縦軸に応力値を取った線図として表され、エンジン1サイクル(720°)中、最大応力が発生している位置が分かり、応力が発生している原因を推定することが可能となる。
【0043】
前記共振評価結果は、例えば図3(c)に示す如く、横軸に周波数、縦軸に振幅を取った線図として表され、ある特定の同じ周波数に高い振幅値が出ている場合、共振による高い応力が発生していると判断することが可能となる。
【0044】
又、本実施例の場合、前記演算解析処理手段17においては、前記静的強度評価及び変動強度評価に基づいて両振換算応力が計算され、前記材料特性値としての疲労限応力を用いることにより、安全率が前記[数1]式から求められ、エンジンの製品開発における一つの指標として役立てられる。
【0045】
この結果、本実施例においては、各解析に必要な測定項目が自動で入力されて解析が行われ、各解析結果のグラフが一つのシートに出力され、しかも、自動で必要項目を抽出し報告書形式で出力が行われるため、図5及び図6に示される従来のエンジン用応力解析装置のように、前記変動応力測定器2で測定され紙に出力された変動応力をオペレータが応力解析器3に手動入力し、更に、前記静歪測定器1で測定され紙に出力された静歪と、前記応力解析器3で測定され紙に出力された各解析結果と、前記共有サーバ4に材料特性値データベース11として記憶されているエンジンの材料特性値とをレポート作成用パーソナルコンピュータ5にオペレータが手動入力する必要がなくなり、効率が非常に良くなる。
【0046】
又、本実施例においては、固有振動数測定による周波数解析が行われ、ある周波数帯で共振により高い応力が発生することをも簡単に評価可能となる。
【0047】
こうして、エンジンに作用する応力の解析を効率良く行うことができ、且つある周波数帯での共振による高い応力の発生をも確実に評価し得る。
【0048】
尚、本発明のエンジン用応力解析装置は、上述の実施例にのみ限定されるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲内において種々変更を加え得ることは勿論である。
【符号の説明】
【0049】
8 静歪測定部
9 変動応力測定部
10 演算処理部
11 材料特性値データベース
12 センサ手段
13 増幅手段
14 固有振動数測定部
15 計測演算手段
16 共有サーバ手段
17 演算解析処理手段
18 エンジン用応力解析装置
図1
図2
図3
図4
図5
図6