【実施例1】
【0014】
以下、本発明を適用した車両用フロア構造の実施例1について説明する。
実施例1の車両用フロア構造は、例えば乗用車等の自動車の前席乗員足元に設けられるものである。
図1は、実施例1の車両用フロア構造を有する車両の助手席側車室内前部を示す斜視図である。
図2は、実施例1の車両用フロア構造の拡大斜視図である。
図3は、実施例1の車両用フロア構造の側面視図である。
【0015】
車両は、フロアパネル10、トーボード20、フロアトンネル30、インストルメントパネル40等を有して構成されている。
フロアパネル10は、車室の床面部を構成する面部であって、水平面にほぼ沿って配置されている。
トーボード20は、フロアパネル10の前端部から前側上方に張り出して形成された斜面部である。
トーボード20の車幅方向外側の領域には、車室内側に凸曲面状に張り出したホイルハウス21(
図2参照)が形成されている。
フロアトンネル30は、フロアパネル10の車幅方向中央部を車室内側に張り出させて形成した部分である。
インストルメントパネル40は、トーボード20の上方に設けられた内装部材であって、計器類、空調装置、オーディオビジュアル装置、助手席用エアバッグ装置などを収容するものである。
【0016】
また、車両は、以下説明する下肢移動規制手段100を備えている。
下肢移動規制手段100は、第1回転板110、第2回転板120、エネルギ吸収(EA)ボックス130等を備えて構成されている。
【0017】
第1回転板110は、乗員足部Fの足裏における爪先T側の領域と対向して配置された平板状の部材である。
第1回転板110は、上端部側よりも下端部側が広がった実質的に台形状に形成されている。
第1回転板110の上端部は、トーボード20に固定され車両後方側に突き出したブラケット111の後端部に接続されている。
第1回転板110の上端部とブラケット111の後端部との間には、車幅方向にほぼ沿った軸回りに両者の相対回動を許容するヒンジ112が設けられている。
【0018】
第2回転板120は、乗員足部Fの足裏における踵H側の領域と対向して配置された平板状の部材である。
第2回転板120は、実質的に矩形状に形成されている。
第2回転板120の下端部は、フロアパネル10に固定され車両上方側に突き出したブラケット121の上端部に接続されている。
第2回転板120の下端部とブラケット121の上端部との間には、車幅方向にほぼ沿った軸回りに両者の相対回動を許容するヒンジ122が設けられている。
【0019】
EAボックス130は、第1回転板110及び第2回転板120と、トーボード20との間に配置され、衝突時に圧壊することによってエネルギ吸収を行う部材である。
EAボックス130は、例えばABS樹脂等の樹脂材料によってボックス状に形成され、底面部がトーボード20に固定されている。
【0020】
図3に示すように、第1回転板110及び第2回転板120は、衝突前には、トーボード20とほぼ平行となるように、前上がりに傾斜して配置されている。
第1回転板110の下端部と第2回転板120の上端部とは、隙間を隔てて隣接して配置されている。
第1回転板110及び第2回転板120のトーボード20側の面部は、EAボックス130の上面部と当接している。
また、下肢移動規制手段100の車室内側には、図示しないフロアカーペット、フロアマット等の、下肢移動規制手段100の動作を阻害しない程度の可撓性を有する内装部材が適宜設けられる。
【0021】
次に、上述した実施例1の効果を、以下説明する本発明の比較例と対比して説明する。
なお、以下説明する比較例及び実施例において、従前の実施例と実質的に同様の箇所については同じ符号を付して説明を省略し、主に相違点について説明する。
図4は、比較例の車両用フロア構造における前面衝突時の助手席乗員脚部の挙動を、
図4(a)、
図4(b)、
図4(c)に時系列で順次示す側面視図である。
比較例の車両用フロア構造は、実施例1における下肢移動規制手段100が設けられていないものである。
比較例においては、
図4(a)に示す状態から、
図4(b)に示す状態のように、衝突時に乗員の足部Fがトーボード20の傾斜に沿って駆け上がる(滑り上がる)挙動を示し、爪先Tがトーボード20に突き当たって、脚部Lの軸力が瞬間的に増大してしまう。
その後、
図4(c)に示す衝突後期においては、トーボード20の後退によって、脚部Lの軸力はさらに大きくなり、傷害値が悪化してしまう。
【0022】
一方、
図5は、実施例1の車両用フロア構造における前面衝突時の助手席乗員脚部の挙動を、
図5(a)、
図5(b)、
図5(c)に時系列で順次示す側面視図である。
実施例1においては、衝突により乗員の足部Fから下肢移動規制手段100に対して入力があった場合、第1回転板110及び第2回転板120は、ヒンジ112,122回りに回動し、第1回転板110の下端部及び第2回転板120の上端部は、EAボックス130を圧壊させつつトーボード20に近接する方向に回動する。
このような挙動によって、第1回転板110の傾斜が衝突前よりも大きくなり、乗員の足首(脚部Lと足部Fとの接続部)が爪先Tが上がる方向に曲がり、同時に膝も曲げられることによって、比較例のような足部Fの駆け上がりは抑制される。
また、ブラケット111が、第1回転板110の爪先T付近の領域を、トーボード20から離間させて支持していることによって、爪先Tがトーボード20に衝突しにくく、爪先Tがトーボード20に突き当たって脚部Lの軸力が瞬間的に増大することを防止できる。
さらに、
図5(c)に示す衝突後期ではEAボックス130が圧壊してエネルギを吸収することによって、脚部Lの軸力をさらに軽減することができる。
【0023】
図6は、実施例1及び比較例の車両用フロア構造における衝突時の乗員脚部軸力の推移の一例を示すグラフである。
図中、横軸は時間を示し、縦軸は脚部の下肢軸力を示している。また、実施例1、比較例のデータをそれぞれ実線、破線で示す。
図6に示すように、比較例においては、乗員の爪先Tがトーボード20に突き当たることによって発生するピークP1、及び、トーボード20の後退により発生するピークP2が見られるが、実施例においては、このようなピークが効果的に低減され、乗員の脚部Lに作用する軸力が大幅に低減されていることがわかる。
【実施例7】
【0029】
次に、本発明を適用した車両用フロア構造の実施例7について説明する。
図12は、実施例7の車両用フロア構造の側面視図である。
実施例7の下肢移動規制手段700は、トーボード20に取付けられたEAボックス710、EAボックス720を有して構成されている。
EAボックス710は、乗員の爪先T近傍の足裏と当接する領域に設けられている。
EAボックス720は、乗員の爪先T近傍以外の足裏と当接する領域に設けられている。
EAボックス710及びEAボックス720の相互に対向する側面部は、密着して配置されている。
足裏から受ける圧縮荷重に対するEAボックス710の変形破壊強度は、EAボックス720の変形破壊強度に対して大きく設定されている。
このような構成により、衝突時におけるEAボックス720の圧縮変形(潰れ)量はEAボックス710の圧縮変形量に対して大きくなり、乗員の足首を曲げつつエネルギの吸収を図れるようになっている。
以上説明した実施例7においても、上述した各実施例と同様の効果を得ることができる。