特許第5902539号(P5902539)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5902539樹脂組成物、それを用いたタッチパネルセンサ用透明膜およびタッチパネル
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902539
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】樹脂組成物、それを用いたタッチパネルセンサ用透明膜およびタッチパネル
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/07 20060101AFI20160331BHJP
   C08L 83/06 20060101ALI20160331BHJP
   C08K 5/3492 20060101ALI20160331BHJP
   G03F 7/075 20060101ALI20160331BHJP
   C08F 290/06 20060101ALI20160331BHJP
   G03F 7/004 20060101ALI20160331BHJP
   G03F 7/027 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   C08L83/07
   C08L83/06
   C08K5/3492
   G03F7/075 521
   C08F290/06
   G03F7/075 511
   G03F7/004 501
   G03F7/027
【請求項の数】5
【全頁数】26
(21)【出願番号】特願2012-82945(P2012-82945)
(22)【出願日】2012年3月30日
(65)【公開番号】特開2013-213864(P2013-213864A)
(43)【公開日】2013年10月17日
【審査請求日】2015年2月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000002897
【氏名又は名称】大日本印刷株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】000183923
【氏名又は名称】株式会社DNPファインケミカル
(74)【代理人】
【識別番号】100101203
【弁理士】
【氏名又は名称】山下 昭彦
(74)【代理人】
【識別番号】100104499
【弁理士】
【氏名又は名称】岸本 達人
(72)【発明者】
【氏名】那須 慎太郎
(72)【発明者】
【氏名】塩田 聡
(72)【発明者】
【氏名】武市 浩
【審査官】 岡▲崎▼ 忠
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2010/061744(WO,A1)
【文献】 国際公開第2011/114884(WO,A1)
【文献】 特開2010−065192(JP,A)
【文献】 特開2010−039052(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 83/00−83/16
C08F 290/00−290/14
C08K 5/00−5/59
G03F 7/00−7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
現像性基を有し、ラジカル重合性基を実質的に含まない現像性ポリシロキサンと、
ラジカル重合性基を有し、現像性基を実質的に含まない重合性ポリシロキサンと、
多官能性モノマーと、
を有し、
前記現像性ポリシロキサンが有する現像性基が、カルボキシル基であり、
前記現像性ポリシロキサンは、前記ラジカル重合性基を含む構成単位の含有量が前記現像性ポリシロキサンを構成する全構成単位中の3モル%以下であり、
前記重合性ポリシロキサンは、前記ラジカル重合性基を含む構成単位の含有量が前記重合性ポリシロキサンを構成する全構成単位中の5モル%以上であり、
前記多官能性モノマーがトリアジン環骨格を有する化合物であることを特徴とする樹脂組成物。
【請求項2】
リン酸化合物を有することを特徴とする請求項1に記載の樹脂組成物。
【請求項3】
高屈折率化剤を有することを特徴とする請求項1または請求項2に記載の樹脂組成物。
【請求項4】
現像性基を有し、ラジカル重合性基を実質的に含まない現像性ポリシロキサンと、
ラジカル重合性基を有し、現像性基を実質的に含まない重合性ポリシロキサンと、
多官能性モノマーと、
を有し、
前記現像性ポリシロキサンが有する前記現像性基が、カルボキシル基であり、
前記現像性ポリシロキサンは、前記ラジカル重合性基を含む構成単位の含有量が前記現像性ポリシロキサンを構成する全構成単位中の3モル%以下であり、
前記重合性ポリシロキサンは、前記ラジカル重合性基を含む構成単位の含有量が前記重合性ポリシロキサンを構成する全構成単位中の5モル%以上であり、
前記多官能性モノマーがトリアジン環骨格を有する化合物である樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とするタッチパネル用透明膜。
【請求項5】
透明基材と、
前記透明基材上に形成されたセンサ電極と、
を有するタッチパネルであって、
現像性基を有し、ラジカル重合性基を実質的に含まない現像性ポリシロキサンと、
ラジカル重合性基を有し、現像性基を実質的に含まない重合性ポリシロキサンと、
多官能性モノマーと、
を有し、
前記現像性ポリシロキサンが有する前記現像性基が、カルボキシル基であり、
前記現像性ポリシロキサンは、前記ラジカル重合性基を含む構成単位の含有量が前記現像性ポリシロキサンを構成する全構成単位中の3モル%以下であり、
前記重合性ポリシロキサンは、前記ラジカル重合性基を含む構成単位の含有量が前記重合性ポリシロキサンを構成する全構成単位中の5モル%以上であり、
前記多官能性モノマーがトリアジン環骨格を有する化合物である樹脂組成物を用いて形成されたタッチパネル用透明膜を有することを特徴とするタッチパネル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、硬度および耐熱性に優れた樹脂膜を形成可能な樹脂組成物に関するものである。
【背景技術】
【0002】
光透過性を有する透明膜を形成可能な樹脂組成物は、広く光学機器の形成に用いられている。
ここで、樹脂組成物としては、特許文献1等に開示されるようなアクリレート系材料を主成分とするUV硬化型樹脂組成物が広く用いられている。
しかしながら、アクリレート系材料等の有機系材料は、十分な硬度を有するものとすることが難しいといった問題があった。このため、例えば、光学機器の表面に設けられる保護層等として用いた場合には、十分な耐擦傷性等を示すことができない場合があるといった問題があった。
このような問題に対して、特許文献2では、無機系材料を主成分として含み、さらに、パターニング性を有する無機系樹脂組成物が開示されている。上記無機系樹脂組成物によれば、十分な硬度を有するものとすることができ、光学機器の保護層等として用いた場合に、耐擦傷性に優れた透明膜を形成することができる。
【0003】
しかしながら、上記無機系樹脂組成物では耐熱性が不十分であり、光学機器の製造過程や使用時に高温状態となった際に、変色による透明性の低下や機能低下を生じるといった問題があった。
例えば、タッチパネル等の光学機器では、電極として透明電極が用いられることがある。従来、このような透明電極は、製造過程において230℃程度の熱処理が行われるのが一般的であった。しかしながら、近年では透明電極の細線化、薄層化に伴い、例えば細線であっても十分な電流を流せるようにするため、透明電極の抵抗値の減少を目的として、250℃〜300℃の高温で処理をする高温熱処理(アニール)工程が行われるようになった。これに対して、従来の無機系樹脂組成物を用いて形成された樹脂膜では、230℃の熱処理で黄変や剥離、密着不良が生じない組成物であっても、透明電極形成時の250℃〜300℃の高温熱処理工程を行った際に、黄変や密着不良を生じるといった問題があった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2008−225136号公報
【特許文献2】国際公開公報第2010/061744号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、硬度および耐熱性に優れた樹脂膜を形成可能な樹脂組成物を提供することを主目的とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記課題を解決するために、本発明は、現像性基を有し、ラジカル重合性基を実質的に含まない現像性ポリシロキサンと、ラジカル重合性基を有し、現像性基を実質的に含まない重合性ポリシロキサンと、多官能性モノマーと、を有することを特徴とする樹脂組成物を提供する。
【0007】
本発明によれば、上記現像性ポリシロキサンおよび重合性ポリシロキサンの両者を含むことにより、耐熱性に優れた樹脂膜を形成することができる。
【0008】
本発明においては、上記多官能性モノマーがトリアジン環骨格を有する化合物であることが好ましい。上記樹脂組成物を、250℃以上の高温熱処理工程を行った後にも密着性や耐黄変性に優れた樹脂膜を形成可能なものとすることができるからである。
【0009】
本発明においては、リン酸化合物を有することが好ましい。樹脂膜をITO等の透明電極材料等に対する密着性に優れたものとすることができるからである。
【0010】
本発明においては、高屈折率化剤を有することが好ましい。本発明の樹脂組成物を用いて形成された樹脂膜を屈折率の高いものとすることができる。このため、例えば、ITO等の透明電極材料を用いて形成された透明電極上に上記樹脂膜が積層された場合、上記透明電極のパターンの不可視化を図ることができるからである。
【0011】
本発明は、現像性基を有し、ラジカル重合性基を実質的に含まない現像性ポリシロキサンと、ラジカル重合性基を有し、現像性基を実質的に含まない重合性ポリシロキサンと、多官能性モノマーと、を有する樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とするタッチパネル用透明膜を提供する。
【0012】
本発明によれば、上記樹脂組成物を用いて形成されたものであるため、250℃以上の高温熱処理工程を行った後でも密着性に優れ黄変の少ないものとすることができる。
【0013】
本発明は、透明基材と、上記透明基材上に形成されたセンサ電極と、を有するタッチパネルであって、現像性基を有し、ラジカル重合性基を実質的に含まない現像性ポリシロキサンと、ラジカル重合性基を有し、現像性基を実質的に含まない重合性ポリシロキサンと、多官能性モノマーと、を有する樹脂組成物を用いて形成されたタッチパネル用透明膜を有することを特徴とするタッチパネルを提供する。
【0014】
本発明によれば、上記樹脂組成物を用いて形成されたタッチパネル用透明膜を有するものであるため、このようなタッチパネル用透明膜を用いて形成された部材を耐熱性に優れたものとすることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明は、硬度および耐熱性に優れた樹脂膜を形成可能な樹脂組成物を提供することができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明におけるタッチパネルの一例を示す概略平面図である。
図2図1のA−A線断面図である。
図3図1のB−B線断面図である。
図4】本発明におけるセンサ電極を説明する説明図である。
図5】本発明におけるセンサ電極を説明する説明図である。
図6】本発明のタッチパネルの製造方法を示す工程図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明は、樹脂組成物、それを用いたタッチパネル用透明膜、およびそれを用いたタッチパネルに関するものである。
以下、本発明の樹脂組成物、タッチパネル用透明膜およびタッチパネルについて説明する。
【0018】
A.樹脂組成物
まず、本発明の樹脂組成物について説明する。
本発明の樹脂組成物は、現像性基を有し、ラジカル重合性基を実質的に含まない現像性ポリシロキサンと、ラジカル重合性基を有し、現像性基を実質的に含まない重合性ポリシロキサンと、多官能性モノマーと、を有することを特徴とするものである。
【0019】
本発明によれば、上記現像性ポリシロキサンおよび重合性ポリシロキサンの両者を含むことにより、耐熱性に優れた樹脂膜を形成することができる。
ここで、上記現像性ポリシロキサンおよび重合性ポリシロキサンの両者を含むことにより、耐熱性に優れた樹脂膜を形成できる理由については、以下のように推察される。
すなわち、エチレン性不飽和二重結合等の重合性基を有するポリシロキサンとカルボキシル基等の現像性基を有するポリシロキサンを併用することにより、重合性基および現像性基の両者を有するポリシロキサンと比較して、現像性基と結合しているSi原子の割合が減少する。そのため、現像の際に溶出するSi原子数、つまり脱離するポリシロキサン量が少ないものとすることができ、現像前後での収縮量が少なく、現像後の膜内の応力が減少することで密着性が向上し、高温加熱後も耐熱性、密着性に優れたものになると考えられる。
また、一般に、ポリシロキサンの原料であるシラン化合物の反応性は、官能基の種類により差が生じる。このため、二重結合を有するポリシロキサンとカルボキシル基を有するポリシロキサンと、をそれぞれ合成することにより、二重結合およびカルボキシル基の両者を有するポリシロキサンと比較して合成時の反応の制御が容易になると考えられる。したがって、本発明においては、現像性ポリシロキサンおよび重合性ポリシロキサンのそれぞれのポリシロキサンの分子量等が精度良く制御されたものとすることができる。このことも、耐熱性向上に効果を及ぼしているものと考えられる。
【0020】
本発明の樹脂組成物は、現像性ポリシロキサン、重合性ポリシロキサンおよび多官能性モノマーを有するものである。
以下、本発明の樹脂組成物の各成分について詳細に説明する。
【0021】
1.現像性ポリシロキサン
本発明における現像性ポリシロキサンは、現像性基を有し、ラジカル重合性基を実質的に含まないものである。
【0022】
ここで、ラジカル重合性基を実質的に含まないとは、現像性ポリシロキサンの現像性を損なう程度に現像性ポリシロキサン同士および多官能性モノマーと架橋しないものであり、現像性ポリシロキサンが未露光の部位から現像時に除去されるものをいうものであり、具体的には、ラジカル重合性基を含む構成単位の含有量が現像性ポリシロキサンを構成する全構成単位中の5モル%以下であることが好ましく、なかでも、3モル%以下であることが好ましく、特に、0モル%、すなわち、ラジカル重合性基を含む構成単位を含まないものであることが好ましい。現像性および耐熱性の両者に優れたものとすることができるからである。
【0023】
(1)現像性基
上記現像性基としては、水系現像液による現像性を向上させることができるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、カルボキシル基や、水酸基、リン酸基、スルホン酸基、シラノール基等を挙げることができる。
本発明においては、なかでも、カルボキシル基であることが好ましい。現像性に優れたものとすることができるからである。
また、上記水酸基としては、フェノール性水酸基であることが好ましい。現像性に優れたものとすることができるからである。
本発明における現像性基としては、現像性ポリシロキサン中に2種類以上含むものであっても良い。
なお、水系現像液としては、水を溶媒として用いる現像液であれば特に限定されるものではなく、例えば、アルカリ金属の水酸化物、炭酸塩、リン酸塩、ケイ酸塩、ホウ酸塩、などの無機化合物、トリメチルアンモニウムヒドロキサイド、2−ヒドロキシエチルトリメチルアンモニウムヒドロキサイド、などの4級アンモニウム塩、2−ジエチルアミノエタノール、モノエタノールアミンなどのアミン化合物、などの水溶液を挙げることができる。
【0024】
上記現像性基を含む構成単位の含有量としては、上記現像性ポリシロキサンを所望の酸価を有するものとするものであれば良い。
【0025】
上記現像性基を含む構成単位を形成可能なモノマー成分としては、ポリシロキサンを形成可能なシラン化合物であれば特に限定されるものではない。
本発明においては、なかでも、上記現像性基またはその無水物を有し、ケイ素原子にアルコキシ基が2以上結合するオルガノシラン化合物(以下、現像性基含有オルガノシラン化合物とする。)であることが好ましい。上記現像性基含有オルガノシラン化合物を用いることにより、これを加水分解し縮重合することで、容易に現像性ポリシロキサンを得られるからである。
【0026】
上記アルコキシ基としては、メトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基、ターシャリーブトキシ基、フェノキシ等を挙げることができ、なかでもメトキシ基、エトキシ基、ノルマルプロポキシ基、イソプロポキシ基、ノルマルブトキシ基等を挙げることができ、特にメトキシ基、エトキシ基等であることが好ましい。上記官能基であることにより、ポリシロキサン合成時の加水分解反応が容易に進行すると共に、生成したアルコールを系内から容易に留去可能だからである。
【0027】
上記現像性基含有オルガノシラン化合物に含まれるアルコキシ基の数としては、2以上であれば良いが、3であることが好ましい。高密度な現像性ポリシロキサンとすることができ、耐熱性に優れたものとすることができるからである。
【0028】
上記現像性基含有オルガノシラン化合物の具体例としては、3−トリメトキシシリルプロピルカルボン酸、3−トリエトキシシリルプロピルカルボン酸、3−トリフェノキシシリルプロピルカルボン酸、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリフェノキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリメトキシシリルプロピルシクロヘキシルコハク酸無水物、3−トリメトキシシリルプロピルフタル酸無水物、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリプロポキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)エチルトリブトキシシラン、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピルトリエトキシシラン、2−(4−ヒドロキシフェニル)プロピルトリプロポキシシラン、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピルトリブトキシシラン、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルトリプロポキシシラン、2−(3−ヒドロキシフェニル)エチルトリブトキシシラン、3−(3−ヒドロキシフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(3−ヒドロキシフェニル)プロピルトリエトキシシラン、2−(3−ヒドロキシフェニル)プロピルトリプロポキシシラン、3−(3−ヒドロキシフェニル)プロピルトリブトキシシラン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルトリメトキシシラン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルトリエトキシシラン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルトリプロポキシシラン、2−(2−ヒドロキシフェニル)エチルトリブトキシシラン、3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピルトリメトキシシラン、3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピルトリエトキシシラン、2−(2−ヒドロキシフェニル)プロピルトリプロポキシシラン、3−(2−ヒドロキシフェニル)プロピルトリブトキシシラン等を挙げることができ、なかでも、3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリフェノキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリメトキシシリルプロピルシクロヘキシルコハク酸無水物、3−トリメトキシシリルプロピルフタル酸無水物を挙げることができ、特に3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸無水物、3−トリエトキシシリルプロピルコハク酸無水物等を好ましく用いることができる。上記化合物を用いることで、上記現像性ポリシロキサン合成の反応を容易に進めることが可能だからである。
【0029】
(2)ラジカル重合性基
ラジカル重合性基としては、ラジカル重合性を有するものであれば特に限定されるものではないが、エチレン性不飽和二重結合基が好ましく、具体的には、アクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基等を挙げることができる。
【0030】
上記ラジカル重合性基を含む構成単位を形成可能なモノマー成分としては、ポリシロキサンを形成可能なシラン化合物であれば特に限定されるものではない。
本発明においては、なかでも、上記ラジカル重合性基を有し、ケイ素原子にアルコキシ基が2以上結合するオルガノシラン化合物(以下、ラジカル重合性基含有オルガノシラン化合物とする。)であることが好ましい。上記ラジカル重合性基含有オルガノシラン化合物を用いることにより、これを加水分解し縮重合することで、容易に現像性ポリシロキサンを得られるからである。
また、アルコキシ基およびその数としては、上記「(1)現像性基」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0031】
上記ラジカル重合性基含有オルガノシラン化合物の具体例としては、γ―アクリロイルトリメトキシシラン、γ―アクリロイルトリエトキシシラン、γ―アクリロイル(メチル)ジメトキシシラン、γ―アクリロイル(メチル)ジエトキシシラン、γ―メタクリロイルトリメトキシシラン、γ―メタクリロイルトリエトキシシラン、γ―メタクリロイル(メチル)ジメトキシシラン、γ―メタクリロイル(メチル)ジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(メチル)ジメトキシシラン、ビニル(メチル)ジエトキシシラン、アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリル(メチル)ジメトキシシラン、アリル(メチル)ジエトキシシラン、スチリルトリメトキシシラン、スチリルトリエトキシシラン、スチリル(メチル)ジメトキシシラン、スチリル(メチル)ジエトキシシラン等を挙げることができ、なかでも、γ―アクリロイルトリメトキシシラン、γ―アクリロイルトリエトキシシラン、γ―アクリロイル(メチル)ジメトキシシラン、γ―アクリロイル(メチル)ジエトキシシラン、γ―メタクリロイルトリメトキシシラン、γ―メタクリロイルトリエトキシシラン、γ―メタクリロイル(メチル)ジメトキシシラン、γ―メタクリロイル(メチル)ジエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニル(メチル)ジメトキシシラン、ビニル(メチル)ジエトキシシラン等を挙げることができ、特にγ―アクリロイルトリメトキシシラン、γ―アクリロイルトリエトキシシラン、γ―メタクリロイルトリメトキシシラン、γ―メタクリロイルトリエトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等を好ましく用いることができる。上記シラン化合物を用いることで高密度のポリシロキサンを得ることが可能となり、ラジカル重合性基の反応性とも合わせて、耐熱性に優れたものとすることが可能になるからである。
【0032】
(3)その他の構成
本発明における現像性ポリシロキサンは、上記現像性基を含むものであるが、必要に応じて他の官能基を有するものであっても良い。
このような他の官能基としては、水素または、分枝状または非分枝状C1〜C20の置換もしくは非置換の飽和または不飽和炭化水素基を挙げることができ、より具体的には、アルキル基、アルケニル基、アルキニル基、置換もしくは非置換アリール基、置換もしくは非置換ヘテロアリール基、置換もしくは非置換アルカリール基、置換もしくは非置換アラルキル基等を挙げることができる。
【0033】
上記他の官能基を有する構成単位を形成可能なモノマー成分としては、ポリシロキサンを形成可能なシラン化合物であれば特に限定されるものではないが、ケイ素原子にアルコキシ基が2以上結合するオルガノシラン化合物であることが好ましい。また、アルコキシ基およびその数としては、上記「(1)現像性基」の項に記載の内容と同様とすることができる。
具体的には、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリ(メトキシエトキシ)シラン、メチルトリ(エトキシエトキシ)シラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、メチルトリブトキシシラン、メチルトリターシャリーブトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、オクタデシルトリエトキシシラン、3−アミノプロビルトリエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−クロロプロビルトリメトキシシラン、3−(N,N−ジグリシジル)アミノプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロビルトリメトキシシラン、γーアミノプロピルトリメトキシシラン、γーアミノプロビルトリエトキシシラン、N−β一(アミノエチル)一γーアミノプロピルトリメトキシシラン、βーシアノエチルトリエトキシシラン、グリシドキシメチルトリメトキシシラン、グリシドキシメチルトリエトキシシラン、αーグリシドキシエチルトリメトキシシラン、αーグリシドキシエチルトリエトキシシラン、βーグリシドキシエチルトリメトキシシラン、βーグリシドキシエチルトリエトキシシラン、αーグリシドキシプロビルトリメトキシシラン、αーグリシドキシプロビルトリエトキシシラン、βーグリシドキシプロビルトリメトキシシラン、βーグリシドキシプロビルトリエトキシシラン、γーグリシドキシプロビルトリメトキシシラン、γーグリシドキシプロビルトリエトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリプロポキシシシラン、γーグリシドキシプロピルトリイソプロポキシシシラン、γーグリシドキシプロビルトリブトキシシラン、γーグリシドキシプロピルトリ(メトキシエトキシ)シラン、αーグリシドキシブチルトリメトキシシラン、αーグリシドキシブチルトリエトキシシラン、βー グリシドキシブチルトリメトキシシラン、βーグリシドキシブチルトリエトキシシラン、γーグリシドキシブチルトリメトキシシラン、γーグリシドキシブチルトリエトキシシラン、δーグリシドキシブチルトリメトキシシラン、δーグリシドキシブチルトリエトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリメトキシシラン、(3,4−エポキシシクロヘキシル)メチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリプロポキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリブトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリフエノキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロビルトリメトキシシラン、3−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プロビルトリエトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プチルトリメトキシシラン、4−(3,4−エポキシシクロヘキシル)プチルトリエトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、γーグリシドキシプロビルメチルジメトキシシラン、γーアミノプロピルメチルジメトキシシラン、γーアミノプロピルメチルジエトキシシラン、N−(2−アミノエチル)−3−アミノプロピルメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルジメトキシシラン、グリシドキシメチルメチルジエトキシシラン、αーグリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、αーグリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、βーグリシドキシエチルメチルジメトキシシラン、βーグリシドキシエチルメチルジエトキシシラン、αーグリシドキシプロビルメチルジメトキシシラン、αーグリシドキシプロビルメチルジエトキシシラン、βーグリシドキシプロビルメチルジメトキシシラン、βーグリシドキシプロビルメチルジエトキシシラン、γーグリシドキシプロビルメチルジメトキシシラン、γーグリシドキシプロビルメチルジエトキシシラン、γーグリシドキシプロビルメチルジプロポキシシラン、βーグリシドキシプロビルメチルジブトキシシラン、γーグリシドキシプロビルメチルジ(メトキシエトキシ)シラン、γーグリシドキシプロビルエチルジメトキシシラン、γーグリシドキシプロビルエチルジエトキシシラン、3−クロロプロビルメチルジメトキシシラン、3−クロロプロビルメチルジエトキシシラン、シクロヘキシルメチルジメトキシシラン、オクタデシルメチルジメトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランなどが挙げられる。これらを2種以上使用してもよい。
本発明においては、上記オルガノシラン化合物のうち、ITO等の基材への密着性や硬度、現像性のバランスと、ポリシロキサン合成の容易性から、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシランが好ましい。
【0034】
(4)現像性ポリシロキサン
本発明における現像性ポリシロキサンは、上記現像性基を含む構成単位を有するものであるが、複数の構成単位を含む場合には、同一の構成単位が連続するブロック状であっても良く、ランダム状であっても良い。
現像性ポリシロキサンは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0035】
上記現像性ポリシロキサンの分子量としては、所望の耐熱性および現像性を発揮する現像性ポリシロキンサンとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、500〜200,000の範囲内であることが好ましく、なかでも1,000〜100,000の範囲内であることが好ましく、特に2,000〜50,000の範囲内であることが好ましい。現像性および耐熱性の両者に優れたものとすることができるからである。
なお、上記分子量とは、重量平均分子量(Mw)のことであり、上記重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
【0036】
上記現像性ポリシロキサンの酸価としては、所望の耐熱性および現像性を発揮する現像性ポリシロキンサンとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、30mgKOH/g〜200mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、なかでも、50mgKOH/g〜170mgKOH/gの範囲内であることが好ましく、特に、70mgKOH/g〜150mgKOH/gの範囲内であることが好ましい。現像性および耐熱性の両者に優れたものとすることができるからである。
【0037】
本発明における現像性ポリシロキサンの含有量としては、所望の耐熱性および現像性を発揮できるものであれば特に限定されるものではないが、固形分中に3質量%〜80質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、5質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、特に、10質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましい。現像性および耐熱性の両者に優れたものとすることができるからである。
なお、固形分中とは、上記樹脂組成物に含まれる溶剤以外の全ての成分をいうものである。
【0038】
上記現像性ポリシロキサンの上記重合性ポリシロキサンに対する質量比(現像性ポリシロキサンの含有量/重合性ポリシロキサンの含有量)としては、所望の耐熱性および現像性を発揮する現像性ポリシロキンサンとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、0.08〜12の範囲内であることが好ましく、なかでも0.15〜7の範囲内であることが好ましく、特に0.3〜3の範囲内であることが好ましい。現像性および耐熱性の両者に優れたものとすることができるからである。
【0039】
上記現像性ポリシロキサンの合成方法としては、所望の構成単位を含むものを合成可能な方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、オルガノシラン化合物に溶媒を添加、もしくは溶媒を添加しない状態で、系の温度を−20℃〜60℃に保ち、これに水と酸触媒の混合物を滴下して加水分解反応を進める。その後、系の温度を60℃〜150℃に上昇させて脱水縮重合反応を進める方法を挙げることができる。
ここで、水と酸触媒の量と滴下速度、溶媒の種類と量、加水分解時の温度、重合反応時の反応時間と温度等を調整することにより、分子量等を制御することができる。
なお、酸触媒としては、塩酸、リン酸、硝酸、硫酸、酢酸等を挙げることができる。
また、溶媒としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、tーブタノール、ペンタノール、4−メチル−2−ペンタノール、3−メチル−2−ブタノール、3−メチル−3−メトキシー1−ブタノール、1−t−ブトキシ−2−プロパノール、ジアセトンアルコールなどのアルコール類;エチレングリコール、プロピレングリコールなどのグリコール類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノプロビルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、エチレングリコールジブチルエーテル、ジエチルエーテルなどのエーテル類;メチルエチルケトン、アセチルアセトン、メチルプロピルケトン、メチルブチルケトン、メチルイソブチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロペンタノン、2−ヘプタノンなどのケトン類;ジメチルホルムアミド、ジメチルアセトアミドなどのアミド類;エチルアセテート、プロビルアセテート、ブチルアセテート、イソブチルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート、乳酸メチル、乳酸エチル、乳酸ブチルなどのアセテート類;トルエン、キシレン、ヘキサン、シクロヘキサンなどの芳香族あるいは脂肪族炭化水素、γープチロラクトン、N−メチル−2−ピロリドン、ジメチルスルホキシドなどを挙げることができる。本発明の樹脂組成物を用いて形成される樹脂膜の透過率、耐クラック性などの点から、ジアセトンアルコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコールモノt−プチルエーテル、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノブチルエーテル、γープチロラクトン等を好ましく用いることができる。
【0040】
2.重合性ポリシロキサン
本発明における重合性ポリシロキサンは、ラジカル重合性基を有し、現像性基を実質的に含まないものである。
ここで、現像性基を実質的に含まないとは、重合性ポリシロキサンが露光および硬化した部位から現像時に除去されないものをいうものであり、具体的には、現像性基を含む構成単位の含有量が重合性ポリシロキサンを構成する全構成単位中の10モル%以下であることが好ましく、なかでも、5モル%以下であることが好ましく、さらに、3モル%以下であることが好ましく、特に、0モル%、すなわち、現像性基を含む構成単位を含まないものであることが好ましい。現像性および耐熱性の両者に優れたものとすることができるからである。
【0041】
なお、上記現像性基、ラジカル重合性基およびこれらを形成可能なモノマー成分については、上記「1.現像性ポリシロキサン」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0042】
(1)ラジカル重合性基
上記ラジカル重合性基を含む構成単位の含有量としては、所望の耐熱性および現像性を発揮する重合性ポリシロキンサンとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、重合性ポリシロキサンを構成する全構成単位中に1モル%〜90モル%の範囲内であることが好ましく、なかでも、3モル%〜75モル%の範囲内であることが好ましく、特に、5モル%〜60モル%の範囲内であることが好ましい。現像性および耐熱性の両者に優れたものとすることができるからである。
【0043】
(2)その他
本発明における重合性ポリシロキサンは、上記ラジカル重合性基を含むものであるが、必要に応じて他の官能基を有するものであっても良い。
このような他の官能基およびこれを含む構成単位を形成可能なモノマー成分等としては、上記「1.現像性ポリシロキサン」の項に記載の内容と同様とすることができる。
【0044】
(3)重合性ポリシロキサン
本発明における重合性ポリシロキサンは、上記ラジカル重合性基を含む構成単位を有するものであるが、複数の構成単位を含む場合には、同一の構成単位が連続するブロック状であっても良く、ランダム状であっても良い。
重合性ポリシロキサンは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0045】
上記重合性ポリシロキサンの分子量としては、所望の耐熱性および現像性を発揮する重合性ポリシロキサンとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、500〜200,000の範囲内であることが好ましく、なかでも1,000〜100,000の範囲内であることが好ましく、特に2,000〜50,000の範囲内であることが好ましい。現像性および耐熱性の両者に優れたものとすることができるからである。
【0046】
本発明における重合性ポリシロキサンの含有量としては、所望の耐熱性および現像性を発揮できるものであれば特に限定されるものではないが、本発明の樹脂組成物の固形分中に1質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、3質量%〜45質量%の範囲内であることが好ましく、特に、5質量%〜35質量%の範囲内であることが好ましい。現像性および耐熱性の両者に優れたものとすることができるからである。
【0047】
上記重合性ポリシロキサンの合成方法については、所望の構成単位を含むものを合成可能な方法であれば特に限定されるものではないが、上記現像性ポリシロキサンの合成方法と同様の方法を用いることができる。
【0048】
3.多官能性モノマー
本発明における多官能性モノマーとしては、ラジカル重合性基を2以上有し、多官能性モノマー同士または重合性ポリシロキサンと架橋できるものであれば良い。なかでも、エチレン性不飽和二重結合基を2以上有するものが好ましく、エチレン性不飽和二重結合基としてはアクリロイル基、メタクリロイル基、ビニル基が挙げられる。
【0049】
このような多官能性モノマーとしては、具体的には、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、長鎖脂肪族ジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ヒドロキシピバリン酸ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、ステアリン酸変性ペンタエリスリトールジ(メタ)アクリレート、プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、グリセロールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、テトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニルジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリグリセロールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコール変性トリメチロールプロパンジ(メタ)アクリレート、アリル化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、メトキシ化シクロヘキシルジ(メタ)アクリレート、アクリル化イソシアヌレート、ビス(アクリロキシネオペンチルグリコール)アジペート、ビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、テトラブロモビスフェノールAジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールSジ(メタ)アクリレート、ブタンジオールジ(メタ)アクリレート亜鉛ジ(メタ)アクリレート等の二官能(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0050】
また、多官能(メタ)アクリレートとしては、例えばトリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、トリメチロールエタントリ(メタ)アクリレート、グリセロールトリ(メタ)アクリレート、ペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールトリ(メタ)アクリレート、トリス(アクリロキシエチル)イソシアヌレート、トリス(メタクリロキシエチル)イソシアヌレート、ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールモノヒドロキシペンタ(メタ)アクリレート、ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート、アルキル変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート、ウレタントリ(メタ)アクリレート、エステルトリ(メタ)アクリレート、ウレタンヘキサ(メタ)アクリレート、エステルヘキサ(メタ)アクリレート、コハク酸変性ジペンタエリスリトールペンタ(メタ)アクリレート等の三官能以上の(メタ)アクリレートが挙げられる。
【0051】
また、トリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジ(2-アクリロイルオキシエチル)モノヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリビニルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、等のトリアジン環骨格を有する化合物を用いることができる。
【0052】
本発明においては、なかでも、トリアジン環骨格を有する化合物であることが好ましく、特にトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、ジ(2-アクリロイルオキシエチル)モノヒドロキシエチルイソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリビニルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレート、トリグリシジルイソシアヌレート、を好ましく用いることができ、なかでも特にトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート、トリビニルイソシアヌレート、トリメタリルイソシアヌレートを好ましく用いることができる。上記化合物を含むことにより、高温加熱後の密着性および耐黄変性に優れたものとすることができるからである。特に、250℃以上の高温熱処理工程を行った後にも密着性や耐黄変性に優れた樹脂膜を形成可能なものとすることができるからである
【0053】
これらの多官能性モノマーは、1種のみを単独で使用してもよく、2種以上を併用して使用してもよい。
【0054】
上記多官能性モノマーの含有量としては、樹脂膜を所望の耐熱性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、固形分中に10質量%〜80質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、20質量%〜70質量%の範囲内であることが好ましく、特に、30質量%〜60質量%の範囲内であることが好ましい。現像性および耐熱性の両者に優れたものとすることができるからである。
【0055】
4.樹脂組成物
本発明の樹脂組成物は、現像性ポリシロキサン、重合性ポリシロキサン、多官能性モノマーを少なくとも含むものであるが、必要に応じて、重合開始剤、溶剤、添加剤、バインダー樹脂等を含むものとすることができる。
【0056】
(1)重合開始剤
上記重合開始剤としては、上記多官能性モノマー、重合性ポリシロキサンおよびこれら同士を重合させることができるものであれば特に限定されるものではなく、一般的なものを用いることができる。
【0057】
具体的には、ベンゾフェノン、ミヒラーケトン、4,4´−ビスジエチルアミノベンゾフェノン、4−メトキシ−4´−ジメチルアミノベンゾフェノン、2−エチルアントラキノン等の芳香族ケトン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインフェニルエーテル等のベンゾインエーテル類、メチルベンゾイン、エチルベンゾイン等のベンゾイン、2−(o−クロロフェニル)−4,5−フェニルイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メトキシフェニル)イミダゾール2量体、2−(o−フルオロフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2−(o−メトキシフェニル)−4,5−ジフェニルイミダゾール2量体、2,4,5−トリアリールイミダゾール2量体、2−(o−クロロフェニル)−4,5−ジ(m−メチルフェニル)イミダゾール2量体、2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン、2−トリクロロメチル−5−スチリル−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−シアノスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール、2−トリクロロメチル−5−(p−メトキシスチリル)−1,3,4−オキサジアゾール等のハロメチルオキサジアゾール化合物、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2,4−ビス(トリクロロメチル)−6−(1−p−ジメチルアミノフェニル−1,3−ブタジエニル)−S−トリアジン、2−トリクロロメチル−4−アミノ−6−p−メトキシスチリル−S−トリアジン、2−(ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−エトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン、2−(4−ブトキシ−ナフト−1−イル)−4,6−ビス−トリクロロメチル−S−トリアジン等のハロメチル−S−トリアジン系化合物、2,2−ジメトキシ−1,2−ジフェニルエタン−1−オン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン―1−オン、1,2−ベンジル−2−ジメチルアミノ−1−(4−モルフォリノフェニル)−ブタノン‐1,ベンジル、ベンゾイル安息香酸、ベンゾイル安息香酸メチル、4−ベンゾイル−4´−メチルジフェニルサルファイド、ベンジルメチルケタール、ジメチルアミノベンゾエート、P−ジメチルアミノ安息香酸イソアミル、2−n−ブチキシエチル−4−ジメチルアミノベンゾエート、2−クロロチオキサントン、2,4ジエチルチオキサントン、2,4ジメチルチオキサントン、イソプロピルチオキサントン、エタノン,1−[9−エチル−6−(2−メチルベンゾイル)−9H−カルバゾール−3−イル]−1−(o−アセチルオキシム)、4−ベンゾイル−メチルジフェニルサルファイド、1−ヒドロキシ−シクロヘキシル−フェニルケトン、2−ベンジル−2−(ジメチルアミノ)−1−[4−(4−モルフォリニル)フェニル]−1−ブタノン、2−(ジメチルアミノ)−2−[(4−メチルフェニル)メチル]−1−[4−(4−モルホリニル)フェニル]−1−ブタノン、α−ジメトキシ−α−フェニルアセトフェノン、フェニルビス(2,4,6−トリメチルベンゾイル)フォスフィンオキサイド、2−メチル−1−[4−(メチルチオ)フェニル]−2−(4−モルフォリニル)−1−プロパノン、1,2−オクタジオン等の光重合開始剤を挙げることができる。また、2−ヒドロキシ−1−{4−〔4−(2−ヒドロキシ−2−メチル−プロピオニル)−ベンジル〕−フェニル}−2−メチル−プロパン−1−オン、2−ヒドロキシ−4′−ヒドロキシエトキシ−2−メチルプロピオフェノン、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン]、2,4,6−トリメチルベンゾイル−ジフェニル−フォスフィンオキサイド、等も用いることができる。
本発明においては、なかでも、高温加熱後の黄変を抑制可能な点から、オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン、2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパン―1−オン、1−ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニル-ケトン等が特に好ましい。
本発明においては、これらの光重合開始剤を単独で、または、2種以上を混合して使用することができる。
【0058】
このような重合開始剤の含有量としては、上記樹脂組成物を所望の硬化速度で硬化することができるものであれば良く、固形分中に、0.1質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも0.7質量%〜10質量%の範囲内であることが好ましい。
【0059】
(2)溶剤
本発明に用いられる溶剤としては、上記樹脂組成物中の各成分とは反応せず、これらを溶解もしくは分散可能な有機溶剤であれば特に限定されるものではない。
【0060】
具体的には、メタノール、エタノール等のアルコール類;テトラヒドロフラン等のエーテル類;エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールメチルエチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル等のグリコールエーテル類;メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート等のエチレングリコールアルキルエーテルアセテート類;ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル等のジエチレングリコール類;プロピレングリコールメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールエチルエーテルアセテート等のプロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素類;メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、シクロヘキサノン、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等のケトン類;および、2−ヒドロキシプロピオン酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸メチル、2−ヒドロキシ−2−メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2−ヒドロキシ−2−メチルブタン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸メチル、3−メトキシプロピオン酸エチル、3−エトキシプロピオン酸メチル、3−エトキシプロピオン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸メチル、乳酸エチル、3−メトキシブチルアセテート、3−メチル−3−メトキシブチルアセテート等のエステル類;などが挙げられる。
本発明においては、なかでも、成膜過程での膜の平坦性や含有成分の溶解性の点から、プロピレングリコールアルキルエーテルアセテート類、グリコールエーテル類、ケトン類が好ましく、なかでもプロピレングリコールメチルエーテルアセテート(以下、PEGMEAと表記することがある)、プロピレングリコールメチルエーテル、4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン等が特に好ましい。
また、これらの溶剤は単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせてもよい。
【0061】
本発明に用いられる溶剤の上記樹脂組成物中の含有量としては、60質量%〜95質量%の範囲内であることが好ましく、より好ましくは70質量%〜90質量%の範囲内であることが好ましい。このような含有量であることにより、塗布に適した粘度とすることができるからである。
【0062】
(3)添加剤
本発明における添加剤としては、本発明の樹脂組成物を用いて形成された樹脂膜の耐熱性等を低下させるものでなければ特に限定されるものではない。
具体的には、顔料、遮光性微粒子、重合停止剤、連鎖移動剤、レベリング剤、可塑剤、界面活性剤、消泡剤、密着助剤、高屈折率化剤、リン酸化合物等などが挙げられる。
【0063】
(a)高屈折率化剤
上記高屈折率化剤を含むことにより、例えば、ITO等の透明電極材料を用いて形成された透明電極上に上記樹脂膜が積層された場合、上記透明電極のパターンの不可視化を図ることができるからである。このため、本発明の樹脂組成物をタッチパネル等の透過性が求められる光学機器に用いた場合には、センサ電極に含まれる透明電極が、タッチ面側から透けて見えることを防ぐことができ、意匠性や視認性に優れたタッチパネルとすることができるからである。
【0064】
上記高屈率化剤としては、上記樹脂膜を屈折率の高いものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、金属微粒子または金属酸化物微粒子等の微粒子を挙げることができ、なかでも、金属酸化物微粒子であることが好ましい。樹脂膜を絶縁性を有するものとすることができるからである。
【0065】
金属酸化物の微粒子としては、チタニウム、亜鉛、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、スズ、珪素、及び、アルミニウムからなる群から選ばれる少なくとも一種の元素を含有するものが好ましい。具体的には、五酸化アンチモン、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化ジルコニウム、酸化ケイ素、アンチモンドープ酸化スズ(ATO)、スズドープ酸化インジウム(ITO)、フッ素ドープ酸化スズ(FTO)、リンドープ酸化スズ(PTO)、アンチモン酸亜鉛(AZO)、インジウムドープ酸化亜鉛(IZO)、酸化スズ、ATO被覆酸化チタン、アルミニウムドープ酸化亜鉛、ガリウムドープ酸化亜鉛等が挙げられる。これらは公知の市販品が容易に入手できる。金属の微粒子としては、チタニウム、亜鉛、ジルコニウム、アンチモン、インジウム、スズ、珪素、及び、アルミニウムからなる群から選ばれるものが例示できる。これらの微粒子は単独でもよく、2種類以上を併用してもよい。
【0066】
本発明に用いる微粒子の平均一次粒径としては、所望の高屈折率化を図ることができることができるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、5nm〜200nmの範囲内とすことができ、なかでも、5nm〜100nmの範囲内であることが好ましく、特に、10nm〜50nmの範囲内であることが好ましい。
平均一次粒子径が5nm未満の場合、微粒子同士の凝集力が非常に大きいことから、透明性の高い一次粒子レベルの分散をさせることが非常に困難であるからである。一方、平均一次粒子径が200nmを超える金属酸化物の場合、一次粒子レベルで分散させることは容易になるが、粒子径が大きいことから可視光などの光に対して散乱が生じ易く、樹脂膜の透明性を悪化させる問題が生じるからである。
なお、平均一次粒径は、例えば、透過型電子顕微鏡(TEM)や、走査型電子顕微鏡(SEM)などを用いて微粒子自身を直接観察する方法や、動的光散乱法を用いて測定できる。
【0067】
微粒子の含有量は、樹脂膜を所望の屈折率を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではない。具体的には、微粒子と全樹脂成分との質量比であるPV比としては、0.3〜1.8の範囲内であることが好ましい。また、下限は好ましくは0.6以上、上限は好ましくは1.5以下、より好ましくは1.2以下である。これにより、透明性を維持しつつも、樹脂膜の屈折率を高くしてITO膜等の透明電極の屈折率に近づけることができるからである。また、PV比が0.3未満であると、たとえ微粒子を添加しても、硬化後の樹脂膜の屈折率を充分に高くできないからである。また、現像性も低下するからである。一方、1.8を超えると、ヘイズ値が増加して透明性が低下するからである
なお、全樹脂成分とは、本発明における固形分から微粒子の全質量を除いたものである。
【0068】
(b)リン酸化合物
樹脂膜のITO等の透明電極材料等に対する密着性を向上させるために、リン酸化合物を含むことができる。
このようなリン酸化合物としては、樹脂膜の透明電極材料等に対する密着性を向上できるものであれば特に限定されるものではないが、分子中にエチレン性不飽和二重結合を有するリン酸化合物であることが好ましい。具体的には、2−メタクリロイロキシエチルアシッドホスフェート(商品名ライトエステルP−1M、ライトエステルP−2M共栄社化学(株)製)、エチレンオキサイド 変性リン酸ジメタクリレート(商品名PM−21日本化薬(株)製)、燐酸含有エポキシメタクリレート(商品名ニューフロンティアS−23A 第一工業製薬(株)製)などのリン酸(メタ)アクリレート類、ビニルホスホン酸(商品名VPA−90,VPA−100 BASF社製)などのリン酸ビニル化合物が挙げられる。
上記リン酸化合物の含有量としては、所望の密着性を有するものとすることができるものであれば特に限定されるものではないが、固形分中に0.1質量%〜30質量%の範囲内であることが好ましく、なかでも、1質量%〜20質量%の範囲内であることが好ましく、特に、3質量%〜15質量%の範囲内であることが好ましい。上記含有量であることにより、樹脂膜の密着性に優れたものとすることができるからである。
【0069】
(c)密着助剤
上記密着助剤としては、樹脂膜のITO等の透明電極材料やガラス等との密着性を向上させるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、形成先が透明電極やガラス基板等である場合には、シランカップリング剤である信越化学社製KBM−403、KBM―503、KBM−803等を、全固形分中の割合で0.1〜10質量%配合できる。
【0070】
(d)界面活性剤
上記界面活性剤としては、例えば、フッ素系であるDIC社製「メガファック」R08MH、RS−72−K、RS−75等、シリコーン系であるビックケミー・ジャパン社製BYK−333、BYK−301等を、全固形分中の割合で0.1〜5質量%配合できる。
【0071】
(4)樹脂組成物
本発明の樹脂組成物の形成方法としては、上記各成分を均一に分散したものとすることができる方法であれば特に限定されるものではなく、公知の混合・分散方法を用いることができる。
【0072】
本発明の樹脂組成物の用途としては、硬度および耐熱性が要求されるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、タッチパネル、太陽電池、液晶表示装置等の表示装置等に含まれる保護層や絶縁層等、カラーフィルタの画素部、LED照明装置等を挙げることができ、なかでも、耐熱性が要求される部材の形成に用いられることが好ましい。
【0073】
B.タッチパネル用透明膜
次にタッチパネル用透明膜について説明する。
本発明のタッチパネル用透明膜は、現像性官能基を有し、ラジカル重合性基を実質的に含まない現像性ポリシロキサンと、ラジカル重合性基を有し、現像性官能基を実質的に含まない重合性ポリシロキサンと、多官能性モノマーと、を有する樹脂組成物を用いて形成されたことを特徴とするものである。
【0074】
このような本発明のタッチパネル用透明膜について図を参照して説明する。図1は、本発明のタッチパネル用透明膜が用いられたタッチパネルの一例を示す概略平面図である。また、図2は、図1のA−A線断面図であり、図3は、図1のB−B線断面図である。図1図3に例示するように、本発明のタッチパネル用透明膜10が用いられたタッチパネル20は、透明基板1と、上記透明基板1の一方の表面上に形成された第1電極2aおよび上記第1電極2aと絶縁された第2電極2bを含むセンサ電極2と、上記第1電極2aおよび第2電極2b間に形成された電極間絶縁層3と、上記第1電極2aおよび第2電極2bを覆うように形成されたオーバーコート層4を有するものである。
この例において、上記タッチパネル用透明膜10は、上記電極間絶縁層3およびオーバーコート層4として用いられるものである。また、センサ電極2には、引き回し配線6が接続され、引き回し配線6の末端には外部接続端子が形成されている。
なお、図1においては、説明の容易のため、上記電極間絶縁層3およびオーバーコート層4については省略する。
【0075】
本発明によれば、上記樹脂組成物を用いて形成されたものであるため、250℃以上の高温熱処理工程を行った後でも密着性に優れ黄変の少ないものとすることができる。
このため、従来は、耐熱性が要求されるセンサ電極間に用いられる電極間絶縁層および硬度が要求されるオーバーコート層のように要求特性が異なる部材の形成には各部材毎に異なる材料が用いられてきた。これに対して、上記タッチパネル用透明膜であれば、硬度および耐熱性の両者に優れるため、上記電極間絶縁層およびオーバーコート層の両者の形成材料の共通化を図ることができる。したがって、工程の簡略化やコストダウンを図ることができる。
【0076】
本発明のタッチパネル用透明膜は、上記樹脂組成物を用いて形成されたものである。
以下、本発明のタッチパネル用透明膜の各構成について説明する。
なお、上記樹脂組成物については、上記「A.樹脂組成物」の項に記載の内容と同様であるので、ここでの記載は省略する。
【0077】
本発明のタッチパネル用透明膜の用途としては、所望の透明性が求められる用途であれば特に限定されるものではないが、センサ電極を構成する第1電極および第2電極間に形成される電極間絶縁層、センサ電極を覆うように形成されるオーバーコート層等を挙げることができ、なかでも、電極間絶縁層を含むことが好ましく、特に、電極間絶縁層およびオーバーコート層の両者を含むことが好ましい。電極間絶縁層を覆うように形成される電極が透明電極であり、その形成時に高温熱処理工程が行われる場合であっても、電極保護層の劣化の少ないものとすることができるからである。
また、上記樹脂組成物からなる樹脂膜は硬度に優れるため、上記オーバーコート層として用いられることにより、耐擦傷性に優れたタッチパネルとすることができるからである。また、電極間絶縁層およびオーバーコート層のような異なる要求特性を同時に満たすことができるため、両部材の材料の共通化を図ることができ、工程の簡略化やコストダウンを図ることができるからである。
なお、高温熱処理工程における温度条件とは、透明電極の導電性を向上可能なものであれば良いが、例えば、235℃〜350℃の範囲内であることをいうものであり、なかでも240℃〜330℃の範囲内であるが好ましく、特に、250℃〜300℃の範囲内であることが好ましい。上記温度条件であることにより、本発明の効果をより効果的に発揮できるからである。
【0078】
上記タッチパネル用透明膜の可視光領域における透過率としては、タッチパネルを視認性に優れたものとすることができるものであれば特に限定されるものではなく、上記タッチパネル用透明膜の用途等に応じて適宜設定されるものである。
本発明においては、80%以上であることが好ましく、90%以上であることがより好ましい。上記透過率が上記範囲であることにより、視認性に優れたタッチパネルを形成することができるからである。
ここで、上記透過率は、標準の光C(JIS Z 8720(測色用標準イルミナント(標準の光)及び標準光源))を用い、JIS Z 8701(色の表示方法-XYZ表色系およびX10Y10Z10表色系)にて定められた式にて求めた、透過による物体色の三刺激値X,Y,ZのうちのY値を指すものである。このような透過率の測定方法としては、例えば、JIS K7361−1(プラスチックー透明材料の全光透過率の試験方法)により測定することができる。より具体的には、オリンパス株式会社製、分光光度計OSP−SP2000を用いることができる。
【0079】
上記タッチパネル用透明膜は、高屈折率化剤を含むものが好ましい。センサ電極と接するように配置される場合、センサ電極がタッチ面側から透けて見えることを防ぐことができ、視認性に優れたタッチパネルとすることができるからである。
上記タッチパネル用透明膜の屈折率としては、所望の屈折率を有するものであれば特に限定されるものではないが、1.55〜1.90の範囲内であることが好ましく、なかでも、1.57〜1.80の範囲内であることが好ましく、特に、1.60〜1.75の範囲内であることが好ましい。上記屈折率であることにより、センサ電極がタッチ面側から視認されることを防ぐことができるからである。
なお、このような高屈折率化剤については、上記「A.樹脂組成物」の項に記載の内容と同様とすることができるので、ここでの説明は省略する。
【0080】
上記タッチパネル用透明膜の厚みとしては、所望の硬度や耐熱性を発揮できるものであれば特に限定されるものではなく、上記タッチパネル用透明膜の用途等に応じて適宜設定されるものである。
例えば、上記オーバーコート層として用いられる場合には、0.5μm〜5μmの範囲内であることが好ましく、なかでも1μm〜3μmの範囲内であることが好ましい。上記タッチパネルに含まれる各構成をキズ・剥がれの少ないものとすることができるからである。
また、上記電極間絶縁層としても用いられる場合には、0.5μm〜10μmの範囲内であることが好ましく、なかでも1μm〜5μmの範囲内であることが好ましい。電極間の短絡を安定的に防止できるからである。
【0081】
上記タッチパネル用透明膜の形成方法としては、上記樹脂組成物を用い、上記タッチパネル用透明膜を所望のパターンに形成することができる方法であれば特に限定されるものではなく、一般的な方法を用いることができる。具体的には、上記樹脂組成物を塗布し、乾燥して塗膜を形成した後、上記塗膜に対してマスクを介して露光し、現像する方法を用いることができる。
【0082】
C.タッチパネル
次に、本発明のタッチパネルについて説明する。
本発明のタッチパネルは、透明基材と、上記透明基材上に形成されたセンサ電極と、を有するタッチパネルであって、現像性基を有し、ラジカル重合性基を実質的に含まない現像性ポリシロキサンと、ラジカル重合性基を有し、現像性基を実質的に含まない重合性ポリシロキサンと、多官能性モノマーと、を有する樹脂組成物を用いて形成されたタッチパネル用透明膜を有することを特徴とするものである。
【0083】
このようなタッチパネルとしては、具体的には、既に説明した図1および図2に示すものを挙げることができる。
【0084】
本発明によれば、上記樹脂組成物を用いて形成されたタッチパネル用透明膜を有するものであるため、このようなタッチパネル用透明膜を用いて形成された部材を耐熱性に優れたものとすることができる。
【0085】
本発明のタッチパネルは、上記透明基材、センサ電極およびタッチパネル用透明膜を有するものである。
以下、本発明のタッチパネルの各構成について詳細に説明する。
なお、上記タッチパネル用透明膜については、上記「B.タッチパネル用透明膜」の項に記載の内容と同様であるので、ここでの説明は省略する。
【0086】
1.透明基材
本発明における透明基材としては、タッチパネルに一般的に用いられるものと同様とすることができる。具体的には、ガラス等の無機材料であっても良く、ポリエチレンテレフタレート(PET)等のポリエステル系樹脂、アクリル系樹脂、ポリカーボネート等の樹脂材料を挙げることができる。
また、透明基材の厚みとしては、可撓性を有するフィルム状となるものであることが好ましく、上記絶縁基材が樹脂材料からなる場合には、具体的には、50μm〜300μmの範囲内とすることが好ましい。
【0087】
2.センサ電極
本発明におけるセンサ電極は、上記透明基材上に形成されるものであり、通常、第1電極および上記第1電極と絶縁された第2電極を含むものである。
【0088】
上記第1電極および第2電極の配置態様としては、タッチ操作を検出できるものであれば特に限定されるものではないが、例えば、既に説明した図1図3または図4に示すように第1電極および第2電極の両者が透明基材の一方の表面上に形成され、両電極間に電極間絶縁層が形成される態様、図5に例示するように第1電極および第2電極が、透明基材の一方の表面と他方の表面とにそれぞれ形成される態様等とすることができる。本発明においては、なかでも第1電極および第2電極間に電極間絶縁層が形成される態様であることが好ましい。上記電極間絶縁層上の電極を透明電極とし、その透明電極の形成時に高温熱処理工程が行われたとしても、上記電極間絶縁層として上記タッチパネル用透明膜を用いることにより、電極間絶縁層の劣化の少ないものとすることができるからである。したがって、本発明の効果をより効果的に発揮できるからである。
なお、既に説明した図1図3では、電極間絶縁層が第1電極の一部を覆うように形成される例、すなわち、第1電極および第2電極の平面視上重なる箇所に形成される例を示すものである。また、図4は、電極間絶縁層が第1電極の全てを覆うように形成される例を示すものである。また、図4および図5中の符号は、図1図3と同一の部材を示すものであるので、ここでの説明は省略する。
【0089】
上記第1電極および第2電極としては、所望の導電性を有するものであれば良く、透明性を有する透明電極材料を用いて形成された透明電極であっても良く、遮光性を有する遮光性電極材料を用いて形成された遮光電極であっても良い。
本発明においては、なかでも、上記第1電極および第2電極間に電極間絶縁層が形成される場合には、上記電極間絶縁層を覆うように形成される電極、すなわち、上記電極間絶縁層が形成された後に形成される電極が透明電極であることが好ましい。上記電極間絶縁層を上記タッチパネル用透明膜を用いて形成することによる効果をより効果的に発揮できるからである。
【0090】
上記透明性電極材料としては、具体的には、インジウム錫酸化物(ITO)、酸化亜鉛、酸化インジウム、アンチモン添加酸化錫、フッ素添加酸化錫、アルミニウム添加酸化亜鉛、カリウム添加酸化亜鉛、シリコン添加酸化亜鉛や、酸化亜鉛−酸化錫系、酸化インジウム−酸化錫系、酸化亜鉛−酸化インジウム−酸化マグネシウム系などの金属酸化物や、これらの金属酸化物が2種以上複合された材料が挙げられる。
また、遮光性材料としては、例えば、特開2010−238052号公報等に記載のものを用いることができる。具体的には、アルミニウム、モリブデン、銀、クロム等の金属およびその合金等を用いることができる。タッチパネルに一般的に用いられるものを使用することができる。
【0091】
上記第1電極および第2電極の平面視上のパターンおよび厚みについては、一般的なタッチパネルと同様とすることができる。具体的には、特開2011−210176号公報や2010−238052号公報に記載のパターン等とすることができる。
【0092】
3.タッチパネル
本発明のタッチパネルは、上記透明基材、センサ電極およびタッチパネル用透明膜を有するものであるが、必要に応じて他の構成を有するものであっても良い。
このような他の構成としては、タッチパネルに一般的なものとすることができ、例えば、上記センサ電極に接続される引き回し配線および引き回し配線によりセンサ電極に接続される外部接続端子等を挙げることができる。
【0093】
本発明のタッチパネルの製造方法としては、各構成を精度良く形成できる方法であれば特に限定されるものではないが、例えば、図6に例示するように、透明基材1上にITOを用いて透明電極材料層2Xを形成し(図6(a))、透明電極材料層2X上にパターン状のレジストを形成し、上記レジストをマスクとして、上記透明電極材料層2Xをエッチングし、熱処理を施すことにより第1電極2aを形成する。次いで、上記樹脂組成物を用いて樹脂組成物層10Xを形成し(図6))、パターン状に露光し、次いで現像することによりパターン状の電極間絶縁層3を形成する(図6(c))。その後、透明電極材料層2Xを形成し(図6(d))、レジストをマスクとして透明電極材料層2Xをエッチングし、熱処理を施すことにより第2電極2bを形成する(図6(e))。その後、第1電極2aおよび第2電極2bを含むセンサ電極2を覆うように上記樹脂組成物を用いて樹脂組成物層10Xを形成し(図6(f))、パターン状に露光し、次いで現像することによりパターン状のオーバーコート層4を形成することにより、電極間絶縁層3およびオーバーコート層4が上記タッチパネル用透明膜10であるタッチパネル20を得る方法を挙げることができる(図6(g))。
【0094】
なお、本発明は上記実施形態に限定されるものではない。上記実施形態は、例示であり、本発明の特許請求の範囲に記載された技術的思想と実質的に同一な構成を有し、同様な作用効果を奏するものは、いかなるものであっても本発明の技術的範囲に包含される。
【実施例】
【0095】
以下に実施例を示し、本発明をさらに具体的に説明する。
【0096】
[合成例1]
トリメトキシ(メチル)シラン16.3g,トリメトキシフェニルシラン11.5g,γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン5.15g,4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン50.0gの混合溶液に、イオン交換水10.8gとリン酸0.08gとの混合溶液を滴下した。液温40℃で1時間攪拌した後に液温を60℃として1時間攪拌した。その後、30分かけて液温を100℃まで上昇させ、反応中に生成するメタノールと水を留去しながらさらに120分攪拌した。得られた溶液に4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンを追加してシロキサン濃度を40重量%として、ポリシロキサン溶液(i)を得た。得られたポリシロキサンの重量均分子量は7,500であった。
【0097】
[合成例2]
トリメトキシ(メチル)シラン15.0g,トリメトキシフェニルシラン7.9g,γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン11.7g,4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン50.0gの混合溶液に、イオン交換水10.8gとリン酸0.08gとの混合溶液を滴下した。液温40℃で1時間攪拌した後に液温を60℃として1時間攪拌した。その後、30分かけて液温を100℃まで上昇させ、反応中に生成するメタノールと水を留去しながらさらに120分攪拌した。得られた溶液に4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンを追加してシロキサン濃度を40重量%として、ポリシロキサン溶液(ii)を得た。得られたポリシロキサンの重量均分子量は7,000であった。
【0098】
[合成例3]
トリメトキシ(メチル)シラン16.3g,トリメトキシフェニルシラン11.5g,3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸5.8g,4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン50.0gの混合溶液に、イオン交換水10.8gとリン酸0.08gとの混合溶液を滴下した。液温40℃で1時間攪拌した後に液温を60℃として1時間攪拌した。その後、30分かけて液温を100℃まで上昇させ、反応中に生成するメタノールと水を留去しながらさらに120分攪拌した。得られた溶液に4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンを追加してシロキサン濃度を40重量%として、ポリシロキサン溶液(iii)を得た。得られたポリシロキサンの重量均分子量は6,500であった。また、酸価は100mgKOH/gであった。
【0099】
[合成例4]
トリメトキシ(メチル)シラン25.4g,3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸3.6g,4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン50gの混合溶液に、イオン交換水10.8gとリン酸0.08gとの混合溶液を滴下した。液温40℃で1時間攪拌した後に液温を60℃として1時間攪拌した。その後、30分かけて液温を100℃まで上昇させ、反応中に生成するメタノールと水を留去しながらさらに120分攪拌した。得られた溶液に4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンを追加してシロキサン濃度を40重量%として、ポリシロキサン溶液(iv)を得た。得られたポリシロキサンの重量均分子量は8,500であった。また、酸価は100mgKOH/gであった。
【0100】
[合成例5]
トリメトキシ(メチル)シラン10.2g,トリメトキシフェニルシラン19.8g,2−(3,4−エポキシシクロヘキシルエチルトリメトキシシラン18.5g,4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノン50.0gの混合溶液に、イオン交換水14.0gとリン酸0.022gとの混合溶液を滴下した。液温40℃で1時間攪拌した後に液温を60℃として1時間攪拌した。その後、30分かけて液温を100℃まで上昇させ、反応中に生成するメタノールと水を留去しながらさらに120分攪拌した。得られた溶液に4−ヒドロキシ−4−メチル−2−ペンタノンを追加してシロキサン濃度を40重量%として、ポリシロキサン溶液(v)を得た。得られたポリシロキサンの重量均分子量は7,000であった。
【0101】
[比較合成例1]
オルガノアルコキシシランにトリメトキシ(メチル)シラン10.9g,トリメトキシフェニルシラン5.6g,3−トリメトキシシリルプロピルコハク酸5.8g,γ−アクリロイルプロピルトリメトキシシラン16.4gを用いた以外は合成例1と同様にしてポリシロキサン溶液(vi)を得た。得られたポリシロキサンの重量均分子量は7,500であった。また、酸価は100mgKOH/gであった。
【0102】
[比較合成例2]
ベンジルメタクリレート30重量部、メタクリル酸メチル38重量部、メタクリル酸18重量部、及びt−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート(パーブチルO:商品名、日本油脂(株)製)の混合液を、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート150重量部を入れた重合槽中に、窒素気流下、100℃で、3時間かけて滴下した。滴下終了後、更に100℃で、3時間加熱し、重合体溶液を得た。この重合体溶液の重量平均分子量は、8,000であった。次に、得られた重合体溶液に、グリシジルメタクリレート14重量部、トリエチルアミン0.2重量部、及びp−メトキシフェノール0.05重量部を添加し、110℃で10時間加熱することにより、主鎖メタクリル酸のカルボン酸基と、グリシジルメタクリレートのエポキシ基との反応を行った。反応中は、グリシジルメタクリレートの重合を防ぐために、反応溶液中に、空気をバブリングさせた。得られた現像性有機ポリマーは、固形分38重量%、酸価75mgKOH/g、重量平均分子量10,000であった。また、該現像性有機ポリマーの二重結合当量は、1,014であった。
【0103】
[実施例1]
黄色灯下にてトリス(2-アクリロイルオキシエチル)イソシアヌレート(ファンクリルFA−731A、日立化成製)の50%PEGMEA溶液2.0g,ポリシロキサン溶液(i)を1.25g,ポリシロキサン溶液(iii)を1.25g, 2−メチル−1−〔4−(メチルチオ)フェニル〕−2−モルフォリノプロパノン―1−オン(UV−CURED177、大同化成工業製)の25%PEGMEA溶液0.5g, オリゴ[2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン(ESACURE ONE、Lamberti社製、)の10パーセント PEGMEA溶液1.25g,メガファックR08MH(DIC製)を0.125g, 3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(KBM−403、信越化学製)の50% PEGMEA溶液0.25g、エチレンオキサイド 変性リン酸ジメタクリレート(KAYAMER PM−21、日本化薬製)の50% PEGMEA溶液0.25gを混合して攪拌して樹脂組成物1を得た。
【0104】
[実施例2]
ポリシロキサン溶液()の替わりにポリシロキサン溶液(ii)を用いる以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物2を得た。
【0105】
[実施例3]
黄色灯下にてファンクリルFA−731Aの50% PEGMEA溶液2.0g,ポリシロキサン溶液(i)を0.63g,ポリシロキサン溶液(iv)を1.88g,UV−CURE D177の25% PEGMEA溶液0.5g,ESACURE ONEの10パーセント PEGMEA溶液1.25g,メガファックR08MHを0.125g,KBM−403の50% PEGMEA溶液0.25g,KAYAMER PM−21の50% PEGMEA溶液0.25gを混合して攪拌して樹脂組成物3を得た。
【0106】
[実施例4]
ポリシロキサン溶液(i)の替わりにポリシロキサン溶液(ii)を用いる以外は実施例3と同様に行い、樹脂組成物4を得た。
【0107】
[実施例5]
黄色灯下にてファンクリルFA−731Aの50% PEGMEA溶液2.0g,ポリシロキサン溶液(i)を0.83g,ポリシロキサン溶液(iii)を0.83g,ポリシロキサン溶液(v)を0.83g,UV−CURE D177の25% PEGMEA溶液0.5g,ESACURE ONEの10% PEGMEA溶液1.25g,メガファックR08MHを0.125g,KBM−403の50% PEGMEA溶液0.25g,KAYAMER PM−21の50% PEGMEA溶液0.25gを混合して攪拌して樹脂組成物5を得た。
【0108】
[実施例6]
ポリシロキサン溶液(i)の替わりにポリシロキサン溶液(ii)を用いる以外は実施例5と同様に行い、樹脂組成物6を得た。
【0109】
[実施例7]
ファンクリルFA−731Aの50% PEGMEA溶液2.0gの替わりにペンタエリスリトールトリアクリレート(アロニックスM305、東亞合成製)の50% PEGMEA溶液1.0g、9,9−ビス[4−(2−アクリロイルオキシエトキシ)フエニル]フルオレン(オグソールEA−0200、大阪ガスケミカル製)の50% PEGMEA溶液1.0gを用いる以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物7を得た。
【0110】
[実施例8]
ファンクリルFA−731Aの50% PEGMEA溶液2.0gの替わりにジペンタエリスリトールヘキサアクリレート(アロニックスM403、東亞合成製)の50% PEGMEA溶液1.0g、オグソールEA−0200の50% PEGMEA溶液1.0g を用いる以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物8を得た。
【0111】
[比較例1]
ポリシロキサン溶液(iii)の替わりに比較合成例2で合成した現像性有機ポリマーを用いる以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物9を得た。
【0112】
[比較例2]
ポリシロキサン溶液(i)とポリシロキサン溶液(iii)との替わりに、ポリシロキサン溶液(vi)2.50gを用いる以外は実施例1と同様に行い、樹脂組成物10を得た。
【0113】
[比較例3]
ポリシロキサン溶液(i)とポリシロキサン溶液(iii)との替わりに、ポリシロキサン溶液(vi)2.19gを用いる以外は実施例5と同様に行い、樹脂組成物11を得た。
【0114】
[評価]
実施例および比較例で得られた樹脂組成物を用いて樹脂膜およびその追加ベーク樹脂膜を作製し、硬度、ITO密着性、透明性および黄変耐性の評価を行った。
【0115】
(1)追加ベーク前樹脂膜の作製
得られた樹脂組成物を10cm角のガラス基板もしくはITO基板にスピンコート(ミカサ株式会社 SPINCOATER 1H−DX2)した後、減圧乾燥を経て薄膜を作製した。ホットプレート(AS ONE ULTRA HOT PLATE HI−400A)を用いて90℃で3分間プリベークした後、露光機(TOPCON TME−400 MICRO PATTERN EXPOSING SYSTEM)で露光し、膜厚1.7μmの膜を得た。続いて現像機、現像液を用いて現像した後、空気中230℃で30分ポストベークして膜厚1.5μmの樹脂膜を得た。
【0116】
(2)追加ベーク後樹脂膜の作製
前記(1)の方法で得られた樹脂膜を空気中300℃で60分追加ベークし、追加ベーク後の樹脂膜を得た。
【0117】
(3)硬度の測定
前記(1)の方法で得られた樹脂膜について、JIS K5600−5−4に準じて鉛筆硬度を測定した。結果を下記表1に示す。
【0118】
(4)ITO密着性の評価
前記(1)および(2)の方法で得られた樹脂膜をITO基板上に作製し、JIS K5400−8.5(JIS D0202)クロスカット試験に従い、ITO表面への密着性を評価した。マス目の剥離面積により以下の様に判定した。結果を下記表1に示す。
5:剥離面積=0%
4:剥離面積=0%超5パーセント以下
3:剥離面積=5%超15%以下
2:剥離面積=15%超35%以下
1:剥離面積=35%超65%以下
0:剥離面積=65%超100%以下
【0119】
(5)透明性の評価
前記(1)および(2)の方法で得られた樹脂膜の膜厚1.5μmにおいて、波長400nmにおける透過率を測定し、以下の基準により評価を行った。結果を下記表1に示す。
○: 透過率97%以上
△: 透過率94%以上、透過率97%未満
×: 透過率94%未満
【0120】
(6)黄変耐性の評価
前記(2)の方法で得られた樹脂膜について、La*b*色空間を測定し、以下の基準により評価を行った。結果を下記表1に示す。
○: −1.0<a*<1.0 かつ −1.0<b*<1.0
△: −1.5<a*≦−1.0もしくは1.0≦a*<1.5 かつ −1.5<b*≦−1.0もしくは1.0≦b*<1.5
×: −1.5≧a*もしくは1.5≦a* もしくは −1.5≧b*もしくは1.5≦b*
【0121】
【表1】
【0122】
表1より、実施例では、硬度、耐熱性に優れた樹脂膜を形成可能であることが確認できた。
【符号の説明】
【0123】
1…透明基材
2…センサ電極
2a…第1電極
2b…第2電極
3…電極間絶縁層
4…オーバーコート層
6…引き回し配線
10…タッチパネル用透明膜
20…タッチパネル
図1
図2
図3
図4
図5
図6