(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0016】
本発明の硬化性組成物は、化学重合触媒として、(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物、及び(B)イミン化合物又はエナミン化合物を含んでなるものが使用される。還元性物質として、イミン化合物又はエナミン化合物を選定することにより、(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物による重合活性は特異的に大きく高まる。すなわち、有機過酸化物が、ハイドロパーオキサイド系以外の有機過酸化物(例えば、前記高活性なものとして汎用されている過酸化ベンゾイル等)であった場合、このような高い重合活性の向上作用は発現しない。
【0017】
ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物と、イミン化合物又はエナミン化合物との組み合わせが高い重合活性を示す理由は定かではないが、以下の様に推定される。すなわち、イミン化合物又はエナミン化合物の窒素原子が結合している不飽和な炭素原子に対してハイドロパーオキサイド基が求核反応し、不安定な過酸化物の構造をとることによりラジカルの生成が活発になるためではないかと予測している。
【0018】
以下、(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物、(B)イミン化合物、エナミン化合物等の各成分について、順次詳述する。
【0019】
<(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物>
本発明において、ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物は、レドックス反応の酸化剤として配合される、ハイドロパーオキサイド基を少なくとも1つ以上含む任意の化合物が制限なく使用できる。重合性組成物としたときの保存安定性の点から、10時間半減期温度が100℃以上の化合物を用いるのが好ましい。
【0020】
こうしたハイドロパーオキサイド系有機過酸化物の具体例としては、p−メンタンハイドロパーオキサイド、ジイソプロピルベンゼンパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ヘキシルハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、t−アミルハイドロパーオキサイド、ピナンハイドロパーオキサイド等が挙げられる。このうち、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイドが、特に重合活性が高くなり好適である。これらのハイドロパーオキサイド系有機過酸化物は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0021】
ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物は、ラジカル重合性単量体100質量部当り、0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部配合するのが好ましい。この配合量において、ラジカル重合性単量体を、より高い重合活性で硬化させることが可能になる。
<(B)イミン化合物、エナミン化合物>
本発明において、レドックス反応における還元剤として配合されるイミン化合物及びエナミン化合物は、公知のイミン化合物又はエナミン化合物を制限なく使用できる。イミン化合物やエナミン化合物の中でも下記の特定構造を有するものが後述するように、化学重合触媒の重合活性を高め、さらに着色の原因にもならない特異な効果がより顕著に発揮できるものになるため好適に使用できる。
【0022】
本発明において、イミン化合物の好適なものとしては、下記一般式(1)
【0024】
(式中、R
1は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を示し、R
2は、アルキリデン基、又はシクロアルキリデン基を示す。)
で表されるものを挙げることができる。
【0025】
ここで、R
1のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等の炭素数1〜8のものが好ましい。また、シクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数4〜8のものが好ましい。さらに、アリール基としては、フェニル基が好ましい。中でも、アルキル基としては炭素数が2〜6のものが、シクロアルキル基としては、炭素数が5〜6のものが、安定性と反応性の観点から好ましい。
【0026】
また、R
2のアルキリデン基としては、メチレン基、エチリデン基、プロピリデン基、イソプロピリデン基、ブチリデン基、イソブチリデン基、ペンチリデン基、ヘキシリデン基、へプチリデン基、オクチリデン基等の炭素数1〜8のものが挙げられる。また、シクロアルキリデン基としては、シクロブチリデン基、シクロペンチリデン基、シクロヘキシリデン基、シクロペンチリデン基、シクロオクチリデン基等の炭素数4〜8のものが挙げられる。中でも、アルキリデン基としては炭素数が3〜6のものが、シクロアルキリデン基としては炭素数が4〜6のものが、反応性の高さから特に好ましい。最も好ましいR
2は、炭素数が5〜6のシクロアルキリデン基である。
【0027】
また、これらR
1のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基、並びにR
2のアルキリデン基、及びシクロアルキリデン基は、水素原子の1個又は2個以上が置換基を有していても良く、該置換基としては、水酸基、(メタ)アクリロイル基、アルデヒド基、カルボニル基、アシル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、チオール基、チオカルボニル基等が例示される。また、シクロアルキル基及びアリール基の場合、アルキル基、アルキレン基、アリール基が置換したものであっても良い。
【0028】
上記一般式(1)で表されるイミン化合物の具体例としては、2−メチルプロパン−1−イミン、2−ブタンイミン、ブタン−1−イミン、2−メチル−3−ブタンイミン、N−メチル−2−プロパンイミン、N−イソプロピルプロパン−2−イミン、N−プロピルプロパン−1−イミン、N−イソブチル−2−メチル−1−プロパンイミン、N−ブチル−1−ブタンイミン、1−メトキシエタンイミン、3−エトキシ−1−プロパンイミン、α−メチルベンゼンメタンイミン、N−フェニルプロパン−2−イミン、N−シクロヘキシルプロパン−2−イミン、N−シクロヘキシルシクロヘキサンイミン、N−シクロヘキシリデンアニリン、N−シクロヘキシリデン−2,6−ジメチルアニリン、N−(2−メチルプロピル)シクロヘキサンイミン等が挙げられる。このうち、N−シクロヘキシルシクロヘキサンイミンやN−(2−メチルプロピル)シクロヘキサンイミンが、特に重合活性が高くなり好適である。
【0029】
本発明において、エナミン化合物の内で好適なものとしては、下記一般式(2)
【0031】
(式中、R
3及びR
4はそれぞれ、水素、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基を示し、R
5は、アルキリデン基を示し、2個存在するR
3同士は互いに異なっていてもよく、R
4とR
5は互いに結合して環状構造であってもよい)
で表されるもの。又は、下記一般式(3)
【0033】
(式中、R
4は、水素、アルキル基、シクロアルキル基、又はアリール基のいずれかを示し、R
5は、アルキリデン基を示し、R
6は、N原子、O原子、S原子のいずれかが鎖の途中に介在していても良いポリメチレン基を示し、R
4とR
5は互いに結合して環状構造であってもよい)
で表されるものを挙げることができる。
【0034】
ここで、R
3及びR
4のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基としては、前記一般式(1)で表されるイミン化合物のR
1においてこれら各基として示したものと同様のものが夫々適用できる。
【0035】
また、R
5のアルキリデン基も、前記一般式(1)で表されるイミン化合物のR
2の該アルキリデン基として示したものと同様のものが適用できる。
【0036】
また、R
6のポリメチレン基は、ジメチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基、ヘキサメチレン基、ヘプタメチレン基、オクタメチレン基等の炭素数2〜8のものが挙げられる。また、これらのポリメチレン基は、N原子、O原子、S原子のいずれかの少なくとも一個が鎖の途中に介在するものであっても良い。R
6により形成される環の構成元素数があまりに多いと立体障害によるものと考えられる反応性の低下が生じ、他方、元素数が少なすぎる場合には不安定な構造になって保存安定性が低下する傾向があるため、このR
6により形成される環は、通常は、5〜11員環であるのが好ましく、さらに5〜8員環であるのが特に好ましい。
【0037】
これら一般式(2)及び(3)で表されるエナミン化合物において、R
4とR
5は互いに結合して環状構造を形成していても良い。こうした環状構造としては、シクロブテン、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロペンテン、シクロオクテン等が挙げられる。なかでもシクロペンテンとシクロヘキセンはその安定性と反応性の観点から好ましい。
【0038】
なお、前記R
3及びR
4のアルキル基、シクロアルキル基、及びアリール基、R
5のアルキリデン基、並びにR
6のポリメチレン基も、水素原子の1個又は2個以上が置換基を有していても良く、該置換基としては、水酸基、(メタ)アクリロイル基、アルデヒド基、カルボニル基、アシル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、シアノ基、ニトロ基、チオール基、チオカルボニル基等が例示される。また、シクロアルキル基、アリール基、ポリメチレン基の場合、アルキル基、アルキレン基、アリール基が置換したものであっても良い。
【0039】
上記一般式(2)で表されるエナミン化合物の具体例としては、N,N−ジメチルビニルアミン、メチル(1−プロペニル)アミン、ジメチル(2−メチル−1−プロペニル)アミン、メチルイソプロペニルアミン、3−アミノ−2−シクロヘキセン−1−オン、3−(メチルアミノ)−2−シクロヘキセン−1−オン、3−(ジメチルアミノ)−2−シクロヘキセン−1−オン、N,N−ジメチルシクロヘキセン−1−アミン、シクロヘキセン−1−アミン等が挙げられ、このうち、3−アミノ−2−シクロヘキセン−1−オン、3−(メチルアミノ)−2−シクロヘキセン−1−オン、3−(ジメチルアミノ)−2−シクロヘキセン−1−オン、N,N−ジメチルシクロヘキセン−1−アミン、シクロヘキセン−1−アミンが、特に重合活性が高くなり好適である。
【0040】
上記一般式(3)で表されるエナミン化合物の具体例としては、
1−ピロリジノ−1−シクロヘキセン、1−ピペリジノ−1−シクロヘキセン、1−ピロリジノ−1−シクロペンテン、1−ピペリジノ−1−シクロペンテン、1−(2−メチル−1−ペンテニル)ピロリジン、1−(1−シクロオクテニル)ピロリジン、1−モルホリノ−1−シクロヘキセン、1−モルホリノ−1−シクロペンテン、1−モルホリノ−2−メチル−1−プロペン、1−モルホリノ−4−メチル−1−シクロヘキセン、1−チオモルホリノ−1−シクロヘキセン、1−チオモルホリノ−1−シクロペンテン等が挙げられ、このうち、1−ピロリジノ−1−シクロヘキセンや1−ピペリジノ−1−シクロヘキセン、1−モルホリノ−1−シクロヘキセン、1−モルホリノ−1−シクロペンテンが、特に重合活性が高くなり好適である。
【0041】
本発明において、これらのイミン化合物又はエナミン化合物は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0042】
前記したように、これら(B)イミン化合物及びエナミン化合物は、(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物と組合せて使用することにより、重合活性を大きく向上させる作用を示すが、この作用は特に一般式(3)で表されるエナミン化合物を用いた場合に顕著である。これは、R
6のポリメチレン基により環状構造を有しているため、分子が平面的な構造であり立体障害が少なく、ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物と反応し易くなっているためではないかと考えられる。
【0043】
以上を総合して、本発明において最も好適に使用できる(B)成分は、1−ピロリジノ−1−シクロヘキセン、1−ピペリジノ−1−シクロヘキセン、1−モルホリノ−1−シクロヘキセン、1−モルホリノ−1−シクロペンテンである。
【0044】
本発明の化学重合触媒において、(B)イミン化合物又はエナミン化合物の配合量は、特に制限されるものではないが、ラジカル重合性単量体100質量部当り0.1〜10質量部、特に0.5〜5質量部であるのが好ましい。この配合量において、ラジカル重合性単量体を、より高い重合活性で硬化させることが可能になる。さらに、(B)イミン化合物又はエナミン化合物は、(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物1質量部当り、0.1〜10質量部、特に0.2〜5質量部配合するのが好ましい。
<(C)水又は水酸基含有化合物>
本発明における、化学重合触媒は上記必須成分のみでも十分に高い重合活性を有しているが、硬化促進剤として水又は水酸基含有化合物を配合することで、さらにその重合活性を向上させることができる。この結果、硬化時間を短縮することや、触媒量の低減を図ることができ好ましい。
【0045】
水酸基含有化合物としては、公知のものを制限無く使用することができるが、保存安定性が高いことや重合活性の高さから、好適な化合物として下記一般式(4)
【0047】
(式中、R
7は、アルキル基、シクロアルキル基のいずれかを示し、nは1〜3の整数を表す。)
で表されるものを挙げることができる。
【0048】
ここで、R
7のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、ネオペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基等の単素数1〜8のものが挙げられる。また、シクロアルキル基としては、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基等の炭素数3〜8のものが挙げられる。これらのアルキル基及びシクロアルキル基は、水素原子の1個又は2個以上が置換基を有していても良く、該置換基としては、
前記一般式(1)で表されるイミン化合物のR
1で説明したこれら各基の置換基が同様に適用できる。
【0049】
上記一般式(4)で表される水酸基含有化合物の具体例としては、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、ペンタノール、ヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、シクロペンタノ−ル、シクロヘキサノール、シクロヘプタノ−ル、シクロヘプタノ−ル、エチレンジオール、プロピレンジオール、ブチレンジオール、ペンタンジオール、ヘンサンジオール、ヘプタンジオール、オクタンジオール、グリセロール等が挙げられる。
【0050】
本発明において、これらの水又は水酸基含有化合物は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0051】
本発明において、これら(C)水又は水酸基含有化合物と、(B)イミン化合物又はエナミン化合物とを共存させることにより、(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物の重合活性を大きく向上させる作用は、(B)成分と(C)成分の反応性に起因していると考えられる。例えば、(C)成分が水の場合について詳述すると、イミン化合物又はエナミン化合物に水が反応すると、不安定なヘミアミナール構造を経てアミンが外れカルボニル基が生じる反応が進行する。また、この反応は可逆反応であり、上記生成したアミンはカルボニル基と反応し、もとのイミン化合物又はエナミン化合物と水とに戻る逆反応も生じると考えられる。しかして、これらの反応の中間体である不安定なヘミアミナール化構造を有する化合物が、ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物に対する還元剤として、非常に高い活性を有しており、このためラジカルの生成が活発になるためではないかと予測している。
【0052】
上記水の重合活性の向上作用は、水酸基含有化合物でも生じるため、同様な反応が進行していると考えられる。活性の向上効果は水又は水酸基含有化合物の内でも、水及びメタノール、エタノール、イソプロパノール等の低級アルコール(炭素数1〜3)で特に大きいため、特に好適である。
【0053】
本発明の化学重合触媒において、(C)水又は水酸基含有化合物の配合量は、特に制限されるものではないが、(B)イミン化合物又はエナミン化合物1質量部当り0.01〜40質量部、特に0.5〜5質量部であるのが好ましい。この配合量において、ラジカル重合性単量体を、より高い重合活性で硬化させることが可能になる。
<(D)ラジカル重合性単量体>
本発明の化学重合触媒は、化学重合型重合性組成物の重合触媒として、ラジカル重合性単量体に配合して使用される。こうしたラジカル重合性単量体としては、公知のものが特に制限なく使用できるが、重合性の良さ等から、(メタ)アクリレート系重合性単量体が好適に使用される。一般に好適に使用される(メタ)アクリレート系重合性単量体を例示すれば、下記(I)〜(III)に示される多官能のものが挙げられる。
(I)二官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体
(i)芳香族化合物系のもの
2,2−ビス(メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス[4−(3−メタクリロイルオキシ)−2−ヒドロキシプロポキシフェニル]プロパン(以下、bis−GMAと略記する)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシポリエトキシフェニル)プロパン(以下、D−2.6Eと略記する)、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシテトラエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシペンタエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジエトキシフェニル)−2(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2(4−メタクリロイルオキシジプロポキシフェニル)−2−(4−メタクリロイルオキシトリエトキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシプロポキシフェニル)プロパン、2,2−ビス(4−メタクリロイルオキシイソプロポキシフェニル)プロパン及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ジイソシアネートメチルベンゼン、4,4‘−ジフェニルメタンジイソシアネートのような芳香族基を有するジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト等。
(ii)脂肪族化合物系のもの
エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート(以下、3Gと略記する)、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレート、1,4−ブタンジオールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、グリセロールジメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート等のメタクリレートあるいはこれらのメタクリレートに対応するアクリレートのような−OH基を有するビニルモノマーと、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)のようなジイソシアネート化合物との付加体から得られるジアダクト;1,2−ビス(3−メタクリロイルオキシ−2−ヒドロキシプロポキシ)エチル等。
(II)三官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体
トリメチロールプロパントリメタクリレート、トリメチロールエタントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、トリメチロールメタントリメタクリレート等のメタクリレート及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等。
(III)四官能性(メタ)アクリレート系重合性単量体
ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート;ジイソシアネートメチルベンゼン、ジイソシアネートメチルシクロヘキサン、イソフォロンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート、メチレンビス(4−シクロヘキシルイソシアネート)、4,4−ジフェニルメタンジイソシアネート、トリレン−2,4−ジイソシアネートのようなジイソシアネート化合物とグリシドールジメタクリレートとの付加体から得られるジアダクト等。
これら多官能の(メタ)アクリレート系重合性単量体は、必要に応じて複数の種類のものを併用しても良い。
【0054】
さらに、必要に応じて、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、イソプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、グリシジルメタクリレート等のメタクリレート、及びこれらのメタクリレートに対応するアクリレート等の単官能性の(メタ)アクリレート系重合性単量体を用いても良い。
【0055】
前記(メタ)アクリレート系重合性単量体のなかでもの、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−クロロ−2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、グリセロールジメタクリレート等の前記水酸基含有化合物の要件を満足する重合性単量体は、重合触媒の反応性を向上させる重合促進剤として配合した場合に、該重合促進剤自体が重合可能であるため、硬化体強度がより高くなる効果を奏することができ好ましい。
【0056】
前記(メタ)アクリレート系重合性単量体に加えて、重合の容易さ、粘度の調節、あるいはその他の物性を調節するために、上記(メタ)アクリレート系以外の他のラジカル重合性単量体を混合して重合することも可能である。これら他のラジカル重合性単量体を例示すると、フマル酸モノメチル、フマル酸ジエチル、フマル酸ジフェニル等のフマル酸エステル類;スチレン、ジビニルベンゼン、α−メチルスチレン、α−メチルスチレンダイマー等のスチレンあるいはα−メチルスチレン誘導体;ジアリルテレフタレート、ジアリルフタレート、ジアリルジグリコールカーボネート等のアリル化合物等を挙げることができる。これらのラジカル重合性単量体は単独又は二種以上を一緒に使用することができる。
【0057】
本発明の化学重合触媒を配合した化学重合型重合性組成物は、種々の成形材料に幅広く使用できる。高い重合活性を有し、保存安定性に優れ、硬化体の色調変化も小さい性状に加え、前記した通り水により硬化性が向上するという優れた性質を有するため、口腔内という水分の多い環境で使用されることが多い歯科用途に特に好適である。具体的には、歯科用セメント、歯科用接着材、コンポジットレジン、歯科用常温重合レジン、歯科用前処理材、義歯床用材料等として有利に使用できる。
<充填材>
本発明の化学重合触媒を配合した化学重合型重合性組成物を、前記歯科用途に用いる場合、機械的強度や操作性を向上させるために、充填材を含有させることが可能である。こうした充填材としては、無機充填材、有機充填材、又は無機−有機複合フィラーを適宜用いることができる。有機充填材の具体例としては、ポリメチル(メタ)アクリレート、ポリエチル(メタ)アクリレート、メチル(メタ)アクリレート・エチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・ブチル(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・スチレン共重合体等の非架橋性ポリマー若しくは、メチル(メタ)アクリレート・エチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体、メチル(メタ)アクリレート・トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート共重合体あるいはメチル(メタ)アクリレート・ブタジエン系単量体との共重合体等の架橋性ポリマーが使用できる。
【0058】
無機充填材は、例えば、周期律第I、II、III、IV族、遷移金属、若しくはそれらの酸化物、水酸化物、塩化物、硫酸塩、亜硫酸塩、炭酸塩、燐酸塩、又は珪酸塩等が制限なく使用できる。これらは、混合物や複合塩であっても良い。
【0059】
好適には、石英、シリカ、アルミナ、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア、ランタンガラス、バリウムガラス、ストロンチウムガラス、ヒュ−ムドシリカ、水酸化カルシウム、水酸化ストロンチウム、酸化亜鉛、ケイ酸塩ガラス等が挙げられる。また、無機充填材としては、フルオロアルミノシリケートガラス等の酸化物のようなカチオン溶出性フィラーも好適に用いることができる。これらの無機充填材の中でも、シリカ、アルミナ、ジルコニア、シリカ−チタニア、シリカ−ジルコニア等を、特に好適に用いることができる。
【0060】
また、充填材としては、無機−有機複合フィラーも好適に使用できる。無機−有機複合フィラーは、無機フィラーと重合性単量体とをペースト状に混合した後重合させ、粒状物に粉砕したものが使用される。
【0061】
充填材として、無機フィラー又は無機−有機複合フィラーを用いる場合、(D)ラジカル重合性単量体との親和性、分散性を良好にし、硬化体の機械的強度及び耐水性を向上させるために、シランカップリング剤で表面処理するのが好ましい。シランカップリング剤としては、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリクロロシラン、ジメチルジクロロシラン、トリメチルクロロシラン、ビニルトリクロロシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−クロロプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、ヘキサメチルジシラザン等が好適に用いられる。また、シランカップリング剤以外にも、チタネート系カップリング剤、アルミネート系カップリング剤、ジルコ−アルミネート系カップリング剤等を用いても良い。さらには、充填材粒子表面に前記ラジカル重合性単量体をグラフト重合させて用いても良い。
【0062】
本発明において、これらの充填材は、単独又は2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0063】
なお、化学重合型重合性組成物を歯科用途に用いる場合、充填材は、屈折率が1.4〜2.2の範囲のものが好適に用いられる。また、粒子径については、大きすぎる場合には重合性組成物の表面に凹凸が生じる場合があり好ましく無いため、平均粒子径が0.001〜100μm、特に0.001〜10μmのものを用いるのが好ましい。
【0064】
本発明において、これら充填材の配合量は、得られる重合性組成物の粘度(操作性)や硬化体の機械的物性を考慮して適宜決定すればよいが、ラジカル重合性単量体100質量部当り、10〜1000質量部、特に100〜700質量部であるのが好ましい。
<他の重合触媒>
本発明の化学重合触媒を配合した化学重合型重合性組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で他の公知の化学重合触媒と併用しても良い。当該他の化学重合触媒としては、酸性化合物及びアリールボレート類の組合せ、該酸性化合物及びアリールボレート類の組合せにさらに金属錯体を加えたもの、バルビツール酸、アルキルボラン等が挙げられる。
【0065】
酸性化合物及びアリールボレート類の組合せにおいて、酸性化合物としては、無機酸でも有機酸でも良いが、好ましくは重合性の官能基を有する有機酸であるのが好ましい。このような化合物としては、(メタ)アクリル酸、2−ヒドロキシエチルアシッドホスフェート、4−(メタ)アクリルオキシエチルトリメリット酸又はその無水物、1,1−(メタ)アクリルオキシウンデシル−1,1−ジカルボン酸、2−(メタ) アクリルアミド−2−メチルスルホン酸等が挙げられる。アリールボレート類としては、テトラフェニルホウ素ナトリウム、テトラフェニルホウ素トリエタノールアミン塩、テトラフェニルホウ素ジメチル−p−トルイジン塩、テトラキス(p−フルオロフェニル)ホウ素ナトリウム、ブチルトリ(p−フルオロフェニル)ホウ素ナトリウム等が挙げられる。
【0066】
酸性化合物及びアリールボレート類の組合せにさらに配合する金属錯体としては、四酸化二バナジウム(IV)、酸化バナジウムアセチルアセトナート(IV)、シュウ酸バナジル(IV)、硫酸バナジル(IV)、オキソビス(1−フェニル−1,3−ブタンジオネート)バナジウム(IV)、ビス(マルトラート)オキソバナジウム(IV)、五酸化バナジウム(V)、メタバナジン酸ナトリウム(V)、メタバナジン酸アンモン(V)、等のバナジウム化合物が挙げられる。バルビツール酸としては5−ブチルバルビツール酸、1−ベンジル−5−フェニルバルビツール酸等を挙げることが出来る。アルキルボランとしてはトリブチルボラン、トリブチルボラン部分酸化物、トリフェニルボラン等が挙げられる。
【0067】
また、他の化学重合触媒としては、本発明の効果を損なわない少量であれば、過酸化ベンゾイル、過酸化アセチル、過酸化ラウロイル等のジアシルパーオキサイド類、過酸化ジ−t−ブチル、過酸化ジクミル等のジアルキルパーオキサイド類等の有機過酸化物も配合させても良い。
【0068】
さらに、本発明の化学重合触媒に加えて、光重合触媒を添加してデュアルキュア型の重合性組成物として使用しても良い。光重合させる用途としては、前記歯科用途の他、フォトレジスト材料、印刷製版材料、ホログラム材料等が挙げられる。
<その他の任意添加成分>
本発明の化学重合触媒を配合した化学重合型重合性組成物には、目的に応じその性能を低下させない範囲で、有機溶媒、増粘剤、重合禁止剤等を配合させることも可能である。当該有機溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、ジクロロメタン、アセトン、酢酸エチル等があり、増粘剤としてはポリビニルピロリドン、カルボキシメチルセルロ−ス、ポリビニルアルコール等の高分子化合物や高分散性シリカが例示される。
【0069】
また、歯牙の色調に合わせるために、上述した各成分に加えて、顔料、蛍光顔料、染料、紫外線に対する変色防止のために紫外線吸収剤を添加してもよい。
<重合性組成物の保管形態>
本発明の化学重合触媒は、各成分を同一包装に共存させると化学重合が開始されてしまうため、該化学重合触媒を配合した重合性組成物では、これを長期間保管する場合には、少なくとも2包装に分割し、これら両成分を共存させない必要がある。すなわち、(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物と、(B)イミン化合物又はエナミン化合物とは別包装にすることが必要である。さらに、(C)成分の水又は水酸基含有化合物は、(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物が含有される包装と(B)イミン化合物又はエナミン化合物が配合される包装のいずれに配合しても良いが、保存安定性の良さからは
前者の包装に配合するのが好ましい。すなわち、後者の包装に配合すると、水又は水酸基含有化合物がイミン化合物やエナミン化合物と反応してしまい重合活性が若干低下する虞があるためである。
【実施例】
【0070】
以下、本発明を具体的に説明するために、実施例、比較例を挙げて説明するが、本発明はこれらにより何等制限されるものではない。尚、実施例中に示した、略称、略号については以下の通りである。
略称及び略号
[(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物]
パーメンタH:p−メンタンハイドロパーオキサイド
パーオクタH:1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド
パークミルH:クメンハイドロパーオキサイド
[(B)イミン化合物又はエナミン化合物]
PI:N−プロピルプロパン−1−イミン
CI:N−シクロヘキシルシクロヘキサンイミン
AC:3−アミノ−2−シクロヘキセン−1−オン
PC:1−ピロリジノ−1−シクロヘキセン
MC:1−モルホリノ−1−シクロヘキセン
[(D)ラジカル重合性単量体]
BisGMA:2,2−ビス(4−(2−ヒドロキシ−3−メタクリルオキシプロポキシ)フェニル)プロパン
3G:トリエチレングリコールジメタクリレート
D2.6E:2,2−ビス(4−(メタクリロイルオキシエトキシ)フェニル)プロパン
UDMA:1,6−ビス(メタクリルエチルオキシカルボニルアミノ)2,2,4−トリメチルヘキサン
HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート
GDMA:グリセロールジメタクリレート
[(E)充填材]
F−1:球状シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒子径0.2μm、粒子径の範囲0.08〜0.60μm
F−2:平均粒子径0.2μmの球状シリカ−ジルコニアを75質量部、D2.6Eを10質量部、3Gを15質量部の混合物にアゾビスイソブチロニトリル0.1質量部を溶解し、加熱硬化した後粉砕した平均粒子径38μmの有機無機複合フィラー
F−3:不定形シリカ−ジルコニア、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン表面処理物、平均粒子径3.5μm、粒子径の範囲0.25〜0.80μm
[その他]
[ハイドロパーオキサイド系以外の有機過酸化物]
BPO:ベンゾイルパーオキサイド
[3級芳香族アミン化合物]
DMPT:N,Nジメチル−p−トルイジン
[チオ尿素化合物]
ATU:アセチルチオ尿素
ETU:エチレンチオ尿素
[重合禁止剤]
BHT:2,6−ジt−ブチルヒドロキシトルエン
また、以下の実施例及び比較例において、各種の測定は以下の方法により実施した。
(1)硬化時間の測定方法
硬化時間の測定は、サ−ミスタ温度計による発熱法によって行った。歯科用重合性組成物を分包した組成物(I)と組成物(II)とを1:1の質量比で各計量し、20秒間攪拌混合して均一なペーストとした。ついで、2cm×2cm×1cmの中心に6mmφの孔の空いたテトラフルオロエチレン製モールドに流し込んだ後、サ−ミスタ温度計を差し込み、混合開始から最高温度を記録するまでの時間を硬化時間とした。なお、測定は37℃の恒温条件で行った。
(2)色調安定性評価方法
歯科用重合性組成物を分包した組成物(I)と組成物(II)とを1:1の質量比で各計量し、20秒間攪拌混合し均一なペーストとした。ついで、15mmφの孔の空いた1mm厚のテトラフルオロエチレン製モールドに流し込んだ後、ポリエチレン製のフィルムではさんで圧接し、37℃で1時間硬化させた硬化体を試験サンプルとした。試験サンプルを37℃の蒸留水中に30日間浸漬させ、浸漬前後の色調変化(ΔE)を測定した。色調測定は東京電色社製のTC−1800MK2を用いて行った。なお、ΔEが小さいほど色調変化が小さいことを意味し、ΔEが4.0以下であれば目視でその変化を認識することは難しいため、色調安定性が良好であると判断した。
(3)硬化体の強度(曲げ強さ)測定方法
歯科用重合性組成物を分包した組成物(I)と組成物(II)とを1:1の質量比で各計量し、20秒間攪拌混合して均一なペーストとした。混合後直ちに、2mm×2mm×25mmの角柱状のポリテトラフルオロエチレン製のモールドにペーストを充填してポリプロピレンフィルムで圧接し、37℃の恒温条件下で1時間静置して硬化体を調製した。得られた硬化体のばりを除去した後、37℃の水中に練和開始から24時間後まで浸漬させた。24時間後に試験機(株式会社島津製作所製、オートグラフAG5000D)を用いて、クロスヘッドスピ−ド1mm/minにて3点曲げ破壊強度を測定した。
(4)保存安定性試験方法
保存安定性の評価は、歯科用重合性組成物を分包した組成物(I)と組成物(II)とを、それぞれ50℃に1週間保存した後に、各包装の中で硬化が生じていないかを確認することで行なった。さらに、その組成物(I)と組成物(II)を用いて硬化時間を測定し評価することで行なった。
【0071】
実施例1〔硬化時間、色調安定性評価、曲げ強さ〕
下記組成
(A)ハイドロパーオキサイド系有機過酸化物
パーオクタH 2.0g
(D)重合性単量体
BisGMA 40g
3G 60g
充填材 F1 250g
その他の添加物 BHT 0.1g
を用いて、これらを均一になるまで攪拌混合して、ペースト状の組成物(I)−1を得た。
【0072】
一方、
(B)イミン化合物、又は、エナミン化合物
PI 2.0g
(D)重合性単量体
D2.6E 50g
UDMA 30g
3G 20g
充填材 F2 100g
F3 150g
その他の添加物 BHT 0.1g
を用いて、これらを均一になるまで攪拌混合して、ペースト状組成物(II)−1を得た。
【0073】
上記の方法で調製した組成物(I)−1と組成物(II)−1とを1:1の質量比で採取し、混合することにより化学重合型歯科用重合性組成物とした。この歯科用重合性組成物を用いて、硬化時間、色調安定性及び曲げ強さを評価した。評価結果を表3に示した。
実施例2〜21、比較例1〜6
実施例1の方法に準じ、表1および表2に示した組成の異なるペースト状組成物(I)−2〜16,(II)−2〜11を調製した。これらの(I)−2〜16,および(II)−2〜11から表3に示した各組合せで、前者ペーストと後者ペーストとを1:1の質量比で採取し、混合することにより夫々の化学重合型歯科用重合性組成物を得た。得られた各々の歯科用重合性組成物について、前記方法により硬化時間、色調安定性及び曲げ強さを評価した。結果を表3に夫々示した。なお、比較例5及び6は、硬化しなかったので、上記物性評価は行えなかった。
【0074】
【表1】
【0075】
【表2】
【0076】
【表3】
【0077】
実施例22〜24、比較例7〔保存安定性評価〕
実施例4、14、18及び比較例1で使用した夫々の歯科用重合性組成物の保存安定性について評価を行った。評価結果を表4に夫々示した。
【0078】
その結果、実施例に示したそれぞれの歯科用重合性組成物の硬化時間は依然として10分以内であり良好な結果が得られた。一方、比較例7で使用した組成物(I)−14は保存中に硬化してしまい、硬化時間を測定することはできなかった。
【0079】
【表4】