(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
前記炭酸塩は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、及び、炭酸水素ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1種である請求項1又は2に記載の洗浄剤組成物。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
洗浄対象物に付着した汚れが、油脂やタンパク質が熱変性することによって生じた強固な汚れである場合、洗浄剤組成物、又は、洗浄剤組成物を水で希釈した希釈洗浄剤組成物に洗浄対象物を浸漬して、長時間の浸漬洗浄を行う必要がある。
浸漬洗浄を長時間行う際には、洗浄対象物と洗浄剤組成物(希釈洗浄剤組成物)との接触時間が長いため、洗浄剤組成物に高い防食効果が必要となる。
【0007】
特許文献1には、アルミニウム板を洗浄剤組成物に浸漬し、1時間後に引き上げてすすぎを行い、アルミニウム板の外観変化により腐食性を評価した結果が記載されている。
しかしながら、特許文献1に記載された洗浄剤組成物にアルミニウム板を更に長時間浸漬した場合、アルミニウム板の腐食が生じることがあった。
【0008】
本発明は、上記のような課題を解決するためになされたものであり、洗浄剤組成物を水で希釈した希釈洗浄剤組成物を用いて金属に付着した汚れを除去することができ、かつ、金属を腐食しない洗浄剤組成物、希釈洗浄剤組成物、及び、金属の洗浄方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、アルカリ剤、カルシウム化合物、キレート剤を含む洗浄剤組成物に、さらに炭酸塩を添加することによって洗浄剤組成物を得て、上記洗浄剤組成物を水で希釈することにより得られる希釈洗浄剤組成物を用いて金属に付着した汚れの洗浄を行うと、金属に付着した汚れを除去することができ、かつ、金属を腐食しないことを発見し、本発明に想到した。
【0010】
すなわち、本発明の洗浄剤組成物は、水で2〜100倍に希釈することにより下記組成の希釈洗浄剤組成物を得るための洗浄剤組成物であって、
上記希釈洗浄剤組成物は、
アルカリ剤0.01〜1.5重量%、
カルシウム化合物0.001〜0.5重量%、
キレート剤0.01〜1.0重量%、
炭酸塩0.01〜0.3重量%、及び、
残部の水を含有することを特徴とする。
【0011】
本発明の洗浄剤組成物は、水で2〜100倍に希釈して希釈洗浄剤組成物を得るために用いられる濃縮液体洗浄剤組成物である。
濃縮液体洗浄剤組成物は、保持用容器内に保持されてエンドユーザへと搬送され、エンドユーザが、濃縮液体洗浄剤組成物を希釈用容器に移しかえ、水等の溶媒を用いて所望の濃度に希釈することにより使用する。
濃縮液体洗浄剤組成物は、あらかじめ使用時の所望の濃度に設定された洗浄剤組成物に比べて、保存場所や輸送重量を低減でき、これにより輸送費等のコストの削減が図れるという利点を有する。
【0012】
本発明の洗浄剤組成物は、炭酸塩を含有している。炭酸塩は金属の腐食を防止するために有効である。
本発明の洗浄剤組成物を水で2〜100倍に希釈して得られる、炭酸塩を0.01〜0.3重量%含有する希釈洗浄剤組成物は、炭酸塩を適量含有しており、このような希釈洗浄剤組成物を用いると、金属を腐食することなく金属に付着した汚れを除去することができる。
希釈洗浄剤組成物中の炭酸塩の含有量が0.01重量%未満であると、炭酸塩の濃度が低過ぎて、腐食防止効果が充分に得られないことがある。
また、希釈洗浄剤組成物中の炭酸塩の含有量が0.3重量%を超えて多い場合も、腐食防止効果が得られないことがある。希釈洗浄剤組成物中に炭酸塩が0.3重量%を超える量含まれていると、アルカリ度が高まり過ぎ、金属の腐食防止効果よりも腐食促進効果がより顕著になるためと考えられる。
【0013】
本発明の洗浄剤組成物はアルカリ剤を含有している。アルカリ剤は洗浄力の向上に有効である。本発明の洗浄剤組成物を水で2〜100倍に希釈して得られる、アルカリ剤を0.01〜1.5重量%含有する希釈洗浄剤組成物は、洗浄力の高い希釈洗浄剤組成物となる。
【0014】
なお、本発明の洗浄剤組成物は水で2〜100倍に希釈することにより本発明で定める組成の希釈洗浄剤組成物を得るための洗浄剤組成物であるが、2〜100倍の範囲内で定められたある特定の希釈倍率において本発明で定める組成の希釈洗浄剤組成物が得られるものであればよく、2〜100倍の希釈倍率の全ての範囲において本発明で定める組成の希釈洗浄剤組成物が得られる必要はない。
例えば、10倍希釈用の本発明の洗浄剤組成物の組成は、
アルカリ剤0.1〜15.0重量%、
カルシウム化合物0.01〜5.0重量%、
キレート剤0.1〜10.0重量%、
炭酸塩0.1〜3.0重量%、及び、
残部の水を含有するものである。
上記洗浄剤組成物のうち各成分の濃度が最も小さい洗浄剤組成物は、2〜10倍希釈であれば本発明で定める組成の希釈洗浄剤組成物が得られるが、希釈倍率が10倍を超えると本発明で定める組成の希釈洗浄剤組成物は得られないものである。
このような洗浄剤組成物は、希釈倍率が10倍を超えるときに得られる希釈洗浄剤組成物がどのような組成になるかとは関係なく、2〜100倍の範囲内で定められたある特定の希釈倍率である「2〜10倍の希釈倍率」において本発明の希釈洗浄剤組成物が得られるものであるので、本発明の洗浄剤組成物に該当する。
【0015】
本発明の洗浄剤組成物は、水で2〜100倍に希釈することにより濃度が0.01〜1.0重量%となる量の界面活性剤をさらに含有することが望ましい。
界面活性剤を含有することによって、界面張力を低下させて、アルカリ剤が汚れに浸透しやすくなるようにすることで、汚れを落としやすくすることができる。
本発明の洗浄剤組成物を水で2〜100倍に希釈して得られる希釈洗浄剤組成物は界面活性剤を0.01〜1.0重量%含有することが望ましく、界面活性剤を適量含むことによって、洗浄力の高い希釈洗浄剤組成物となる。
【0016】
本発明の洗浄剤組成物では、上記炭酸塩は、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、及び、炭酸水素ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが望ましい。
これらの炭酸塩を含有すると、金属の腐食防止効果がより効果的に発揮される。
【0017】
本発明の洗浄剤組成物は、水で2〜100倍に希釈することにより濃度が0.01〜1.0重量%となる量の水溶性グリコール系溶剤をさらに含有することが望ましい。
水溶性グリコール系溶剤を含有することによって、油脂やタンパク質が熱変性することによって生じた汚れを膨潤させることができ、アルカリ剤の浸透が促進されるため、汚れをより落としやすくすることができる。
本発明の洗浄剤組成物を水で2〜100倍に希釈して得られる希釈洗浄剤組成物は水溶性グリコール系溶剤を0.01〜1.0重量%含有することが望ましく、水溶性グリコール溶剤を適量含むことによって、洗浄力の高い希釈洗浄剤組成物となる。
【0018】
本発明の洗浄剤組成物では、pHが12.0よりも大きいことが望ましい。
アルカリ性の洗浄剤組成物を用いて油汚れに対する洗浄を行う際には、pHが大きいほど洗浄力が高くなることが一般的である。本発明の洗浄剤組成物は、pHが12.0を超えて大きい場合であっても高い防食効果を有するため、洗浄力が非常に高く、かつ、金属を腐食しない洗浄剤組成物とすることができる。
また、本発明の洗浄剤組成物を水で2〜100倍に希釈して得られる希釈洗浄剤組成物のpHも大きくなるため、洗浄力が高く、かつ、金属を腐食しない希釈洗浄剤組成物とすることができる。
【0019】
本発明の希釈洗浄剤組成物は、本発明の洗浄剤組成物を水で2〜100倍に希釈してなることを特徴とする。
すなわち、本発明の希釈洗浄剤組成物は、アルカリ剤0.01〜1.5重量%、カルシウム化合物0.001〜0.5重量%、キレート剤0.01〜1.0重量%、炭酸塩0.01〜0.3重量%、及び、残部の水を含有する。
本発明の希釈洗浄剤組成物はアルカリ剤、カルシウム化合物、キレート剤及び炭酸塩を適量含有するため、金属を腐食することなく金属に付着した汚れを除去することができる。
【0020】
本発明の金属の洗浄方法は、本発明の洗浄剤組成物を水で2〜100倍で希釈して希釈洗浄剤組成物を調製し、上記希釈洗浄剤組成物を用いて金属に付着した汚れの洗浄を行うことを特徴とする。
上記希釈洗浄剤組成物は、アルカリ性の洗浄剤組成物であり、金属を腐食しない洗浄剤組成物であるので、金属を腐食することなく、金属に付着した汚れを洗浄することができる。
【0021】
本発明の金属の洗浄方法では、上記希釈洗浄剤組成物に金属を浸漬する、又は、上記希釈洗浄剤組成物を金属に噴霧、発泡させて噴霧、又は、塗布することにより金属に付着した汚れの洗浄を行うことが望ましい。
【0022】
希釈洗浄剤組成物に金属を接触させることによって、金属に付着した強固な汚れを洗浄することができる。
【0023】
本発明の金属の洗浄方法では、上記金属がアルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は、銅合金であることが望ましい。
これらの金属は、腐食しやすい金属であるが、本発明の金属の洗浄方法では腐食しやすい金属を腐食させることなく洗浄を行うことができる。
【発明の効果】
【0024】
本発明の洗浄剤組成物を水で希釈した希釈洗浄剤組成物を用いて金属を洗浄すると、金属を腐食することなく、金属に付着した汚れを洗浄することができる。
【発明を実施するための形態】
【0025】
本発明の洗浄剤組成物は、水で2〜100倍に希釈することにより下記組成の希釈洗浄剤組成物を得るための洗浄剤組成物であって、
上記希釈洗浄剤組成物は、
アルカリ剤0.01〜1.5重量%、
カルシウム化合物0.001〜0.5重量%、
キレート剤0.01〜1.0重量%、
炭酸塩0.01〜0.3重量%、及び、
残部の水を含有することを特徴とする。
【0026】
アルカリ剤としては、水酸化ナトリウム、及び、水酸化カリウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが望ましい。
洗浄剤組成物中のアルカリ剤の含有量は、水で希釈することにより得られる希釈洗浄剤組成物中のアルカリ剤の濃度が0.01〜1.5重量%となる濃度であればよい。
10倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中のアルカリ剤の含有量は0.1〜15.0重量%であり、好ましくは1〜10重量%である。
2倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中のアルカリ剤の含有量は0.02〜3.0重量%であり、好ましくは0.2〜2.0重量%である。
100倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中のアルカリ剤の含有量は1.0〜97.9重量%であり、好ましくは10〜97.9重量%である。
希釈洗浄剤組成物がアルカリ剤を0.01〜1.5重量%含有することによって、洗浄力の高い希釈洗浄剤組成物とすることができる。
【0027】
カルシウム化合物としては、塩化カルシウム、及び、酢酸カルシウム、酸化カルシウム、水酸化カルシウム、硝酸カルシウム、炭酸カルシウムからなる群から選ばれる少なくとも一種であることが望ましい。
洗浄剤組成物中のカルシウム化合物の含有量は、水で希釈することにより得られる希釈洗浄剤組成物中のカルシウム化合物の濃度が0.001〜0.5重量%となる濃度であればよい。
10倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中のカルシウム化合物の含有量は0.01〜5.0重量%であり、好ましくは0.5〜3.0重量%である。
2倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中のカルシウム化合物の含有量は0.002〜1.0重量%であり、好ましくは0.1〜0.6重量%である。
100倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中のカルシウム化合物の含有量は0.1〜50.0重量%であり、好ましくは5.0〜30.0重量%である。
希釈洗浄剤組成物がカルシウム化合物を0.001〜0.5重量%含有することによって、キレート剤と組み合わせて、金属腐食を抑制することができる。
【0028】
キレート剤は、洗浄に使用される水道水や汚れ成分等に含まれるカルシウムイオン、マグネシウムイオン等に基づく難溶性塩が生成することを防止する作用を有する。
キレート剤としては、アミノカルボン酸系、ヒドロキシカルボン酸系、リン酸系及びポリアクリル酸、アクリル酸・マレイン酸共重合体類等のものから選択される1又は2以上のものを使用することができる。
アミノカルボン酸系としては、ジエチレントリアミン五酢酸(DTPA)、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ニトリロ三酢酸(NTA)、ヒドロキシエチルエチレンジアミン三酢酸(HEDTA)、トリエチレンテトラミン六酢酸(TTHA)、ジカルボキシメチルグルタン酸(GLDA)、ヒドロキシエチルイミノ酢酸(HIDA)、ジヒドロキシエチルグリシン(DHEG)、1,3−プロパンジアミン四酢酸(PDTA)、1,3−ジアミノ−2−ヒドロキシプロパン四酢酸(DPTA−OH)あるいはこれらの塩等が挙げられる。
ヒドロキシカルボン酸系としては、グルコン酸、リンゴ酸、コハク酸、クエン酸、乳酸、酒石酸あるいはこれらの塩等(例えば、ナトリウム塩、カリウム塩等)が挙げられる。
リン酸系としては、ヒドリキシエチリデンジホスホン酸(HEDP)、ニトリロトリスチレンホスホン酸(NTMP)、ホスホノブタントリカルボン酸(PBTC)、ヘキサメタリン酸あるいはこれらの塩等が挙げられる。
これらのキレート剤は、これらから選択される1種又は2種以上を混合して使用することができ、酒石酸とホスホノブタントリカルボン酸を組み合わせて使用することが好ましい。
洗浄剤組成物中のキレート剤の含有量は、水で希釈することにより得られる希釈洗浄剤組成物中のキレート剤の濃度が0.01〜1.0重量%となる濃度であればよい。
10倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中のキレート剤の含有量は0.1〜10.0重量%であり、好ましくは1.0〜7.0重量%である。
2倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中のキレート剤の含有量は0.02〜2.0重量%であり、好ましくは0.2〜1.4重量%である。
100倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中のキレート剤の含有量は10.0〜97.9重量%であり、好ましくは10.0〜70.0重量%である。
カルシウム化合物及びキレート剤を含有することで金属腐食を抑制することができる。
なお、キレート剤を複数種類含む場合には、キレート剤の含有量は、複数種類のキレート剤の合計量として定める。
【0029】
炭酸塩としては、炭酸カリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素カリウム、炭酸カルシウム、及び、炭酸水素ナトリウムからなる群から選択された少なくとも1種であることが望ましい。
洗浄剤組成物中の炭酸塩の含有量は、水で希釈することにより得られる希釈洗浄剤組成物中の炭酸塩の濃度が0.01〜0.3重量%となる濃度であればよい。
10倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中の炭酸塩の含有量は0.1〜3.0重量%であり、好ましくは1.0〜3.0重量%である。
2倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中の炭酸塩の含有量は0.02〜0.6重量%であり、好ましくは0.2〜0.6重量%である。
100倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中の炭酸塩の含有量は1.0〜30.0重量%であり、好ましくは10.0〜30.0重量%である。
炭酸塩を0.1〜3.0重量%含有する洗浄剤組成物を水で10倍に希釈して炭酸塩の濃度を0.01〜0.3重量%とした希釈洗浄剤組成物を用いて洗浄を行うと、希釈洗浄剤組成物に金属を長時間接触させて洗浄を行った場合でも金属に腐食が生じることを防止することができる。
【0030】
洗浄剤組成物にはさらに界面活性剤が含まれていてもよい。
洗浄剤組成物が界面活性剤を含む場合、その含有量は水で希釈することにより得られる希釈洗浄剤組成物中の界面活性剤の濃度が0.01〜1.0重量%となる濃度であることが望ましい。
10倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中の界面活性剤の含有量は0.1〜10.0重量%であることが望ましい。
2倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中の界面活性剤の含有量は0.02〜2.0重量%であることが望ましい。
100倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中の界面活性剤の含有量は1.0〜96.9重量%であることが望ましい。
界面活性剤としては、アルキルベンゼンスルホン酸塩、脂肪酸塩、アルカンスルホン酸塩、オレフィンスルホン酸塩、アルキルスルホコハク酸塩などの陰イオン界面活性剤や、アルキルアミン塩、第四級アンモニウム塩などの陽イオン界面活性剤が挙げられる。また、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール、アルキルポリグルコシド、アルキルアルカノールアミドなどの非イオン界面活性剤が挙げられる。さらに、アルキルアミンオキシド、アミノ酸型両性界面活性剤、ベタイン型界面活性剤などの両性界面活性剤が挙げられる。これらの界面活性剤は、これらから選択される1種又は2種以上を混合して使用することができる。
これらの界面活性剤の中でも、アルキルアミンオキシド又はポリオキシアルキレンアルキルエーテルが望ましい。
【0031】
アルキルアミンオキシドとしては、アルキル基の炭素数が8〜14であるアルキルジメチルアミンオキシド(例えば、clariant社製、Genaminox)が好ましい。具体的には、オクチルジメチルアミンオキシド、デシルジメチルアミンオキシド、ラウリルジメチルアミンオキシド、テトラデシルアミンオキシド等が挙げられる。この中ではラウリルジメチルアミンオキシドが好ましい。
これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されていても良い。
【0032】
ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとしては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンアルキルフェニルエーテル等が挙げられる。
この中でも、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、特に、オクタオキシエチレンラウリルエーテルが好ましい。
これらは、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されていても良い。
【0033】
洗浄剤組成物にはさらに水溶性グリコール系溶剤が含まれていてもよい。
洗浄剤組成物が水溶性グリコール系溶剤を含む場合、その含有量は水で希釈することにより得られる希釈洗浄剤組成物中の水溶性グリコール系溶剤の濃度が0.01〜1.0重量%となる濃度であることが望ましい。
10倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中の水溶性グリコール系溶剤の含有量は0.1〜10.0重量%であることが望ましい。
2倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中の水溶性グリコール系溶剤の含有量は0.02〜2.0重量%であることが望ましい。
100倍希釈用の洗浄剤組成物であれば、洗浄剤組成物中の水溶性グリコール系溶剤の含有量は1.0〜96.9重量%であることが望ましい。
水溶性グリコール系溶剤としては、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジブチルエーテル、ジエチレングリコールエチルメチルエーテル、ジプロピレングリコールモノメチルエーテル、又は、トリエチレングリコールジメチルエーテル等が挙げられる。これらの水溶性グリコール系溶剤は、これらから選択される1種又は2種以上を混合して使用することができる。特に、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、及び、ジエチレングリコールエチルメチルエーテルからなる群から選択された少なくとも一種が含有されていることが望ましい。
【0034】
洗浄剤組成物のpHは12.0よりも大きいことが望ましい。
pHが大きくアルカリ性が強い洗浄剤組成物(希釈洗浄剤組成物)は、油汚れに対する高い洗浄力を有する。
【0035】
本発明の洗浄剤組成物は、上記した各成分の他に、残部としての水を含む。
また、洗浄剤組成物は、水で希釈して希釈洗浄剤組成物として使用することが望ましい。
希釈倍率は、希釈洗浄剤組成物中の炭酸塩の濃度が0.01〜0.3重量%になるように定めることが望ましく、2〜100倍に希釈して使用することができる。
希釈倍率は、4〜50倍であることが好ましく、7〜20倍であることがより好ましい。上記好ましい希釈倍率で希釈することによって得られる希釈洗浄剤組成物中の炭酸塩の濃度が0.01〜0.3重量%となるような洗浄剤組成物は、好ましい洗浄剤組成物である。
【0036】
本発明の洗浄剤組成物には、任意成分として、その他の溶剤、ビルダー、防腐剤、殺菌剤、色素、香料、着色料、粘度調整剤等を含有してもよい。
【0037】
本発明の洗浄剤組成物の製造方法は、特に限定されるものではなく、上記した各成分を水に加えて撹拌する方法などで製造することができる。
【0038】
続いて、本発明の洗浄剤組成物を用いて金属に付着した汚れの洗浄を行う本発明の金属の洗浄方法について説明する。
本発明の洗浄方法で対象となる金属は、特に限定されるものではないが、本発明の洗浄剤組成物は腐食防止効果が高いため、腐食しやすい金属であるアルミニウム、アルミニウム合金、銅、又は、銅合金の洗浄に適している。
そして、これらの金属からなる、食品製造に用いられる器具を好適に洗浄することができる。
【0039】
本発明の洗浄方法では、本発明の洗浄剤組成物を水で2〜100倍で希釈して希釈洗浄剤組成物を調製し、洗浄対象である金属を希釈洗浄剤組成物に浸漬して洗浄を行う、浸漬洗浄を行うことが好ましい。
浸漬時間は2時間以上であることが好ましく、浸漬時間を長くすることによって、金属に付着した油脂やタンパク質が熱変性することによって固着した強固な汚れを洗浄することが可能になる。また、洗浄剤組成物に金属を長時間接触させた場合であっても金属を腐食しない。また、浸漬時間は48時間以下とすることが望ましい。
洗浄時には希釈洗浄剤組成物を40〜60℃に加温してもよい。加温を行うことによって洗浄性をより高めることができる。
【0040】
また、本発明の金属の洗浄方法は、浸漬洗浄に限定されるものではなく、洗浄剤組成物又は希釈洗浄剤組成物を金属に噴霧、発泡させて噴霧、又は、塗布などして洗浄対象物である金属に接触させて、汚れが浮き上がった後に洗い流す方法である泡洗浄等の方法であってもよい。
【実施例】
【0041】
以下に本発明をより具体的に説明する実施例を示すが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
(実施例1)
表1に示す成分を水に順次加え、撹拌することによって、表1に示す組成からなる洗浄剤組成物を調製した。各成分の配合量は、洗浄剤組成物全体を100重量%とした際の重量%である。
【0042】
(実施例2〜6、比較例1〜5)
実施例1と同様に、表1に示す組成からなる洗浄剤組成物を調製した。
【0043】
(洗浄力の評価)
アルミニウム板(32cm×32cm)に白絞油0.4gを塗布し、180℃のオーブン中で1時間30分加熱し、アルミニウム板に油汚れを焼き付けた試験片を作製した。
各実施例及び比較例で調製した洗浄剤組成物を水で10質量%に希釈(10倍希釈)した希釈洗浄剤組成物を調製し、希釈洗浄剤組成物を上記試験片に0.5g滴下し、焼き付けた油汚れが浮き上がる程度を観察し、以下の指標で評価した。
◎:1分以内に油汚れが浮き上がった。
○:油汚れが浮き上がるまでに5分以上を要した。
×:変化がなかった。
【0044】
(防食性試験)
各実施例及び比較例で調製した洗浄剤組成物を水で10倍に希釈した希釈洗浄剤組成物を調製した。
アルミニウム試験板(縦2cm×横4cm×厚さ0.3mm)を、槽内温度50℃の恒温槽内で上記希釈洗浄剤組成物に浸漬し、20時間経過後におけるアルミニウム試験板の外観を観察し、以下の指標で評価した。
○:変化なし。
×:白く変色し、光沢がなくなる。
【0045】
各実施例及び比較例における洗浄力及び防食性の評価結果を表1に示した。また、表1には洗浄剤組成物のpH及び希釈洗浄剤組成物のpHを合わせて示した。
なお、表1に示す各成分の組成は洗浄剤組成物の組成であるので、洗浄力の評価及び防食性試験に用いた希釈洗浄剤組成物中の各成分の含有量は表1に示す数値の1/10である。
【0046】
【表1】
【0047】
表1に示した各実施例及び比較例の結果から以下のことが分かった。
実施例1〜6の洗浄剤組成物には、油汚れの洗浄に有効なアルカリ剤等の成分が含まれており、pHが大きいため洗浄力に優れていた。また、実施例1〜4の洗浄剤組成物には界面活性剤及び水溶性グリコール系溶剤も含まれているため、洗浄力が特に優れていた。
さらに、実施例1〜6の洗浄剤組成物には炭酸塩が0.1〜3.0重量%含まれており、洗浄剤組成物を水で10倍希釈した希釈洗浄剤組成物中に含まれる炭酸塩の量が0.01〜0.3重量%と適量であるため、長時間(20時間)の浸漬洗浄を行った場合でもアルミニウムの防食性に優れていた。
【0048】
比較例1の洗浄剤組成物は炭酸塩を含まないため防食性が不充分であり、アルミニウム試験板が腐食していた。
比較例2〜4の洗浄剤組成物には炭酸塩が4.0重量%含まれており、洗浄剤組成物を水で10倍希釈した希釈洗浄剤組成物中に含まれる炭酸塩の量が0.4重量%と多すぎたため、防食性が不充分であり、アルミニウム試験板が腐食していた。
比較例5の洗浄剤組成物は液性が中性(7.0)であり、希釈洗浄剤組成物の液性もほぼ中性(6.2)であるため洗浄力が不足していた。