(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ここで、上述したように制振装置は、建物ユニットの上梁及び下梁の間に設置されるものであるが、当該箇所にバルコニーや窓、ドアなどの開放部を設けたいという顧客の要望がある場合もある。大型の建物である場合には、単に制振装置の位置をずらすだけでその要望に応えられる。しかしながら小型の建物であると、制振装置の位置をずらすだけの余裕がない場合もあり、結果的に顧客の要望に応えられないおそれもあった。
このため、本発明の課題は、制振装置を設置する場合においても、建物ユニットの外周面における設計上の自由度を高めることである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項
1に記載の発明は、例えば
図3に示すように、
複数本の柱21と
、高さが略等しい長短辺を有する上側の4辺の梁22と、高さが略等しい長短辺を有する下側の4辺の梁23と、を接合することによって直方体形状に形成された建物ユニット2Aに、制震性能を有する制振装置1が設置されてなる制振装置の設置構造において、
前記建物ユニット2Aにおける上側の4辺の梁22のうち対向する一対の
長辺の梁22間には、当該一対の
長辺の梁
22に対して直交する方向に沿った中間梁24が架け渡されていて、
前記上側の4辺の梁22のうち前記中間梁24に平行な少なくとも一辺の
短辺の梁22と、前記中間梁24との間には、当該中間梁24に対して直交する方向に沿った中間小梁51が架け渡されていて、
前記制振装置1は、前記中間小梁51に接合されていることを特徴としている。
【0010】
請求項
1記載の発明によれば、建物ユニット2Aにおける上側の4辺の梁22のうち対向する一対の梁22間に設けられた中間梁24
と、当該中間梁24に平行な一辺の梁22との間に中間小梁51が設けられており、その中間小梁51に対して制振装置1が接合されているので、建物ユニット2Aの外周面に制振装置1が重なる面積を小さくすることができる。これにより、建物ユニット2Aの外周面における開放部の設置可能領域をより広く確保することが可能となる。したがって、制振装置1を設置する場合においても、建物ユニット2Aの外周面における設計上の自由度を高めることができる。
また、建物ユニット2Aには中間梁24や中間小梁51が設けられているので、建物ユニット2Aの剛性を高めることができ、耐震性を向上させることができる。
【0011】
請求項
2記載の発明は、請求項
1記載の制振装置の設置構造において、例えば
図3に示すように、
前記上側の4辺の梁22と前記中間梁24とがなす領域のうち、前記中間小梁51に隣接する領域には補強材26aが配置されていることを特徴としている。
【0012】
請求項
2記載の発明によれば、上側の4辺の梁22と中間梁24とがなす領域のうち、中間小梁51に隣接する領域に補強材26aが配置されているので、建物ユニット2Aの剛性をより一層高めることができる。
【0013】
請求項
3記載の発明は、請求項1
または2に記載の制振装置の設置構造において、例えば
図2に示すように、
前記制振装置1の下方には基礎3が設けられていて、
前記制振装置1は基礎3に連結されていることを特徴としている。
【0014】
請求項
3記載の発明によれば、制振装置1が基礎3に連結されているので、基礎3によって制振装置1を支持することができ、設置後の制振装置1の安定性を高めることができる。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、制振装置を設置する場合においても、建物ユニットの外周面における設計上の自由度を高めることができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態について説明する。
[第一の実施の形態]
図1は、第一の実施の形態に係る制振装置の設置構造を示す斜視図である。
図1に示すように直方体状の建物ユニット2に対して制振装置1が取り付けられている。
建物ユニット2は、複数本の柱21と、これらの柱21の上端間どうしを結合する複数本の梁22と、柱21の下端間どうしを結合する複数本の梁23とを備え、略直方体状に形成された骨組みを有するものである。これら複数本の柱21と、上下の梁22,23との結合箇所は剛接合されている。
そして、上側の4辺の梁22のうち対向する一対の梁22間には、当該一対の梁22に対して直交する方向に沿った中間梁24が架け渡されている。この中間梁24と、一対の梁22との結合箇所は剛接合されている。同様に、下側の4辺の梁23のうち対向する一対の梁23間には、当該一対の梁23に対して直交する方向に沿った中間梁25が架け渡されている。この中間梁25と、一対の梁23との結合箇所は剛接合されている。
【0018】
上側の4辺の梁22と中間梁24とがなす領域H1,H2には補強材26が配置されている。補強材26は、例えば領域H1,H2の対角線上に配置されたブレースが挙げられる。ブレース以外にも補強材26としては鉄板や合板を用いることが可能である。
また、下側の4辺の梁23及び中間梁25の下方には基礎3(
図2参照)が形成されていて、当該基礎3によって下側の4辺の梁23及び中間梁25が支持されている。
【0019】
上下の中間梁24,25の略半分に対して制振装置1が接合されている。
図2は制振装置1の概略構成を示す正面図である。制振装置1には、矩形枠部10と、矩形枠部10に支持された本体部30とが設けられている。
矩形枠部10は、
図2に示すように、上下の中間梁24,25間に立設された一対の間柱11と、一対の間柱11との間の上下端部に架設された横材12とを備えている。間柱11の上下端部には、上下の中間梁24,25に取り付けられて接合される接合部11aが設けられており、ボルト接合によって前記上下の中間梁24,25に接合されている。接合部11a及び下側の中間梁25は、図示しないアンカーボルトによって基礎3に連結されている。
【0020】
本体部30には、矩形枠部10の上側の横材12に固定された状態で下方に突出する上支持部31と、矩形枠部10の下側の横材12に固定された状態で上方に突出する下支持部32と、上支持部31及び下支持部32の双方に枢結される揺動体33とが備えられている。揺動体33は、上側の横材12と下側の横材12との間の中間部より上方または下方位置において、前記上支持部31と下支持部32との双方に枢結されている。そして、揺動体33の上支持部31と下支持部32との枢結位置より、上方又は下方位置において、揺動体33と、上支持部31又は下支持部32とが振動減衰手段34を介して連結されている。
【0021】
ここで、上支持部31は、略ホームベース形状の鉄板で形成されており、二つの側端部が、間柱11の上端部に設けられた一対のブラケット43に固定されている。また、上支持部31の上辺部に取付板部44が設けられており、この取付板部44が上側の横材12に当接してボルトによって固定されている。
【0022】
また、下支持部32は、略二等辺三角形板状の建築用の構造用パネルで形成されている。この下支持部32の下端部にはフレーム45が接合されている。そして、このフレーム45は、間柱11の下端部に設けられた一対のブラケット46に固定されている。さらに、フレーム45の下辺部に取付板部47が設けられており、この取付板部46が下側の横材12に当接して固定されている。
【0023】
また、これら上支持部31及び下支持部32は、双方とも板状に形成されており、前記上支持部31と下支持部32とは、一方が他方より上下の長さが長く、かつ、一方が他方より厚くなっている。
すなわち、下支持部32の先端部と上支持部31の先端部とは、上側の横材12と下側の横材12との間の中間部より上方または下方位置に位置する。したがって、下支持部32の先端部と上支持部31の先端部とに揺動体33を枢結することによって、揺動体33を、上側の横材12と下側の横材12との間の中間部より上方または下方位置において、上支持部31と下支持部32との双方に確実に枢結することができる。
また、上支持部31と下支持部32とは、一方が他方より厚くなっているので、上支持部31と下支持部32の一方の剛性を他方より大きくすることができる。したがって、剛性が大きい一方に揺動体33を枢結することによって、上側の横材12又は下側の横材12の変位を揺動体33に確実に伝達することができる。
【0024】
揺動体33は、2枚(図示せず)の揺動板37によって構成されている。揺動板37はそれぞれ縦長の六角形板状の鉄板で形成されたものであり、これら揺動板37は、平行離間して対向している。揺動板37は上支持部31を、それと所定の隙間をもって挟むようにして配置されており、これら揺動板37の下端部には、この揺動板37が回転する主軸となる枢結軸35が挿通されている。
【0025】
また、この揺動体33は上支持部31側に延出し、この延出している延出部分が上支持部31に振動減衰手段34を介して連結されている。さらに、上支持部31にはプレート38がボルトによって固定されており、このプレート38に粘弾性体(振動減衰手段34)が加硫接着または接着剤によって固着されている。なお、粘弾性体は、エネルギー吸収性能が変形量に比例するものであり、効率的に地震のエネルギーを吸収でき、大きな減衰力を発揮できる。
【0026】
このような制振装置1では、建物ユニット2に震動によって変形が生じると、この建物ユニット2の上側の横材12及び下側の横材12が左右に変位し、これに伴って上支持部31と下支持部32とが左右に変位する。上支持部31と下支持部32とが左右に変位することによって、揺動体33が、その二つの枢結位置間の中央部を中心として振り子のように揺動し、この揺動体33の端部は振れが増幅され、これによって、上側の横材12と下側の横材12との変位が増幅される。したがって、振動減衰手段34の変形を増幅できるので、建物ユニット2の小さな変形から制振機能を有効に働かせることができる。
【0027】
以上のように、本実施形態によれば、建物ユニット2における上側の4辺の梁22のうち対向する一対の梁22間に設けられた中間梁24に対して制振装置1が接合されているので、建物ユニット2の外周面に制振装置1が重なる面積を小さくすることができる。これにより、建物ユニット2の外周面における開放部の設置可能領域(例えば
図1における制振装置1の前後の領域S1,S2)をより広く確保することが可能となる。したがって、制振装置1を設置する場合においても、建物ユニット2の外周面における設計上の自由度を高めることができる。
また、建物ユニット2における上側及び下側の4辺の梁22,23のうち対向する一対の梁22,23間に中間梁24,25が設けられているので、建物ユニット2の剛性を高めることができ、耐震性を向上させることができる。
また、上側の4辺の梁22と中間梁24とがなす領域に補強材26が配置されているので、建物ユニット2の剛性をより一層高めることができる。
【0028】
[第二の実施の形態]
次に、第二の実施の形態に係る制振装置の設置構造について説明する。第一の実施の形態では中間梁24,25に対して制振装置1が設けられる場合を例示して説明したが、第二の実施の形態では、中間梁に対して直交する方向に沿った中間小梁を設け、その中間小梁に制振装置1を設ける場合について説明する。なお、以下の説明において、第一の実施の形態と同一の部分においては同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0029】
図3は、第二の実施の形態に係る制振装置の設置構造の概略構成を示す斜視図である。
図3に示すように、建物ユニット2Aの中間梁24a,25aは図における手前側に寄った位置に配置されている。建物ユニット2Aは、上側の4辺の梁22のうち中間梁24aに平行な一辺の梁22と、中間梁24aとの間には、中間梁24aに対して直交する方向に沿った中間小梁51が架け渡されている。上側の4辺の梁22と中間梁24aとがなす領域のうち、中間小梁51に隣接する領域R1,R2には例えばブレース等の補強材26aが設けられている。同様に、上側の4辺の梁22と中間梁24aとがなす領域のうち、中間小梁51に隣接しない領域R3においても例えばブレース等の補強材26bが設けられている。
また、下側の4辺の梁23のうち中間梁25aに平行な一辺の梁23と、中間梁25aとの間には、上側の中間小梁51と対向する中間小梁52が架け渡されている。下側の中間小梁52の下方には基礎3が設けられていて、当該基礎3によって下側の中間小梁52が支持されている。そして、上下の中間小梁51,52の略半分に対して制振装置1が接合されている。中間小梁51,52と制振装置1との接合は、上述した中間梁24,25と制振装置1との接合と略同構成である。
【0030】
建物ユニット2Aにおける上側の4辺の梁22のうち対向する一対の梁22間に設けられた中間梁24aと、当該中間梁24aに平行な一辺の梁22との間に中間小梁51が設けられており、その中間小梁51に対して制振装置1が接合されているので、建物ユニット2Aの外周面に制振装置1が重なる面積を小さくすることができる。これにより、建物ユニット2Aの外周面における開放部の設置可能領域をより広く確保することが可能となる。したがって、制振装置1を設置する場合においても、建物ユニット2Aの外周面における設計上の自由度を高めることができる。
【0031】
例えば、
図4は建物ユニット2Aを用いた住宅のレイアウトの一例を示す説明図である。この場合、住宅100をなす建物ユニットのうち、制振装置1が設けられていない建物ユニット2Bは3つ用いられている。制振装置1を備える建物ユニット2Aは、
図4において上から2番目の位置に配置されている。ここで、制振装置1が外壁部分101に設けられていると開放部102は形成することができないが、第二の実施の形態のように中間小梁51,52に制振装置1が設けられているので、開放部102を形成することが可能となる。
【0032】
また、建物ユニット2Aには中間梁24a,25aや中間小梁51,52が設けられているので、建物ユニット2Aの剛性を高めることができ、耐震性を向上させることができる。
さらに、上側の4辺の梁22と中間梁24aとがなす領域のうち、中間小梁51に隣接する領域R1,R2や、中間小梁に隣接しない領域r3に補強材26a,26bが配置されているので、建物ユニット2Aの剛性をより一層高めることができる。