特許第5902591号(P5902591)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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  • 特許5902591-高膨張泡消火設備 図000002
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902591
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】高膨張泡消火設備
(51)【国際特許分類】
   A62C 5/02 20060101AFI20160331BHJP
   A62C 3/06 20060101ALI20160331BHJP
   A62C 3/10 20060101ALI20160331BHJP
   A62C 31/05 20060101ALI20160331BHJP
   A62C 31/12 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   A62C5/02 Z
   A62C3/06 B
   A62C3/10
   A62C31/05
   A62C31/12
【請求項の数】2
【全頁数】6
(21)【出願番号】特願2012-208023(P2012-208023)
(22)【出願日】2012年9月21日
(65)【公開番号】特開2014-61129(P2014-61129A)
(43)【公開日】2014年4月10日
【審査請求日】2015年1月26日
(73)【特許権者】
【識別番号】000233826
【氏名又は名称】能美防災株式会社
(72)【発明者】
【氏名】青木 貞憲
【審査官】 飯島 尚郎
(56)【参考文献】
【文献】 特開2011−212166(JP,A)
【文献】 特表2002−524222(JP,A)
【文献】 特開2008−133796(JP,A)
【文献】 特開2012−143400(JP,A)
【文献】 特開2010−082062(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A62C 3/006 − 5/033
A62C 31/05 −31/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
筒状に形成された発泡機本体と、該発泡機本体の先端側に設けられた発泡用網と、該発泡機本体内部の後端側設けられ、該発泡用網に向かって泡水溶液を放射する放射ノズルとを有する発泡機を備えた高膨張泡消火設備において、
前記放射ノズルは、前記泡水溶液の放射方向と直交する前記発泡機本体垂直断面上に等間隔に配置され、
前記等間隔に配置して設けられた放射ノズルのうち、前記垂直断面上の外周側に位置する放射ノズルと、前記垂直断面上の略中央に位置する放射ノズルの放射流量比を、1:1.1〜10とすることを特徴とする高膨張泡消火設備。
【請求項2】
前記放射ノズルは、前記発泡機本体の高さ方向および幅方向に3列以上設け、前記放射流量比を段階的に少なくする
ことを特徴とする請求項1記載の高膨張泡消火設備。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えば石油タンクのピット、石油コンビナートのカルバート、或いは船室、船倉等に設備される高膨張泡消火設備に関する。
【背景技術】
【0002】
泡消火設備は、泡を放出して、火源を埋め尽くして消火するものであるが、放出する泡の発泡倍率(泡水溶液と生成した泡の体積比)が80以上1000未満のものを一般に高膨張泡消火設備といっている。
【0003】
高膨張泡消火設備において、発泡機の後部側に設けた放射ノズルから発泡機の前部側に設けた発泡網に向けて泡水溶液を放出し、泡水溶液の放出の勢いで周囲の空気を吸引し、泡水溶液と空気とを発泡網に衝突させることで発泡する方式(アスピレータ式)のものがある。
【0004】
また、高膨張泡消火設備には、消火対象の区画外の空気を吸引する方式(アウトサイドエア式)のものと、消火対象の区画内の空気を吸引する方式(インサイドエア式)のものとがある(インサイドエア式のものとして、例えば、特許文献1参照)。インサイドエア式のものは、消火対象の区画内の空気を吸引するものであり、アウトサイドエア式と異なり、消火対象の建物の壁等に大きな穴を開けたりする必要がないので、設備費を安くすることができるという利点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開平06−165837号公報 しかしながら、従来のインサイドエア式の高膨張泡消火設備の場合、発泡機の後端に設けられたすべての放射ノズルから、同一の噴霧角、且つ同一の流量等の放水パターンで泡水溶液が放射されていた。そのため、外側のノズルから放射される泡水溶液の放射パターンは、内側のノズルよりも早い段階で発泡機本体の内壁に衝突し、放射パターンの表面積が小さくなる。この結果、放射パターンによる泡水溶液と空気の接触面積が小さくなり、空気を十分に吸引できず、発泡倍率が低下するという問題があった。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
この発明は、前記の事情に鑑み、高膨張泡消火設備において、発泡倍率が低くなるのを防ぐことができるようにすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この発明は、筒状に形成された発泡機本体と、発泡機本体の先端側に設けられた発泡用網と、発泡機本体内部の後端側設けられ、発泡用網に向かって泡水溶液を放射する放射ノズルとを有する発泡機を備えた高膨張泡消火設備において、放射ノズルは、泡水溶液の放射方向と直交する発泡機本体垂直断面上に等間隔に配置され、等間隔に配置して設けられた放射ノズルのうち、垂直断面上の外周側に位置する放射ノズルと、垂直断面上の略中央に位置する放射ノズルの放射流量比を、1:1.1〜10とすることを特徴とする。
【0008】
また、放射ノズルは、発泡機本体の高さ方向および幅方向に3列以上設け、放射流量比を段階的に少なくすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
この発明は、発泡機の後端側に均等に配置されたノズルのうち、外周側のノズルの流量を中央のノズルの流量より少なくした。これにより、発泡機に空気が効率よく取り込まれるので、所定時間に同じ流量の泡水溶液を放射した場合と比べて煙状況下での発泡倍率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】この発明の高膨張泡消火設備における発泡機の平面断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
先ず、この発明の高膨張泡消火設備の基本的構成について説明する。
【0012】
図1に示したように、高膨張泡消火設備はいわゆる高膨張の泡を放出する発泡機を備えており、この発泡機が火災監視区画である部屋(室)内に設けられている。なお、高膨張泡消火設備は、いわゆるインサイドエア式のものであり、発泡機内に監視区画内の空気を吸引する方式のものである。
【0013】
発泡機は、筒状、例えば断面方形状の発泡機本体1を備えており、筒状に形成された発泡機本体1の先端1a側には、断面山形状の発泡用網2が設けられている。発泡機本体1の後端1b側には、泡水溶液を発泡用網2に向かって放射する放射ノズル3が複数個、発泡機本体1内に内蔵されて設けられている。これら放射ノズル3は、何れも、発泡用網2に向かって円錐状に広がる泡水溶液の放射パターンPを有している。さらに発泡機本体1は放射ノズル3の後端に防護領域内の空気を発泡網2に供給するための空気取込口4が設けられている。
【0014】
なお、高膨張泡消火設備は、いわゆるアスピレータ式のものであって、且つインサイドエア式のものであり、つまり、放射ノズル3が円錐状に広がる放射パターンPで泡水溶液を放射する勢いによって、放射パターンPの表面積と接する空気を巻き込むことで空気を吸引する方式のものであると共に、監視区画内の空気を発泡機本体1内に取り込む方式のものである。
【0015】
高膨張泡消火設備は、図示は省略するが、火災感知器や制御盤等をさらに備えており、監視区画内で火災が発生すれば、その火災を火災感知器が感知し、制御盤を介して設備が起動するようになっている。設備の起動により、放射ノズル3から泡水溶液が液滴となりながら、円錐状の放水パターンPで放射されることとなる。
【0016】
また、アスピレータ式であり、インサイドエア式であるこの設備においては、放射ノズル3から放射される泡水溶液が監視区画内の空気Kを吸引しながら、発泡用網2に向かって進行する。そして、発泡用網2に当たって、その網目を通る際に空気Kを抱え込んで発泡し、泡として発泡用網2から放出されるようになっており、泡水溶液が吸引する空気Kには火災により発生した煙が含まれている可能性があるものとなっている。
【0017】
次に、この発明の高膨張泡消火設備における放射ノズル3の詳細について説明する。
図1は、放射ノズル3の発泡機本体1への配置構造を模式化して示したものである。
【0018】
放射ノズル3は、泡水溶液の放射方向と直交する発泡機本体1の垂直断面上に等間隔に配置されている。より具体的に述べると、発泡機本体1の高さ方向に1行設け、発泡機本体1の幅方向に少なくとも3列以上、例えば3列横並びに等間隔となるように設けられている。これにより、発泡機本体1の左右の側壁に近い位置に2つ、発泡機本体1の垂直断面上の中央に1つの放射ノズルが配置されることとなる。以下、これらの放射ノズルについては、発泡機本体1の側壁に近い2つの放射ノズルを補助ノズル3s、発泡機本体1の垂直断面上中央に設けられた放射ノズルを主ノズル3mとする。
【0019】
次に、発泡機全体の泡水溶液の放射流量を60L/minとした場合について考える。
従来設定の高膨張泡消火設備の場合、放射ノズル3は全て同じ放射能力を有しており、例えば、各放射ノズル3から、約0.5MPaの放射圧力かつ約20L/minの放射流量で泡水溶液を放射する。このときの発泡倍率は、防護領域内で火災が発生しておらず、煙を含まない清浄な空気が発泡機に供給される場合で600倍だが、防護領域内で火災が発生し、煙を含む空気が発泡機に供給されると、400倍まで低下するものであった。
【0020】
これに対し本願発明の放射ノズル3は、補助ノズル3sと主ノズル3mの放射流量比を、補助ノズル:主ノズル=1:1.1〜10程度とする。より具体的には、補助ノズル3sの放射流量を15L/min、主ノズル3mの放射流量を30L/minとし、放射流量比を1:2とする。
【0021】
このときの発泡倍率は、防護領域内で火災が発生しておらず、煙を含まない清浄な空気が発泡機に供給される場合で650倍となるが、防護領域内で火災が発生し、煙を含む空気が発泡機に供給しても650倍となり、ほとんど発泡倍率の低下が見られなかった。
【0022】
前記の通り、この発明の高膨張消火設備においては、発泡機本体1の垂直断面上中央に設けられた主ノズル3mの放射流量を大きくし、発泡機本体1の側壁に近い補助ノズル3sの放射流量を小さくした。つまり、放射パターンの表面積が最も大きくなる主ノズル3mの放射流量を大きくし、放射パターンの表面積が小さくなる補助ノズル3sの放射流量を小さくしたので、効率よく空気を取り込むことができ、十分な発泡倍率を得ることができるものとなっている。
【0023】
より詳しく述べると、本願発明の高膨張泡消火設備は、いわゆるアスピレータ式のものである。このアスピレータ式の高膨張泡消火設備とは、放射ノズル3から放射する泡水溶液の勢いによって、放射パターンPの表面積と接する部分の空気を巻き込むことで空気を吸引する方式である。そのため、放射パターンPの表面積と、泡水溶液の放射流量の関係において、発泡倍率の上限となる泡水溶液の放射流量(以下、発泡倍率飽和限界流量)とすることによって、効率よく空気を巻き込むことができるものとなっている。
【0024】
そこで、本願発明の高膨張泡消火設備は、複数の放射ノズル3のうち、放射パターンPの欠損が大きい位置にある放射ノズル3の流量を少なくし、放射パターンの欠損が少ない位置にある放射ノズル3の放射流量を多くした。つまり各放射パターンPの発泡倍率飽和限界流量が最適となるようにしたので、巻き込む空気の量を増やすことができ、発泡倍率の低下を防止できるものとした。
【0025】
なお、本願発明は発泡機本体1の高さ方向に1行、発泡機本体1の幅方向に少なくとも3列以上設けたが、例えば4列などの偶数列設けてもよく、さらには高さ方向に2行以上設けてもよい。この場合、発泡機本体1の幅方向に4列設けられた放射ノズルの内、発泡機本体1の幅方向中央にある2つの放射ノズル3を主ノズル3mとし、発泡機本体1の側壁に近い列の放射ノズルを補助ノズル3sとしてもよい。
【0026】
また、発泡機本体1の高さ方向に3行、発泡機本体1の幅方向に3列設けた場合、発泡機本体1の垂直断面上の中央の放射ノズル3を主ノズル3m、発泡機本体1の側壁に近い列の放射ノズル3の内、発泡機本体1の高さ方向中央の放射ノズル3を第1の補助ノズル、発泡機本体1の最上部及び最下部の放射ノズル3を第2の補助ノズルとし、主ノズル3、第1の補助ノズル、第2の補助ノズルの順で放射流量比を段階的に少なくしてもよい。
【符号の説明】
【0027】
1 発泡機本体、1a 先端(発泡機)、1b 後端(発泡機)、2 発泡用網、3 放射ノズル、3m 主ノズル、3s 補助ノズル、4 空気取込口、P 放射パターン、K 空気。
図1