【課題を解決するための手段】
【0012】
請求項1に記載の発明の屋根架構付き施設は、相対的に地盤面レベルが低く、任意の平面形状を持つ底面部と、この底面部の周囲を包囲し、前記底面部のレベルより上に位置する法面部を有する下部構造と、この下部構造の上空を覆う屋根架構と、この屋根架構を支持し、前記屋根架構のスパン方向と桁行方向のそれぞれに間隔を置いて配列する複数本の中柱とを備え、
全部の前記中柱の脚部は前記底面部を外した前記法面部に定着され、
前記スパン方向に配列する複数本の前記中柱の頭部は前記スパン方向を向く直線上に一定の間隔を置いて配列し、前記桁行方向に配列する複数本の前記中柱の頭部は前記桁行方向を向く直線上に一定の間隔を置いて配列し、
平面図で見たとき、少なくともいずれかの前記中柱の頭部
は脚部と同一位置になく、その中柱は鉛直に対して傾斜しながら
、前記スパン方向と前記桁行方向の少なくともいずれかの方向に向かって傾斜していることを構成要件とする。
【0013】
「任意の平面形状を持つ底面部」とは、底面部の平面形状が方形状、多角形状等、整形である場合と、不規則な形状の不整形である場合を含む意味であり、底面部の底面は平坦な、あるいは平坦に近い平面、もしくは曲面、あるいは両者の組み合わせからなる。下部構造の底面部が整形でない平面を持つ場合があるため、本発明の施設は主に前記した廃棄物処分場が対象になるが、底面部は整形の平面形状を持つ場合も包含するから、地盤面レベルが低い底面部とその周囲を包囲し、底面部より上に位置する法面部を有し、すり鉢形状の下部構造を持つ競技場、劇場等の施設(構造物)も対象になる。「法面部」は底面部から下部構造の周辺にかけて地盤面の低いレベルから高いレベルへ傾斜した面から構成される場合と、底面部から下部構造の周辺にかけて面が階段状に連続する場合と、
図2に示すように傾斜面と平面が交互に繰り返される場合等がある。
【0014】
請求項1における「屋根架構」からは、下部構造の周囲に配置される側柱にのみ支持されることが可能な、前記したドーム屋根や空気膜屋根、吊り屋根等は除かれ、「屋根架構」は屋根架構の下に配置される複数本の中柱によって、または中柱と屋根架構の周辺に配置される側柱によって支持される形態の、屋根架構自体が形態安定性を有する屋根架構を指す。屋根架構は中柱のみによって支持される場合と、
図2に示すように中柱と側柱によって支持される場合がある。
【0015】
底面部3の平面形状に関係なく、全
部の中柱6
(以下、全中柱6と言う)の脚部61は
図1−(a)に示すように
平面図で見たとき、、法面部4に配置され、基礎7や地盤等、下部構造2のいずれかの部分に定着される。
図1−(a)は法面部4に定着された中柱6の脚部61の位置を示しており、
図1−(a)中、平面上の中央部寄りの不規則な実線は底面部3と法面部4の境界を示している。「平面
上」とは平面図で見たときの意味である。
以下、「平面図で見たとき」を単に「平面上」とも言う。
【0016】
「屋根架構のスパン方向と桁行方向のそれぞれに間隔を置いて配列する複数本の中柱」とは、
図1−(a)、
図9に示すように中柱6が屋根架構5のスパン方向(短手方向)に間隔を置いて2本以上、配列し、桁行方向(長手方向)にも間隔を置いて2本以上、配列することを言う。中柱6の脚部61が底面部3を外した法面部4に配置されることは、中柱6の各方向への配列本数にも関係ない。
図9−(b)に示すように中柱6がスパン方向に3本以上、配列する場合は、スパン方向の中央寄りに位置する2本の中柱6、6が底面部3を跨いで対向する。屋根架構5を支持する中柱6の数は
図9−(a)に示す、スパン方向に2本、桁行方向に2本の場合が最小になる。スパン方向は屋根架構5の主に短手方向を指し、桁行方向は長手方向を指すが、これらの両方向は水平二方向を区別するための便宜的な称呼に過ぎず、必ずしも短手方向と長手方向で区別されるとは限らない。
【0017】
スパン方向に配列する複数本の中柱6の頭部62は
図1−(b)、
図9−(a)、(b)に示すようにスパン方向を向く直線(X通り(Xn:n=1〜11))上に一定の間隔を置いて配列し、桁行方向に配列する複数本の中柱6の頭部62は桁行方向を向く直線(Y通り(Ym:m=1〜7))上に一定の間隔を置いて配列する。但し、スパン方向に配列する中柱6の脚部61は必ずしもスパン方向を向く直線(X通り(Xn))上に位置する必要も、一定の間隔で配列する必要もなく、桁行方向に配列する中柱6の脚部61は必ずしも桁行方向を向く直線(Y通り(Ym))上に位置する必要も、一定の間隔で配列する必要もない。
図1−(b)、
図9中、屋根架構5に接合された中柱6の頭部62の位置を○で示している。以下、主にスパン方向を向く直線をX通り、桁行方向を向く直線をY通りと言う。
【0018】
「中柱6の頭部62がスパン方向を向く直線(X通り)上に一定の間隔を置いて配列すること」は、スパン方向に2本の中柱6、6が配列する
図1−(b)で言えば、頭部62がX3通り、X5通り、X7通り、X9通りの各直線(通り)上に配列し、各直線上でスパン方向に隣接する中柱6、6の頭部62、62間の距離が等しいことである。スパン方向に3本以上の中柱6が配列する
図9−(b)で言えば、頭部62がX1通り、X2通り、X3通り、X4通りの各直線(通り)上に配列し、各直線上でスパン方向に隣接する中柱6、6の頭部62、62間の距離が等しいか、あるいは例えばスパン方向の(桁行方向を向く)中心線に関して線対称となるような規則的な間隔を置いて頭部62が配列することを言い、頭部62、62間の距離は必ずしも等間隔である必要はない。
【0019】
同様に「中柱6の頭部62が桁行方向を向く直線(Y通り)上に一定の間隔を置いて配列すること」は、
図1−(b)では頭部62がY3通り、Y5通りの各直線(通り)上に配列し、各直線上で桁行方向に隣接する中柱6、6の頭部62、62間の距離が等しいことであり、
図9−(b)では隣接する頭部62、62間距離が等しいか、Xn通り上の各頭部62が規則的な間隔で配列することである。
【0020】
「中柱6の頭部62がスパン方向を向く直線(X通り)上に一定の間隔を置いて配列し、桁行方向を向く直線(Y通り)上に一定の間隔を置いて配列すること」の結果、
図1−(b)、
図9−(a)、(b)に示すように全中柱6の頭部62はスパン方向Xと桁行方向Yの2方向の直線(通り芯)が描く格子上に均等に配列することになる。
【0021】
スパン方向に配列する中柱6の頭部62がX通り上に一定の間隔を置いて配列することで、屋根架構5の荷重を中柱6に伝達する、スパン方向を向く梁、もしくは梁に相当する部材のスパン割りが均等になる。また桁行方向に配列する中柱6の頭部62がY通り上に一定の間隔を置いて配列することで、屋根架構5の荷重を中柱6に伝達する、桁行方向を向く梁、もしくは梁に相当する部材のスパン割りも均等になる。「梁に相当する部材」は屋根架構5が例えば
図2に示すように上弦材52と下弦材51を持つ立体トラス構造である場合の下弦材51のように、屋根架構5の一部を構成し、屋根架構5の下面側に配置される部材を指す。以下、梁は「梁に相当する部材」を含む。
【0022】
この結果、スパン方向と桁行方向の各方向の同一線上に配置されるべき梁を並列させる必要がなくなり、梁の幅と成を統一することが可能になり、梁の設計と施工が単純化される。同一線上の梁の幅と成が統一され、並列させる必要もないことで、梁の製作コストの上昇は回避される。中柱6の配置数を必要以上に多くする必要も生じないため、施工コストの上昇も回避される。
【0023】
請求項1における「
平面図で見たとき、いずれかの中柱の頭部
が脚部と同一位置にない」とは、
平面図で見たときに(平面上
)、頭部62の位置と脚部61の位置が一致(重複)しないことであり、その中柱6は鉛直に対して傾斜する傾斜柱になる。「
平面図で見たとき、頭部
が脚部と同一位置にない中柱が鉛直に対して傾斜しながら
、スパン方向と桁行方向の少なくともいずれかの方向に向かって傾斜している」とは、頭部が脚部と同一位置にない中柱が鉛直に対して傾斜すると同時に、平面上はスパン方向と桁行方向の少なくともいずれかの方向に向かっても傾斜することを言う。
【0024】
「中柱が平面上はスパン方向と桁行方向の少なくともいずれかの方向に向かって傾斜している」とは、中柱6の材軸が平面上、スパン方向と桁行方向のいずれかの方向への成分を持って傾斜することを言い、
図1−(a)のように材軸が平面上、スパン方向を向く場合と、桁行方向を向く場合の他、
図9−(a)、(b)のように材軸がスパン方向と桁行方向のいずれの方向にも向き、スパン方向と桁行方向のいずれの方向への成分を持っている場合がある。立面上は中柱6がその脚部61から頭部62へかけてスパン方向、もしくは桁行方向の外側から中央側へ向かって、または中央側から外側へ向かって傾斜することになる。
図9−(a)、(b)に示すように平面上、中柱6の材軸がスパン方向と桁行方向のいずれにも傾斜している場合には、中柱6はスパン方向にも桁行方向にも傾斜することになる。
【0025】
例えば中柱6が脚部61から頭部62へかけてスパン方向、もしくは桁行方向の外側から中央側へ向かって傾斜する場合は、
図9−(a)に示すように中柱6の頭部62が平面上、脚部61よりスパン方向、もしくは桁行方向の中央寄りに位置する。脚部61から頭部62へかけて中央側から外側へ向かって傾斜する場合は、
図9−(b)中、頭部62がX2通りとY2通り、X2通りとY3通り、X3通りとY2通り、X3通りとY3通りの各交点上に位置する4本の中柱6のように脚部61が平面上、頭部62よりスパン方向、もしくは桁行方向の中央寄りに位置する。
図9−(b)中、頭部62がX2通りとY2通り等の交点上に位置する4本の中柱6の脚部61は平面上、頭部62より桁行方向の中央寄りに位置している。
【0026】
「中柱の頭部62が平面上、脚部61よりスパン方向、もしくは桁行方向の中央寄りに位置する」とは、
図9−(a)に示すようにスパン方向で言えば、頭部62がスパン方向(短手方向)の中心線寄りに位置することであり、桁行方向で言えば、頭部62が桁行方向(長手方向)の中心線寄りに位置することである。スパン方向の中心線は桁行方向を向き、桁行方向の中心線はスパン方向を向く。
図9−(a)、(b)では各方向の中心線を一点鎖線で示している。
【0027】
図9−(b)の例を詳しく言えば、頭部62がX2通りとY2通り、X2通りとY3通り、X3通りとY2通り、X3通りとY3通りの各交点上に位置する4本の中柱6はスパン方向には「頭部62が脚部61よりスパン方向の中央寄りに位置する」が、桁行方向には「脚部61が頭部62より桁行方向の中央寄りに位置する」。この4本の中柱6以外の中柱6は「頭部62が脚部61よりスパン方向の中央寄りに位置する」と共に、「頭部62が脚部61より桁行方向の中央寄りに位置する」。
【0028】
いずれにしても、頭部62が平面上、脚部61と同一位置にない中柱6は
図1−(b)のA−A線断面図である
図2に示すように脚部61から頭部62へかけてスパン方向、もしくは桁行方向の外側から中央側へ向かって、もしくはスパン方向、もしくは桁行方向の中央側から外側へ向かって傾斜する傾斜柱(斜め柱)になる(請求項1)。
【0029】
図1の例では脚部61がX3通り上に位置し、スパン方向に対向する2本の中柱6、6の内、脚部61がX3通りとY2通りの交点上に位置する中柱6が脚部61から頭部62へかけてスパン方向の外側から中央側へ向かって傾斜する。脚部61がX5通り上とX7通り上に位置する各2本の中柱6、6はスパン方向の中央部を挟んで対向し、共に脚部61から頭部62へかけてスパン方向の外側から中央側へ向かい、互いに交差するように傾斜する(請求項2)。
図1−(a)中、脚部61がX3通りとY5通りの交点に位置する中柱6と、X9通りとY3通り、X9通りとY5通りの各交点に位置する中柱6の頭部62は(b)に示すように脚部61と同一位置にあるため、これらの中柱6は鉛直柱になる。
【0030】
請求項2は請求項1において「
平面図で見たとき、スパン方向と桁行方向の少なくともいずれかの方向に向かって傾斜している中柱がスパン方向、もしくは桁行方向の中央部を挟んで互いに対向し、この対向する中柱が互いに逆向きに傾斜していること
」を要件にしている。この要件は傾斜柱の中柱6、6がスパン方向と桁行方向の少なくともいずれかの方向にその方向の中央部(中心線)を挟んで対向し、その対向する中柱6、6が脚部61から頭部62へかけてスパン方向、もしくは桁行方向の外側から中央側へ向かって、または中央側から外側へ向かって傾斜していることを言う。
【0031】
「逆向き」とは、対向する中柱6、6の内の一方が例えば脚部61から頭部62へかけてスパン方向の外側から中央側へ向かって傾斜すれば、他方も脚部61から頭部62へかけてスパン方向の外側から中央側へ向かって傾斜することであり、一方が脚部61から頭部62へかけてスパン方向の中央側から外側へ向かって傾斜すれば、他方も脚部61から頭部62へかけてスパン方向の中央側から外側へ向かって傾斜することである。
【0032】
図9−(b)の例で言えば、前記した頭部62がX2通りとY2通り、X2通りとY3通り、X3通りとY2通り、X3通りとY3通りの各交点上に位置する4本の中柱6はスパン方向には「脚部61から頭部62へかけてスパン方向の外側から中央側へ向かって傾斜」し、桁行方向には「脚部61から頭部62へかけてスパン方向の中央側から外側へ向かって傾斜」しているが、各方向共、中心線を挟んで互いに対向し、中心線に関して対称位置にある中柱6、6同士は互いに逆向きに傾斜している。
【0033】
図9−(a)の例ではスパン方向に中心線(中央部)を挟んで互いに対向する2本の中柱6、6が脚部61から頭部62へかけてスパン方向の外側から中央側へ向かって傾斜すると同時に、桁行方向に中心線(中央部)を挟んで互いに対向する2本の中柱6、6が脚部61から頭部62へかけて桁行方向の外側から中央側へ向かって傾斜している(請求項4)。
【0034】
請求項4は「
平面図で見たとき、スパン方向に向かって傾斜している中柱がスパン方向の中央部を挟んで互いに対向し、この対向する中柱が互いに逆向きに傾斜し、
平面図で見たとき、桁行方向に向かって傾斜している中柱が桁行方向の中央部を挟んで互いに対向し、この対向する中柱が互いに逆向きに傾斜していること」を要件にしている。
【0035】
この要件は請求項2の要件をスパン方向と桁行方向の双方に満たし、スパン方向に向かって傾斜しているいずれかの中柱6、6がスパン方向に対向し、桁行方向に向かって傾斜しているいずれかの中柱6、6が桁行方向に対向することであり、スパン方向に対向する中柱6、6の少なくともいずれかは桁行方向に対向する中柱6、6のいずれかを兼ねることもある。
図9−(a)の例ではいずれの中柱6も他の中柱6と「スパン方向に互いに対向しながら、桁行方向にも互いに対向する」関係にあるから、請求項4で言う「スパン方向に対向する中柱6、6」の一方と「桁行方向に対向する中柱6、6」の一方を兼ねている。
【0036】
図9−(b)の例では前記した頭部62がX2通りとY2通り、X2通りとY3通り、X3通りとY2通り、X3通りとY3通りの各交点上に位置する4本の中柱6以外の各中柱6はスパン方向の中心線に関して対称位置にある中柱6とは「スパン方向の中央部を挟んで互いに対向し、この対向する中柱が互いに逆向きに傾斜する」関係にある。また桁行方向の中心線に関して対称位置にある中柱6とは「桁行方向の中央部を挟んで互いに対向し、この対向する中柱が互いに逆向きに傾斜する」関係にあり、前記4本の中柱6以外の各中柱6は請求項4で言う「スパン方向に対向する中柱6、6」の一方と「桁行方向に対向する中柱6、6」の一方を兼ねている。
【0037】
一方、前記4本の各中柱6も、スパン方向の中心線に関して対称位置にある中柱6とは「スパン方向の中央部を挟んで互いに対向し、この対向する中柱が互いに逆向きに傾斜する」関係にあり、桁行方向の中心線に関して対称位置にある中柱6とは「桁行方向の中央部を挟んで互いに対向し、この対向する中柱が互いに逆向きに傾斜する」関係にあり、いずれの中柱6も請求項4で言う「スパン方向に対向する中柱6、6」の一方と「桁行方向に対向する中柱6、6」の一方を兼ねている。
【0038】
請求項1ではいずれかの中柱6が鉛直に対して傾斜する傾斜柱になることで、屋根架構5の鉛直荷重を負担した状態で、常に脚部61と頭部62間の偏心距離に応じた曲げモーメントを負担することになるが、その中柱6は屋根架構5に作用するスパン方向、もしくは桁行方向の水平荷重の内、中柱6の材軸に平行な成分を軸方向力として負担することができるため、スパン方向、もしくは桁行方向の水平荷重による曲げモーメントが低減される利点を持つ。
【0039】
傾斜した中柱6の水平面に対する傾斜角度がθの場合、中柱6の頭部62に作用する水平荷重Pの内、中柱6の材軸に平行な成分P・cosθは中柱6に軸方向力として負担され、中柱6の材軸に垂直な成分P・sinθが中柱6に曲げモーメントを作用させるが、0°<θ<90°よりsinθ<1であるため、中柱6が鉛直に立設されている場合より曲げモーメントは低減される。
【0040】
スパン方向、もしくは桁行方向に向かって傾斜している中柱がスパン方向、もしくは桁行方向の中央部を挟んで互いに対向し、この対向する中柱が互いに逆向きに傾斜している請求項2では、スパン方向、もしくは桁行方向に対向する一組の中柱6、6が互いに交差する向きに傾斜することで、柱として屋根架構5の鉛直荷重を負担しながら、スパン方向、もしくは桁行方向の水平荷重に対する抵抗要素として機能することが可能になる。
【0041】
前記のように傾斜柱は屋根架構5に作用する水平荷重の一部を軸方向力として負担することができるため、請求項2ではスパン方向、もしくは桁行方向に対向する2本の中柱6、6が互いに交差する向きに傾斜することで、正負の方向のスパン方向、もしくは桁行方向の水平荷重に対し、2本の中柱6、6が交互に水平荷重の一部を負担する状況が成立する。対向する2本の中柱6、6が、繰り返される水平荷重の一部を交互に負担することで、2本で対になって水平荷重に対する抵抗要素としての機能を有することになる。
【0042】
スパン方向に中心線を挟んで2本で対になる傾斜柱の中柱6、6は
図1−(b)で言えば、頭部62がX5通りとY3通り、X5通りとY5通り、X7通りとY3通り、X7通りとY5通りの各交点上に位置する中柱6、6になる。
図9−(a)で言えば、頭部62がX1通り上とX2通り上に位置する中柱6、6になり、これらの中柱6、6は桁行方向にも中心線を挟んで2本で対になる。
図9−(a)、(b)に示す例では、前記のように全中柱6が「スパン方向と桁行方向に中心線を挟んで2本で対になる傾斜柱」(請求項4)に該当している。
【0043】
前記のように
図1−(a)、(b)、
図9−(a)、(b)の例ではスパン方向、もしくは桁行方向の中央部を挟んでスパン方向、もしくは桁行方向に対向する中柱6、6の頭部62、62がスパン方向、もしくは桁行方向の中心線に関して線対称に配置されているが、中柱6、6の頭部62、62は必ずしも各方向の中心線に関して線対称に配置される必要はない。中柱6、6の頭部62、62が各方向の中心線に関して線対称に配置された場合には、
図9−(b)に示すように底面部3のスパン方向の幅が桁行方向に変化する、あるいは相違する場合にも、スパン方向の中心線を挟んだ両側の2本の中柱6、6の頭部62、62がスパン方向の中心線からの距離が等しい位置に配置されることになる。
【0044】
この場合、スパン方向の中心線を挟んだ両側の2本の中柱6、6の頭部62、62がスパン方向の中心線からの距離が等しい位置に配置された上で、「スパン方向に配列する複数本の中柱6、6の頭部62、62がスパン方向を向く直線(X通り)上に一定の間隔を置いて配列すること」で、屋根架構5の鉛直荷重はスパン方向に配列する複数本の中柱6、6に均等に負担される状態になる。屋根架構5の鉛直荷重がスパン方向の複数本の中柱6、6に均等に負担される状態は、
図1に示すように屋根架構5の周辺に側柱8が配置される場合と、配置されない場合にも言える。
【0045】
請求項1は前記のように
平面図で見たとき(平面上)、少なくともいずれかの中柱6の頭部62
が脚部61と同一位置になく、その中柱6
がスパン方向と桁行方向の少なくともいずれかの方向に向かって傾斜していることを要件にする。請求項1での「少なくともいずれかの中柱6」とは、屋根架構5を支持するいずれか1本の中柱6が脚部61から頭部62へかけてスパン方向、もしくは桁行方向の外側から中央側へ、または中央側から外側へ向かって傾斜することを言う。この要件を備えることで、中柱6は屋根架構5に作用するスパン方向、もしくは桁行方向の水平荷重の内、中柱6の材軸に平行な成分を軸方向力として負担することができ、スパン方向、もしくは桁行方向の水平荷重によって中柱6に生ずる曲げモーメントが低減される利点を持つ。
【0046】
そこで、
平面図で見たとき、頭部62
が脚部61と同一位置にない少なくとも一部の中柱6
がスパン方向に向かって傾斜し、
平面図で見たとき、頭部62
が脚部61と同一位置にない少なくとも一部の中柱6
が桁行方向に向かって傾斜している場合(請求項3)には、スパン方向と桁行方向の水平荷重の内、各方向の中柱6の材軸に平行な成分を軸方向力として負担することができるため、スパン方向と桁行方向の水平二方向の水平荷重による曲げモーメントが低減されることになる。
【0047】
この場合、平面上、スパン方向に向かって傾斜する中柱6がスパン方向の水平荷重の内、中柱6の材軸に平行な成分を軸方向力として負担し、平面上、桁行方向に向かって傾斜する中柱6が桁行方向の水平荷重の内、中柱6の材軸に平行な成分を軸方向力として負担する。
図9−(a)の例では全中柱6が「脚部61から頭部62へかけてスパン方向に向かって傾斜する」と同時に、「脚部61から頭部62へかけて桁行方向に向かって傾斜」しているため、各中柱6は請求項3で言う「
平面図で見たとき、スパン方向に向かって傾斜した中柱6」と「
平面図で見たとき、桁行方向に向かって傾斜した中柱6」を兼ねている。請求項3における「少なくとも一部の中柱6」とは、屋根架構5を支持する全中柱6の内、スパン方向と桁行方向の各方向に付き、いずれか1本の中柱6の意味である。
【0048】
請求項3において、
平面図で見たとき、スパン方向に向かって傾斜している中柱がスパン方向の中央部を挟んで互いに対向し、この対向する中柱が互いに逆向きに傾斜し、
平面図で見たとき、桁行方向に向かって傾斜している中柱が桁行方向の中央部を挟んで互いに対向し、この対向する中柱が互いに逆向きに傾斜している場合(請求項4)には、対向する一組の中柱6、6が互いに交差する向きに傾斜することで、柱として屋根架構5の鉛直荷重を負担しながら、桁行方向の水平荷重に対する抵抗要素として機能することが可能になる。
【0049】
請求項4ではスパン方向と桁行方向のそれぞれの方向に対向する各2本の中柱6、6が互いに交差する向きに傾斜することで、スパン方向と桁行方向の正負の向きの水平荷重に対し、2本の中柱6、6が交互に水平荷重の一部を負担する状況が成立する。対向する2本の中柱6、6が、繰り返される水平荷重の一部を交互に負担することで、2本で対になって水平荷重に対する抵抗要素としての機能を有することになる。「2本で対になる傾斜柱の中柱」は
図9−(a)ではX1通り上でスパン方向(短手方向)に対向する中柱6、6と、X2通り上でスパン方向に対向する中柱6、6であり、Y1通り上で桁行方向(長手方向)に対向する中柱6、6と、Y2通り上で桁行方向に対向する中柱6、6である。この例ではスパン方向に対向する中柱6、6は桁行方向に対向する中柱6、6を兼ねている。
【0050】
図9−(a)、(b)に示す例では頭部62が配列するスパン方向と桁行方向の通り芯(Xn通り、Ym通り)に対し、脚部61が不規則に配列しているが、各方向の通り芯に平行な直線上に配列することもある。