(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
気体燃料からオイルを分離する分離部が内部に設けられているタンク内において、その側壁に支持される温度センサが、前記分離部によって気体燃料から分離されたオイルに浸漬しているか否かを判定する判定部を有するオイル貯留量判定装置であって、
前記タンクには、減圧弁によって減圧された気体燃料が流入するようになっており、
前記判定部は、前記タンクに流入する気体燃料の流速が変化するときに、その流速の変化態様と前記温度センサによって検出される温度の変化態様とに基づき、同温度センサがオイルに浸漬しているか否かを判定する
ことを特徴とするオイル貯留量判定装置。
前記判定部は、前記タンク内に流入する気体燃料の流速が速くなる傾向を示す状況下で前記温度センサによって検出される温度の単位時間あたりの変化量が規定変化量未満であるときに同温度センサがオイルに浸漬していると判定する
請求項1に記載のオイル貯留量判定装置。
前記判定部は、前記タンク内での気体燃料の流速が速くなり始めるタイミングと前記温度センサによって検出される温度の変化するタイミングとに基づき、前記温度センサがオイルに浸漬しているか否かを判定する
請求項1に記載のオイル貯留量判定装置。
前記判定部は、前記タンク内に流入する気体燃料の流速が速くなり始める時点から前記温度センサによって検出される温度の変化が検知される時点までの経過時間が判定時間以下であるときには、同温度センサがオイルに浸漬していないと判定する
請求項11に記載のオイル貯留量判定装置。
【発明を実施するための形態】
【0025】
(第1の実施形態)
以下、気体燃料の一例としてのCNG(圧縮天然ガス)の供給によって運転される内燃機関の第1の実施形態について、
図1〜
図7に従って説明する。
【0026】
図1に示すように、内燃機関11の吸気通路12には、運転者によるアクセル操作態様に応じて開度が調整されるスロットルバルブ13と、気体燃料供給システム20から供給されたCNGを噴射するインジェクタ14とが設けられている。そして、スロットルバルブ13を通過した吸気とインジェクタ14から噴射されたCNGとからなる混合気が気筒15の燃焼室16で燃焼することにより、ピストン17が往復動し、内燃機関11の出力軸であるクランク軸(図示略)が所定の回転方向に回転する。
【0027】
気体燃料供給システム20には、CNGを貯留するCNGタンク21に接続される高圧燃料配管22が設けられている。この高圧燃料配管22内を流動する気体燃料はオイルセパレータとしても機能するレギュレータ23によって規定の燃料圧力に減圧され、減圧後の気体燃料がデリバリパイプ24に供給される。そして、デリバリパイプ24から供給されたCNGがインジェクタ14から吸気通路12内に噴射される。
【0028】
また、オイル貯留量判定装置としての制御装置50には、運転者によるアクセルペダル(図示略)の操作量を検出するアクセル開度センサ501、及び車速を検出する車速センサ502が電気的に接続されている。また、制御装置50には、クランク軸の回転速度を検出するクランクポジションセンサ503、及びCNGタンク21内の圧力であるCNGタンク圧を検出するタンク圧センサ504がさらに電気的に接続されている。
【0029】
こうした制御装置50は、CPU、ROM及びRAMなどで構築されるマイクロコンピュータを有しており、レギュレータ23に設けられたドレーンタンク内のオイル貯留量を監視している。そして、制御装置50は、ドレーンタンク内のオイル貯留量が規定量を超えたと判断した場合には、その旨を車両の乗員に報知すべく警告ランプ510を点灯させる。
【0030】
図2に示すように、本実施形態のレギュレータ23のボディ31には、CNGタンク21側からCNGが流入する電磁式遮断弁32が接続されている。この電磁式遮断弁32は、制御装置50からの指令によって電磁コイル321に電力が供給された場合に、デリバリパイプ24側へのCNGの供給を許容する。この場合、電磁式遮断弁32を通過したCNGがボディ31内に流入する。一方、電磁コイル321に電力が供給されない場合、電磁式遮断弁32はデリバリパイプ24側へのCNGの供給を禁止する。
【0031】
また、レギュレータ23には、電磁式遮断弁32を介してボディ31内に流入したCNGを規定の燃料圧力に減圧させる減圧弁33が設けられている。そして、減圧弁33によって減圧されたCNGは、ボディ31内に形成された通路34を介して、ボディ31の下端に取り付けられた有底筒状のドレーンタンク35内に流入する。すなわち、ドレーンタンク35には、減圧弁33で減圧されることによって低温となったCNGが流入される。
【0032】
このドレーンタンク35はその開口が閉塞されるようにボディ31に取り付けられており、ドレーンタンク35内における上方域には、通路34を介してドレーンタンク35内に流入したCNGからオイルを分離させる分離部の一例としての環状のエレメント36が設けられている。このエレメント36は、CNGなどの気体の通過は許容する一方で、オイルなどの液体の通過を規制する不織布などで構成されている。そして、エレメント36を通過したCNGは、ボディ31に形成された図示しない供給路を介してデリバリパイプ24側に導かれる。一方、エレメント36によってCNGから分離されたオイルは、エレメント36から下方に流下し、ドレーンタンク35内に貯留される。
【0033】
なお、ドレーンタンク35の側壁351の下端側には、ドレーンタンク35の内外を連通させる開口部352が形成されており、この開口部352は手動式のバルブ37によって閉塞されている。そして、バルブ37がドレーンタンク35から取り外されて開口部352が解放されると、ドレーンタンク35内のオイルが開口部352を介して外部に排出される。
【0034】
また、気体燃料供給システム20には、ドレーンタンク35内のオイル貯留量を検出するための検出装置40が設けられている。この検出装置40は、温度センサの一例としてのサーミスタ41と、サーミスタ41に電力を供給するための電気回路42とを有している。ドレーンタンク35の側壁351においてエレメント36よりも下方には、ドレーンタンク35の内外を連通させる連通孔353が形成されている。この連通孔353内には、先端がドレーンタンク35内に位置するようにサーミスタ41が挿通されている。なお、サーミスタ41の外周面と連通孔353の周面との間には、気密作用及び断熱作用を有する断熱材としてのOリング39が介在している。
【0035】
ちなみに、サーミスタ41としては、比較的自己発熱しにくいサーミスタであることが好ましい。こうしたサーミスタとしては、例えば、「25℃」での抵抗値が「20kΩ」、B定数変化率が「3930K」となるチップ型サーミスタが挙げられる。
【0036】
図3に示すように、電気回路42は、「DC5V」の電源421を備えている。そして、サーミスタ41への電力供給経路には、サーミスタ41に対して直列に接続される第1の抵抗Ra及び第2の抵抗Rbと、サーミスタ41に対して並列に接続される第3の抵抗Rcとが設けられている。本実施形態では、第1の抵抗Raの抵抗値が「22kΩ」であるととともに、第2の抵抗Rbの抵抗値が「2kΩ」であり、さらに、第3の抵抗Rcの抵抗値が「22kΩ」である。そして、サーミスタ41から出力される検出信号(即ち、サーミスタ41に対する電圧値)に基づいてサーミスタ41の設置雰囲気の温度、即ちサーミスタ温度Taが演算される。
【0037】
ところで、機関運転中においては、CNGタンク21からインジェクタ14にCNGが供給されるため、ドレーンタンク35内におけるオイルの液面の上方域ではCNGが流れている。しかも、車両の加速時などのようにスロットルバルブ13の開度の増大に伴ってインジェクタ14からのCNGの噴射量が増えているときには、ドレーンタンク35内を流れるCNGの流速が速くなる。このような状況下でサーミスタ41がオイル中に浸漬していないときには、減圧弁33での減圧によって温度が低くなったCNGの流量が増えることでサーミスタ41からの放熱量が増え、サーミスタ41によって検出されるサーミスタ温度Taが低くなりやすい。
【0038】
その一方で、CNGの流量が増える状況下であってもサーミスタ41がオイルに浸漬しているときには、サーミスタ41がオイルに浸漬していない場合と比較して、CNGの流量変化による影響をサーミスタ41が受けにくい。これは、自己発熱しにくいサーミスタを、検出用のサーミスタ41として採用しているためである。その結果、サーミスタ温度Taは、サーミスタ41がオイル中に浸漬していない場合と比較して変化しにくい。ただし、ドレーンタンク35内でのCNGの流速が非常に速い場合には、ドレーンタンク35自体がCNGによって大幅に冷却されて同ドレーンタンク35内に貯留されているオイルが冷却されたり、ドレーンタンク35内におけるCNGの流れによって同ドレーンタンク35内でオイルが対流したりすることがある。この場合、サーミスタ41がオイル中に浸漬していたとしてもサーミスタ41からの放熱量が多くなり、CNGの流速の変化に伴ってサーミスタ温度Taが変化することがあり得る。
【0039】
そこで、本実施形態では、CNGの流速が変化するときには、その流速の変化態様とサーミスタ温度Taの変化態様とに基づき、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否か、即ちドレーンタンク35内のオイル貯留量が規定量以上になった可能性があるか否かを判定する判定処理が行われる。
【0040】
次に、
図4及び
図5に示すフローチャートと
図6に示すグラフとを参照し、ドレーンタンク35内のオイル貯留量が規定量以上になったか否かを判定するために制御装置50が実行する処理ルーチンについて説明する。
【0041】
図4及び
図5に示す処理ルーチンは、予め設定された所定サイクル(例えば、10ミリ秒毎)に実行される処理ルーチンである。この処理ルーチンにおいて、制御装置50は、タンク圧センサ504から出力される信号に基づき検出されたCNGタンク21内の圧力であるCNGタンク圧Pcが予め設定された判定タンク圧PcTh以上であるか否かを判定する(ステップS101)。
【0042】
本実施形態では、減圧弁33での減圧によって温度が低くされたCNGがドレーンタンク35内に流入する。そのため、CNGタンク圧Pcがあまり高くないと、レギュレータ23に流入する段階でCNGの圧力が低いため、減圧弁33によってあまり減圧されず、この減圧過程でCNGの温度があまり低くならないおそれがある。この場合、サーミスタ41がオイルに浸漬していない状況下でCNGの流量が増えても、サーミスタ41から出力される信号に基づき検出されるサーミスタ温度Taがあまり変化しないため、判定処理の判定精度が低くなるおそれがある。そこで、判定処理の判定精度が低くならないような値に判定タンク圧PcThが設定されている。
【0043】
そして、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh未満である場合(ステップS101:NO)、制御装置50は、判定処理を行うことなく本処理ルーチンを一旦終了する。一方、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh以上である場合(ステップS101:YES)、制御装置50は、サーミスタ41によって検出されるサーミスタ温度Taが予め設定された温度下限値Tamin(例えば、60℃)以上であるか否かを判定する(ステップS102)。
【0044】
サーミスタ41がオイルに浸漬していない状況下でドレーンタンク35内の雰囲気温度でもあるサーミスタ温度Taが比較的低温である場合、減圧弁33での減圧によって温度が低くなったCNGがドレーンタンク35内に流入しても、サーミスタ温度Taが低くなりにくい。そこで、こうした状態であるか否かを判別できるような値に温度下限値Taminが設定されている。
【0045】
そして、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin未満である場合(ステップS102:NO)、制御装置50は、その処理を後述するステップS108に移行する。一方、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin以上である場合(ステップS102:YES)、制御装置50は、ドレーンタンク35に流入するCNGの流量であるCNG流量Qfが予め設定された判定許可流量QfTh以上であるか否かを判定する(ステップS103)。
【0046】
CNG流量Qfが少ないと、サーミスタ41がオイルに浸漬していなくてもサーミスタ温度Taが変化しにくい。そこで、こうしたサーミスタ温度Taが変化しにくい状態であるか否かを判別できるような値に判定許可流量QfThが設定されている。
【0047】
なお、CNG流量Qfは、車速センサ502から出力される信号に基づく車速と、スロットルバルブ13の開度となどに基づき推定演算してもよい。また、吸気通路12を流れる吸気の流量を検出できる場合、この吸気の流量に基づいてCNG流量Qfを演算するようにしてもよい。
【0048】
そして、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh未満である場合(ステップS103:NO)、制御装置50は、その処理を後述するステップS108に移行する。一方、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上である場合(ステップS103:YES)、制御装置50は、所定サイクル毎に取得されたCNG流量Qfを積算する積算処理を行って流量積算値ΣQfを求める(ステップS104)。この点で、本実施形態では、制御装置50が、「流量積算部」としても機能する。
【0049】
続いて、制御装置50は、サーミスタ温度Taの変動に対する変動の遅れが異なるように平滑化された第1の平滑化温度Tf1及び第2の平滑化温度Tf2を取得する。この点で、本実施形態では、制御装置50が、第1の平滑化温度Tf1及び第2の平滑化温度Tf2を所定サイクル毎に求める「平滑化処理部」としても機能する。
【0050】
なお、第1の平滑化温度Tf1及び第2の平滑化温度Tf2は、以下に示す関係式(式1),(式2)を用いて算出される。そして、各関係式(式1),(式2)に示される「Tf1(n−1)」及び「Tf2(n−1)」は前回のサイクルで算出された平滑化温度であり、「Tf1(n)」及び「Tf2(n)」は今回のサイクルで算出される平滑化温度である。また、「Ta(n)」は今回のサイクルで検出されたサーミスタ温度Taであり、「Ta(n−1)」は前回のサイクルで検出されたサーミスタ温度Taである。そして、係数「K1」は、「1」よりも大きく且つ係数「K2(例えば、200)」よりも小さい整数(例えば、10)である。
【0051】
【数1】
そして、制御装置50は、第2の平滑化温度Tf2から予め設定されたオフセット値Tof(>0(零))を差し引いた補正値を算出し、この補正値が第1の平滑化温度Tf1よりも大きいか否かを判定する(ステップS105)。補正値が第1の平滑化温度Tf1以下である場合(ステップS105:NO)、制御装置50は、その処理を後述するステップS108に移行する。
【0052】
一方、補正値(=Tf2−Tof)が第1の平滑化温度Tf1よりも大きい場合(ステップS105:YES)、制御装置50は、補正値から第1の平滑化温度Tf1を差し引いた差を算出し、この差を積算して温度積算値ΣTを求める(ステップS106)。この点で、本実施形態では、制御装置50が、補正値と第1の平滑化温度Tf1との差を積算して温度積算値ΣTを求める「温度積算部」としても機能する。続いて、制御装置50は、補正値と第1の平滑化温度Tf1との差を積算した回数でもある積算カウンタCNT1を「1」だけインクリメントし(ステップS107)、その処理を次のステップS108に移行する。なお、この積算カウンタCNT1は、温度積算値ΣTを算出する実行時間(算出実行時間)の合計値に相当する。
【0053】
ステップS108において、制御装置50は、計測カウンタCNT2を「1」だけインクリメントする。そして、制御装置50は、更新した計測カウンタCNT2が予め設定された計測終了カウンタ値CNT2Th以上であるか否かを判定する(ステップS109)。この計測終了カウンタ値CNT2Thは、一回の判定処理を行うために要する計測時間(例えば、10分)に相当する値である。計測カウンタCNT2が計測終了カウンタ値CNT2Th未満である場合(ステップS109:NO)、流量積算値ΣQf及び温度積算値ΣTの算出を継続するため、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、計測カウンタCNT2が計測終了カウンタ値CNT2Th以上である場合(ステップS109:YES)、制御装置50は、その時点の流量積算値ΣQfが予め設定された規定流量積算値QTh以上であるか否かを判定する(ステップS110)。
【0054】
流量積算値ΣQfが小さい場合においては、計測カウンタCNT2が計測終了カウンタ値CNT2Th以上となるまでの間でのCNGの流量があまり多くないと推定される。そのため、サーミスタ41がオイルに浸漬していなかったとしても、サーミスタ温度Taの変化があまり大きくない可能性がある。そこで、こうした場合に判定処理が行われないような値に規定流量積算値QThが設定されている。
【0055】
そして、流量積算値ΣQfが規定流量積算値QTh未満である場合(ステップS110:NO)、制御装置50は、判定処理が行われないように、流量積算値ΣQf、温度積算値ΣT、積算カウンタCNT1及び計測カウンタCNT2を「0(零)」にリセットするリセット処理を行い(ステップS111)、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0056】
一方、流量積算値ΣQfが規定流量積算値QTh以上である場合(ステップS110:YES)、制御装置50は、ステップS107で更新した積算カウンタCNT1が予め設定された判定許可時間(例えば、90秒)に相当する判定許可カウンタ値CNT1Th以上であるか否かを判定する(ステップS112)。判定処理の判定精度を高くするためには、その判定に用いられるパラメータのサンプル数を多くすることが好ましい。この場合、ステップS106の処理の実行回数が多いほど、判定精度が高くなる傾向があると推定される。そこで、実行回数が多いか否かの判定基準として、判定許可カウンタ値CNT1Thが設定されている。
【0057】
そして、積算カウンタCNT1が判定許可カウンタ値CNT1Th未満である場合(ステップS112:NO)、制御装置50は、判定処理が行われないように、その処理を前述したステップS111に移行する。一方、積算カウンタCNT1が判定許可カウンタ値CNT1Th以上である場合(ステップS112:YES)、制御装置50は、判定処理に用いる規定積算値TThを設定する(ステップS113)。
【0058】
図6に示すように、規定積算値TThは、流量積算値ΣQfが大きい場合には流量積算値ΣQfが小さい場合よりも大きい値に設定される。本実施形態では、規定積算値TThは、流量積算値ΣQfの増加に対して比例的に大きくなっている。そして、こうした流量積算値ΣQfに対する規定積算値TThの増加勾配は、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには温度積算値ΣTが規定積算値TTh未満とならないように設定することが好ましい。
【0059】
図5のフローチャートに戻り、ステップS113の処理の実行後において、制御装置50は、ステップS106で算出した温度積算値ΣTが、ステップS113で設定した規定積算値TTh以下であるか否かを判定する(ステップS114)。温度積算値ΣTが規定積算値TTh以下である場合(ステップS114:YES)、サーミスタ41がオイルに浸漬している可能性有りと判断できるため、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3を「1」だけインクリメントする(ステップS115)。すなわち、本実施形態では、制御装置50が、流量積算値ΣQfが規定流量積算値QTh以上であるとともに、積算カウンタCNT1が判定許可カウンタ値CNT1Th以上であるときに、温度積算値ΣTに基づき、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かを判定する「判定部」としても機能する。
【0060】
そして、制御装置50は、更新したオイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th(例えば、5)以上であるか否かを判定する(ステップS116)。オイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th未満である場合(ステップS116:NO)、制御装置50は、その処理を前述したステップS111に移行する。一方、オイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th以上である場合(ステップS116:YES)、制御装置50は、ドレーンタンク35内のオイル貯留量が規定量以上になった旨を報知すべく警告ランプ510を点灯させる警告処理を行い(ステップS117)、その処理を前述したステップS111に移行する。
【0061】
その一方で、温度積算値ΣTが規定積算値TThよりも大きい場合(ステップS114:NO)、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3を「0(零)」にリセットし(ステップS118)、その処理を前述したステップS111に移行する。
【0062】
次に、
図7に示すタイミングチャートを参照し、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かを判定する際の作用について説明する。なお、前提として、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh以上であるとともに、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin以上であり、さらに、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上であるものとする。
【0063】
図7に示すように、計測カウンタCNT2の更新が行われている場合であっても、第1のタイミングt11以前では、第1の平滑化温度Tf1が第2の平滑化温度Tf2からオフセット値Tofを差し引いた補正値以上であるため、温度積算値ΣTの算出が行われない。しかし、第1のタイミングt11から第2のタイミングt12までの期間では、第1の平滑化温度Tf1が上記の補正値未満となるため、補正値から第1の平滑化温度Tf1を差し引いた差の積算が行われる。すなわち、この期間では、温度積算値ΣTが時間の経過とともに大きくなるとともに、積算カウンタCNT1が所定サイクル毎に更新される。
【0064】
そして、第2のタイミングt12以降になると、第1の平滑化温度Tf1が上記の補正値以上となるため、第3のタイミングt13に達するまで温度積算値ΣTの算出及び積算カウンタCNT1の更新が中断される。なお、第2のタイミングt12から第3のタイミングt13までの期間では、温度積算値ΣT及び積算カウンタCNT1が、第2のタイミングt12に達した時点の値にそれぞれ維持される一方で、流量積算値ΣQfの算出は継続される。
【0065】
その後、第3のタイミングt13に達すると、第1の平滑化温度Tf1が上記の補正値未満となる。そのため、第3のタイミングt13から、第1の平滑化温度Tf1が上記の補正値以上となる第4のタイミングt14までの期間では、温度積算値ΣT及び積算カウンタCNT1の更新が再開される。
【0066】
そして、計測カウンタCNT2が計測終了カウンタ値CNT2Th以上になると、温度積算値ΣT及び積算カウンタCNT1の更新が終了されるとともに、流量積算値ΣQfの更新も終了される。この時点の積算カウンタCNT1は、
温度積算値ΣTの算出、即ち補正値から第1の平滑化温度Tf1を差し引いた差の積算を行った実行時間の合計値に相当する値となっている。そして、流量積算値ΣQfが規定流量積算値QTh以上であるとともに、積算カウンタCNT1が判定許可カウンタ値CNT1Th以上であると、判定処理が行われる。すなわち、温度積算値ΣTが規定積算値TTh以下である場合には、オイル中カウンタCNT3が「1」だけインクリメントされる。その後、温度積算値ΣT、流量積算値ΣQf、積算カウンタCNT1及び計測カウンタCNT2がそれぞれ「0(零)」にリセットされる。
【0067】
こうした判定処理は、内燃機関11が運転されている間、繰り返される。そして、判定処理が繰り返して実行される中で、オイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th以上になると、警告ランプ510が点灯される。その一方で、オイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th未満であったり、オイル中カウンタCNT3が「0(零)」にリセットされたりしたときには、警告ランプ510が点灯されない。
【0068】
以上説明したように、本実施形態では、以下に示す効果を得ることができる。
(1)ドレーンタンク35内に流入するCNG流量Qfが変化する状況下にあっては、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには、サーミスタ41がオイルに浸漬しているときと比較してサーミスタ温度Taが変化しやすい。しかも、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには、CNG流量Qfが大きく変化する場合ほどサーミスタ温度Taが大きく変化するようになる。そこで、本実施形態では、CNG流量Qfが変化する状況下におけるCNG流量Qfの変化態様とサーミスタ温度Taの変化態様とに基づいて判定処理が行われる。そのため、ドレーンタンク35内でCNGの流れが生じている状態で、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かを精度良く判定することができるようになる。
【0069】
(2)サーミスタ41がオイルに浸漬しているときには、CNG流量Qfが変化してもサーミスタ温度Taがあまり変化しないため、第1の平滑化温度Tf1と第2の平滑化温度Tf2との差が大きくなりにくい。その一方で、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには、CNG流量Qfが変化する状況下ではその変化速度が大きいほど、第1の平滑化温度Tf1と第2の平滑化温度Tf2との差が大きくなりやすい。そのため、こうした差、具体的には第2の平滑化温度Tf2からオフセット値Tofを差し引いた補正値と第1の平滑化温度Tf1との差を用いて判定処理を行うことにより、サーミスタ41がオイルに浸漬している否かの判定を精度良く行うことができるようになる。
【0070】
(3)本実施形態では、温度の低いCNGがドレーンタンク35に流入するに際し、CNG流量Qfが多くなるに連れて、オイルに浸漬していないサーミスタ41によって検出されるサーミスタ温度Taが大きく変化する点に着眼している。そこで、流量積算値ΣQfが規定流量積算値QTh以上であるとともに、積算カウンタCNT1が判定許可カウンタ値CNT1Th以上であるときには、ドレーンタンク35へのCNGの流量が多い状況下であるとともに、温度積算値ΣTの算出に用いられた差のサンプル数が多いと推定できる。そのため、こうした場合の温度積算値ΣTに基づいて判定処理を行うことにより、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かを高精度に判定することができるようになる。
【0071】
(4)サーミスタ41がオイルに浸漬していない状況下では、流量積算値ΣQfが小さいときほど温度積算値ΣTが小さい値になりやすい。そのため、規定積算値TThを流量積算値ΣQfが大きいときには小さいときよりも大きい値に決定するようにした。これにより、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには、温度積算値ΣTが規定積算値TTh以下となりにくくなり、サーミスタ41がオイルに浸漬していると誤判定される可能性を低くすることができるようになる。
【0072】
(5)減圧弁33でのCNGの減圧量が少ないためにドレーンタンク35に比較的高温のCNGが流入し得る状況下では、サーミスタ41がオイルに浸漬していなくても、サーミスタ温度Taが低くなりにくい。そこで、本実施形態では、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh未満であるときには、判定処理を行わないようにした。これにより、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときに、サーミスタ41がオイルに浸漬していると誤判定される可能性を低くすることができるようになる。
【0073】
(6)また、サーミスタ温度Taが十分に低い場合、即ちドレーンタンク35内の温度が低い場合にあっては、低温のCNGが流入しても、オイルに浸漬していないサーミスタ41によって検出されるサーミスタ温度Taが低くなりにくい。こうした状況では判定処理の判定精度が低くなる。そこで、本実施形態では、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin未満であるときには、判定処理を行わないようにした。これにより、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときに、サーミスタ41がオイルに浸漬していると誤判定される可能性を低くすることができるようになる。
【0074】
(7)オイル中カウンタCNT3が連続して更新される場合に、警告ランプ510を点灯させるようになっている。そのため、オイル中カウンタCNT3が一回更新されただけで警告ランプ510を点灯させる場合と比較して、ドレーンタンク35内のオイル貯留量が規定量未満であるにも拘わらず警告ランプ510が点灯される事象、即ち車両の乗員に対して誤って警告がなされる事象の発生を抑制することができるようになる。
【0075】
(第2の実施形態)
次に、第2の実施形態を
図8〜
図13に従って説明する。なお、第2の実施形態は、制御装置50が実行する処理ルーチンの内容が第1の実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1の実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1の実施形態と同一部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0076】
図8に示すフローチャートを参照し、制御装置50が実行する処理ルーチンについて説明する。
図8に示す処理ルーチンは、予め設定された所定サイクルに実行される処理ルーチンである。この処理ルーチンにおいて、制御装置50は、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh未満である場合(ステップS201:NO)には本処理ルーチンを一旦終了し、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh以上である場合(ステップS201:YES)にはその処理を次のステップS202に移行する。ステップS202において、制御装置50は、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin未満である場合(ステップS202:NO)にはその処理を後述するステップS213に移行し、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin以上である場合(ステップS202:YES)にはその処理を次のステップS203に移行する。
【0077】
ステップS203において、制御装置50は、ドレーンタンク35内へのCNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上であるか否かを判定する。CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上である場合(ステップS203:YES)、制御装置50は、所定サイクル毎に取得されたCNG流量Qfを積算する積算処理を行って流量積算値ΣQfを求める(ステップS204)。この点で、本実施形態では、制御装置50が、「流量積算部」としても機能する。
【0078】
続いて、制御装置50は、上記関係式(式1)を用いて算出された第1の平滑化温度Tf1から上記関係式(式2)を用いて算出された第2の平滑化温度Tf2を差し引いた差分(差)ΔTfを求める(ステップS205)。この点で、本実施形態では、制御装置50が、「差演算部」としても機能する。そして、制御装置50は、最小差としての差分最小値ΔTfminを更新する(ステップS206)。具体的には、制御装置50は、この時点の差分最小値ΔTfminと今回のサイクルで算出された差分ΔTfとを比較し、小さい方の値を新たな差分最小値ΔTfminとする。その後、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0079】
その一方で、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh未満である場合(ステップS203:NO)、制御装置50は、この時点の流量積算値ΣQfが規定流量積算値としての流量下限値Qmin以上且つ流量上限値Qmax以下であるか否かを判定する(ステップS207)。すなわち、本実施形態では、ステップS203での判定結果が「YES」となるようになってからステップS203の判定結果が「NO」且つステップS207の判定結果が「YES」となるようになるまでの期間が、「CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上であって且つ流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin以上となる期間」に相当する。
【0080】
流量積算値ΣQfが大きすぎる場合としては、車両の加速が長期に亘って継続される場合などが挙げられる。この場合、ドレーンタンク35に温度の低い大量のCNGが長期に亘って流入することとなる。そのため、ドレーンタンク35自体がCNGに冷却され、このドレーンタンク35内に貯留されるオイルも冷却されることがある。また、ドレーンタンク35内でのCNGの流速が速いため、ドレーンタンク35内でオイルの対流が発生することもある。この場合、サーミスタ41がオイルに浸漬していても浸漬していなくてもサーミスタ温度Taが低くなるため、判定処理での判定精度が低下するおそれがある。そこで、こうした状態にならないように、流量上限値Qmaxが設定されている。
【0081】
そして、流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin未満であったり流量積算値ΣQfが流量上限値Qmaxよりも大きかったりする場合(ステップS207:NO)、制御装置50は、その処理を後述するステップS213に移行する。一方、流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin以上且つ流量上限値Qmax以下である場合(ステップS207:YES)、制御装置50は、時差タイマT1を「1」だけインクリメントする(ステップS208)。続いて、制御装置50は、更新した時差タイマT1が予め設定された期間終了判定値T1Th以上であるか否かを判定する(ステップS209)。
【0082】
本実施形態では、減圧弁33での減圧によって温度が低くされたCNGがドレーンタンク35内に流入するため、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上である場合には、サーミスタ温度Taが低下傾向を示しやすい。そして、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上の状態からCNG流量Qfが判定許可流量QfTh未満の状態に移行すると、サーミスタ温度Taが上昇傾向を示すこととなる。しかし、こうした状態移行の直後では、ゆっくりではあるが、サーミスタ温度Taが未だ低下することがある。そこで、このようにCNG流量Qfが判定許可流量QfTh未満の状態になってもサーミスタ温度Taが低下している可能性がある場合にはステップS205,S206の各処理を実行できるように、期間終了判定値T1Thが設定されている。
【0083】
そして、時差タイマT1が期間終了判定値T1Th未満である場合(ステップS209:NO)、差分最小値ΔTfminを更新できる可能性があるため、制御装置50は、その処理を前述したステップS205に移行する。一方、時差タイマT1が期間終了判定値T1Th以上である場合(ステップS209:YES)、制御装置50は、その処理を次のステップS210に移行する。すなわち、本実施形態では、ステップS203での判定結果が「YES」となるようになってからステップS209での判定結果が「YES」となるまでの期間が、「判定期間」に相当する。
【0084】
ステップS210において、制御装置50は、判定処理に用いる規定最小差TfThを設定し、その処理を次のステップS211に移行する。
図13に示すように、規定最小差TfThは、流量積算値ΣQfが大きい場合には流量積算値ΣQfが小さい場合よりも小さい値に設定される。本実施形態では、規定最小差TfThは、流量積算値ΣQfの減少に比例している。そして、この規定最小差TfThの低下勾配は、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには差分最小値ΔTfminが規定最小差TfTh以上とならないように設定することが好ましい。
【0085】
図8に示すフローチャートに戻り、ステップS211において、制御装置50は、上記の判定期間の間に算出された複数の差分ΔTfのうち最も小さい値である差分最小値ΔTfminが、ステップS210で設定した規定最小差TfTh以上であるか否かを判定する。差分最小値ΔTfminが規定最小差TfTh未満である場合(ステップS211:NO)、サーミスタ41がオイルに浸漬していない可能性有りと判断できるため、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3を「0(零)」にリセットし(ステップS212)、その処理を次のステップS213に移行する。
【0086】
ステップS213において、制御装置50は、流量積算値ΣQf及び時差タイマT1を「0(零)」にリセットするとともに、差分最小値ΔTfminに大きい値(例えば、200)を代入するリセット処理を行う。その後、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0087】
その一方で、差分最小値ΔTfminが規定最小差TfTh以上である場合(ステップS211:YES)、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3を「1」だけインクリメントする(ステップS214)。この点、本実施形態では、制御装置50が、一の判定期間での差分最小値ΔTfminが規定最小差TfTh以上であるときに温度センサがオイルに浸漬していると判定する「判定部」としても機能する。続いて、制御装置50は、更新したオイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th未満である場合(ステップS215:NO)にはその処理を前述したステップS213に移行する。一方、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th以上である場合(ステップS215:YES)には、警告ランプ510を点灯させる警告処理を行い(ステップS216)、その処理を前述したステップS213に移行する。
【0088】
次に、
図9及び
図10に示すタイミングチャートと
図13に示すグラフとを参照し、サーミスタ41がオイルに浸漬していない場合の作用について説明する。なお、前提として、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh以上であるとともに、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin以上であるものとする。
【0089】
図9及び
図10に示すように、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上となるような車速Vで車両が走行するときには、所定サイクル毎に取得されるCNG流量Qfが積算されることにより流量積算値ΣQfが次第に大きくなる。その後に車両が停止すると、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh未満となるため、流量積算値ΣQfの算出が停止される。このとき、第1のタイミングt21から第2のタイミングt22までの期間のように、車両が発進して直ぐに停止するときには、この期間でのCNG流量Qfの積算結果である流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin未満となる。
【0090】
図13に示すように、こうした期間では、サーミスタ温度Taが十分に低くなっていない可能性があり、抽出された差分最小値ΔTfminのばらつきが大きい。そのため、この差分最小値ΔTfminを用いて判定処理を行ったとしても、その判定精度が低くなる。そこで、本実施形態では、流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin未満となる期間では、判定処理が行われない。
【0091】
その一方で、第3のタイミングt23から第4のタイミングt24までの期間のように、CNG流量Qfの積算結果である流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin以上且つ流量上限値Qmax以下であるときには、差分最小値ΔTfminの更新が継続される。すなわち、第4のタイミングt24から更新許可時間P1(例えば、3秒)が経過する第5のタイミングt25までは、差分最小値ΔTfminの更新が継続される。なお、この更新許可時間P1は、時差タイマT1が「0(零)」から期間終了判定値T1Thになるまでに要する時間に相当する。
【0092】
そして、第5のタイミングt25が経過すると、第3のタイミングt23から第5のタイミングt25までの判定期間の差分最小値ΔTfminが、この判定期間での流量積算値ΣQfに応じて設定された規定最小差TfTh以上であるか否かが判定される。この場合、差分最小値ΔTfminが規定最小差TfTh未満となるため、サーミスタ41がオイルに浸漬していない可能性有りと判定される。そのため、警告ランプ510は点灯されない。
【0093】
なお、第6のタイミングt26以降では、車両が加速しているため、CNG流量Qfが増加し続けることとなる。しかし、この場合、流量積算値ΣQfが流量上限値Qmaxを超えてもCNG流量Qfが増加し続けるため、判定処理が行われない。
【0094】
次に、
図11及び
図12に示すタイミングチャートを参照し、サーミスタ41がオイルに浸漬している場合の作用について説明する。なお、前提として、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh以上であるとともに、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin以上であるものとする。
【0095】
図11及び
図12に示すように、第1のタイミングt31から第2のタイミングt32までの期間のように、CNG流量Qfの積算結果である流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin以上且つ流量上限値Qmax以下であるときには、差分最小値ΔTfminの更新が継続される。すなわち、第2のタイミングt32から更新許可時間P1が経過する第3のタイミングt33までは、差分最小値ΔTfminの更新が継続される。なお、この更新許可時間P1は、時差タイマT1が「0(零)」から期間終了判定値T1Thになるまでに要する時間に相当する。
【0096】
そして、第3のタイミングt33が経過すると、第1のタイミングt31から第3のタイミングt33までの判定期間の差分最小値ΔTfminが、この判定期間での流量積算値ΣQfに応じて設定された規定最小差TfTh以上であるか否かが判定される。この場合、差分最小値ΔTfminが規定最小差TfTh以上となるため、サーミスタ41がオイルに浸漬している可能性有りと判定され、オイル中カウンタCNT3が更新される。そして、このオイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th以上になると、警告ランプ510が点灯される。
【0097】
以上説明したように、本実施形態では、上記第1の実施形態の効果(1),(2),(5)〜(7)の効果に加え、以下に示す効果を得ることができる。
(8)例えば、サーミスタ41がオイルに浸漬していない状況下においては、CNG流量Qfが多くなるなどしてサーミスタ温度Taが低くなる場合、第2の平滑化温度Tf2のほうが第1の平滑化温度Tf1よりも大きくなりやすい。すなわち、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには、差分最小値ΔTfmin(=Tf1−Tf2)が「0(零)」よりも小さい値になる可能性が高い。そこで、判定期間毎に差分最小値ΔTfminを求め、この差分最小値ΔTfminが規定最小差TfTh以上であるときにサーミスタ41がオイルに浸漬していると判定するようにした。これにより、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かの判定精度を向上させることができるようになる。
【0098】
(9)流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin未満である場合、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上である期間が短かったり、この期間でのCNG流量Qfの増加勾配が緩やかであったりする。そのため、第1の平滑化温度Tf1と第2の平滑化温度Tf2との間に差が表れにくい。その結果、サーミスタ41がオイルに浸漬していない状況下であっても、差分最小値ΔTfminがあまり小さくならず、同差分最小値ΔTfminを用いて判定処理を行うと、サーミスタ41がオイルに浸漬してい
ると誤判定される可能性が高くなる。この点、本実施形態では、流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin未満である期間では、その期間の差分最小値ΔTfminを用いた判定処理を行わないようにした。そのため、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときに、サーミスタ41がオイルに浸漬していると誤判定される可能性を低くすることができるようになる。
【0099】
(10)一方、流量積算値ΣQfが流量上限値Qmaxを超える場合、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上である期間が長かったり、この期間でのCNG流量Qfの増加勾配が急勾配であったりする。そのため、ドレーンタンク35内に流入するCNGによってドレーンタンク35及びこのドレーンタンク35内に貯留されるオイルが冷却されたり、オイルの液面の上方域でのCNGの流れによってオイルに対流が発生したりするおそれがある。この場合、サーミスタ41がオイルに浸漬していてもサーミスタ温度Taが低くなり、差分最小値ΔTfminが小さくなるおそれがある。この場合、こうした差分最小値ΔTfminを用いて判定処理を行うと、サーミスタ41がオイルに浸漬している状況下であっても、サーミスタ41がオイルに浸漬していないと誤判定されるおそれがある。この点、本実施形態では、流量積算値ΣQfが流量上限値Qmaxを超える場合には、差分最小値ΔTfminを用いた判定処理を行わないようにした。したがって、サーミスタ41がオイルに浸漬しているときに、サーミスタ41がオイルに浸漬していないと誤判定される可能性を低くすることができるようになる。
【0100】
(11)サーミスタ41がオイルに浸漬していない状況下では流量積算値ΣQfが大きいほど差分ΔTfが小さい値になりやすいため、規定最小差TfThを流量積算値ΣQfが大きいときには小さいときよりも小さい値に決定するようにした。これにより、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには、差分最小値ΔTfminが規定最小差TfTh以上となりにくくなる。そのため、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かの判定精度を向上させることができるようになる。
【0101】
(第3の実施形態)
次に、第3の実施形態を
図14及び
図15に従って説明する。なお、第3の実施形態は、制御装置50が実行する処理ルーチンの内容が第1及び第2の各実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1及び第2の各実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1及び第2の各実施形態と同一部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0102】
図14に示すフローチャートを参照し、制御装置50が実行する処理ルーチンについて説明する。
図14に示す処理ルーチンは、予め設定された所定サイクルに実行される処理ルーチンである。この処理ルーチンにおいて、制御装置50は、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh未満である場合(ステップS301:NO)にはその処理を後述するステップS303に移行し、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh以上である場合(ステップS301:YES)にはその処理を次のステップS302に移行する。ステップS302において、制御装置50は、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin未満である場合(ステップS302:NO)にはその処理を次のステップS303に移行し、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin以上である場合(ステップS302:YES)にはその処理を次のステップS304に移行する。
【0103】
ステップS303において、制御装置50は、後述する計測カウンタCNT4を「0(零)」にリセットするリセット処理を行う。その後、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0104】
ステップS304において、制御装置50は、CNG流量Qfの単位時間あたりの増加速度である流量増加速度DQを取得し、この流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin以上且つ判定許可上限値DQmax以下であるか否かを判定する。
【0105】
CNG流量Qfが一定であったり、CNG流量Qfが非常にゆっくり増えたりする状況では、サーミスタ41がオイルに浸漬していなくても、サーミスタ温度Taがあまり変化しない。すなわち、サーミスタ温度Taの変化態様が、サーミスタ41がオイルに浸漬しているときの変化態様とあまり変わらない可能性がある。一方、CNG流量Qfが急激に増える状況では、ドレーンタンク35内が一気に冷やされ、ドレーンタンク35内のオイルも冷却されるおそれがある。この場合、サーミスタ41がオイルに浸漬していてもサーミスタ温度Taが低くなり、判定処理の判定精度が低下するおそれがある。そこで、本実施形態では、CNG流量Qfが適度に増えていることを検出できるように、判定許可下限値DQmin及び判定許可上限値DQmaxがそれぞれ設定されている。
【0106】
そして、流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin未満であったり、流量増加速度DQが判定許可上限値DQmaxを超えていたりする場合(ステップS304:NO)、制御装置50は、その処理を後述するステップS309に移行する。一方、流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin以上且つ判定許可上限値DQmax以下である場合(ステップS304:YES)、制御装置50は、車速の単位時間あたりの変化量である車両加速度ΔVが予め設定された加速判定値ΔVThを超えているか否かを判定する(ステップS305)。この加速判定値ΔVThは、車両が加速中であるか否かを判断するための基準値である。すなわち、ステップS305では、内燃機関11のクランク軸の回転速度が高速化傾向にあるか否かが判定される。
【0107】
車両加速度ΔVが加速判定値ΔVTh以下である場合(ステップS305:NO)、車両が加速中ではない、又は車両の加速が終了したと判断できるため、制御装置50は、その処理を後述するステップS309に移行する。一方、車両加速度ΔVが加速判定値ΔVThを超えている場合(ステップS305:YES)、車両が加速中と判断できるため、制御装置50は、計測カウンタCNT4が「0(零)」であるか否かを判定する(ステップS306)。
【0108】
計測カウンタCNT4が「0(零)」である場合(ステップS306:YES)、車両が加速し始めたことにより流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin以上になったと判断できるため、制御装置50は、計測開始時温度Tasにその時点のサーミスタ温度Taをセットする(ステップS307)。そして、制御装置50は、その処理を次のステップS308に移行する。一方、計測カウンタCNT4が「0(零)」ではない場合(ステップS306:NO)、計測開始時温度Tasがセット済みであるため、制御装置50は、その処理を次のステップS308に移行する。
【0109】
ステップS308において、制御装置50は、計測カウンタCNT4を「1」だけインクリメントする。そして、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。
ステップS309において、制御装置50は、その時点の計測カウンタCNT4が予め設定された判定許可基準値CNT4Th以上であるか否かを判定する。判定許可基準値CNT4Thは、後述する計測許容期間P2に応じた値となっている。そして、計測カウンタCNT4が判定許可基準値CNT4Th未満である場合(ステップS309:NO)、制御装置50は、その処理を前述したステップS303に移行する。一方、計測カウンタCNT4が判定許可基準値CNT4Th以上である場合(ステップS309:YES)、制御装置50は、計測終了時温度Taeにその時点のサーミスタ温度Taをセットする(ステップS310)。続いて、制御装置50は、以下に示す関係式(式3)を用いて温度変化量ΔTaを算出する(ステップS311)。
【0110】
【数2】
そして、制御装置50は、算出した温度変化量ΔTaが予め設定された規定変化量ΔTaTh未満であるか否かを判定する(ステップS312)。
【0111】
流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin以上且つ判定許可上限値DQmax以下となる状況下において、サーミスタ41がオイルに浸漬しているときには、サーミスタ温度Taがあまり変化しない。その一方で、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには、サーミスタ温度Taが低下しやすい。こうしたサーミスタ温度Taの低下速度は、CNG流量Qfが多いほど速くなる。そこで、ドレーンタンク35内に流入するCNGの流量が増加することによりサーミスタ温度Taが変化しているか否かの判定基準として、規定変化量ΔTaThが設定されている。この点で、本実施形態では、制御装置50が、CNG流量Qfが増加傾向を示す状況下でサーミスタ温度Taの単位時間あたりの変化量である温度変化量ΔTaが規定変化量ΔTaTh未満であるときにサーミスタ41がオイルに浸漬していると判定する「判定部」としても機能する。
【0112】
そして、温度変化量ΔTaが規定変化量ΔTaTh以上である場合(ステップS312:NO)、サーミスタ41がオイルに浸漬していない可能性有りと判断できるため、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3を「0(零)」にリセットし(ステップS313)、その処理を前述したステップS303に移行する。一方、温度変化量ΔTaが規定変化量ΔTaTh未満である場合(ステップS312:YES)、サーミスタ41がオイルに浸漬している可能性有りと判断できるため、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3を「1」だけインクリメントする(ステップS314)。
【0113】
続いて、制御装置50は、更新したオイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th未満である場合(ステップS315:NO)には、その処理を前述したステップS303に移行する。一方、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th以上である場合(ステップS315:YES)には警告ランプ510を点灯させる警告処理を行い(ステップS316)、その処理を前述したステップS303に移行する。
【0114】
次に、
図15に示すタイミングチャートを参照し、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かを判定する際の作用について説明する。なお、前提として、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh以上であるとともに、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin以上であり、さらに、サーミスタ41がオイルに浸漬していないものとする。
【0115】
図15(a),(b),(c)に示すように、車両が停止している場合においては、インジェクタ14からのCNG噴射量が少ないため、CNG流量Qfはほとんど増加しない。その結果、車両停止中では、判定処理が行われない。
【0116】
そして、第1のタイミングt41以降のように、車両が発進して加速し始めると、CNG流量Qfが増え始める。すると、第2のタイミングt42で流量増加速度DQが判定許可下限値DQminに達し、第2のタイミングt42のサーミスタ温度Taが、計測開始時温度Tasとされる。しかし、この第2のタイミングt42から計測許容期間P2(例えば、3秒)が経過する第4のタイミングt44よりも前の第3のタイミングt43で、流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin未満となる。そのため、このタイミングでは、判定処理が行われない。
【0117】
また、その後に流量増加速度DQが再び速くなり始め、第5のタイミングt45で流量増加速度DQが判定許可下限値DQminに達すると、第5のタイミングt45のサーミスタ温度Taが計測開始時温度Tasとされる。この際、第5のタイミングt45から計測許容期間P2が経過する第6のタイミングt46になっても、流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin以上である。
【0118】
そして、その後の第7のタイミングt47で流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin未満になると、この第7のタイミングt47のサーミスタ温度Taが、計測終了時温度Taeとされる。すると、第5のタイミングt45で取得された計測開始時温度Tas、第7のタイミングt47で取得された計測終了時温度Tae、及び第5のタイミングt45から第7のタイミングt47の間で更新された計測カウンタCNT4を上記関係式(式3)に代入することにより、温度変化量ΔTaが算出される。この場合、温度変化量ΔTaが規定変化量ΔTaTh以上となるため、オイル中カウンタCNT3が「0(零)」とされ、警告ランプ510が点灯されない。
【0119】
以上説明したように、本実施形態では、上記第1及び第2の各実施形態の効果(1),(5)〜(7)の効果に加え、以下に示す効果を得ることができる。
(12)本実施形態では、ドレーンタンク35内に流入するCNGの流速が速くなる傾向を示す状況下で、サーミスタ温度Taの単位時間あたりの変化量である温度変化量ΔTaが算出され、この温度変化量ΔTaが規定変化量ΔTaTh以上であるときにサーミスタ41がオイルに浸漬していない可能性有りと判定している。これにより、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かを高精度に判定することができるようになる。
【0120】
(13)CNGの流速が速くなる傾向が短すぎる場合、サーミスタ41がオイルに浸漬していなかったとしてもその期間での温度変化量ΔTaがあまり大きくなっていないことがあり、判定処理の判定精度が低くなるおそれがある。そこで、本実施形態では、CNGの流速が速くなる傾向が計測許容期間P2以上継続された場合に、この計測許容期間P2での温度変化量ΔTaを算出して判定処理を行っている。そのため、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かの判定精度を向上させることができるようになる。
【0121】
(14)本実施形態では、車両が加速していない場合、特に車両が減速している場合には、ドレーンタンク35内へのCNG流量Qfが少なくなることにより、ドレーンタンク35内が暖かくなる。そのため、ドレーンタンク35内に流入するCNGの流入量が一時的に増えたとしても、オイルに浸漬していないサーミスタ41によって検出されるサーミスタ温度Taが低くなりにくい。そこで、本実施形態では、車両が加速中であるときに取得されたサーミスタ温度Taに基づき温度変化量ΔTaを算出し、この温度変化量ΔTaを用いて判定処理が行われる。そのため、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときに、サーミスタ41がオイルに浸漬していると誤判定させる可能性を低くすることができるようになる。
【0122】
(15)CNG流量Qfの増加速度が速すぎる場合、ドレーンタンク35内に流入するCNGによってドレーンタンク35自体が冷却され、ドレーンタンク35内に貯留されるオイルも冷却されることがある。このとき、サーミスタ41がオイルに浸漬していたとしても、サーミスタ温度Taが低下することとなる。そのため、サーミスタ41がオイルに浸漬している状況下であっても、サーミスタ41がオイルに浸漬していないと誤判定されるおそれがある。そこで、本実施形態では、流量増加速度DQが判定許可上限値DQmax以上であるときには、判定処理を行わない。そのため、サーミスタ41がオイルに浸漬しているときに、サーミスタ41がオイルに浸漬していないと誤判定される可能性を低くすることができるようになる。
【0123】
(第4の実施形態)
次に、第4の実施形態を
図16及び
図17に従って説明する。なお、第4の実施形態は、制御装置50が実行する処理ルーチンの内容が第1〜第3の各実施形態と異なっている。したがって、以下の説明においては、第1〜第3の各実施形態と相違する部分について主に説明するものとし、第1〜第3の各実施形態と同一部材構成には同一符号を付して重複説明を省略するものとする。
【0124】
図16に示すフローチャートを参照し、制御装置50が実行する処理ルーチンについて説明する。
図16に示す処理ルーチンは、予め設定された所定サイクルに実行される処理ルーチンである。この処理ルーチンにおいて、制御装置50は、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh未満である場合(ステップS401:NO)にはその処理を後述するステップS404に移行し、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh以上である場合(ステップS401:YES)にはその処理を次のステップS402に移行する。ステップS402において、制御装置50は、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin未満である場合(ステップS402:NO)にはその処理を後述するステップS404に移行し、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin以上である場合(ステップS402:YES)にはその処理を次のステップS403に移行する。
【0125】
ステップS403において、制御装置50は、CNG流量Qfの単位時間あたりの増加速度である流量増加速度DQを取得し、この流量増加速度DQが予め設定された増加判定値DQThを超えているか否かを判定する。
【0126】
サーミスタ41がオイルに浸漬していない状況下では、ドレーンタンク35内に流入するCNGの流量が増えると、その流量増加に合わせてサーミスタ温度Taが低下する。一方、サーミスタ41がオイルに浸漬している状況下では、ドレーンタンク35内に流入するCNGの流量が増えても、サーミスタ温度Taはほとんど変化しない。又は、サーミスタ温度Taが変化するにしても、CNGの流量増加タイミングに対して遅れて変化するようになる。そこで、ドレーンタンク35内に流入するCNGの流量が増加し始めたか否かの判断基準として、増加判定値DQThが設定されている。
【0127】
そして、流量増加速度DQが増加判定値DQThを超えている場合(ステップS403:YES)、ドレーンタンク35に流入するCNGの流量が増えていると判断できるため、その処理を後述するステップS405に移行する。一方、流量増加速度DQが増加判定値DQTh以下である場合(ステップS403:NO)、ドレーンタンク35に流入するCNGの流量が増えていないと判断できるため、その処理を次のステップS404に移行する。
【0128】
ステップS404において、制御装置50は、後述する計測開始カウンタCNT5を「0(零)」にリセットするリセット処理を行う。そして、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。
【0129】
ステップS405において、制御装置50は、計測開始カウンタCNT5が「0(零)」であるか否かを判定する。計測開始カウンタCNT5が「0(零)」である場合(ステップS405:YES)、制御装置50は、基準値Tabにその時点のサーミスタ温度Taをセットし(ステップS406)、その処理を次のステップS407に移行する。一方、計測開始カウンタCNT5が「0(零)」よりも大きい場合(ステップS405:NO)、制御装置50は、その処理を次のステップS407に移行する。
【0130】
ステップS407において、制御装置50は、計測開始カウンタCNT5を「1」だけインクリメントする。続いて、制御装置50は、設定した基準値Tabからその時点のサーミスタ温度Taを差し引いて温度変化量ΔTa1を求め(ステップS408)、この温度変化量ΔTa1が予め設定された低下判定値ΔTa1Th以上であるか否かを判定する(ステップS409)。この低下判定値ΔTa1Thは、ドレーンタンク35へのCNGの流量が増加する状況下でサーミスタ温度Taが低下しているか否かを判断するための判断基準として設定されている。
【0131】
そして、温度変化量ΔTa1が低下判定値ΔTa1Th未満である場合(ステップS409:NO)、制御装置50は、ステップS407で更新した計測開始カウンタCNT5が予め設定された終了判定値CNT5Th2以上であるか否かを判定する(ステップS410)。
【0132】
ドレーンタンク35に流入するCNGの流量の増加が検知されてからある程度の時間が経過してもサーミスタ温度Taの低下が検知できない場合、サーミスタ41がオイルに浸漬している可能性が高い。そこで、判定処理の終了タイミングを決定するための基準として、終了判定値CNT5Th2が設定されている。
【0133】
そして、計測開始カウンタCNT5が終了判定値CNT5Th2未満である場合(ステップS410:NO)、制御装置50は、本処理ルーチンを一旦終了する。一方、計測開始カウンタCNT5が終了判定値CNT5Th2以上である場合(ステップS410:YES)、制御装置50は、
その処理を後述するステップS413に移行する。
【0134】
その一方で、温度変化量ΔTa1が低下判定値ΔTa1Th以上である場合(ステップS409:YES)、制御装置50は、ステップS407で更新した計測開始カウンタCNT5が予め設定されたカウント判定値CNT5Th1を超えているか否かを判定する(ステップS411)。このカウント判定値CNT5Th1は、上記の終了判定値CNT5Th2よりも小さい値に設定されている。
【0135】
サーミスタ41がオイルに浸漬している場合、ドレーンタンク35に流入するCNGの流量が増えても、サーミスタ温度Taはほとんど変化しない。又は、サーミスタ温度Taが変化したとしても、サーミスタ41がオイルに浸漬していない場合と比較して遅れてサーミスタ温度Taが変化することとなる。これに対し、サーミスタ41がオイルに浸漬していない場合、ドレーンタンク35に流入するCNGの流量が増えると、サーミスタ温度Taが速やかに低下し始める。そこで、CNGの流量が増加し始めてからの経過時間に基づいてサーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かを判断するための判断基準として、カウント判定値CNT5Th1が設定されている。この点で、本実施形態では、計測開始カウンタCNT5が、ドレーンタンク35内に流入するCNGの流速が速くなり始める時点からサーミスタ温度Taの低下が検知される時点までの「経過時間」に相当し、カウント判定値CNT5Th1が、「判定時間」に相当する。
【0136】
そして、計測開始カウンタCNT5がカウント判定値CNT5Th1以下である場合(ステップS411:NO)、サーミスタ41がオイルに浸漬していない可能性有りと判断され、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3を「0(零)」にリセットし(ステップS412)、その処理を前述したステップS404に移行する。一方、計測開始カウンタCNT5がカウント判定値CNT5Th1よりも大きい場合(ステップS411:YES)、サーミスタ41がオイルに浸漬している可能性有りと判断され、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3を「1」だけインクリメントする(ステップS413)。この点、本実施形態では、制御装置50が、CNG流量Qfが増加し始めたタイミングとサーミスタ温度Taの変化するタイミングとに基づき、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かを判定する「判定部」としても機能する。
【0137】
続いて、制御装置50は、更新したオイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th以上である場合(ステップS414:YES)には、警告ランプ510を点灯させる警告処理を行い(ステップS415)、その処理を前述したステップS404に移行する。一方、制御装置50は、オイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th未満である場合(ステップS414:NO)には、警告処理を行うことなく、その処理を前述したステップS404に移行する。
【0138】
次に、
図17に示すタイミングチャートを参照し、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かを判定する際の作用について説明する。なお、前提として、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh以上であるとともに、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin以上であるものとする。
【0139】
図17(a),(b)に示すように、サーミスタ41がオイルに浸漬していない状況下では、車両の加速開始などに起因して第1のタイミングt51でCNG流量Qfが増加し始めると、この流量増加に合わせてサーミスタ温度Taが直ぐに低下し始める。そして、第1のタイミングt51から判定時間P31が経過する第3のタイミングt53よりも前の第2のタイミングt52で、温度変化量ΔTa1(=Tab−Ta)が、低下判定値ΔTa1Th以上になる。すると、この第2のタイミングt52で、サーミスタ41がオイルに浸漬していない可能性有りと判定される。そのため、警告ランプ510が点灯されない。なお、「判定時間P31」は、上記のカウント判定値CNT5Th1に所定サイクルに相当する時間を掛け合わせた値である。
【0140】
その一方で、
図17(a),(c)に示すように、サーミスタ41がオイルに浸漬している状況下では、第1のタイミングt51でCNG流量Qfが増加し始めても、サーミスタ温度Taはなかなか低下しない。すなわち、第1のタイミングt51から判定終了時間P32が経過した第4のタイミングt54になっても、サーミスタ温度Taは、第1のタイミングt51時点のサーミスタ温度Taである基準値Tabとほぼ同一値となる。そのため、この第4のタイミングt54で、サーミスタ41がオイルに浸漬している可能性が高いと判定され、オイル中カウンタCNT3が「1」だけインクリメントされる。そして、オイル中カウンタCNT3がオイル中判定値CNT3Th以上になったときには、警告ランプ510が点灯される。なお、「判定終了時間P32」は、上記の終了判定値CNT5Th2に所定サイクルに相当する時間を掛け合わせた値である。
【0141】
以上説明したように、本実施形態では、上記第1〜第3の各実施形態の効果(1),(5)〜(7)の効果に加え、以下に示す効果を得ることができる。
(16)サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには、サーミスタ41がオイルに浸漬しているときと比較して、ドレーンタンク35に流入するCNGの流量が増える際に、その流量増加に合わせてサーミスタ温度Taが直ぐに低下し始める。そこで、本実施形態では、ドレーンタンク35に流入するCNGの流量が増加し始めるタイミングとサーミスタ温度Taが変化し始めるタイミングとに基づき、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かが判定される。これにより、サーミスタ41がオイルに浸漬しているか否かを精度良く判定することができるようになる。
【0142】
なお、上記各実施形態は、以下のような別の実施形態に変更してもよい。
・第1の実施形態において、規定積算値TThは、流量積算値ΣQfの大きさとは関係なく一定値としてもよい。ただし、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには温度積算値ΣTが規定積算値TTh以下にならないように、規定積算値TThの大きさを設定することが好ましい。
【0143】
・第1の実施形態において、係数「K1」,「K2」をそれぞれ適切に設定できた場合には、オフセット値Tofを「0(零)」としてもよい。この場合、ステップS105では、第1の平滑化温度Tf1が第2の平滑化温度Tf2よりも低いか否かが判定され、ステップS106では、第2の平滑化温度Tf2から第1の平滑化温度Tf1を差し引いた差を積算することにより温度積算値ΣTが求められる。
【0144】
・第1の実施形態において、流量積算値ΣQfが規定流量積算値QTh以上である場合(ステップS110:YES)には、積算カウンタCNT1の大きさには関係なく、ステップS113以降の処理を実行するようにしてもよい。すなわち、ステップS112の判定処理を省略してもよい。
【0145】
・第1の実施形態において、流量積算値ΣQfの大きさには関係なく、ステップS112以降の処理を実行するようにしてもよい。すなわち、ステップS110の判定処理を省略してもよい。
【0146】
・第2の実施形態において、規定最小差TfThは、流量積算値ΣQfの大きさとは関係なく一定値としてもよい。ただし、サーミスタ41がオイルに浸漬していないときには差分最小値ΔTfminが規定最小差TfTh以上にならないように、規定最小差TfThの大きさを設定することが好ましい。
【0147】
・第2の実施形態において、ステップS208,S209の各処理を省略してもよい。この場合、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上の状態になる時点から、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh未満の状態になるまでの時点が「判定期間」とされる。
【0148】
・第2の実施形態において、ステップS207では、流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin以上であるか否かを判定するようにしてもよい。すなわち、流量積算値ΣQfが流量上限値Qmax以上であっても、ステップS208以降の処理を実行するようにしてもよい。
【0149】
・第2の実施形態において、ステップS207では、流量積算値ΣQfが流量上限値Qmax以下であるか否かを判定するようにしてもよい。すなわち、流量積算値ΣQfが流量下限値Qmin以下であっても、ステップS208以降の処理を実行するようにしてもよい。
【0150】
・第2の実施形態において、ステップS207の判定処理を省略してもよい。すなわち、CNG流量Qfが判定許可流量QfTh以上の状態からCNG流量Qfが判定許可流量QfTh未満の状態に移行したときには、流量積算値ΣQfの大きさには関係なく、ステップS208以降の処理を実行するようにしてもよい。
【0151】
・第3の実施形態において、内燃機関11のクランク軸の回転速度が速くなる場合には、車両が加速していなくてもCNG流量Qfが多くなる。そこで、ステップS305では、クランクポジションセンサ503からの信号に基づき検出された回転速度に基づいて、クランク軸の回転速度が速くなっているか否かを判定するようにしてもよい。
【0152】
・第3の実施形態において、流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin以上且つ判定許可上限値DQmax以下であっても、計測カウンタCNT4が判定許可基準値CNT4Thになった場合には、その時点のサーミスタ温度Taを計測終了時温度Taeとしてもよい。この場合、この計測終了時温度Taeを用いて温度変化量ΔTaを算出することとなる。
【0153】
・第3の実施形態において、ステップS304では、流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin以上であるか否かを判定するようにしてもよい。すなわち、流量増加速度DQが判定許可上限値DQmax以上であっても、ステップS305以降の処理を実行するようにしてもよい。
【0154】
・第3の実施形態において、ステップS304では、流量増加速度DQが判定許可上限値DQmax以下であるか否かを判定するようにしてもよい。すなわち、流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin以下であっても、ステップS305以降の処理を実行するようにしてもよい。
【0155】
・第3の実施形態において、流量増加速度DQが判定許可下限値DQmin以上且つ判定許可上限値DQmax以下である期間におけるサーミスタ温度Taの最小値を計測開始時温度Tasとし、サーミスタ温度Taの最大値を計測終了時温度Taeとしてもよい。
【0156】
・第1〜第4の各実施形態において、サーミスタ温度Taが温度下限値Tamin未満であっても、判定処理を行うようにしてもよい。
・第1〜第4の各実施形態において、CNGタンク圧Pcが判定タンク圧PcTh未満であっても、判定処理を行うようにしてもよい。
【0157】
・第1〜第4の各実施形態において、判定処理をN回(Nは3以上の整数)行って、M回以上(Mは、Nよりも小さく且つ2以上の整数)サーミスタ41がオイルに浸漬している可能性有りと判定されたときに、警告ランプ510を点灯させるようにしてもよい。
【0158】
・内燃機関は、気体燃料を用いた運転と液体燃料を用いた運転を行うことのできる、いわゆるバイフューエル型の内燃機関であってもよい。この場合、気体燃料を用いた機関運転時に判定処理を行うことが好ましい。
【0159】
・気体燃料は、内燃機関11の燃焼室16で燃焼させることが可能な気体であれば、CNG以外の他の気体燃料(水素ガスなど)であってもよい。
・温度センサとしては、オイルに浸漬していないときに気体燃料の流速の変化に応じて出力値が変動するセンサであれば、サーミスタ以外の他の温度センサを採用してもよい。