特許第5902670号(P5902670)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902670
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】ハニカム構造体
(51)【国際特許分類】
   B01J 35/02 20060101AFI20160331BHJP
   B01J 32/00 20060101ALI20160331BHJP
   B01J 35/04 20060101ALI20160331BHJP
   B01D 53/86 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   B01J35/02 G
   B01J32/00ZAB
   B01J35/04 301A
   B01J35/04 301P
   B01D53/86
【請求項の数】6
【全頁数】27
(21)【出願番号】特願2013-507434(P2013-507434)
(86)(22)【出願日】2012年3月21日
(86)【国際出願番号】JP2012057208
(87)【国際公開番号】WO2012133056
(87)【国際公開日】20121004
【審査請求日】2014年11月18日
(31)【優先権主張番号】特願2011-67508(P2011-67508)
(32)【優先日】2011年3月25日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000004064
【氏名又は名称】日本碍子株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088616
【弁理士】
【氏名又は名称】渡邉 一平
(74)【代理人】
【識別番号】100089347
【弁理士】
【氏名又は名称】木川 幸治
(74)【代理人】
【識別番号】100154379
【弁理士】
【氏名又は名称】佐藤 博幸
(74)【代理人】
【識別番号】100154829
【弁理士】
【氏名又は名称】小池 成
(72)【発明者】
【氏名】笠井 義幸
(72)【発明者】
【氏名】大宮 好雅
(72)【発明者】
【氏名】間瀬 和弥
【審査官】 延平 修一
(56)【参考文献】
【文献】 特許第2818051(JP,B2)
【文献】 特開平05−115796(JP,A)
【文献】 特開2012−031738(JP,A)
【文献】 特開2011−246340(JP,A)
【文献】 特開平04−280086(JP,A)
【文献】 特開平04−067588(JP,A)
【文献】 特開2012−092820(JP,A)
【文献】 特開2008−030038(JP,A)
【文献】 国際公開第2011/125227(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 21/00 − 38/74
B01D 53/86
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有し、底面が円形の筒状または底面がオーバル形状の筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備え、
前記ハニカム構造部の電気抵抗率が、1〜200Ωcmであり、
前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、
前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設され、
前記電極部が炭化珪素粒子及び珪素を主成分とするものであり、
前記セルの延びる方向に直交する断面における前記セルの形状が六角形であり、
前記セルの延びる方向に直交しかつ前記電極部を含む断面において、一の前記セルの対向する2つの頂点を結ぶ対角線に平行でありかつ前記ハニカム構造部の中心を通る直線を、基準線としたときに、それぞれの前記電極部が、少なくとも一の前記基準線と交差する位置に配置されたハニカム構造体。
【請求項2】
前記セルの延びる方向に直交する断面において、それぞれの前記電極部の中心角の0.5倍が、15〜65°である請求項1に記載のハニカム構造体。
【請求項3】
前記電極部の厚さが、0.025〜3mmである請求項1または2に記載のハニカム構造体。
【請求項4】
それぞれの前記電極部が、二以上の前記基準線と交差するように配設されている請求項1〜3のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項5】
前記電極部の電気抵抗率が、0.01〜100Ωcmである請求項1〜4のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【請求項6】
前記電極部の電気抵抗率よりも低い電気抵抗率をもつ導電体が、前記電極部の表面に設置された請求項1〜5のいずれか一項に記載のハニカム構造体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ハニカム構造体に関する。更に詳しくは、触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能し、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、コージェライト製のハニカム構造体に触媒を担持したものを、自動車エンジンから排出された排ガス中の有害物質の処理に用いていた。また、炭化珪素質焼結体によって形成されたハニカム構造体が排ガスの浄化に使用することも知られている。ここで、ハニカム構造体に担持した触媒によって排ガスを処理する場合、触媒を所定の温度まで昇温する必要がある。しかし、エンジン始動時には、触媒温度が低いため、排ガスが十分に浄化されないという問題があった。
【0003】
そのため、導電性セラミックスからなり両端部に電極が配設されたハニカム構造体を、ヒーター付触媒担体として使用することが開示されている(例えば、特許文献1を参照)。また、多数の貫通孔を有する導電性のハニカム構造体と、このハニカム構造体の側面に設けられた2つの通電手段とからなるハニカムヒーターを触媒担体として使用することが開示されている(例えば、特許文献2を参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平8−141408号公報
【特許文献2】特開平6−66132号公報
【発明の概要】
【0005】
特許文献1に記載のヒーター付触媒担体は、当該ヒーター付触媒担体を自動車に搭載して使用する際に、電極が、排ガスに直接暴露されるため、電極が劣化し易く、抵抗値が上昇することがあった。
【0006】
特許文献2のハニカムヒーターは、ハニカム構造体の側面に通電手段が設けられているため、この通電手段が排ガスに直接暴露されることはない。そのため、特許文献1に記載のヒーター付触媒担体のように、電極が劣化し易く、抵抗値が上昇するという問題は生じない。しかし、排ガスが供給されることによってハニカムヒーターが急加熱されたり、排ガスが供給されなくなり急冷却されたりすると、ハニカムヒーターの内部と外部とに温度差が生じる。そのため、この温度差に起因して大きな熱応力が発生し、ハニカムヒーターにクラックなどが生じることがある。
【0007】
本発明は、上述した問題に鑑みてなされたものであり、触媒担体であると共に電圧を印加することによりヒーターとしても機能し、耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を提供することを目的とする。
【0008】
本発明によれば、以下に示す、ハニカム構造体が提供される。
【0009】
[1] 流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルを区画形成する多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有し、底面が円形の筒状または底面がオーバル形状の筒状のハニカム構造部と、前記ハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備え、前記ハニカム構造部の電気抵抗率が、1〜200Ωcmであり、前記一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成され、前記セルの延びる方向に直交する断面において、前記一対の電極部における一方の前記電極部が、前記一対の電極部における他方の前記電極部に対して、前記ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設され、前記電極部が炭化珪素粒子及び珪素を主成分とするものであり、前記セルの延びる方向に直交する断面における前記セルの形状が六角形であり、前記セルの延びる方向に直交しかつ前記電極部を含む断面において、一の前記セルの対向する2つの頂点を結ぶ対角線に平行でありかつ前記ハニカム構造部の中心を通る直線を、基準線としたときに、それぞれの前記電極部が、少なくとも一の前記基準線と交差する位置に配置されたハニカム構造体。
【0010】
[2] 前記セルの延びる方向に直交する断面において、それぞれの前記電極部の中心角の0.5倍が、15〜65°である前記[1]に記載のハニカム構造体。
【0011】
[3] 前記電極部の厚さが、0.025〜3mmである前記[1]または[2]に記載のハニカム構造体。
【0013】
] それぞれの前記電極部が、二以上の前記基準線と交差するように配設されている前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0014】
] 前記電極部の電気抵抗率が、0.01〜100Ωcmである前記[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0015】
] 前記電極部の電気抵抗率よりも低い電気抵抗率をもつ導電体が、前記電極部の表面に設置された[1]〜[]のいずれかに記載のハニカム構造体。
【0016】
本発明のハニカム構造体は、多孔質の隔壁と、最外周に位置する外周壁とを有する筒状のハニカム構造部と、このハニカム構造部の側面に配設された一対の電極部とを備えている。そして、本発明のハニカム構造体は、一対の電極部のそれぞれが、前記ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成されている。本発明のハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する断面において、一対の電極部における一方の電極部が、一対の電極部における他方の電極部に対して、ハニカム構造部の中心を挟んで反対側に配設されている。本発明のハニカム構造体は、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状が四角形または六角形である。更に、ここで、セルの延びる方向に直交しかつ電極部を含む断面において、一のセルの対向する2つの頂点を結ぶ対角線に平行でありかつハニカム構造部の中心を通る直線を、基準線とする。本発明のハニカム構造体は、それぞれの電極部が、少なくとも一の基準線と交差する位置に配置されている。このように電極部が配置されているため、本発明のハニカム構造体は、耐熱衝撃性に優れるものである。具体的には、ハニカム構造体を内燃機関の排気システムに搭載して使用した際に、急激な温度変化があっても、ハニカム構造部に大きな応力が生じることを抑制することができる。また、「ハニカム構造部の電気抵抗率が、1〜200Ωcmである」ため、電圧の高い電源を用いて電流を流しても、過剰に電流が流れず、ヒーターとして好適に用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。
図2】本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
図3】本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
図4】本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す正面図である。
図5】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
図6】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
図7】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す正面図である。
図8】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
図9】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す正面図である。
図10図9における、A−A’断面を示す模式図である。
図11】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す側面図である。
図12】本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態について説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、当業者の通常の知識に基づいて、以下の実施の形態に対し適宜変更、改良等が加えられたものも本発明の範囲に入ることが理解されるべきである。
【0019】
[1]ハニカム構造体:
本発明のハニカム構造体の一の実施形態は、図1図2に示すハニカム構造体100のように、筒状のハニカム構造部4と、このハニカム構造部4の側面5に配設された一対の電極部21,21とを備えている。ハニカム構造部4は、流体の流路となる一方の端面11から他方の端面12まで延びる複数のセル2を区画形成する多孔質の隔壁1と、最外周に位置する外周壁3とを有するものである。ハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の電気抵抗率が、1〜200Ωcmである。ハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成されている。そして、セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21は、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されている。ハニカム構造体100において、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状は、四角形または六角形である。更に、セル2の延びる方向に直交しかつ電極部21を含む断面において、一のセル2の対向する2つの頂点を結ぶ対角線13に平行でありかつハニカム構造部4の中心Oを通る直線を、基準線Lとする。このとき、ハニカム構造体100は、それぞれの電極部21,21が、少なくとも一の基準線Lと交差する位置に配置されている。
【0020】
図1は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態を模式的に示す斜視図である。図2は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。即ち、図2は、一対の電極部21,21を含みかつセル2の延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0021】
このようなハニカム構造体100は、一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成されている。セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21は、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されている。セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状は、四角形または六角形である。更に、セル2の延びる方向に直交しかつ電極部21を含む断面において、一のセル2の対向する2つの頂点を結ぶ対角線13に平行でありかつハニカム構造部4の中心Oを通る直線を、基準線Lとする。このとき、それぞれの電極部21,21は、少なくとも一の基準線と交差する位置に配置されている。そのため、ハニカム構造体100は、耐熱衝撃性に優れるものである。具体的には、ハニカム構造体を内燃機関の排気システムに搭載して使用した際に、急激な温度変化があっても、ハニカム構造部に大きな応力が生じることを抑制することができる。別言すれば、大きな熱応力が生じる部分に上記電極部21を配設しているため、クラックなどが生じ難く耐熱衝撃性に優れるものである。また、ハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の電気抵抗率が、1〜200Ωcmである。そのため、電圧の高い電源を用いて電流を流しても、過剰に電流が流れず、ヒーターとして好適に用いることができる。
【0022】
なお、「セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設される」は、以下のように定義される。即ち、セル2の延びる方向に直交する断面において、線分(A)と線分(B)とにより形成される角度βが、170°〜190°の範囲となるような位置関係になるように、一対の電極部21,21がハニカム構造部4に配設されていることを意味する。上記線分(A)は、一方の電極部21の中央点(「ハニカム構造部4の周方向」における中央の点)とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分のことである。上記線分(B)は、他方の電極部21の中央点(「ハニカム構造部4の周方向」における中央の点)とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ線分のことである。角度βは、「中心O」を中心とする角度のことである。
【0023】
図1図2に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、ハニカム構造部4の側面5に一対の電極部21,21が配設されている。本実施形態のハニカム構造体100は、一対の電極部21,21間に電圧を印加することにより、発熱する。印加する電圧は12〜900Vが好ましく、64〜600Vが更に好ましい。
【0024】
図1に示されるように、本実施形態のハニカム構造体100は、(i)一対の電極部21,21のそれぞれが、ハニカム構造部4のセル2の延びる方向に延びる帯状に形成されている。そして、(ii)セル2の延びる方向に直交する断面において、一対の電極部21,21における一方の電極部21が、一対の電極部21,21における他方の電極部21に対して、ハニカム構造部4の中心Oを挟んで反対側に配設されている。
【0025】
本実施形態のハニカム構造体100は、図3に示されるように、更に、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍(中心角αの0.5倍の角度θ)が、15〜65°であることが好ましい。そして、中心角αの0.5倍の角度θは、20〜60°であることが更に好ましく、30〜55°であることが特に好ましい。このように、上記(i)のようにするとともに、上記(ii)のようにし、更に、セル2の延びる方向に直交する断面において、それぞれの電極部21,21の中心角αの0.5倍の角度θを、15〜65°とする。このようにすることにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを、より効果的に抑制することができる。別言すれば、ハニカム構造部4内を流れる電流を、より均一に流すことができる。これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを抑制することができる。中心角αの0.5倍の角度θが15°未満であると、電流がハニカム構造部4内に広がらないため、電極直下で集中発熱するおそれがある。一方、65°超であると、電流が外周壁を通ってしまい中心温度が上昇しないおそれがある。「電極部21の中心角α」は、図3に示されるように、電極部21の両端とハニカム構造部4の中心Oとを結ぶ2本の線分により形成される角度(小さい側の角度)である。図3は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0026】
また、一方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」は、他方の電極部21の「中心角αの0.5倍の角度θ」に対して、0.8〜1.2倍の大きさであることが好ましく、1.0倍の大きさ(同じ大きさ)であることが更に好ましい。上記範囲とすることにより、一対の電極部21,21間に電圧を印加した時に、ハニカム構造部4内を流れる電流の偏りを、より効果的に抑制することができる。これによりハニカム構造部4内の発熱の偏りを、より効果的に抑制することができる。
【0027】
本実施形態のハニカム構造体100においては、例えば、図1に示されるように、電極部21は、平面状の長方形の部材を、円筒形状の外周に沿って湾曲させたような形状となっている。ここで、湾曲した電極部21を、湾曲していない平面状の部材になるように変形したときの形状を、電極部21の「平面形状」と称することにする。上記、図1に示される電極部21の「平面形状」は、長方形になる。そして、「電極部の外周形状」というときは、「電極部の平面形状における外周形状」を意味する。
【0028】
本実施形態のハニカム構造体100においては、図1に示されるように、帯状の電極部21の外周形状が長方形であってもよい。本実施形態のハニカム構造体においては、帯状の電極部21の外周形状が、「長方形の角部が曲線状に形成された形状」であることも好ましい態様である。また、帯状の電極部21の外周形状が、「長方形の角部が直線状に面取りされた形状」であることも好ましい態様である。「曲線状」と「直線状」の複合適用も好ましい。即ち、帯状の電極部21の外周形状が、長方形において、角部の少なくとも一つが「曲線状に形成された形状」となっており、且つ、角部の少なくとも一つが「直線状に面取りされた形状」となっている形状であることも好ましい。また、本明細書における「帯状」は、シート状または膜状ということもできる。つまり、本明細書における「電極部」は、本明細書における「電極端子突起部」のように外側に向かって突出したものを含まない。
【0029】
このように、電極部21の外周形状が、「長方形の角部が曲線状に形成された形状」、又は「長方形の角部が直線状に面取りされた形状」であることにより、ハニカム構造体の耐熱衝撃性を更に向上させることができる。電極部の角部が直角であると、ハニカム構造部における「当該電極部の角部」付近の応力が、他の部分と比較して相対的に高くなる傾向にある。これに対し、電極部の角部を曲線状にしたり直線状に面取りしたりすると、ハニカム構造部における「当該電極部の角部」付近の応力を低下させることが可能となる。
【0030】
本発明のハニカム構造体においては、電極部が、ハニカム構造部のセルの延びる方向に延びる帯状に形成されている限り特に制限はない。例えば図1に示すように、一対の電極部21,21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘って形成されていてもよいし、図4に示すように、ハニカム構造部4の両端部間に亘らなくてもよい。即ち、ハニカム構造部4の端部と電極部21の端部との間に隙間があってもよい。これらのうち、ハニカム構造部4の両端部間に亘って電極部が形成されると、通電による均一な発熱を実現できる。また、ハニカム構造部4の両端部間に亘らないように電極部が形成されると、ハニカム構造部4の、端部付近であって電極部21との境界付近に大きな応力が発生し難くなるためクラックの発生を防止することができる。図4は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す正面図である。
【0031】
一対の電極部21,21が、ハニカム構造部4の両端部間に亘らない場合、具体的には、図4に示すように、距離D1が、セルの延びる方向におけるハニカム構造部4の長さLの1〜10%であることが好ましい。距離D1は、セルの延びる方向におけるハニカム構造部4の一方の端部4aから、セルの延びる方向において「ハニカム構造部4の一方の端部4a側」を向いている「電極部21の端部(電極部の一方の端部)21a」までの距離のことである。更に、距離D2が、セルの延びる方向におけるハニカム構造部4の長さLの1〜10%であることが好ましい。距離D2は、セルの延びる方向におけるハニカム構造部4の他方の端部4bから、セルの延びる方向において「ハニカム構造部4の他方の端部4b側」を向いている「電極部21の端部(電極部の他方の端部)21b」までの距離のことである。距離D1及び距離D2のそれぞれは、ハニカム構造部4の長さLの2〜8%であることが更に好ましい。
【0032】
このように、ハニカム構造体101は、距離D1と距離D2との両方が、ハニカム構造部4の長さLの1〜10%である。なお、距離D1は、ハニカム構造部4の一方の端部4aから電極部21の一方の端部21aまでの距離のことである。そして、距離D2は、ハニカム構造部4の他方の端部4bから電極部21の他方の端部21bまでの距離のことである。このことにより、ハニカム構造体101を内燃機関の排気システムに搭載して使用した際に、急激な温度変化があっても、ハニカム構造部4に大きな応力が生じることを更に効果的に抑制することができる。更に、ハニカム構造体101に電圧を印加したときに、更に効果的に均一発熱させることができる。距離D1と距離D2とは同じ距離であることが好ましいが、異なる距離であってもよい。また、一対の電極部21,21のそれぞれについての距離D1,D1は、同じ距離であることが好ましいが、異なっていてもよい。更に、一対の電極部21,21のそれぞれについての距離D2,D2は、同じ距離であることが好ましいが、異なっていてもよい。
【0033】
帯状の電極部は、セルの延びる方向に沿う側縁がセルの延びる方向に平行な直線でない場合(例えば、セルの延びる方向に対して傾斜している場合、波線状である場合)、基準線との交点は、上記側縁の一番外側位置との間に存在すればよい。上記基準線との交点は、一番内側位置との間に存在することが好ましい。なお、上記側縁がセルの延びる方向に平行な直線でない場合、基準線を描くための、一対の電極部を含みかつセルの延びる方向に直交する断面は、電極部の周方向長さが最も短くなる部分における断面であることが好ましい。
【0034】
上述したように、一対の電極部21,21を含みかつセル2の延びる方向に直交する断面において、一のセル2の対向する2つの頂点を結ぶ対角線13に平行でありかつハニカム構造部4の中心を通る直線を、基準線Lとする。このとき、図1図2に示されるハニカム構造体100は、それぞれの電極部21,21が、少なくとも一つの基準線Lと交差する位置に配置されたものである。
【0035】
「対向する2つの頂点を結ぶ対角線」とは、セルの形状が四角形の場合、この四角形のセルに描かれる2つの対角線を意味する。従って、セルの形状が六角形の場合、一の頂点と、この一の頂点から時計回りに数えて3つ目の頂点とを結んで描かれる線分を意味する。具体的には、セルの形状が六角形の場合、図2に示すように、一の頂点15aと、この一の頂点15aから時計回りに数えて3つ目の頂点15bとを結んで描かれる線分のことである。セルの形状が四角形の場合、「対向する2つの頂点を結ぶ対角線」は2本描くことができる。セルの形状が六角形の場合、「対向する2つの頂点を結ぶ対角線」は3本描くことができる。
【0036】
本発明のハニカム構造体においては、それぞれの電極部21,21が、「少なくとも一つの基準線L」と交差する位置に配置されていれば良い。図5に示されるように、それぞれの電極部21,21が、一つの基準線Lのみと交差する位置に配置されるものであってもよい。即ち、本発明のハニカム構造体は、各電極部21,21と基準線Lとの交点Xが1つとなるように配置されるものであってもよい。
【0037】
本発明のハニカム構造体においては、上記のように、それぞれの電極部21,21が、一つの基準線Lのみと交差する位置に配置されていてもよい。図2図6に示されるように、それぞれの電極部21,21が、二以上の基準線Lと交差するように配設されていること(各電極部21,21と基準線Lとの交点Xが2つ以上存在すること)が好ましい。具体的には、二つの基準線Lと交差するように配設されていることが好ましく、三つの基準線Lと交差するように配設されていることが好ましい。それぞれの電極部21,21が、二以上の基準線Lと交差するように配設されることにより、更に耐熱衝撃性に優れたハニカム構造体を得ることができる。
【0038】
また、「それぞれの電極部が、少なくとも一の基準線と交差する位置に配置される」限り、一方の電極部と交差する基準線の数と、他方の電極部と交差する基準線の数とは同じであってもよいし、異なっていてもよい。例えば、図2に示すハニカム構造体100は、一方の電極部21と交差する基準線Lの数と、他方の電極部21と交差する基準線Lの数とが同じ数(2本)である例である。図5に示すハニカム構造体102は、一方の電極部21と交差する基準線Lの数と、他方の電極部21と交差する基準線Lの数とが同じ数(1本)である例である。なお、一方の電極部と交差する基準線の数とは、一方の電極部と基準線との交点の数のことである。他方の電極部と交差する基準線の数とは、他方の電極部と基準線との交点の数のことである。
【0039】
「一方の電極部と基準線との交点の数と、他方の電極部と基準線との交点の数とが異なる」とは、具体的には、一方の電極部と基準線との交点が1点で、他方の電極部と基準線との交点が2点となるように一対の電極部を形成する場合がある。また、一方の電極部と基準線との交点が2点で、他方の電極部と基準線との交点が3点となるように一対の電極部を形成する場合などもある。具体的には、一方の電極部の周方向の長さと他方の電極部の周方向の長さとが異なる場合には交点の数が異なることがある。また、一方の電極部の周方向の長さと他方の電極部の周方向の長さとが同じであっても、角度βが、例えば170°となるような位置関係になるように一対の電極部21,21が配設されている場合などでも交点の数が異なることがある。
【0040】
本発明のハニカム構造体は、一対の電極部の熱容量の合計を、外周壁全体の熱容量の2〜150%にすることが好ましい。このような範囲とすることにより、電極部に蓄積する熱量が少なくなり、ハニカム構造体の耐熱衝撃性が更に向上する。そのため、ハニカム構造体を内燃機関の排気システムに搭載して使用した際に、急激な温度変化があっても、ハニカム構造部に大きな応力が生じることを抑制することができる。一対の電極部の熱容量の合計は、外周壁全体の熱容量以下にすること(即ち、2〜100%であること)が更に好ましく、外周壁全体の熱容量より小さくすることが特に好ましい。これにより、電極部に蓄積する熱量が更に少なくなり、ハニカム構造体の耐熱衝撃性が更に向上する。そのため、ハニカム構造体を内燃機関の排気システムに搭載して使用した際に、急激な温度変化があっても、ハニカム構造部に大きな応力が生じることを更に抑制することができる。一対の電極部の熱容量の合計は、電極部の体積をもとに、気孔率、材料の比重、及び比熱を考慮した熱容量計算の方法で導き出した値である。上記「電極部の体積」は、光学顕微鏡で測定された電極部の平均厚みと電極角度(図3における、中心角α)とを用いて計算された電極部の体積のことである。外周壁全体の熱容量は、外周壁の体積をもとに、気孔率、材料の比重、及び比熱を考慮した熱容量計算の方法で導き出した値である。上記「外周壁の体積」は、光学顕微鏡で測定された外周壁の平均厚みを用いて計算された外周壁の体積のことである。本明細書において、ハニカム構造部の側面の、電極部が配設されている部分の面積を「電極部の配設面積」とする。また、ハニカム構造部と同軸であり電極部を分割する円筒を仮定し、その円筒に分割された電極部の分割面を仮想分割面とする。更に、この仮想分割面の面積を「仮想分割面積」とする。本明細書における「電極部の熱容量」の算出に際しては、上記「仮想分割面積」が、上記「電極部の配設面積」の90%以上となる部分を「電極部」とする。即ち、本明細書における「電極部の熱容量」の算出に際しては、上記「仮想分割面積」が、上記「電極部の配設面積」の90%未満となる部分は電極部ではないものとする。
【0041】
本実施形態のハニカム構造体においては、「一対の電極部の熱容量の合計が、外周壁全体の熱容量より小さい」場合、具体的には、一対の電極部の熱容量の合計が、外周壁全体の熱容量の2〜80%であることが好ましい。下限値は、9%であることが更に好ましく、15%であることが特に好ましい。また、上限値は、75%であることが更に好ましく、50%であることが特に好ましい。2%より小さいと、電圧を印加したときに、ハニカム構造部の全体に、より均一に電流が流れるという効果が十分に得られないおそれがある。80%より大きいと、耐熱衝撃性を低下させる効果が小さくなることがある。
【0042】
電極部21の厚さは、0.025〜3mmであることが好ましく、0.025〜2mmであることが更に好ましく、0.1〜1mmであることが特に好ましい。このような範囲とすることにより、電極部21を均一に発熱させることができる。電極部21の厚さが0.025mm未満であると、電流がハニカム構造部4内に広がらないため、電極直下で集中発熱するおそれがある。一方、3mm超であると、キャニング時に破損するおそれがある。
【0043】
本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21の電気抵抗率は、均一であってもよいし、部分的に異なっていてもよい。電極部21の電気抵抗率が均一である場合、電極部21の電気抵抗率は、0.01〜100Ωcmであることが好ましい。更に、電極部21の電気抵抗率は、0.1〜100Ωcmであることが更に好ましく、0.1〜50Ωcmであることが特に好ましく、0.5〜50Ωcmであることが最も好ましい。電極部21の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、一対の電極部21,21が、高温の排ガスが流れる配管内において、効果的に電極の役割を果たす。電極部21の電気抵抗率が0.01Ωcmより小さいと、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端付近のハニカム構造部の温度が上昇し易くなることがある。電極部21の電気抵抗率が100Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電極としての役割を果たし難くなることがある。電極部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0044】
電極部21の電気抵抗率が部分的に異なる場合、図7図8に示すハニカム構造体300のように、電極部21が、中央部21Xと拡張部21Y,21Yとから構成されることが好ましい。そして、電極部21の中央部21Xの電気抵抗率は、電極部21の拡張部21Y,21Yの電気抵抗率より小さいものであることが好ましい。中央部21Xは、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の周方向における部分のことである。拡張部21Y,21Yは、セル2の延びる方向に直交する断面において、中央部21Xの周方向における両側に位置する部分のことである。このように、電極部21の中央部21Xの電気抵抗率が、電極部21の拡張部21Yの電気抵抗率より小さいと、電極部21の中央部21Xに電圧を印加したときに、電気抵抗率が低い中央部21Xに電流が容易に流れる。そのため、ハニカム構造体のセルの延びる方向における電流の流れの偏りが小さくなる。これにより、ハニカム構造体のセルの延びる方向における温度分布の偏りを効果的に抑制することができる。図7は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態を模式的に示す正面図である。図8は、本発明のハニカム構造体の他の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0045】
中央部21Xの電気抵抗率は、拡張部21Y,21Yの電気抵抗率の0.0001〜70%が好ましく、0.001〜50%が更に好ましく、0.001〜10%が特に好ましい。0.0001%より小さいと、ハニカム構造部の中心軸に直交する断面における外周方向への電流の流れが小さくなり、温度分布の偏りが大きくなることがある。70%より大きいと、ハニカム構造体300の温度分布の偏りを抑制する効果が低下することがある。
【0046】
また、本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21のヤング率は、2〜50GPaであることが好ましく、3〜45GPaであることが更に好ましく、3〜35GPaであることが特に好ましい。電極部21のヤング率をこのような範囲にすることにより、電極部21のアイソスタティック強度を確保できるとともに、ハニカム構造部4にクラックが発生し難くなる。電極部21のヤング率が2GPaより小さいと、電極部21のアイソスタティック強度を確保できなくなることがある。電極部21のヤング率が50GPaより大きいと、剛性が高くなるためハニカム構造部4にクラックが発生し易くなることがある。
【0047】
電極部のヤング率は、JIS R1602に準拠して、曲げ共振法によって測定した値である。測定に用いる試験片としては、電極部を形成する電極部形成原料からなる複数のシートを積み重ねて積層体を得た後、この積層体を乾燥させ、3mm×4mm×40mmの大きさに切り出したものを用いる。
【0048】
本実施形態のハニカム構造体100においては、電極部21の電気抵抗率は、ハニカム構造部4の電気抵抗率より低いものであることが好ましい。更に、電極部21の電気抵抗率は、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下であることが更に好ましく、1〜10%であることが特に好ましい。電極部21の電気抵抗率を、ハニカム構造部4の電気抵抗率の、20%以下とすることにより、電極部21が、より効果的に電極として機能するようになる。
【0049】
電極部21は、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることが好ましく、通常含有される不純物以外は、炭化珪素粒子及び珪素を原料として形成されていることが更に好ましい。ここで、「炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」とは、炭化珪素粒子と珪素との合計質量が、電極部全体の質量の90質量%以上であることを意味する。このように、電極部21が炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、電極部21の成分とハニカム構造部4の成分とが同じ成分又は近い成分(ハニカム構造部の材質が珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を主成分とするものである場合)となる。そのため、電極部21とハニカム構造部4の熱膨張係数が同じ値又は近い値になる。また、材質が同じもの又は近いものになるため、電極部21とハニカム構造部4との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極部21がハニカム構造部4から剥れたり、電極部21とハニカム構造部4との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。
【0050】
電極部21は、気孔率が30〜80%であることが好ましく、30〜70%であることが更に好ましく、30〜60%であることが特に好ましい。電極部21の気孔率がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部21の気孔率が、30%より低いと、製造時に変形してしまうことがある。電極部21の気孔率が、80%より高いと、ハニカム構造部に均一に電流を流すことが難しくなることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0051】
電極部21は、平均細孔径が5〜45μmであることが好ましく、7〜40μmであることが更に好ましい。電極部21の平均細孔径がこのような範囲であることにより、好適な電気抵抗率が得られる。電極部21の平均細孔径が、5μmより小さいと、電気抵抗率が高くなりすぎることがある。電極部21の平均細孔径が、45μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0052】
電極部21の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合に、電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は10〜70μmであることが好ましく、10〜60μmであることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極部21の電気抵抗率を0.01〜100Ωcmの範囲で制御することができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、10μmより小さいと、電極部21の電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、70μmより大きいと、電極部21の強度が弱くなり破損し易くなることがある。電極部21に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0053】
電極部21に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極部21に含有される珪素の質量の比率は、20〜50質量%であることが好ましく、20〜40質量%であることが更に好ましい。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、電極部21の電気抵抗率を0.01〜100Ωcmの範囲で制御することができる。電極部21に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。一方、50質量%より大きいと、製造時に変形し易くなることがある。
【0054】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部4の電気抵抗率は、1〜200Ωcmであり、1〜100Ωcmであることが好ましく、5〜80Ωcmであることが更に好ましい。電気抵抗率が1Ωcmより小さいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体100に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が過剰に流れることがある。電気抵抗率が200Ωcmより大きいと、例えば、200V以上の高電圧の電源によってハニカム構造体100に通電したときに(電圧は200Vには限定されない)、電流が流れ難くなり、十分に発熱しないことがある。ハニカム構造部の電気抵抗率は、四端子法により測定した値である。ハニカム構造部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0055】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が、四角形または六角形であるものであり、六角形であることが好ましく、正六角形であることが更に好ましい。図2に示すハニカム構造体100は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が六角形であり、全てのセル2が同じ形状(六角形)に形成されかつ同じ向きになるように配列されている例である。また、図6に示すハニカム構造体103は、セル2の延びる方向に直交する断面におけるセル2の形状が四角形であり、全てのセル2が同じ形状(四角形)に形成されかつ同じ向きになるように配列されている例である。図6は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態の、セルの延びる方向に直交する断面を示す模式図である。
【0056】
本実施形態のハニカム構造体100においては、隔壁1及び外周壁3の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を主成分とするものであることが好ましく、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材であることが更に好ましい。「隔壁1及び外周壁3の材質が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を主成分とするものである」というときは、隔壁1及び外周壁3が、珪素−炭化珪素複合材又は炭化珪素材を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。このような材質を用いることにより、ハニカム構造部の電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。ここで、珪素−炭化珪素複合材は、骨材としての炭化珪素粒子、及び炭化珪素粒子を結合させる結合材としての珪素を含有するものであり、複数の炭化珪素粒子が、炭化珪素粒子間に細孔を形成するようにして、珪素によって結合されていることが好ましい。また、炭化珪素材は、炭化珪素が焼結したものである。ハニカム構造部の電気抵抗率は、400℃における値である。
【0057】
本実施形態のハニカム構造体100において、ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子(骨材)の平均粒子径は、3〜50μmであることが好ましく、3〜40μmであることが更に好ましい。ハニカム構造部4を構成する炭化珪素粒子の平均粒子径をこのような範囲とすることにより、ハニカム構造部4の400℃における電気抵抗率を1〜200Ωcmにすることができる。炭化珪素粒子の平均粒子径が3μmより小さいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が大きくなることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム構造部4の電気抵抗率が小さくなることがある。更に、炭化珪素粒子の平均粒子径が50μmより大きいと、ハニカム成形体を押出成形するときに、押出成形用の口金に成形用原料が詰まることがある。炭化珪素粒子の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。
【0058】
本実施形態のハニカム構造体100においては、ハニカム構造部4の材質が、珪素−炭化珪素複合材である場合、以下の条件を満たすことが好ましい。ハニカム構造部4に含有される「骨材としての炭化珪素粒子の質量」と、ハニカム構造部4に含有される「結合材としての珪素の質量」との合計に対する、上記「結合材としての珪素の質量」の比率が、10〜40質量%であることが好ましい。上記比率は、15〜35質量%であることが更に好ましい。10質量%より低いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。40質量%より高いと、焼成時に形状を保持できないことがある。
【0059】
本実施形態のハニカム構造体100は、隔壁厚さが50〜260μmであり、70〜180μmであることが好ましい。隔壁厚さをこのような範囲にすることにより、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持しても、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなり過ぎることを抑制できる。隔壁厚さが50μmより薄いと、ハニカム構造体の強度が低下することがある。隔壁厚さが260μmより厚いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0060】
本実施形態のハニカム構造体100は、セル密度が40〜150セル/cmであることが好ましく、70〜100セル/cmであることが更に好ましい。セル密度をこのような範囲にすることにより、排ガスを流したときの圧力損失を小さくした状態で、触媒の浄化性能を高くすることができる。セル密度が40セル/cmより低いと、触媒担持面積が少なくなることがある。セル密度が150セル/cmより高いと、ハニカム構造体100を触媒担体として用いて、触媒を担持した場合に、排ガスを流したときの圧力損失が大きくなることがある。
【0061】
ハニカム構造部4の隔壁1の気孔率は、30〜60%であることが好ましく、30〜55%であることが更に好ましい。30%未満であると、焼成時の変形が大きくなってしまうことがある。気孔率が60%を超えるとハニカム構造体の強度が低下することがある。気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0062】
ハニカム構造部4の隔壁1の平均細孔径は、2〜15μmであることが好ましく、4〜8μmであることが更に好ましい。平均細孔径が2μmより小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。平均細孔径が15μmより大きいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータにより測定した値である。
【0063】
本実施形態のハニカム構造体100の形状は特に限定されず、例えば、底面が円形の筒状(円筒形状)、底面がオーバル形状の筒状、底面が多角形(四角形、五角形、六角形、七角形、八角形等)の筒状等の形状とすることができる。また、ハニカム構造体の大きさは、底面の面積が2000〜20000mmであることが好ましく、4000〜10000mmであることが更に好ましい。また、ハニカム構造体の中心軸方向の長さは、50〜200mmであることが好ましく、75〜150mmであることが更に好ましい。
【0064】
ハニカム構造部4の最外周を構成する外周壁3の厚さは、0.1〜1mmであることが好ましく、0.2〜0.8mmであることが更に好ましく、0.2〜0.5mmであることが特に好ましい。外周壁が0.1mmより薄いと、ハニカム構造体100(ハニカム構造部4)の強度が低下することがある。1mmより厚いと、触媒を担持する隔壁の面積が小さくなることがある。
【0065】
次に、本発明のハニカム構造体の他の実施形態について説明する。図9図11に示されるように、本実施形態のハニカム構造体200は、上記本発明のハニカム構造体100(図1図2参照)において、電気配線を繋ぐための電極端子突起部22が配設されたものである。電極端子突起部22は、それぞれの電極部21,21の、セルの延びる方向に直交する断面における中央部であり、かつセルの延びる方向における中央部に配設されている。電極端子突起部22は、電極部21,21間に電圧を印加するために、電源からの配線を接続する部分である。
【0066】
このように、電極端子突起部22が配設されることにより、電極部に電圧を印加したときに、ハニカム構造部の温度分布の偏りを、より小さくすることができる。図9は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す正面図である。図10は、図9における、A−A’断面を示す模式図である。図11は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す側面図である。
【0067】
本実施形態のハニカム構造体200の各条件は、下記条件(Z)以外は、本発明のハニカム構造体の一の実施形態(ハニカム構造体100)における各条件と同じであることが好ましい。条件(Z)は、「それぞれの電極部21,21の、セル2の延びる方向に直交する断面における中央部であり、かつセル2の延びる方向における中央部に、電気配線を繋ぐための電極端子突起部22が配設されている」である。
【0068】
電極部21の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合、電極端子突起部22の主成分も、炭化珪素粒子及び珪素であることが好ましい。このように、電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とすることにより、電極部21の成分と電極端子突起部22の成分とが同じ又は近い成分となる。そのため、電極部21と電極端子突起部22の熱膨張係数が同じ又は近い値になる。また、材質が同じ又は近くになるため、電極部21と電極端子突起部22との接合強度も高くなる。そのため、ハニカム構造体に熱応力がかかっても、電極端子突起部22が電極部21から剥れたり、電極端子突起部22と電極部21との接合部分が破損したりすることを防ぐことができる。ここで、「電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を主成分とする」というときは、電極端子突起部22が、炭化珪素粒子及び珪素を、全体の90質量%以上含有していることを意味する。
【0069】
電極端子突起部22の形状は、特に限定されず、電極部21に接合でき、電気配線を接合できる形状であればよい。例えば、図9図11に示すように、電極端子突起部22は、四角形の板状の基板22aに、円柱状の突起部22bが配設された形状であることが好ましい。このような形状にすることにより、電極端子突起部22は、基板22aにより電極部21に強固に接合されることができ、突起部22bにより電気配線を確実に接合させることができる。
【0070】
電極端子突起部22において、基板22aの厚さは、1〜5mmが好ましい。このような厚さとすることにより、電極端子突起部22を確実に電極部21に接合することができる。1mmより薄いと、基板22aが弱くなり、突起部22bが基板22aから、外れ易くなることがある。5mmより厚いと、ハニカム構造体を配置するスペースが必要以上に大きくなることがある。
【0071】
電極端子突起部22において、基板22aの長さ(幅)は、電極部21の長さの、10〜50%であることが好ましく、20〜40%であることが更に好ましい。このような範囲にすることにより、電極端子突起部22が、電極部21から外れ難くなる。10%より短いと、電極端子突起部22が、電極部21から外れ易くなることがある。50%より長いと、質量が大きくなることがある。「基板22aの長さ(幅)」は、「ハニカム構造部4の、セルの延びる方向に直交する断面における外周方向」における長さのことである。「電極部21の長さ」は、「ハニカム構造部4の、セルの延びる方向に直交する断面における外周方向(外周に沿った方向)」における長さのことである。電極端子突起部22において、基板22aの、「セル2の延びる方向」における長さは、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの、5〜30%が好ましい。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さをこのような範囲とすることにより、十分な接合強度が得られる。基板22aの「セル2の延びる方向」における長さを、ハニカム構造部4のセルの延びる方向における長さの5%より短くすると、電極部21から外れ易くなることがある。そして、30%より長くすると、質量が大きくなることがある。
【0072】
電極端子突起部22において、突起部22bの太さは3〜15mmが好ましい。このような太さにすることにより、突起部22bに、電気配線を確実に接合させることができる。3mmより細いと突起部22bが折れ易くなることがある。15mmより太いと、電気配線を接続し難くなることがある。また、突起部22bの長さは、3〜20mmが好ましい。このような長さにすることにより、突起部22bに、電気配線を確実に接合させることができる。3mmより短いと電気配線を接合し難くなることがある。20mmより長いと、突起部22bが折れ易くなることがある。
【0073】
電極端子突起部22の電気抵抗率は、0.1〜2.0Ωcmであることが好ましく、0.1〜1.0Ωcmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の電気抵抗率をこのような範囲にすることにより、高温の排ガスが流れる配管内において、電極端子突起部22から、電流を電極部21に効率的に供給することができる。電極端子突起部22の電気抵抗率が2.0Ωcmより大きいと、電流が流れ難くなるため、電流を電極部21に供給し難くなることがある。
【0074】
電極端子突起部22は、気孔率が30〜45%であることが好ましく、30〜40%であることが更に好ましい。電極端子突起部22の気孔率がこのような範囲であることにより、適切な電気抵抗率が得られる。電極端子突起部22の気孔率が、45%より高いと、電極端子突起部22の強度が低下することがあり、特に突起部22bの強度が低下すると突起部22bが折れ易くなることがある。気孔率は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0075】
電極端子突起部22は、平均細孔径が5〜20μmであることが好ましく、7〜15μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22の平均細孔径がこのような範囲であることにより、適切な電気抵抗率が得られる。電極端子突起部22の平均細孔径が、20μmより大きいと、電極端子突起部22の強度が低下することがあり、特に突起部22bの強度が低下すると突起部22bが折れ易くなることがある。平均細孔径は、水銀ポロシメータで測定した値である。
【0076】
電極端子突起部22の主成分が炭化珪素粒子及び珪素である場合に、電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径が10〜60μmであることが好ましく、20〜60μmであることが更に好ましい。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径がこのような範囲であることにより、電極端子突起部22の電気抵抗率を、0.1〜2.0Ωcmにすることができる。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、10μmより小さいと、電極端子突起部22の電気抵抗率が大きくなり過ぎることがある。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均細孔径が、60μmより大きいと、電極端子突起部22の電気抵抗率が小さくなり過ぎることがある。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0077】
電極端子突起部22に含有される「炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計」に対する、電極端子突起部22に含有される珪素の質量の比率が、20〜40質量%であることが好ましく、25〜35質量%であることが更に好ましい。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、このような範囲であることにより、0.1〜2.0Ωcmの電気抵抗率を得やすくなる。電極端子突起部22に含有される炭化珪素粒子と珪素のそれぞれの質量の合計に対する、珪素の質量の比率が、20質量%より小さいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。そして、40質量%より大きいと、製造時に変形してしまうことがある。
【0078】
次に、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態について説明する。本実施形態のハニカム構造体300は、上述した、図1図2に示される、本発明のハニカム構造体の一の実施形態(ハニカム構造体100)において、導電体23が、電極部21の表面に設置されたものである。本実施形態のハニカム構造体300において、導電体23は、電極部21の電気抵抗率よりも低い電気抵抗率をもつものである。従って、本実施形態のハニカム構造体300は、導電体23を有すること以外は、上記本発明のハニカム構造体100(図1図2参照)と、同じ条件であることが好ましい。図12は、本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態を模式的に示す正面図である。
【0079】
このように、本実施形態のハニカム構造体300は、電極部21の電気抵抗率よりも低い電気抵抗率をもつ導電体23が、電極部21の表面に設置されたものである。そのため、導電体23に電圧を印加することにより、ハニカム構造部の全体に、より均一に電流を流すことが可能になる。
【0080】
導電体23の形状は、特に限定されないが、図12に示されるように、電極部の一方の端部21aから電極部の他方の端部21bに亘る長方形であることが好ましい。導電体23は、電極部の両端部間に亘らなくてもよい(導電体23の端部と電極部の端部との間に隙間があってもよい。)。導電体23の長さ(「ハニカム構造部のセル」の延びる方向における長さ)は、電極部21の長さ(「ハニカム構造部のセル」の延びる方向における長さ)の50%以上が好ましく、80%以上が更に好ましく、100%が特に好ましい。50%より短いと、電圧を印加したときに、ハニカム構造部の全体に、より均一に電流を流すという効果が低下することがある。
【0081】
また、導電体23の周方向(ハニカム構造部の外周における周方向)の長さは、電極部の周方向の長さ以下の長さであれば特に限定されない。導電体23の周方向の長さは、電極部の周方向の長さの5〜75%が好ましく、10〜60%が更に好ましい。75%より長いと、セルの延びる方向に直交する断面において、電極部21の両端付近のハニカム構造部の温度が上昇し易くなることがある。5%より短いと、電圧を印加したときに、ハニカム構造部の全体に、より均一に電流を流すという効果が低下することがある。
【0082】
導電体23の材質としては、炭化珪素構造体に珪素が含浸されて気孔率が5%以下となるもの等を挙げることができる。
【0083】
また、導電体23の厚さは、0.1〜2mmが好ましく、0.2〜1.5mmが更に好ましく、0.3〜1mmが特に好ましい。2mmより厚いと、ハニカム構造体の耐熱衝撃性が低下することがある。0.1mmより薄いと、導電体23の強度が低下することがある。
【0084】
なお、本発明のハニカム構造体は、触媒担体として使用することができる。本発明のハニカム構造体に、公知の触媒を公知の方法で担持することにより、排ガス処理用の触媒体として使用することができる。
【0085】
[2]ハニカム構造体の製造方法:
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。上記本発明のハニカム構造体の更に他の実施形態である、ハニカム構造体200(図9図11参照)を製造する方法(以下、「製造方法(A)」と記す場合がある)を示す。
【0086】
[2−1]ハニカム成形体の作製:
まず、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して成形原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が10〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、3〜50μmが好ましく、5〜20μmが更に好ましい。金属珪素(金属珪素粉末)の平均粒子径は、2〜35μmであることが好ましい。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。なお、これは、ハニカム構造部の材質を、珪素−炭化珪素系複合材とする場合の成形原料の配合であり、ハニカム構造部の材質を炭化珪素材とする場合には、金属珪素は添加しない。
【0087】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0088】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜60質量部であることが好ましい。
【0089】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0090】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.5〜10.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、成形時に口金に詰まることがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0091】
次に、成形原料を混練して坏土を形成する。成形原料を混練して坏土を形成する方法としては特に制限はなく、例えば、ニーダー、真空土練機等を用いる方法を挙げることができる。
【0092】
次に、坏土を押出成形してハニカム成形体を形成する。押出成形に際しては、所望の全体形状、セル形状、隔壁厚さ、セル密度等を有する口金を用いることが好ましい。口金の材質としては、摩耗し難い超硬合金が好ましい。ハニカム成形体は、流体の流路となる複数のセルを区画形成する隔壁と最外周に位置する外周壁とを有する構造である。
【0093】
ハニカム成形体の隔壁厚さ、セル密度、外周壁の厚さ等は、乾燥、焼成における収縮を考慮し、作製しようとする本発明のハニカム構造体の構造に合わせて適宜決定することができる。
【0094】
得られたハニカム成形体について、乾燥を行うことが好ましい。乾燥の方法は特に限定されない。例えば、マイクロ波加熱乾燥、高周波誘電加熱乾燥等の電磁波加熱方式と、熱風乾燥、過熱水蒸気乾燥等の外部加熱方式とを挙げることができる。これらの中でも、成形体全体を迅速かつ均一に、クラックが生じないように乾燥することができる点で、電磁波加熱方式で一定量の水分を乾燥させた後、残りの水分を外部加熱方式により乾燥させることが好ましい。乾燥の条件として、電磁波加熱方式にて、乾燥前の水分量に対して、30〜99質量%の水分を除いた後、外部加熱方式にて、3質量%以下の水分にすることが好ましい。電磁波加熱方式としては、誘電加熱乾燥が好ましく、外部加熱方式としては、熱風乾燥が好ましい。
【0095】
ハニカム成形体の中心軸方向長さが、所望の長さではない場合は、両端面(両端部)を切断して所望の長さとすることが好ましい。切断方法は特に限定されないが、丸鋸切断機等を用いる方法を挙げることができる。
【0096】
[2−2]電極部形成原料の調合:
次に、電極部を形成するための電極部形成原料を調合する。電極部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して調合することが好ましい。なお、中央部及び拡張部からなる電極部を形成する場合には、中央部形成原料及び拡張部形成原料をそれぞれ調合する。中央部形成原料は、中央部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。拡張部形成原料は、拡張部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0097】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極部形成原料を作製する。炭化珪素粉末及び金属珪素の合計質量を100質量部としたときに、金属珪素の質量が20〜40質量部となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素(金属珪素粒子)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0098】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。
【0099】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、15〜60質量部であることが好ましい。
【0100】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0101】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0102】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、ペースト状の電極部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、縦型の撹拌機を用いることができる。
【0103】
次に、得られた電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布する方法は、特に限定されないが、例えば、印刷方法を用いることができる。
【0104】
電極部形成原料は、上記本発明のハニカム構造体における電極部の配置になるように、ハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。具体的には、セル2の延びる方向に直交しかつ電極部21を含む断面において、一のセル2の対向する2つの頂点を結ぶ対角線13に平行でありかつハニカム構造部4の中心Oを通る直線を、基準線Lとする。このとき、図1図2に示すハニカム構造体100のように、それぞれの電極部21,21が、少なくとも一つの基準線Lと交差する位置に配置されるように、電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布する。なお、中央部及び拡張部からなる電極部を形成する場合には、上記条件を満たすように、中央部形成原料及び拡張部形成原料のそれぞれを、乾燥させたハニカム成形体の側面に塗布することが好ましい。なお、このとき、図7図8に示されるような電極部21の中央部21X及び拡張部21Yの形状になるように各原料をハニカム成形体の側面に塗布する。中央部形成原料及び拡張部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布する方法は、特に限定されるものではなく、電極部形成原料を塗布する場合と同様に、例えば印刷方法を用いることができる。
【0105】
電極部の厚さは、電極部形成原料を塗布するときの厚さを調整することにより、所望の厚さとすることができる。このように、電極部形成原料をハニカム成形体の側面に塗布し、乾燥、焼成するだけで電極部を形成することができるため、非常に容易に電極部を形成することができる。
【0106】
次に、ハニカム成形体の側面に塗布した電極部形成原料を乾燥させることが好ましい。これにより、「乾燥後の「電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体(電極端子突起部形成用部材が貼り付いていないもの)」」を得ることができる。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0107】
[2−3]電極端子突起部形成用部材の作製:
次に、電極端子突起部形成用部材を作製することが好ましい。電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体に貼り付けられて、電極端子突起部となるものである。電極端子突起部形成用部材の形状は、特に限定されないが、例えば、図9図11に示すような形状に形成することが好ましい。そして、得られた電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体の、電極部形成原料が塗布された部分に貼り付けることが好ましい。なお、ハニカム成形体の作製、電極部形成原料の調合、及び電極端子突起部形成用部材の作製の、順序はどのような順序でもよい。
【0108】
電極端子突起部形成用部材は、電極端子突起部形成原料(電極端子突起部形成用部材を形成するための原料)を成形、乾燥して得ることが好ましい。電極端子突起部の主成分を、炭化珪素及び珪素とする場合、電極端子突起部形成原料は、炭化珪素粉末及び珪素粉末に、所定の添加物を添加し、混練して形成することが好ましい。
【0109】
具体的には、炭化珪素粉末(炭化珪素)に、金属珪素粉末(金属珪素)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を添加して、混練して電極端子突起部形成原料を作製する。炭化珪素粉末の質量と金属珪素の質量との合計に対して、金属珪素の質量が20〜40質量%となるようにすることが好ましい。炭化珪素粉末における炭化珪素粒子の平均粒子径は、10〜60μmが好ましい。金属珪素粉末(金属珪素)の平均粒子径は、2〜20μmであることが好ましい。2μmより小さいと、電気抵抗率が小さくなりすぎることがある。20μmより大きいと、電気抵抗率が大きくなりすぎることがある。炭化珪素粒子及び金属珪素粒子(金属珪素)の平均粒子径はレーザー回折法で測定した値である。炭化珪素粒子は、炭化珪素粉末を構成する炭化珪素の微粒子であり、金属珪素粒子は、金属珪素粉末を構成する金属珪素の微粒子である。
【0110】
バインダとしては、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、ヒドロキシプロポキシルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール等を挙げることができる。これらの中でも、メチルセルロースとヒドロキシプロポキシルセルロースとを併用することが好ましい。バインダの含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、2.0〜10.0質量部であることが好ましい。
【0111】
水の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、20〜40質量部であることが好ましい。
【0112】
界面活性剤としては、エチレングリコール、デキストリン、脂肪酸石鹸、ポリアルコール等を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を組み合わせて使用してもよい。界面活性剤の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜2.0質量部であることが好ましい。
【0113】
造孔材としては、焼成後に気孔となるものであれば特に限定されるものではなく、例えば、グラファイト、澱粉、発泡樹脂、吸水性樹脂、シリカゲル等を挙げることができる。造孔材の含有量は、炭化珪素粉末及び金属珪素粉末の合計質量を100質量部としたときに、0.1〜5.0質量部であることが好ましい。造孔材の平均粒子径は、10〜30μmであることが好ましい。10μmより小さいと、気孔を十分形成できないことがある。30μmより大きいと、大気孔ができやすくなり、強度低下を起こすことがある。造孔材の平均粒子径はレーザー回折方法で測定した値である。
【0114】
次に、炭化珪素粉末(炭化珪素)、金属珪素(金属珪素粉末)、バインダ、界面活性剤、造孔材、水等を混合して得られた混合物を混練して、電極端子突起部形成原料とすることが好ましい。混練の方法は特に限定されず、例えば、混練機を用いることができる。
【0115】
得られた電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にする方法は特に限定されず、押し出し成形後に加工する方法を挙げることができる。
【0116】
電極端子突起部形成原料を成形して、電極端子突起部形成用部材の形状にした後に、乾燥させて、電極端子突起部形成用部材を得ることが好ましい。乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0117】
次に、電極端子突起部形成用部材を、電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体(ハニカム成形体の電極部形成原料が塗布された部分)に貼り付ける方法は、特に限定されない。上記電極部形成原料を用いて電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。例えば、電極端子突起部形成用部材の「ハニカム成形体に貼り付く面(ハニカム成形体に接触する面)」に電極部形成原料を塗布し、「当該電極部形成原料を塗布した面」がハニカム成形体に接触するようにして、電極端子突起部形成用部材をハニカム成形体に貼り付けることが好ましい。
【0118】
そして、「電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられたハニカム成形体」を乾燥し、焼成して、本発明のハニカム構造体とすることが好ましい。なお、本発明のハニカム構造体の一の実施形態(ハニカム構造体100、図1図2参照)を作製する際には、上記乾燥後の「電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体(電極端子突起部形成用部材が貼り付いていないもの)」を焼成すればよい。
【0119】
このときの乾燥条件は、50〜100℃とすることが好ましい。
【0120】
また、焼成の前に、バインダ等を除去するため、仮焼成を行うことが好ましい。仮焼成は大気雰囲気において、400〜500℃で、0.5〜20時間行うことが好ましい。仮焼成及び焼成の方法は特に限定されず、電気炉、ガス炉等を用いて焼成することができる。焼成条件は、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気において、1400〜1500℃で、1〜20時間加熱することが好ましい。また、焼成後、耐久性向上のために、1200〜1350℃で、1〜10時間、酸素化処理を行うことが好ましい。
【0121】
なお、電極端子突起部形成用部材は、ハニカム成形体を焼成する前に貼り付けてもよいし、焼成した後に貼り付けてもよい。電極端子突起部形成用部材を、ハニカム成形体を焼成した後に貼り付けた場合は、その後に、上記条件によって再度焼成することが好ましい。
【0122】
次に、図12に示される、ハニカム構造体300の製造方法について説明する。ハニカム構造体300の製造方法は、上記製造方法(A)において、「乾燥後のハニカム成形体」を作製した後に、電極端子突起部形成用部材を貼り付けずに、導電体23を配設するものである。
【0123】
「乾燥後のハニカム成形体」に、導電体23を配設する方法としては、薄い金属板(金属箔)を電極部の表面に貼り付ける方法や、金属粉を含有するペーストを電極部の表面に塗工して乾燥させる方法等を挙げることができる。なお、上記「乾燥後のハニカム成形体」は、乾燥後の「電極部形成原料が塗布されたハニカム成形体(電極端子突起部形成用部材が貼り付いていないもの)」のことである。
【実施例】
【0124】
以下、本発明を実施例に基づいて具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0125】
(実施例1)
炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを80:20の質量割合で混合した。これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、造孔材として吸水性樹脂を添加すると共に、水を添加して成形原料とし、成形原料を真空土練機により混練し、円柱状の坏土を作製した。バインダの含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに7質量部であった。造孔材の含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに3質量部であった。水の含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は20μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。また、造孔材の平均粒子径は、20μmであった。炭化珪素、金属珪素及び造孔材の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0126】
得られた円柱状の坏土を押出成形機を用いて成形した。このようにして、流体の流路となる一方の端面から他方の端面まで延びる複数のセルが形成され、セルの延びる方向に直交する断面において、セルの形状が六角形であるハニカム成形体を得た。得られたハニカム成形体を高周波誘電加熱乾燥した後、熱風乾燥機を用いて120℃で2時間乾燥し、両端面を所定量切断した。
【0127】
次に、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合した。これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロース、保湿剤としてグリセリン、分散剤として界面活性剤を添加すると共に、水を添加して、混合した。この混合物を混練して電極部形成原料とした。バインダの含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.5質量部であった。グリセリンの含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに10質量部であった。界面活性剤の含有量は炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに0.3質量部であった。水の含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに42質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は52μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素及び金属珪素の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。混練は、縦型の撹拌機で行った。
【0128】
次に、電極部形成原料を、乾燥させたハニカム成形体の側面に以下の条件を満たすように帯状に塗布した。即ち、厚さ(乾燥、焼成後の厚さ)が0.25mm、「基準線と各電極部とが重なる点数」が2点、「セルの延びる方向に直交する断面において中心角の0.5倍」が35°、角度βが180°になるようにして上記側面に電極部形成原料を塗布した。電極部形成原料は、乾燥させたハニカム成形体の側面に、2箇所塗布した。そして、セルの延びる方向に直交する断面において、2箇所の電極部形成原料を塗布した部分のなかの一方が、他方に対して、ハニカム成形体の中心を挟んで反対側に配置されるようにした。ハニカム成形体の側面に塗布された電極部形成原料の形状は、長方形とした。
【0129】
次に、ハニカム成形体に塗布した電極部形成原料を乾燥させた。乾燥条件は、70℃とした。
【0130】
次に、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末とを60:40の質量割合で混合した。これに、バインダとしてヒドロキシプロピルメチルセルロースを添加すると共に、水を添加して、混合した。この混合物を混練して電極端子突起部形成原料とした。電極端子突起部形成原料を、真空土練機を用いて坏土とした。バインダの含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに4質量部であった。水の含有量は、炭化珪素(SiC)粉末と金属珪素(Si)粉末の合計を100質量部としたときに22質量部であった。炭化珪素粉末の平均粒子径は52μmであり、金属珪素粉末の平均粒子径は6μmであった。炭化珪素及び金属珪素の平均粒子径は、レーザー回折法で測定した値である。
【0131】
得られた坏土を、図9図11に示される電極端子突起部22のような形状(基板と突起部とからなる形状)に加工し、乾燥して、電極端子突起部形成用部材を得た。また、乾燥条件は、70℃とした。板状の基板22aに相当する部分は、「3mm×12mm×15mm」の大きさとした。また、突起部22bに相当する部分は、底面の直径が7mmで、中心軸方向の長さが10mmの円柱状とした。電極端子突起部形成用部材は2つ作製した。
【0132】
次に、2つの電極端子突起部形成用部材のそれぞれを、ハニカム成形体の2箇所の電極部形成原料を塗布した部分のそれぞれに貼り付けた。電極端子突起部形成用部材は、電極部形成原料を用いて、ハニカム成形体の電極部形成原料を塗布した部分に貼り付けた。その後、「電極部形成原料が塗布され、電極端子突起部形成用部材が貼り付けられたハニカム成形体」を、脱脂し、焼成し、更に酸化処理してハニカム構造体を得た。脱脂の条件は、550℃で3時間とした。焼成の条件は、アルゴン雰囲気下で、1450℃、2時間とした。酸化処理の条件は、1300℃で1時間とした。
【0133】
得られたハニカム構造体の隔壁の平均細孔径(気孔径)は8.6μmであり、気孔率は45%であった。平均細孔径および気孔率は、水銀ポロシメータにより測定した値である。また、ハニカム構造体の、隔壁の厚さは101.6μmであり、セル密度は93セル/cmであった。また、ハニカム構造体の底面は直径93mmの円形であり、ハニカム構造体のセルの延びる方向における長さは100mmであった。また、基準線と各電極部とが重なる点数は、2点であった。また、ハニカム構造体の、2つの電極部の、セルの延びる方向に直交する断面における中心角の0.5倍は、35°であった。また、電極部の厚さは、0.25mmであった。また、角度βは180°であった。また、電極部の電気抵抗率は、2.8Ωcmであり、ハニカム構造部の電気抵抗率は、40Ωcmであり、電極端子突起部の電気抵抗率は、0.8Ωcmであった。また、電極部は、ハニカム構造部の一方の端面から他方の端面に亘って形成されていた。
【0134】
なお、ハニカム構造部、電極部及び電極端子突起部の電気抵抗率は、以下の方法で測定した。測定対象と同じ材質で10mm×10mm×50mmの試験片を作成した。具体的には、ハニカム構造部の電気抵抗率を測定する場合にはハニカム構造部と同じ材質で試験片を作製した。電極部の電気抵抗率を測定する場合には電極部と同じ材質で試験片を作製した。そして、電極端子突起部の電気抵抗率を測定する場合には電極端子突起部と同じ材質で試験片を作製した。その後、試験片の両端部全面に銀ペーストを塗布し、配線して通電できるようにした。試験片に電圧印加電流測定装置をつなぎ、印加した。試験片中央部に熱伝対を設置し、電圧印加時の試験片温度の経時変化をレコーダーにて確認した。100〜200V印加し、試験片温度が400℃の状態における電流値及び電圧値を測定し、得られた電流値及び電圧値、並びに試験片寸法から電気抵抗率を算出した。
【0135】
得られたハニカム構造体について、以下の方法で、「耐熱衝撃性」及び「最高温度」の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0136】
[耐熱衝撃性]
まず、プロパンガスバーナー試験機を用いて、950℃で10分間加熱し、その後、雰囲気温度100℃で10分間放置することを1サイクルとする加熱冷却処理を100サイクル行った。その後、ハニカム構造体を観察し、クラックの有無を確認した。表1中、クラックが確認されなかった場合には「クラック無し」と示し、クラックが確認された場合には「クラック有」と示した。
【0137】
[最高温度(℃)]
得られたハニカム構造体に200Vの電圧を印加したときの、ハニカム構造部の「セルの延びる方向に直交する断面における、電極部の端部(周方向の端部)が接する位置と、電極部の周方向の中央点が接する位置」の温度を測定した。そして、測定された最も高い温度を最高温度とした。ハニカム構造部における、電極部の端部(周方向の端部)が接する位置か、電極部の周方向の中央点が接する位置のいずれかが、最も電流が流れる位置である。そして、ハニカム構造体において最も高い温度となる部分である。
【0138】
本実施例のハニカム構造体において、[耐熱衝撃性]の評価結果は「クラック無し」であり、[最高温度(℃)]の評価結果は「126℃」であった。評価結果を表1に示す。なお、表1中、「セル形状」とは、セルの延びる方向に直交する断面におけるセルの形状のことである。「六角」は上記セルの形状が六角形であることを示す。「四角」は上記セルの形状が四角形であることを示す。
【0139】
【表1】
【0140】
(実施例2〜22、参考例23及び比較例1〜4)
ハニカム構造体について、「セル形状」、「基準線と各電極部とが重なる点数(点)」、「電極部の中心角の0.5倍(°)」、「電極部厚さ」、「電極部の電気抵抗率(Ωcm)」及び「ハニカム構造部の電気抵抗率(Ωcm)」を、表1に示すように変えた。このようにしたこと以外は、実施例1と同様にしてハニカム構造体を作製した。
【0141】
得られたハニカム構造体について、実施例1と同様の方法で、「耐熱衝撃性」及び「最高温度(℃)」の評価を行った。評価結果を表1に示す。
【0142】
表1から明らかなように、実施例1〜22、参考例23のハニカム構造体は、電圧を印加することによりヒーターとしても機能することが確認できた。また、実施例1〜22、参考例23のハニカム構造体は、比較例1〜4のハニカム構造体に比べて、耐熱衝撃性に優れることが確認できた。また、実施例1〜22、参考例23のハニカム構造体は、触媒担体として用いることができるものである。
【0143】
実施例1,2は、電極部の中心角αの0.5倍が30〜55°である。そのため、実施例1,2は、実施例3,4に比べて耐熱衝撃性に優れかつ最高温度が低く、ハニカム構造体内の温度分布が良好であることが確認できた。
【産業上の利用可能性】
【0144】
本発明のハニカム構造体は、自動車の排ガスを浄化する排ガス浄化装置用の触媒担体として好適に利用することができる。
【符号の説明】
【0145】
1:隔壁、2:セル、3:外周壁、4:ハニカム構造部、4a:一方の端部、4b:他方の端部、5:側面、11:一方の端面、12:他方の端面、13:線分(対角線)、15a,15b:頂点、21:電極部、21a:電極部の一方の端部、21b:電極部の他方の端部、21X:中央部、21Y:拡張部、22:電極端子突起部、22a:基板、22b:突起部、23:導電体、100,101,102,103,200,300:ハニカム構造体、O:中心、L:基準線、X:交点、α:中心角、θ:中心角の0.5倍の角度。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
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図10
図11
図12