特許第5902707号(P5902707)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902707
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】電気浄化装置用セルスタックの作製方法
(51)【国際特許分類】
   C02F 1/469 20060101AFI20160331BHJP
   B01D 61/42 20060101ALI20160331BHJP
   B01D 63/00 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   C02F1/46 103
   B01D61/42
   B01D63/00 510
【請求項の数】20
【全頁数】38
(21)【出願番号】特願2013-538919(P2013-538919)
(86)(22)【出願日】2011年11月11日
(65)【公表番号】特表2013-543792(P2013-543792A)
(43)【公表日】2013年12月9日
(86)【国際出願番号】US2011060290
(87)【国際公開番号】WO2012065017
(87)【国際公開日】20120518
【審査請求日】2014年8月28日
(31)【優先権主張番号】61/510,157
(32)【優先日】2011年7月21日
(33)【優先権主張国】US
(31)【優先権主張番号】61/413,021
(32)【優先日】2010年11月12日
(33)【優先権主張国】US
(73)【特許権者】
【識別番号】514152381
【氏名又は名称】エヴォクア ウォーター テクノロジーズ ピーティーイー リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100147485
【弁理士】
【氏名又は名称】杉村 憲司
(72)【発明者】
【氏名】リー−シァン リァン
(72)【発明者】
【氏名】ジョゼフ ディー. ギフォード
(72)【発明者】
【氏名】ジョン ケイ. チャン
(72)【発明者】
【氏名】ローレンス ジェイ. サルヴォ
【審査官】 手島 理
(56)【参考文献】
【文献】 国際公開第2009/077992(WO,A1)
【文献】 特表平08−504124(JP,A)
【文献】 米国特許第5292422(US,A)
【文献】 特公昭39−004605(JP,B1)
【文献】 特開2009−220060(JP,A)
【文献】 特開2003−024947(JP,A)
【文献】 特開平02−122814(JP,A)
【文献】 特開2004−034004(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C02F 1/46−1/48
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電気浄化装置用の第1のセルスタックの作製方法であって、
第1の流体フロー経路を含む第1の区画室を形成するために、第1のカチオン交換膜および第1のアニオン交換膜の周縁部の第1の部分において前記第1のアニオン交換膜を前記第1のカチオン交換膜に固定するステップと、
前記第1の流体フロー経路とは異なる方向の第2の流体フロー経路を含む第2の区画室を形成するために、前記第1のカチオン交換膜の周縁部の第2の部分および第2のアニオン交換膜の周縁部の第1の部分において前記第2のアニオン交換膜を前記第1のカチオン交換膜に固定するステップと、
を含み、
前記第1の区画室および前記第2の区画室がそれぞれ、前記第1のカチオン交換膜、前記第1のアニオン交換膜および第2のカチオン交換膜の各表面積の85%超の流体接触を提供するように構成されかつ配置されている、ことを特徴とする方法。
【請求項2】
前記第1のアニオン交換膜と前記第1のカチオン交換膜との間に第1のスペーサを設けるステップと、
前記第2のアニオン交換膜と前記第1のカチオン交換膜との間に第2のスペーサを設けるステップと、
をさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記第1のスペーサおよび前記第2のスペーサの少なくとも一方が遮断スペーサである、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
前記第1の区画室および前記第2の区画室の少なくとも一方がフロー再分配器を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記第1のアニオン交換膜の周縁部の第1の部分が、前記第1のカチオン交換膜の周縁部の第1の部分と連結するように構成されかつ配置されている、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記第1のセルスタックをケーシング内に固定するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
第2のセルスタックを前記ケーシング内に固定するステップをさらに含む、請求項6に記載の方法。
【請求項8】
前記第1のセルスタックと前記第2のセルスタックとの間に遮断スペーサを配置するステップをさらに含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記第1の流体フロー経路が前記第2の流体フロー経路に対して垂直である、請求項1に記載の方法。
【請求項10】
電気浄化装置用のセルスタックの作製方法であって、
第1のカチオン交換膜と第1のアニオン交換膜との間に配設された第1のスペーサを有する第1のスペーサアセンブリを得るために、前記第1のアニオン交換膜および前記第1のカチオン交換膜の周縁部の第1の部分において前記第1のカチオン交換膜を前記第1のアニオン交換膜に固定することにより第1の区画室を形成するステップと、
第2のアニオン交換膜と第2のカチオン交換膜との間に配設された第2のスペーサを有する第2のスペーサアセンブリを得るために、前記第2のアニオン交換膜および前記第2のカチオン交換膜の周縁部の第1の部分において前記第2のアニオン交換膜を前記第2のカチオン交換膜に固定することにより第2の区画室を形成するステップと、
前記第1のスペーサアセンブリと前記第2のスペーサアセンブリとの間に配設されたスペーサを有するスタックアセンブリを得るために、前記第1のカチオン交換膜の周縁部の第2の部分および前記第2のアニオン交換膜の周縁部の部分において前記第1のスペーサアセンブリを前記第2のスペーサアセンブリに固定することにより第3の区画室を形成するステップと、
を含み、
前記第1の区画室および前記第2の区画室がそれぞれ、前記第3の区画室における流体フローとは異なる方向の流体フローの方向を形成するように構成されかつ配置され、前記第2の区画室における前記流体フローが、前記第1の区画室における前記流体フローと異なる方向に延びる、ことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記セルスタックをケーシング内に固定するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
第1のモジュール式ユニットを得るために、流入口マニホルドおよび流出口マニホルドを備えたフレーム内に前記セルスタックを固定するステップをさらに含む、請求項10に記載の方法。
【請求項13】
前記第1のモジュール式ユニットをケーシング内に固定するステップをさらに含む、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
前記モジュール式ユニットをブラケットアセンブリにより前記ケーシングに固定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
第2のモジュール式ユニットを前記ケーシング内に固定するステップをさらに含む、請求項13に記載の方法。
【請求項16】
前記第1のモジュール式ユニットと前記第2のモジュール式ユニットとの間に遮断スペーサを配置するステップをさらに含む、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記第1のスペーサ、前記第2のスペーサおよび前記第3のスペーサのうちの少なくとも1つが遮断スペーサである、請求項10に記載の方法。
【請求項18】
前記第1の区画室、前記第2の区画室および前記第3の区画室のうちの少なくとも1つがフロー再分配器を含む、請求項10に記載の方法。
【請求項19】
前記第1のアニオン交換膜の周縁部の第1の部分が、前記第1のカチオン交換膜の周縁部の第1の部分と連結するように構成されかつ配置されている、請求項10に記載の方法。
【請求項20】
前記第1の区画室における流体フローの方向が前記第2の区画室における流体フローの方向に対して垂直である、請求項10に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮特許出願第61/413,021号(「クロスフロー型電気化学脱イオン化装置およびその製造方法」、2010年11月12日出願)および米国仮特許出願第61/510,157号(「モジュール式クロスフロー型電気透析装置およびその製造方法」、2011年7月21日出願)に対して、米国特許法第119条(e)の下での優先権を主張するものであり、それぞれの全開示内容は本明細書中に参照により引用される。
【背景技術】
【0002】
本発明は、水処理システムおよび方法ならびに水処理システムまたは装置の製造方法に関する。本発明は特に、電気浄化装置を用いた水処理システムおよび方法、ならびに水処理用電気浄化装置の製造方法に関する。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明の1つ以上の態様は、電気浄化装置用の第1のセルスタックを作製する方法に関する。この方法は、第1の流体フロー経路を含む第1の区画室を形成するために、第1のカチオン交換膜および第1のアニオン交換膜の周縁部の第1の部分において上記第1のアニオン交換膜を上記第1のカチオン交換膜に固定するステップを含む。また、この方法は、上記第1の流体フロー経路とは異なる方向の第2の流体フロー経路を含む第2の区画室を形成するために、上記第1のカチオン交換膜の周縁部の第2の部分および第2のアニオン交換膜の周縁部の第1の部分において上記第2のアニオン交換膜を上記第1のカチオン交換膜に固定するステップを含む。上記第1の区画室および上記第2の区画室はそれぞれ、上記第1のカチオン交換膜、上記第1のアニオン交換膜および上記第2のカチオン交換膜の各表面積の85%超の流体接触を提供するように構成されかつ配置されている。
【0004】
本発明の別の態様は、電気浄化装置用のセルスタックを作製する方法に関する。この方法は、上記第1のカチオン交換膜と上記第1のアニオン交換膜との間に配設された第1のスペーサを有する第1のスペーサアセンブリを得るために、第1のアニオン交換膜および第1のカチオン交換膜の周縁部の第1の部分において上記第1のカチオン交換膜を上記第1のアニオン交換膜に固定することにより第1の区画室を形成するステップを含む。また、この方法は、上記第2のアニオン交換膜と上記第2のカチオン交換膜との間に配設された第2のスペーサを有する第2のスペーサアセンブリを得るために、第2のアニオン交換膜および第2のカチオン交換膜の周縁部の第1の部分において上記第2のアニオン交換膜を上記第2のカチオン交換膜に固定することにより第2の区画室を形成するステップを含む。さらに、この方法は、上記第1のスペーサアセンブリと上記第2のスペーサアセンブリとの間に配設されたスペーサを有するスタックアセンブリを得るために、上記第1のカチオン交換膜の周縁部の第2の部分および上記第2のアニオン交換膜の周縁部の部分において上記第1のスペーサアセンブリを上記第2のスペーサアセンブリに固定することにより第3の区画室を形成するステップを含む。上記第1の区画室および上記第2の区画室はそれぞれ、上記第3の区画室における流体フローとは異なる方向の流体フローの方向を形成するように構成されかつ配置されている。
【0005】
本発明のさらに別の態様は、セルスタックを備えた電気浄化装置を提供する。このセルスタックは、第1のカチオン交換膜および第1のアニオン交換膜を含む第1の区画室を備えている。第1の区画室は、第1のカチオン交換膜と第1のアニオン交換膜との間に第1の方向の直線的な流体フローを形成するように構成されかつ配置されている。また、このセルスタックは、第1のアニオン交換膜および第2のカチオン交換膜を含む第2の区画室を備え、第1のアニオン交換膜と第2のカチオン交換膜との間に第2の方向の直線的な流体フローを形成するように構成されかつ配置されている。上記第1および第2の区画室はそれぞれ、上記第1のカチオン交換膜、第1のアニオン交換膜および第2のカチオン交換膜の各表面積の85%を超える流体接触を提供するように構成されかつ配置されている。
【0006】
本発明のさらに別の態様は、電気浄化装置用のセルスタックに関する。このセルスタックは、交互に配置された複数のイオン除去室およびイオン濃縮室を備えている。各イオン除去室は、第1の方向の希釈流体フローを形成する流入口および流出口を有している。各イオン濃縮室は、第1の方向とは異なる第2の方向の濃縮流体フローを形成する流入口および流出口を有している。また、このセルスタックは、当該セルスタック内に配置された遮断スペーサを備えている。遮断スペーサは、セルスタックを介した希釈流体フローおよび濃縮流体フローの少なくとも1つの方向を変えるように構成されかつ配置されている。
【0007】
本発明のさらに別の態様は、電気浄化装置に関する。この電気浄化装置は、交互に配置されたイオン希釈室およびイオン濃縮室を備えたセルスタックを具備する。各イオン希釈室は、第1の方向の流体フローを形成するように構成されかつ配置されている。各イオン濃縮室は、第1の方向とは異なる第2の方向の流体フローを形成するように構成されかつ配置されている。この電気浄化装置は、セルスタックの第1の端部に、アニオン交換膜に隣接する第1の電極を備えている。また、この電気浄化装置は、セルスタックの第2の端部に、カソードイオン交換膜に隣接する第2の電極を備えている。さらに、セルスタック内に遮断スペーサが配置され、電気浄化装置中の希釈流体フローおよび濃縮流体フローの少なくとも1つの方向を変えるように構成されかつ配置されているとともに、第1の電極と第2の電極との間に直線的な電流路が形成されることを防止するように構成されかつ配置されている。
【0008】
本発明のさらに別の態様は、飲料水を供給する方法を提供する。この方法は、セルスタックを備えた電気浄化装置を提供するステップを含んでいる。セルスタックは、交互に配置されたイオン希釈室およびイオン濃縮室を備えている。各イオン希釈室は、第1の方向の流体フローを形成するように構成されかつ配置されている。各イオン濃縮室は、第1の方向とは異なる第2の方向の流体フローを形成するように構成されかつ配置されている。各イオン濃縮室およびイオン希釈室は、交互配置されたイオン希釈室およびイオン除去室の各表面積の85%を超える流体接触を提供するように構成されかつ配置されている。また、この方法は、約35,000ppmの総溶解固形分を含む海水供給水を電気浄化装置の流入口に流体接続するステップを含んでいる。さらに、この方法は、電気浄化装置の流出口を飲料の使用場所に流体接続するステップを含んでいる。
【0009】
添付の図面は、正確な縮尺率で描いたものではない。図面中、複数の図に示される同一または略同一の各構成要素には、同じ符号を付している。また、明瞭化のため、図面によっては、一部の構成要素に符号を付していない場合もある。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】本発明の1つ以上の実施形態に係る、電気浄化装置の一部を示した図である。
図2】本発明の1つ以上の実施形態に係る、電気浄化装置の一部を示した図である。
図3】本発明の1つ以上の実施形態に係る、電気浄化装置の一部を示した図である。
図4】本発明の1つ以上の実施形態に係る、電気浄化装置の一部を示した図である。
図5】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に配置された膜セルスタックを具備する電気脱イオン化装置の一部を示した側面図である。
図6】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に配置された膜セルスタックを具備する電気脱イオン化装置の一部を示した側面図である。
図7】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に配置された膜セルスタックを具備する電気脱イオン化装置の一部を示した側面図である。
図8】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に膜セルスタックを固定する方法を示した図である。
図9】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に膜セルスタックを固定する方法を示した図である。
図10】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に膜セルスタックを固定する方法を示した図である。
図11】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に膜セルスタックを固定する方法を示した図である。
図12】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に膜セルスタックを固定する方法を示した図である。
図13】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に膜セルスタックを固定する方法を示した図である。
図14】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に膜セルスタックを固定する方法を示した図である。
図15】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に膜セルスタックを固定する方法を示した図である。
図16】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に膜セルスタックを固定する方法を示した図である。
図17】本発明の1つ以上の実施形態に係る、マルチパス型電気浄化装置を示した図である。
図18】本発明の1つ以上の実施形態に係る、遮断スペーサを示した図である。
図19】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサアセンブリおよびその間に配置された遮断スペーサを示した図である。
図20】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に配置されたセルスタックを具備する電気浄化装置の一部を示した図である。
図21】本発明の1つ以上の実施形態に係る、遮断スペーサを示した図である。
図22】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に配置されたセルスタックを具備する電気浄化装置の一部を示した図である。
図23A】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に配置されたセルスタックを具備する電気浄化装置の一部を示した図である。
図23B】本発明の1つ以上の実施形態に係る、ケーシング内に配置されたセルスタックを具備する電気浄化装置の一部を示した図である。
図24】本発明の1つ以上の実施形態に係る、第1のモジュール式ユニット、第2のモジュール式ユニットおよびその間に配置された遮断スペーサを具備する電気浄化装置の一部を示した図である。
図25】本発明の1つ以上の実施形態に係る、遮断スペーサを示した図である。
図26】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサアセンブリを示した図である。
図27】本発明の1つ以上の実施形態に係る、セルスタックを示した図である。
図28】本発明の1つ以上の実施形態に係る、セルスタックを示した図である。
図29】本発明の1つ以上の実施形態に係る、セルスタックを示した図である。
図30】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサを示した図である。
図31】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサおよび膜から成るセルスタックを示した分解図である。
図32】本発明の1つ以上の実施形態に係る、部分的に組み立てられたセルスタックを示した断面詳細図である。
図33】本発明の1つ以上の実施形態に係る、組み立てられたスタックの一部を示した図である。
図34】本発明の1つ以上の実施形態に係る、オーバーモールドしたスペーサを示した図である。
図35】本発明の1つ以上の実施形態に係る、セルスタックを示した断面図である。
図36】本発明の1つ以上の実施形態に係る、セルスタックを示した断面図である。
図37】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサを示した上面図である。
図38】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサを示した詳細図であって、BはAのB−B矢視断面図である。
図39】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサおよび膜から成るスタックを示した図である。
図40】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサおよび膜から成るスタックを示した図である。
図41】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサおよび膜から成るスタックを示した図である。
図42】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサおよび膜から成るスタックを示した図である。
図43】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサおよび膜から成るスタックを示した図である。
図44】本発明の1つ以上の実施形態に係る、スペーサおよび膜から成るスタックを示した図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
少なくとも一部の図面においては、特定の構成および形状の膜、スペーサ、セルスタックおよびケーシングを示している。しかし、本発明は、これら特定の構成および形状には限定されない。たとえば、ケーシングは、1つ以上の膜セルスタックまたはモジュール式ユニットを内部に固定できるものであれば、任意の適当な形状を有していてもよい。たとえば、ケーシングは、円筒形、多角形、正方形または矩形のいずれであってもよい。膜セルスタックおよびモジュール式ユニットに関しては、ケーシング内に固定できるものであれば、任意の適当な形状が可能である。たとえば、膜またはスペーサは、矩形状であってもよい。特定の実施形態においては、ケーシングが不要であってもよい。膜およびスペーサは、セルスタック内に固定できるものであれば、任意の適当な形状を有していてもよい。特定の実施形態においては、セルスタックが特定数の隅部または頂点を有することが望ましい場合がある。たとえば、3つ以上の隅部または頂点がセルスタックをケーシングに固定するため好ましい場合がある。特定の実施形態において、ケーシング、セルスタック、膜およびスペーサの任意の形状は、電気浄化装置の動作パラメータに適合するように選択可能である。たとえば、スペーサは、希釈流と濃縮流との間のフロー速度に適合するように非対称であってもよい。
【0012】
溶解イオン種を含む水やその他の液体の処理には、電界により流体を浄化する装置が一般的に使用される。この種の水処理装置としては、電気脱イオン化装置および電気透析装置の2種類がある。
【0013】
電気脱イオン化(EDI)は、電気的活性媒体および電位によって水から1つ以上のイオン化種またはイオン性種を除去または少なくとも減少させることによって、イオン輸送に影響を及ぼすプロセスである。電気的に活性の媒体は通常、イオン化種および/またはイオン性種の収集と放出を交互に繰り返し、場合によっては、イオンの輸送を促進し、イオンまたは電子の置換メカニズムによって持続可能である。EDI装置は、たとえば、永久にまたは一時的に荷電した電気化学的活性媒体を含み、バッチ的、断続的、連続的に、および/または極性反転モードで動作する。また、EDI装置は、たとえば、特に性能の実現または向上を意図した1つ以上の電気化学反応を促進するように動作する。さらに、そのような電気化学装置は、たとえば、半透過性または選択透過性イオン交換膜もしくは両極性膜等の電気活性膜を備えている。連続電気脱イオン化(CEDI)装置は、当業者に周知の通り、イオン交換材料を連続的に再荷電しつつ、水浄化が連続的に進行可能なように動作するEDI装置である。CEDI技術には、たとえば、連続脱イオン化、充填セル電気透析または電気透析等のプロセスを含まれる。CEDIシステムにおいては、電圧と塩分濃度を制御した条件下で、水分子が分解されて水素イオン(または種)またはヒドロニウムイオン(または種)と、水酸化物イオン(または種)またはヒドロキシルイオン(または種)とが生成され、これらによって、装置中でイオン交換媒体が再生され、捕捉されたイオン種の放出が促進される。このように、イオン交換樹脂の化学的再荷電を必要とせずに、処理対象の水流を連続的に浄化可能である。
【0014】
電気透析(ED)装置は、CEDIと同様の原理で動作するが、通常は膜間に電気活性媒体を含まない点が異なる。電気活性媒体を含まないことから、低塩分濃度の供給水については、電気抵抗の上昇によりEDの動作が妨げられる場合がある。また、高塩分濃度の供給水についてはED動作の消費電流が増大することから、ED装置は従来、中間的な塩分濃度の水源に使用するのが最も効果的であった。EDを用いたシステムでは、電気活性媒体を含まないことから、水分子の分解は非効率的であり、通常はそのような形態で動作しないようになっている。
【0015】
CEDI装置およびED装置においては通常、正または負の荷電種(通常はいずれか一方)が通過可能な選択透過膜によって、複数の隣接セルまたは区画室が分離されている。通常、そのような装置では、希釈室または除去室の間には濃縮室が設けられている。水が除去室を流れるとき、電界たとえばDC電界の影響により、通常、イオン種およびその他の荷電種が濃縮室に引き込まれる。正の荷電イオン種は、通常は複数の除去室および濃縮室スタックの一端に配置されたカソード側に引っ張られる。同様に、負の荷電イオン種は、通常は区画室スタックの他端に配置された、かかる装置のアノード側に引っ張られる。電極は通常、除去室および/または濃縮室との流体連通から部分的に隔離された電解質区画室内に収容されている。濃縮室では通常、当該区画室の少なくとも一部を画定する選択透過膜の障壁により荷電種が捕捉される。たとえば、アニオンは通常、カチオン選択膜によって、濃縮室からさらにカソード側へ移動することが阻止される。濃縮室で捕捉された荷電種は、濃縮流中に除去される。
【0016】
CEDI装置およびED装置においては通常、電圧源からDC電界が各セルに印加され、電流が各電極(アノードすなわち陽極およびカソードすなわち陰極)に印加される。電圧源および電流源(「電源」と総称)は、AC電源や太陽光、風力または波力から得られる電源等の様々な手段によって駆動される。電極/液体界面では、電気化学半電池反応が起こって、上記膜および区画室を通過するイオンの移動を開始および/または促進する。電極/界面で発生するこの特定の電気化学反応は、電極アセンブリを収容する専用区画室の塩分濃度によって、ある程度は制御可能である。たとえば、アノードの電解質区画室に塩化ナトリウム濃度の高い水を供給すると、塩素ガスおよび水素イオンが発生しやすくなる。一方、カソードの電解質区画室に供給すると、水素ガスおよび水酸化物イオンが発生しやすくなる。一般的に、アノード室で発生した水素イオンは、塩化物イオン等の遊離アニオンと会合して、電荷中性が維持されるとともに塩酸溶液が生成される。同様に、カソード室で発生した水酸化物イオンは、ナトリウム等の遊離カチオンと会合して、電荷中性が維持されるとともに水酸化ナトリウム溶液が生成される。発生した塩素ガスや水酸化ナトリウム等の電極区画室内の反応生成物は、必要に応じて、殺菌、膜洗浄および付着物除去ならびにpH調整のために、プロセスにおいて利用可能である。
【0017】
従来、電気透析(ED)装置および電気脱イオン化(EDI)装置等の電気化学脱イオン化装置、あるいはこれらに限らず、その他の種々電気化学脱イオン化装置においては、板枠式設計および渦巻き式設計が用いられてきた。市販のED装置は通常、板枠式設計である。一方、EDI装置には、板枠式構成および渦巻き式構成の両者を用いることができる。
【0018】
本発明は、ケーシング内に含まれる流体を電気的に浄化可能な装置ならびにその製造方法および使用方法に関する。浄化対象の液体または他の流体は、浄化機器または装置に入れられ、電界の影響下で処理されてイオン除去液体が生成される。流入液体のイオン種が収集されてイオン濃縮液体が生成される。電気浄化装置(電気化学分離システムまたは電気化学分離装置とも称する)の構成要素は、様々な技術を用いて組み立てることにより、装置の最適な動作を実現することができる。
【0019】
本発明の一部の実施形態では、イオン交換膜および(場合により)スペーサを固定または結合して、電気浄化装置用の膜セルスタックを製造する方法が提供される。この方法は、クロスフロー型電気透析(ED)装置等の電気浄化装置での使用のための、複数のアニオン交換膜およびカチオン交換膜を固定するステップを提供することができる。
【0020】
本発明の特定の実施形態は、電気浄化装置用の第1のセルスタックを作製する方法を提供する。この方法は、第1のイオン交換膜を第2のイオン交換膜に固定するステップを含む。また、第1のイオン交換膜と第2のイオン交換膜との間にスペーサを配置して、スペーサアセンブリを形成する。このスペーサアセンブリは、電気浄化装置での使用に際して、流体フローを可能にする第1の区画室を画定する。また、複数のイオン交換膜を互いに固定して、一連の区画室を形成する。特定の実施形態においては、複数のスペーサアセンブリを構成するとともに、互いに固定するようにしてもよい。さらに、各スペーサアセンブリ間にスペーサを配置するようにしてもよい。このようにして、電気浄化装置用の一連の区画室を構成し、各区画室において1つ以上の方向の流体フローを可能にする。
【0021】
上記区画室内に配置可能なスペーサは、区画室を画定する構造を提供するとともに、特定の実施例においては、区画室を介した流体フローの方向付けを補助しうる。これらスペーサは、区画室内における所望の構造および流体フローを実現するポリマー材料またはその他の材料で構成可能である。また、特定の実施形態において、スペーサは、区画室内における流体フローの方向変更または再分配を行うように構成されかつ配置されていてもよい。一部の実施例において、スペーサは、メッシュ状材料またはスクリーン材料を含む構造により、区画室を通る所望の流体フローを実現してもよい。
【0022】
1つ以上の実施形態によれば、電気化学分離システムの効率を向上可能である。非効率性の潜在的な原因として、電流損失が挙げられる。たとえばクロスフロー型設計を含む一部の実施形態においては、潜在的な電流リークに対処することができる。電流効率は、希釈流中から濃縮流中へのイオンの移動に有効な電流の割合として定義することができる。電気化学分離システムまたは電気浄化装置においては、電流の非効率性の原因が種々存在しうる。非効率性の潜在的な原因としては、電流が希釈用および濃縮用の流入口マニホルドおよび流出口マニホルドを介して流れることによって、セル対(隣接する濃縮室/希釈室の対)を迂回することが挙げられる。オープン型(open)流入口マニホルドおよび流出口マニホルドは、区画室と直接に流体連通しており、各フロー経路における圧力低下を抑えることができる。一方の電極から他方の電極に流れる電流の一部は、オープンな区画室を流れることにより、セル対のスタックを迂回しうる。迂回電流は電流効率を低下させ、エネルギー消費を増大させる。非効率性の別の潜在的な原因としては、イオン交換膜の不完全な選択透過性によって濃縮流から希釈流に流れ込むイオンが挙げられる。一部の実施形態においては、装置内の膜およびスクリーンの封止およびポッティングに関する技術によって、電流リークの抑制を促進できる。
【0023】
1つ以上の実施形態においては、スタックを通る迂回経路を操作して、セルスタックを通る直線的な経路に沿った電流フローを促進することにより、電流効率を向上させることができる。一部の実施形態において、電気化学分離装置または電気浄化装置は、1つ以上の迂回経路がセルスタックを通る直線的な経路よりも蛇行するように構成されかつ配置されていてもよい。少なくとも特定の実施形態において、電気化学分離装置または電気浄化装置は、1つ以上の迂回経路がセルスタックを通る直線的な経路よりも高い抵抗を示すように構成されかつ配置されていてもよい。モジュール式システムを含む一部の実施形態において、個々のモジュール式ユニットは、電流効率を向上させるように構成されかつ配置されていてもよい。モジュール式ユニットは、電流効率に寄与する電流迂回経路を提供するように構成されかつ配置されていてもよい。非限定的な実施形態において、モジュール式ユニットは、電流効率を向上させるように構成されかつ配置されたマニホルドシステムおよび/またはフロー分配システムを備えていてもよい。少なくとも一部の実施形態において、電気化学分離ユニットのセルスタックを囲むフレームは、所定の電流迂回経路を形成するように構成されかつ配置されていてもよい。一部の実施形態においては、電気化学分離装置内のマルチパス(pass)型フロー構成を発展させて、電流リークの抑制を促進するようにしてもよい。少なくとも一部の非限定的な実施形態においては、遮断膜または遮断スペーサをモジュール式ユニット間に挿入して、希釈流および/または濃縮流をマルチパス型フロー構成に導くことにより、電流効率を向上させることができる。一部の実施形態においては、少なくとも約60%の電流効率が実現可能である。別の実施形態においては、少なくとも約70%の電流効率が実現可能である。さらに別の実施形態においては、少なくとも約80%の電流効率が実現可能である。少なくとも一部の実施形態においては、少なくとも約85%の電流効率が実現可能である。
【0024】
スペーサは、流体フローおよび電流フローの少なくとも一つの方向を変えることにより電流効率を向上させるように構成されかつ配置されていてもよい。また、スペーサは、電気浄化装置内に複数の流体フロー段を形成するように構成されかつ配置されていてもよい。スペーサは、流体フローの方向を特定方向に変える中実部分を備えていてもよい。また、この中実部分は、たとえば、電流の方向も特定方向に変え、電気浄化装置におけるアノードとカソードとの間の直線的な経路の形成を妨げる。中実部分を備えたスペーサは、遮断スペーサとも称される。遮断スペーサは、セルスタック内に配置してもよいし、第1のセルスタックまたは第1のモジュール式ユニットと第2のセルスタックまたは第2のモジュール式ユニットとの間に配置してもよい。
【0025】
一部の実施形態において、互いに固定された複数のイオン交換膜は、カチオン交換膜とアニオン交換膜とが繰り返されて、一連のイオン希釈室およびイオン濃縮室を提供するようにしてもよい。
【0026】
上記膜は、セルスタック内に固定できるように、任意の適当な形状を有していてもよい。特定の実施形態においては、セルスタックが、ケーシング内に適切に固定されるような、特定数の隅部または頂点を有するのが望ましい場合がある。また、特定の実施形態において、特定の膜は、セルスタック中の他の膜と異なる形状を有していてもよい。膜の形状は、膜同士の固定、スペーサのセルスタック内での固定、膜のモジュール式ユニット内での固定、膜の支持構造内での固定、セルスタック等の膜群のケーシングへの固定およびモジュール式ユニットのケーシングへの固定のうちの少なくとも1つを補助するように選択することができる。
【0027】
膜、スペーサおよびスペーサアセンブリは、それぞれの端部または周縁部の一部において固定されていてもよい。周縁部の一部とは、膜、スペーサまたはスペーサアセンブリの連続した長さ部分または連続していない長さ部分であってよい。このように膜、スペーサまたはスペーサアセンブリを固定するように選択された周縁部の一部は、流体フローを所定方向に導く境界または辺縁を提供しうる。
【0028】
特定の実施形態において、セルスタックを作製する方法は、第1の流体フロー経路を含む第1の区画室を形成するために、第1のカチオン交換膜および第1のアニオン交換膜の周縁部の第1の部分において当該第1のアニオン交換膜を当該第1のカチオン交換膜に固定するステップを含む。また、この方法は、第1の流体フロー経路とは異なる方向の第2の流体フロー経路を含む第2の区画室を形成するために、第1のカチオン交換膜の周縁部の第2の部分および第2のアニオン交換膜の周縁部の第1の部分において当該第2のアニオン交換膜を当該第1のカチオン交換膜に固定するステップをさらに含む。
【0029】
第1および第2の流体フロー経路は、互いに固定されたイオン交換膜の周縁部の一部によって選択され、定められてもよい。第1の流体フロー経路を0°軸に沿って延びる方向とすると、第2の流体フロー経路は、たとえば、0°より大きく360°より小さい任意の角度の方向に延びる。本発明の特定の実施形態において、第2の流体フロー経路は、たとえば、第1の流体フロー経路に対して90°すなわち垂直に延びる。別の実施形態において、第2の流体フロー経路は、たとえば、第1の流体フロー経路に対して180°で延びる。別の実施形態において、第1の流体フロー経路は、たとえば、0°の方向に延びる。第2の流体フロー経路はたとえば60°、第3の流体フロー経路が120°の方向に延びる。第4の流体フロー経路は、たとえば0°の方向に延びる。
【0030】
セルスタックに付加的なイオン交換膜が固定されて付加的な区画室が設けられている場合、これら付加的な区画室内の流体フロー経路は、第1の流体フロー経路および第2の流体フロー経路と同じであってもよいし、異なっていてもよい。特定の実施形態において、各区画室内の流体フロー経路は、たとえば、第1の流体フロー経路と第2の流体フロー経路とが繰り返されている。たとえば、第1の区画室内の第1の流体フロー経路は、0°の方向に延びる。また、第2の区画室内の第2の流体フロー経路はたとえば90°の方向に延び、第3の区画室内の第3の流体フロー経路はたとえば0°の方向に延びる。特定の実施例において、第1の方向に延びる第1の流体フロー経路および第2の方向に延びる第2の流体フロー経路は、クロスフロー型電気浄化とも称される。
【0031】
別の実施形態において、各区画室の流体フロー経路は、たとえば、第1の流体フロー経路、第2の流体フロー経路および第3の流体フロー経路が順次繰り返される。たとえば、第1の区画室の第1の流体フロー経路は、0°の方向に延びる。また、第2の区画室の第2の流体フロー経路はたとえば30°の方向に延び、第3の区画室の第3の流体フロー経路はたとえば90°の方向に延びる。そして、第4の区画室の第4の流体フロー経路は、たとえば0°の方向に延びる。別の実施形態において、第1の区画室の第1の流体フロー経路は、たとえば0°の方向に延びる。また、第2の区画室の第2の流体フロー経路はたとえば60°の方向に延び、第3の区画室の第3の流体フロー経路はたとえば120°の方向に延びる。そして、第4の区画室の第4の流体フロー経路は、たとえば0°の方向に延びる。
【0032】
本発明の特定の実施形態においては、区画室内のフローの調整、再分配または方向変更を行うことにより、区画室内での流体と膜表面との接触を増大させることができる。区画室は、内部の流体フローを再分配するように構成されかつ配置されていてもよい。区画室は、内部を介したフローの再分配を行う構造としての障害物、突起、凸部、フランジまたはバッフルを有していてもよく、これについては、以下に詳述する。特定の実施形態においては、この障害物、突起、凸部、フランジまたはバッフルをフロー再分配器ということができる。
【0033】
電気浄化装置用のセルスタックの各区画室は、流体接触に関して、所定割合の表面積または膜利用率を提供するように構成されかつ配置されていてもよい。膜利用率が高いほど、電気浄化装置の動作効率が高くなることが分かっている。膜利用率を高める利点としては、エネルギー消費の低減、装置設置面積の縮小、装置通る経路の削減および精製水の高品質化等が挙げられる。特定の実施形態においては、実現可能な膜利用率は65%超である。別の実施形態においては、実現可能な膜利用率は75%超である。さらに、特定の実施形態においては、実現可能な膜利用率は85%超である。膜利用率は、少なくとも部分的に、膜を相互に固定する方法およびスペーサの設計によって決定可能である。所定の膜利用率を得るために、適当な固定技術および構成要素を選択して、信頼性ある確実な封止を実現することができる。これにより、プロセスに利用可能な膜の表面積を大きく保ちつつ、装置内のリークを伴わない、電気浄化装置の最適動作が可能となる。
【0034】
封止は、膜で画定された区画室内を通る所望の流体フロー経路が得られるように、膜間の嵌合を確実に行う任意の適当な手段によって実現することができる。たとえば、接着剤、レーザー溶接や超音波溶接等の熱結合もしくは隣接する膜および/またはスペーサ上の雌雄機構等による嵌合または連結により封止を実現することができる。特定の実施例においては、膜セルスタックを構築するため、複数のスペーサアセンブリを構築し、各スペーサアセンブリの周縁部の一部に接着剤を塗布して互いに結合または固定する。固定されたスペーサアセンブリ間に、スペーサが配置される。特定の実施例において、スペーサアセンブリは、各スペーサアセンブリの周縁部の一部において相互固定されることにより、少なくとも2つの流体フロー経路を有する複数の区画室を形成しうる。たとえば、スペーサアセンブリを相互固定して、第1の方向の流体フロー経路を有する第1の区画室および第2の方向の流体フロー経路を有する第2の区画室を提供することができる。また、接着剤の代わりに熱結合または機械的連結形状を用いて、区画室を形成するようにしてもよい。
【0035】
本発明の一部の実施形態において、電気浄化装置用のセルスタックを作製する方法は、区画室を形成するステップを含む。イオン交換膜を互いに固定して第1の区画室を形成することにより、イオン交換膜との間に配設された第1のスペーサを有する第1のスペーサアセンブリを提供することができる。たとえば、第1のカチオン交換膜および第1のアニオン交換膜の周縁部の第1の部分において当該第1のカチオン交換膜を当該第1のアニオン交換膜に固定することにより、第1のカチオン交換膜と第1のアニオン交換膜との間に配設された第1のスペーサを有する第1のスペーサアセンブリを提供することができる。
【0036】
また、イオン交換膜を互いに固定して第2の区画室を形成することにより、イオン交換膜の間に配設された第2のスペーサを有する第2のスペーサアセンブリを提供可能である。たとえば、第2のアニオン交換膜および第2のカチオン交換膜の周縁部の第1の部分において当該第2のアニオン交換膜を当該第2のカチオン交換膜に固定することにより、第2のアニオン交換膜と第2のカチオン交換膜との間に配設された第2のスペーサを有する第2のスペーサアセンブリを提供することができる。
【0037】
さらに、第1のスペーサアセンブリを第2のスペーサアセンブリに固定し、両者間にスペーサを配置することによって、第1の区画室と第2の区画室との間に第3の区画室を形成してもよい。たとえば、第1のカチオン交換膜の周縁部の第2の部分および第2のアニオン交換膜の周縁部の部分において第1のスペーサアセンブリを第2のスペーサアセンブリに固定することにより、第1のスペーサアセンブリと第2のスペーサアセンブリとの間に配設されたスペーサを有するスタックアセンブリを提供することができる。
【0038】
上記第1の区画室および第2の区画室はそれぞれ、第3の区画室における流体フローとは異なる方向の流体フローを提供するように構成されかつ配置されていてもよい。たとえば、第3の区画室における流体フローは、0°軸の方向である。また、第1の区画室における流体フローはたとえば30°の角度で、第2の区画室における流体フローはたとえば第1の区画室と同じ角度(30°)であり、120°等の別の角度であってもよい。別の実施例において、第1の区画室における流体フロー経路は、たとえば0°の方向に延びる。第3の区画室の流体フロー経路はたとえば60°の方向に延び、第2の区画室の流体フロー経路はたとえば120°の方向に延びる。そして、第4の区画室の流体フロー経路はたとえば0°の方向に延びる。
【0039】
上記の方法は、組み立てたセルスタックをケーシング内に固定するステップをさらに含んでいてもよい。
【0040】
1つ以上の実施形態によれば、電気化学分離システムまたは電気浄化装置は、モジュール式であってもよい。各モジュール式ユニットは一般的に、電気化学分離システム全体のサブブロックとして機能する。モジュール式ユニットは、任意の所望数のセル対を備えていてもよい。一部の実施形態において、モジュール式ユニット当たりのセル対の数は、分離装置中のセル対およびパスの総数によって決定可能である。また、クロスリークおよびその他の性能基準に関する試験において故障率が許容範囲となるフレームに熱結合およびポッティング可能なセル対の数によって決定されてもよい。この数は、製造プロセスの統計解析に基づいてよく、プロセス制御の改善とともに増やすことができる。一部の非限定的な実施形態において、モジュール式ユニットは、たとえば約50個のセル対を備える。また、モジュール式ユニットは、個別に組み立てて、より大きなシステムへの組み込み前に、リーク、分離性能および圧力低下等の品質管理試験を行ってもよい。一部の実施形態においては、独立に試験可能なモジュール式ユニットとして、セルスタックをフレームに取り付けてもよい。そして、複数のモジュール式ユニットを一体に組み立てて、電気化学分離装置に所望数のセル対を設けることができる。一部の実施形態において、組み立て方法は一般的に、たとえば、第1のモジュール式ユニットを第2のモジュール式ユニット上に配置するステップと、第3のモジュール式ユニットを第1および第2のモジュール式ユニット上に配置するステップと、所望の複数のモジュール式ユニットの取得を繰り返すステップとを含む。一部の実施形態においては、組み立てた状態または個別のモジュール式ユニットを圧力容器に挿入して動作させてもよい。また、モジュール式ユニット間またはモジュール式ユニット内に遮断膜および/またはスペーサを配置することによって、マルチパス型フロー構成を実現してもよい。モジュール式の手法は、時間とコストの節約の観点で製造性を向上させうる。また、モジュール方式は、個別のモジュール式ユニットの診断、分離、除去および交換を可能とすることにより、システム保守を容易化しうる。個別のモジュール式ユニットは、電気化学分離プロセスを促進するマニホルドおよびフロー分配システムを備えてもよい。また、個別のモジュール式ユニットは、互いに流体連通するとともに、電気化学分離プロセス全体に関連する中心のマニホルドおよびその他のシステムと流体連通していてもよい。
【0041】
セルスタックは、流入口マニホルドおよび流出口マニホルドを備えたフレームまたは支持構造内に固定されて、モジュール式ユニットを形成していてもよい。このモジュール式ユニットは、その後、ケーシング内に固定されていてもよい。さらに、モジュール式ユニットは、該モジュール式ユニットのケーシングへの固定を可能とするブラケットアセンブリまたは隅部支持体を備えていてもよい。ケーシング内には、第2のモジュール式ユニットが固定されていてもよい。また、ケーシング内には、1つ以上の別のモジュール式ユニットが固定されていてもよい。本発明の特定の実施形態において、第1のモジュール式ユニットと第2のモジュール式ユニットとの間には、遮断スペーサが配置されていてもよい。
【0042】
セルスタックの1つ以上の区画室には、フロー再分配器が存在していてもよい。セルスタックの組み立てにおいては、セルスタック中のイオン交換膜の周縁部の第1の部分が隣接するイオン交換膜の周縁部の第1の部分と連結するように構成されかつ配置されていてもよい。特定の実施例においては、セルスタック中の第1のスペーサの周縁部の第1の部分が、隣接するスペーサの周縁部の第1の部分と連結するように構成されかつ配置されていてもよい。
【0043】
本発明の一部の実施形態は、セルスタックを備えた電気浄化装置を提供する。この電気浄化装置は、たとえば、イオン交換膜を含む第1の区画室を備え、イオン交換膜間に第1の方向の直線的な流体フローを提供するように構成されかつ配置されている。電気浄化装置は、たとえば、イオン交換膜を含む第2の区画室をさらに備え、第2の方向の直線的な流体フローを提供するように構成されかつ配置されている。第1および第2の区画室はそれぞれ、流体接触に関して所定割合の表面積または膜利用率を提供するように構成可能である。特定の実施形態においては、実現可能な膜利用率は65%超である。別の実施形態においては、実現可能な膜利用率は75%超である。さらに、特定の実施形態においては、実現可能な膜利用率は85%超である。膜利用率は、少なくとも部分的に、膜を相互に固定する方法およびスペーサの設計によって決定可能である。所定の膜利用率を得るため、適当な固定技術および構成要素を選択して、信頼性ある確実な封止を実現可能である。これにより、プロセスに利用可能な膜の表面積を大きく保ちつつ、装置内のリークを伴わない、電気浄化装置の最適動作が可能となる。
【0044】
たとえば、セルスタックを備えた電気浄化装置が提供される。電気浄化装置は、たとえば、第1のカチオン交換膜および第1のアニオン交換膜を含み、当該第1のカチオン交換膜と第1のアニオン交換膜との間に直線的な第1の方向の流体フローを提供するように構成されかつ配置された第1の区画室を備える。また、この装置は、たとえば、第1のアニオン交換膜および第2のカチオン交換膜を含み、当該第1のアニオン交換膜と第2のカチオン交換膜との間に第2の方向の直線的な流体フローを提供する第2の区画室を備える。第1および第2の区画室はそれぞれ、所定の膜利用率、たとえば第1のカチオン交換膜、第1のアニオン交換膜および第2のカチオン交換膜の表面積の85%より大きい流体接触を提供するように構成されかつ配置されている。第1および第2の区画室の少なくとも一方は、スペーサ、たとえば遮断スペーサを備えていてもよい。
【0045】
第1および第2の方向の直線的な流体フローは、各区画室の構成により選択され、形成可能である。流体フローの第1の方向を0°軸に沿って延びる方向とすると、流体フローの第2の方向は、たとえば0°より大きく360°より小さい任意の角度である。本発明の特定の実施形態において、流体フローの第2の方向は、たとえば流体フローの第1の方向に対して90°すなわち垂直である。別の実施形態において、流体フローの第2の方向は、たとえば流体フローの第1の方向に対して80°である。セルスタックに付加的なイオン交換膜が固定されて付加的な区画室が形成されている場合、これら付加的な区画室の流体フローの方向は、流体フローの第1の方向および流体フローの第2の方向と同じであってもよいし、異なっていてもよい。特定の実施形態において、各区画室の流体フローの方向は、流体フローの第1の方向と流体フローの第2の方向を繰り返す。たとえば、流体フローの第1の方向は、たとえば0°の方向である。また、流体フローの第2の方向はたとえば90°の方向であり、第3の区画室における流体フローの第3の方向はたとえば0°の方向である。
【0046】
セルスタックを備えた電気浄化装置は、セルスタックを取り囲むケーシングをさらに備え、当該セルスタックの周縁部の少なくとも一部が当該ケーシングに固定されていてもよい。ケーシングとセルスタックとの間にはフレームが配置され、ケーシング中に第1のモジュール式ユニットを提供していてもよい。また、セルスタックの1つ以上の区画室に、フロー再分配器が設けられていてもよい。少なくとも1つの区画室は、当該区画室内に逆流を生じさせていてもよい。
【0047】
本発明の一部の実施形態は、電気浄化装置用のセルスタックを提供する。このセルスタックは、交互に配置された複数のイオン除去室およびイオン濃縮室を形成可能である。各イオン除去室は、たとえば、第1の方向の希釈流体フローを与える流入口および流出口を有する。また、各イオン濃縮室は、たとえば、第1の方向とは異なる第2の方向の濃縮流体フローを与える流入口および流出口を有する。セルスタックには、スペーサを配置してもよい。このスペーサは、区画室を画定する構造を提供するとともに、特定の実施例においては、区画室を通る流体フローの方向変更を補助しうる。また、スペーサは、セルスタックを通る流体フローおよび電流フローの少なくとも一つの方向を変えるように構成されかつ配置された遮断スペーサであってもよい。上述の通り、遮断スペーサは、電気浄化装置における電流の非効率性を低減または防止しうる。
【0048】
本発明の一部の実施形態は、電気浄化装置を提供する。この装置は、たとえば、交互に配置されたイオン希釈室およびイオン濃縮室を含むセルスタックを備える。各イオン希釈室は、第1の方向の流体フローを形成するように構成されかつ配置されている。また、各イオン濃縮室は、第1の方向とは異なる第2の方向の流体フローを形成するように構成されかつ配置されている。電気浄化装置は、セルスタックの第1の端部において第1のイオン交換膜に隣接する第1の電極と、セルスタックの第2の端部において第2のイオン交換膜に隣接する第2の電極とを備えている。第1および第2のイオン交換膜はそれぞれ、アニオン交換膜またはカチオン交換膜である。たとえば、第1のイオン交換膜がアニオン交換膜であり、第2のイオン交換膜がカチオン交換膜である。さらに、この電気浄化装置は、セルスタックに配置された遮断スペーサであって、装置中の希釈流体フローおよび濃縮流体フローの少なくとも一つの方向を変えるように構成されかつ配置されるとともに、第1の電極と第2の電極間に直線的な電流経路が形成されることを防止するように構成されかつ配置された遮断スペーサを備えていてもよい。上述の通り、遮断スペーサは、電気浄化装置における電流の非効率性を低減するように構成されかつ配置されていてもよい。
【0049】
電気浄化装置用の上記セルスタックは、セルスタックの周縁部の少なくとも一部が固定されたケーシングに取り囲まれていてよい。ケーシングとセルスタックとの間にはフレームが配置され、ケーシング内に第1のモジュール式ユニットを提供する。また、ケーシング内には、第2のモジュール式ユニットが固定されていてもよい。さらに、第1のモジュール式ユニットと第2のモジュール式ユニットとの間には、遮断スペーサが配置されていてもよい。セルスタックの1つ以上の区画室内には、フロー再分配器が設けられていてもよい。少なくとも1つの区画室は、当該区画室内に逆流を生じさせるように構成されかつ配置されていてもよい。フレームとケーシング間には、ブラケットアセンブリが配置され、モジュール式ユニットを支持するとともに、モジュール式ユニットをケーシング内に固定するようになっていてもよい。
【0050】
本発明の特定の実施形態において、セルスタック中のスペーサまたはイオン交換膜の周縁部の一部は、所定材料で処理またはコーティングすることにより、接着剤等の固定材料およびセルスタックの構成要素との強力で堅牢な結合を提供するようにしてもよい。また、スペーサ、膜または両者に封止帯を設けて、接着剤の塗布の際に、アニオン交換膜およびカチオン交換膜等のイオン交換膜を結合可能な連続表面を提供するようにしてもよい。また、この封止帯は、膜の周縁部を支持するものであってもよい。封止帯は、接着剤のウェットスルーまたはウィッキングを防止または軽減し、これにより、スペーサおよび膜の一体化に用いる接着剤の量を低減可能である。使用する接着剤の量の低減により、封止帯は膜利用率向上に寄与しうる。特定の実施例において、封止帯は、射出成形、圧縮成形、コーティング等によりスペーサに貼り付けてもよい。
【0051】
図1は、カチオン交換膜100、スペーサ104およびアニオン交換膜102を備えたスペーサアセンブリ10を示している。スペーサ104は、スクリーンスペーサであってもよく、接着剤106を塗布可能なものであってよい。両膜には、接着剤または熱結合技術たとえばレーザー、振動もしくは超音波溶接により、2つの対向端部に沿って封止を施していてもよい。膜のサイドシームには、脂肪族、脂環式および芳香族アミン硬化剤を含有するエポキシおよびウレタン等の多様な接着剤を塗布可能である。これについては、以下に詳述する。接着剤を膜セルの接着ラインに塗布する際には、接着剤が主として当該所定の接着ラインに残るようにすると都合が良い。接着剤は、粘度が低過ぎると、接着ラインから流れたり滴ったりする場合がある。一方、粘度が高過ぎると、接着剤を拡げるのが難しくなる場合がある。
【0052】
スペーサがスクリーンの場合は、2枚の隣接する膜を結合する接着剤で被包してもよい。
【0053】
図2は、カチオン交換膜200、スペーサ204およびアニオン交換膜202を備えたスペーサアセンブリ20を示している。スペーサ204は、カチオン交換膜200とアニオン交換膜202とを分離し、区画室を画定するとともに、液体流が流入口側208から流出口側210に流れる際の混合と物質移動とを強めることができる。
【0054】
図3は、スペーサ304で分離された第1のスペーサアセンブリ30および第2のスペーサアセンブリ32を示している。これら2つのアセンブリは、たとえば、その内部にすでに封止された端部に垂直な2つの並行な端部に沿って塗布された接着剤306により一体的に結合されている。2つのアセンブリに挟まれたスペーサ304は、矢印で示すように、両アセンブリを通る流れと垂直な方向の第2の流れのフローチャネルを画定する。
【0055】
圧縮により得られる膜セルスタックを図4に示す。図示のように、第1のスペーサアセンブリ40および第2のスペーサアセンブリ42が互いに固定されており、2つのスペーサアセンブリの間にはスペーサ40が配置されている。図4の矢印で示すように、各スペーサアセンブリ40および42を通るフロー経路は第1の方向に延び、これら2つのスペーサアセンブリ間に画定された区画室を通るフロー経路は第2の方向に延びる。
【0056】
たとえば、第1の方向の流体フローは希釈流であり、第2の方向の流体フローは濃縮流である。特定の実施形態においては、印加電界を反転させて流れの作用を逆向きにする極性反転によって、第1の方向の流体フローを濃縮流に変え、第2の方向の流体フローを希釈流に変えることができる。
【0057】
スペーサで分離された複数のスペーサアセンブリを一体的に固定して、セル対のスタックまたは膜セルスタックを形成することができる。
【0058】
本発明の電気浄化装置は、セルスタックを取り囲むケーシングをさらに備えていてもよい。セルスタックの周縁部の少なくとも一部は、ケーシングに固定されていてもよい。ケーシングとセルスタックとの間にはフレームまたは支持構造が配置されて、セルスタックを別途支持するようにしてもよい。また、フレームは、セルスタックに対する液体の流入および流出を可能とする流入口マニホルドおよび流出口マニホルドを備えていてもよい。フレームとセルスタックとは一体的に、電気浄化装置のモジュール式ユニットを提供するものであってもよい。電気浄化装置は、ケーシング内に固定された第2のモジュール式ユニットをさらに備えていてもよい。第1のモジュール式ユニットと第2のモジュール式ユニットとの間には、スペーサたとえば遮断スペーサを配置してもよい。第2のモジュール式ユニットと連通した端部と反対の第1のモジュール式ユニットの端部に第1の電極を配置してもよい。また、第1のモジュール式ユニットと連通した端部と反対の第2のモジュール式ユニットの端部に第2の電極を配置してもよい。
【0059】
第1のモジュール式ユニット、第2のモジュール式ユニットまたは両者のフレームとケーシングとの間には、ブラケットアセンブリを配置してもよい。このブラケットアセンブリは、モジュール式ユニットを支持するとともに、ケーシングに固定的な取り付けを提供するようになっていてもよい。
【0060】
本発明の一実施形態において、電気浄化装置は、ケーシングまたは容器に膜セルスタックを配置して組み立ててもよい。また、セルスタックの各端部には、端板を設けてもよい。セルスタックの周縁部の少なくとも一部は、接着剤を塗布してケーシングの内壁に対する封止を施すようにしてもよい。
【0061】
図5は、ケーシング518に囲まれたセルスタック516の一実施形態を示している。端板512は、連結バー514と一体的に描画されている。連結バー514は、非金属製のスリーブによって流体フローから隔離されている。端板512が金属製の場合は、各端部においてセルスタック516と端板512との間に非金属製の端ブロック520を挿入してもよい。端ブロック520は、電極を支持するとともに、端板から液体流を隔離する。連結バーのスリーブの端部は、Oリングにより端ブロック520に対して封止されている。あるいは、端板520が非金属製の場合には、独立した端ブロックを不要とできる。図5に示すように、端板520は、たとえば、ボルトまたは螺子棒522およびナット524により取り付けられる。図6に示すように、端板620は、フランジ649により取り付けてもよい。図7に示すように、端板720は、Victaulic(登録商標)型クランプ等のクランプ728により取り付けてもよい。
【0062】
本発明の一部の実施形態において、連結バーは、ケーシングの外側に配置されていてもよい。本発明のその他一部の実施形態において、端板は、ケーシング端部において溝に挿入された分割リングまたはスナップリングによって、ケーシング内に固定されていてもよい。また、端板は、接着剤によりケーシングに結合されていてもよい。
【0063】
たとえば機械加工または鋳造により、金属製の端板を製造することができる。また、たとえば樹脂ブロックの機械加工または射出成形により、非金属製の端ブロックまたは端板を製造してもよい。
【0064】
スタックをケーシング内に配置して端ブロック/端板をケーシングに固定した後、接着剤を塗布して、スタックとケーシングとの封止を施すとともに、2つの流れ用の流入口マニホルドおよび流出口マニホルドを互いに隔離する。ケーシングは最初、長手軸を水平にして配置する。
【0065】
以下に詳述するように、ケーシング内に膜スタックを固定する接着特性は、膜を互いに固定してセルスタックを形成するための接着特性とは異なっていてもよい。膜スタックをケーシング内に固定するため、接着剤の粘度は低くする必要がある。混合接着剤に反応性希釈剤を添加すれば、許容される粘度が実現する。希釈剤の主要な機能は、粘度を低減して、混ぜ合わせを容易にするか、または、塗布特性を向上させることである。また、多孔性基板へのより深い浸透と無孔表面のぬれとを可能にする適当な接着剤を実現する上でも、低い粘度は重要となる。希釈剤としては、ジグリシジルエーテル、ジグリシジルフェニルジグリシジルエーテル等が挙げられる。
【0066】
膜セルの区画室は、約0.33〜0.46mmの厚さを有し、特定の実施例においては、ポッティングは気泡を含まない。セルスタックのケーシングへの固定に用いるポッティングのエラストマ(接着剤)は、膜の相互固定に用いるサイドシームより剛性でなければならない。これは、ポッティングが膜スタックの重量に耐えるだけの十分な機械的強度を有する必要があるためである。特定の実施形態においては、供給フロー圧力下でポッティングが変形しないことが望ましい。
【0067】
ケーシングは最初、長手軸を水平にして配置する。図8は、接着剤806を塗布してセルスタック816をケーシング818内に固定する一方法を示している。ケーシング818は、セルスタック816の周縁部(本実施形態では隅部830)が下となるように回転される。低粘度の接着剤806をケーシング818内に注入して、底部に溜める。セルスタック816の周縁部と一致する注入口を配置してもよく、該注入口はケーシング818に組み込まれて、接着剤806のケーシング818内への注入を容易化して、セルスタック816の隅部830とケーシング818との封止を施すことができる。接着剤806が固まった後、次の隅部が下となるまでケーシング818を90°回転させる。この接着プロセスを、セルスタック816の所望の周縁部がすべて封止または固定されるまで繰り返す。ケーシングとスタック周縁部との封止を向上させる表面処理には、たとえば、表面を乱して表面積を大きくすることにより接着結合を強化する技術を含まれる。たとえば、表面処理には、化学的、機械的、電気的または熱的表面処理およびそれらの組み合わせを含まれる。これには、たとえば化学エッチングや機械的粗面化等が含まれる。
【0068】
ケーシングは、たとえば押し出しにより製造して、セルスタックのケーシングへの固定を補助する形状を有するようにしてもよい。たとえば、セルスタックの周縁部を受ける所定領域に接着剤が含まれるように、1つ以上の谷部をケーシング内に形成してもよい。図9に示すように、接着剤906の貯留部となる扇形の谷部932を有するケーシング918を提供する。
【0069】
本発明の別の実施形態は、接着剤を塗布する方法において、接着剤のケーシング内への注入量を制御しつつケーシングを一方向に低速で回転させるステップを含む方法を提供する。接着剤は、たとえば、最下点に向かって連続的に流れ、一連の薄層を形成し、これが固まってケーシングの内壁周りの封止リングを形成する。リングの厚さは、接着剤を追加して厚くすることができる。
【0070】
本発明の別の実施形態は、接着剤を塗布する方法において、1つ以上の点における接着剤のケーシング内への注入量を制御しつつケーシングを一方向に高速で回転させるステップを含む方法を提供する。接着剤は、遠心力によりケーシングの内壁に押し付けられ、固まって封止リングを形成しうる。
【0071】
図10は、接着剤1006のケーシングへの注入量を制御しつつケーシング1018を一方向に回転させるステップを含む方法を提供する本発明の実施形態を示している。
【0072】
本発明の別の実施形態において、電気浄化装置は、金型を用いて接着剤によりセルスタックの周縁部の一部を封止することによって組み立ててもよい。セルスタックは、たとえば、ケーシングに挿入した後、セルスタックの各端部において端板により圧縮される。その後、たとえば、接着剤を塗布して、セルスタックの周縁部とケーシングの内壁との封止を施す。
【0073】
図11に示すように、セルスタックの周縁部(本例ではセルスタック1116の隅部1130)は、金型1134に挿入してもよい。たとえば、低粘度の接着剤1106を金型1134に注入して、固化させる。その後、図12に示すように、スタックを回転させて周縁部のその他の部分を封止する。図中、接着剤1206は、セルスタック1216の各隅部1230にて示されている。特定の実施例において、金型は、接着剤が付着しない材料から製造される。
【0074】
図13に示すように、4つの隅部がすべて封止されたセルスタック1316は、接着剤1306とケーシング1318の内壁1336との間に間隙1338を保ちつつ、ケーシング1318に挿入する。間隙1338は、付加的な接着剤で充填して、セルスタック1316とケーシング1318との封止を施すとともに、フローマニホルド間のクロスリークを防止する。
【0075】
図14に示す別の実施形態においては、たとえば押し出しまたは射出成形により製造可能なブラケットアセンブリまたは隅部支持部1440を備えた膜セルスタック1416を金型として用いることにより、セルスタック1416の隅部のポッティングおよび封止を行う。図15に示すように、隅部支持部1440(および1540)は、スタックをシェル1542に取り付けるアンカーとして機能する。隅部支持部のシェルへの固定に利用可能な方法には、超音波溶接等のプラスチック結合技術が挙げられる。その後、図16に示すように、シェル1542(および1642)をケーシング1618に挿入することで、スタックアセンブリを外側ケーシングに直接ポッティングする必要がなくなる。また、ブラケットアセンブリまたは隅部支持部は、モジュール式ユニットのケーシングへの固定に利用することができる。
【0076】
本発明の特定の実施形態は、比較的大きな電力消費による非効率性を低減または防止する電気浄化装置を提供する。本発明の電気浄化装置は、マルチパス型フロー構成を提供して、電流の非効率性を低減または防止することができる。マルチパス型フロー構成は、電気浄化装置のアノードとカソードとの間に直線的な電流経路が形成されることを防止または抑制することにより、フローマニホルドを通る電流の迂回または電流のリークを低減することができる。図17に示すように、カソード1744およびアノード1746を備えた電気浄化装置50を提供する。カソード1744とアノード1746との間には、交互に配置された複数のアニオン交換膜1748およびカチオン交換膜1750が設けられており、交互に配置された一連のイオン希釈室1752およびイオン濃縮室1754が形成されている。1つ以上のイオン希釈室1752およびイオン濃縮室1754の内には、たとえば、図17の矢印で示すように電気浄化装置50を通る流体フローおよび電流フローの方向を変えるように、遮断スペーサ1756が配置されている。
【0077】
図18は、電気浄化装置において遮断スペーサとして使用可能なスペーサの一例を示している。このスペーサは、たとえば、スクリーン部1858、中実部1860および封止帯1862を備えている。図19に示すように、封止帯1862は、たとえば、接着剤により隣接する膜に結合される。封止帯は、平坦な結合表面を提供することによって、膜とスペーサとの間の封止を向上させることができる。特定の実施例において、スペーサは、射出成形、機械加工、熱圧縮または高速プロトタイピングにより製造可能である。
【0078】
成形スペーサは、たとえば、スクリーン部が成形可能であるように十分な厚さを有する。厚さは、たとえば、スクリーンスペーサの厚さより大きい。これにより、遮断区画室の膜間距離は、隣接する区画室よりも大きく、結果的に電気抵抗が高くなり、したがって、遮断スペーサの数が限られているため、高電気抵抗であっても許容可能である。
【0079】
中実部におけるスペーサの縁部は、たとえば、ケーシングの内壁に固定され、封止される。スペーサの中実部1860は、たとえば、2辺の圧力差に耐えられるよう十分に硬質である。中実部には、リブ等の構造形状を付加して、材料の剛性を向上させるようにしてもよい。
【0080】
図19に示すように、第1のスペーサアセンブリ1964および第2のスペーサアセンブリ1966が設けられる。第1のスペーサアセンブリ1964と第2のスペーサアセンブリ1966との間には、遮断スペーサ1956が配置される。
【0081】
図20は、3パス型クロスフロー型電気透析装置を備えた本発明の電気浄化装置の一実施形態を示している。ケーシング2018内には、セルスタック2016が固定されている。セルスタック2016内には遮断スペーサ2056が配置され、図20の矢印で示すように、電気透析装置内の流体および電流の流れる方向を変えるようになっている。
【0082】
別の実施形態においては、セルスタックの周縁部の一部と遮断スペーサの周縁部とが接着剤によりケーシングの内面に固定されている。
【0083】
図21に示すように、遮断スペーサ2156には、ケーシングに挿入した際に接着剤2106の谷部を形成する環状リム2168が設けられている。この装置は、たとえば、図22に示すように、複数のセル対2216および遮断スペーサ2256(または複数のスペーサ)をケーシング2218に挿入した後、組立物を両端で端板および/または端ブロックにより圧縮して組み立てられる。スタックの周縁部の一部には、たとえば、ポッティングにより接着剤2206を連続して塗布されている。
【0084】
図23Aに示すように、ケーシング2318は、リム2368が接着剤を受けられる状態で、軸を垂直にして配置する。図23Bに示すように、遮断スペーサ2356上のリム2368により形成される谷部に接着剤2306を塗布して、スペーサとケーシング2318との封止を施す。接着剤は、たとえば端板および/または端ブロックを介して挿入される微小な管またはカテーテルにより注入可能である。
【0085】
特定の実施形態においては、たとえば、ガスケットまたはOリング等の付加的な構成要素を用い、遮断スペーサ周りに配置して、スペーサのケーシングへの固定に用いる液体接着剤の収容を補助する。本実施形態においては、硬化した接着剤が主要な封止であってもよい。別の実施形態においては、ガスケットまたはOリング等の付加的な構成要素のみが遮断スペーサとケーシングとの間の封止となるように設計し、セルスタックの周縁部の一部に配置された接着剤2206のみを用いるようにしてもよい(図22参照)。これにより、接着材料を用いた遮断スペーサのリムとケーシングとの封止の必要性が低減または排除されて、モジュール式ユニットの組み立てが簡素化されうる。
【0086】
別の実施形態において、最初に、1パス型フロー構成の希釈室および濃縮室を備えたセル対のスタックを円筒状ケーシングの部位に封止し、モジュール式ユニットを形成する。その後、遮断スペーサを間にしてユニットを一体的に結合して、マルチパス型構成を形成するようにしてもよい。この手法の利点として、隅部等の周縁部の一部にのみ接着剤を用いてスタックとケーシング部位との封止を施すことができる点が挙げられる。遮断スペーサとケーシングの内壁との封止を施す必要がない。その代わりに、ブロッキングスペーサはモジュール式ユニット間に配置され、端部間で封止される。
【0087】
図24Aは、たとえばフランジ2474を端部に備え、遮断スペーサ2456が間に配置された第1のモジュール式ユニット2470および第2のモジュール式ユニット2472を示している。図24Bにおいて、第1のモジュール式ユニット2470と第2のモジュール式ユニット2472とは、互いに固定されている。また、第1のモジュール式ユニット2470および第2のモジュール式ユニット2472のフランジ2474は、たとえば、一体的に固定される。特定の実施例において、第1のモジュール式ユニット2470および第2のモジュール式ユニット2472のフランジ2474は、ボルトで一体的に固定されていてもよい。
【0088】
図25は、スクリーン部2558、中実部2560および封止帯2562を有する遮断スペーサの別の実施形態を示している。この遮断スペーサは、フランジ間に接着剤またはガスケットで封止された環状フレーム2576と成形されていてもよい。あるいは、接着剤またはガスケットが不要となるように、熱可塑性プラスチック材料でフレームを成形することもできる。遮断スペーサを製造するその他の方法は当業者には明らかであろう。
【0089】
あるいは、クランプ、連結バーまたはその他の固定技術によりモジュール式ユニットを接続することもできる。これに応じて、遮断スペーサの設計は、選択した固定技術に合わせて変更可能である。
【0090】
本発明の一部の実施形態は、セルスタックの作製方法を提供する。第1のスペーサアセンブリは、周縁部の第1の部分において第1のイオン交換膜を第2のイオン交換膜に固定することにより作製できる。周縁部は、第2のイオン交換膜および第1のイオン交換膜の第2の部分において折り返すことにより、折り返し端部を設けるようにしてもよい。また、第1のイオン交換膜と第2のイオン交換膜との間には、スペーサを設けてもよい。第2のスペーサアセンブリについても、同様に作製できる。たとえば、第1のスペーサアセンブリの折り返し端部は、第2のイオン交換膜の折り返し端部が第2のスペーサアセンブリのイオン交換膜の折り返し端部に固定されるように、第2のスペーサアセンブリの折り返し端部と位置合わせする。その後、たとえば、折り返し端部を折り畳み、スペーサアセンブリ間にスペーサを配置する。スペーサアセンブリの圧縮後、第1および第2の各スペーサアセンブリ内における流体フロー流とは異なる方向の流体フロー流をスペーサアセンブリ間に提供する区画室が形成される。
【0091】
図26に示すように、第1のスペーサアセンブリは、周縁部の第1の部分において第1のアニオン交換膜2602を第1のカチオン交換膜2600に固定することにより作製してもよい。本実施例では、周縁部の第1の部分が熱結合2678により固定される。周縁部は、第1のカチオン交換膜および第1のアニオン交換膜の第2の部分において折り返すことにより、折り返し端部2680を設けるようにしてもよい。また、第1のアニオン交換膜2602と第1のカチオン交換膜2600との間には、スペーサ2604を設けてもよい。
【0092】
第2のスペーサアセンブリについても、同様に作製できる。図27に示すように、第1のスペーサアセンブリの折り返し端部2780は、たとえば、第1のカチオン交換膜の折り返し端部が第2のスペーサアセンブリのアニオン交換膜の折り返し端部に固定されるように、第2のスペーサアセンブリの折り返し端部2784と位置合わせして重ねられる。折り返し端部の重なり部は、熱結合、接着剤または機械的技法により固定してもよい。その後、図28に示すように、たとえば、折り返し端部を折り畳み、スペーサアセンブリ間にスペーサ2804を配置する。スペーサアセンブリの圧縮後、図29の矢印で示すように、第1および第2の各スペーサアセンブリにおける流体フロー流2988とは異なる方向の流体フロー流2986をスペーサアセンブリ間に定める区画室が作成される。
【0093】
熱結合技術を用いてスペーサアセンブリひいてはセルスタックを作製することにより、電気浄化装置の組み立てが容易で組み立て時間全体を短縮可能なプロセスが提供される。狭隘な熱封止によりフローチャネルを大きくして、膜利用率を高くすることにより、電気浄化装置全体の効率を向上させることができる。熱結合を利用する特定の実施形態においては、たとえばポリプロピレンまたはポリエチレン等のポリマー材料から成る付加的な補強ストリップを用いて、熱結合区画室を強化するとともに、より堅牢な封止を設けるようにしてもよい。また、結合プロセスを補助する然るべき結合機器および装置に余裕があることから、膜を折り畳んで圧縮する前に熱結合することによって、容易な組み立てを補助しうる。熱結合技術により、膜スタック中のリークを防止しうる。また、このプロセスは、膜スペーサに対する圧縮力を抑えてセルスタックの完全性を保つことにより、モジュール式ユニットの圧力低下を抑制しうる。
【0094】
一部の実施形態においては、イオン交換膜およびスペーサをセルスタック内で接着剤で固定してもよい。セルスタックの作製に有用な接着剤は、たとえば、セルスタックの構成要素を適切に封止するとともに、セルスタックを電気浄化装置のケーシング内に固定可能な特定の特徴または特性を有するものである。これらの特性としては、接着剤の粘度、ゲル化時間、硬化温度および弾性特性等が挙げられる。また、接着剤の特性を変更することによって、膜スタックとケーシングとの間の結合強度を高くでき、電気浄化装置内のリークを低減または防止できることが分かっている。
【0095】
場合により、エポキシ材料もしくはエポキシベースの材料またはポリウレタン材料もしくはポリウレタンベースの材料を用いることができる。これら材料を用いることにより、その熱的、機械的および化学的特性によって、膜間およびセルスタックとケーシングとの適切な封止を施すことができる。
【0096】
エポキシ材料またはエポキシベースの材料としては、樹脂または硬化剤が挙げられる。膜またはケーシングとの適切な封止を施すため、樹脂には架橋が必要となる場合がある。架橋は、樹脂を適当な硬化剤と化学的に反応させて実現することができる。この硬化剤は、脂肪族アミン、アミドアミン、脂環式アミンおよび芳香族アミンから成る群から選択可能である。また、硬化剤は、たとえば、粘度、ポッティング寿命、硬化時間、浸透率、ぬれ性、機械的強度および硬化後の耐化学性等、あるいはこれらに限らず、特定の特性を接着剤に付与するものである。
【0097】
ポリウレタン材料またはポリウレタンベースの材料は、触媒存在下でのイソシアニンと多価アルコール(ポリオール)との重付加反応により生成しうる。この反応により、ウレタン結合−RNHCOOR’−を含有するポリマーを形成しうる。
【0098】
一部の実施形態において、膜の相互固定に適した接着剤が望まれる場合は、接着剤が所定の接着ラインまたは封止帯上にある程度残るようにするのが望ましい。たとえば、接着剤の粘度が低過ぎると、接着剤が接着ラインまたは封止帯から流れ出たり滴ったりする場合がある。一方、粘度が高過ぎると、接着剤を塗るのが非常に難しくなる場合がある。
【0099】
特定の実施形態においては、膜と熱膨張が同様の接着剤を用いて膜を互いに固定するのが望ましい。これにより、膜/接着剤界面における亀裂または皺を防止または抑制可能である。電気浄化装置への適用に適した接着剤を決定するため、アミン硬化剤の濃度を変更してもよい。たとえば、脂肪族アミンは、直鎖状の炭素骨格を有するため、熱膨張に関する高い柔軟性を持ち得る。この種の硬化剤を用いると、サイドシームが膜とともに膨張可能となる。脂環式アミンおよび芳香族アミンの硬化剤は、骨格に芳香環を有するため、剛性の弾性特性を実現可能である。
【0100】
本発明の特定の実施形態において、膜の相互固定に使用可能な接着剤は、たとえば、常温で約1,000〜約45,000cpsの範囲の粘度を有する。これにより、約15〜約30分の範囲のゲル化時間を実現できる。この接着剤は、たとえば、常温で約30〜約70の範囲のショアD硬度を有する。
【0101】
接着剤は、任意の適当な手段により、自動または手作業で塗布できる。接着剤のシームは、たとえば、約0.25〜約1.5インチの範囲の幅を有し、約20〜約50milの範囲の接着厚さを有する。また、接着剤は、紫外光、常温、加速温度等を用いて硬化させてもよい。
【0102】
膜セルスタックのケーシングへの固定に使用可能な接着剤は低粘度を有していてもよく、これは混合接着剤に反応性希釈剤を添加することにより実現できる。低粘度の接着剤は、希釈剤の添加により得られ、接着剤の塗布を容易化可能である。また、比較的低い粘度は、多孔性基板へのより深い浸透と無孔表面の良好な湿潤とを可能にする。特定の実施例において、希釈剤は、ジグリシジルエーテル、ジグリシジルフェニルジグリシジルエーテルおよびそれらの組み合わせから成る群から選択可能である。
【0103】
セルスタックのケーシングへの固定に用いる接着剤は、膜の相互固定に用いる接着剤より剛性であってもよい。また、セルスタックのケーシングへの固定に用いる接着剤は、膜セルスタックの重量に耐えるだけの十分な機械的強度を有するとともに、流れ圧力下で変形しないものであるように定められる。
【0104】
本発明の特定の実施形態において、セルスタックのケーシングへの固定に用いる接着剤は、たとえば、常温で約300〜2,000cpsの範囲の粘度を有する。また、接着剤のゲル化時間は、たとえば、約30〜約60分の範囲である。さらに、接着剤は、たとえば、常温で約45〜80の範囲のショアD硬度を有する。
【0105】
膜セルスタックを配置して固定することにより電気化学浄化装置を提供するケーシングは、任意の適当な材料で製造することにより、装置内での流体フローおよび電流フローを可能にするとともに、それらを装置内に保持可能である。たとえば、ケーシングは、ポリスルホン、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネートまたはエポキシ含浸ガラス繊維で構築できる。ケーシングに用いる材料は、押し出しプロセス、射出成形または大略滑らかな内部を有する高密度構造を通常提供するその他のプロセスで製造してもよい。ケーシングと膜セルスタックとの間の接着結合は、連続的な流体フローの力によって機能しなくなる場合があるが、その強化のために、膜セルスタックが固定されるケーシング内面の部分を処理または変更できる。ケーシングとスタック周縁部との封止を向上させる表面処理には、表面を乱して表面積を大きくすることにより接着結合を強化する技術を含まれる。たとえば、表面処理には、化学的、機械的、電気的または熱的表面処理およびそれらの組み合わせが含まれる。これにはたとえば化学エッチングや機械的粗面化等が挙げられる。
【0106】
特定の実施形態においては、ケーシング内への接着剤注入口を用いて、ケーシング内の所望領域への接着剤の送達を補助することにより、膜セルスタックをケーシングに固定する。接着剤をケーシングに導入するため、1つ以上の接着剤注入口を用いてもよい。また、ケーシング内の各固定点において、複数の接着剤注入口を用いてもよい。特定の実施形態においては、たとえば、3つの接着剤注入口を特定の配置で設けることにより、接着剤を然るべき態様で固定点に供給する。また、接着剤注入口は、接着剤の所望の送達が実現されるように、直線状に配置してもよいし、特定の設計またはパターンで分配させてもよい。低粘度の接着剤を使用する例では、膜セルスタックのチャネル内に滲入させて、膜セルスタックとケーシングとの間の結合を強化することができる。このように接着剤を注入することにより、使用している接着剤の量と接着剤からの発熱とを監視することができる。
【0107】
本発明の特定の実施形態において、膜は、機械的封止技術によって、膜セルスタック内で相互固定するとともにスペーサと固定してもよい。この封止は、たとえば、電気浄化装置に用いる膜およびスペーサの少なくとも一方に隆起または溝を形成して実現される。第1の膜またはスペーサ上の隆起または溝は、第2の膜またはスペーサ上の隆起または溝と嵌合可能である。また、第1の膜またはスペーサ上の隆起または溝は、第2の膜またはスペーサ上の隆起または溝と連結可能である。たとえば、第1の膜またはスペーサ上の隆起または溝は、第2の膜またはスペーサ上の隆起または溝と嵌合する雄型の隆起または取付部であり、第2の膜またはスペーサ上の突起または溝は、雌型の隆起または取付部である。第1のスペーサと第2のスペーサとの間には、たとえば、カチオン交換膜またはアニオン交換膜等のイオン交換膜が配置および固定される。特定の実施形態において、一連のスペーサおよびイオン交換膜を組み立てて複数の濃縮室および希釈室を形成した後、各室をたとえば樹脂スラリーまたは樹脂懸濁液の形態の樹脂で充填させてもよい。
【0108】
図30は、射出成形した希釈スペーサ3004の一例を示し、スペーサ3004はその両面上に封止を嵌合する溝3090を備える。各区画室3092の一端は、イオン交換樹脂ビーズを保持する開口3094を除いて閉鎖されているが、流体フローは通過可能である。スペーサ3004の他端3096は、たとえば、樹脂充填剤に対して開放されている。たとえば、当該端にはスロット3098が設けられて、樹脂保持板を受け入れる。濃縮スペーサについても、同様に構築できる。特定の実施例においては、特定の実施形態において、希釈室を通るフローよりも濃縮フローが低くなる場合があるため、たとえば、濃縮スペーサは希釈スペーサより薄い。
【0109】
図31は、スペーサ3104、カチオン交換膜3100およびアニオン交換膜3102のスタックの組立前の断面図を示している。第1のスペーサ3104aの雌機構3101が第2のスペーサ3104bの雄機構3103と嵌合可能である。また、第2のスペーサ3104bの雄機構3103が第3のスペーサ3104cの雌機構3101と嵌合可能である。
【0110】
樹脂ビーズおよび膜を通るイオンの移動を促進するため、樹脂ビーズを密に充填するのが望ましい。このことは特に、超純水用の希釈室において都合が良い場合がある。充填密度の増大は、多くの方法により実現可能であることが分かっている。たとえば、樹脂を塩化ナトリウム等の濃縮塩溶液に浸した後、区画室内にスラリー化する。電気浄化装置の動作中、希釈室中の樹脂は、希釈流の脱イオン化に伴って膨張しうる。また、樹脂を塩化ナトリウム等の濃縮塩溶液に浸した後、乾燥させてもよい。その後、樹脂を空気流中に浮遊させて、区画室内中に吹き込むようにしてもよい。動作中、樹脂は、希釈室および濃縮室の両者において流体への曝露に伴い膨張し、希釈流の脱イオン化に伴って希釈室においてさらに膨張する。別の実施例においては、希釈室よりも先に濃縮室を充填してもよい。膜を希釈室中へと膨張させ、その後、希釈室を充填してもよい。動作中の希釈室における樹脂の膨張を濃縮室に充填した樹脂によって抑制することにより、充填密度を増大させることができる。
【0111】
図32は、スペーサ3204(3204a、3204b、3204c)および膜からなる組み立てられたスタックの部分断面図ならびに連結状態の機械的封止の詳細図を示している。詳細図に示すように、たとえば、区画室3292は、所望数のセル対を備えたスタックを組み立てた後、樹脂で充填される。そして、流体の樹脂スラリーを当該区画室に注ぎ込む。樹脂キャリア流体は通過する一方で、樹脂は区画室底部の開口3294内に保持される。区画室が満たされた後、スロット板を所定の位置にスライドさせて、区画室内に樹脂を保持する。その後、スタックを90°回転させて、同様にして、希釈室に樹脂を充填させることができる。
【0112】
図33は、樹脂保持板3307を所定の位置に備えた膜セルスタック3305の一部を示している。膜セルスタック3305は、たとえば、その周縁部に沿った特定箇所で、ケーシング内に固定される。たとえば、セルスタック3305は、その1つ以上の隅部3330で固定される。
【0113】
別の実施形態において、オーバーモールドした熱可塑性ゴム(TPR)での封止により、膜にスペーサとの封止を施してもよい。スペーサおよび膜のスタックを組み立てて圧縮した後、濃縮室および希釈室内に樹脂を充填させる。図34は、リム3407およびオーバーモールド封止3409を備えた希釈スペーサ3404を示している。オーバーモールド封止は、たとえば、スペーサの両面に設けられている。濃縮スペーサについても、同様に構築できる。特定の実施例において、濃縮スペーサは、希釈スペーサより薄く構築でき、オーバーモールド封止を備えていなくてもよい。
【0114】
図35は、濃縮スペーサ3511および希釈スペーサ3513を含むスペーサおよび膜のスタックの一部を示した断面図である。開口3594によって樹脂を区画室3592内に保持し、当該区画室3592の他端の開口またはスロット3598によって樹脂を充填できる。この特定の実施形態においては環状のリム3507を示すが、得られるセルスタックが適切にケーシングに固定できるのであれば、矩形、正方形または多角形等のその他リム形状も利用可能である。一部の実施形態において、リム3507は、ケーシングの必要性をなくしうる。希釈室および濃縮室の流入口/流出口マニホルドを放射状のオーバーモールド封止3509で分離することにより、隅部での固定またはポッティングの必要性をなくすことができる。樹脂を添加する前にスタックを圧縮して、膜およびスペーサを一体的に封止してもよい。これは、たとえば一時的な連結バーまたはクランプを用いて実現できる。
【0115】
図36は、希釈室3615に樹脂を充填させた後の所定位置の樹脂保持板3607を示した断面図である。
【0116】
特定の実施形態においては、オーバーモールド封止および雌雄機構による嵌合を併用して、固定された膜セルスタックを提供しうる。膜に雌雄機構によりスペーサとの封止を施し、一方で、希釈スペーサと濃縮スペーサとの封止を放射状のオーバーモールド封止およびリムの封止により行ってもよい。本実施形態においては、セルスタックとケーシングとの封止にケーシングまたは隅部の封止を必ずしも用いる必要は無い。
【0117】
特定の実施形態は、図37に示すようにスクリーン区画室3725を含む射出成形スペーサ3704を提供する。図37には、流体フローの方向3727を示している。2つの対向端部3729および3731には、複数の開口が設けられている。これらの開口は、当該部分を金型から取り出す前にワイヤを後退させて形成することができる。
【0118】
図38Aおよび図38Bは、図37に関連して説明した端部3829における開口(たとえば符号3833)の詳細を示している。また、図38Aおよび図38Bは、雌機構3801と連結可能な雄機構3803を示している。
【0119】
図38Bには、破線の分割線を示している。スペーサは、金型の分割線3835の上下に1組のストランドをそれぞれ設けて成形してもよい。図38Bに示すようなスクリーンスペーサのストランドは半円形の断面を有し、2組のストランドは互いに垂直の方向である。ストランドの断面形状、方向および密度は、流体混合の促進および/または圧力低下の抑制を図るように、変更可能である。また、スペーサにリブまたはバッフルを成形して、フローチャネルを形成するとともに、フロー分配を向上させるようにしてもよい。
【0120】
特定の実施形態においては、流入口および流出口3833を含む端部の上下それぞれに雌雄機構を成形する。
【0121】
スペーサの材料の選択は、たとえば約0.060インチ(1.5mm)以下のオーダの薄壁および小サイズで成形できるか否かによって決まる。また、その材料は、好ましくは約0.030インチ(0.75mm)以下のオーダの小孔を有して成形できるものであってよい。この材料は、たとえば、適当な弾性により雌雄機構が適切に連結可能であるとともに、浄化対象の流体との化学的適合性を有する。
【0122】
図39は、スペーサおよび膜のスタックの一部を示している。図示のように、雄機構3903が雌機構3901と連結している。同様に、図40においては、雄機構4003が雌機構4001と連結している。スペーサ間には、カチオン交換膜4000およびアニオン交換膜4002が固定されている。第1の流れ用のスペーサ4037は、第2の流れに関する膜の端部を封止する。一方、第2の流れ用のスペーサ4039は、第1の流れに関する膜の端部を封止する。
【0123】
本発明の特定の実施形態においては、区画室内の流れの調整、再分配または方向変更を行うことにより、区画室内の流体と膜表面との接触を増大させることができる。区画室は、たとえば、区画室内の流体フローを再分配するように構成されかつ配置されている。区画室は、たとえば、区画室を介したフローの再分配を行う構造としての障害物、突起、凸部、フランジまたはバッフルを有している。この障害物、突起、凸部、フランジまたはバッフルは、イオン交換膜やスペーサの一部として形成してもよいし、区画室内に設けられる独立した付加的構造であってもよい。また、この障害物、突起、凸部、フランジまたはバッフルは、イオン交換膜を互いに固定する接着剤からの延長部を設けることによって形成してもよい。また、スペーサを熱可塑性ゴムに含浸させて、接着剤により隣接する膜に結合される凸部を形成するようにしてもよい。この熱可塑性ゴムは、熱圧縮または回転スクリーン印刷等のプロセスによりスペーサに適用してもよい。各区画室は、イオン交換樹脂を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
【0124】
図41には、第1のスペーサ4155および第2のスペーサ4157が隣接配置された第1のイオン交換膜4151および第2のイオン交換膜4153を示している。第2のスペーサ4157には、スペーサ4157の流入口4163からのフローを、第1のバッフル4165および第2のバッフル4167の回りを通して流出口4169を介して再分配するバッフルが設けられており、これにより、第1の流れ4159は第2の流れ4161と並行に流れる。
【0125】
図42には、第1のスペーサ4255および第2のスペーサ4257が隣接配置された第1のイオン交換膜4251および第2のイオン交換膜4253を示している。第2のスペーサ4257には、流入口4263からのフローを、第1のバッフル4265および第2のバッフル4267の回りを通して流出口4269を介して再分配するバッフルが設けられており、これにより、第1の流れ4259は第2の流れ4261に対して垂直に流れる。
【0126】
図43および図44は、射出成形スペーサにより形成された2つの流れのための区画室を用いる別の実施形態を示している。図43において、第2の流れ4361のフロー経路は、第1の流れ4359と同じ向きであってもよいし、反対の向きであってもよい。図44において、第2の流れ4461用のフロー経路は、第1の流れ4459と垂直であってもよい。また、スペーサの中実部を選択的に、隣接する膜に接着剤で結合してもよい。あるいは、超音波、振動またはレーザー溶接等により、膜をスペーサに熱的に結合してもよい。これらの図において、点線矢印は、第2の流れ用の流入口マニホルドおよび流出口マニホルド内のフローを示している。これらのマニホルドは、第2の流れ用の区画室への流入口および流出口には付随しない。したがって、アノードとカソードとの間におけるマニホルドを流れるリーク電流は抑制されると予想される。
【0127】
本発明の一部の実施形態は、飲料水を供給する方法を提供する。また、特定の実施形態は、海水からの飲料水の生成を容易化する方法を提供する。この方法は、セルスタックを備えた電気浄化装置を提供するステップを含んでいる。また、この方法は、海水供給流を電気浄化装置の流入口に流体接続するステップを含んでいる。さらに、この方法は、電気浄化装置の流出口を飲料水使用箇所に流体接続するステップを含んでいる。海水または河口水の総溶解固形分濃度は、たとえば、約10,000〜約45,000ppmの範囲である。特定の実施例において、海水または河口水の総溶解固形分の濃度は、たとえば、約35,000ppmである。
【0128】
本実施形態において、セルスタックは、交互に配置されたイオン希釈室およびイオン濃縮室を備える。各イオン希釈室は、第1の方向の流体フローを与えるように構成されかつ配置されている。各イオン濃縮室は、上述の通り、第1の方向とは異なる第2の方向の流体フローを与えるように構成されかつ配置されている。さらに、各イオン濃縮室およびイオン希釈室は、交互配置されたイオン希釈室およびイオン除去室それぞれとの流体接触に関して、所定割合の表面積または膜利用率を提供するように構成されかつ配置されている。上述の通り、膜利用率が高いほど、電気浄化装置の動作効率が高くなることが分かっている。特定の実施形態においては、実現可能な膜利用率は65%超である。別の実施形態においては、実現可能な膜利用率は75%超である。さらに、特定の実施形態においては、実現可能な膜利用率を85%超である。
【0129】
イオン希釈室およびイオン濃縮室の少なくとも一方は、スペーサを備えていてもよい。このスペーサは、遮断スペーサであってもよい。スペーサは、電気浄化装置内の複数の段または経路を介して海水供給水が通過させて、飲料水を提供するようにしてもよい。
【0130】
第1の流体フローの方向および第2の流体フローの方向は、区画室の構成および配置によって選択および定めることができる。流体フローの第1の方向を0°軸に沿って延びる方向とすると、流体フローの第2の方向は、たとえば0°より大きく360°より小さい任意の角度である。本発明の特定の実施形態において、第2の流体フロー経路は、たとえば第1の流体フロー経路に対して90°すなわち垂直に延びる。別の実施形態において、第2の流体フロー経路は、たとえば、第1の流体フロー経路に対して180°で延びる。
【0131】
上記の方法は、交互に配置されたイオン希釈室およびイオン濃縮室の少なくとも一方において流体を再分配するステップをさらに含んでいてもよい。1つ以上の区画室が流体フローの再分配または方向変更を行うように構成されかつ配置されていてもよい。これは、上述の通り、流体フローを再分配する構成を提供可能な区画室を画定する特定のスペーサまたは膜の使用により実現できる。
【0132】
電気浄化装置は、セルスタックを取り囲むケーシングをさらに備えていてもよい。そして、セルスタックの周縁部の少なくとも一部は、ケーシングに固定されていてもよい。電気浄化装置は、ケーシングとセルスタックとの間に配置されたフレームまたは支持構造をさらに備えていてもよい。また、フレームは、セルスタックに隣接しまたは接続されて、モジュール式ユニットを提供するものであってもよい。電気浄化装置は、ケーシング内に固定可能な第2のモジュール式ユニットをさらに備えていてもよい。第2のモジュール式ユニットは、第1のモジュール式ユニットのイオン交換膜が第2のモジュール式ユニットのイオン交換膜と隣接するように、ケーシング内に固定されていてもよい。
【0133】
飲料水を供給する上記方法は、第1のモジュール式ユニットと第2のモジュール式ユニットとの間の電流フローおよび流体フローの少なくとも一方の方向を変えるステップを含んでいてもよい。これは、たとえば第1のモジュール式ユニットと第2のモジュール式ユニットとの間に遮断スペーサを設けることによって実現できる。
【0134】
フレームとケーシングとの間にブラケットアセンブリを配置して、モジュール式ユニットをケーシングに固定するようにしてもよい。
【0135】
様々な濃度の総溶解固形分を含有する他種の供給水についても、本発明の装置および方法を用いて処理または加工を行うことができる。たとえば、総溶解固形分含有量が約1,000〜約10,000ppmの範囲の半塩水を処理して飲料水を生成することができる。総溶解固形分含有量が約50,000〜約150,000ppmの範囲の塩水を処理して飲料水を生成することができる。一部の実施形態においては、総溶解固形分含有量が約50,000〜150,000ppmの範囲の塩水を処理して、たとえば海洋等の水域に廃棄するために、総溶解固形分含有量の低い水を生成することができる。
【0136】
以上、本発明の例示的な実施形態を開示したが、以下の請求の範囲に記載の通り、本発明およびその均等物の主旨と範囲を逸脱することなく、種々変更、付加、および削除が可能である。
【0137】
当業者であれば、本明細書に記載の種々パラメータおよび構成がほんの一例に過ぎず、実際のパラメータおよび構成は、本発明の電気浄化装置および方法の特定の用途によって決まることが容易に理解できよう。また、当業者であれば、本明細書に記載した特定の実施形態の種々均等物が日常の実験程度で認識または確認できよう。たとえば、当業者であれば、本発明の装置およびその構成要素がシステムのネットワークをさらに備えていてもよいし、水浄化または処理システムの一構成要素であってもよいことが認識可能である。したがって、当然のことながら、上記の各実施形態はほんの一例として提示したに過ぎず、特段の記述がない限り、添付の請求の範囲およびその均等物の範囲内において、本発明の電気浄化装置および方法を実施可能である。本装置および方法は、本明細書に記載の各個別の特性または方法を対象としている。また、2つ以上の特性、装置、または方法が互いに矛盾しない場合は、それら任意の組み合わせについても、本発明の範囲に含まれる。
【0138】
たとえば、ケーシングは、1つ以上の膜セルスタックまたはモジュール式ユニットを内部に固定できるものであれば、任意の適当な形状を有していてもよい。たとえば、ケーシングは、円筒形、多角形、正方形または矩形のいずれであってもよい。膜セルスタックおよびモジュール式ユニットに関しては、ケーシングに固定できるものであれば、任意の適当な形状が可能である。たとえば、膜またはスペーサは、矩形状であってもよい。特定の実施形態においては、ケーシングは不要であってもよい。膜およびスペーサは、セルスタック内に固定できるものであれば、任意の適当な形状を有していてもよい。特定の実施形態においては、セルスタックが特定数の隅部または頂点を有することが望ましい場合がある。たとえば、3つ以上の隅部または頂点でセルスタックをケーシングに固定するために望ましい場合がある。特定の実施形態において、ケーシング、セルスタック、膜およびスペーサのいずれかの形状は、電気浄化装置の動作パラメータに適合するように選択してもよい。たとえば、スペーサは、希釈流と濃縮流との間の流量差に適合するように非対称であってもよい。
【0139】
さらに、当然のことながら、当業者であれば種々変形、変更、および改良を容易に想到可能である。このような変形、変更、および改良は、本発明の一部をなすとともに、本発明の主旨と範囲に含まれるものである。たとえば、既存の設備を変更して、本発明の1つ以上の態様のいずれかを利用または組み込むようにしてもよい。このように、場合によっては、上記装置および方法が既存の設備の接続または構成により電気浄化装置を備えるようにしたものであってもよい。以上から、上記の説明および図面は、ほんの一例に過ぎない。さらに、図面の内容は、本発明を特定の表現に限定するものではない。
【0140】
本明細書において、「複数の」という表現は、2つ以上の項目または構成要素を表す。また、「備える」、「具備する」、「持つ」、「有する」、「含む」、および「伴う」という表現は、明細書または請求の範囲等のいずれにおいても、オープンエンドな用語であって、「非限定的に具備する」ことを意味する。このように、これら用語の使用は、後続の項目、その均等物、ならびに付加的な項目を包含することを意図したものである。「から成る」および「から本質的に成る」という移行句のみは、請求の範囲に関して、それぞれクローズまたはセミクローズな移行句である。また、請求の範囲において、その要素を修飾する「第1の」、「第2の」、「第3の」等の序数用語の使用は、優先度、優先順位、要素間の順序、または方法の実行における時間的順序に関する意味を何ら含まず、(序数用語を使用すべき)特定の名称を有する要素を同名の別要素と区別して要素を識別する標識として使用しているに過ぎない。
図1
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