特許第5902714号(P5902714)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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特許5902714検体中の測定対象物の連続的免疫測定法における非特異反応抑制方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902714
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】検体中の測定対象物の連続的免疫測定法における非特異反応抑制方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/53 20060101AFI20160331BHJP
   G01N 33/531 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   G01N33/53 L
   G01N33/531 B
【請求項の数】3
【全頁数】20
(21)【出願番号】特願2013-547146(P2013-547146)
(86)(22)【出願日】2012年11月27日
(86)【国際出願番号】JP2012080538
(87)【国際公開番号】WO2013080937
(87)【国際公開日】20130606
【審査請求日】2015年4月10日
(31)【優先権主張番号】特願2011-258550(P2011-258550)
(32)【優先日】2011年11月28日
(33)【優先権主張国】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000162478
【氏名又は名称】協和メデックス株式会社
(72)【発明者】
【氏名】草野 正芳
(72)【発明者】
【氏名】山本 博子
(72)【発明者】
【氏名】永井 豪
(72)【発明者】
【氏名】守田 和樹
【審査官】 加々美 一恵
(56)【参考文献】
【文献】 特開2000−146954(JP,A)
【文献】 特開平01−217266(JP,A)
【文献】 特開平05−322891(JP,A)
【文献】 P.H.HART et al.,HUMAN MONOCYTES CAN PRODUCE TISSUE-TYPE PLASMINOGEN ACTIVATOR,The Journal of Experimental Medicine,米国,The Rockfeller University Press,1989年 4月 1日,Vol.169, No.4,第1509-1514頁,URL,http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC2189243/pdf/je16941509.pdf
【文献】 Olli SAKSELA,Plasminogen activation and regulation of pericellular proteolysis,Biochimica et Biophysica Acta,1985年11月12日,Vol.823, Issue 1,第35-65頁,URL,http://ac.els-cdn.com/0304419X85900149/1-s2.0-0304419X85900149-main.pdf?_tid=ec88359e-db53-11e5-9aa5-00000aacb35d&acdnat=1456359100_4794f60947cab982f06e6a32761ed0f9
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/48 − 33/98
CAplus/MEDLINE/BIOSIS/WPIDS(STN)
JSTPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機により行われる、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む複数の検体を用いる、検体中の測定対象物の連続的免疫測定法において、測定対象物と測定対象物に結合する抗体との反応を、カゼイン及び組織プラスミノーゲンアクチベーター存在下に行うことを特徴とする非特異反応抑制方法。
【請求項2】
測定対象物が、PIVKA−II(protein induced by vitamin K absence or antagonist-II)である請求項1に記載の方法。
【請求項3】
検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機により行われる、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む複数の検体を用いる、非特異反応が抑制された検体中の測定対象物の連続的免疫測定法のための試薬であって、測定対象物に結合する抗体、カゼイン及び組織プラスミノーゲンアクチベーターを含むことを特徴とする、請求項1または2に記載の方法に使用するための測定試薬。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、検体中の測定対象物の連続的免疫測定法における非特異反応抑制方法、および、非特異反応が抑制された測定対象物の連続的免疫測定法のための試薬に関する。
【背景技術】
【0002】
免疫測定法においてしばしば問題となる非特異反応は、抗原抗体反応において使用される標識化抗体又は標識化競合物質が、測定対象物とは結合せずに、固相に結合することに起因する。この非特異反応を抑制し正確に測定対象物を測定することを目的に、種々のブロッキング剤を用いる免疫学的測定方法が知られており、例えば牛血清アルブミン(非特許文献1参照)、カゼイン(特許文献1、2参照)等のブロッキング剤を用いる非特異反応抑制方法が報告されている。
【0003】
検体として、フィブリン等のフィブリン様物質を含む血清又は血漿を用いる場合、フィブリン様物質が測定系に混入することにより、測定精度の悪化等、測定に悪影響を及ぼす、という問題がある。例えば、肝細胞癌マーカーであるPIVKA−II(protein induced by vitamin K absence or antagonist-II;以下、PIVKA−IIと略記する)の免疫測定法において、フィブリン様物質の測定系への混入は、測定に悪影響を及ぼすことが知られている。PIVKA−IIは、肝で合成されるプロトロンビンの前駆体で、正常プロトロンビンで見られるGlaドメイン部分のγ−カルボキシ化グルタミン酸が見られず、カルシウムイオンと結合できない、凝固活性をもたない異常プロトロンビンと呼ばれ、肝細胞癌患者のみならず、ビタミンK欠乏症の患者においても上昇することが知られている。そのため、PIVKA−IIは、肝細胞癌及びビタミンK欠乏症の診断に用いられている。
【0004】
フィブリン様物質が測定系に混入することにより、測定に悪影響を及ぼすという問題に対する解決方法としては、フィブリン様物質を溶解する酵素を用いる方法(特許文献3参照)、フィブリン様物質および/またはトロンビンを共存させて抗原抗体反応を行う方法(特許文献4参照)、スキムミルク等の乳蛋白を含有する緩衝液を用いる方法(特許文献5参照)、アルブミン、カゼイン等の蛋白質、ポリスチレンスルホン酸、ポリアクリル酸、デキストラン硫酸等のポリマー、塩化ナトリウム、塩化カリウム、塩化鉄等の塩類、及び、これらの混合物を用いる方法(特許文献6参照)等が知られている。
【0005】
臨床検査の現場では、多数の検体の連続的測定方法がしばしば行われている。連続的測定には、自動分析機が用いられることが多く、自動分析機を用いる測定においては、検体採取用のノズルと測定試薬採取用のノズルとが共用される場合がある。検体採取後、ノズルは精製水等により洗浄され、測定試薬を採取するが、検体採取後のノズルの洗浄が不十分な場合には、洗浄しきれなかった微量の検体がノズルを通じて測定試薬と混合され、測定試薬が汚染されてしまう。測定試薬が検体で汚染されてしまうと、検体中の成分と、測定試薬中の成分とが反応してしまい、測定試薬本来の性能が維持されなくなるという問題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平1−217266号公報
【特許文献2】特開平5−322891号公報
【特許文献3】特開2000−146954号公報
【特許文献4】特開2000−235029号公報
【特許文献5】特開2000−346841号公報
【特許文献6】特開2010−127827号公報
【非特許文献】
【0007】
【非特許文献1】石川榮治他、「酵素免疫測定法」第3版、医学書院
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の目的は、複数検体の連続的免疫測定法において、検体中の測定対象物の正確な測定を可能とする、複数検体の連続的免疫測定法における非特異反応抑制方法、および、非特異反応が抑制された測定対象物の連続的免疫測定法のための試薬を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者らは、検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機により行われる、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む複数検体を用いる、検体中の測定対象物の連続的免疫測定法において、連続測定が進行するにつれ、正確な測定ができなくなる、という課題に直面した。発明者は、本課題を検討した結果、連続測定が進行するにつれ、ノズルを介して検体が測定試薬に混入し、検体中のプラスミノーゲンが、測定試薬中のプラスミノーゲンアクチベーターと反応して生成するプラスミンにより、カゼインからなるブロッキング剤を分解してしまい、ブロッキング剤の本来の効果が損なわれるため、正確な測定ができなくなることを突き止めた。これに対して、本発明者らは、プラスミノーゲンアクチベーターのうち組織プラスミノーゲンアクチベーターを用いることにより、連続測定が進行しても、組織プラスミノーゲンアクチベーターによりカゼインが分解されることなく、正確な測定が維持されることを見出して、本発明を完成させた。すなわち、本発明は、以下の[1]〜[3]に関する。
【0010】
[1] 検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機により行われる、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む複数の検体を用いる、検体中の測定対象物の連続的免疫測定法において、測定対象物と測定対象物に結合する抗体との反応を、カゼイン及び組織プラスミノーゲンアクチベーター存在下に行うことを特徴とする非特異反応抑制方法。
[2] 測定対象物が、PIVKA−II(protein induced by vitamin K absence or antagonist-II)である[1]に記載の方法。
[3] 検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機により行われる、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む複数の検体を用いる、非特異反応が抑制された検体中の測定対象物の連続的免疫測定法のための試薬であって、測定対象物に結合する抗体、カゼイン及び組織プラスミノーゲンアクチベーターを含むことを特徴とする、[1]または[2]に記載の方法に使用するための測定試薬。
【発明の効果】
【0011】
本発明により、検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機により行われる、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む複数の検体を用いる連続的免疫測定法において、検体中の測定対象物の正確な測定を可能とする非特異反応抑制方法、および、測定試薬が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】連続測定により使用された測定試薬の回数が、反応キュベットへの標識化抗体の非特異吸着に与える影響を示す図である。縦軸は発光カウントを、横軸は測定試薬を表し、Aは連続測定前の測定試薬を、Bは60回連続測定した後の測定試薬を、Cは160回連続測定した後の測定試薬を、Dは350回連続測定した後の測定試薬を表す。□は食塩水を、■は血清1を、囲み点線は血清2を、灰色四角は血清3を表す。
図2】連続測定後の抗体溶液にカゼインを添加することによる、反応キュベットへの標識化抗体の非特異吸着抑制を示す図である。縦軸は発光カウントを、横軸は測定試薬を表し、Eは200回連続測定した測定試薬を、Fは200回連続測定した後の検体希釈液にカゼインを添加して調製した1%カゼイン含有検体希釈液を含有する測定試薬を表す。□は食塩水を、■は血清11を、囲み点線は血清12を表す。
【0013】
図3】検体として、肝癌患者由来の血清を含むヒト由来の血清(45検体)を用いた、全自動化学発光免疫測定装置「CL−JACKTM」、及び、プラスミノーゲンアクチベーターを含まない実施例2の測定試薬による検体中のPIVKA−IIの連続的免疫測定法と、全自動電気化学発光免疫測定装置「ピコルミTMII」、及び、PIVKA−II測定キット「ピコルミTMPIVKA−II」による検体中のPIVKA−IIの連続的免疫測定法(対照法)との相関関係を示す。左図は、連続測定開始前の測定試薬を用いる連続測定における相関図を、右図は、45回連続測定を行った後の測定試薬を用いる連続測定における相関図を表す。左図、右図とも、縦軸はプラスミノーゲンアクチベーターを含まない実施例2の測定試薬による検体中のPIVKA−IIの連続的免疫測定法により決定されたPIVKA−II濃度(mAU/mL)を表し、横軸は対照法により決定されたPIVKA−II濃度(mAU/mL)を表す。
【0014】
図4】検体として、肝癌患者由来の血清を含むヒト由来の血清(45検体)を用いた、全自動化学発光免疫測定装置「CL−JACKTM」、及び、ストレプトキナーゼを含む実施例2の測定試薬による検体中のPIVKA−IIの連続的免疫測定法と、全自動電気化学発光免疫測定装置「ピコルミTMII」、及び、PIVKA−II測定キット「ピコルミTMPIVKA−II」による検体中のPIVKA−IIの連続的免疫測定法(対照法)との相関関係を示す。左図は、連続測定開始前の測定試薬を用いる連続測定における相関図を、右図は、45回連続測定を行った後の測定試薬を用いる連続測定における相関図を表す。左図、右図とも、縦軸はストレプトキナーゼを含む実施例2の測定試薬による検体中のPIVKA−IIの連続的免疫測定法により決定されたPIVKA−II濃度(mAU/mL)を表し、横軸は対照法により決定されたPIVKA−II濃度(mAU/mL)を表す。
【0015】
図5】検体として、肝癌患者由来の血清を含むヒト由来の血清(45検体)を用いた、全自動化学発光免疫測定装置「CL−JACKTM」、及び、組織プラスミノーゲンアクチベーターを含む実施例3の測定試薬による検体中のPIVKA−IIの連続的免疫測定法と、全自動電気化学発光免疫測定装置「ピコルミTMII」、及び、PIVKA−II測定キット「ピコルミTMPIVKA−II」による検体中のPIVKA−IIの連続的免疫測定法(対照法)との相関関係を示す。左図は、連続測定開始前の測定試薬を用いる連続測定における相関図を、右図は、45回連続測定を行った後の測定試薬を用いる連続測定における相関図を表す。左図、右図とも、縦軸は組織プラスミノーゲンアクチベーターを含む実施例3の測定試薬による検体中のPIVKA−IIの連続的免疫測定法により決定されたPIVKA−II濃度(mAU/mL)を表し、横軸は対照法により決定されたPIVKA−II濃度(mAU/mL)を表す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
(非特異反応抑制方法)
本発明の非特異反応抑制方法は、検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機により行われる、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む複数の検体を用いる、検体中の測定対象物の連続的免疫測定法における非特異反応抑制方法であり、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む検体を後述の測定試薬と反応させ、抗原抗体反応を行う際に、当該抗原抗体反応をカゼイン、及び、組織プラスミノーゲンアクチベーターの存在下に行うことを特徴とする。
【0017】
(連続的免疫測定法)
本発明における自動分析機による複数検体中の測定対象物の連続的免疫測定法では、免疫測定法が複数検体に対して連続的に行われる。1つの検体に対する測定は、検体と測定試薬との反応工程、検出工程、検出反応後の反応容器の洗浄工程を含み、各工程は、時間、温度、回数等のパラメータにより規定される。例えば、反応工程及び検出工程における反応温度は、通常、0〜50℃であり、4〜45℃が好ましく、20〜40℃が特に好ましい。反応時間は、通常、2.5分間〜1時間であり、5〜20分間が好ましい。洗浄工程における洗浄時間は、通常、2.5〜30分間であり、5〜10分間が好ましい。洗浄工程において使用される洗浄液としては、反応後の反応混合物を除去し得る洗浄液であれば特に制限はなく、例えばリン酸緩衝化生理食塩水[0.15 mol/L塩化ナトリウムを含有する10 mmol/Lリン酸緩衝液、pH7.2(以下、PBSと記す)]、界面活性剤を含有するPBS、後述の水性媒体等が挙げられる。当該界面活性剤としては、例えばツイーン(Tween)20等の非イオン性界面活性剤等が挙げられる。
【0018】
(自動分析機)
本発明における自動分析機は、連続的免疫測定法に使用され、検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機であれば特に制限はなく、例えば磁性粒子を担体として用いる全自動化学発光免疫測定装置「CL−JACKTM」(協和メデックス社製)等が挙げられる。
【0019】
(検体)
本発明における検体は、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む検体であれば特に制限はなく、例えば血漿、血清、全血等が挙げられ、血漿、血清が好ましい。
【0020】
(測定対象物)
本発明における測定対象物は、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む検体中の測定対象物であって、免疫測定方法により測定できる測定対象物であれば特に制限はなく、例えばPIVKA−II、インターロイキン−2受容体等が挙げられ、PIVKA−IIが好ましい。
【0021】
(測定試薬)
本発明における測定試薬は、測定対象物に結合する抗体、カゼイン及び組織プラスミノーゲンアクチベーターを含有し、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む検体中の測定対象物と当該測定対象物に結合する抗体との反応、すなわち、抗原抗体反応に使用され、具体的には以下の測定試薬が挙げられる。
【0022】
・測定試薬1
カゼイン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、及び、測定対象物に結合する第1の抗体が不溶性担体上に固定化された固相、及び、測定対象物に結合する第2の抗体に標識が結合した標識化第2抗体を含む試薬。
【0023】
・測定試薬2
カゼイン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、及び、測定対象物に結合する第1の抗体が不溶性担体上に固定化された固相、及び、競合物質に標識が結合した標識化競合物質を含む試薬。
ここで競合物質とは、「測定対象物に結合する抗体」に結合できる物質であって、かつその結合が、該測定対象物と競合的であるような物質を意味する。
【0024】
・測定試薬3
カゼイン、組織プラスミノーゲンアクチベーター、及び、競合物質が不溶性担体上に固定化された固相、及び、測定対象物及び競合物質の両者に結合する抗体に標識が結合した標識化抗体を含む試薬。
【0025】
本発明において、測定試薬には、必要に応じて、添加物として、後述の水性媒体、酵素基質(標識が酵素である場合)、金属イオン、糖類、防腐剤、界面活性剤、蛋白質安定化剤等が含まれていてよい。
【0026】
本発明において、測定試薬はキットの形態で保存又は使用されてもよい。キットとしては、例えば第1試薬及び第2試薬からなる2試薬系キット、第1〜第3試薬からなる3試薬系キット、第1〜第4試薬からなる4試薬系キット等が挙げられる。測定試薬中に酵素基質が含まれる場合には、酵素基質と、標識化抗体又は標識化競合物質とは、別々の試薬に含まれることが好ましい。
【0027】
キットとしては、例えばストレプトアビジン結合磁性粒子懸濁液、ビオチン化第1抗体溶液、及び、酵素標識化第2抗体溶液を含むキット、検体希釈液、ストレプトアビジン結合磁性粒子懸濁液、ビオチン化第1抗体溶液、及び、酵素標識化第2抗体溶液を含むキット等が挙げられる。検体希釈液、ストレプトアビジン結合磁性粒子懸濁液、ビオチン化第1抗体溶液、及び、酵素標識化第2抗体溶液を含むキットにおいては、組織プラスミノーゲンアクチベーターは検体希釈液に含まれることが好ましく、カゼインは、検体希釈液、ストレプトアビジン結合磁性粒子懸濁液、ビオチン化第1抗体溶液、及び、酵素標識化第2抗体溶液の1つまたは複数に含まれることが好ましい。
【0028】
(検体と測定試薬との反応〜抗原抗体反応)
・検体と測定試薬1との反応
検体中の測定対象物(抗原)と、固相中の第1の抗体、及び、標識化第2抗体との反応(抗原抗体反応)を、カゼイン、及び、組織プラスミノーゲンアクチベーターの存在下に行い、不溶性担体上に、第1抗体、測定対象物、及び、標識化第2抗体からなる免疫複合体を生成させ、当該免疫複合体中の標識量を測定し、測定された標識量を、予め既知濃度の測定対象物を用いて作成された標識量と測定対象物濃度との関係を表す検量線に照らし合わせることにより、検体中の測定対象物の濃度を決定する。
【0029】
・検体と測定試薬2との反応
検体中の測定対象物(抗原)及び標識化競合物質と、固相中の抗体との反応(抗原抗体反応)を、カゼイン、及び、組織プラスミノーゲンアクチベーターの存在下に行い、不溶性担体上に、抗体と測定対象物とからなる免疫複合体、及び、抗体と標識化競合物質とからなる免疫複合体を生成させ、抗体と標識化競合物質とからなる免疫複合体中の標識量を測定し、測定された標識量を、予め既知濃度の測定対象物を用いて作成された標識量と測定対象物濃度との関係を表す検量線に照らし合わせることにより、検体中の測定対象物の濃度を決定する。
【0030】
・検体と測定試薬3との反応
検体中の測定対象物(抗原)及び固相中の競合物質と、標識化抗体との反応(抗原抗体反応)を、カゼイン、及び、組織プラスミノーゲンアクチベーターの存在下に行い、不溶性担体上に、競合物質と標識化抗体とからなる免疫複合体を生成させ、生成した当該免疫複合体中の標識量を測定し、測定された標識量を、予め既知濃度の測定対象物を用いて作成された標識量と測定対象物濃度との関係を表す検量線に照らし合わせることにより、検体中の測定対象物の濃度を決定する。
【0031】
上記のいずれの反応においても、抗原抗体反応により免疫複合体を生成させた後、当該免疫複合体が固定化された不溶性担体から、未反応の反応体を除くための操作を行うことが好ましい。未反応の反応体を除いた後、不溶性担体を洗浄液で洗浄することが好ましい。洗浄液としては、例えば前述の洗浄液等が挙げられる。
【0032】
不溶性担体として磁性粒子を用いる場合、抗原抗体反応後、反応容器の外に磁石を配置して集磁することにより、当該免疫複合体を固定化した磁性粒子を、未反応の反応体と分離することができる。
【0033】
本発明において、前処理として、検体を、組織プラスミノーゲンアクチベーターを含む検体希釈液と混合したものを予め用意し、検体希釈液で処理された検体を抗原抗体反応に供することもできる。また、検体を、組織プラスミノーゲンアクチベーターを含む検体希釈液と混合し、混合液を撹拌または静置した後、抗原抗体反応に供することもできる。混合液を撹拌または静置することにより、検体中のプラスミノーゲンが組織プラスミノーゲンアクチベーターと反応し、生成したプラスミンにより、検体中のフィブリンが分解されるため、混合液を撹拌または静置することが好ましい。
【0034】
磁性粒子としては、免疫測定方法が可能な磁性粒子であれば特に限定はなく、例えばフェライトで被覆したラテックス、フェライトで被覆したポリマー粒子等が挙げられる。また、抗体の結合を容易にするために、ビオチンと結合する性質を有するアビジン、ニュートラアビジン又はストレプトアビジンを表面に固定化した磁性粒子も使用することができる。磁性粒子の粒径は、特に限定されないが、例えば1μm〜6μmであり、好ましくは1μm〜3μmである。本発明に用いられる磁性粒子としては、市販の磁性粒子を用いることができる。市販の磁性粒子としては、例えばDynabeads MyOne Streptavidin T1(ダイナル社製)、Dynabeads M280 Streptavidin(ダイナル社製)、Estapor(メルク社製)、Sera-Mag Magnetic Streptavidin Particles(サーモサイエンティフィック社製)、MAGNOTEX-SA(JSR社製)等が挙げられる。
【0035】
(抗体)
本発明における、測定対象物に結合する抗体としては、測定対象物に特異的に結合する抗体であれば特に制限はなく、ポリクローナル抗体、モノクローナル抗体のいずれも使用できる。また、本発明に用いられる抗体としては、抗体断片を包含する。具体的には、抗体をパパイン処理により得られるFab、ペプシン処理により得られるF(ab’)2、ペプシン処理−還元処理により得られるFab’等のFc部分を除去した抗体断片等が挙げられる。
【0036】
本発明における、測定対象物に結合する抗体は、測定対象物またはその一部分を抗原として用いて通常の方法により取得することができるが、市販品を用いることもできる。
【0037】
例えば、測定対象物がPIVKA−IIである場合、第1の抗体と第2の抗体の組み合わせとしては、例えばヒトPIVKA−IIに特異的に結合する抗体とヒトPIVKA−IIに特異的に結合する抗体との組み合わせ、ヒトPIVKA−IIに特異的に結合する抗体とヒトプロトロンビンに結合する抗体との組み合わせ、ヒトプロトロンビンに結合する抗体とヒトPIVKA−IIに特異的に結合する抗体との組み合わせ等が挙げられ、ヒトPIVKA−IIに特異的に結合する抗体とヒトプロトロンビンに結合する抗体との組み合わせが好ましい。
【0038】
ヒトPIVKA−IIに特異的に結合する抗体としては、ヒトPIVKA−IIで免疫した動物から公知の方法により製造することができ、例えば特開昭60−60557号公報に記載の方法に従い、マウス抗ヒトPIVKA−IIモノクローナル抗体を製造することができる。
【0039】
また、ヒトプロトロンビンに結合する抗体としては、ヒトプロトロンビンにもヒトPIVKA−IIにも結合する抗体であれば特に制限はなく、例えばウサギ抗ヒトプロトロンビンポリクローナル抗体やマウス抗ヒトプロトロンビンモノクローナル抗体等が挙げられ、例えば特開昭60−60557号公報に記載の方法に従い、ウサギ抗ヒトプロトロンビンポリクローナル抗体を製造することができる。また、市販品も用いることができ、例えばウサギ抗ヒトプロトロンビンポリクローナル抗体である「Prothrombin, anti-human」(ASSAYPRO社製)や、マウス抗ヒトプロトロンビンモノクローナル抗体である「Anti-Human Prothrombin - Monoclonal」(Haematologic Technologies Inc.社製)等を用いることができる。
【0040】
測定試薬1を用いるサンドイッチ法による免疫測定法においては、測定対象物に結合する第1の抗体と、測定対象物に結合する第2の抗体とが使用されるが、第1の抗体が認識する測定対象物の部位と、第2の抗体が認識する測定対象物の部位とは同じでも異なっていてもよく、異なっていることが好ましい。
【0041】
(競合物質)
本発明における競合物質とは、前述したように「測定対象物に結合する抗体」に結合できる物質であって、かつその結合が、該測定対象物と競合的であるような物質を意味し、測定対象物そのものも含まれる。競合物質は、試料中の測定対象物を競合法により測定する際に使用されるものである。したがって、競合法において用いる測定対象物に結合する抗体は、測定対象物、競合物質および標識化競合物質に結合する抗体であり、該測定対象物と結合して免疫複合体を生成するとともに、競合物質とも結合して免疫複合体を生成する。
【0042】
競合物質としては、測定対象物に結合する抗体が認識するエピトープの構造と同じ構造を有している物質が好ましく、さらに、測定対象物に結合する抗体への結合の強さが、該抗体に対する該測定対象物の結合の強さと同程度であるものが好ましく、測定対象物そのものが好ましい。
【0043】
(固相と不溶性担体)
本発明における固相とは、測定対象物に結合する抗体、又は、競合物質を不溶性担体に固定化して調製される。不溶性担体としては、測定対象物に結合する抗体、又は、競合物質を安定に保持できるものであればいかなるものも使用することができる。不溶性担体の好ましい素材としてはポリスチレン、ポリカーボネート、ポリビニルトルエン、ポリプロピレン、ポリエチレン、ポリ塩化ビニル、ナイロン、ポリメタクリレート、ゼラチン、アガロース、セルロース、ニトロセルロース、セルロースアセテート、酢酸セルロース、ポリエチレンテレフタレート等の高分子素材、ガラス、セラミックス、磁性粒子や金属等が挙げられる。不溶性担体の好ましい形状としてはチューブ、ビーズ、プレート、ラテックス等の微粒子、スティック等が挙げられる。
【0044】
(抗体又は競合物質の不溶性担体への固定化)
本発明において、抗体又は競合物質の不溶性担体への固定化方法としては、不溶性担体上に抗体又は競合物質を安定に固定化し得る方法であれば特に制限はなく、例えば物理学的結合を利用した方法、化学的結合を利用した方法、これらの併用等の方法が挙げられる。物理学的結合としては、例えば静電的結合、水素結合、疎水結合等が挙げられる。化学的結合としては、例えば共有結合、配位結合等が挙げられる。
【0045】
抗体または競合物質は、直接、不溶性担体に固定化してもよいし、間接的に不溶性担体に固定化してもよい。間接的な固定化方法としては、例えばアビジンを固定化した不溶性担体に、ビオチン化した抗体または競合物質を添加し、ビオチンとアビジンとの特異的結合を介して、抗体または競合物質を不溶性担体に固定化する方法が挙げられる。また、不溶性担体に、抗体に特異的に結合する抗体または競合物質に特異的に結合する抗体を固定化し、この抗体を介して抗体または競合物質を不溶性担体に固定化することもできる。あるいは、抗体または競合物質は、リンカーを介した共有結合により不溶性担体に固定化してもよい。
【0046】
リンカーとしては、例えば、抗体または測定対象物の官能基と不溶性担体の側鎖の官能基の両者と共有結合できる分子であればいずれでも用いることができる。例えば、抗体または測定対象物が有する官能基と反応することができる第1の反応活性基と、不溶性担体の側鎖の官能基と反応することができる第2の反応活性基を同時に持つ分子が挙げられ、第1の反応活性基と第2の反応活性基が異なる基であることが好ましい。抗体又は競合物質の官能基、及び、不溶性担体がその表面に保持している官能基としては、例えばカルボキシ基やアミノ基、グリシジル基、スルフヒドリル基、水酸基、アミド基、イミノ基、N−ヒドロキシサクシニル基、マレイミド基等が挙げられる。リンカーにおける活性な反応性基としては、例えば、アリルアジド、カルボジイミド、ヒドラジド、アルデヒド、ヒドロキシメチルホスフィン、イミドエステル、イソシアネート、マレイミド、N−ヒドロキシスクシンイミド(NHS)エステル、ペンタフルオロフェニル(PFP)エステル、ソラレン、ピリジルジスルフィド、ビニルスルホン等の基が挙げられる。
【0047】
(標識化抗体及び標識化競合物質)
標識化抗体及び標識化競合物質における標識としては酵素、蛍光物質、発光物質等が挙げられる。
【0048】
酵素としては、例えばアルカリホスファターゼ、ペルオキシダーゼ、ガラクトシダーゼ、グルクロニダーゼ、ルシフェラーゼ等が挙げられる。
【0049】
蛍光物質としては、例えば、FITC(フルオレッセイン イソチオシアナート)、RITC(ローダミンB−イソチオシアナート)、蛍光を発する蛋白質等が挙げられる。蛍光を発する蛋白質としては、例えばquantum dot(Science, 281, 2016-2018, 1998)、フィコエリスリン等のフィコビリ蛋白質、GFP(Green fluorescent Protein)、RFP(Red fluorescent Protein)、YFP(Yellow fluorescent Protein)、BFP(Blue fluorescent Protein)等が挙げられる。
【0050】
発光物質としては、例えばアクリジニウムおよびその誘導体、ルテニウム錯体化合物、ロフィン等が挙げられる。
【0051】
抗体又は測定対象物と標識との反応による抗体又は測定対象物の標識化は、抗体又は測定対象物と標識物質それぞれが有する官能基の間で、リンカーを介して、又は、介さず共有結合を生じる反応によって行うことができる。官能基としては、カルボキシル基やアミノ基、グリシジル基、スルフヒドリル基、水酸基、アミド基、イミノ基、ヒドロキシサクシニルエステル基、マレイミド基、イソチオシアナート基等が挙げられる。この官能基同士の間で縮合反応により標識化を行うことができる。
【0052】
リンカーを介さない結合方法としては例えば、EDC等のカルボジイミド化合物を用いる方法等が挙げられる。この場合、NHS又はその誘導体等の活性エステルを使用することもできる。イソチオシアナート基とアミノ基の間の縮合反応は、他の試薬を必要とせず、中性〜弱アルカリ性の条件で混合するだけで進行するため、好ましい。
【0053】
リンカーとしては、例えば、標識と抗体又は競合物質とをそれぞれの官能基を介して結合させうる分子等が挙げられる。例えば、抗体のアミノ酸残基と反応することができる第1の官能基と、標識物質の側鎖の官能基と反応することができる第2の官能基とを同一分子内に有する分子等が挙げられ、第1の官能基と第2の官能基とが異なる基であることが好ましい。リンカーの官能基としては、例えば前述の官能基が挙げられる。
【0054】
(標識量の測定)
免疫複合体の標識の量の測定方法は、標識に応じて適切なものを選ぶことができる。すなわち、標識が発色物質、すなわち、ある波長の光を吸収する物質の場合、分光光度計やマルチウェルプレートリーダー等を用いることができる。標識が蛍光物質の場合には、蛍光光度計や蛍光マルチウェルプレートリーダー等を用いることができる。標識が発光物質の場合には、発光光度計や発光マルチウェルプレートリーダー等を用いることができる。
【0055】
標識が酵素である場合、標識量は、酵素活性を測定することにより測定することができる。例えば酵素の基質を当該酵素と反応させ、生成した物質を測定することにより、標識量を測定することができる。
【0056】
酵素がペルオキシダーゼである場合には、例えば吸光度法、蛍光法等によりペルオキシダーゼ活性を測定することができる。吸光度法によりペルオキシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばペルオキシダーゼとその基質である過酸化水素および酸化発色型色原体の組み合わせとを反応させ、反応液の吸光度を分光光度計やマルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等があげられる。酸化発色型色原体としては、例えばロイコ型色原体、酸化カップリング発色型色原体等が挙げられる。
【0057】
ロイコ型色原体は、過酸化水素およびペルオキシダーゼ等の過酸化活性物質の存在下、単独で色素へ変換される物質である。具体的には、テトラメチルベンジジン、o−フェニレンジアミン、10−N−カルボキシメチルカルバモイル−3,7−ビス(ジメチルアミノ)−10H−フェノチアジン(CCAP)、10−N−メチルカルバモイル−3,7−ビス(ジメチルアミノ)−10H−フェノチアジン(MCDP)、N−(カルボキシメチルアミノカルボニル)−4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン ナトリウム塩(DA-64)、10−N−カルボキシメチルカルバモイル−3,7−ビス(ジメチルアミノ)−10H−フェノチアジン ナトリウム塩(DA-67)、4,4’−ビス(ジメチルアミノ)ジフェニルアミン、ビス〔3−ビス(4−クロロフェニル)メチル−4−ジメチルアミノフェニル〕アミン(BCMA)等が挙げられる。
【0058】
酸化カップリング発色型色原体は、過酸化水素およびペルオキシダーゼ等の過酸化活性物質の存在下、2つの化合物が酸化的カップリングして色素を生成する物質である。2つの化合物の組み合わせとしては、カプラーとアニリン類(トリンダー試薬)との組み合わせ、カプラーとフェノール類との組み合わせ等があげられる。カプラーとしては、例えば4−アミノアンチピリン(4-AA)、3−メチル−2−ベンゾチアゾリノンヒドラジン等があげられる。アニリン類としては、N−(3−スルホプロピル)アニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン(MAOS)、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(DAOS)、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メチルアニリン(TOPS)、N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン(HDAOS)、N,N−ジメチル−3−メチルアニリン、N,N−ビス(3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)アニリン、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−(3−スルホプロピル)−3,5−ジメトキシアニリン、N−エチル−N−(3−スルホプロピル)−3,5−ジメチルアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−3−メトキシアニリン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)アニリン、N−エチル−N−(3−メチルフェニル)−N’−サクシニルエチレンジアミン(EMSE)、N−エチル−N−(3−メチルフェニル)−N’−アセチルエチレンジアミン、N−エチル−N−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)−4−フルオロ−3,5−ジメトキシアニリン(F-DAOS)等があげられる。フェノール類としては、フェノール、4−クロロフェノール、3−メチルフェノール、3−ヒドロキシ−2,4,6−トリヨード安息香酸(HTIB)等が挙げられる。
【0059】
蛍光法によりペルオキシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばペルオキシダーゼとその基質である過酸化水素および蛍光物質の組み合わせとを反応させ、蛍光光度計や蛍光マルチウェルプレートリーダー等で生成した蛍光の強度を測定する方法等が挙げられる。当該蛍光物質としては、例えば4−ヒドロキシフェニル酢酸、3−(4−ヒドロキシフェニル)プロピオン酸、クマリン等が挙げられる。
【0060】
発光法によるペルオキシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばペルオキシダーゼとその基質である過酸化水素および発光物質の組み合わせとを反応させ、発光強度計や発光マルチウェルプレートリーダー等で生成した発光の強度を測定する方法等が挙げられる。当該発光物質としては、例えばルミノール化合物、ルシゲニン化合物等が挙げられる。
【0061】
酵素がアルカリホスファターゼである場合には、例えば発光法等によりアルカリホスファターゼ活性を測定することができる。発光法によりアルカリホスファターゼ活性を測定する方法としては、例えばアルカリホスファターゼとその基質とを反応させ、生成した発光の発光強度を発光強度計や発光マルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等が挙げられる。アルカリホスファターゼの基質としては、例えば3−(2'−スピロアダマンタン)−4−メトキシ−4−(3'−ホスホリルオキシ)フェニル−1,2−ジオキセタン・二ナトリウム塩(AMPPD)、2−クロロ−5−{4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2'−(5'−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]カン]−4−イル}フェニルホスフェート・二ナトリウム塩(CDP-StarTM)、3−{4−メトキシスピロ[1,2−ジオキセタン−3,2'−(5'−クロロ)トリシクロ[3.3.1.13,7]デカン]−4−イル}フェニルホスフェート・二ナトリウム塩(CSPDTM)、[10−メチル−9(10H)−アクリジニルイデン]フェノキシメチルリン酸・二ナトリウム塩(LumigenTM APS-5)等が挙げられる。
【0062】
酵素がβ−D−ガラクトシダーゼである場合には、例えば吸光度法(比色法)、発光法または蛍光法等によりβ−D−ガラクトシダーゼ活性を測定することができる。吸光度法(比色法)によりβ−D−ガラクトシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばo−ニトロフェル−β−D−ガラクトピラノシド等が挙げられる。発光法によりβ−D−ガラクトシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばβ−D−ガラクトシダーゼとその基質とを反応させ、反応液の発光度を発光強度計や発光マルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等が挙げられる。β−D−ガラクトシダーゼの基質としては、例えばガラクトン−プラス[Galacton-Plus、アプライドバイオシステムズ(Applied Biosystems)社製]またはその類似化合物等があげられる。蛍光法によりβ−D−ガラクトシダーゼ活性を測定する方法としては、例えばβ−D−ガラクトシダーゼとその基質とを反応させ、反応液の蛍光度を蛍光光度計や蛍光マルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等があげられる。β−D−ガラクトシダーゼの基質としては、例えば4−メチルウンベリフェリル−β−D−ガラクトピラノシド等が挙げられる。
【0063】
酵素がルシフェラーゼである場合には、例えば発光法等によりルシフェラーゼ活性を測定することができる。発光法によりルシフェラーゼ活性を測定する方法としては、例えばルシフェラーゼとその基質とを反応させ、反応液の発光度を発光強度計や発光マルチウェルプレートリーダー等で測定する方法等が挙げられる。ルシフェラーゼの基質としては、例えばルシフェリン、セレンテラジン等が挙げられる。
【0064】
(カゼイン)
本発明におけるカゼインとしては、特に制限はないが、ブロッキング剤として使用可能なカゼインが好ましい。本発明におけるカゼインには、ウシ血清アルブミン(BSA)、ウシ胎児血清(FBS)、ウサギ血清、ウマ血清、ゼラチン、界面活性剤等のブロッキング剤が含まれていてもよい。
【0065】
本発明において、カゼインは、組織プラスミノーゲンアクチベーターと共に抗原抗体反応時に共存していればよく、固相中の不溶性担体粒子上に担持されていてもよい。
【0066】
(組織プラスミノーゲンアクチベーター)
本発明における組織プラスミノーゲンアクチベーターは、プラスミノーゲンをプラスミンに変換するセリンプロテアーゼ活性を有する組織プラスミノーゲンアクチベーターであれば特に制限はない。プラスミノーゲンから変換されて生成したプラスミンはフィブリンを溶解する。本発明における組織プラスミノーゲンアクチベーターとして、例えば大腸菌により産生されたもの、人又は動物由来の組織から抽出したもの、これら組織由来の組織培養液から抽出したもの、遺伝子工学的手法により製造されるもの等が挙げられる。
【0067】
また、本発明における組織プラスミノーゲンアクチベーターには、天然型のみならず改変型も含まれる。改変型の組織プラスミノーゲンアクチベーターは例えば、遺伝子工学的手法を利用して天然型組織プラスミノーゲンアクチベーターの1または複数のアミノ酸の付加、欠失または置換を行うことによって取得することができる。さらに、本発明において、市販の組織プラスミノーゲンアクチベーターも使用することができる。組織プラスミノーゲンアクチベーターの市販品としては、例えばTissue Plasminogen Activator, Human, Recombinant (tPA)(ITSI BIOSCIENCES社製)、plasminogen activator, tissue(PLAT) Homo sapiens, Over -expression Lysate (OriGene Technologies,Inc.社製)等が挙げられる。
【0068】
(非特異反応抑制効果の評価)
本発明の非特異反応抑制方法による非特異反応抑制効果は、例えば次の工程を含む方法により評価することができる。
(1)検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機、及び、測定試薬を用いて、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む複数の検体について、各検体中の測定対象物を免疫測定法により連続的に測定する工程;
(2)自動免疫測定装置を用いる連続的免疫測定法において、正確な測定が可能な既知の連続的免疫測定法(対照法)により、同一の複数検体の各検体中の当該測定対象物を測定する工程;
(3)工程(1)の測定で得られた測定値と、工程(2)の測定で得られた測定値とを比較する工程。
【0069】
ここで、測定対象物がPIVKA−IIの場合、対照法としては、例えば全自動電気化学発光免疫測定装置「ピコルミTMII」(エーディア社製)、及び、PIVKA−II測定キット「ピコルミTMPIVKA−II」(エーディア社製)を用いる方法等が挙げられる。
【0070】
上記工程(3)での比較において、工程(1)の測定で得られた測定値と、工程(2)の測定で得られた測定値との相関の相関係数が1に近い程、非特異反応が抑制されていると評価でき、相関係数が1から外れる程、非特異反応が抑制されていないと評価することができる。
【0071】
非特異反応抑制効果は、次の工程を含む方法によっても評価することができる。
(1)検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機による連続測定に供されていない測定試薬、及び、検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機により連続測定が行われた測定試薬を準備する工程;
(2)工程(1)で準備された各測定試薬、及び、検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機を用いて、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む同一の複数検体について、各検体中の測定対象物を免疫測定法により連続的に測定する工程;
(3)工程(2)の連続測定により得られた測定値について、連続測定に供されていない測定試薬を用いた場合の測定値と、連続測定が行われた測定試薬を用いた場合の測定値とを比較する工程。
【0072】
上記工程(3)での比較において、工程(1)の測定で得られた測定値と、工程(2)の測定で得られた測定値との相関の相関係数が1に近い程、非特異反応が抑制されていると評価でき、相関係数が1から外れる程、非特異反応が抑制されていないと評価することができる。
【0073】
(測定試薬中の添加物)
前述のとおり、本発明において、測定試薬には、必要に応じて、水性媒体、酵素基質(標識が酵素である場合)、金属イオン、糖類、防腐剤、界面活性剤、蛋白質安定化剤等の添加物が含まれていてよい。
【0074】
水性媒体としては、例えば脱イオン水、蒸留水、緩衝液等があげられ、緩衝液が好ましい。緩衝液の調製に使用される緩衝剤としては、緩衝能を有するものならば特に限定されないが、pH1〜11の例えば乳酸緩衝剤、クエン酸緩衝剤、酢酸緩衝剤、コハク酸緩衝剤、フタル酸緩衝剤、リン酸緩衝剤、トリエタノールアミン緩衝剤、ジエタノールアミン緩衝剤、リジン緩衝剤、バルビツール緩衝剤、イミダゾール緩衝剤、リンゴ酸緩衝剤、シュウ酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、ホウ酸緩衝剤、炭酸緩衝剤、グリシン緩衝剤、グッド緩衝剤等が挙げられる。
【0075】
グッド緩衝剤としては、例えば2−モルホリノエタンスルホン酸(MES)緩衝剤、ビス(2−ヒドロキシエチル)イミノトリス(ヒドロキシメチル)メタン(Bis-Tris)緩衝剤、トリス(ヒドロキシメチル)アミノメタン(Tris)緩衝剤、N−(2−アセトアミド)イミノ二酢酸(ADA)緩衝剤、ピペラジン−N,N’−ビス(2−エタンスルホン酸)(PIPES)緩衝剤、2−[N−(2−アセトアミド)アミノ]エタンスルホン酸(ACES)緩衝剤、3−モルホリノ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(MOPSO)緩衝剤、2−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]エタンスルホン酸(BES)緩衝剤、3−モルホリノプロパンスルホン酸(MOPS)緩衝剤、2−{N−[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}エタンスルホン酸(TES)緩衝剤、N−(2−ヒドロキシエチル)−N’−(2−スルホエチル)ピペラジン(HEPES)緩衝剤、3−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(DIPSO)緩衝剤、2−ヒドロキシ−3−{[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノ}プロパンスルホン酸(TAPSO)緩衝剤、ピペラジン−N,N’−ビス(2−ヒドロキシプロパン−3−スルホン酸)(POPSO)緩衝剤、N−(2−ヒドロキシエチル)−N’−(2−ヒドロキシ−3−スルホプロピル)ピペラジン(HEPPSO)緩衝剤、N−(2−ヒドロキシエチル)−N’−(3−スルホプロピル)ピペラジン(EPPS)緩衝剤、[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチルグリシン](Tricine)緩衝剤、[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)グリシン](Bicine)緩衝剤、3−[N−トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アミノプロパンスルホン酸(TAPS)緩衝剤、2−(N−シクロヘキシルアミノ)エタンスルホン酸(CHES)緩衝剤、3−(N−シクロヘキシルアミノ)−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸(CAPSO)緩衝剤、3−(N−シクロヘキシルアミノ)プロパンスルホン酸(CAPS)緩衝剤等が挙げられる。
【0076】
酵素基質としては、例えば前述の酵素基質等が挙げられる。
【0077】
金属イオンとしては、例えばマグネシウムイオン、マンガンイオン、亜鉛イオン等が挙げられる。糖類としては、例えばマンニトール、ソルビトール等が挙げられる。防腐剤としては、例えばアジ化ナトリウム、抗生物質(ストレプトマイシン、ペニシリン、ゲンタマイシン等)、バイオエース、プロクリン300等が挙げられる。界面活性剤としては、例えば陽イオン性界面活性剤、陰イオン性界面活性剤、両性界面活性剤、非イオン性界面活性剤等が挙げられ、例えばトリトンX-100、トリトンX-405、トリトンX-705(以上、日油社製)等が挙げられる。蛋白質安定化剤としては、例えばペルオキシダーゼ安定化緩衝液、アルカリホスファターゼ安定化緩衝液等が挙げられる。
【0078】
以下、実施例により本発明を詳細に説明するが、これらは本発明の範囲を何ら限定するものではない。
【実施例1】
【0079】
(1)検体
健常人由来の血清(3検体)を検体として用いた。
【0080】
(2)測定試薬
以下の、検体希釈液、ビオチン化抗PIVKA−II抗体溶液、及び、アルカリホスファターゼ標識化抗プロトロンビン抗体フラグメント溶液からなる測定試薬を調製した。
<検体希釈液>
MES(pH6.5) 50 mmol/L
アジ化ナトリウム 0.1%
カゼイン 1%
ストレプトキナーゼ(β−hemolytic Streptococcus 由来;SIGMA社製)
150 kU/L
【0081】
<ビオチン化抗PIVKA−II抗体溶液>
第1抗体として、特開昭60−60557号公報の実施例1に記載された方法に従い取得したマウス抗ヒトPIVKA−IIモノクローナル抗体を用いて、当該抗体とNHS-ビオチンとを混合し、37℃で1時間反応させ、反応後の混合物をセファデックスG-25カラム(GEヘルスサイエンス・ジャパン社製)に供して未反応のNHS-ビオチンを除去し、ビオチン化マウス抗ヒトPIVKA−IIモノクローナル抗体を調製した。得られた当該ビオチン化モノクローナル抗体を用いて、以下の組成からなるビオチン化マウス抗ヒトPIVKA−IIモノクローナル抗体溶液を調製した。
MES(pH6.5) 50 mmol/L
アジ化ナトリウム 0.1%
ビオチン化マウス抗ヒトPIVKA−IIモノクローナル抗体
3μg/mL
【0082】
<アルカリホスファターゼ標識化抗プロトロンビン抗体フラグメント溶液>
第2抗体として、特開昭60−60557号公報の実施例1に記載された方法に従い取得したウサギ抗ヒトプロトロンビンポリクローナル抗体をペプシンで消化した後、G3000SWカラム(東ソー社製;口径:21.5 mm;長さ:60 cm)を用いたHPLCシステム(日立製作所社製)で分離して得られたF(ab’)2を用いた。得られたF(ab’)2を2−メルカプトエチルアミン塩酸塩(ナカライテスク社製)で還元した後、G3000SWカラム(東ソー社製;口径:21.5 mm;長さ:60 cm)を用いたHPLCシステム(日立製作所社製)でFab’を分離した。得られたFab’とアルカリホスファターゼとを以下の手順により、マレイミド法によって結合させた。
【0083】
マレイミド化試薬Sulfo-HMCS(同仁化学研究所社製)を用いて、アルカリホスファターゼをマレイミド化し、反応混合物をセファデックスG-25カラム(GEヘルスサイエンス・ジャパン社製)に供して未反応のSulfo-HMCSを除去し、マレイミド化アルカリホスファターゼを得た。
【0084】
調製したマレイミド化アルカリホスファターゼとFab’とを混合し、アルカリホスファターゼ標識化Fab’を作製した。得られたアルカリホスファターゼ標識化Fab’を用いて、以下の組成からなるアルカリホスファターゼ標識化抗プロトロンビン抗体フラグメント溶液を調製した。
MES(pH6.5) 50 mmol/L
アジ化ナトリウム 0.1%
アルカリホスファターゼ標識化ウサギ抗プロトロンビンポリクローナル抗体フラグメント
2μg/mL
塩化ナトリウム 0.1 mol/L
【0085】
(3)反応キュベットへのアルカリホスファターゼ標識化抗プロトロンビン抗体フラグメントの非特異吸着の検討
全自動化学発光免疫測定装置「CL−JACKTM」(協和メデックス社製)を用いて、以下の手順に従い、反応キュベットへのアルカリホスファターゼ標識化抗プロトロンビン抗体フラグメントの非特異吸着を検討した。
(1)血清(10μL)及び検体希釈液(30μL)を反応キュベットに添加する;
(2)ビオチン化抗PIVKA−II抗体溶液(30μL)を反応キュベットに添加し、37℃で1分間反応させる;
(3)アルカリホスファターゼ標識化抗プロトロンビン抗体フラグメント溶液(30μL)を反応キュベットに添加し、37℃で10分間反応させる;
(4)反応キュベット内の反応混合物を除去する;
(5)反応キュベット内を、CL アナライザー洗浄液(協和メデックス社製)で洗浄する;
(6)発光物質APS−5を含む発光試薬(100μL)を反応キュベットに添加し、37℃で45秒間反応させる;
(7)発光量を測定する。
【0086】
測定試薬として、連続測定に供する前の測定試薬、連続測定を60回行った後の測定試薬、連続測定を160回行った後の測定試薬、連続測定を350回行った後の測定試薬、それぞれの測定試薬を用いて、検体として、(1)の血清検体(3検体)を用いて、上記手順に従い、各検体に対する発光量を測定した。その結果を図1に示す。
【0087】
図1から明らかな様に、連続測定をより多く行った後の測定試薬を用いた場合に、発光量の上昇が見られた。このことから、連続測定の回数が増えるにつれて、非特異反応が増大していることが分かった。
【0088】
(4)非特異反応増大の原因の検討
この非特異反応増大の原因について、以下の方法により検討した。「CL−JACKTM」による連続測定を200回行った後の測定試薬について、測定試薬を構成する試薬の1つである検体希釈液にカゼイン水溶液を添加し、1%カゼイン含有検体希釈液を含有する測定試薬(以下、1%カゼイン含有測定試薬という)を調製した。連続測定を200回行った後の測定試薬、及び、1%カゼイン含有測定試薬のそれぞれの測定試薬を用いて、血清検体(2検体)の各検体に対する発光量を、同様の手順に従って測定した。その結果を図2に示す。
【0089】
図2から明らかな様に、連続測定を200回行った後の測定試薬を用いた測定では、発光量が上昇し、非特異反応が見られたのに対して、1%カゼイン含有測定試薬を用いた測定では、非特異反応が抑制された。このことから、非特異反応の増大が、検体希釈液中のカゼインの分解に起因することが判明した。
【実施例2】
【0090】
(1)検体
肝癌患者由来の血清を含むヒト血清(45検体)を検体として用いた。
【0091】
(2)測定試薬
以下の、検体希釈液、磁性粒子懸濁液、ビオチン化抗PIVKA−II抗体溶液、及び、アルカリホスファターゼ標識化抗プロトロンビン抗体フラグメント溶液からなる測定試薬を調製した。
<検体希釈液>
MES(pH6.5) 50 mmol/L
アジ化ナトリウム 0.1%
カゼイン 1%
ストレプトキナーゼ(β−hemolytic Streptococcus 由来;SIGMA社製)
0又は150 kU/L
【0092】
<磁性粒子懸濁液>
磁性粒子として、ストレプトアビジンが結合した市販の磁性粒子を用いて、以下の組成からなる磁性粒子懸濁液を調製した。
MES(pH6.5) 50 mmol/L
アジ化ナトリウム 0.1%
ストレプトアビジン結合磁性粒子 1 g/L
【0093】
<ビオチン化抗PIVKA−II抗体溶液>
第1抗体として、特開昭60−60557号公報の実施例1に記載された方法に従い取得したマウス抗ヒトPIVKA−IIモノクローナル抗体を用いて、当該抗体とNHS-ビオチンとを混合し、37℃で1時間反応させ、反応後の混合物をセファデックスG-25カラム(GEヘルスサイエンス・ジャパン社製)に供して未反応のNHS-ビオチンを除去し、ビオチン化マウス抗ヒトPIVKA−IIモノクローナル抗体を調製した。得られた当該ビオチン化モノクローナル抗体を用いて、以下の組成からなるビオチン化マウス抗ヒトPIVKA−IIモノクローナル抗体溶液を調製した。
MES(pH6.5) 50 mmol/L
アジ化ナトリウム 0.1%
ビオチン化マウス抗ヒトPIVKA−IIモノクローナル抗体
3μg/mL
【0094】
<アルカリホスファターゼ標識化抗プロトロンビン抗体フラグメント溶液>
第2抗体として、特開昭60−60557号公報の実施例1に記載された方法に従い取得したウサギ抗ヒトプロトロンビンポリクローナル抗体をペプシンで消化した後、G3000SWカラム(東ソー社製;口径:21.5 mm;長さ:60 cm)を用いたHPLCシステム(日立製作所社製)で分離して得られたF(ab’)2を用いた。得られたF(ab’)2を2−メルカプトエチルアミン塩酸塩(ナカライテスク社製)で還元した後、G3000SWカラム(東ソー社製;口径:21.5 mm;長さ:60 cm)を用いたHPLCシステム(日立製作所社製)でFab’を分離した。得られたFab’とアルカリホスファターゼとを以下の手順により、マレイミド法によって結合させた。
【0095】
マレイミド化試薬Sulfo-HMCS(同仁化学研究所社製)を用いて、アルカリホスファターゼをマレイミド化し、反応混合物をセファデックスG-25カラム(GEヘルスサイエンス・ジャパン社製)に供して未反応のSulfo-HMCSを除去し、マレイミド化アルカリホスファターゼを得た。
【0096】
調製したマレイミド化アルカリホスファターゼとFab’とを混合し、アルカリホスファターゼ標識化Fab’を作製した。得られたアルカリホスファターゼ標識化Fab’を用いて、以下の組成からなるアルカリホスファターゼ標識化抗プロトロンビン抗体フラグメント溶液を調製した。
MES(pH6.5) 50 mmol/L
アジ化ナトリウム 0.1%
アルカリホスファターゼ標識化ウサギ抗プロトロンビンポリクローナル抗体フラグメント
2μg/mL
塩化ナトリウム 0.1 mol/L
【0097】
(3)検体中のPIVKA−IIの連続測定
全自動化学発光免疫測定装置「CL−JACKTM」(協和メデックス社製)を用いて、以下の手順に従い、検体中のPIVKA−IIの連続測定を行った。
(1)血清(10μL)及び検体希釈液(30μL)を反応キュベットに添加する;
(2)ビオチン化抗PIVKA−II抗体溶液(30μL)を反応キュベットに添加し、37℃で1分間反応させる;
(3)ストレプトアビジン結合磁性粒子懸濁液(30μL)を反応キュベットに添加し、37℃で9分間反応させる;
(4)アルカリホスファターゼ標識化抗プロトロンビン抗体フラグメント溶液(30μL)を反応キュベットに添加し、37℃で10分間反応させる;
(5)反応キュベットの外側に磁石を配置して集磁し、反応キュベット内の未反応物を除去すると共に、反応キュベット内の磁性粒子を、CL アナライザー洗浄液(協和メデックス社製)で洗浄する;
(6)発光物質APS−5を含む発光試薬(100μL)を反応キュベットに添加し、37℃で45秒間反応させる;
(7)発光量を測定する;
(8)予め、既知濃度のPIVKA−IIを含む標準試薬を用いて作成した、PIVKA−II濃度と発光量との関係を示す検量線用いて、測定された発光量から、検体中のPIVKA−II濃度を決定する。
【0098】
検体希釈液として、ストレプトキナーゼを含む希釈液と、含まない希釈液それぞれの希釈液を用いて、肝癌患者由来の血清を含むヒト血清(45検体)について、連続測定を行った。尚、測定試薬としては、連続測定を行う前の測定試薬、及び、連続測定を45回行った後の測定試薬をそれぞれ使用した。また、対照法として、同一検体について、全自動電気化学発光免疫測定装置「ピコルミTMII」(エーディア社製)、及び、PIVKA−II測定キット「ピコルミTMPIVKA−II」(エーディア社製)を用いる方法により、「ピコルミTMPIVKA−II」の添付文書に記載の手順に従って、連続測定を行った。カゼインを含み、ストレプトキナーゼを含まない検体希釈液を含有する測定試薬を用いた連続測定と対照法との相関を図3に、カゼインとストレプトキナーゼとを含む検体希釈液を含有する測定試薬を用いた連続測定と対照法との相関を図4に示す。
【0099】
図3から明らかな様に、カゼインを含み、ストレプトキナーゼを含まない検体希釈液を含有する測定試薬を用いた場合には、測定試薬として、連続測定を行う前の測定溶液を用いた連続測定においては、図3(左)に示す通り、対照法との相関における相関係数が0.762となり、連続測定を45回行った後の測定試薬を用いた連続測定においては、図3(右)に示す通り、対照法との相関における相関係数が0.626となり、いずれの測定試薬を用いた連続測定においても、対照法との相関が不良となり、正確な測定ができないことが判明した。
【0100】
一方、カゼインとストレプトキナーゼとを含む検体希釈液を含有する測定試薬を用いた場合には、測定試薬として、連続測定を行う前の測定溶液を用いた連続測定においては、図4(左)に示す通り、対照法との相関における相関係数が0.910となり、対照法との間に良好な相関関係が認められたが、連続測定を45回行った後の測定試薬を用いた連続測定においては、図4(右)に示す様に、対照法との相関における相関係数が0.376となり、対照法との相関が非常に悪化した。このことは、検体中のプラスミノーゲンが検体希釈液中のストレプトキナーゼと反応して生成したプラスミンが、連続測定が進行するにつれ、検体中のフィブリンのみならず、カゼインをも溶解し、非特異反応が抑制されなくなったことを示している。
【実施例3】
【0101】
実施例2の検体希釈液として、ストレプトキナーゼ(150 U/mL)の代わりに、組織プラスミノーゲンアクチベーター(t-PA)(150 U/mL)(ITSI BIOSCIENCES社製)を用いる以外は、実施例2と同様の方法により、連続測定を行った。その結果を図5に示す。
【0102】
測定試薬として、連続測定を行う前の測定試薬を用いた連続測定においては、図5(左)に示す通り、対照法との相関における相関係数が0.968となり、連続測定を45回行った後の測定試薬を用いた連続測定においては、図5(右)に示す通り、対照法との相関における相関係数が0.983となり、いずれの測定試薬を用いた連続測定においても、対照法との間に良好な相関関係が認められた。すなわち、プラスミノーゲンアクチベーターとして組織プラスミノーゲンアクチベーターを用いた場合には、プラスミノーゲンアクチベーターとしてストレプトキナーゼを用いた場合とは異なり、連続測定後の測定試薬を用いた連続測定においても、対照法との良好な相関関係が認められることが判明した。
【産業上の利用可能性】
【0103】
本発明により、検体採取ノズルと測定試薬採取ノズルとが共用される自動分析機において、プラスミノーゲン及びフィブリンを含む複数検体の連続的免疫測定方法において、検体中の測定対象物の正確な測定を可能とする非特異反応抑制方法が提供される。本発明の非特異反応抑制方法は、肝臓癌等の臨床診断に有効である。
図1
図2
図3
図4
図5