(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【発明を実施するための形態】
【0012】
1.導電性微粒子
1−1.導電性金属層
本発明の導電性微粒子は、基材粒子と、該基材粒子の表面を被覆する導電性金属層とを有している。そして、前記導電性金属層がニッケル層を含み、粉末X線回折測定したとき、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、すなわちニッケル格子面(200)に垂直な方向([200]方向)に結晶が成長している。これによって、導電性微粒子の耐湿熱性が向上できる。
【0013】
(200)面に垂直な方向の結晶子径(以下、(xyz)面に垂直な方向の結晶子径を、d(xyz)と表す)は、好ましくは0.5nm以上である。d(200)の下限は、より好ましくは0.8nm以上、さらに好ましくは1nm以上である。d(200)の上限は、特に限定されないが、好ましくは10nm以下であり、より好ましくは6nm以下、さらに好ましくは5nm以下である。
【0014】
上記粉末X線回折測定では、上記した(200)面の他、例えば(111)面に帰属される回折線が観測されていても良い。この場合、d(200)/d(111)が0.05以上であることが好ましく、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.20以上(特に0.20超)、さらに好ましくは0.35以上である。これらの値が大きくなるほど、(200)面に帰属される回折線の存在が明確であると言える。特に導電性微粒子の個数平均粒子径が3μm以下の時にd(200)/d(111)が前記範囲を満足すると、耐湿熱性をより長時間に亘って持続できる様になる。d(200)/d(111)は、例えば1未満であることが好ましく、より好ましくは0.9以下、最も好ましくは0.8以下である。d(111)は、通常10nm未満であり、好ましくは2.0nm超である。
なお、本発明でいうd(200)やd(111)等の結晶子径は、粉末X線回折測定により得られる回折線幅(半値幅)よりシェラーの式を用いて算出した値であり、具体的な結晶子径の測定方法については実施例において説明する。
【0015】
前記ニッケル層は、ニッケル又はニッケル合金から構成される。ニッケル合金を使用する場合、ニッケル合金中のニッケル含有率は50質量%以上が好ましく、より好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上、一層好ましくは82質量%以上である。前記ニッケル合金としては、Ni−Au、Ni−Pd、Ni−Pd−Au、Ni−Ag、Ni−Cu、Ni−P、Ni−B、Ni−Zn、Ni−Sn、Ni−W、Ni−Co、Ni−Ti等が好ましく、これらの中でもNi−P合金が好ましい。
【0016】
前記Ni−P合金中のP(リン)濃度は、15質量%以下が好ましく、より好ましくは12質量%以下、さらに好ましくは10質量%以下である。P濃度が低いほど、ニッケル層の電気抵抗値が低くなる。なお、P濃度が低すぎる場合、磁性による凝集が生じて、導電性微粒子を1次粒子に分散しにくくなる傾向がある。そのため、P濃度は2質量%以上が好ましく、より好ましくは3質量%以上であり、さらに好ましくは4質量%以上である。なお、P濃度は、ニッケル合金中のNiとPとの合計質量に対するP質量の比(P/(P+Ni))である。
【0017】
前記ニッケル層の厚さは、0.005μm以上が好ましく、より好ましくは0.01μm以上、さらに好ましくは0.05μm以上、より好ましくは0.07μm以上である。また、ニッケル層の厚さは、0.3μm以下が好ましく、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下、一層好ましくは0.12μm以下である。ニッケル層の厚さが前記範囲であれば、導電性微粒子の導電性がより良好となる。特に、ニッケル層の厚さが0.3μm以下であれば、導電性微粒子の密度が高くなり過ぎず、バインダー等に分散した場合の分散安定性が向上する。
【0018】
導電性金属層は、前記ニッケル層の他に、他の導電性金属層を積層してもよく、積層しなくてもよいが、積層しない方が好ましい。他の導電性金属層を積層しない場合、ニッケル層が導電性金属層の最表層となる。
一方、他の導電性金属層を積層するときは、他の導電性金属層を構成する金属としては特に限定されないが、例えば、金、銀、銅、白金、鉄、鉛、アルミニウム、クロム、パラジウム、ロジウム、ルテニウム、アンチモン、ビスマス、ゲルマニウム、スズ、コバルト、インジウム及びニッケル−リン、ニッケル−ホウ素等の金属や金属化合物、及び、これらの合金等が挙げられる。これらの中でも、金、パラジウム、銀が導電性に優れており好ましい。導電性金属層は、例えば、ニッケル層−金層、ニッケル層−パラジウム層、ニッケル層−パラジウム層−金層、ニッケル層−銀層等の組合せが好ましく挙げられる。特に最外層として金層、又はパラジウム層を有することが好ましい。他の導電性金属層を積層するとき、他の導電性金属層が最表層となってもよい。
また、金やパラジウムなどの他の導電性金属層を構成する上記金属元素が、ニッケル元素と混在した金属層(合金状態の層を含む)を形成している形態も導電性金属層の好ましい形態の一つである。たとえば、ニッケル層を形成した後に、金の置換メッキを施した場合には、ニッケル層を構成するニッケル原子の少なくとも一部が金に置換されるために、上記のような導電性金属層となる。
前記ニッケル層は、基材粒子に直接形成してもよいし、下地として他の導電性金属層を基材粒子表面に形成し、その上にニッケル層を形成してもよいが、基材粒子に直接形成することが好ましい。
【0019】
前記他の導電性金属層の厚さは、前記ニッケル層よりも薄いことが好ましい。具体的には、前記他の導電性金属層の厚さは、前記ニッケル層の厚さの3/4以下が好ましく、より好ましくは1/2以下、さらに好ましくは1/3以下である。
【0020】
導電性金属層の厚さ(ニッケル層と他の金属層との合計の厚さ)は、0.01μm以上が好ましく、より好ましくは0.05μm以上、さらに好ましくは0.07μm以上であり、0.3μm以下が好ましく、より好ましくは0.25μm以下、さらに好ましくは0.2μm以下、一層好ましくは0.12μm以下である。前記導電性金属層の厚さが上記範囲内であれは、バインダー等への分散安定性に優れ、且つ、導電性に優れた導電性微粒子が得られる。
【0021】
1−2.基材粒子
前記基材粒子は、樹脂成分を含む樹脂粒子が好ましい。樹脂粒子を用いることで、弾性変形特性に優れた導電性微粒子が得られる。前記樹脂としては、例えば、メラミンホルムアルデヒド樹脂、メラミン−ベンゾグアナミン−ホルムアルデヒド樹脂、尿素ホルムアルデヒド樹脂等のアミノ樹脂;スチレン系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン−アクリル樹脂等のビニル重合体;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル、ポリテトラフルオロエチレン、ポリイソブチレン、ポリブタジエン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル類;ポリカーボネート類;ポリアミド類;ポリイミド類;フェノールホルムアルデヒド樹脂;オルガノポリシロキサン等が挙げられる。これらの樹脂は、単独で用いられてもよく、2種以上が併用されてもよい。電極の狭小化、或いは配線の微細化が進む電子部品実装において、今後、微細な導電性微粒子が要求されるため、基材粒子として、特に2.8μm未満の領域で、粒度分布が狭く、圧縮変形特性が制御された粒子が得られ易いという観点から、これらの中でも、ビニル重合体、アミノ樹脂、オルガノポリシロキサンが好ましく、ビニル重合体及びアミノ樹脂がより好ましく、特にビニル重合体が好ましい。ビニル重合体を含む材料は、ビニル基が重合して形成された有機系骨格を有し、加圧接続時の弾性変形に優れる。特に、ジビニルベンゼン及び/又はジ(メタ)アクリレートを重合成分として含むビニル重合体は、導電性金属被覆後の粒子強度の低下が少ない。
【0022】
1−2−1.ビニル重合体粒子
ビニル重合体粒子は、ビニル重合体により構成される。ビニル重合体は、ビニル系単量体(ビニル基含有単量体)を重合(ラジカル重合)することによって形成でき、このビニル系単量体はビニル系架橋性単量体とビニル系非架橋性単量体とに分けられる。なお、「ビニル基」には、炭素−炭素二重結合のみならず、(メタ)アクリロキシ基、アリル基、イソプロペニル基、ビニルフェニル基、イソプロペニルフェニル基のような官能基と重合性炭素−炭素二重結合から構成される置換基も含まれる。なお、本明細書において「(メタ)アクリロキシ基」、「(メタ)アクリレート」や「(メタ)アクリル」は、「アクリロキシ基及び/又はメタクリロキシ基」、「アクリレート及び/又はメタクリレート」や「アクリル及び/又はメタクリル」を示すものとする。
【0023】
前記ビニル系架橋性単量体とは、ビニル基を有し架橋構造を形成し得るものであり、具体的には、1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体(単量体(1))、又は、1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基(カルボキシル基、ヒドロキシ基等のプロトン性水素含有基、アルコキシ基等の末端官能基等)を有する単量体(単量体(2))が挙げられる。ただし、単量体(2)によって架橋構造を形成させるには、当該単量体(2)の結合性官能基と反応(結合)可能な相手方単量体の存在が必要である。
【0024】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(1)(1分子中に2個以上のビニル基を有する単量体)の例として、例えば、アリル(メタ)アクリレート等のアリル(メタ)アクリレート類;アルカンジオールジ(メタ)アクリレート(例えば、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、1,9−ノナンジオールジ(メタ)アクリレート、1,10−デカンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート等)、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレート(例えば、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、デカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタデカエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ペンタコンタヘクタエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、ポリテトラメチレングリコールジ(メタ)アクリレート等)等のジ(メタ)アクリレート類;トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート等のトリ(メタ)アクリレート類;ペンタエリスリトールテトラ(メタ)アクリレート等のテトラ(メタ)アクリレート類;ジペンタエリスリトールヘキサ(メタ)アクリレート等のヘキサ(メタ)アクリレート類;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレン、及びこれらの誘導体等の芳香族炭化水素系架橋剤(好ましくはジビニルベンゼン等のスチレン系多官能モノマー);N,N−ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルサルファイド、ジビニルスルホン酸等のヘテロ原子含有架橋剤;等が挙げられる。
【0025】
これらの中でも、1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)や、芳香族炭化水素系架橋剤(特にスチレン系多官能モノマー)が好ましい。前記1分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート類(多官能(メタ)アクリレート)の中でも、前記1分子中に2個の(メタ)アクリロイル基を有する(メタ)アクリレート(ジ(メタ)アクリレート)が特に好ましい。ジ(メタ)アクリレート類としては、アルカンジオールジ(メタ)アクリレート、ポリアルキレングリコールジ(メタ)アクリレートが好ましく、エチレングリコールジ(メタ)アクリレートやトリエチレングリコールジ(メタ)アクリレートであることがより好ましい。前記スチレン系多官能モノマーの中では、ジビニルベンゼンのように1分子中に2個のビニル基を有する単量体が好ましい。単量体(1)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0026】
前記ビニル系架橋性単量体のうち前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)としては、例えば、(メタ)アクリル酸等のカルボキシル基を有する単量体;2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−ヒドロキシスチレン等のヒドロキシ基含有スチレン類等のヒドロキシ基を有する単量体;2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、3−メトキシブチル(メタ)アクリレート、2−ブトキシエチル(メタ)アクリレート等のアルコキシ基含有(メタ)アクリレート類、p−メトキシスチレン等のアルコキシスチレン類等のアルコキシ基を有する単量体;等が挙げられる。単量体(2)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0027】
前記ビニル系非架橋性単量体としては、1分子中に1個のビニル基を有する単量体(単量体(3))か、もしくは相手方単量体が存在しない場合の前記単量体(2)(1分子中に1個のビニル基とビニル基以外の結合性官能基を有する単量体)が挙げられる。
【0028】
前記ビニル系非架橋性単量体のうち前記単量体(3)(1分子中に1個のビニル基を有する単量体)には、(メタ)アクリレート系単官能モノマーやスチレン系単官能モノマーが含まれる。(メタ)アクリレート系単官能モノマーとしては、例えば、メチル(メタ)アクリレート、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、イソブチル(メタ)アクリレート、ペンチル(メタ)アクリレート、ヘキシル(メタ)アクリレート、ヘプチル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、ステアリル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート類;シクロプロピル(メタ)アクリレート、シクロペンチル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、シクロオクチル(メタ)アクリレート、シクロウンデシル(メタ)アクリレート、シクロドデシル(メタ)アクリレート、イソボルニル(メタ)アクリレート、4−t−ブチルシクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート類;フェニル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、トリル(メタ)アクリレート、フェネチル(メタ)アクリレート等の芳香環含有(メタ)アクリレート類が挙げられ、メチル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレートであることが好ましく、メチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレートであることがより好ましい。スチレン系単官能モノマーとしては、スチレン;o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、α−メチルスチレン、エチルスチレン(エチルビニルベンゼン)、p−t−ブチルスチレン等のアルキルスチレン類、o−クロロスチレン、m−クロロスチレン、p−クロロスチレン等のハロゲン基含有スチレン類等が挙げられ、スチレンが好ましい。単量体(3)は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0029】
前記ビニル系単量体としては、少なくとも前記ビニル系架橋性単量体(1)を含む態様が好ましく、中でも前記ビニル系架橋性単量体(1)と前記ビニル系非架橋性単量体(3)とを含む態様(特に単量体(1)と単量体(3)との共重合体)が好ましい。具体的には、構成成分として、スチレン系単官能モノマー、スチレン系多官能モノマー、多官能(メタ)アクリレートから選ばれる少なくとも1種を含む態様が好ましい。さらに好ましくは、スチレン系多官能モノマー及び多官能(メタ)アクリレートを必須構成成分とする態様;スチレン系多官能モノマー及びスチレン系単官能モノマーを必須構成成分とする態様;多官能(メタ)アクリレート及びスチレン系単官能モノマーを必須構成成分とする態様;である。上記態様において、スチレン系単官能モノマーとしてはスチレンが好ましく、スチレン系多官能モノマーとしてはジビニルベンゼンが好ましく、多官能メタ(アクリレート)としてはジ(メタ)アクリレートが好ましい。従って、ジビニルベンゼン及びジ(メタ)アクリレートを必須構成成分とする態様;ジビニルベンゼン及びスチレンを必須構成成分とする態様;ジ(メタ)アクリレート及びスチレンを必須構成成分とする態様が特に好ましい。
【0030】
前記ビニル重合体粒子は、ビニル重合体の特性を損なわない程度に、他の成分を含んでいてもよい。この場合、ビニル重合体粒子は、ビニル重合体を50質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは60質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上である。
前記他の成分としては、特に限定されないが、ポリシロキサン成分が好ましい。ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入することで、加圧接続時の弾性変形に優れるものとなる。
【0031】
前記ポリシロキサン骨格は、シラン系単量体を用いることによって形成でき、このシラン系単量体はシラン系架橋性単量体とシラン系非架橋性単量体とに分けられる。また、シラン系単量体としてシラン系架橋性単量体を用いると、架橋構造を形成し得る。シラン系架橋性単量体により形成される架橋構造としては、ビニル重合体とビニル重合体とを架橋するもの(第一の形態);ポリシロキサン骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第二の形態);ビニル重合体骨格とポリシロキサン骨格とを架橋するもの(第三の形態);が挙げられる。
【0032】
第一の形態(ビニル重合体間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、ジメチルジビニルシラン、メチルトリビニルシラン、テトラビニルシラン等の2つ以上のビニル基を有するシラン化合物が挙げられる。第二の形態(ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラブトキシシラン等の4官能性シラン系単量体;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性シラン系単量体等が挙げられる。第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体としては、例えば、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジエトキシシラン、3−アクリロキシプロピルトリエトキシシラン、3−メタクリロキシエトキシプロピルトリメトキシシラン等の(メタ)アクリロイル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、p−スチリルトリメトキシシラン等のビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;が挙げられる。これらのシラン系架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0033】
前記シラン系非架橋性単量体として、例えば、ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン等のジアルキルシラン等の2官能性シラン系単量体;トリメチルメトキシシラン、トリメチルエトキシシラン等のトリアルキルシラン等の1官能性シラン系単量体等が挙げられる。これらのシラン系非架橋性単量体は単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0034】
特に前記ポリシロキサン骨格は、ラジカル重合可能な炭素−炭素二重結合(例えば、(メタ)アクリロイル基等のビニル基)を有する重合性ポリシロキサン由来の骨格であることが好ましい。つまり、ポリシロキサン骨格は、構成成分として、少なくとも前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体(好ましくは(メタ)アクリロイル基を有するもの、より好ましくは3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、3−メタクリロキシプロピルメチルジメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン)を加水分解及び縮合することにより形成されたポリシロキサン骨格であることが好ましい。
【0035】
前記ビニル重合体粒子に、ポリシロキサン骨格を導入する場合、ビニル系単量体の使用量は、シラン系単量体100質量部に対して100質量部以上が好ましく、より好ましくは200質量部以上、さらに好ましくは300質量部以上であり、2000質量部以下が好ましく、700質量部以下がより好ましく、さらに好ましくは600質量部以下、特に好ましくは500質量部以下である。
【0036】
前記ビニル重合体粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、弾性変形と復元力に優れる点から、例えば20質量%以上が好ましく、より好ましくは30質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上、特に好ましくは70質量%以上である。架橋性単量体を多くするほどビニル重合体粒子を硬質にすることができ、架橋性単量体の割合が上記範囲内であれば、優れた弾性変形特性を維持しつつ、復元力を向上させることができる。架橋性単量体の割合の上限は、特に限定されないが、用いる架橋性単量体の種類によっては、架橋性単量体の割合が多すぎると硬くなりすぎて異方導電接続時に圧縮変形させるために高い圧力が必要となる場合がある。そのため、架橋性単量体の割合は、例えば98質量%以下であり、95質量%以下が好ましく、より好ましくは90質量%以下、さらに好ましくは85質量%以下である。
なお架橋性単量体の割合が少ないほど基材粒子の10%K値を小さくでき、例えば、4000N/mm
2以下にすることもできる。目的とする10%K値によっては、架橋性単量体の割合は、好ましくは50質量%以下、より好ましくは40質量%以下、さらに好ましくは30質量%以下、特に好ましくは25質量%以下である。
【0037】
前記ビニル重合体粒子は、例えば、ビニル系単量体を重合することによって製造することができるが、具体的には、(i)ビニル系単量体を重合成分として含む単量体組成物を用いて、従来公知の水性懸濁重合、分散重合、乳化重合する方法;(ii)シラン系単量体を用いてビニル基含有ポリシロキサンを得た後、このビニル基含有ポリシロキサンとビニル系単量体とを重合(ラジカル重合)する方法;(iii)シード粒子に、ビニル系単量体を吸収させた後、ビニル系単量体をラジカル重合する、いわゆるシード重合する方法;が好ましい。
【0038】
前記製造方法(i)では、ビニル系単量体として、前記2つ以上のビニル基を有するシラン化合物、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシラン等のビニル基を有するシラン化合物を併用してもよい。前記製造方法(ii)においては、少なくとも前記第三の形態を形成し得るシラン系架橋性単量体を用いることによって、ポリシロキサン骨格が導入されたビニル重合体粒子が得られる。
【0039】
前記製造方法(iii)において、シード粒子としては、非架橋又は架橋度の低いポリスチレン粒子、ポリシロキサン粒子を用いることが好ましい。シード粒子にポリシロキサン粒子を用いることで、ビニル重合体にポリシロキサン骨格を導入できる。
ポリシロキサン粒子としては、前記第三の形態(ビニル重合体−ポリシロキサン間架橋)を形成し得るシラン系架橋性単量体を含む組成物を、(共)加水分解縮合して得られるポリシロキサン粒子が好ましく、特にビニル基含有ポリシロキサン粒子が好ましい。ポリシロキサン粒子がビニル基を有する場合、得られるビニル重合体粒子が、ビニル重合体とポリシロキサン骨格がポリシロキサンを構成するケイ素原子を介して結合するため、弾性変形性及び接触圧に特に優れたものとなる。ビニル基含有ポリシロキサン粒子は、例えば、ビニル基を有するジ又はトリアルコキシシランを含むシラン系単量体(混合物)を(共)加水分解縮合することによって製造できる。
【0040】
また、前記ビニル重合体粒子がポリシロキサン骨格を含む場合、基材粒子に加熱処理を施すことも好ましい態様である。前記加熱処理は空気雰囲気下又は不活性雰囲気下で行うことが好ましく、不活性雰囲気下(例えば、窒素雰囲気下)で行うことがより好ましい。前記加熱処理の温度は120℃(より好ましくは180℃、さらに好ましくは200℃)以上が好ましく、熱分解温度(より好ましくは350℃、さらに好ましくは330℃)以下が好ましい。前記加熱処理の時間は、0.3時間(より好ましくは0.5時間、さらに好ましくは0.7時間)以上が好ましく、10時間(より好ましくは5.0時間、さらに好ましくは3.0時間)以下が好ましい。
【0041】
1−2−2.アミノ樹脂粒子
アミノ樹脂粒子を構成するアミノ樹脂は、アミノ化合物とホルムアルデヒドとの縮合物により構成されるものが好ましい。
前記アミノ化合物としては、例えば、ベンゾグアナミン、シクロヘキサンカルボグアナミン、シクロヘキセンカルボグアナミン、アセトグアナミン、ノルボルネンカルボグアナミン、スピログアナミン等のグアナミン化合物、メラミン等のトリアジン環構造を有する化合物等の多官能アミノ化合物が挙げられる。これらの中でも、多官能アミノ化合物が好ましく、トリアジン環構造を有する化合物がより好ましく、特にメラミン、グアナミン化合物(特にベンゾグアナミン)が好ましい。前記アミノ化合物は、1種のみを用いても良いし、2種以上を併用しても良い。
【0042】
前記アミノ樹脂は、アミノ化合物中、グアナミン化合物を10質量%以上含むことが好ましく、より好ましくは20質量%以上、さらに好ましくは50質量%以上である。アミノ化合物中のグアナミン化合物の含有割合が上記範囲であれば、よりアミノ樹脂粒子の粒度分布がシャープであり、粒子径が精密にコントロールされたものとなる。なお、アミノ化合物として、グアナミン化合物のみを用いることも好ましい。
【0043】
アミノ樹脂粒子は、例えば、水性媒体中でアミノ化合物とホルムアルデヒドを反応(付加縮合反応)させることにより得られる。通常、この反応は加熱下(50〜100℃)で行う。また、ドデシルベンゼンスルホン酸、硫酸等の酸触媒の存在下で反応を行うことにより、架橋度を高めることができる。
アミノ樹脂粒子の製造方法としては、例えば、特開2000−256432号公報、特開2002−293854号公報、特開2002−293855号公報、特開2002−293856号公報、特開2002−293857号公報、特開2003−55422号公報、特開2003−82049号公報、特開2003−138023号公報、特開2003−147039号公報、特開2003−171432号公報、特開2003−176330号公報、特開2005−97575号公報、特開2007−186716号公報、特開2008−101040号公報、特開2010−248475号公報等に記載のアミノ樹脂架橋粒子及びその製造方法を適用することが好ましい。
【0044】
具体例としては、前記多官能アミノ化合物とホルムアルデヒドを、水性媒体(好ましくは塩基性の水性媒体)中で反応(付加縮合反応)させて縮合物オリゴマーを生成させ、該縮合物オリゴマーが溶解又は分散する水性媒体にドデシルベンゼンスルホン酸や硫酸等の酸触媒を混合して硬化させることによって、架橋されたアミノ樹脂粒子を製造することができる。縮合物オリゴマーを生成させる段階、架橋構造のアミノ樹脂とする段階は、いずれも、50〜100℃の温度で加熱された状態で行うことが好ましい。また、付加縮合反応を、界面活性剤の存在下で行うことにより、粒度分布のシャープなアミノ樹脂粒子が得られる。
【0045】
1−2−3.オルガノポリシロキサン粒子
オルガノポリシロキサン粒子は、ビニル基を含有しないシラン系単量体(シラン系架橋性単量体、シラン系非架橋性単量体)の1種又は2種以上を(共)加水分解縮合することによって得られる。
前記ビニル基を含有しないシラン系単量体としては、例えば、メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン等の3官能性シラン系単量体;3−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、2−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン等のエポキシ基を有するジ又はトリアルコキシシラン;3−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−アミノプロピルトリエトキシシラン等のアミノ基を有するジ又はトリアルコキシシラン等が挙げられる。
【0046】
前記基材粒子(樹脂粒子)の個数平均粒子径は、1.0μm以上が好ましく、より好ましくは1.1μm以上、さらに好ましくは1.2μm以上、一層好ましくは1.3μm以上であり、50μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。前記基材粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、10.0%以下が好ましく、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、一層好ましくは4.5%以下、特に好ましくは4.0%以下である。
導電性微粒子が微細(具体的には、個数平均粒子径が10.0μm未満)になると、本発明の効果が一層顕著となる。よって、基材粒子の個数平均粒子径は、10.0μm未満が好ましく、より好ましくは3.0μm以下、さらに好ましくは2.8μm以下が好ましいが、より一層好ましくは、2.8μm未満、さらに一層好ましくは2.7μm以下、なお一層好ましくは2.6μm以下、特に好ましくは2.5μm以下であり、一方、1.0μm以上が好ましく、1.5μm以上がより好ましい。
この場合、基材粒子としては、上記ビニル重合体粒子、アミノ樹脂粒子、オルガノポリシロキサン粒子の中でも、架橋性単量体を含む単量体成分を重合することによって形成されたビニル重合体粒子、及び、トリアルコキシシランをシラン系架橋性単量体として用いたオルガノポリシロキサン粒子が好ましい。10%K値を制御し易い点で、架橋性単量体を含む単量体成分を重合することによって形成されたビニル重合体粒子がより好ましい。この微細なビニル重合体粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、30質量%以上が好ましく、より好ましくは40質量%以上であり、さらに好ましくは50%質量以上である。
また、基材粒子(樹脂粒子)の個数平均粒子径が、1.0μm以上、50μm以下の範囲で比較的大粒子径であることも好ましい。例えば6μm以上、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは8μm以上の場合であることが好ましい。この場合、上限は、例えば25μm以下、より好ましくは23μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0047】
前記基材粒子の10%K値は、100N/mm
2以上、40000N/mm
2以下であることが好ましい。基材粒子の10%K値の下限を設定することで、異方性導電材料として用いた際に、周囲のバインダーをより十分に排除でき、また電極への食い込みをより良好にでき、接続抵抗値をさらに改善できる。また、基材粒子の10%K値の上限を設定することも、より良好な電気的接触状態を確保することに貢献する。前記10%K値は、より好ましくは500N/mm
2以上、特に1000N/mm
2以上である。また10%K値は、より好ましくは27000N/mm
2以下、特に15000N/mm
2以下である。
【0048】
一方、基材粒子がより軟質であることも本発明の好ましい一態様である。例えば、基材粒子の10%K値が100N/mm
2以上、4000N/mm
2以下であることも好ましい。基材粒子の10%K値が前記の範囲であると、耐湿熱性を発揮できる時間がより長くなる。つまり、10%K値が小さく軟質な基材粒子を用いるほど、湿熱性条件下における抵抗値上昇をより長時間にわたって抑制できることがわかる。圧縮時、基材粒子に負荷が分散され、ニッケル層にかかる負荷が分散されるためと考えられる。耐湿熱性の持続時間の延長効果を期待する場合、基材粒子の10%K値は、より好ましくは300N/mm
2以上、さらに好ましくは700N/mm
2以上、特に好ましくは1000N/mm
2以上である。また、より好ましくは3900N/mm
2以下、さらに好ましくは3850N/mm
2以下、特に好ましくは3800N/mm
2以下である。この効果は基材粒子の粒子径によらないが、この様に軟質な基材粒子が特に有用となるのは、基材粒子の個数平均粒子径が、例えば6μm以上、より好ましくは7μm以上、さらに好ましくは8μm以上の場合である。上限は、好ましくは25μm以下、より好ましくは23μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。粒子径が大きくなると、圧縮時の変形量が大きくなるが、ニッケル層の結晶が[200]方向に成長しているため湿熱性条件下でもニッケル層が破断しにくくなる。その結果、湿熱性条件下で高圧縮時でも、抵抗値上昇をより一層効果的に抑制することができる。
この場合、基材粒子としては、架橋性単量体を含む単量体成分を重合することによって形成されたビニル重合体粒子が好ましい。この軟質なビニル重合体粒子を構成する全単量体に占める架橋性単量体(ビニル系架橋性単量体及びシラン系架橋性単量体の合計)の割合は、50質量%以下が好ましく、より好ましくは40質量%以下であり、さらに好ましくは30質量%以下である。また、この軟質なビニル重合体粒子を構成する単量体成分に含まれる非架橋性単量体は、好ましい非架橋性単量体としてスチレン系単官能モノマー、アルキル(メタ)アクリレート類を含むものであることが好ましい。前記スチレン系単官能モノマーの中では、スチレンが好ましい。また、前記アルキル(メタ)アクリレート類の中では、メチル(メタ)アクリレート、アルキル基の炭素数が3以上であるアルキル(メタ)アクリレートが好ましく、10%K値を所定の範囲に調整することが容易である観点から、アルキル基の炭素数が3以上であるアルキル(メタ)アクリレートがより好ましく、ブチル(メタ)アクリレートが特に好ましい。非架橋性単量体の全量に占める、好ましい単量体(スチレン系単官能モノマー、アルキル(メタ)アクリレート類)の合計の割合は50質量%以上であることが好ましい。
基材粒子の10%K値の上限又は下限は、基材粒子の粒子径に応じて調整してもよい。粒子径に応じて調整することで、10%K値の制御効果をより確実に発揮させることができる。例えば、基材粒子の粒子径が3μm以下の場合、その10%K値は、3000N/mm
2以上であることが好ましい。より好ましくは3500N/mm
2以上、さらに好ましくは4000N/mm
2超である。また、40000N/mm
2以下であることが好ましく、より好ましくは30000N/mm
2以下、さらに好ましくは25000N/mm
2以下である。基材粒子の個数平均粒子径を3μm以下程度にまで小さくすると、従来の導電性微粒子(ニッケル層の結晶が[200]方向に成長していない導電性微粒子)では、湿熱性条件下で高圧縮時、接続抵抗値が上昇するという特有の不具合があった。小粒径、湿熱性条件、高圧縮が重なると、ニッケル層への負荷が大きくなり、導電性金属層が破断するためと思料される。本発明の導電性微粒子によれば、基材粒子の粒子径を3μm以下にしても、ニッケル層の結晶が[200]方向に成長しているためニッケル層が破断しにくい。よってこの粒子径3μm以下の場合に特有のこの課題を解決でき、10%K値の下限を比較的大きくすることが可能となる。
【0049】
なお、基材粒子の10%K値は、粒子を10%圧縮したとき(粒子の直径が10%変位したとき)の圧縮弾性率であり、例えば、公知の微小圧縮試験機(島津製作所製「MCT−W500」など)を用い、室温で粒子の中心方向へ荷重負荷速度2.2295mN/秒で荷重をかけ、圧縮変位が粒子径の10%となるまで粒子を変形させたときの荷重(圧縮荷重:N)と変位量(圧縮変位:mm)を測定し、下記式に基づき求めることができる。
【0050】
【数1】
(ここで、E:圧縮弾性率(N/mm
2)、F:圧縮荷重(N)、S:圧縮変位(mm)、R:粒子の半径(mm)である。)
【0051】
1−3.導電性微粒子
前記導電性微粒子の個数平均粒子径は、1.0μm以上が好ましく、より好ましくは1.1μm以上、さらに好ましくは1.2μm以上、一層好ましくは1.3μm以上、特に好ましくは1.4μm以上であり、好ましくは50μm以下が好ましく、より好ましくは30μm以下、さらに好ましくは10μm以下である。また前記導電性微粒子の粒子径の個数基準の変動係数(CV値)は、10.0%以下が好ましく、より好ましくは8.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下、一層好ましくは4.5%以下、特に好ましくは4.0%以下である。
導電性微粒子が微細(具体的には、個数平均粒子径が10.0μm未満)になると、基材粒子を10.0μm未満にした場合と同様、湿熱性条件下でも導電性微粒子の接続抵抗値上昇を効果的に抑制できる。よって、本発明の効果が一層顕著となる理由から、個数平均粒子径は、10.0μm未満が好ましく、より好ましくは3.2μm以下、さらに好ましくは3.0μm以下が好ましいが、より一層好ましくは、2.8μm以下、さらに一層好ましくは2.7μm以下、なお一層好ましくは2.6μm以下であり、一方、1.1μm以上が好ましく、1.6μm以上がより好ましい。
一方、基材粒子が軟質であると、上述の通りニッケル層の結晶が[200]方向に成長しているため、湿熱性条件下でも導電性微粒子の接続抵抗値上昇をより効果的に抑制できる。軟質な基材粒子が特に有用となるのは、導電性微粒子の個数平均粒子径が、例えば、6.3μm以上、より好ましくは7.3μm以上、さらに好ましくは8.3μm以上の場合である。上限は、例えば25μm以下、より好ましくは23μm以下、さらに好ましくは20μm以下である。
【0052】
前記導電性微粒子は、導電性金属層の耐腐食性や酸化防止、変色防止を行うため、必要に応じてさらに表面処理を行ってもよい。ニッケル層の酸化を効果的に防ぐことができる方法としては、例えば、ニッケル層の表面にセリウム、又は、チタンを含有する金属酸化物層を形成させる;炭素数が3〜22のアルキル基を有する化合物で表面処理を行うこと;等が挙げられる。
【0053】
本発明の導電性微粒子は、LCD用導通スペーサ、半導体や電子回路の実装における異方導電接続用の導電性微粒子として、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等の異方性導電材料に好適に用いることができる。
【0054】
1−4.導電性微粒子の製法
前記導電性微粒子は、無電解めっき法により製造でき、この微粒子中のニッケル層において(200)面に垂直な方向に結晶を成長させるには、無電解めっき工程で特有の処理が必要となる。すなわち無電解めっき工程におけるめっき液(ニッケル塩含有めっき液)がグリシンと酢酸ナトリウムを含むこと、言い換えればニッケルめっき時にグリシンと酢酸ナトリウムが共存することが重要である。さらに、(i)グリシンに対する酢酸ナトリウムの質量割合(酢酸ナトリウム/グリシン)を1.8以下(好ましくは1.7以下、さらに好ましくは1.6以下)にすること、又は(ii)グリシンに対する酢酸ナトリウムの質量割合が1.8を超える場合(好ましくは1.9以上、さらに好ましくは2.0以上の場合)には、めっき後に、窒素などの不活性雰囲気下、270℃以上(好ましくは275℃以上、さらに好ましくは280℃以上)で熱処理することによって、本発明の導電性微粒子を得ることができる。
前記(i)の場合、グリシンに対する酢酸ナトリウムの質量割合の下限は、例えば0.5以上、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは1.0以上である。
前記(ii)の場合、グリシンに対する酢酸ナトリウムの質量割合の上限は3以下であることが好ましく、より好ましくは2.5以下である。不活性雰囲気下での熱処理温度は、350℃以下が好ましく、より好ましくは320℃以下、さらに好ましくは300℃以下である。不活性雰囲気下での熱処理時間の下限は、好ましくは0.1時間以上、より好ましくは1時間以上であり、前記熱処理時間の上限は、好ましくは20時間以下、より好ましくは10時間以下、さらに好ましくは5時間以下である。
【0055】
上記特有の処理以外は、通常の方法によって、導電性金属層が形成される。まず無電解めっき工程に供される基材粒子には、通常、めっき工程に先立って触媒化処理が施される。また、基材粒子自体が親水性を有さず、導電性金属層との密着性が良好でない場合は、触媒化工程前に、エッチング処理工程を設けることが好ましい。すなわち、必要に応じてエッチング処理を行った後、触媒化処理を経て、無電解めっきを行うことが好ましい。
【0056】
エッチング処理
エッチング処理工程では、クロム酸、無水クロム酸−硫酸混合液、過マンガン酸等の酸化剤;塩酸、硫酸、フッ酸、硝酸等の強酸;水酸化ナトリウム、水酸化カリウム等の強アルカリ溶液;その他市販の種々のエッチング剤等を用いて、基材粒子の表面に親水性付与し、その後の無電解めっき液に対する濡れ性を高める。また、微小な凹凸を形成させ、その凹凸のアンカー効果によって、無電解めっき後の基材粒子と導電性金属層との密着性の向上を図る。
【0057】
触媒化処理
前記触媒化処理では、基材粒子表面に貴金属イオンを捕捉させた後、これを還元して前記貴金属を基材粒子表面に担持させ、基材粒子の表面に次工程の無電解めっきの起点となりうる触媒層を形成させる。基材粒子自体が貴金属イオンの捕捉能を有さない場合、触媒化を行う前に、表面改質処理を行うことも好ましい。表面改質処理は、表面処理剤を溶解した水又は有機溶媒に、基材粒子を接触させることで行うことができる。
【0058】
触媒化処理は、例えば、塩化パラジウムや硝酸銀のような貴金属塩の希薄な酸性水溶液に、エッチングした基材粒子を浸漬させた後、基材粒子を分離し水洗する。引き続き水に分散させて、これに還元剤を加えて貴金属イオンの還元処理を行う。前記還元剤としては、例えば、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、ヒドラジン、ホルマリン等が挙げられる。還元剤は1種を単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0059】
また、スズイオン(Sn
2+)を含有する溶液に基材粒子を接触させることによりスズイオンを基材粒子表面に吸着させ感受性化処理を施した後、パラジウムイオン(Pd
2+)を含有する溶液に浸漬させることにより、基材粒子表面にパラジウムを析出させる方法(センシタイジング−アクチベーティング法)等を用いてもよい。なお、前記スズイオン(Sn
2+)を含有する溶液や、パラジウムイオン(Pd
2+)を含有する溶液に基材粒子を浸漬する際の液温及び浸漬時間は、各イオンが基材粒子に十分に吸着できる範囲で適宜調整すればよく、特に限定されないが、例えば、液温は10〜60℃が好ましく、浸漬時間は1分〜120分が好ましい。
【0060】
無電解めっき工程
無電解めっき工程では、上述の特有の処理(グリシンと酢酸ナトリウムの併用と、これらの割合に応じた熱処理の有無)を施す以外は、通常の無電解めっき工程が採用される。すなわち無電解めっき工程では、まず、触媒化基材粒子を水に十分に分散させ、触媒化基材粒子の水性スラリーを調製する。ここで、安定した導電特性を発現させるためには、触媒化基材粒子をめっき処理を行う水性媒体に十分に分散させておくことが好ましい。触媒化基材粒子が凝集した状態で無電解めっき処理を行うと、基材粒子同士の接触面に未処理面(導電性金属層が存在しない面)が生じるからである。触媒化基材粒子を水性媒体に分散させる手段としては、例えば、通常攪拌装置、高速攪拌装置、コロイドミル又はホモジナイザーのような剪断分散装置など従来公知の分散手段や、超音波や分散剤(界面活性剤等)を用いれば良い。
【0061】
次に、ニッケル塩、還元剤、錯化剤及び各種添加剤等を含有する無電解めっき液に、上記で調製した触媒化基材粒子の水性スラリーを添加することにより、無電解めっき反応を生じさせる。無電解めっき反応は、触媒化基材粒子の水性スラリーを添加すると速やかに開始する。また、この反応には水素ガスの発生を伴うので、水素ガスの発生が認められなくなった時点をもって無電解めっき反応を終了すればよい。無電解めっき反応の終了後、反応系内から導電性金属層が形成された基材粒子を取り出し、必要に応じて洗浄、乾燥を施すことにより、導電性微粒子を得ることができる。
【0062】
前記無電解めっき液に含有させるニッケル塩としては、ニッケルの塩化物、硫酸塩、酢酸塩等が挙げられる。すなわち、塩化ニッケル、硫酸ニッケル、酢酸ニッケル等のニッケル塩等を無電解めっき液に含有させればよい。導電性金属塩は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。ニッケル塩の濃度は、所望の膜厚の導電性金属層が形成されるように、基材粒子のサイズ(表面積)等を考慮して適宜決定すればよい。
【0063】
前記無電解めっき液に含有させる還元剤としては、例えば、ホルムアルデヒド、次亜リン酸ナトリウム、ジメチルアミンボラン、水素化ホウ素ナトリウム、水素化ホウ素カリウム、テトラヒドロホウ酸カリウム、グリオキシル酸、ヒドラジン等が挙げられる。還元剤は1種のみであってもよいし2種以上であってもよい。
【0064】
錯化剤としては、上記グリシンがそれとして作用する。従って本発明では、他の錯化剤の使用は必須ではないが、必要に応じて他の錯化剤を使用してもよい。他の錯化剤としては、クエン酸、ヒドロキシ酢酸、酒石酸、リンゴ酸、乳酸、グルコン酸またはそれらのアルカリ金属塩やアンモニウム塩などのカルボン酸(塩);グルタミン酸等のアミノ酸;エチレンジアミン、アルキルアミン等のアミン酸;その他のアンモニウム、EDTA、ピロリン酸(塩);などが挙げられる。グリシンの濃度は、めっき液1L中につき、例えば20〜50g程度であり、錯化剤の濃度は、めっき液1L中につき、例えば20〜150g程度である。
前記無電解めっき液のpHは、限定されないが、好ましくは6〜14である。また、無電解めっき液の液温も特に限定されないが、例えば30〜100℃である。
【0065】
無電解めっき工程は、必要に応じて繰返し行ってもよい。例えば金属種の異なる無電解めっき液を用いて無電解めっき工程を繰返すことにより、基材粒子の表面に異種金属を幾層にも被覆できる。具体的には、基材粒子にニッケルめっきを施してニッケル被覆粒子を得た後、該ニッケル被覆粒子をさらに無電解金めっき液に投入して金置換めっきを行うことにより、最外層が金層で覆われ、その内側にニッケル層を有する導電性微粒子が得られる。
【0066】
2.突起を有する導電性微粒子
導電性微粒子はその表面が平滑であっても凹凸状であっても良いが、バインダー樹脂を効果的に排除して電極との接続を行える点で複数の突起を有することが好ましい。突起を有することで、導電性微粒子を電極間の接続に用いた際の接続信頼性を高めることができる。
【0067】
導電性微粒子の表面に突起を形成させる方法としては、(1)基材粒子合成における重合工程において、高分子の相分離現象を利用して表面に突起の形成された基材粒子を得た後、無電解メッキにより導電性金属層を形成させる方法;(2)基材粒子表面に、金属粒子、金属酸化物粒子等の無機粒子或いは有機重合体からなる有機粒子を付着させた後、無電解メッキにより導電性金属層を形成させる方法;(3)基材粒子表面に無電解メッキを行った後、金属粒子、金属酸化物粒子等の無機粒子或いは有機重合体からなる有機粒子を付着させ、さらに無電解メッキを行う方法;(4)無電解メッキ反応時におけるメッキ浴の自己分解を利用して、基材粒子表面に突起の核となる金属を析出させ、さらに無電解メッキを行うことによって、突起部を含む導電性金属層が連続皮膜となった導電性金属層を形成する方法;等が挙げられる。
【0068】
前記突起の高さは20nm〜1000nmであることが好ましく、より好ましくは30nm〜800nm、さらに好ましくは40nm〜600nm、特に好ましくは50nm〜500nmである。突起の高さが前記範囲であると、接続信頼性が一層向上する。なお、突起の高さは、任意の導電性微粒子10個を電子顕微鏡で観察して求める。具体的には、観察される導電性微粒子の周縁部の突起について、導電性微粒子1個につき任意の10個の突起高さを測定し、その測定値を算術平均することにより求められる。
【0069】
前記突起の数は特に限定されないが、高い接続信頼性を確保する点から導電性微粒子の表面を電子顕微鏡で観察したときの任意の正投影面において、少なくとも1個以上の突起を有することが好ましく、より好ましくは5個以上、さらに好ましくは10個以上である。
【0070】
3.絶縁被覆導電性微粒子
本発明の導電性微粒子は、表面の少なくとも一部に絶縁層を有する態様(絶縁被覆導電性微粒子)であってもよい。このように表面の導電性金属層にさらに絶縁層が積層されていると、高密度回路の形成時や端子接続時等に生じやすい横導通を防ぐことができる。
【0071】
絶縁層の厚さは0.005μm〜1μmが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。絶縁層の厚さが前記範囲内であれば、導電性微粒子による導通特性を良好に維持しつつ、粒子間の電気絶縁性が良好となる。
【0072】
前記絶縁層としては、導電性微粒子の粒子間における絶縁性が確保でき、一定の圧力及び/又は加熱により容易にその絶縁層が崩壊あるいは剥離するものであれば特に限定されず、例えば、ポリエチレン等のポリオレフィン類;ポリメチル(メタ)アクリレート等の(メタ)アクリレート重合体及び共重合体;ポリスチレン;等の熱可塑性樹脂やその架橋物;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、メラミン樹脂等の熱硬化性樹脂;ポリビニルアルコール等の水溶性樹脂及びこれらの混合物;シリコーン樹脂等の有機化合物、或いはシリカ、アルミナ等の無機化合物が挙げられる。
【0073】
前記絶縁層は、単層であっても、複数の層からなるものであってもよい。例えば、単一又は複数の皮膜状の層が形成されていてもよいし、絶縁性を有する粒状、球状、塊状、鱗片状その他の形状の粒子を導電性金属層の表面に付着させた層であってもよいし、さらには、導電性金属層の表面を化学修飾することにより形成された層であってもよく、又は、これらが組み合わされたものであってもよい。これらの中でも絶縁性を有する粒子(以下、「絶縁粒子」という。)が導電性金属層表面に付着した態様が好ましい。
【0074】
絶縁粒子の平均粒子径は導電性微粒子の平均粒子径や絶縁被覆導電性微粒子の用途によって適宜選択されるが、絶縁粒子の平均粒子径は0.005μm〜1μmの範囲であることが好ましく、より好ましくは0.01μm〜0.8μmである。絶縁粒子の平均粒子径が0.005μmより小さくなると、複数の導電性微粒子間の導電層どうしが接触しやすくなり、1μmより大きくなると対向する電極間に導電性微粒子が挟み込まれた際に発揮するべき導電性が不十分となる虞がある。
【0075】
絶縁粒子の平均粒子径における変動係数(CV値)は、好ましくは40%以下、より好ましくは30%以下、最も好ましくは20%以下である。CV値が40%を超えると導通性が不十分となる虞がある。
【0076】
絶縁粒子の平均粒子径は、導電性微粒子の平均粒子径の1/1000以上、1/5以下であることが好ましい。絶縁粒子の平均粒子径が前記範囲であると、導電性微粒子の表面に均一に絶縁粒子層を形成させることができる。また、粒子径の異なる2種類以上の絶縁粒子を使用してもよい。
絶縁粒子はその表面に導電性微粒子への付着性を高めるため官能基を有していても良い。前記官能基としては、アミノ基、エポキシ基、カルボキシル基、リン酸基、シラノール基、アンモニウム基、スルホン酸基、チオール基、ニトロ基、ニトリル基、オキサゾリン基、ピロリドン基、スルホニル基、水酸基等が挙げられる。
【0077】
導電性微粒子表面における絶縁粒子の被覆率(絶縁被覆導電性微粒子の正投影面)は、好ましくは1%以上98%以下、より好ましくは5%以上95%以下である。絶縁粒子による導電性微粒子の被覆率が前記範囲であることにより、充分な導通性を確保しつつ、隣接する絶縁被覆導電性微粒子間を確実に絶縁することができる。なお、上記被覆率は、例えば電子顕微鏡を用いて任意の100個の絶縁被覆導電性微粒子表面を観察したときに、絶縁被覆導電性微粒子の正投影面における絶縁粒子の被覆されている部分と樹脂粒子の被覆されていない部分の面積比率を測定することにより評価できる。
【0078】
4.異方性導電材料
本発明の導電性微粒子は、異方性導電材料として有用である。
前記異方性導電材料としては、前記導電性微粒子がバインダー樹脂に分散してなるものが挙げられる。異方性導電材料の形態は特に限定されず、例えば、異方性導電フィルム、異方性導電ペースト、異方性導電接着剤、異方性導電インク等様々な形態が挙げられる。これらの異方性導電材料を相対向する基材同士や電極端子間に設けることにより、良好な電気的接続が可能になる。なお、本発明の導電性微粒子を用いた異方性導電材料には、液晶表示素子用導通材料(導通スペーサー及びその組成物)も含まれる。
【0079】
前記バインダー樹脂中に導電性微粒子が分散してなる、ペースト状(異方性導電ペースト)又はフィルム状(異方性導電フィルム)の異方性導電性材料は、LCD(Liquid Crystal Display)、PDP(Plasma Display Panel)、OLED(Organic Light−emitting Diodes)などのFPD(Flat Panel Display)の基板と、これに画像信号を送るドライバICとを接着させ、電気的に接続させる材料として広く使用されている。具体的には、パネルを駆動する信号を発信するドライバICを搭載した、TCP(Tape Carrier Package)、COF(Chip on Film)パッケージなどの信号出力電極とLCDパネルとの接続(一般的にFOGと呼ばれる)、TCP、COFなどとこれらに信号を入力するプリント基板(PWB:Printed Wiring Board)との接続(一般的にFOBと呼ばれる)、ドライバICをペアチップのままLCDパネル上に実装するCOG(Chip on Glass)方式での接続などに使用されているほか、タッチパネル引き出し回路とFPC(フレキシブルプリント配線板)との接続やカメラモジュールの接続に使用されている。
これらの用途の中でも、本発明の異方性導電性材料はFPDのFOG接続、COG接続、ならびにタッチパネル引き出し回路とFPC接続用に好適に用いられる。異方性導電材料の形態としてはペースト状であってもフィルム状であっても良いが、接続信頼性をより高められる点でフィルム状(異方性導電フィルム)であることが好ましい。
【0080】
前記バインダー樹脂としては、絶縁性の樹脂であれば特に限定されず、例えば、アクリル樹脂、スチレン樹脂、エチレン−酢酸ビニル樹脂、スチレン−ブタジエンブロック共重合体等の熱可塑性樹脂;エポキシ樹脂、フェノール樹脂、尿素樹脂、ポリエステル樹脂、ウレタン樹脂、ポリイミド樹脂等の熱硬化性樹脂等が挙げられる。
【0081】
バインダー樹脂組成物には、必要に応じて充填剤、軟化剤、促進剤、老化防止剤、着色剤(顔料、染料)、酸化防止剤、各種カップリング剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、帯電防止剤、難燃剤、熱伝導向上剤、有機溶剤等を配合することができる。
【0082】
なお、前記異方性導電材料は、前記バインダー樹脂中に導電性微粒子を分散させ、所望の形態とすることで得られるが、例えば、バインダー樹脂と導電性微粒子とを別々に使用し、接続しようとする基材間や電極端子間に導電性微粒子をバインダー樹脂とともに存在させることによって接続してもかまわない。
【0083】
前記異方性導電材料において、導電性微粒子の含有量は、用途に応じて適宜決定すればよいが、例えば、異方性導電材料の全量に対して0.01体積%以上が好ましく、より好ましくは0.03体積%以上、さらに好ましくは0.05体積%以上であり、50体積%以下が好ましく、より好ましくは30体積%以下、さらに好ましくは20体積%以下である。導電性微粒子の含有量が少なすぎると、充分な電気的導通が得られ難い場合があり、一方、導電性微粒子の含有量が多すぎると、導電性微粒子同士が接触してしまい、異方性導電材料としての機能が発揮され難い場合がある。
【0084】
前記異方性導電材料におけるフィルム膜厚、ペーストや接着剤の塗工膜厚、印刷膜厚等については、使用する導電性微粒子の粒子径と、接続すべき電極の仕様とを考慮し、接続すべき電極間に導電性微粒子が狭持され、且つ接続すべき電極が形成された接合基板同士の空隙がバインダー樹脂層により充分に満たされるように、適宜設定することが好ましい。
【0085】
本願は、2011年12月8日に出願された日本国特許出願第2011−268677号に基づく優先権の利益を主張するものである。2011年12月8日に出願された日本国特許出願第2011−268677号の明細書の全内容が、本願に参考のため援用される。
【実施例】
【0086】
以下、実施例を挙げて本発明をより具体的に説明する。本発明は以下の実施例によって制限を受けるものではなく、前記、後記の趣旨に適合し得る範囲で適当に変更を加えて実施することも勿論可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。
【0087】
1.評価方法
1−1.個数平均粒子径、粒子径の変動係数(CV値)
粒度分布測定装置(ベックマンコールター社製、「コールターマルチサイザーIII型」)により30000個の粒子の粒子径を測定し、個数基準の平均粒子径、粒子径の標準偏差を求めるとともに、下記式に従って粒子径の個数基準のCV値(変動係数)を算出した。
粒子の変動係数(%)=100×(粒子径の標準偏差/個数基準平均粒子径)
なお、基材粒子では、基材粒子0.005部に界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液20部を加え、超音波で10分間分散させた分散液を測定試料とした。シード粒子では、加水分解、縮合反応で得られた分散液を、界面活性剤(第一工業製薬社製、「ハイテノール(登録商標) N−08」)の1%水溶液により希釈したものを測定試料とした。
【0088】
1−2.回折線及び結晶子径
粉末X線回折装置(リガク社製、「RINT(登録商標)−TTRIII」)を使用して、導電性微粒子についてX線回折測定を行った。次いで、解析ソフトとして総合粉末X線解析ソフトウエア(リガク社製、「PDKL」)を用い、ミラー指数(200)の格子面に帰属されるピーク(回折線)の幅(積分幅)から、Scherrerの式に基づいて、該格子面に垂直方向の結晶子径d(200)を計算した。また、同様にして、各実施例についてミラー指数(111)の格子面に垂直方向の結晶子径d(111)も計算した。
【0089】
1−3.導電性金属層膜厚
フロー式粒子像解析装置(シスメックス社製、「FPIA(登録商標)−3000」)を用いて、基材粒子3000個の粒子径、導電性微粒子3000個の粒子径を測定し、基材粒子の個数平均粒子径X(μm)、導電性微粒子の個数平均粒子径Y(μm)、CV値(%)を求めた。そして、下記式に従って導電性金属層の膜厚を算出した。
導電性金属層膜厚(μm)=(Y−X)/2
【0090】
1−4.リン濃度
導電性微粒子0.05gに王水4mlを加え、加熱下で攪拌することにより金属層を溶解し、ろ別した。その後、ろ液をICP発光分析装置を用いて、ニッケル及びリンの含有量を分析した。
【0091】
1−5.耐湿熱性評価
導電性微粒子10質量部(以下、質量部については単に「部」と表す)に、バインダー樹脂としてのエポキシ樹脂(三菱化学社製、「JER828」)を100部、硬化剤(三新化学社製、「サンエイド(登録商標) SI−150」)2部、及びトルエン100部を加えた。この混合物に、1mmのジルコニアビーズ50部を加えて、ステンレス製の2枚攪拌羽根を用いて300rpmで10分間分散を行い、ペースト状組成物を得た。得られたペースト状組成物をバーコーターで剥離処理PETフィルム上に塗布し、乾燥させて、異方性導電フィルムを得た。
得られた異方性導電フィルムを、抵抗測定用の線を有する全面アルミ蒸着ガラス基板と、100μmピッチで銅パターンを形成したポリイミドフィルム基板間に挟み込み、5MPa、200℃の圧着条件で熱圧着して測定試料を作製した。この試料について、電極間の抵抗値(初期抵抗値)を評価した。また、測定試料を、温度80℃、湿度100%で1000時間、2000時間、又は3000時間放置した後の電極間の抵抗値についてもそれぞれ同様に測定した。
下記式により抵抗値上昇率を求め、抵抗値上昇率が1%未満の場合を「A」、抵抗値上昇率が1%以上の場合を「B」と評価した。
抵抗値上昇率(%)=((温度80℃、湿度100%、所定時間放置後の抵抗値)−(初期抵抗値)/(初期抵抗値))×100
【0092】
1−6.基材粒子の10%K値
微小圧縮試験機(島津製作所製「MCT−W500」)を用いて、室温(25℃)において、試料台上に散布した試料粒子1個について、直径50μmの円形平板圧子を用いて、「標準表面検出」モードで粒子の中心方向へ一定の負荷速度(2.2295mN/秒)で荷重をかけた。そして、圧縮変位が粒子径の10%となったときの荷重(mN)を測定し、得られた圧縮荷重、粒子の圧縮変位及び粒子径から、10%K値を算出した。なお、測定は各試料について、異なる10個の粒子に対して行い、平均した値を測定値とした。
【0093】
2.基材粒子の準備
2−1.合成例1:ビニル重合体粒子1の合成
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール355部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部及びメタノール245部の混合液を添加して、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、メタクリロイル基を有するポリシロキサン粒子(重合性ポリシロキサン粒子)の乳濁液を調製した。このポリシロキサン粒子の個数平均粒子径は3.02μmであった。
【0094】
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノール(登録商標) NF−08」)の20%水溶液10部をイオン交換水400部で溶解した溶液に、単量体成分(吸収モノマー)としてスチレン200部及びジビニルベンゼン(DVB960:新日鐡化学社製、ジビニルベンゼン含量96質量%、エチルビニルベンゼン等4%含有品)200部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)4.8部とを加え、乳化分散させて単量体成分の乳化液を調製した。この乳化液を2時間攪拌後、得られた乳化液を、上記ポリシロキサン粒子の乳濁液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が単量体を吸収して肥大化していることが確認された。
【0095】
前記混合液に、前記ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩の20%水溶液96部、イオン交換水500部を加え、窒素雰囲気下で65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下280℃で1時間焼成処理して重合体粒子を得、これをビニル重合体粒子1とした。このビニル重合体粒子1の個数平均粒子径、粒子径の変動係数(CV値)および10%K値を測定した。結果を表1に示す。
【0096】
2−2.合成例2:ビニル重合体粒子2の合成
重合性ポリシロキサン粒子の乳濁液を調製するにあたり、「四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール355部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部及びメタノール245部の混合液を添加」することに代えて、「四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール450部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン150部及びメタノール500部の混合液を添加」したこと以外は、合成例1と同様にしてビニル重合体粒子2を作製した。このとき中間生成物であるポリシロキサン粒子の個数平均粒子径は1.50μmであった。また、得られたビニル重合体粒子2の個数平均粒子径、粒子径の変動係数(CV値)および10%K値を測定した。結果を表1に示す。
【0097】
2−3.合成例3:ビニル重合体粒子3の合成
重合性ポリシロキサン粒子の乳濁液を調製するにあたり、「四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール355部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部及びメタノール245部の混合液を添加」することに代えて、「四つ口フラスコに、イオン交換水1800部と、25%アンモニア水24部、メタノール550部を入れ、攪拌下、滴下口から3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン100部及びメタノール50部の混合液を添加」したこと以外は、合成例1と同様にしてビニル重合体粒子3を作製した。このとき中間生成物であるポリシロキサン粒子の個数平均粒子径は1.15μmであった。また、得られたビニル重合体粒子3の個数平均粒子径、粒子径の変動係数(CV値)および10%K値を測定した。結果を表1に示す。
【0098】
2−4.合成例4:ビニル重合体粒子4の合成
冷却管、温度計、滴下口を備えた四つ口フラスコに、イオン交換水1000.0部と、25%アンモニア水15.0部を入れ、攪拌下、滴下口から、単量体成分(シード形成モノマー)としてビニルトリメトキシシラン59.3部、3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン40.7部、及びメタノール170.0部を添加し、ビニルトリメトキシシラン及び3−メタクリロキシプロピルトリメトキシシランの加水分解、縮合反応を行って、ビニル基及びメタクリロイル基を有する重合性ポリシロキサン粒子(シード粒子)の分散液を調製した。このポリシロキサン粒子の個数基準の平均粒子径は4.36μmであった。
次いで、乳化剤としてポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液12.5部をイオン交換水500部に溶解した溶液に、単量体成分(吸収モノマー)としてジビニルベンゼン(新日鐡化学社製「DVB960」:ジビニルベンゼン96%、エチルビニルベンゼン等4%含有品)500.0部と、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)(和光純薬工業社製「V−65」)12.0部とを溶解した溶液を加え、乳化分散させて単量体成分(吸収モノマー)の乳化液を調製した。乳化分散の開始から2時間後、得られた乳化液を、ポリシロキサン粒子(シード粒子)の分散液中に添加して、さらに攪拌を行った。乳化液の添加から1時間後、混合液をサンプリングして顕微鏡で観察を行ったところ、ポリシロキサン粒子が吸収モノマーを吸収して肥大化していることが確認された。
次いで、ポリオキシエチレンスチレン化フェニルエーテル硫酸エステルアンモニウム塩(第一工業製薬社製「ハイテノール(登録商標)NF−08」)の20%水溶液25.0部を加え、窒素雰囲気下で反応液を65℃まで昇温させて、65℃で2時間保持し、単量体成分のラジカル重合を行った。ラジカル重合後の乳濁液を固液分離し、得られたケーキをイオン交換水、メタノールで洗浄した後、窒素雰囲気下280℃で1時間焼成し、ビニル重合体粒子4を得た。ビニル重合体粒子4の個数平均粒子径、粒子径の変動係数(CV値)および10%K値を測定した。結果を表1に示す。
【0099】
2−5.合成例5:ビニル重合体粒子5の合成
イオン交換水、メタノール、アンモニア水の量を適宜変更し、個数基準の平均粒子径が4.50μmのシード粒子を作製した後、吸収モノマーの種類と使用量を「ジビニルベンゼン(新日鐡化学社製「DVB960」:ジビニルベンゼン96%、エチルビニルベンゼン等4%含有品)500.0部」に代えて、「スチレン250部及びDVB960(新日鐡化学社製、ジビニルベンゼン含量96質量%、エチルビニルベンゼン等4%含有品)250部」に変更したこと以外は合成例4と同様にして、ビニル重合体粒子5を得た。ビニル重合体粒子5の個数平均粒子径、粒子径の変動係数(CV値)および10%K値を測定した。結果を表1に示す。
【0100】
2−6.合成例6:ビニル重合体粒子6の合成
イオン交換水、メタノール、アンモニア水の量を適宜変更し、個数基準の平均粒子径が5.15μmのシード粒子を作製した後、吸収モノマーの種類と使用量を「ジビニルベンゼン(新日鐡化学社製「DVB960」:ジビニルベンゼン96%、エチルビニルベンゼン等4%含有品)500.0部」に代えて、「メチルメタクリレート475.0部、エチレングリコールジメタクリレート25.0部」に変更し、焼成の代わりに窒素雰囲気下80℃で4時間乾燥したこと以外は合成例4と同様にして、ビニル重合体粒子6を得た。ビニル重合体粒子6の個数平均粒子径、粒子径の変動係数(CV値)および10%K値を測定した。結果を表1に示す。
【0101】
2−7.合成例7:ビニル重合体粒子7の合成
イオン交換水、メタノール、アンモニア水の量を適宜変更し、個数基準の平均粒子径が3.25μmのシード粒子を作製した後、吸収モノマーの種類と使用量を「ジビニルベンゼン(新日鐡化学社製「DVB960」:ジビニルベンゼン96%、エチルビニルベンゼン等4%含有品)500.0部」に代えて、「n−ブチルメタクリレート1440.0部、トリエチレングリコールジメタクリレート160.0部、及びメタクリル酸400部」に変更し、焼成の代わりに窒素雰囲気下40℃で12時間乾燥したこと以外は合成例4と同様にして、ビニル重合体粒子7を得た。ビニル重合体粒子7の個数平均粒子径、粒子径の変動係数(CV値)および10%K値を測定した。結果を表1に示す。
【0102】
【表1】
【0103】
3.導電性粒子の製造
3−1.
参考例1
上記した基材粒子(ビニル重合体粒子1)に、水酸化ナトリウム水溶液によるエッチング処理を施した後、二塩化スズ溶液に接触させ、その後、二塩化パラジウム溶液に浸漬させることにより(センシタイジング−アクチベーティング法)、パラジウム核を形成させた。パラジウム核を形成させた基材粒子10部をイオン交換水5000部に添加し、超音波照射により十分に分散させ、懸濁液を得た。この懸濁液を70℃に加熱して攪拌しながら、70℃に加熱したニッケルめっき液1000mLを添加した。前記ニッケルめっき液は、グリシンを38.0g/L、酢酸ナトリウムを57.0g/L、硫酸ニッケルを110.0g/L、次亜リン酸ナトリウムを230g/L含有しており(すなわち、ニッケルめっき液中のグリシンに対する酢酸ナトリウムの質量割合は、1.5)、pHは6.3に調整されている。液温を70℃で保持し、水素ガスの発生が停止したことを確認してから、60分間攪拌した。その後、固液分離を行い、イオン交換水、メタノールの順で洗浄することにより、ニッケルめっきを施した導電性微粒子1を得た。
【0104】
導電性微粒子1の個数平均粒子径、CV値、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子1を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、ニッケル格子面(111)の回折線も観測された。d(200)は49.7Å(4.97nm)であり、d(111)は86.8Å(8.68nm)、d(200)/d(111)=0.573であった。また、導電性微粒子1の耐湿熱性評価の結果は1000時間放置後の場合「A」、2000時間放置後の場合「B」であった。これらの評価結果を表3に示す。
【0105】
3−2.
参考例2
参考例1と同様にしてパラジウム核を形成させた基材粒子10部をイオン交換水5000部に添加し、超音波照射により十分に分散させ、懸濁液を得た。この懸濁液を70℃に加熱して撹拌しながら、70℃に加熱したニッケルめっき液1000mLを添加した。前記ニッケルめっき液は、グリシンを38.0g/L、リンゴ酸を10.5g/L、酢酸ナトリウムを76.0g/L、硫酸ニッケルを113.0g/L、次亜リン酸ナトリウムを230g/L含有しており(すなわち、ニッケルめっき液中のグリシンに対する酢酸ナトリウムの質量割合は、2.0)、pHは6.8に調整されている。液温を70℃で保持し、水素ガスの発生が停止したことを確認してから、60分間攪拌した。その後、固液分離を行い、イオン交換水、メタノールの順で洗浄した後、得られた導電性微粒子を、窒素(不活性)雰囲気下、280℃で2時間加熱処理を行い、ニッケルめっきを施した導電性微粒子2を得た。
【0106】
導電性微粒子2の個数平均粒子径、CV値、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子2を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、ニッケル格子面(111)の回折線も観測された。d(200)は11Å(1.1nm)であり、d(111)は27.5Å(2.75nm)、d(200)/d(111)=0.400であった。また、導電性微粒子2の耐湿熱性評価の結果は1000時間放置後の場合「A」、2000時間放置後の場合「B」であった。これらの評価結果を表3に示す。
【0107】
3−3.比較例1
窒素雰囲気下、280℃で2時間の加熱処理を行わないこと以外は実施例2と同様にして、導電性微粒子3を得た。
導電性微粒子3の個数平均粒子径、CV値、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子3を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線は観測されなかった。また、導電性微粒子3の1000時間経過後の耐湿熱性評価の結果は「B」であった。
【0108】
3−4.比較例2
実施例2における窒素雰囲気下、280℃で2時間の加熱処理の代わりに、窒素雰囲気下、260℃で2時間加熱処理を行ったこと以外は実施例2と同様にして、導電性微粒子4を得た。
導電性微粒子4の個数平均粒子径、CV値、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子4を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線は観測されなかった。また、導電性微粒子4の1000時間経過後の耐湿熱性評価の結果は「B」であった。
【0109】
3−5.比較例3
実施例1で用いたニッケルめっき液の代わりに、乳酸52.2g/L、リンゴ酸10.0g/L、硫酸ニッケル110.0g/L、次亜リン酸ナトリウム230g/Lを含有し、pH4.6に調整されたニッケルめっき液を用いたこと以外は実施例1と同様にして、導電性微粒子5を得た。
導電性微粒子5の個数平均粒子径、CV値、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子5を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線は観測されなかった。また、導電性微粒子5の1000時間経過後の耐湿熱性評価の結果は「B」であった。
【0110】
3−6.
参考例3
ビニル重合体粒子1に代えて、ビニル重合体粒子2を基材粒子として用いたこと以外は、参考例2と同様にして、導電性微粒子6を得た。得られた導電性微粒子6の個数平均粒子径、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子6を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、ニッケル格子面(111)の回折線も観測された。d(200)の値、d(111)の値、d(200)/d(111)比、耐湿熱性評価の結果を後述する表3に示す。
【0111】
3−7.
参考例4
加熱処理における条件等を変更する以外は、
参考例3と同様にして、導電性微粒子7を得た。得られた導電性微粒子7の個数平均粒子径、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子7を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、ニッケル格子面(111)の回折線も観測された。d(200)の値、d(111)の値、d(200)/d(111)比、耐湿熱性評価の結果を後述する表3に示す。
【0112】
3−8.
参考例5
加熱処理における条件等を変更する以外は、
参考例3と同様にして、導電性微粒子8を得た。得られた導電性微粒子8の個数平均粒子径、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子8を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、ニッケル格子面(111)の回折線も観測された。d(200)の値、d(111)の値、d(200)/d(111)比、耐湿熱性評価の結果を後述する表3に示す。
【0113】
3−9.実施例6
ビニル重合体粒子1に代えてビニル重合体粒子3を基材粒子として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性微粒子9を得た。得られた導電性微粒子9の個数平均粒子径、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子9を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、ニッケル格子面(111)の回折線も観測された。d(200)の値、d(111)の値、d(200)/d(111)比、耐湿熱性評価の結果を後述する表3に示す。
【0114】
3−10.
参考例7
ビニル重合体粒子1に代えてビニル重合体粒子4を基材粒子として用いたこと以外は、参考例1と同様にして、導電性微粒子10を得た。得られた導電性微粒子10の個数平均粒子径、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子10を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、ニッケル格子面(111)の回折線も観測された。d(200)の値、d(111)の値、d(200)/d(111)比、耐湿熱性評価の結果を後述する表3に示す。
【0115】
3−11.
参考例8
ビニル重合体粒子1に代えてビニル重合体粒子5を基材粒子として用いたこと以外は、参考例1と同様にして、導電性微粒子11を得た。得られた導電性微粒子11の個数平均粒子径、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子11を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、ニッケル格子面(111)の回折線も観測された。d(200)の値、d(111)の値、d(200)/d(111)比、耐湿熱性評価の結果を後述する表3に示す。
【0116】
3−12.実施例9
ビニル重合体粒子1に代えてビニル重合体粒子6を基材粒子として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性微粒子12を得た。得られた導電性微粒子12の個数平均粒子径、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子12を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、ニッケル格子面(111)の回折線も観測された。d(200)の値、d(111)の値、d(200)/d(111)比、耐湿熱性評価の結果を後述する表3に示す。
【0117】
3−13.実施例10
ビニル重合体粒子1に代えてビニル重合体粒子7を基材粒子として用いたこと以外は、実施例1と同様にして、導電性微粒子13を得た。得られた導電性微粒子13の個数平均粒子径、ニッケル層の膜厚、リン濃度を測定した。結果を表2に示す。導電性微粒子13を粉末X線回折測定した結果、ニッケル格子面(200)に帰属される回折線が観測され、ニッケル格子面(111)の回折線も観測された。d(200)の値、d(111)の値、d(200)/d(111)比、耐湿熱性評価の結果を後述する表3に示す。
【0118】
【表2】
【0119】
【表3】
【0120】
比較例1〜3で得られた導電性微粒子3〜5はニッケルの格子面(200)に帰属される回折線が観察されない為、1000時間で測定した時の耐湿熱性が劣る。これに対して
実施例6、9〜10、参考例1〜5、7〜8の導電性微粒子1、2、6〜13はニッケルの格子面(200)に帰属される回折線が観察される為、1000時間で測定した時の耐湿熱性がいずれも優れる。
さらに
参考例3〜5の対比より、基材の平均粒子径が3.0μmの導電性微粒子6〜8では、d(200)/d(111)が大きい程、湿熱性条件下においても長時間にわたって抵抗値上昇を効果的に抑制できることがわかる。ニッケル層の結晶の[200]方向の成長が進行しているほど、耐湿熱性がより顕著に向上するためであると考えられる。
【0121】
参考例1で得られた導電性微粒子1と実施例6で得られた導電性微粒子9を比較すると、基材の平均粒子径が6μm(導電性微粒子1)よりも2.3μm(導電性微粒子9)の方が、長時間経過後も耐湿熱性に優れることがわかる。ニッケル層のd(200)とd(111)が同等であっても、基材の平均粒子径を3.0μm以下とすることで、湿熱性条件下における抵抗値上昇をより効果的に抑制することができる。同様の効果は、
参考例2で得られた導電性微粒子2と
参考例3で得られた導電性微粒子6との比較からも明らかである。導電性微粒子2と導電性微粒子6もニッケル層のd(200)とd(111)はそれぞれ同等であるが、粒子径が3.0μm以下である導電性微粒子6では湿熱性条件下における抵抗値上昇をより効果的に抑制できることがわかる。
【0122】
実施例9〜10、
参考例7〜8で得られた導電性微粒子10〜13の比較より、10%K値が小さく軟質な基材粒子を用いるほど、湿熱性条件下における抵抗値上昇をより長時間にわたって抑制できることがわかる。圧縮時、基材粒子に負荷が分散され、ニッケル層にかかる負荷が分散されたためと考えられる。