特許第5902740号(P5902740)IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】5902740
(24)【登録日】2016年3月18日
(45)【発行日】2016年4月13日
(54)【発明の名称】真空システム
(51)【国際特許分類】
   F04B 37/16 20060101AFI20160331BHJP
   F04D 19/04 20060101ALI20160331BHJP
   F16J 15/10 20060101ALI20160331BHJP
   F16J 15/06 20060101ALI20160331BHJP
【FI】
   F04B37/16 B
   F04D19/04 G
   F16J15/10 C
   F16J15/06 P
【請求項の数】14
【全頁数】8
(21)【出願番号】特願2014-59633(P2014-59633)
(22)【出願日】2014年3月24日
(65)【公開番号】特開2014-206160(P2014-206160A)
(43)【公開日】2014年10月30日
【審査請求日】2014年3月24日
(31)【優先権主張番号】10 2013 103 650.3
(32)【優先日】2013年4月11日
(33)【優先権主張国】DE
(73)【特許権者】
【識別番号】391043675
【氏名又は名称】プファイファー・ヴァキューム・ゲーエムベーハー
(74)【代理人】
【識別番号】100069556
【弁理士】
【氏名又は名称】江崎 光史
(74)【代理人】
【識別番号】100111486
【弁理士】
【氏名又は名称】鍛冶澤 實
(74)【代理人】
【識別番号】100173521
【弁理士】
【氏名又は名称】篠原 淳司
(74)【代理人】
【識別番号】100153419
【弁理士】
【氏名又は名称】清田 栄章
(72)【発明者】
【氏名】トビアス・シュトル
(72)【発明者】
【氏名】ローベルト・ヴァッツ
(72)【発明者】
【氏名】ミヒャエル・シュヴァイクヘーファー
【審査官】 所村 陽一
(56)【参考文献】
【文献】 米国特許出願公開第2007/0258836(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04B 37/16
F04D 19/04
F16J 15/06
F16J 15/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空ポンプと受容部の間に解離可能な結合部が設けられ、この結合部をシールするために、大気側に向かって少なくとも1つのエラストマシールが設けられ、真空側の方向に少なくとも1つのギャップシールが設けられている、少なくとも1つの真空ポンプと少なくとも1つの受容部、即ちチャンバを有する真空システムにおいて、
エラストマシール(6)が、Oリングとして形成され、ギャップシール(7)が、受容部の面に押し付けられるポンプハウジングの面として形成され、受容部が加熱された時にエラストマシールによって発生されるガスの影響を回避するために、エラストマシール(6)とギャップシール(7)の間に、少なくとも1つの吸引通路(8)及び/又は少なくとも1つの吸引開口(9,11,17)が設けられていること、を特徴とする真空システム。
【請求項2】
前記少なくとも1つの吸引通路(8)内に、貫通孔(18)と接続した複数の吸引開口(17)が設けられていること、を特徴とする請求項1に記載の真空システム。
【請求項3】
吸引通路(8)が、ターニング加工部及び/又はフライス加工部として形成されていること、を特徴とする請求項1又は2に記載の真空システム。
【請求項4】
吸引通路(8)が、真空引きするための1つ又は複数の出口(9,17)を備えること、を特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の真空システム。
【請求項5】
エラストマシール(6)及びギャップシール(7)内に、前記少なくとも1つの受容部の1つ又は複数の真空接続部(2)が配置されていること、を特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の真空システム。
【請求項6】
複数の真空接続部(2,3,4,5)が、異なった圧力レベルにあること、を特徴とする請求項に記載の真空システム。
【請求項7】
エラストマシール(6)とギャップシール(7)の間の吸引部が、これらシール(6,7)内又は外の真空接続部(3)内に通じていること、を特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の真空システム。
【請求項8】
エラストマシール(6)及びギャップシール(7)外に、少なくとも1つの別の真空接続部(3,4)が配置されていること、を特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の真空システム。
【請求項9】
真空接続部(2,3,4,5)が、1つ又は複数の平面内に配置されていること、を特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の真空システム。
【請求項10】
エラストマシール(6)及びギャップシール(7)が、真空システムのフランジ、アドオン部品及び/又はビルトイン部品内に配置されていること、を特徴とする請求項1〜のいずれか1項に記載の真空システム。
【請求項11】
吸引部が、真空システムのハウジング内又は外に配置されていること、を特徴とする請求項1〜10のいずれか1項に記載の真空システム。
【請求項12】
エラストマシール(6)及びギャップシール(7)が、超高真空接続部(UHVポート)をシールするために設けられていること、を特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の真空システム。
【請求項13】
吸引通路(8)及び/又は吸引開口(9,11,17)を吸引するために、付加的な真空ポンプが設けられていること、を特徴とする請求項1に記載の真空システム。
【請求項14】
フランジが、特殊鋼又はアルミニウムから構成されていること、を特徴とする請求項10に記載の真空システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、少なくとも1つの真空ポンプと少なくとも1つの受容部を有する真空システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来技術(独国特許出願公開第24 16 808号明細書(特許文献1))から、真空のためのシール要素が公知である。このシール要素は金属から成るが、それは、エラストマ材料から成るシール要素が、非耐熱性であり、従って、温度が高いときに使用可能でないからである。特に、受容部が加熱される場合は、エラストマシールが使用可能でないが、それは、これらシールが、ガスを発生させ、これにより真空を“汚染する”からである。付加的に、エラストマシールの場合は、しばしば浸透が生じ、即ちこれは、ガスが、エラストマシールを通過することを意味する。
【0003】
従来技術に属するメタルシールは、メタルシールが、通常は1回しか、場合によっては2,3回しか使用できないことが欠点であるが、それは、金属が、エラストマシールの利点を、即ち弾性変形能力を備えないからである。従って、それぞれ強く変形した後は、新しいシール要素を使用しなければならない。メタルシールは、しばしば金がかかる高い材料(銅、インジウム、金等)から成るので、メタルシールのための費用は比較的高い。
【0004】
従って、従来技術(独国特許出願公開第24 16 808号明細書(特許文献1))によれば、シールリングを金属から形成し、調心リングを、半径方向に間隙を有するバネリングとして形成することが提案されている。この形成も、非常に費用がかかり、これにより非常に金がかかる。
【0005】
実務から、UHVフランジが公知である(超高真空)。これらフランジは、ナイフエッジを、例えば銅シールを備える。2つのフランジの間に、銅リングが配置される。フランジの同軸で環状のナイフエッジは、銅内に侵入し、金属シールを構成し、このシールは、極端に低いリーク率及び浸透率と高い耐温性によって際立っている。これらフランジは、コンフラット(登録商標)フランジ(米国アジレントテクノロジー社)又はCFフランジとも呼ばれる。これらフランジも、これらフランジがナイフエッジとメタルシールによって作動するとの欠点を備える。メタルシールの複数回の使用は、メタルシールの持続的な変形のために、使用後にはもはや可能でない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】独国特許出願公開第24 16 808号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の根底にある技術的な課題は、特に高真空領域において非常に低い圧力がエラストマシールを使用して永続的に得られる、真空システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この課題は、請求項1による特徴を有する真空システムによって解決される。
【0009】
真空ポンプと受容部の間に解離可能な結合部が設けられ、この結合部をシールするために、大気側に向かって少なくとも1つのエラストマシールが設けられ、真空側の方向に少なくとも1つのギャップシールが設けられている、少なくとも1つの真空ポンプと少なくとも1つの受容部を有する本発明による真空システムは、エラストマシールとギャップシールの間に、少なくとも1つの吸引通路及び/又は少なくとも1つの吸引開口が設けられていること、によって際立っている。
【0010】
シール箇所では、大気側に、少なくとも1つのエラストマシールが使用される。このエラストマシールは、有利には、Oリングとして形成されている。エラストマシールと、例えばUHVポート(超高真空)の間で、第2のシール要素として少なくとも1つのギャップシールが使用される。受容部(チャンバ)の面とポンプハウジングの面は、互いに押し付けられる。この場合、平面度及び表面品質は、特別な役割を演じる。相応の間隙は、理想的な場合には、ほぼゼロになる。
【0011】
エラストマシールとギャップシールの間で、ガス発生工程及び拡散工程に基づいて、UHV領域で圧力を上昇させるガス負荷が生じる。この圧力上昇は、場合によっては目標圧力の持続的な達成を妨害する。
【0012】
これを防止するため、エラストマシールとギャップシールの間で、本発明によれば吸引が使用される。これを有効に利用できるように、コンダクタンスをできるだけ大きくする必要がある。大きいコンダクタンスを実現するため、有利には、フライス加工部及び/又はターニング加工部が、吸引通路として形成されている。この通路は、有利には、(UHV領域に対して)より高い圧力の中間ステップと接続される。有効な吸引によってのみ、UHV圧力を安定に保つことが保証されている。吸引通路を大きく形成するほど、スペース的な条件によりギャップシールが短くなる。従って、吸引通路を良好なコンダクタンスを有する短い区間に分割するために、吸引通路を複数の箇所で真空引きすることが有効であり得る。その場合、例えば、第2の吸引通路が吸引のために使用され、この第2の吸引通路は、違う平面上に位置し得るので、シールギャップの長さに影響を与えない。
【0013】
吸引通路は、真空引きするための1つ又は複数の出口を備えることができる。目標は、できるだけ良好なコンダクタンスを達成することにある。1つ又は複数の出口を有する吸引通路の形成は、コンダクタンスの最適化に従う。
【0014】
本発明によるシールの原理は、長方形の場合でも円形の場合でも使用することができる。同様に、この原理は、平面内にも、シリンダ状又は3次元構造物上にも使用することができる。
【0015】
本発明によるシール構成内で、1つ又は複数の真空接続部(ポート)を配置することができるが、複数の真空接続部は、例えば異なった圧力レベルにあり得る。
【0016】
エラストマシールとギャップシールの間の吸引部は、本発明によるシール構成内又は外の真空接続部内に通じることができる。
【0017】
本発明によるシール構成外に、更に別の真空接続部を配置することができる。
【0018】
ポンプの全ての真空接続部は、1つの平面上に位置し得る。しかしながらまた、複数の平面に分配することも可能である。
【0019】
本発明によるシール原理は、フランジ、アドオン部品又はビルトイン部品に適用することができる。
【0020】
必要な輪郭は、真空ポンプのハウジング又は相手部材に採用することができる。
【0021】
吸引は、ハウジング内でもハウジング外でも行なうことができる。吸引部は、外では、例えばホース又はチューブによって、チャンバ又は他の適当なアドオン部品を経て中間ステップに通じることができる。
【0022】
シール原理は、UHV真空接続部及びハウジングにおけるアドオン部品に限定されていない。チャンバ、即ち受容部も、異なった箇所においてこの原理によりシールすることができる。その場合、吸引部は、再び、チャンバ、ポンプハウジング等内のチューブを介して適当な中間ステップに通じることができる。
【0023】
中間ステップ接続部の代わりに、吸引のための圧力シンクも考えられる。従って、例えば別の真空ポンプを使用することもできる。これは、マルチチャンバシステムにおいて1つよりも多くのポンプが使用される場合に意味を成す。
【0024】
フランジもポンプハウジングも、特殊鋼から成ることも、例えばアルミニウムのような軟質金属から成ることもできる。フランジの相手及びシール要素は、本発明による実施形態の場合、何回も使用することができるが、これは、普通のカッティングリングシールの場合はそうでない。
【0025】
本発明による真空システムは、従来技術に対して、従来技術の場合はUHV領域においてメタルシールが使用されるとの利点を備える。通常、メタルシールは、特殊鋼ハウジング及び特殊鋼チャンバと関係して使用される。その場合、メタルシールは、通常は軟質材料から成るので、シール作用は、より高い強度を有する特殊鋼におけるメタルシールの変形によって生じる。これらシール要素は、本発明による解決策とは違って、通常は1回しか使用することができない。
【0026】
従来技術の場合は高いプレス力が、シール要素の変形を得るために必要となる。これは、フランジが、最低強度と、多数の固定要素を備えなければならなくなるとの結果を伴う。これに対して、本発明によるシールコンセプトは、フィリグリーのフランジジオメトリの使用を可能にするが、それは、フランジの相手のプレス力が非常に小さいからである。
【0027】
本発明の更なる特徴と利点は、本発明による真空システムの複数の実施例を模範的にのみ図示した添付図からわかる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
図1】真空接続部を有する真空ポンプの斜視図
図2図1による真空ポンプの縦断面図
図3】変更を加えた実施例の斜視図
図4図3による真空ポンプの縦断面図
図5】変更を加えた実施例の斜視図
【発明を実施するための形態】
【0029】
図1及び2は、受容部(図示してない)のための真空接続部2,3,4,5を有する真空ポンプ1を示す。
【0030】
真空接続部2は、大気側に向かってエラストマシール6を備える。真空側のために、ギャップシール7が設けられている。特に受容部(図示してない)の加熱時にエラストマシール6がガスを発生させることがあるので、吸引開口9を介して吸引される吸引通路8が設けられている。真空接続部5も、エラストマシール10と吸引開口11を備え、吸引開口は、ハウジングインサート12に配置されている。
【0031】
吸引開口9は、中間ステップ13に真空引きされる。
【0032】
真空ポンプ1内に、回転する羽根車14,15,16が配置されている。
【0033】
図3及び4は、真空接続部2,3,4,5を有する真空ポンプ1を示す。真空接続部2は、エラストマシール6とギャップシール7を備える。エラストマシール6とギャップシール7の間に、吸引通路8が配置され、この吸引通路内に、中間吸引部17が配置されている。真空接続部5内には、更にまた、吸引開口11が配置されている。図4に図示したように、中間吸引部17は、貫通孔18に通じ、この貫通孔は、中間ステップ3に通じている。真空接続部5のシール装置から、接続部19が貫通孔18に通じているので、真空接続部5は、吸引開口11を介して、同様に貫通孔18を介して真空引きされる。
【0034】
図5は、真空ポンプ1の変更を加えた実施例1を示すが、この真空ポンプは、大気側に向かってエラストマシール6によってシールされ、真空側に向かってギャップシール7によってシールされた真空接続部2を備える。エラストマシール6とギャップシール7の間に、吸引通路8が設けられている。吸引開口11を介して吸引される真空接続部5のシール装置の貫通孔(図示してない)に通じる吸引開口9を介して、吸引通路8の真空引きが行なわれる。
【符号の説明】
【0035】
1 真空ポンプ
2 真空接続部
3 真空接続部
4 真空接続部
5 真空接続部
6 エラストマシール
7 ギャップシール
8 吸引通路
9 吸引開口
10 エラストマシール
11 吸引開口
12 ハウジングインサート
13 中間ステップ
14 羽根車
15 羽根車
16 羽根車
17 中間吸引部
18 貫通孔
19 収集通路への接続通路
図1
図2
図3
図4
図5