(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
【背景技術】
【0002】
工作機械の主軸で切削加工を行う場合、通常は、主軸モータの連続定格負荷以下で使用する。連続定格負荷とは、その負荷以下で使用している限りは、無限時間その負荷をかけ続けてもオーバーヒートにはならないレベルの負荷のことである。しかしながら、重切削を行う場合、あるいは、短い時間の間だけ負荷を増やして加工時間の短縮を行いたい場合には、連続定格負荷を越える負荷を与えてモータを回転させる場合がある。
【0003】
モータに連続定格負荷を越える負荷を与える場合には、その負荷に応じて切削可能時間が規定されており、それを越える時間、負荷を与え続けると、モータがオーバーヒートしてしまう。そのため、モータに連続定格負荷を越える負荷を与えて加工を行う場合には、現在の
負荷を与え続けた時に、モータがオーバーヒートせずに、あとどれぐらいの時間だけその加工が継続可能か、に関する指標が必要となる。
【0004】
一般に、連続定格負荷を越える切削に対しては、モータ毎に「負荷n%の切削だとオーバーヒートまで何分切削可能か」がわかるような許容負荷特性を示す図が規定されており、オペレータは、その情報からおおよその目安を付けて切削加工を行っている。許容負荷特性図では負荷に応じた切削可能時間が規定されており、許容負荷特性図を参照すればある負荷をどれくらいの時間モータに与え続けるとモータがオーバーヒートしてしまうかが分かる。
【0005】
図1は、モータの許容負荷特性の一例を示す図である。
図1において、横軸はモータ回転数を示し、縦軸はモータにかかる負荷を示す。負荷が100%のときが連続定格負荷を示し、この場合は無限時間その負荷をかけ続けてもモータはオーバーヒートしない。
図1に示す例では、低速回転領域で200%負荷は10分サイクルにおいて2.5分間の切削なら可能な負荷として示されており、230%負荷は10分サイクルにおいて1分間の切削なら可能な負荷として示されている。連続定格負荷を越える負荷をかけてモータを回転させ続けると、モータは許容発熱量を超える発熱をして故障する可能性がある。
【0006】
このような問題に対応するために、例えば、特許文献1に開示の数値制御による工作機械の制御方法及び装置では、送り軸モータの早送り時(非加工時)と、切削送り時のモータ発熱量予想値から、プログラム全体の発熱量を推定し、許容発熱量以下になるよう、時定数を変化させている。しかし、特許文献1に開示の発明では、モータの発熱の推定は行っているものの、オーバーヒートまでにあとどれぐらいの時間だけ切削加工が可能かについては開示がない。
【0007】
また、特許文献2に開示の永久磁石式同期モータの制御装置では、モータに発生している損失(銅損+鉄損)を求め、定格損失からその損失を差し引いた分がモータに消費可能な損失だと考え、それに応じたd軸電流を流すことでモータの過負荷を防止している。しかし、特許文献2に開示の発明では、鉄損まで含めた損失見積もりを行っているが、オーバーヒートまでにあとどれぐらいの時間だけ切削加工が可能かについては開示がない。
【0008】
そこで、本出願人は、モータの電流値から、モータ温度を推定する熱シミュレーション式を用意し、その式を逆算することにより、あとどれぐらいの時間で、モータがオーバーヒートに達するか、即ち、あとどれぐらいの時間継続して切削が可能かを推定する方法を提案した。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、添付図面を用いて本発明の実施の形態を、具体的な実施例に基づいて詳細に説明するが、本発明の実施例を説明する前に、
図2、
図3を用いて本出願人が提案した電流値から切削継続可能時間を推定する方法を説明する。なお、以下の説明において、異なる図面において同じ参照符号が付されたものは、同じ機能を有する構成要素であることを意味するものとする。
【0017】
図2(a)は、本出願人が提案した工作機械の制御装置1の一例を示すブロック図である。主軸を駆動するモータを有する工作機械の制御装置1は、電流検出手段11と、記憶手段12と、温度検出手段13と、温度上昇値推定手段14と、時間推定手段15と、表示器16とを備える。表示器16は、工作機械の数値制御装置に設けられているものであり、
図2(a)に示した制御装置1に設けられていても良い。また、制御装置1は、モータ2を駆動するための電流を供給するモータ制御部20を備える。モータ制御部20は、上位制御装置(図示せず)から受信したモータ駆動指令に基づき、交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換して出力した後、更にモータ2の駆動のための交流電力に変換してモータへ供給する。
【0018】
電流検出手段11は、モータ2を駆動する電流Iの値を検出する。記憶手段12には、モータ2について規定されたオーバーヒート温度Talmが予め記憶されている。温度検出手段13は、モータ2の温度Tを検出する。温度上昇値推定手段14については後述する。時間推定手段15は、温度検出手段13により検出された温度Tと記憶手段12に記憶されたオーバーヒート温度Talmとを用いて、電流検出手段11が検出した電流Iがモータ2を流れ続けた場合における、現在からモータ2がオーバーヒート温度Talmに達する時までの時間を推定する。表示器16は、時間推定手段15により推定された時間を表示する。
【0019】
次に、
図2(a)に示した工作機械の制御装置1の動作原理について説明する。モータ2の発熱は、モータ2を駆動する電流がモータ2の巻線を流れることによって銅線の巻線で消費される損失である銅損と、モータ2のコアに渦電流が流れることによって消費される損失である鉄損とによって生じる。モータ2を低速で駆動する場合は、モータ2の発熱は、鉄損より銅損の影響が支配的である。
【0020】
ここでは、モータ2を低速で駆動する利用を想定し、鉄損を無視してオーバーヒート温度Talmに達するまでの時間を推定する。ある電流Iがモータ2を流れ続けたときに生じるモータ2の銅損による温度上昇値は電流Iの二乗に比例する。すなわち、モータ2における最終的な温度上昇値Tcは式1で表される。
【0022】
式1におけるK1は、モータ2にある一定電流を流したときの温度上昇値から逆算して予め求めておく。モータ2の熱時定数をτ、サンプリングタイムをTsとしたとき、温度上昇値T(n)は、式2に示す漸化式によって計算できる。
【0024】
式2に示す漸化式を整理すると式3が得られる。
【0026】
式3において、T(0)は、モータ2の温度上昇値T(n)の初期値である。T(0)を規定することにより式3からモータ2の温度上昇値T(n)を推定することができる。式3を更に変形すると式4が得られる。
【0028】
ここで、検出された温度Tからの上昇分としてオーバーヒート温度を表してこれをTalmとしたとき、ある時点における温度上昇初期値T(0)が分かれば、電流Iがモータ2を流れ続けた場合における、現在からモータ2がオーバーヒート温度Talmに達する時までの時間「Ts×n」は式5のように表せる。
【0030】
温度Tについては温度検出手段13で検出し、モータ2に流れる電流Iについては電流検出手段11で検出する。また、電流検出手段11が検出した電流Iがモータ2を流れ続けた場合に生じるモータ2の銅損による温度上昇値Tcは、温度上昇値推定手段14により式1に基づいて推定される。また、ある時点の温度上昇初期値T(0)として、温度検出手段13により検出されたモータ2近傍の温度Tとモータ2を有する工作機械の周囲温度との差を用いる。
【0031】
そして、時間推定手段15は、記憶手段12に予め記憶されたオーバーヒート温度(上昇分)Talmと、温度上昇値推定手段14により推定された銅損による温度上昇値Tcと、温度検出手段13により検出された温度Tと周囲温度との差である温度上昇初期値T(0)と、を用いて、式5に基づき、電流Iがモータ2を流れ続けた場合における、現在からモータ2がオーバーヒート温度Talmに達する時までの時間「Ts×n」を算出する。すなわち、時間推定手段15は、温度検出手段13により検出された温度Tとオーバーヒート温度Talmと銅損による温度上昇値Tcとを用いて、現在からモータ2がオーバーヒート温度Talmに達する時までの時間「Ts×n」を算出する。算出された時間「Ts×n」は表示器16によって表示される。
【0032】
ところが、本出願人が先に提案した制御装置1では、式5により電流値から切削継続可能時間を推定するので、切削負荷変動により、電流値が細かく変化すると、切削継続可能時間も頻繁に変動することになり、時間の把握が難しくなる。そこで、
図2(b)に示すように、計算された切削継続可能時間推定値「Ts×n」に対して、所定の時定数を持つ1次のフィルタ26を表示器16の前段に採用することが考えられる。即ち、時間推定手段15の出力値(時間値)を、フィルタ26の入力とし、フィルタ26の出力値(時間値)を、最終的な切削継続可能時間として、表示器16に表示することが考えられる。
【0033】
このように、表示器16の前段にフィルタ26を採用した場合、負荷切削継続可能時間表示が細かく変化することは避けられる。ところが、表示器16の前段にフィルタ26を採用した場合、定常的な負荷が大きく変動すると、本当に知りたい切削継続可能時間が確定するまでに時間が掛かることになる。これを
図3を用いて説明する。
【0034】
図3(a)に示すように、表示器16の前段に採用したフィルタ26の時定数を大きくした場合、負荷が大きく変化した時の負荷切削継続可能時間表示の追従性が悪い。また、
図3(b)に示すように、表示器16の前段に採用したフィルタ26の時定数を小さくした場合は、定負荷時に負荷切削継続可能時間表示が安定しない。
【0035】
本発明は、これを解消するものであり、表示器16の前段に採用したフィルタ26の内部に、電流値の変化に応じて、時定数を変更する時定数変更手段を用意した。これによって、切削負荷変動により電流値が細かく変化した場合でも、また、定常的な負荷が大きく変動した場合でも、切削継続可能時間の把握が容易になる工作機械の制御装置を提供できるようにしたものである。以下にその実施の形態を幾つかの実施例により説明する。
【0036】
図4(a)は本発明の第1の実施例による工作機械の制御装置3を示すものである。主軸を駆動するモータ2(以後の実施例では主軸モータ2と記す)を有する工作機械の制御装置3は、電流検出手段11と、記憶部12と、温度検出手段13と、加工継続可能時間推定部17と、モータ制御部20と、時定数計算部22、及びフィルタ26を備える。工作機械の制御装置3の外部に工作機械の数値制御装置の表示器(以後単に表示器と記載する)16が設けられているが、この表示器16は工作機械の制御装置3に設けられていても良い。
【0037】
モータ制御部20は、主軸モータ2を駆動するための電流を供給するものであり、数値制御装置(NC)等の上位制御装置(図示せず)から受信したモータ駆動指令(位置指令)に基づき、交流電源から供給された交流電力を直流電力に変換して出力した後、更にモータ2の駆動のための交流電力に変換してモータへ供給する。また、モータ制御部20からは電流指令値ICが、加工継続可能時間推定部17と時定数計算部22に出力される。電流検出手段11は、モータ2を駆動する電流Iの値を検出する。記憶手段12には、モータ2について規定されたオーバーヒート温度Talmが予め記憶されている。温度検出手段13は、モータ2の温度Tを検出する。
【0038】
加工継続可能時間推定部17は、
図2(a)で説明した温度上昇値推定手段14の温度上昇値推定機能と、時間推定手段15の時間推定機能の両方を備えるものである。加工継続可能時間推定部17は、時間推定機能により、温度検出手段13が検出した温度Tと記憶部12に記憶されたオーバーヒート温度Talmとを用いて、電流検出手段11が検出した電流Iがモータ2を流れ続けた場合における、現在から主軸モータ2がオーバーヒート温度Talmに達する時までの時間、即ち、加工継続可能時間を推定する。表示器16は、加工継続可能時間推定部17により推定された加工継続可能時間を表示する。
【0039】
一方、本発明の第1の実施例による工作機械の制御装置3には、加工継続可能時間推定部17の出力にフィルタ26が接続されており、加工継続可能時間推定部17により推定された加工継続可能時間はフィルタ26を経て表示器16に入力される。フィルタ26は所定の時定数を持っているが、この時定数は、フィルタ26に接続する時定数計算部22によって変更することが可能である。
従って、時定数計算部22は、時定数変更装置である。時定数計算部22はフィルタ26に内蔵させることも可能である。
【0040】
第1の実施例による工作機械の制御装置3では、時定数計算部22は、モータ制御部20からの電流指令値ICの傾きの計算を行う。そして、時定数計算部22における電流指令値ICの傾きの計算結果があるスレショルド以上の場合は、フィルタ26に小さい時定数を設定する。逆に、時定数計算部22における電流指令値ICの傾きの計算結果があるスレショルド未満の場合には、フィルタ26に大きい時定数を設定する。フィルタ26内では、時定数計算部22によって決定された時定数を使ったフィルタ処理を行い、出力を表示器16に出力する。
【0041】
第1の実施例のように、時定数計算部22における電流指令値ICの傾きの計算結果が、あるスレショルド以上の場合はフィルタ26に小さい時定数に設定し、あるスレショルド未満の場合にはフィルタ26に大きい時定数に設定すると、モータの加工継続可能時間は
図4(b)に示すようになる。なお、
図4(b)には加工継続可能時間が、切削継続可能時間として示してある。即ち、モータの加工継続可能時間(切削継続可能時間)は、負荷が大きく変動してもすぐに追従し、定負荷時には、細かい時間変動がなく、安定する。
【0042】
なお、
図4(a)に示した工作機械の制御装置3では、モータ制御部20の構成については詳細に説明していないが、モータ制御部20は、例えば、
図12に示すような構成を備えている。モータ制御装置20には、位置制御部21、速度制御部
24、電流制御部23、及び減算器31,32,33がある。減算器31は位置制御部21の前段にあり、上位装置からの位置指令に、
モータの角度検出装置30の検出値を位置フィードバック値として引いて位置制御部21に入力する。減算器32は速度制御部
24の前段にあり、位置制御部21からの速度指令に、
モータの角度検出装置30の検出値
の一定のサンプリング間の変化量を速度フィードバック値として引いて速度制御部
24に入力する。減算器33は電流制御部23の前段にあり、速度制御部
24からの電流指令に、電流検出手段11の検出値を電流フィードバック値として引いて電流制御部
23に入力する。また、モータ制御装置20の出力は、実際には、電源4に接続された電力変換器5を通じて主軸モータ2に出力される。
【0043】
図5は本発明の第1の実施例による工作機械の制御装置3の時定数計算手順を示すフローチャートである。本フローチャートの説明では、
図4(a)に示した部材の符号を付して説明する。まず、ステップ501において、上位制御装置からモータ制御部20に位置指令が入力され、モータ制御部20からは電流指令値ICが加工継続可能時間推定部17と時定数計算部22に入力される。加工継続可能時間推定部17は、ステップ502において、電流検出手段11からの主軸モータ2を駆動する電流検出値Iを取得する。加工継続可能時間推定部17は、次にステップ503において、取得した電流検出値Iが主軸モータ2を流れ続けた場合に生じる主軸モータ2の銅損による温度上昇値Tcを、前述の式1に基づいて計算して推定する。
【0044】
また、加工継続可能時間推定部17は、ステップ504において、温度検出手段13から主軸モータ2の温度を取得し、ステップ505において、ある時点の温度上昇初期値をT(0)として、温度検出手段13により検出されたモータ温度Tと周囲温度との差を計算する。そして、ステップ506では、加工継続可能時間推定部17は、記憶部12に予め記憶されたオーバーヒート温度(上昇分)Talmと、推定された銅損による温度上昇値Tcと、温度検出手段13により検出されたモータ温度Tと周囲温度との差である温度上昇初期値T(0)とを用いて、式5に基づき、取得した電流が主軸モータ2を流れ続けた場合における、現在から主軸モータ2がオーバーヒート温度Talmに達する時までの時間「Ts×n」、即ち加工継続可能時間を算出する。
【0045】
ステップ507では、モータ制御部20から出力された電流指令値ICを受領した時定数計算部22が時定数を計算する。そして、ステップ508において、ステップ506で計算された加工継続可能時間と、ステップ507で計算された時定数がフィルタ26に入力され、フィルタ26で補正された加工継続可能時間が表示器16に提供される。
【0046】
続いて、
図6に示す本発明の第2の実施例の工作機械の制御装置3について説明する。第2の実施例の工作機械の制御装置3の構成は、時定数計算部22に入力される信号を除いて、
図4(a)で説明した第1の実施例の工作機械の制御装置3と同じである。従って、同じ構成要素には同じ符号を付してその説明を省略する。
【0047】
第1の実施例の工作機械の制御装置3では、時定数計算部22はモータ制御部20から入力される電流指令値に基づいてフィルタ26に設定する時定数を計算していた。一方、第2の実施例の工作機械の制御装置3では、時定数計算部22は電流検出手段11が検出した電流検出値Iに基づいてフィルタ26に設定する時定数を計算している。
【0048】
図7は、本発明の第2の実施例による工作機械の制御装置の時定数計算手順を示すフローチャートである。本フローチャートの説明では、
図6に示した部材の符号を付して説明する。前述のように、第1と第2の実施例の工作機械の制御装置3の相違点は、時定数計算部22に入力される信号の種類のみである。したがって、第2の実施例における工作機械の制御装置3の時定数計算手順を示すフローチャートでは、第1の実施例における工作機械の制御装置3の加工継続可能時間推定部17の処理手順と同じ処理手順対して同じステップ番号501〜506を付してその説明を省略する。
【0049】
第1の実施例では、ステップ507において時定数計算部22がモータ制御部20から出力された電流指令値ICを受領し、時定数計算部22が時定数を計算している。一方、第2の実施例では、ステップ502において加工継続可能時間推定部17が取得した電流検出手段13からの主軸モータ2を駆動する電流検出値Iが時定数計算部22に入力され、時定数計算部22はステップ701において、取得した電流検出値Iに基づいて時定数を計算する。そして、ステップ508において、ステップ506で計算された加工継続可能時間と、ステップ701で計算された時定数がフィルタ26に入力され、フィルタ26で補正された加工継続可能時間が表示器16に提供される。
【0050】
図8は、本発明の第3の実施例による工作機械の制御装置の構成を示すものである。第3の工作機械の制御装置3が第1の実施例の工作機械の制御装置3と相違する点は、時定数計算部22の前段の構成のみである。第1の実施例では、モータ制御部20から出力された電流指令値ICが時定数計算部22に入力され、時定数計算部22は入力された電流指令値ICに基づいてフィルタの時定数を計算していた。
【0051】
一方、第3の実施例では、モータ制御部20から出力された電流指令値ICは、時定数計算部22に入力される前に、電流指令値変化量検出部21に入力される。
図8には、電流指令値変化量検出部21は、「ΔIC=(IC(n)−IC(n−1))/Δt」と記載してあり、電流指令値変化量検出部21はあるサンプル点nにおける電流指令値ICの変化量ΔICを計算する。電流指令値変化量検出部21で計算された電流指令値ICの変化量ΔICは時定数計算部22に入力される。
【0052】
図8には、時定数計算部22は「時定数Tf=KT/ΔIC」と記載してある。KTは基準時定数である。時定数計算部22は、入力された電流指令値ICの変化量ΔICに基づいてフィルタの時定数を計算する。したがって、
図9に示す第3の実施例による工作機械の制御装置の時定数計算手順を示すフローチャートでは、第1の実施例における工作機械の制御装置3の加工継続可能時間推定部17の処理手順と同じ処理手順には、同じステップ番号501〜506を付してその説明を省略する。また、本フローチャートの説明では、
図8に示した部材の符号を付して説明する。
【0053】
第1の実施例では、ステップ507において時定数計算部22がモータ制御部20から出力された電流指令値ICを受領し、時定数計算部22が時定数を計算している。一方、第3の実施例では、モータ制御部20から出力された電流指令値ICを、ステップ901で電流指令値変化量検出部21が受け取り、電流指令値ICの変化量ΔICを算出し、これを時定数計算部22に入力する。そして、続くステップ902において、時定数計算部22は、取得した電流指令値ICの変化量ΔICに基づいて時定数を計算する。そして、ステップ508において、ステップ506で計算された加工継続可能時間と、ステップ902で計算された時定数がフィルタ26に入力され、フィルタ26で補正された加工継続可能時間が表示器16に提供される。
【0054】
このように、時定数計算部22によるフィルタ26の時定数変更方法は、第1と第2の実施例のように、あるスレショルドでスイッチするように切り換えても良いが、第3の実施例のように、ある基準時定数KTに対して、時定数=KT/(電流指令値の傾き)という形で算出し、フィルタ26の時定数を連続的に変化するようにしても良い。
【0055】
図10は、本発明の第4の実施例による工作機械の制御装置の構成を示すものである。第4の工作機械の制御装置3が第2の実施例の工作機械の制御装置3と相違する点は、時定数計算部22の前段の構成のみである。第2の実施例では、電流検出手段11から出力された電流検出値Iが時定数計算部22に入力され、時定数計算部22は入力された電流検出値Iに基づいてフィルタの時定数を計算していた。
【0056】
一方、第4の実施例では、電流検出手段11から出力された電流検出値Iは、時定数計算部22に入力される前に、電流検出値変化量検出部23に入力される。
図8には、電流検出値変化量検出部23は、「ΔI=(I(n)−I(n−1))/Δt」と記載してあり、電流検出値変化量検出部23はあるサンプル点nにおける電流検出値Iの変化量ΔIを計算する。電流検出値変化量検出部23で計算された電流検出値Iの変化量ΔIは時定数計算部22に入力される。
【0057】
図10には、時定数計算部22は「時定数Tf=KT/ΔI」と記載してある。KTは基準時定数である。時定数計算部22は、入力された電流検出値Iの変化量ΔIに基づいてフィルタの時定数を計算する。したがって、
図11に示す第4の実施例による工作機械の制御装置3の時定数計算手順を示すフローチャートでは、第2の実施例における工作機械の制御装置3の加工継続可能時間推定部17の処理手順と同じ処理手順には、同じステップ番号501〜506を付してその説明を省略する。ここでもフローチャートの説明において、
図10に示した部材の符号を付して説明する。
【0058】
第2の実施例では、ステップ701において時定数計算部22が電流検出手段11から出力された電流検出値Iを受領し、時定数計算部22が時定数を計算している。一方、第4の実施例では、電流検出手段11から出力された電流検出値Iを、ステップ1101で電流検出値変化量検出部23が受け取り、電流検出値Iの変化量ΔIを算出し、これを時定数計算部22に入力する。そして、続くステップ1102において、時定数計算部22は、取得した電流検出値Iの変化量ΔIに基づいて時定数を計算する。そして、ステップ508において、ステップ506で計算された加工継続可能時間と、ステップ1102で計算された時定数がフィルタ26に入力され、フィルタ26で補正された加工継続可能時間が表示器16に提供される。
【0059】
このように、時定数計算部22によるフィルタ26の時定数変更方法は、第1と第2の実施例のように、あるスレショルドでスイッチするように切り換えても良いが、第4の実施例のように、ある基準時定数KTに対して、時定数=KT/(電流検出値の傾き)という形で算出し、フィルタ26の時定数を連続的に変化するようにしても良い。